特許第5965497号(P5965497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイオニア株式会社の特許一覧 ▶ パイオニア・マイクロ・テクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5965497-可変容量アレイ 図000006
  • 特許5965497-可変容量アレイ 図000007
  • 特許5965497-可変容量アレイ 図000008
  • 特許5965497-可変容量アレイ 図000009
  • 特許5965497-可変容量アレイ 図000010
  • 特許5965497-可変容量アレイ 図000011
  • 特許5965497-可変容量アレイ 図000012
  • 特許5965497-可変容量アレイ 図000013
  • 特許5965497-可変容量アレイ 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965497
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】可変容量アレイ
(51)【国際特許分類】
   H01G 5/16 20060101AFI20160721BHJP
   B81B 7/04 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   H01G5/16
   B81B7/04
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-551737(P2014-551737)
(86)(22)【出願日】2012年12月11日
(86)【国際出願番号】JP2012007918
(87)【国際公開番号】WO2014091520
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503213291
【氏名又は名称】パイオニア・マイクロ・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】特許業務法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】埴原 甲二
(72)【発明者】
【氏名】杉田 哲郎
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−044556(JP,A)
【文献】 特開2012−023273(JP,A)
【文献】 特開2009−218507(JP,A)
【文献】 特開2006−261480(JP,A)
【文献】 特開2009−212541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 5/16
B81B 7/04
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一基板上に設けられたn個の可変容量素子を、備え、
前記各可変容量素子は、
第1電極と、
前記第1電極と対向する第2電極と、
前記第1電極に対し、前記第2電極を離接させる駆動部と、を有し、
前記第1電極および前記第2電極のうち一方の電極は、他方の電極と対向する対向面に、1個以上の突出部が突出形成され、
前記n個の可変容量素子間で、前記各突出部が同一の形状および大きさに形成されていると共に、前記突出部の個数が相違することを特徴とする可変容量アレイ。
ただし、nは2以上の整数である。
【請求項2】
前記他方の電極は、前記突出部が形成された前記一方の電極と対向する対向面に、絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量アレイ。
【請求項3】
前記一方の電極は、前記各突出部の先端面に、絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の可変容量アレイ。
【請求項4】
前記一方の電極は、前記各突出部の基端部に、絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の可変容量アレイ。
【請求項5】
前記一方の電極は、前記各突出部の基端部と先端部との間に、絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の可変容量アレイ。
【請求項6】
前記他方の電極は、前記突出部が形成された前記一方の電極と対向する対向面に、前記各突出部と対応する1個以上の凸部が突出形成されており、
前記n個の可変容量素子間で、前記各凸部が同一の形状および大きさに形成されていると共に、前記凸部の個数が相違することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の可変容量アレイ。
【請求項7】
前記各可変容量素子は、前記突出部を、2×p個有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の可変容量アレイ。
ただし、mは、0から(n−1)のいずれかの整数であって、前記可変容量素子ごとに異なる数である。pは、1以上の整数であって、前記n個の可変容量素子に共通の数である。
【請求項8】
前記駆動部が、静電アクチュエーターであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の可変容量アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一基板上に複数の可変容量素子を備えた可変容量アレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シグナル線と容量電極との対向面積が相違する4つのデジタル可変容量素子で16通りの静電容量を実現したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)可変容量が知られている。このMEMS可変容量では、4つのデジタル可変容量素子間で、容量電極に対して大小異なる開口部を1または複数形成することで、シグナル線との対向面積を相違させている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】株式会社東芝 セミコンダクター社 半導体研究開発センター、「インテリジェントバイポーラ駆動(IBA)を用いたRF−MEMS可変容量」、[online]、[平成24年11月6日検索]、インターネット<http://www.toshiba.co.jp/about/press/2008_02/0702/RF-MEMS.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のMEMS可変容量(可変容量アレイ)では、4つのデジタル可変容量素子間で、容量電極に形成する開口部が大小異なることから、エッチング剤のまわり方等に違いが生じ、開口部を狙い通りに(マスクパターン通りに)形成することが困難であった。このような製造プロセス上のばらつきから、特にデジタル可変容量素子の数が多い場合に、デジタル可変容量素子間における対向面積の比(例えば1:2:4:8・・・)が不揃いとなる。したがって、MEMS可変容量が静電容量のリニアリティに劣るものとなっていた。
これに対し、同一構造の可変容量素子を、それぞれ例えば1個、2個、4個、8個備えた4組の可変容量部を設け、各可変容量部内で可変容量素子を同一動作させることで、従来のMEMS可変容量と同様に、16通りの静電容量を実現することが考えられる。しかしながら、この場合には、MEMS可変容量における静電容量のリニアリティは確保できるが、チップ面積が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、チップ面積が大きくなることなく、静電容量のリニアリティに優れた可変容量アレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の可変容量アレイは、同一基板上に設けられたn個の可変容量素子を、備え、各可変容量素子は、第1電極と、第1電極と対向する第2電極と、第1電極に対し、第2電極を離接させる駆動部と、を有し、第1電極および第2電極のうち一方の電極は、他方の電極と対向する対向面に、1個以上の突出部が突出形成され、n個の可変容量素子間で、各突出部が同一の形状および大きさに形成されていると共に、突出部の個数が相違することを特徴とする。ただし、nは2以上の整数である。
【0007】
この構成によれば、一方の電極に突出部が形成されているため、各可変容量素子における第1電極と第2電極との近接時(ON時)の静電容量は、一方の電極に形成された突出部と他方の電極との対向面積で決まる。また、各突出部が、n個の可変容量素子間で同一の形状および大きさ(面積)に形成されているため、n個の可変容量素子間における対向面積の比は、突出部の個数の比と等しくなる。したがって、n個の可変容量素子間における第1電極と第2電極との近接時(ON時)の静電容量の比は、突出部の個数の比と等しくなる。さらに、各突出部は、n個の可変容量素子間で同一の形状および大きさであるため、エッチング剤のまわり方の違い等、製造プロセス上のばらつきの影響を受けることなく、各突出部を均等に形成することができる。これゆえ、n個の可変容量素子間における第1電極と第2電極との近接時(ON時)の静電容量の比が、突出部の個数の比と正確に等しくなる。したがって、チップ面積が大きくなることなく、可変容量アレイにおける静電容量のリニアリティを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る可変容量アレイを示す平面図である。
図2図1のII−II切断線による可変容量素子の断面図である。
図3】(a)は、可変容量素子における固定用容量電極および可動容量電極の平面図、(b)は、(a)のb−b切断線による断面図である。
図4】シリコン基板上に固定容量電極および固定側突出部を形成する製造プロセスの一例を示す図である。
図5】シリコン基板上に固定容量電極および固定側突出部を形成する製造プロセスの他の例を示す図である。
図6】可変容量素子の変形例であって、可動容量電極に可動側突出部が形成されたものを示す図である。
図7】可変容量素子の変形例であって、容量側絶縁膜の形成箇所を変えたものを示す図である。
図8】可変容量素子の変形例であって、固定容量電極を2つに分けたものを示す図である。
図9】可変容量素子の変形例であって、固定容量電極と可動電極の両側に突出部を形成したものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る可変容量アレイについて説明する。この可変容量アレイは、MEMSデバイスであり、半導体集積回路作製技術を用いて、シリコン基板などの半導体基板上に、電子回路および機械構造を作り込むことで構成されている。
【0010】
図1に示すように、可変容量アレイ1は、6個の可変容量素子10で構成されている。6個の可変容量素子10は、同一のシリコン基板2において、Y方向(図1の上下方向)に沿って並設されている。シリコン基板2の表面には、絶縁層3が成膜されており、この絶縁層3上に、6個の可変容量素子10が形成されている。
【0011】
6個の可変容量素子10は、後述する固定側突出部14の個数が異なる点を除き、互いに同じ構成を有している。6個の可変容量素子10は、詳細は後述するが、それぞれ、2C[pF](mは0〜5のいずれかの整数)とCmin[pF](実質的に0[pF])とで2値的に静電容量を可変する。これにより、可変容量アレイ1は、全体として、2通り(6ビット)の静電容量を等間隔(C[pF]間隔)で可変できるようになっている。
なお、可変容量素子10の個数は、2個以上であれば特に限定されるものではないが、可変容量素子10の個数が多い(6個以上)ほど、従来の構成では製造プロセス上のばらつきの影響を受けやすいため、本発明が有用である。
【0012】
図1および図2に示すように、各可変容量素子10は、絶縁層3上でY方向に延在する固定容量電極11と、固定容量電極11と対向する可動容量電極12と、可動容量電極12のX方向(図1の左右方向)の両外側に設けられた一対の静電アクチュエーター13とを備えている。可動容量電極12と静電アクチュエーター13とは、絶縁体で構成された接続部15を介して接続されている。固定容量電極11は、単一のものが、6個の可変容量素子10に共通して用いられる。また、詳細は後述するが、固定容量電極11は、その上面(可動容量電極12と対向する対可動対向面11a)に、固定側突出部14が突出形成されている。
【0013】
ここでは、固定容量電極11は、RF(Radio Frequency)信号が流れる電極であり、可動容量電極12は、グランド接続される電極である。各可変容量素子10における固定容量電極11と可動容量電極12との距離が変動して、可変容量アレイ1における静電容量が変動すると、RF信号が流れる固定容量電極11の電位が変化し、それに応じたRF電圧が、固定容量電極11および可動容量電極12から出力される。
【0014】
静電アクチュエーター13は、固定容量電極11に対して可動容量電極12を離接させる。静電アクチュエーター13により、可動容量電極12が固定容量電極11に向かって駆動すると、可動容量電極12の下面(固定容量電極11と対向する対固定対向面12a)を覆う容量側絶縁膜16が、固定容量電極11と接触する(図2(b)参照)。すなわち、容量側絶縁膜16は、固定容量電極11と可動容量電極12との接触による短絡を防止している。容量側絶縁膜16の厚さ(T)は、数十nm程度である。なお、本実施形態では、可動容量電極12は、一対の静電アクチュエーター13により、両持ち構造(ブリッジ構造)となっているが、これを片持ち構造(カンチレバー構造)としてもよい。
【0015】
各静電アクチュエーター13は、絶縁層3上に形成された固定駆動電極21と、固定駆動電極21に対向する可動駆動電極22とを備えている。可動駆動電極22のX方向内側の端部は、接続部15を介して可動容量電極12に接続されている。一方、可動駆動電極22のX方向外側には、バネ構造部23が一体に形成されている。バネ構造部23の端部は、絶縁層3上に突設されたアンカー24に接続されている。
【0016】
そして、静電アクチュエーター13は、固定駆動電極21と可動駆動電極22との間に駆動電圧が印加されると、両電極間に静電気力が生じ、可動駆動電極22が固定駆動電極21に引き寄せられ、固定駆動電極21の表面を覆う駆動側絶縁膜25と接触する。これにより、可動駆動電極22と接続された可動容量電極12が固定容量電極11に近づき、固定容量電極11と可動容量電極12との距離が短くなる(図2(b)参照)。つまり、静電容量がCon(後述する)[pF]へと変化する。
【0017】
一方、固定駆動電極21と可動駆動電極22との間の駆動電圧の印加が解除されると、両電極間の静電気力がなくなり、バネ構造部23のバネ力により、可動駆動電極22が固定駆動電極21から離れる。これにより、可動駆動電極22と接続された可動容量電極12が固定容量電極11から離れ、固定容量電極11と可動容量電極12との距離が長くなる(図2(a)参照)。つまり、静電容量がCoff(後述する)[pF]へと変化する。
【0018】
このようにして、静電アクチュエーター13は、可動容量電極12を固定容量電極11に対して離接させ、これにより、各可変容量素子10における静電容量が2値的に変化する。なお、本実施形態では、可動容量電極12を駆動するアクチュエーター(駆動部)として、静電型のものを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、圧電型、電磁型、熱型のものを用いてもよい。
【0019】
続いて、図3を参照して、固定容量電極11に形成された固定側突出部14について説明する。固定側突出部14は、6個の可変容量素子10において、それぞれ2個形成されている(mは、0から5のいずれかの整数であって、可変容量素子10ごとに異なる数である)。すなわち、図1に示したように、6個の可変容量素子10は、図示上側の可変容量素子10から順に、1個、2個、4個、8個、16個、32個の固定側突出部14を有している。各固定側突出部14は、可動容量電極12と対向する対可動対向面11aに突出形成されている。さらに、各固定側突出部14は、6個の可変容量素子10間で、同一の形状および大きさに形成されている。各固定側突出部14の高さ(T)は、例えば数百nm程度である。
【0020】
なお、6個の可変容量素子10における固定側突出部14の個数のパターンは、これに限定されるものではなく任意であるが、2×p個(例えば、3個、6個、12個、24個、48個、96個)であれば、6個の可変容量素子10によって2通りの静電容量を等間隔で得ることができる。また、本実施形態では、各固定側突出部14は、四角柱状に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば円柱状であってもよい。
【0021】
ここで、各可変容量素子10において、可動容量電極12が固定容量電極11から離れたOFF時の静電容量(Coff)、および可動容量電極12が固定容量電極11に近づいたON時の静電容量(Con)は、それぞれ数式(1)、数式(2)で与えられる。
【数1】
【0022】
数式(2)において、T/εr<<Tであるから、各可変容量素子10におけるON時の静電容量(Con)は、(S2)にはよらず、固定側突出部14と可動容量電極12との対向面積(S1)によって実質的に決定され、数式(3)で表される。
【数2】
各固定側突出部14は、上述したように、6個の可変容量素子10間で、同一の形状および大きさに形成されている。このため、6個の可変容量素子10間における固定側突出部14と可動容量電極12との対向面積(S1)の比は、各可変容量素子10に形成された固定側突出部14の個数の比と等しく、1:2:4:8:16:32となる。したがって、各可変容量素子10におけるON時の静電容量(Con)は、上述したように2C[pF](mは0〜5のいずれかの整数)となり、その比が、1:2:4:8:16:32となる。
【0023】
以上の構成を有する可変容量アレイ1は、MEMS技術を用いて適宜設計可能であるが、図4を参照して、シリコン基板2上に固定容量電極11および固定側突出部14を形成する製造プロセスの一例について説明する。まず、絶縁層3を形成したシリコン基板2上に、第1導電層31および第2導電層32を順に成膜する(図4(a)参照)。続いて、第2導電層32上に、固定側突出部14に対応した第2レジストパターン34を形成する(図4(b)参照)。続いて、第2レジストパターン34をマスクにして、第2導電層32をエッチングする。エッチングされた第2導電層32が、固定側突出部14となる(図4(c)参照)。このとき、各固定側突出部14(これに対応するマスクパターン)は、6個の可変容量素子10間で同一の形状および大きさであるため、エッチング剤のまわり方の違い等による影響を受けることなく、各固定側突出部14が均等に形成される。
【0024】
エッチング後、第2レジストパターン34を除去すると共に、第1導電層31および第2導電層32(固定側突出部14)上に、固定容量電極11に対応した第1レジストパターン33を形成する(図4(d)参照)。続いて、第1レジストパターン33をマスクにして、第1導電層31をエッチングする。エッチングされた第1導電層31が、固定容量電極11となる(図4(e)参照)。エッチング後、第1レジストパターン33を除去し、シリコン基板2上に形成された固定容量電極11および固定側突出部14を得る(図4(f)参照)。
【0025】
さらに、図5を参照して、シリコン基板2上に固定容量電極11および固定側突出部14を形成する製造プロセスの他の例について説明する。まず、絶縁層3を形成したシリコン基板2上に、第1導電層31を成膜する(図5(a)参照)。続いて、第1導電層31上に、固定容量電極11に対応した第1レジストパターン33を形成する(図5(b)参照)。続いて、第1レジストパターン33をマスクにして、第1導電層31をエッチングする。エッチングされた第1導電層31が、固定容量電極11となる(図5(c)参照)。
【0026】
エッチング後、第1レジストパターン33を除去すると共に、絶縁層3および第1導電層31(固定容量電極11)上に、第2導電層32を成膜する(図5(d)参照)。続いて、第2導電層32上に、固定側突出部14に対応した第2レジストパターン34を形成する(図5(e)参照)。続いて、第2レジストパターン34をマスクにして、第2導電層32をエッチングする。エッチングされた第2導電層32が、固定側突出部14となる(図5(f)参照)。ここでも、各固定側突出部14(これに対応するマスクパターン)は、6個の可変容量素子10間で同一の形状および大きさであるため、エッチング剤のまわり方の違い等による影響を受けることなく、各固定側突出部14が均等に形成される。そして、エッチング後、第2レジストパターン34を除去し、シリコン基板2上に形成された固定容量電極11および固定側突出部14を得る(図5(g)参照)。
なお、この変形例においては、第2導電層32のエッチングにおいて、第1導電層31(固定容量電極11)の周辺部に形成された第2導電層32が、断面略扇形状の残部32aとなって残るため、形状が不安定となる。また、この残部32aが製造プロセス中に取れてトラブルを起こすおそれもある。このため、図4に示した製造プロセスのほうが、より好ましい。
【0027】
以上のように、本実施形態の可変容量アレイ1によれば、固定容量電極11に固定側突出部14が形成されているため、各可変容量素子10における固定容量電極11と可動容量電極12との近接時(ON時)の静電容量は、固定側突出部14と可動容量電極12との対向面積で決まる。また、各固定側突出部14が、6個の可変容量素子10間で、同一の形状および大きさ(面積)に形成されているため、6個の可変容量素子10間における対向面積の比は、固定側突出部14の個数の比と等しくなる。したがって、6個の可変容量素子10間におけるON時の静電容量の比は、固定側突出部14の個数の比と等しくなる。さらに、各固定側突出部14は、6個の可変容量素子10間で同一の形状および大きさであるため、エッチング剤のまわり方の違い等、製造プロセス上のばらつきの影響を受けることなく、各固定側突出部14を均等に形成することができる。このため、6個の可変容量素子10間におけるON時の静電容量の比が、固定側突出部14の個数の比と正確に等しくなる。したがって、チップ面積が大きくなることなく、可変容量アレイ1における静電容量のリニアリティを高めることができる。
【0028】
次に、図6ないし図8を参照して、可変容量素子10の変形例について説明する。上記の実施形態では、固定容量電極11の対可動対向面11aに固定側突出部14を形成したが、これに代えて、可動容量電極12の対固定対向面12aに可動側突出部17を形成するようにしてもよい(図6参照)。この場合、固定側突出部14と同様に、可動側突出部17を、6個の可変容量素子10において、それぞれ2個(mは、0から5のいずれかの整数であって、可変容量素子10ごとに異なる数である)形成すると共に、6個の可変容量素子10間で、同一の形状および大きさに形成する。なお、固定容量電極11の対可動対向面11aには、容量側絶縁膜16が形成される。
【0029】
さらに、上記の実施形態では、容量側絶縁膜16を、可動容量電極12の対固定対向面12aに形成したが、容量側絶縁膜16の位置はこれに限定されるものではない。例えば、容量側絶縁膜16を、対固定対向面12aに代え、各固定側突出部14の先端面に形成してもよく(図7(a1)(a2)参照)、対固定対向面12aに形成すると共に各固定側突出部14の先端面に形成してもよい(図7(b1)(b2)参照)。なお、各固定側突出部14の先端面に形成される容量側絶縁膜16は、図7(a1)および図7(b1)に示したように、複数の固定側突出部14に亘って連続していてもよく、或いは、図7(a2)および図7(b2)に示したように、各固定側突出部14ごとに形成してもよい。
【0030】
また、容量側絶縁膜16を、各固定側突出部14の基端部に形成してもよく(図7(c1)(c2)参照)、これに加え、各固定側突出部14の先端面に形成してもよい(図7(d1)(d2)参照)。各固定側突出部14の基端部に形成される容量側絶縁膜16は、図7(c1)および図7(d1)に示したように、複数の固定側突出部14に亘って連続していてもよく、或いは、図7(c2)および図7(d2)に示したように、各固定側突出部14ごとに形成してもよい。また、図7(d1)(d2)に示したように、容量側絶縁膜16を、各固定側突出部14の先端面と基端部の双方に形成してもよい。さらに、容量側絶縁膜16を、各固定側突出部14の基端部と先端部との間に形成してもよい(図7(e1)(e2)参照)。この場合、容量側絶縁膜16を間に挟んだ各固定側突出部14の先端部と基端部とで、可動容量電極12に対向する面積が等しくてもよく(図7(e1)参照)、異なってもよい(図7(e2)参照)。また、容量側絶縁膜16を、各固定側突出部14の基端部と先端部との間に加え、各固定側突出部14の先端面および基端部の少なくとも一方に形成してもよい。なお、容量側絶縁膜16に代えて、可動容量電極12が固定容量電極11(固定側突出部14)に近接した際に、空隙(エアーギャップ)を形成する構成であってもよい。これらの変形例は、可動容量電極12に可動側突出部17を形成した場合にも、同様に適用可能である。
【0031】
さらに、本実施形態では、各可変容量素子10において、固定容量電極11を単一のもので構成したが、図8に示すように、X方向に並設した2つの電極に分けてこれを構成してもよい。この場合、例えば、一方の固定容量電極11を、RF信号が流れる電極とし、他方の固定容量電極11を、グランド接続される電極とする。また、2つの固定容量電極11には、それぞれ固定側突出部14が形成される。各可変容量素子10における静電容量は、一方の固定容量電極11と可動容量電極12との間の静電容量と、可動容量電極12と他方の固定容量電極11との間の静電容量とが直列接続されて構成される。6個の可変容量素子10間において、この直接続された静電容量の比が、例えば、1:2:4:8:16:32となるようにする。この場合、固定側突出部14の個数を、例えば、各可変容量素子10における2つの固定容量電極11間で同数ずつとし、且つ6個の可変容量素子10間で、1:2:4:8:16:32の比となるように形成すればよい。
【0032】
また、図1図2図6図7および図8では、固定容量電極11および可動容量電極12の一方のみに、突出部(固定側突出部14または可動側突出部17)のある構造をしめしたが、図9のように、固定容量電極11および可動容量電極12の双方に突出部(固定側突出部14および可動側突出部17)があってもよい。この場合、各可変容量素子10において、可動容量電極12が固定容量電極11から離れたOFF時の静電容量(Coff)、および可動容量電極12が固定容量電極11に近づいたON時の静電容量(Con)は、それぞれ数式(4)、数式(5)で与えられる。
【数3】
【0033】
数式(5)において、T/εr<<T、且つT/εr<<Tであるから、各可変容量素子10におけるON時の静電容量(Con)は、(S2)、(S3)および(S4)にはよらず、固定側突出部14と可動側突出部17との対向面積(S1)によって実質的に決定され、数式(6)で表される。
【数4】
この構成における固定側突出部14および可動側突出部17は、特許請求の範囲における「突出部」および「凸部」の一例である。
【符号の説明】
【0034】
1:可変容量アレイ、10:可変容量素子、11:固定容量電極、11a:対可動対向面、12:可動容量電極、12a:対固定対向面、13:静電アクチュエーター、14:固定側突出部、16:容量側絶縁膜、17:可動側突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9