特許第5965627号(P5965627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965627
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】酸素消費電極およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/04 20060101AFI20160728BHJP
   C25B 11/03 20060101ALI20160728BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20160728BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20160728BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20160728BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20160728BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20160728BHJP
   C25B 11/08 20060101ALI20160728BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C25B11/04 Z
   C25B11/03
   B01J23/50 M
   H01M4/86 B
   H01M4/86 M
   H01M4/90 B
   H01M4/88 K
   H01M12/06 F
   C25B11/08 Z
   C25B9/00 E
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-264916(P2011-264916)
(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公開番号】特開2012-122137(P2012-122137A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2014年11月27日
(31)【優先権主張番号】10 2010 062 421.7
(32)【優先日】2010年12月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ブラン
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・キントルプ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー・アイデン
【審査官】 宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−027267(JP,A)
【文献】 国際公開第1999/27597(WO,A1)
【文献】 国際公開第1999/27596(WO,A1)
【文献】 特開平06−031744(JP,A)
【文献】 特開2006−328534(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/093353(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/102331(WO,A1)
【文献】 特開2006−219694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 − 9/20
C25B 11/00 − 11/18
C25B 13/00 − 15/08
H01M 4/86 − 4/98
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状構造の形態で少なくとも1つの担体要素、およびガス拡散層および触媒活性成分を含む被覆物を含んでなり、溶媒に可溶性のフルオロポリマーで更に被覆される酸素消費電極であって、溶媒に可溶性のフルオロポリマーが、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)または2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)および更なる少なくとも1つを含むコポリマーを含んでなる、酸素消費電極
【請求項2】
酸素消費電極が、溶媒に可溶性のフルオロポリマーにより、ガスに面する側において被覆される、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項3】
溶媒に可溶性のフルオロポリマーが、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)または2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)および少なくとも1つのパーフッ素化アルケン化合物をモノマーとして含むコポリマーを含んでなる、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項4】
溶媒に可溶性のフルオロポリマーが、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)または2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)および少なくとも1つのフッ素化オレフィンまたはフッ素化ビニルエーテルをモノマーとして含むコポリマーを含んでなる、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項5】
溶媒に可溶性のフルオロポリマーが、2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)およびテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)からなる群から選択される少なくとも1つの更なるモノマーを含むコポリマーを含んでなる、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項6】
溶媒は、パーフッ素化炭化水素化合物またはパーフッ素化誘導体化炭化水素化合物またはこれらの化合物の混合物を含んでなる、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項7】
溶媒は、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)を含んでなる、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項8】
電極は、電極面積1平方メートル当たり1〜100gのフルオロポリマーで被覆される、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項9】
フルオロポリマー層の層厚みは、0.01〜100μmである、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項10】
触媒活性成分は、銀、酸化銀(I)または酸化銀(II)または銀および酸化銀の混合物を含んでなる、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項11】
酸素消費電極は、70〜95重量%の触媒活性成分としての酸化銀、0〜15重量%の銀金属粉末および3〜15重量%の不溶性フッ素化ポリマーを含む混合物を含んでなる、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項12】
ガス拡散層は、不溶性フッ素化ポリマーを含んでなる、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項13】
担体要素は、柔軟織物構造を有する、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項14】
担体要素は、金属糸からできた柔軟織物構造を有する、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項15】
フルオロポリマーの溶液を、シート状構造の形態で少なくとも1つの担体要素およびガス拡散層および触媒活性成分を有する被覆物を含む酸素消費電極上へ塗布または噴霧する工程、および次いで溶媒を蒸発により除去する工程を含んでなる、請求項1に記載の酸素消費電極の製造方法。
【請求項16】
請求項1に記載の酸素消費電極を含む電解装置における酸素消費カソードまたはアルカリ燃料電池における電極または金属/空気電池における電極。
【請求項17】
酸素消費カソードとしての、請求項1に記載の酸素消費電極を含んでなる電解装置。
【請求項18】
損傷または使用した酸素消費電極を修繕、封止または改良するための方法であって、該酸素消費電極を、溶媒に可溶性のフルオロポリマーを含む化合物で被覆する工程を含んでなる、前記方法であって、溶媒に可溶性のフルオロポリマーが、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)または2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)および更なる少なくとも1つを含むコポリマーを含んでなる、前記方法
【請求項19】
溶媒に可溶性のフルオロポリマーは、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)または2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)およびパーフッ素化アルケン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの更なるモノマーから構成されるコポリマーを含んでなる、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にクロルアルカリ電解において用いるための、被覆物の新規な型を有する酸素消費電極および電解装置に関する。さらに、本発明は、酸素消費電極の製造方法およびクロルアルカリ電解中でのその使用または燃料電池技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、シート状ガス拡散電極として配置され、および電気伝導性支持体および触媒活性成分を有するガス拡散層を通常含むそれ自体既知の酸素消費電極から発展する。
【0003】
酸素消費電極を工業規模の電解セル中において操作するための種々の提案が、先行技術から原理上知られている。基本的な考えは、電解(例えばクロルアルカリ電解中)の水素発生カソードを、酸素消費電極(カソード)に置き換えることである。可能なセル設計および解決策の概説は、Moussallem等による出版物、「Chlor−Alkali Electrolysis with Oxygen Depolarized Cathodes: History, Present Status and Future Prospects」、J.Appl.Electrochem、第38巻、(2008年)、第1177〜1194頁に見出し得る。
【0004】
酸素消費電極(以下、略して、OCEとも称する)は、工業的電解槽において使用されるために一連の要件を充足しなければならない。従って、触媒および用いる全ての他の材料が、約32重量%の濃度を有する水酸化ナトリウム溶液および典型的には80〜90℃の温度において、純酸素について化学的安定性でなければならない。また、高度の機械的安定性が、通常、2m(工業規模)を越える面積の大きさを有する電解槽中に設置および操作される電極に要求される。更なる特性は、以下の通りである:高い電気伝導性、小さい層厚み、大きい内部表面積および電解触媒の高い電気化学活性。また、適当な疎水性および親水性細孔およびガスおよび電解液を導くために適切な細孔構造が、ガス空間および液体空間が互いに分離された状態を維持し、漏れがないように必要である。長期安定性および低い製造コストは、工業的に使用可能な酸素消費電極が満たさなければならない更なる特定の要件である。
【0005】
多くの化合物が、酸素の還元のための触媒として記載されている。しかしながら、アルカリ溶液中における酸素の還元のための触媒としての実際的重要性は、プラチナおよび銀からのみ得られている。
【0006】
プラチナは、酸素の還元のための極めて高い触媒活性を有する。プラチナの高いコストに起因して、専ら担持形態でのみ使用される。しかしながら、炭素担持プラチナ電極の抵抗は、長期間の操作において、担体材料の酸化もおそらくプラチナにより触媒されるので不十分である。また、炭素は、Hの望ましくない形成を促進する。
【0007】
銀もまた、酸素の還元のための高い触媒活性を有する。
【0008】
炭素担持銀触媒は、相当するプラチナ触媒より耐久性を有するが、酸素消費電極における条件下での長期安定性は、特にクロルアルカリ電解に用いる場合、制限される。従って、銀触媒は、非担持形態で好ましく用いる。
【0009】
非担持銀触媒を有するOCEの製造では、銀は、後に金属銀へ還元される酸化銀の形態で少なくとも部分的に導入することができる。還元は、銀化合物の還元のための一般的な条件である電解の開始の間に、または、好ましくは電気化学方法により別個の工程において行われる。
【0010】
非担持銀触媒を有する酸素消費電極の製造は、原理上、乾燥製造工程および湿潤製造工程の間で区別される。
【0011】
乾燥法では、触媒およびポリマー成分の混合物は、急速操作撹拌器を有するミキサーにより処理して、電気伝導性支持体要素へ適用され、室温で圧縮される。このような方法は、EP1728896A2に記載されている。EP1728896に記載の中間体は、3〜15部のPTFE、70〜95部の銀酸化物および0〜15部の銀金属粉末から構成される。
【0012】
湿潤製造工程では、微細銀粒子およびポリマー成分を含有するペーストまたは懸濁液の形態での中間体を用いる。水が懸濁液媒体として一般的に用いられるが、他の液体、例えばアルコールまたはこれらと水との混合物を用いることもできる。ペーストまたは懸濁液の製造では、表面活性物質が、ペーストまたは懸濁液の安定性を増加させるために添加される。ペーストは、スクリーン印刷法またはカレンダー法により担体要素へ適用されるが、より低い粘度の懸濁液が通常、担体要素へ噴霧される。乾燥後、焼結を、ポリマーの融点の領域における温度において行う。ここでは、添加した補助剤、例えば乳化剤または増粘剤等が取り除かれる。このような方法は、例えばUS20060175195A1に記載されている。中間体におけるPTFEと銀の割合は、乾燥法において通常の割合に相当する。
【0013】
OCEは、通常、電解質およびガス空間を分離し、および触媒を含有する電気伝導性層を有するが、電気伝導性層中または電気伝導性層上で電気化学反応が起こり、例えば酸素の還元が電解質、触媒および反応ガスの3相境界において起こる。境界層は、通常、OCEにおいて、OCE上の電解質の静水圧に対して疎水性電極材料上での電解質の表面張力により維持される。しかしながら、小さい圧力損失のみが、ガス側および液体側の間で許容される。ガス側の圧力があまりに高い場合には、ガスがOCEより突然発生し、OCEの機能はこの領域において破壊され、電解工程は中断される。他方では、液体圧があまりに高すぎる場合には、3相境界は、OCEにおける触媒を含む領域から押し出され、OCEの機能を同様に妨げ、および圧力が上昇した場合、電解質のガス空間中への液体突破が更に起こる。例えば膜電解の場合に目標生成物塩素を有利に放出させるために必要とされる垂直電極配置の場合には、ガス拡散電極の構築物高さは制限されるが、制限されない場合、ガスは、OCEにおいてカソード空間中へ頂上において押し出され、電解質は、底部においてガス空間中へ押し出される。従って、工業的に実現可能な構築物高さは、圧力補正についての解決策が見出され、および工業的に複雑な構築物において実施される必要があるので、工業膜電解にとって不十分な約20〜30cmへ制限される。
【0014】
DE19622744C1は、電気化学半セルを記載するが、ガス空間は、2以上の重ねられたガスポケットへ分割され、およびガスは、該ガスポケット中へまたはガスポケットから別個の開口より供給または放出され、電極のガス側上における圧力と比較した電極の電解質側上での圧力は、ガスポケットにおける電解質への開口によりかなり相殺される。こうして、1メートルを超える高さを有するガス拡散電極を有する半セルを実現するこができる。しかしながら、構築物は、極めて複雑であり、従来法による装置に容易に設置することができない。
【0015】
WO0157290A1は、液体がOCEに沿ったパーコレーターより運ばれる半セルを記載する。この配置では、液体カラムは、OCEの液体側で作用し、圧力プロファイルは、セルの構築物高さを超えて構成されない。しかしながら、WO0157290A1に記載の構築物は、極めて複雑である。アルカリの均一な流れを確保し、およびOCEへの陰極液の均一な供給を確保するために、パーコレーター、イオン交換膜およびOCEは、極めて正確に配置および設置されなければならない。
【0016】
突発的なガスおよびOCEからの液体突破を防止する更なる可能な方法は、ガス側において疎水性層を有するOCEを供給することである。疎水性層は、熱および圧力によりOCEへ結合される。このようなOCEは、名称ESNS(商標)としてE−TEKにより販売される。(Frederico、MartinelliおよびPinter、Modern Chlor−Alkali Technology、第8巻、Blackwell Science、オックスフォード参照)。
【0017】
しかしながら、これらの電極は、疎水性層が、OCEへの低い接着性を示す欠点を有し、従って、疎水性層におけるクラックおよび比較的長期操作における層間剥離が電気分解の間に容易に起こり得る。従って、これらの電極は、実際の操作について不適切である。
【0018】
大きい構築物高さを得るための更なる実施態様は、「ゼロギャップ」配置である。この場合、OCEは、イオン交換膜上に直接置かれる。また、この配置は通常、燃料電池技術に用いられる。ここでは、水酸化ナトリウム溶液が、OCEより気体側へ排出され、そこで流れ落ちる。欠点は、形成される水酸化ナトリウム溶液がOCEよりガス側へと運ばれなければならず、工程において細孔系を詰まらせ、次いでOCEに沿って下へ流れることである。OCEのガス部位上で流れ落ちることにより、水酸化ナトリウム溶液の液体皮膜が形成され、例えば細孔における液体の蓄積により、または水酸化ナトリウムの細孔における結晶化により、OCEの細孔を詰まらせることがある。さらに、下降へ流れ落ちる液体フィルムにより、酸素(反応ガス)の物質移動が妨げられる。さらに、極めて高い水酸化ナトリウム濃度がゼロギャップ配置において形成され、およびイオン交換膜がこの高い濃度に対して長期の間安定性ではないことが見出されている(Lipp等、J.Appl.Electrochem.第35巻、(2005年)第1015頁、Los Alamos National Laboratory、「Peroxide formation during chlor−alkali electrolysis with carbon−based ODC」)。
【0019】
従って、大きい構築物高さを有する酸素消費電極を製造するための予め知られている技術は、実現可能性および長期操作の間の安定性について大きな弱点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】欧州特許出願第1728896号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20060175195号明細書
【特許文献3】独国特許第19622744号明細書
【特許文献4】国際公開第0157290号パンフレット
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Moussallem、「Chlor−Alkali Electrolysis with Oxygen Depolarized Cathodes: History, Present Status and Future Prospects」、J.Appl.Electrochem、第38巻、2008年、第1177〜1194頁
【非特許文献2】Frederico、MartinelliおよびPinter、「Modern Chlor−Alkali Technology」、第8巻、Blackwell Science、オックスフォード
【非特許文献3】Lipp、「Peroxide formation during chlor−alkali electrolysis with carbon−based ODC」、J.Appl.Electrochem、第35巻、2005年、第1015頁、Los Alamos National Laboratory
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、特にクロルアルカリ電解において用いるための、上記欠点を解消し、大きな構築物高さでの操作を可能とする酸素消費電極を提供することである。
【0023】
本発明の特定の目的は、既知の構築物の欠点を避け、問題なく既存の膜電解中に設置することができ、長い操作寿命を有するOCEを提供することである。更なる本発明の目的は、漏出を形成するか、またはその性能が不十分であるかもしくは不十分となる既存の酸素消費電極を改良または修繕する簡単な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の目的は、フルオロポリマー層を、例えばOCCのガス側に面するOCEの側面へ、蒸発により除去することができる溶媒中の溶液の形態で適用して、それ自体既知の酸素消費電極(OCE)にフルオロポリマーの層を付与することにより達成される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施態様は、シート状構造の形態で少なくとも1つの担体要素、およびガス拡散層および触媒活性成分を含む被覆物を含む酸素消費電極を提供し、該酸素消費電極は、溶媒に可溶性であるフルオロポリマーで更に被覆する。
【0026】
本発明の他の実施態様は、酸素消費電極が、ガスに面する側において、溶媒に可溶性のフルオロポリマーにより被覆される、上記酸素消費電極である。
【0027】
本発明の他の実施態様は、溶媒に可溶性のフルオロポリマーが、パーハロ−2,2−アルキル−1,3−ジオキソールおよび少なくとも1つのパーフッ素化アルケン化合物をモノマーとして含むコポリマーを含む、上記酸素消費電極である。
【0028】
本発明の他の実施態様は、溶媒に可溶性のフルオロポリマーが、パーフルオロ−2,2−アルキル−1,3−ジオキソールおよび少なくとも1つのフッ素化オレフィンまたはフッ素化ビニルエーテルをモノマーとして含むコポリマーを含む、上記酸素消費電極である。
【0029】
本発明の他の実施態様は、溶媒に可溶性のフルオロポリマーが、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)または2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)および更なる少なくとも1つを含むコポリマーを含む、上記酸素消費電極である。
【0030】
本発明の他の実施態様は、溶媒に可溶性のフルオロポリマーが、2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)およびテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)からなる群から選択される少なくとも1つの更なるモノマーを含むコポリマーを含む、上記酸素消費電極である。
【0031】
本発明の他の実施態様は、溶媒が、パーフッ素化炭化水素化合物またはパーフッ素化誘導体化炭化水素化合物またはこれらの化合物の混合物を含む、上記酸素消費電極である。
【0032】
本発明の他の実施態様は、溶媒がパーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)を含む、上記酸素消費電極である。
【0033】
本発明の他の実施態様は、電極が、電極面積1平方メートル当たり1〜100gのフルオロポリマーで被覆される、上記酸素消費電極である。
【0034】
本発明の他の実施態様は、フルオロポリマー層の層厚みが0.01〜100μmである、上記酸素消費電極である。
【0035】
本発明の他の実施態様では、触媒活性成分は、銀、酸化銀(I)または酸化銀(II)または銀および酸化銀の混合物を含む、上記酸素消費電極である。
【0036】
本発明の他の実施態様は、酸素消費電極が、70〜95重量%の触媒活性成分としての酸化銀、0〜15重量%の銀金属粉末および3〜15重量%の不溶性フッ素化ポリマーを含む混合物を含む、上記酸素消費電極である。
【0037】
本発明の他の実施態様は、ガス拡散層が不溶性フッ素化ポリマーを含む、上記酸素消費電極である。
【0038】
本発明の他の実施態様は、担体要素が柔軟織物構造を有する、上記酸素消費電極である。
【0039】
本発明の他の実施態様は、担体要素が金属糸からできた柔軟織物構造を有する、上記酸素消費電極である。
【0040】
本発明の他の実施態様は、フルオロポリマーの溶液を、シート状構造の形態での少なくとも1つの担体要素およびガス拡散層および触媒活性成分を有する被覆物を含む酸素消費電極上へ塗布または噴霧する工程、および次いで溶媒を蒸発により除去する工程を含む、上記酸素消費電極の製造方法を提供する。
【0041】
本発明の他の実施態様は、上記酸素消費電極を含む電解装置における酸素消費カソードまたはアルカリ燃料電池における電極または金属/空気電池における電極を提供する。
【0042】
本発明の他の方法は、酸素消費カソードとしての上記酸素消費電極を含む電解装置を提供する。
【0043】
本発明の他の実施態様は、損傷したまたは使用した酸素消費電極を修繕、封止または改良するための、該酸素消費電極を、溶媒に可溶性のフルオロポリマーを含む化合物で被覆する工程を含む方法である。
【0044】
本発明の他の実施態様は、溶媒に可溶性のフルオロポリマーが、パーハロ−2,2−アルキル−1,3−ジオキソールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物およびパーフッ素化アルケン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの更なるモノマーから構成されるコポリマーを含む、上記方法である。
【0045】
本明細書において、単数形の用語「1つの(a)」および「その(the)」は、言葉および/または内容が特に示さない限り同義であって、「1以上の(one or more)」および「少なくとも1つの(at least one)」と互換的に使用する。従って、例えば、本明細書または添付の特許請求の範囲において「1つの化合物(a monomer)」と称することは、単一の化合物または1より多い化合物を指称し得る。さらに、全ての数値は、特記のない限り、単語「約」により修飾されると理解される。
【0046】
本発明の実施態様では、シート状構造の形態で少なくとも1つの担体およびガス拡散層および触媒活性成分を含む被覆物を有し、溶媒に可溶性のフルオロポリマーで更に被覆されることを特徴とする、酸素消費電極を提供する。
【0047】
好ましいのは、酸素消費電極が、溶媒に可溶性のフルオロポリマーにより、ガス、特に酸素含有ガスに面する側において被覆された新規な酸素消費電極である。ガスに面するOCEの側面は、例えば電解槽中での設置後、電解に必要な酸素含有ガスが存在するガス空間の壁を形成する。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような従来法によるフルオロポリマーは、溶媒に可溶性ではない。しかしながら、多くのフッ素化コポリマーおよび一連のフッ素化溶媒に可溶性の特定のモノマー構成成分を有するターポリマーが存在する。これらは好ましく用いる。特定のモノマーは、まず、パーハロ−2,2−アルキル−1,3−ジオキソール、特に2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)およびパーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)である。これらのモノマーは、更なるフッ素化モノマー、例えばテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)および他のフッ素化オレフィンまたはフッ素化ビニルエーテル等と反応させてコポリマーまたはターポリマーを形成する。
【0048】
上記PDDホモポリマーのガラス転移温度(TG)は、例えば335℃である。コポリマーまたはターポリマーは、より低いガラス転移温度を有し、ガラス転移温度は、通常、コモノマー含有量に応じて減少する。約11.2モル%のPDD含有量を有するPDDおよびTFEのモノマーは、57℃のTGを有し、約56.9モル%のPDD含有量を有するコポリマーは、119℃のTGを有し、約90モル%のPDD含有量を有するコポリマーは、260℃のTGを有する。好ましいのは、それぞれの使用温度において非晶質であるコポリマーである。
【0049】
パーハロ−2,2−アルキル−1,3−ジオキソール、特に2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)およびパーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)を含有する上記コポリマーおよびターポリマーは、フッ素化溶媒に可溶性である。活性溶解剤として適当なフッ素化溶媒は、例えばパーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)(FC−75)、N(C4F9)3(FC 40)、パーフッ素化炭化水素(FC−72)パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロベンゼンおよびパーフルオロデカリンまたはこれらの混合物である。溶解性は、いずれの場合にも、ポリマーおよび溶媒の組成物により決定される。1重量%〜約20重量%の溶解性が記載されている。
【0050】
従って、好ましいのは、可溶性フルオロポリマーが、パーハロ−2,2−アルキル−1,3−ジオキソールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物、とりわけパーフルオロ−2,2−アルキル−1,3−ジオキソール、好ましくはパーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)または2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)、特に好ましくは2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)、およびパーフッ素化アルケン化合物からなる群から選択される少なくとも1つのモノマー、好ましくはフッ素化オレフィンまたはフッ素化ビニルエーテル、とりわけテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンまたはパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)から構成されるコポリマーであることを特徴とする、新規な酸素消費電極である。
【0051】
DuPont companyは、2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)およびテトラフルオロエチレンの特定のコポリマーを、商品名Teflon AF 1600(約35%のTFE/約65%のPDDの割合および160℃のTGを有する)およびTeflon Af 2400(約13%のTFE/約87%のPDDの割合および240℃のTGを有する)で樹脂としてならびにパーフッ素化溶媒中の溶液として販売する。更なるコポリマー、Teflon AF 1601は、同一のモノマー組成、ガラス転移温度およびTeflon AF 1601より高い溶解性を有するが、平均分子量はより低い。これらの選択された可溶性フルオロポリマーは、OCEにおいて極めて特に好ましい。
【0052】
揮発性溶媒におけるポリマーの溶液は、OCEの被覆のためにそれ自体既知の方法において用いることができる。
【0053】
揮発性溶媒中のポリマーの上記溶液による被覆は、1μm以下の極めて薄い被覆物を製造することを可能とする。しかしながら、100μm以上のより大きい層厚みを製造することもできる。代替被覆および溶媒の蒸発は、特に高い層厚みを製造することを可能とする。クラックおよび応力を有さない均質な層を得るために、溶媒は、好ましくは、内部応力を有さない均一な皮膜を形成するように溶媒の均一な蒸発により除去すべきである。コポリマーを含有するPDDから構成される皮膜および被覆物は、通常、高いガス透過性を有する。
【0054】
US5326839は、原理上、皮膜および被覆物を製造するためのPDD含有コポリマーの使用を記載する。
【0055】
意外にも、酸素消費電極の耐久性被覆物は、フルオロポリマーの溶液により製造することができること、およびこのような被覆物は、電解セル中での条件下、酸素消費電極を通過することができる水酸化ナトリウム溶液によるガス空間の望ましくない浸水を防止し、および第2に、比較的高い圧力でさえ酸素消費電極から水酸化ナトリウム側への酸素含有ガスの突破を防止することを見出した。
【0056】
被覆物に供給されるOCEは、それ自体既知の従来法により、例えば上記の湿潤製法または乾燥製法により製造される。
【0057】
フルオロポリマーによる被覆工程は、好ましくは、OCEの実際の製造に続く最後の製造工程として行われる。
【0058】
従って、例えば、EP1728896A2に記載の方法により製造されるOCEは、フルオロポリマー含有溶液により、ガス接触に供給される側において均一に被覆される。これは、既知の被覆技術、例えば刷毛、ローラー、ドクターブレードまたは他の道具等による塗布等によりまたはフルオロポリマー含有溶液のOCE上への直接噴霧法または注入法により行うことができる。
【0059】
被覆工程は、1つの操作により、または溶媒の少なくとも一部の中間除去を伴う複数の操作により行うことができる。
【0060】
適用されるフルオロポリマーの量は、電極面積の1平方メートル当たり1〜100g、好ましくは1〜10gである。
【0061】
塗布溶液の乾燥および硬化は、被覆技術から既知の技術により行われる。好ましくは、蒸発溶媒を回収する、対流加熱器による乾燥である。乾燥工程は、更なる加熱により、例えば赤外放射器により促進させることができる。
【0062】
温度および空気流速は、ポリマーの特性および溶媒の特性に対応して、均一皮膜形成およびポリマーの固化が気泡またはクラック形成または変形を伴わずに生じるように選択する。
【0063】
とりわけ、溶媒は、1重量%未満、特に好ましくは0.05重量%未満の残存溶媒含有量にまで除去する。
【0064】
乾燥後の可溶性ポリマーから構成されるフルオロポリマー層の層厚みは、好ましくは0.01〜100μm、特に好ましくは0.1〜10μmである。
【0065】
フルオロポリマーとして、特に好ましいのは、2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)および1以上の更なるパーフッ素化モノマー、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレンまたはポリビニルフルオライド、好ましくはテトラフルオロエチレン等を含有するコポリマーまたはターポリマーを用いることである。対応する特に好ましいポリマーおよびその製造は、例えば特許US5276121、US5310838およびUS5354910、US5408020に記載される。
【0066】
用いる溶媒は、パーフッ素化炭化水素およびパーフッ素化誘導体化炭化水素、例えばパーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロベンゼン、パーフルオロデカリン等、パーフルオロトリアルキルアミン、例えばパーフルオロトリブチルアミン等、パーフッ素化ポリエーテル、好ましくはパーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、3M companyからの商品名Fluorinert(登録商標) FC−75である。
【0067】
ポリマーの濃度は、第1に理想的な高い濃度が得られ、第2に溶液が選択される被覆法により容易に処理することができるように選択される。最も高い可能な溶媒中のポリマーの濃度が求められる。しかしながら、フルオロポリマーの低い溶解性により、1リットル当たり数グラムの溶液だけが得られる。
【0068】
全ての既知の酸素消費電極に本発明による被覆物を付与することが原理上可能である。触媒を酸化銀の形態で製造中に付加する電極の場合には、被覆工程は、酸化銀の還元前または還元後に行うことができる。
【0069】
可溶性フルオロポリマーによる被覆は、銀、酸化銀(I)または酸化銀(II)または銀および酸化銀の混合物を触媒活性成分として有する酸素消費電極に好ましく用いる。
【0070】
特に好ましくは、新規な酸素消費電極は、触媒活性成分として、3〜15重量%の不溶性フッ素化ポリマー、とりわけPTFEと共に70〜95重量%の酸化銀、とりわけ酸化銀(I)、および0〜15重量%の銀金属粉末を含む混合物を含む。
【0071】
新規な酸素消費電極は、好ましくは、不溶性フッ素化ポリマー、とりわけポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をガス拡散層に含有する。
【0072】
担体要素は、原則として、メッシュ、不織布、フォーム、織物、紐、編物、エキスパンドメタルまたは他の透過性シート状構造の形態に用いることができる。好ましくは、柔軟性繊維構造、特に金属糸からできた柔軟性繊維構造を用いることである。ニッケルおよび銀めっきニッケルは、担体要素のための材料として特に適当である。
【0073】
従って、更なる好ましい新規な酸素消費電極の実施態様は、好ましくはニッケルおよび/または銀めっきニッケルから構成される柔軟性繊維構造、特に金属糸からできた柔軟性繊維構造を、担体要素として有することを特徴とする。
【0074】
新規な酸素消費電極は、カソードとして好ましく接続され、特にアルカリ金属塩化物、好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、特に好ましくは塩化ナトリウムの電解のための電解セル中において操作される。従って、本発明はまた、特にクロルアルカリ電解のための、新規な上記酸素消費電極を酸素消費カソードをとして含む電解装置を提供する。
【0075】
代替として、酸素消費電極は、燃料電池におけるカソードとして好ましく接続することができる。
【0076】
本発明は、さらに、アルカリ性媒体、特にアルカリ性燃料電池における酸素の還元のための、飲料水処理における使用のための、例えば次亜塩素酸ナトリウムの製造のための、またはクロルアルカリ電解における使用のための、特にLiCl、KClまたはNaClの電解のための、新規な酸素消費電極の使用を提供する。
【0077】
新規なOCEは、クロルアルカリ電解において、特に塩化ナトリウム(NaCl)電解において特に好ましく使用する。
【0078】
本発明の他の態様では、意外にも、それ自体既知の酸素消費電極は、溶媒に可溶性の上記のフルオロポリマーの使用により改良することができるか、またはガス透過性または液体透過性について向上させることができることを見出した。従って、本発明はまた、損傷したまたは使用した酸素消費電極を修繕、封止または改良するための、溶媒に可溶性のフルオロポリマーの使用を提供する。
【0079】
上記目的のための可溶性フルオロポリマーは、好ましくは、上記可溶性フルオロポリマーの1つ、特にパーハロ−2,2−アルキル−1,3−ジオキソールからなる群からの少なくとも1つの化合物、とりわけパーフルオロ−2,2−アルキル−1,3−ジオキソール、好ましくはパーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)または2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)、特に好ましくは2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソール(PDD)、およびパーフッ素化アルケン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの更なるモノマー、好ましくはフッ素化オレフィンまたはフッ素化ビニルエーテル、とりわけテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンまたはパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)から構成されるコポリマーである。
【0080】
本発明を実施例により以下に説明するが、これにより本発明は制限されない。
【実施例】
【0081】
7重量%のPTFE粉末、88重量%の酸化銀(I)および5重量%の銀粉末(Ferroからの型331)からなる3.5kgの粉末混合物を、星形撹拌器を混合要素として備えるEirichからのミキサー(モデルR02)中で6000rpmの回転速度にて、粉末混合物の温度が55℃を越えないように混合した。これは、混合操作を中断し、混合物を冷ますことにより行った。混合は、合計6回行った。混合後、完成粉末混合物を、1.0mmのメッシュ開口を有するふるいによりふるい分けした。
【0082】
次いで、ふるい分けした粉末混合物を、0.2mmのワイヤー厚みおよび0.5mmのメッシュ開口を有するニッケルワイヤーメッシュへ適用した。適用は、2mm厚テンプレートを用いて行い、粉末を、1mmのメッシュ開口を有するふるいを用いて適用した。テンプレートの厚みを越えて突出した過剰の粉末は、スクレーパーを用いて取り除いた。テンプレートを取り除いた後、適用した粉末混合物を有する支持体を、ローラープレスにより0.5kN/cmの押圧を用いてプレスした。既成のガス拡散電極を、ローラープレスから取り出した。
【0083】
既成のガス拡散電極は、担体要素の側において50gのFC−75(パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン))中のTeflon AF 1600の1重量%濃度溶液で噴霧した(9.5gの固体/mに対応する充填)。溶媒は、60℃において2時間乾燥オーブン中で加熱することにより除去した。
【0084】
このようにして製造した酸素消費電極を、DuPONT N982WXイオン交換膜および3mmの酸素消費電極および膜間の水酸化ナトリウムギャップを有する電解セルにおいて塩化ナトリウム溶液の電解に用いた。水酸化ナトリウムギャップは、水酸化ナトリウム溶液で完全に浸水させた。120ミリバールのゲージ圧を、アルカリギャップにおいて設定し、酸素の10ミリバールのゲージ圧(周囲圧力に対して)を、酸素消費カソードのガス側において設定した。4kA/mの電流密度、90℃の電解質温度および32重量%の水酸化ナトリウム濃度でのセル電圧は、2.1Vであった。電解は、この条件下で100日間、望ましくない液体の突破または電極からのガスを生じさせることなく行った。
【0085】
広範な本発明の概念から逸脱することなく、上記の実施形態に対して変更を加えることができることは当業者に明らかであろう。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神および範囲内での変更に及ぶことが意図される。