特許第5965499号(P5965499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本曹達株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965499
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ハロゲン化アニリンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/52 20060101AFI20160721BHJP
   C07C 209/36 20060101ALI20160721BHJP
   C07C 205/12 20060101ALI20160721BHJP
   C07C 201/08 20060101ALI20160721BHJP
   C07C 209/74 20060101ALI20160721BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
   C07C211/52CSP
   C07C209/36
   C07C205/12
   C07C201/08
   C07C209/74
   !C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-554416(P2014-554416)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(86)【国際出願番号】JP2013084300
(87)【国際公開番号】WO2014103947
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年4月6日
(31)【優先権主張番号】特願2012-280691(P2012-280691)
(32)【優先日】2012年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 博生
(72)【発明者】
【氏名】坂田 譲
(72)【発明者】
【氏名】小林 真一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 芳和
(72)【発明者】
【氏名】北山 卓
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−286636(JP,A)
【文献】 特開平04−178355(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102030616(CN,A)
【文献】 特開平07−048321(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/024429(WO,A1)
【文献】 特開昭62−181243(JP,A)
【文献】 特表2003−507462(JP,A)
【文献】 特表2007−536224(JP,A)
【文献】 Journal of Fluorine Chemistry,1993年,Vol.63, No.1-2,p.69-84
【文献】 Canadian Journal of Chemistry,1963年,Vol.41, No.10,p.2706-2709
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式(I)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。)で表わされるハロゲン化アニリン。
【請求項2】
式(IIa)
【化2】
(式(IIa)中、X1aおよびX2aは、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。但し、X1aおよびX2aが共に臭素原子である場合を除く。)で表わされるハロゲン化ニトロベンゼン。
【請求項3】
1,2−ジフルオロベンゼンまたは1−ハロゲノ−3,4−ジフルオロベンゼンをハロゲン化して、
式(III)
【化3】
(式(III)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。)で表わされるハロゲン化ベンゼンを得る工程と、
該ハロゲン化ベンゼンをニトロ化して、
式(II)
【化4】
(式(II)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。)で表わされるハロゲン化ニトロベンゼンを得る工程と、
該ハロゲン化ニトロベンゼンを還元して、
式(I)
【化5】
(式(I)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。)で表わされるハロゲン化アニリンを得る工程と、
次いで、該ハロゲン化アニリンを脱ハロゲン化する工程と、
を含む、2,3−ジフルオロアニリンの製造方法。
【請求項4】
前記1,2−ジフルオロベンゼンまたは1−ハロゲノ−3,4−ジフルオロベンゼンを、ルイス酸型触媒を使用してハロゲン化することを特徴とする請求項3に記載の2,3−ジフルオロアニリンの製造方法。
【請求項5】
1,2−ジフルオロベンゼンまたは1−ハロゲノ−3,4−ジフルオロベンゼンをハロゲン化して、
式(IIIa)
【化6】
(式(IIIa)中、X1aおよびX2aは、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。但し、X1aおよびX2aが共に臭素原子である場合を除く。)で表わされるハロゲン化ベンゼンを得る工程と、
次いで該ハロゲン化ベンゼンをニトロ化して、
式(IIa)
【化7】
(式(IIa)中、X1aおよびX2aは、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。但し、X1aおよびX2aが共に臭素原子である場合を除く。)で表わされるハロゲン化ニトロベンゼンを得る工程と、
を含む、ハロゲン化ニトロベンゼンの製造方法。
【請求項6】
前記式(IIIa)で表されるハロゲン化ベンゼンに発煙硫酸および濃硝酸を添加して、前記ハロゲン化ベンゼンをニトロ化することを特徴とする、請求項5に記載のハロゲン化ニトロベンゼンの製造方法。
【請求項7】
前記式(IIIa)で表されるハロゲン化ベンゼンに発煙硫酸および発煙硝酸を添加して、前記ハロゲン化ベンゼンをニトロ化することを特徴とする、請求項5に記載のハロゲン化ニトロベンゼンの製造方法。
【請求項8】
式(II)
【化8】
(式(II)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。)で表わされるハロゲン化ニトロベンゼンを還元して、
式(I)
【化9】
(式(I)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。)で表わされるハロゲン化アニリンを得る工程を含む、ハロゲン化アニリンの製造方法。
【請求項9】
式(I)
【化10】
(式(I)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。)で表わされるハロゲン化アニリンを脱ハロゲン化する工程を含む、2,3−ジフルオロアニリンの製造方法。
【請求項10】
式(II)
【化11】
(式(II)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。)で表わされるハロゲン化ニトロベンゼンを還元して、
式(I)
【化12】
(式(I)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。)で表わされるハロゲン化アニリンを得る工程と、
該ハロゲン化アニリンを脱ハロゲン化する工程と、
を含む、2,3−ジフルオロアニリンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料、医薬、農薬などとして有用な化合物の製造原料となる、新規なハロゲン化アニリン、およびその製造方法に関する。
本願は、2012年12月25日に、日本に出願された特願2012−280691号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
2,3−ジフルオロアニリンは、農園芸用殺菌剤の活性成分として知られる2−[2−フルオロ−6−(7,8−ジフルオロ−2−メチルキノリン−3−イルオキシ)フェニル]プロパン−2−オールや2−[2−フルオロ−6−(7,8−ジフルオロキノリン−3−イルオキシ)フェニル]プロパン−2−オール(特許文献1)を製造するための出発原料である。
また、2,3−ジフルオロアニリンは、抗生物質(特許文献2)、c−Metタンパク質キナーゼ阻害剤(特許文献3)、アルツハイマー病薬(特許文献4)、オーロラBキナーゼ阻害剤(特許文献5)、神経障害因性疼痛薬(特許文献6)などの医薬の製造に用いられている。
さらに、2,3−ジフルオロアニリンは、液晶素子(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)等の表示素子に具備される偏光板等に有用な高い二色性を示す異方性膜用組成物に含まれるアゾ化合物などの電子材料の製造にも用いられている(特許文献7)。
このように2,3−ジフルオロアニリンは、電子材料、医薬および農薬の製造原料として有用であり、その安価、大量、且つ簡便な製造方法が嘱望されている。
【0003】
2,3−ジフルオロアニリンの製造方法としては、例えば、2,3−ジクロロニトロベンゼンをフッ素化することにより、3−クロロ−2−フルオロニトロベンゼンを得、これを水添することにより、3−クロロ−2−フルオロアニリンとし、これをシーマン反応により2,3−ジフルオロクロロベンゼンとして、銅触媒によるアミノ化反応で、2,3−ジフルオロアニリンを製造する方法が知られている(特許文献8)。
【0004】
【化1】
【0005】
この方法はフッ素化反応およびアミノ化反応で高温・高圧を必要とし、ラネーニッケルのような取り扱いが面倒な試薬を使用するなど、工業的に有利な方法とはいい難い。
【0006】
特許文献9には、1,2,3−トリクロロベンゼンをフッ素化して2,3−ジフルオロクロロベンゼンを得、これを銅触媒によるアミノ化することで、2,3−ジフルオロアニリンを得ることができると記載されている。
【0007】
【化2】
【0008】
しかし、この方法はフッ素化の際に位置異性体(2,6−ジフルオロクロロベンゼン)が副生するため、2,3−ジフルオロクロロベンゼンの収率は低い。また副生した位置異性体との分離が非常に困難である。フッ素化・アミノ化の際には高温・高圧条件も必要であり、工業的に有利な方法とはいい難い。
【0009】
特許文献10には2,3−ジフルオロニトロベンゼンを高圧で水添することによる2,3−ジフルオロアニリンの製造方法が記載されている。
【0010】
【化3】
【0011】
この方法は1工程と簡便で工業的に実施可能なものであるが、原料の2,3−ジフルオロニトロベンゼンの入手が非常に困難であり、文献既知の方法は目的物の2,3−ジフルオロアニリンを酸化する方法しか知られていない。
【0012】
特許文献11には、2,3−ジフルオロ−4−クロロ−ニトロベンゼンを水添することによる2,3−ジフルオロアニリンの製造方法が記載されている。この方法も原料の2,3−ジフルオロ−4−クロロ−ニトロベンゼンの入手が非常に困難である。
【0013】
以上、現在までに知られている2,3−ジフルオロアニリンの製造方法は、高温・高圧反応が不可避であり、特殊な製造設備を必要とするため設備費が増大するばかりでなく、安全・安定な操業という観点からも大きな負担を強いられることが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2011/081174
【特許文献2】WO2010/091272
【特許文献3】WO2009/045992
【特許文献4】WO2009/106750
【特許文献5】WO2006−129064
【特許文献6】WO2009−029592
【特許文献7】特開2010−026024号公報
【特許文献8】CN101245020
【特許文献9】US5091580
【特許文献10】CN101811973
【特許文献11】特開平7−309815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、効果が確実で安全に使用できる農園芸用殺菌剤として有用な、2−[2−フルオロ−6−(7,8−ジフルオロ−2−メチルキノリン−3−イルオキシ)フェニル]プロパン−2−オール、あるいは2−[2−フルオロ−6−(7,8−ジフルオロキノリン−3−イルオキシ)フェニル]プロパン−2−オール、等の製造原料となる2,3−ジフルオロアニリンなどを高温・高圧条件を避けて容易に製造できる、新規なハロゲン化アニリン、および該ハロゲン化アニリンの、安価、大量、且つ簡便、な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、2,3−ジフルオロアニリンを高温・高圧条件を避けて容易に製造できる、新規なハロゲン化アニリンを見出した。また、1,2−ジフルオロベンゼンを出発原料として、これをハロゲン化し、得られた1,2−ジフルオロ−4,5−ジハロゲノベンゼンをニトロ化して、本発明の新規なハロゲン化ニトロベンゼンを含むハロゲン化ニトロベンゼンを得、更に該ハロゲン化ニトロベンゼンを還元することによって、本発明の新規なハロゲン化アニリンを高温・高圧条件を避けて安価、大量、且つ簡便、に製造できる方法を見出した。また、本発明の新規なハロゲン化ニトロベンゼンを含むハロゲン化ニトロベンゼンを還元・脱ハロゲン化することにより2,3−ジフルオロアニリンを高温・高圧条件を避けて安価、大量、且つ簡便、に製造できる方法を見出した。本発明は、これらの知見に基づきさらに検討し完成するに至ったものである。
【0017】
すなわち、本発明は以下の態様を包含するものである。
【0018】
【化4】


(式(I)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。)
【0019】
【化5】

(式(IIa)中、X1aおよびX2aは、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。但し、X1aおよびX2aが共に臭素原子である場合を除く。)
【0020】
【化6】

(式(III)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。)
【0021】
【化7】
(式(II)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。)
【化7-1】
(式(IIIa)中、X1aおよびX2aは、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。但し、X1aおよびX2aが共に臭素原子である場合を除く。)
〔1〕式(I)で表わされるハロゲン化アニリン。
〔2〕式(IIa)で表わされるハロゲン化ニトロベンゼン。
〔3〕1,2−ジフルオロベンゼンまたは1−ハロゲノ−3,4−ジフルオロベンゼンをハロゲン化して、式(III)で表わされるハロゲン化ベンゼンを得、
該ハロゲン化ベンゼンをニトロ化して、式(II)で表わされるハロゲン化ニトロベンゼンを得る工程と、
該ハロゲン化ニトロベンゼンを還元して、式(I)で表わされるハロゲン化アニリンを得る工程と、
次いで、該ハロゲン化ニトロベンゼンを脱ハロゲン化する工程とを含む、2,3−ジフルオロアニリンの製造方法。
〔4〕前記1,2−ジフルオロベンゼンまたは1−ハロゲノ−3,4−ジフルオロベンゼンを、ルイス酸型触媒を使用してハロゲン化することを特徴とする前記〔3〕記載の2,3−ジフルオロアニリンの製造方法。
〔5〕1,2−ジフルオロベンゼンまたは1−ハロゲノ−3,4−ジフルオロベンゼンをハロゲン化して、式(IIIa)で表わされるハロゲン化ベンゼンを得る工程と、
次いで該ハロゲン化ベンゼンをニトロ化して、式(IIa)で表わされるハロゲン化ニトロベンゼンを得る工程とを含む、ハロゲン化ニトロベンゼンの製造方法。
〔6〕前記式(IIIa)で表されるハロゲン化ベンゼンに発煙硫酸および濃硝酸を添加して、前記ハロゲン化ベンゼンをニトロ化することを特徴とする、前記〔5〕に記載のハロゲン化ニトロベンゼンの製造方法。
〔7〕前記式(IIIa)で表されるハロゲン化ベンゼンに発煙硫酸および発煙硝酸を添加して前記ハロゲン化ベンゼンをニトロ化することを特徴とする、前記〔5〕に記載のハロゲン化ニトロベンゼンの製造方法。
〔8〕式(II)で表わされるハロゲン化ニトロベンゼンを還元して、
式(I)で表わされるハロゲン化アニリンを得る工程とを含むハロゲン化アニリンの製造方法。
〔9〕式(I)で表わされるハロゲン化アニリンを脱ハロゲン化する工程を含む、2,3−ジフルオロアニリンの製造方法。
〔10〕式(II)で表わされるハロゲン化ニトロベンゼンを還元して、式(I)で表わされるハロゲン化アニリンを得る工程と、
該ハロゲン化アニリンを脱ハロゲン化する工程とを含む、2,3−ジフルオロアニリンの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るハロゲン化アニリンは、2−[2−フルオロ−6−(7,8−ジフルオロ−2−メチルキノリン−3−イルオキシ)フェニル]プロパン−2−オール、あるいは2−[2−フルオロ−6−(7,8−ジフルオロキノリン−3−イルオキシ)フェニル]プロパン−2−オール、等の製造原料となる2,3−ジフルオロアニリンを容易に製造することができる。また、本発明の製造方法によって、該ハロゲン化アニリンを、安価、大量、且つ簡便、に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るハロゲン化アニリンは、式(I)で表わされる化合物である。式(I)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。
【0024】
本発明に係るハロゲン化アニリンの具体例としては、2,3−ジクロロ−5,6−ジフルオロアニリン、2,3−ジブロモ−5,6−ジフルオロアニリン、3−ブロモ−2−クロロ−5,6−ジフルオロ−アニリン、2−ブロモ−3−クロロ−5,6−ジフルオロアニリン、2−クロロ−3−ヨード−5,6−ジフルオロアニリン、2−ヨード−3−クロロ−5,6−ジフルオロアニリンが挙げられる。
【0025】
本発明に係るハロゲン化ニトロベンゼンは、式(IIa)で表わされる化合物である。式(IIa)中、X1aおよびX2aは、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。但し、X1aおよびX2aが共に臭素原子である場合を除く。
【0026】
本発明に係るハロゲン化ニトロベンゼンの具体例としては、1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼン、1−ブロモ−2−クロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼン、2−ブロモ−1−クロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼン、1−ヨード−2−クロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼン、1−クロロ−2−ヨード−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンが挙げられる。
【0027】
本発明に係る式(I)で表されるハロゲン化アニリンは、1,2−ジフルオロベンゼンまたは1−ハロゲノ−3,4−ジフルオロベンゼンを出発原料として、下記の3工程を経て製造することができる。
【0028】
第1工程は、1,2−ジフルオロベンゼンまたは1−ハロゲノ−3,4−ジフルオロベンゼンをハロゲン化して、式(III)で表わされるハロゲン化ベンゼンを製造する工程である。式(III)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。
第1工程のハロゲン化は通常の有機化学合成反応で多用されている、ハロゲン化条件で行うことができる。ハロゲン化剤としては塩素単体、臭素単体、沃素単体、スルフリルクロリド、スルフリルブロミド、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジヨード−5,5−ジメチルヒダントイン等が使用できる。これらのうち、塩素単体または臭素単体を用いることが好ましい。
1,2−ジフルオロベンゼンのハロゲン化は、触媒を使用することが好ましい。触媒としては、 Fe、FeCl、FeBr、Fe、Al、Al、AlCl、ゼオライト、ZrO、SbCl、SbCl、TiCl、SnCl、MoCl等のルイス酸型触媒が好ましい。これらのうち、Fe、FeCl、FeBrがさらに好ましく、Feが特に好ましい。
触媒の使用量は、原料の1,2−ジフルオロベンゼンに対して、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。又、反応の選択率や反応速度を調節する目的で各種の硫黄化合物を助触媒として添加することができる。
反応温度は−40〜200℃の範囲で可能であるが反応の円滑な進行と原料の沸点を考慮した場合、0〜70℃が好ましく、40〜60℃により好ましい。反応は通常、無溶媒で行なわれるが、必要に応じて四塩化炭素、クロロホルム、二硫化炭素、酢酸等、ハロゲン化に際して不活性な溶剤を用いることができる。
【0029】
第2工程は、式(III)で表わされるハロゲン化ベンゼンをニトロ化して、式(II)で表わされるハロゲン化ニトロベンゼンを製造する工程である。式(II)中、X1およびX2は、それぞれ独立に塩素原子、臭素原子または沃素原子を表わす。
第2工程のニトロ化は、一般に有機化学合成反応で多用されている、通常のニトロ化方法を用いることができる。例えば、濃硝酸、硝酸塩および発煙硝酸の少なくとも一種と濃硫酸および発煙硫酸の少なくとも一種とを使用する混酸系でのニトロ化、氷酢酸または無水酢酸溶媒中でのニトロ化、あるいは発煙硝酸単独系でのニトロ化、等を用いることができる。
前記混酸系でのニトロ化は、
式(III)で表されるハロゲン化ベンゼンに発煙硫酸および発煙硝酸を添加してニトロ化する方法;
式(III)で表されるハロゲン化ベンゼンに発煙硫酸および硝酸塩を添加してニトロ化する方法;
式(III)で表されるハロゲン化ベンゼンに濃硫酸および発煙硝酸を添加してニトロ化する方法;
式(III)で表されるハロゲン化ベンゼンに発煙硫酸および濃硝酸を添加してニトロ化する方法;などが好ましい。
これらのうち、
式(III)に表されるハロゲン化ベンゼンに発煙硫酸および発煙硝酸を添加してニトロ化する方法;および
式(III)で表されるハロゲン化ベンゼンに発煙硫酸および濃硝酸を添加してニトロ化する方法;が特に好ましい。
前記濃硝酸の濃度は、好ましくは65%以上であり、前記濃硫酸の濃度は、好ましくは90%以上である。
前記硝酸塩は、好ましくは硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸カルシウム、または硝酸アンモニウムであり、さらに好ましくは、硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウムである。
反応温度は、好ましくは−20℃以上150℃以下、より好ましくは0℃超90℃以下、さらに好ましくは20℃以上70℃以下である。
又、必要に応じて、塩化メチレン、n−ヘキサン等のニトロ化に不活性な溶剤を使用することができる。
【0030】
第3工程は、式(II)で表わされるハロゲン化ニトロベンゼンを還元して、式(I)で表わされるハロゲン化アニリンを製造する工程である。
第3工程は、還元触媒を用いて、水素添加によって行われる。還元触媒としてはPd、Pt、Ni、Rh等が挙げられる。これらのうちPdが好ましい。
触媒の使用量は2,3−ジフルオロ−5,6−ジハロゲノニトロベンゼンに対して、金属換算で、好ましくは0.01〜2.5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。
反応温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは10〜100℃、さらに好ましくは40〜70℃である。反応圧力は常圧下、加圧下いずれでも良く、好ましくは0〜50kg/cm2で行われる。
溶媒は水素添加反応において不活性な溶媒が好ましく、例えばメチルアルコール、エチルアルコール等の低級アルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ヘキサン、トルエン等の炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;水;またはこれらの混合溶媒;等が用いられる。これらの溶媒に、酢酸や塩酸など酸類を添加しても良い。また、通常のベシャン還元による方法を用いても良い。
【0031】
本発明のハロゲン化アニリンの製造方法によれば、1,2−ジフルオロベンゼンまたは1−ハロゲノ−3,4−ジフルオロベンゼンを出発原料として、安価、大量、且つ簡便に式(I)で表わされるハロゲン化アニリンを製造することができる。
また、得られた式(I)で表わされるハロゲン化アニリンは単離してまたは単離せずに、次に説明する脱ハロゲン化反応に供することができる。
【0032】
得られた式(I)で表わされるハロゲン化アニリンを脱ハロゲン化反応することによって、2,3−ジフルオロアニリンを高収率で製造することができる。
この脱ハロゲン化反応においては、還元触媒を用いて水素添加によって行われる。この反応の際にトリエチルアミンや苛性ソーダなどの塩基を共存させてもよい。
2,3−ジフルオロアニリンは、農園芸用殺菌剤薬剤である、2−[2−フルオロ−6−(7、8−ジフルオロ−2−メチルキノリン−3−イルオキシ)フェニル]プロパン−2−オール、および2−[2−フルオロ−6−(7、8−ジフルオロキノリン−3−イルオキシ)フェニル]プロパン−2−オールの製造原料となる。
【実施例】
【0033】
次に、実施例を示して、本発明をより詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例で得られた本発明に関わる化合物は、分離精製したのち、元素分析、NMRデータ解析、および融点測定、によって化合物の構造式を確定し、新規化合物であることを確認した。
【0034】
実施例1 (1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロベンゼンの製造)
1,2−ジフルオロベンゼン60.3g(528.4mmol)および無水塩化第二鉄1.0gを混合し、撹拌しながら塩素ガス178.3g(2.51mol)を9時間に渡って導入した。この間反応温度は48〜54℃を維持した。その後、窒素を吹き込んで脱気した。この反応液にジクロロメタン40mLおよび水50mLを加えて分液した。水層をジクロロメタンで抽出した。有機層をまとめて飽和亜硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層をHPLCで定量分析したところ、1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロベンゼンの収率は63.3%であった(61.20g,334.5mmol)。
【0035】
実施例2 (1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロベンゼンの製造)
1,2−ジフルオロベンゼン11.41g(100mmol)、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン31.47g(110mmol)、および酢酸62.30gを混合し、10℃に冷却した。これに濃硫酸49.15gを加えて50℃で2.3時間反応させた。更に1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン1.46g(5.1mmol)を加えて50分間反応させた。その後、ヘキサン100mLを加えて抽出した。廃酸層から目的物をヘキサン100mLで2回抽出した。有機層をまとめて水50mLで2回洗浄し、飽和チオ硫酸ナトリウム水50mLで1回洗浄し、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液20mLで2回洗浄し、更に水50mLで1回洗浄した。その後、減圧濃縮して1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロベンゼンを黄色油状物として収率74%(73.80mmol)で得た。
【0036】
実施例3 (1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロベンゼンの製造)
【化8】


1,2−ジフルオロベンゼン7.53g(50mmol)に鉄粉84mg(1.5mmol)を分散させ、内温を20℃に調製した。そこへ臭素18.4g(115mmol)を50分かけて滴下した。この間、内温は20℃前後を維持した。臭素の滴下終了後、内温を40℃に上げて2時間、さらに50℃に上げて2時間反応させた。反応終了後、室温に冷却し、重曹25.2gと亜硫酸ナトリウム12.6gを100mlの水で溶かした水溶液に注ぎ、生成物を酢酸エチルで抽出した。抽出溶液を水と飽和食塩水でそれぞれ1回ずつ洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過で取り除いた後、溶液をHPLCで定量分析したところ、目的の1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロベンゼンの反応収率は94%であった。
【0037】
実施例4 (1−ブロモ−2−クロロ−4,5−ジフルオロベンゼンの製造)
4−クロロ−1,2−ジフルオロベンゼン14.86g(100mmol)、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン15.73g(55mmol)および酢酸70mLを混合し、12℃に冷却した。これに濃硫酸30mLを加えて50℃で1.7時間反応させた。更に1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン1.46g(5.1mmol)を加えて2時間反応させた。その後、ヘキサン100mLを加えて抽出した。廃酸層から目的物をヘキサン100mLで2回抽出し、更にヘキサン30mLで1回抽出した。有機層をまとめて水50mLで2回洗浄し、飽和チオ硫酸ナトリウム水50mLで1回洗浄し、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液20mLで2回洗浄し、水30mLで1回洗浄し、更に飽和食塩水で1回洗浄した。その後、減圧濃縮して1−ブロモ−2−クロロ−4,5−ジフルオロベンゼンを黄白色結晶として17.36g(収率76%)で得た。
【0038】
実施例5 (1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンの製造)
1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロベンゼン7.74g(42.32mmol)と30質量%発煙硫酸17.54gとを混合し、次いで20℃に加温した。これに97質量%発煙硝酸4.87g(75.0mmol)を2時間かけて20〜26℃に維持しつつ滴下した。滴下終了後、20〜26℃にて2時間撹拌した。次いで、97質量%発煙硝酸0.20g(3.1mmol)を添加して、3時間撹拌した。反応液を氷水に注加し、ジクロロメタン50mLで抽出し、水層を更にジクロロメタン20mLで2回抽出した。有機層をまとめて水洗し、減圧濃縮して1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンを収率71%で得た。
1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼン:
1H-NMR (400MHz, CDCl3) : δ 7.56(dd,1H)
【0039】
実施例6 (1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンの製造)(硝酸カリウム使用)
【化9】


1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロベンゼン1.83g(10mmol)を30質量%発煙硫酸5.6mLに懸濁させ、そこへ硝酸カリウム2.02g(20mmol)を少量ずつ添加した。その際、かなりの発熱があったので、内温が26℃以下になるように水バスで冷却しながら操作した。硝酸カリウムを添加後、反応液を2時間攪拌した。この際、内温は35℃まで自然に上昇した。続いて、反応液を氷にあけ、生成物を酢酸エチルで抽出した。この酢酸エチル溶液を水で洗浄し、次いで飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。この溶液をHPLCで定量分析したところ、目的の1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンの収率は31%であった。
【0040】
実施例7 (1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンの製造)
1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロベンゼン6.80g(25.0mmol)と100質量%硫酸18.54gとを混合し、次いで50℃に加温した。これに97質量%発煙硝酸2.5g(38.5mmol)および100質量%硫酸9.30gから成る混酸を、130分間かけて滴下し反応させた。反応温度は50〜52℃に維持した。これを氷水に注加し、28質量%水酸化ナトリウム水溶液82.3gを添加して中和した。析出した結晶をろ過した。ろ液をジクロロメタン200mLで抽出し、ろ別した結晶もこのジクロロメタンに溶解させて減圧濃縮した。得られた粗結晶6.21g(有姿収率78%)をメタノール・水混合溶液で晶析して1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンの白黄色粉末4.60gを得た(14.52mmol,収率58%)。
1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼン:
1H-NMR (400MHz, CDCl3) : δ 7.70(dd,1H)
【0041】
実施例8 (1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンの製造)(硝酸カリウム使用)
【化10】


1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロベンゼン2.71g(10mmol)を30質量%発煙硫酸5.6mLに懸濁させ、そこへ硝酸カリウム2.02g(20mmol)を少量ずつ添加した。その際、かなりの発熱があったので、内温が20℃以下になるように水バスで冷却しながら操作した。硝酸カリウムを添加後、内温を35℃に昇温して2時間30分攪拌し、室温に冷却した。反応液を氷にあけ、生成物を酢酸エチルで抽出した。この酢酸エチル溶液を水で2回洗浄し、次いで飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。この溶液をHPLCで定量分析したところ、目的の1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンの収率は41%であった。
【0042】
実施例9 (1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンの製造)(90%硝酸使用)
【化11】


30質量%発煙硫酸5.6mLを5℃に冷却し、そこへ90%硝酸1.05g(硝酸として15mmol)を少量ずつ添加した。添加後、室温に昇温して5分攪拌した後、1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロベンゼン2.71g(10mmol)を加えた。次いで反応液を35℃に昇温して1時間30分、続いて45℃で30分攪拌した後、室温に冷却した。反応液を氷にあけ、生成物を酢酸エチルで抽出した。この酢酸エチル溶液を水で2回洗浄し、次いで飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。得られた粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した結果、目的の1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンが2.91g(9.18mmol)、収率92%で得られた。
【0043】
実施例10 (1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンの製造)
【化12】


30質量%発煙硫酸8mlを5℃に冷却し、そこへ65%硝酸1.45g(硝酸として15mmol)を少量ずつ添加した。添加後、室温に昇温して5分間攪拌し、次いで1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロベンゼン2.71g(10mmol)を加えた。反応液を35℃に昇温して1時間30分攪拌した後、室温に冷却し、反応液を氷に注ぎ、生成物を酢酸エチルで抽出した。この酢酸エチル溶液を水で2回洗浄し、さらに飽和重曹水、飽和食塩水でそれぞれ洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過で取り除いた後、溶液をHPLCで定量分析したところ、目的の1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンの反応収率は94%であった。
【0044】
実施例11 (2,3−ジクロロ−5,6−ジフルオロアニリンの製造)
1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼン1.141g(5.00mmol)をエタノール5mLおよび水2.5mLの混合溶液に溶解させ、鉄粉0.8458g(15.15mmol)および塩化カルシウム0.5557g(5.01mmol)を加えた。これを60℃に加温して1.3時間撹拌した。ろ別して得られたろ液を減圧濃縮し、1.11gの茶色アモルファス状の粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、2,3−ジクロロ−5,6−ジフルオロアニリンの橙色油状物0.85g(収率86%)を得た。
2,3−ジクロロ−5,6−ジフルオロアニリン:
1H-NMR (400MHz, CDCl3) : δ 6.70(dd,1H), 4.36(brs,2H)
【0045】
実施例12 (2,3−ジブロモ−5,6−ジフルオロアニリンの製造)
1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼン1.57g(4.95mmol)をエタノール5mLおよび水2.5mLの混合溶液に溶解させ、鉄粉0.85g(15.2mmol)と塩化カルシウム0.54g(4.87mmol)を加えた。これを55℃に加温して3.2時間撹拌した。ろ別して得られたろ液を減圧濃縮した。該濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、2,3−ジブロモ−5,6−ジフルオロアニリンの肌色結晶1.25g(収率88%)を得た。
2,3−ジブロモ−5,6−ジフルオロアニリン:
1H-NMR(400MHz, CDCl3): δ 6.91(dd,1H), 4.45(brs,2H)
【0046】
実施例13 (3−ブロモ−2−クロロ−5,6−ジフルオロアニリンおよび2−ブロモ−3−クロロ−5,6−ジフルオロアニリンの混合物の製造)
1−ブロモ−2−クロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンおよび2−ブロモ−1−クロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンの混合物(モル比6:4)0.818g(3.00mmol)をエタノール3mL、水1.5mLに溶解させ、鉄粉0.517g(9.26mmol)と塩化カルシウム0.335g(3.02mmol)を添加した。これを60℃に加温して1.7時間撹拌した。ろ別して得られたろ液を減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。3−ブロモ−2−クロロ−5,6−ジフルオロアニリンおよび2−ブロモ−3−クロロ−5,6−ジフルオロアニリンの混合物(モル比6:4)の肌色結晶0.56g(収率77%)を得た。
3−ブロモ−2−クロロ−5,6−ジフルオロアニリン:
1H-NMR(400 MHz, CDCl3) : δ 6.73(dd,1H)
2−ブロモ−3−クロロ−5,6−ジフルオロアニリン:
1H-NMR(400MHz, CDCl3) : δ 6.85(dd,1H)
【0047】
実施例14 (2,3−ジフルオロアニリンの製造)
2,3−ジブロモ−5,6−ジフルオロアニリン0.506g(1.76mmol)をメタノール3.5mLに溶解させ、10%Pd/C(50%wet)35.6mgおよびトリエチルアミン0.722g(7.05mmol)を加えた。反応容器内を水素置換し、水素微圧下、50℃で3時間反応させた。その後、触媒をろ別した。得られたろ液をHPLCで定量分析した。2,3−ジフルオロアニリンの収率は98%であった。
【0048】
実施例15 (2,3−ジフルオロアニリンの製造)
1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼン1.147g(5.03mmol)をメタノール10mLに溶解させ、10%Pd/C(50%wet)100mgおよびトリエチルアミン2.02g(20.0mmol)を加えた。反応容器内を水素置換し、水素微圧下、45℃で2.8時間反応させた。この反応生成物をHPLCで分析したところ中間体の2,3−ジクロロ−5,6−ジフルオロアニリンが17.4area%残存していた。更に同じ条件で1.4時間反応させた。その後、触媒をろ別した。得られたろ液をHPLCで定量分析した。2,3−ジフルオロアニリンの収率は62%であった。中間体の2,3−ジクロロ−5,6−ジフルオロアニリンが6.4area%残存していた。
【0049】
実施例16 (2,3−ジフルオロアニリンの製造)
1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼン0.638g(2.01mmol)をメタノール4mLに溶解させ、10%Pd/C(50%wet)48.4mgおよびトリエチルアミン6.2mg(0.06mmol)を加えた。反応容器内を水素置換し、水素微圧下、50℃で2時間反応させた。この反応生成物をHPLCで分析したところ中間体の2,3−ジブロモ−5,6−ジフルオロアニリンが2.2area%残存していた。更に同じ条件で0.5時間反応させた。その後、触媒をろ別した。得られたろ液をHPLCで定量分析した。2,3−ジフルオロアニリンの収率は93%であった。中間体の2,3−ジブロモ−5,6−ジフルオロアニリンは消失していた。
【0050】
実施例17 (2,3−ジフルオロアニリンの製造)
1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼン1.583g(5.00mmol)をメタノール10mLに溶解させ、10%Pd/C(50%wet)100mgおよびトリエチルアミン2.03g(20.1mmol)を添加した。反応器内を水素置換し、水素微圧下、40℃で7時間反応させた。その後、触媒をろ別した。得られたろ液をHPLCで定量分析した。目的の2,3−ジフルオロアニリンの収率は86%であった。中間体の2,3−ジブロモ−5,6−ジフルオロアニリンは消失していた。
【0051】
実施例18 (2,3−ジフルオロアニリンの製造)
1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼン0.953g(4.19mmol)をメタノール10mLに溶解させ、10%Pd/C(47.40%wet)115.7mgおよびトリエチルアミン2.02g(20.0mmol)を添加した。反応器内を水素置換し、水素微圧下、40℃で2.0時間反応させた。その後、HPLCで分析したところ原料の1,2−ジクロロ−4,5−ジフルオロ−3−ニトロベンゼンが消失していた。更に同条件で0.7時間反応させた。その後、触媒をろ別した。得られたろ液をHPLCで定量分析した。2,3−ジフルオロアニリンの収率は52.4%であった。中間体の2,3−ジクロロ−5,6−ジフルオロアニリンが7.27area%残存していた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係るハロゲン化アニリンおよびハロゲン化ニトロベンゼンは、2,3−ジフルオロアニリンの製造中間体として有用である。さらに、2,3−ジフルオロアニリンは、2−[2−フルオロ−6−(7,8−ジフルオロ−2−メチルキノリン−3−イルオキシ)フェニル]プロパン−2−オール、および2−[2−フルオロ−6−(7,8−ジフルオロキノリン−3−イルオキシ)フェニル]プロパン−2−オールなどの農園芸用殺菌剤の有効成分の製造中間体として有用である。