(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の第1実施形態である生理用ナプキン1(以下、単にナプキン1ともいう)は、
図1及び
図2に示すように、肌当接面を形成する表面シート2、非肌当接面を形成する裏面シート3及びこれら両シート2,3間に位置する縦長の吸収体4を具備する。また、ナプキン1は、着用時に着用者の液排泄部(膣口等)に対向する排泄部対向部Aと、該排泄部対向部Aの前後に延在する前方部B及び後方部Cとを有する。ナプキン1の着用時には、前方部Bが着用者の前(腹)側に配され、後方部Cが着用者の後(背)側に配される。なお、肌当接面は、吸収性物品における、着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、吸収性物品における、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。
【0011】
表面シート2は、
図1及び
図2に示すように、吸収体4の肌当接面P側を被覆しており、液透過性である。裏面シート3は、吸収体4の非肌当接面Q側を被覆しており、液不透過性(難透過性も含む概念)である。表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の周縁部から外方に延出した部分において互いに接合されている。また、本実施形態のナプキン1は、排泄部対向部Aにおける左右両側にウイング部8,8を有し、該ウイング部8及びウイング8,8間の本体部分7の裏面に、それぞれを、ショーツのクロッチ部に固定するための粘着部(図示略)が設けられている。
【0012】
本実施形態のナプキン1における吸収体4は、
図1に示すように、着用時における着用者の前後方向と同方向(図中X方向)に長い形状を有している。
本実施形態における吸収体4は、
図1及び
図2に示すように、下部吸収体4Bと、下部吸収体4Bの肌当接面側に配された上部吸収体4Aとを有している。
本実施形態のナプキン1における上部吸収体4A及び下部吸収体4Bは、何れも、平板状の吸収性シートからなる。
下部吸収体4Bを構成する吸収性シート50は、折り畳まれずに、平板状の形態を維持したまま、ナプキン1内に配されている。ナプキン1の平面視において、下部吸収体4Bの輪郭は吸収体4の輪郭と一致している。
【0013】
他方、上部吸収体4Aは、
図1及び
図2に示すように、吸収体4の長手方向Xの両側それぞれに、上部吸収体4Aを構成する吸収性シート40が、3層以上に折り重ねられている重層部41,41を有し、一対の該重層部41,41どうし間における表面シート2側に凹部42が形成されている。重層部41は、吸収性シート40が折り重ねられて3層以上をなしている部分である。
【0014】
より具体的に説明すると、本実施形態のナプキン1の上部吸収体4Aにおいては、
図3に示すように、上部吸収体4Aを構成する吸収性シート40は、吸収体4の長手方向Xの両側それぞれに、吸収体4の幅方向内方に向けて折り返されている内向き折曲部43と、吸収体4の幅方向外方に向けて折り返されている外向き折曲部44とを有しており、外向き折曲部44は、内向き折曲部43より幅方向内側(長手方向中央線CL側)に位置している。
内向き折曲部43は、吸収体4を構成する吸収性シート40が、吸収体4の幅方向に折り曲げられている折曲部であって、該折曲部の両側に位置する部分が、該折曲部より吸収体の幅方向内方側(長手方向中央線CL側)に位置する折曲部である。外向き折曲部44は、吸収体4を構成する吸収性シート40が吸収体4の幅方向に折り曲げられている折曲部であって、該折曲部の両側に位置する部分が、該折曲部より吸収体の幅方向外方側に位置する折曲部である。
【0015】
また、上部吸収体4Aを構成する吸収性シート40が、このように折り畳まれていることによって、上部吸収体4Aには、一対の内向き折曲部43間を構成する基底層45と、吸収体4の長手方向Xの両側それぞれにおいて、内向き折曲部43と外向き折曲部44との間を構成する中間層46と、吸収体4の長手方向Xの両側それぞれにおいて、外向き折曲部44と上部吸収体4Aを構成する吸収性シートの側端部40sとの間を構成する最上層47とが形成されている。
本実施形態のナプキン1における重層部41は、基底層45における中間層46が重なっている部分と、中間層46と、該中間層46と重なっている最上層47とからなる。吸収性シート40は、吸収体4の長手方向の両側それぞれに、重層部41よりも更に延出した部分47bを有している。
【0016】
図2に示すように、一対の前記重層部41は、吸収体4の長手方向の両側それぞれに、相互間に間隔を設けて形成されている。具体的には、外向き折曲部44,44は、吸収体4の幅方向Yにおいて離間しており、一対の重層部41,41どうし間における表面シート2側に凹部42が形成されている。したがって、一対の重層部41,41どうしは接していない。
【0017】
下部吸収体4Bを構成する吸収性シート50は、
図2に示すように、上部吸収体4Aの基底層45と重なる部分と、該基底層45の両端それぞれから更に外方に延出する延出部分51とを有している。この延出部分51は、吸収体4の幅方向Yにおいて、上部吸収体4Aを構成する吸収性シートの側端部40sよりも更に外方まで延出している。これにより、下部吸収体4Bは、上部吸収体4Aより吸収体4の幅方向Yの長さが長く形成されている。延出部分51を有することで、重層部41を有する上部吸収体4Aで保持しきれなかった液や端部に移行した液を吸収し、漏れを防止することができる。
【0018】
また、重層部41,41のそれぞれは少なくとも1つの、相隣接する層間が接合されている。相隣接する層間とは、吸収体の厚み方向に積層されている層と層の間という意味である。
本実施形態のナプキン1の重層部41においては、
図2及び
図3に示すように、内向き折曲部43と外向き折曲部44との間を構成する中間層46と基底層45との間が、ホットメルト接着剤等の接着剤61によって接合されていると共に、最上層47、中間層46及び基底層45に一体的にエンボス加工が施されて、最上層47と中間層46との間及び中間層46と基底層45との間が接合されている。エンボス加工は、重層部41の層間を、吸収体4の平面方向において部分的に接合するものが好ましく、例えば、
図3に示すように、複数のエンボス部(エンボス加工による接合部)62が、吸収体4の長手方向Xに沿って間欠的に形成されるように行うことが好ましく、複数のエンボス部62が長手方向Xに直列配置されてなるエンボス部列が、吸収体4の幅方向Yに複数列形成されることが更に好ましい。このエンボス加工は、熱を加えない加圧のみのエンボス加工であっても良いが、加工搬送中での折り重ね状態の維持や使用時のフィット性の観点から、より接着力向上が期待できる熱融着も施す加熱エンボス加工やホットメルト等の接着剤であってもよい。
【0019】
また、本実施形態のナプキン1においては、
図2及び
図3に示すように、上部吸収体4Aを構成する吸収性シート40は、吸収体4の幅方向Yにおいて、吸収性シート40の内向き折曲部43の位置より外方に延出した部分47を有しており、吸収性シート40における、吸収体4の長手方向Xに沿う両側端部40sが、内向き折曲部43の位置より外方に位置している。内向き折曲部43の位置は、
図2に示すように、吸収体の幅方向Yにおける外方側の端部の位置とする。
【0020】
本実施形態のナプキン1によれば、吸収性シート40が3層以上に折り重ねられている重層部41を、吸収体4の長手方向の両側に有し、上部吸収体4Aにおける、吸収体の幅方向中央部付近の表面シート2側に凹部42が形成されているため、液が、表面シート2を通過して吸収体4にスムーズに移行する。
また、重層部41の隣接する層間が接合されていることによって、重層部41の層間に液が溜まることやその溜まった液が着用時に加わる圧力によって表面シート2に逆戻りすることを防止することもできる。
また、上部吸収体4Aを構成する吸収性シート40における、吸収体4の長手方向Xに沿う両側端部40sが、内向き折曲部43の位置より外方に位置しているため、吸収体やナプキンの側部からの液漏れ防止性能が向上し、フィット性の向上も期待できる。
なお、吸収性シート40が一対の重層部41を有することによる効果として、上部吸収体4Aに厚み差が設けられ、上部吸収体4Aが、一対の重層部41間の凹部において屈曲し易いことによって、フィット性が向上するという効果もある。
【0021】
このような作用の相乗効果によって、本実施形態のナプキン1によれば、液が吸収体4にスムーズに吸収され、着用中に液が吸収体4から表面シート2に逆戻りすることも効果的に防止される。そのため、例えば、液排泄部から多量の液(経血等)が排出された場合においても、液が表面シート2の上又は内部を拡散して液漏れが生じたり、表面シート2がべたついて着用者に不快感を与えたりすることが効果的に防止される。なお、このような効果は、最上層47の吸収体幅方向Y外方側の端部40sが内向き折曲部43の位置にある場合にも同様に奏される。
【0022】
上述した効果がより確実に奏されるようにする観点から、上部吸収体4Aを構成する吸収性シート40は、本実施形態のナプキン1のように、吸収体4の長手方向の両側が対称の形状となるように折り畳まれていることが好ましい(
図2参照)。
【0023】
上述した効果がより確実に奏されるようにする観点から、一対の前記重層部41どうし間の間隔L1(Y方向の離間距離、
図2参照)は、10〜40mmであることが好ましく、より好ましくは15〜35mmである。なお、前記間隔L1を、10mm未満、特に5mm以下とすることは、多量の排泄時等に間隔L1から排泄ポイントがずれてしまい効果が低減されるため好ましくはない。
【0024】
また、本実施形態のように、上部吸収体4Aを構成する吸収性シート40の両側部を、内向き折曲部43の位置より延出させる場合、内向き折曲部43の位置より延出する部分47の長さL2(
図2参照)は1〜40mmであることが好ましく、より好ましくは5〜30mmである。なお、吸収性シート40の吸収体の長手方向に沿う両側端部40sが内向き折曲部43の位置にあるという表現には、該端部40sと内向き折曲部43の位置との間の吸収体幅方向Yにおける離間距離が0.1mm以下の場合も含まれる。
【0025】
また、本実施形態のナプキン1においては、上部吸収体4Aの下に下部吸収体4Bが配されているため、上部吸収体4Aを構成する吸収性シートとして、厚みが薄く吸収容量があまり大きくないものを用いたとしても、吸収体4全体としての吸収容量を充分に大きいものとすることができる。
【0026】
また、本実施形態のナプキン1においては、
図2に示すように、一対の重層部41,41どうし間において、表面シート2と上部吸収体4Aの基底層45との間がエンボス加工によって接合されている。つまり、上部吸収体4Aは凹部42において、表面シート2と接合している。このエンボス加工も、表面シート2と上部吸収体4Aの基底層45との間を、吸収体4の平面方向において部分的に接合するものが好ましく、例えば、
図2に示すように、複数のエンボス部(エンボス加工による接合部)63が、吸収体4の長手方向Xに沿って間欠的に形成されるように行うことが好ましく、複数のエンボス部63が長手方向Xに直列配置されてなるエンボス部列が、吸収体4の幅方向Yに複数列形成されることが更に好ましい。このエンボス加工は、熱を加えない加圧のみのエンボス加工であっても良いが、使用時の剥がれによる性能低下やフィット性の低下などの観点から、熱融着も施す加熱エンボス加工であることが好ましい。
【0027】
また複数のエンボス部63によって、上部吸収体4Aと下部吸収体4Bとの間も接合されている。表面シート2、上部吸収体4A及び下部吸収体4Bが、一体化されていることにより、表面シート2から吸収体4への液の移行性が一層良好となる。また、表面シート2から下部吸収体4Bまでの間が、エンボス部63で部分的に接合されていることによって、その接合又はその近傍を介しての液の移行が促進される一方、液拡散面積を比較的小さく抑えることができる。
【0028】
このように、上部吸収体4Aを、一対の重層部41,41どうし間において表面シート2と固定することにより、表面シート2と上部吸収体A4との間の隙間をなくし、表面シート2と上部吸収体A4との間、特に凹部42の部分に液が溜まることを防止することでき、吸収体4への液の移行性が一層向上する。
【0029】
本実施形態のナプキン1においては、
図2に示すように、上部吸収体4Aを、一対の重層部41,41どうし間においては、エンボス加工によって表面シート2と固定する一方、一対の重層部41,41それぞれの最上層47は、エンボス加工によっては表面シート2と固定していない。剛性の高い重層部41の最上層47を表面シート2とエンボス加工で固定しないことは、表面シート2のソフト感を維持する観点や、ナプキンの全体としての装着感の向上の観点から好ましい。
このような吸収体4は、上部吸収体4Aを構成する吸収性シート40を、
図2に示す形状に折り畳んで、相互に離間した一対の重層部を形成し、該重層部にエンボス加工を施してエンボス部62を形成する工程、及びその工程後に、表面シート2を重ねて、一対の重層部41,41間の基底層と該表面シート2との間にエンボス加工を施してエンボス部63を形成する工程を具備する製造方法により効率的に製造することができる。
【0030】
また、本実施形態のナプキン1においては、
図2に示すように、表面シート2と重層部41の最上層47との間、及び上部吸収体4Aの基底層45と下部吸収体4Bとの間が、パターン塗工された接着剤64,65によって接合されている。また、表面シート2と基底層45との間も、パターン塗工された接着剤64によって接合されている。表面シート2と基底層45との間が、上述したエンボス加工によるエンボス部63に加えて、パターン塗工された接着剤64によっても接合されていることが、表面シート2と基底層45との間の隙間をなくし液溜まりを防止でき着用中の液戻り量を低減できる点から好ましい。また、上部吸収体4Aの基底層45と下部吸収体4Bとの間がパターン塗工された接着剤によって接合されていることは、液の移行性が向上すると共に、吸収体4の強度が向上して吸収体のヨレが防止され、それに伴いフィット性が向上するので好ましい。
【0031】
また、
図2に示すように、下部吸収体4Bと裏面シート3との間も、パターン塗工された接着剤66によって接合されている。これにより、吸収体のヨレが一層防止される。
重層部41の中間層と基底層45との間の接合に用いる接着剤は、パターン塗工しても良いし、重層部41の長手方向に亘って所定の幅で連続塗工しても良い。
パターン塗工のパターンとしては、接着剤を散点状に配するドットパターン、スパイラルパターン、ストライプパターン、Ω字が連続したΩ字パターン等が挙げられる。下部吸収体4Bと裏面シート3との間も、全面的に塗工した接着剤で接合しても良い。
また、
【0032】
上部吸収体4Aを構成する吸収性シート40としては、厚みの薄さと、高吸収力、また折り加工の安定性や形状変形の自由度の点から、高吸収性ポリマーの粒子が繊維層間に保持された吸収性シートを用いることが好ましい。このような吸収性シートとしては、高吸収性ポリマーの粒子が紙や親水性の不織布間に保持された吸収性シートや、特開平8−246395号公報記載の吸収性シート等を用いることができる。
折り畳み易さや折り畳んだ形態の保持性、吸収性物品の薄型化等の観点から、吸収性シート40は、坪量が、50〜120g/m
2、特に60〜100g/m
2であることが好ましく、高吸収性ポリマーの坪量が、20〜60g/m
2、特に30〜50g/m
2であることが好ましく、厚みが、0.4〜2mm、特に0.45〜1mmであることが好ましい。
吸収性シート40の厚みは、2枚の平板間に吸収性シートを挟み、吸収性シートに、2.5cN/cm
2の荷重を加えた条件下において測定する。測定には、例えばキーエンス(株)のレーザー変位計LK−G30を用いることができる。
下部吸収体4Bを構成する吸収性シート50としては、吸収性シート40と同様の吸収性シートを用いることが好ましいが、下部吸収体4Bは、パルプ繊維等の繊維材料を単独又は高吸収性ポリマーとともに飛散させ、それを積繊機の凹部に吸引堆積させて賦形した積繊物や、それを更に紙や不織布からなる被覆シートで被覆してなるもの等を用いることもできる。
【0033】
上述したナプキン1における他の構成部材、例えば、表面シート2、裏面シート3等としては、ナプキン等の吸収性物品に従来用いられている各種のもの等を特に制限なく用いることができる。
例えば、表面シート2としては、親水性且つ液透過性の不織布や、開孔フィルムを用いることができ、裏面シート3としては、液不透過性の材料や撥水性の材料を用いることができる。液不透過性の材料としては、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート材等を用いることができ、撥水性の材料としては、スパンボンド(S)・メルトブローン(M)・スパンボンド(S)等からなる多層構造の複合不織布(SMS、SMMS等)等を用いることができる。裏面シート3は、液不透過性の材料や撥水性の材料に、不織布等の他のシートを接合してなる積層シートであっても良い。
【0034】
本発明の吸収性物品は、前述した実施形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、上述した実施形態のナプキン1においては、上述した吸収体4の構成、特に上部吸収体4Aの構成を、吸収体4の長手方向の全長に亘って有していたが、そのような構成を排泄部対向部Aのみ、あるいは排泄部対向部Aと前方部B又は後方部Cのみに有していても良い。但し、上述した吸収体4の構成、特に上部吸収体4Aの構成が、吸収体4の長手方向Xの全長の50%以上の長さ、特に70%以上の長さに亘って連続していることが好ましい。
【0035】
また、重層部41における相隣接する層間は、エンボス加工及び接着剤の何れか1方のみで接合されていても良い。また、上述したナプキン1における重層部41における中間層46と基底層45との間を接着剤で接合するのに代えて、該重層部41における最上層47と中間層46との間のみを接着剤で接合しても良いし、中間層46と基底層45との間及び最上層47と中間層46との間を、それぞれ接着剤で接合することもできる。また、表面シート2と基底層45との間を接合するエンボス加工を省略することもできる。重層部41の層間をエンボス加工によって接合すると、材料同士が、表層だけではなく、内部まで接合されるので、液通過性が良好となる。他方、重層部41の層間を、接着剤によって接合すると、材料全面を均一接合できるので使用時の製品がヨレにくくなる。
【0036】
また、重層部41の層間を接合するエンボス加工は、例えば、
図4に示すようなパターンでエンボス部62を形成するものであっても良い。
図4(a)に示すパターンは、吸収体の幅方向Yにおいて隣り合うエンボス部列のエンボス部62の吸収体長手方向Xの位置が一致しており、
図4(b)に示すパターンにおいては、個々のエンボス部62の平面視形状が、非円形となっている。個々のエンボス部62の平面視形状は、円形の他、長方形、正方形、菱形、円形、十字形等の任意の形状とすることができる。
図4(c)に示すパターンにおいては、エンボス部62が、吸収体長手方向Xに連続して延びている。吸収体長手方向Xに延びるエンボス部62は、各重層部41に1本形成しても良いし、相互間に隙間を設けて複数本形成することもできる。表面シート2と基底層45との間を接合するエンボス加工のエンボス部63の形状や配置パターンも同様に変更可能である。
【0037】
また、上部吸収体4Aの重層部は、上部吸収体4Aを構成する吸収性シート40を、
図5に示すように、折り畳んで形成したものであっても良い。
図5(a)〜(c)に示す例においては、吸収体4の長手方向の両側それぞれに、吸収性シート40が5層に折り重ねられた重層部41が形成されており、吸収性シート40は、複数の内向き折曲部43’,43”と複数の外向き折曲部44’,44”とを有している。
【0038】
図5(a)に示す吸収体4においては、吸収体4の幅方向Yにおいて、下側(非肌当接面側)の内向き折曲部43’の位置と上側(肌当接面側)の内向き折曲部43”の位置とが一致している。これに対して、
図5(b)に示す吸収体4においては、吸収体4の幅方向Yにおいて、下側の内向き折曲部43’が、上側の内向き折曲部43”より外方に位置しており、
図5(c)に示す吸収体4においては、吸収体4の幅方向Yにおいて、上側の内向き折曲部43”が、下側の内向き折曲部43’より外方に位置している。
図5(b)及び
図5(c)に示すような吸収体の場合、上部吸収体4Aを構成する吸収性シート40は、吸収体の長手方向に沿う両側端部40s,40sが、上側及び下側の内向き折曲部43’,43”のうち、より幅方向外方に位置する方の内向き折曲部の位置又はそれより外方に位置する必要がある。
図5(a)〜(c)においては、最も層数の多い部分がエンボス加工によるエンボス部62により一体化されていることが好ましい。
【0039】
また、本発明の吸収性物品は、主として経血の吸収に用いられる生理用ナプキン以外に、パンティライナー(おりものシート)や失禁パッド等であっても良い。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例によって何ら制限されるものではない。
【0041】
〔実施例1〕
図1及び
図2に示す生理用ナプキン1と同様の構成を有する生理用ナプキンを作製した。表面シート2、裏面シート3、上部吸収体及び下部吸収体を構成する吸収性シート40,50としては、以下のものを用いた。重層部41どうし間の間隔L1は20mmとし、吸収性シート40が内向き折曲部43の位置より延出する長さL2は10mmとした。重層部は、中間層と基底層との間を接着剤を配するとともに、最上層、中間層及び基底層に一体的に熱エンボス加工を施し、層間を接合した。熱エンボス加工は、直径1.5mmの小円形のエンボス部を、
図3に示すような配置に形成させた。
表面シート2:坪量25g/m
2のエアースルー不織布(花王株式会社製「ロリエSpeed+スリムガード」に使用)を用いた。
裏面シート3:坪量35g/m
2ポリエチレン製の液不透過性フィルムを用いた
吸収性シート40:パルプ繊維の集合体に吸収性ポリマーを分散状態に固定させた坪量100g/m
2の吸収性シート(花王株式会社製 「ロリエSpeed+スリムガード」に使用の吸収性シート)を用いた。
吸収性シート50:パルプ繊維の集合体に吸収性ポリマーを分散状態に固定させた坪量80g/m
2の吸収性シート(花王株式会社製 「ロリエSpeed+スリムガード」に使用の吸収性シート)を用いた
〔実施例2〕
実施例1において、中間層と基底層との間に接着剤を配さない以外は、実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0042】
〔実施例3〕
実施例1において、一対の重層部間において表面シート2と基底層45とを接合するためのエンボス加工を行わず、また中間層と基底層との間に接着剤を配さない以外は、実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0043】
〔比較例1〕
実施例1において、最上層47の吸収体幅方向外方側の端部の位置を、内向き折曲部43の位置より内側に後退した位置とし、重層部における総ての層間を接合せず、一対の重層部間において表面シート2と基底層45とを接合するためのエンボス加工を行わなかった以外は、実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
なお、最上層47の吸収体幅方向の長さは、10mm(中間層46同方向の長さの50%)とした。
【0044】
〔比較例2〕
比較例1において、重層部の層間を、最上層、中間層及び基底層に一体的に熱エンボス加工を施して接合した以外は、比較例2と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0045】
〔比較例3〕
実施例1において、重層部における総ての層間を接合せず、また、一対の重層部間においても表面シート2と基底層45とを接合するエンボス加工を行わなかった以外は、実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0046】
〔比較例4〕
実施例1において、吸収体の長手方向両側の外向き折曲部44,44どうし間に隙間を設けず重層部41,41間に隙間及び凹部42を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。なお、重層部41,41間に隙間がないため、この位置での表面シートと上部吸収体4Aとを接合するエンボス加工は行わなかった。
【0047】
〔評価〕
実施例及び比較例の各生理用ナプキンについて、下記の方法により評価を実施した。結果を表1に示した。
〔1.液残り量〕
得られた各生理用ナプキンを、それぞれ、可動式女性腰部モデルに装着し、ショーツをはかせた後、該腰部モデルを100歩/分の歩行速度で1分間歩行運動させた後、脱繊維馬血〔日本バイオテスト研究所(株)製〕1.5gを15秒で注入した。その後3分間歩行させた後、再び脱繊維馬血1.5gを同様に注入して3分間歩行させた。このような操作を合計6g注入するまで繰り返した後、1分間再度歩行させ生理用ナプキンを回収した。
回収した生理用ナプキンから表面シートを剥ぎ取り、重量測定→洗浄→乾燥→重量測定の作業を行い、洗浄前の重量と乾燥後の重量の差から、表面に残った液残り量を算出した。
洗浄は馬血を流水で洗い流し、乾燥炉(温度70℃設定)で15分乾燥させた後、表面シートの重量を測定した。
各生理用ナプキンについて3つのサンプルを用意し、上記のようにして測定した液残り量の平均値を表1に示した。
【0048】
〔2.表面白色度〕
得られた各生理用ナプキンを、それぞれ、可動式女性腰部モデルに装着し、ショーツをはかせた後、該腰部モデルを100歩/分の歩行速度で1分間歩行運動させた後、脱繊維馬血〔日本バイオテスト研究所(株)製〕1.5gを15秒で注入した。その後3分間歩行させた後、再び1.5gを同様に注入して3分間歩行させた。このような操作を合計6g注入するまで繰り返した後、1分間再度歩行させ生理用ナプキンを回収した。回収した生理用ナプキンについて、表面シート上から日本電色工業製の色差計(型式:NF333)を使用し、白度を測定した。
各生理用ナプキンについて3つのサンプルを用意し、上記のようにして測定した表面白色度の平均値を表1に示した。表面白色度は数値が高い程、白いこと示し、つまり本評価においては、液の保持量が少ないことを示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示す結果から、本発明の実施例の生理用ナプキンによれば、液残り量が少なく、白色度も高いため、表面シートから吸収体への液の移行性、あるいは吸収体への吸収性が高かったことが判る。これにして、上部吸収体を構成する吸収性シートの側端部が内向き折曲部の位置より内方に位置するもの(比較例1,2)、重層部の層間が接合されていないもの(比較例3)、及び重層部どうし間に隙間のないもの(比較例4)は、実施例1〜3に比して液残り量が多く、吸収体への液の移行性に劣っていることが判る。また、比較例1〜3は、液残り量が多いものの、表面白色度が実施例1〜3と同等であることから、表面シートに吸収された液が表面シート内の吸収体側に移動したものの、吸収体には十分移行できなかったか、吸収体に一度移行したものの、吸収体内で保持されずに、表面シートへの液戻りを生じたものと思われる。