(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジシアンジアミドと反応される前記官能基含有化合物が、水酸基、環状エーテル基、カルボキシル基及びイソシアネート基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基を有する、請求項1に記載のインクジェット用硬化性組成物。
前記反応粘稠物が、ジシアンジアミド1モルに対して、前記官能基含有化合物を1モル以上、3モル以下反応させた反応粘稠物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
前記光重合開始剤が、ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
前記(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物が、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
前記多官能化合物と前記単官能化合物と前記光重合開始剤との合計100重量%中、前記多官能化合物の含有量が20重量%以上、70重量%以下であり、かつ前記単官能化合物の含有量が5重量%以上、50重量%以下である、請求項13に記載のインクジェット用硬化性組成物。
前記単官能化合物が、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
前記反応粘稠物が、ジシアンジアミドの活性水素の一部に、前記官能基含有化合物の前記官能基を反応させた反応物である、請求項1〜16のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が160mPa・s以上、1200mPa・s以下である、請求項1〜17のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(インクジェット用硬化性組成物)
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、環状エーテル基を有する化合物(C)と、硬化剤(D)とを含む。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(A)と、光重合開始剤(B)とをさらに含むことが好ましい。硬化剤(D)は、ジシアンジアミドと、該ジシアンジアミドと反応しうる官能基を有する官能基含有化合物とを反応させた反応粘稠物である。上記「(メタ)アクリロイル基」の用語は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。
【0032】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、環状エーテル基を有する化合物(C)と硬化剤(D)とを含むので、熱の付与により硬化可能である。従って、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、インクジェット用熱硬化性組成物である。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物が、多官能化合物(A)と光重合開始剤(B)とを含む場合には、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、光の照射と熱の付与とにより硬化可能であり、インクジェット用光及び熱硬化性組成物である。
【0033】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物に熱を付与することにより硬化させ、硬化物であるレジストパターンなどの硬化物層を得ることができる。また、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物が、多官能化合物(A)と光重合開始剤(B)とを含む場合には、光の照射により一次硬化物を得た後、一次硬化物に熱を付与することにより本硬化させ、硬化物であるレジストパターンなどの硬化物層を得ることができる。このように、光の照射により一次硬化を行うことで、基板等の塗工対象部材上に塗工されたインクジェット用硬化性組成物の濡れ拡がりを抑制することができる。従って、微細なレジストパターンなどの硬化物層を高精度に形成することができる。
【0034】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、環状エーテル基を有する化合物(C)と硬化剤(D)とを含むため、更に硬化剤(D)が上記反応粘稠物であるため、環状エーテル基を有する化合物(C)と硬化剤(D)とが含有されるにも関わらず、50℃以上に加温されるインクジェット装置内の環境下でもポットライフを十分に長くすることができる。また、インクジェット方式による塗工前のインクジェット用硬化性組成物は、50℃以上に加温されても、粘度が上昇し難くなり、熱硬化が進行し難くなる。このため、インクジェット用硬化性組成物は、高温下での安定性に優れており、インクジェットノズルから安定して吐出することができる。このため、均一なレジストパターンなどの硬化物層を形成できる。
【0035】
これに対して、上記反応粘稠物ではないジシアンジアミドを用いた場合には、ジシアンジアミドが常温(23℃)で固体であるため、硬化性組成物中の他の成分(固形分が含まれる場合には、固形分を除く)と相溶しない。すなわち、上記反応粘稠物ではないジシアンジアミドは、硬化性組成物中で固体として存在し、硬化性組成物中に溶解しない。このため、従来のジシアンジアミドを硬化剤として用いた場合には、インクジェット方式により硬化性組成物を吐出する際に、インクジェットヘッドの目詰まりが生じる。目詰まりが生じると、吐出が困難又は不可能になったり、レジストパターンなどの硬化物層が不均一になったりする。また、インクジェットで吐出可能な大きさにジシアンジアミドを微粉砕しても、粉砕物が有する親水性(吸水性)により、粉砕物を起点として絶縁破壊が生じて、信頼性が低下しやすくなる傾向がある。
【0036】
また、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、特に環状エーテル基を有する化合物(C)を含むため、硬化後の硬化物の耐熱性を高めることができる。
【0037】
さらに、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、特に硬化剤(D)が、上記反応粘稠物であるため、硬化後の硬化物による絶縁信頼性を高めることもできる。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物が上記組成を有し、特に硬化剤(D)が、上記反応粘稠物であることによって、硬化後の硬化物による絶縁信頼性が高くなることを、本発明者らは見出した。例えば、ジシアンジアミドを用いた上記反応粘稠物を用いた場合には、イミダゾール硬化剤等を用いた場合と比較して、硬化物による絶縁信頼性がかなり高くなる。
【0038】
以下、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0039】
[多官能化合物(A)]
光の照射により硬化性組成物を硬化させるために、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(A)を含むことが好ましい。多官能化合物(A)は、(メタ)アクリロイル基を2個以上有すれば特に限定されない。多官能化合物(A)として、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する従来公知の多官能化合物を用いることができる。多官能化合物(A)は、(メタ)アクリロイル基を2個以上有するため、光の照射により重合が進行し、硬化する。このため、硬化性組成物を塗工した後に光を照射することにより硬化を進行させることができ、塗工された形状を保持することができ、光が照射された硬化性組成物の一次硬化物及び硬化物が過度に濡れ拡がるのを効果的に抑制することができる。多官能化合物(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
多官能化合物(A)としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸付加物、多価アルコールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリル酸付加物、ウレタン(メタ)アクリレート類、及びポリエステル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。上記多価アルコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、及びペンタエリスリトール等が挙げられる。上記「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレートとメタクリレートとを示す。上記「(メタ)アクリル」の用語は、アクリルとメタクリルとを示す。
【0041】
上記多官能化合物(A)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(A1)であることが好ましい。多官能化合物(A1)の使用により、上記インクジェット用硬化性組成物の硬化物の耐湿熱性を高くすることができる。従って、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物を用いたプリント配線板を長期間使用でき、かつ該プリント配線板の信頼性を高めることができる。
【0042】
多官能化合物(A1)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有すれば特に限定されない。多官能化合物(A1)として、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する従来公知の多官能化合物を用いることができる。多官能化合物(A1)は、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するため、光の照射により重合が進行し、硬化する。多官能化合物(A1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
多官能化合物(A1)としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸付加物、多価アルコールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリル酸付加物、ウレタン(メタ)アクリレート類、及びポリエステル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。上記多価アルコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0044】
多官能化合物(A1)の具体例としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジメタノールジ(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニルジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、硬化物の耐湿熱性をより一層高める観点からは、多官能化合物(A1)は、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。上記「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0045】
多官能化合物(A1)及び後述する単官能化合物(E)における上記「多環骨格」とは、複数の環状骨格を連続して有する構造を示す。多官能化合物(A1)及び単官能化合物(E)における上記多環骨格としてはそれぞれ、多環脂環式骨格及び多環芳香族骨格等が挙げられる。
【0046】
上記多環脂環式骨格としては、ビシクロアルカン骨格、トリシクロアルカン骨格、テトラシクロアルカン骨格及びイソボルニル骨格等が挙げられる。
【0047】
上記多環芳香族骨格としては、ナフタレン環骨格、アントラセン環骨格、フェナントレン環骨格、テトラセン環骨格、クリセン環骨格、トリフェニレン環骨格、テトラフェン環骨格、ピレン環骨格、ペンタセン環骨格、ピセン環骨格及びペリレン環骨格等が挙げられる。
【0048】
多官能化合物(A)の配合量は、光の照射により適度に硬化するように適宜調整され、特に限定されない。多官能化合物(A)の配合量の一例を示すと、インクジェット用硬化性組成物100重量%中、多官能化合物(A)の含有量は、0重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは60重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、多官能化合物(A)の含有量の上限は、成分(B)〜(D)及び他の成分の含有量などにより適宜調整される。
【0049】
多官能化合物(A1)と後述する単官能化合物(E)とを併用する場合に、多官能化合物(A1)と単官能化合物(E)と光重合開始剤(B)との合計100重量%中、多官能化合物(A1)の含有量は20重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、多官能化合物(A1)の含有量は、より好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以下である。多官能化合物(A1)の含有量が上記下限以上であると、光の照射により硬化性組成物をより一層効果的に硬化させることができる。多官能化合物(A1)の含有量が上記上限以下であると、硬化物の耐湿熱性がより一層高くなる。
【0050】
[光重合開始剤(B)]
光の照射により硬化性組成物を硬化させるために、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、多官能化合物(A)とともに、光重合開始剤(B)を含むことが好ましい。光重合開始剤(B)としては、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤等が挙げられる。光重合開始剤(B)は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記光ラジカル重合開始剤は特に限定されない。上記光ラジカル重合開始剤は、光の照射によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始するための化合物である。上記光ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アミノアセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、リボフラビンテトラブチレート、チオール化合物、2,4,6−トリス−s−トリアジン、有機ハロゲン化合物、ベンゾフェノン類、キサントン類及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。上記光ラジカル重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
上記ベンゾインアルキルエーテル類としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。上記アセトフェノン類としては、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン及び1,1−ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。上記アミノアセトフェノン類としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン及びN,N−ジメチルアミノアセトフェン等が挙げられる。上記アントラキノン類としては、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン及び1−クロロアントラキノン等が挙げられる。上記チオキサントン類としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。上記ケタール類としては、アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等が挙げられる。上記チオール化合物としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール及び2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。上記有機ハロゲン化合物としては、2,2,2−トリブロモエタノール及びトリブロモメチルフェニルスルホン等が挙げられる。上記ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン及び4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0053】
上記光ラジカル重合開始剤は、α−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤であることが好ましく、ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤であることがより好ましい。この特定の光ラジカル重合開始剤の使用により、露光量が少なくても、インクジェット用硬化性組成物を効率的に光硬化させることが可能になる。このため、光の照射によって、塗工されたインクジェット用硬化性組成物が濡れ拡がるのを効果的に抑制でき、微細なレジストパターンを高精度に形成することができる。さらに、上記光ラジカル重合開始剤がジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤である場合には、熱硬化速度を速くすることができ、組成物の光照射物の熱硬化性を良好にすることができる。
【0054】
本発明者らは、ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤の使用により、光硬化性を良好にすることができるだけでなく、熱硬化性をも良好にすることができることを見出した。上記ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤は、熱硬化性の向上に大きく寄与する成分である。さらに、ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤の使用により、硬化物の耐熱性及び絶縁信頼性を高めることができる。絶縁信頼性に優れていると、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物により形成されたレジストパターンを有するプリント配線板などの電子部品が高湿度の条件下で長期間使用されても、絶縁抵抗が充分に高く維持される。
【0055】
上記α−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤の具体例としては、BASF社製のIRGACURE907、IRGACURE369、IRGACURE379及びIRGACURE379EG等が挙げられる。これら以外のα−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤を用いてもよい。中でも、インクジェット用硬化性組成物の光硬化性と硬化物による絶縁信頼性とをより一層良好にする観点からは、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE369)又は2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE379又はIRGACURE379EG)が好ましい。これらはジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤である。
【0056】
上記光ラジカル重合開始剤とともに、光重合開始助剤を用いてもよい。該光重合開始助剤としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン及びトリエタノールアミン等が挙げられる。これら以外の光重合開始助剤を用いてもよい。上記光重合開始助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
また、可視光領域に吸収があるCGI−784等(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)のチタノセン化合物などを、光反応を促進するために用いてもよい。
【0058】
上記光カチオン重合開始剤としては特に限定されず、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、メタロセン化合物及びベンゾイントシレート等が挙げられる。上記光カチオン重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
多官能化合物(A)100重量部に対して、光重合開始剤(B)の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、好ましくは30重量部以下、より好ましくは15重量部以下、更に好ましくは10重量部以下である。光重合開始剤(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、光の照射により硬化性組成物がより一層効果的に硬化する。
【0060】
[環状エーテル基を有する化合物(C)]
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、熱の付与によって硬化可能であるように、環状エーテル基を有する化合物(C)を含む。化合物(C)の使用により、熱の付与により硬化性組成物又は該硬化性組成物の一次硬化物をさらに硬化させることができる。このため、化合物(C)の使用により、レジストパターンを効率的にかつ精度よく形成することができ、更に硬化物の耐熱性及び絶縁信頼性を高めることができる。環状エーテル基を有する化合物(C)は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
環状エーテル基を有する化合物(C)は、環状エーテル基を有すれば特に限定されない。化合物(C)における環状エーテル基としては、エポキシ基及びオキセタニル基等が挙げられる。なかでも、硬化性を高め、かつ耐熱性及び絶縁信頼性により一層優れた硬化物を得る観点からは、上記環状エーテル基はエポキシ基であることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(C)は、環状エーテル基を2個以上有することが好ましい。
エポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ジグリシジルフタレート化合物、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ化合物、ビキシレノール型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、テトラグリシジルキシレノイルエタン化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ化合物、キレート型エポキシ化合物、グリオキザール型エポキシ化合物、アミノ基含有エポキシ化合物、ゴム変性エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ化合物、シリコーン変性エポキシ化合物及びε−カプロラクトン変性エポキシ化合物等が挙げられる。
【0062】
上記環状エーテル基を有する化合物(C)は、芳香族骨格を有することが好ましい。芳香族骨格及び環状エーテル基を有する化合物の使用により、上記硬化性組成物の保管時及び吐出時の熱安定性がより一層良好になり、上記硬化性組成物の保管時にゲル化が生じ難くなる。また、芳香族骨格及び環状エーテル基を有する化合物は、芳香族骨格を有さずかつ環状エーテル基を有する化合物と比べて、多官能化合物(A)、単官能化合物(E)及び硬化剤(C)との相溶性に優れていので、絶縁信頼瀬性がより一層良好になる。
【0063】
オキセタニル基を有する化合物は、例えば、特許第3074086号公報に例示されている。
【0064】
環状エーテル基を有する化合物(C)は25℃で液状であることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(C)の25℃での粘度は、300mPa・sを超えることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(C)の25℃での粘度は、80Pa・s以下であることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(C)の粘度が上記下限以上であると、硬化物層を形成する際の解像度がより一層良好になる。環状エーテル基を有する化合物(C)の粘度が上記上限以下であると、上記硬化性組成物の吐出性がより一層良好になるとともに、環状エーテル基を有する化合物(C)と他の成分との相溶性がより一層高くなり、絶縁信頼性がより一層向上する。
【0065】
環状エーテル基を有する化合物(C)の配合量は、熱の付与により適度に硬化するように適宜調整され、特に限定されない。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、環状エーテル基を有する化合物(C)の含有量は好ましくは3重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、環状エーテル基を有する化合物(C)の含有量は、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上である。多官能化合物(A)及び光重合開始剤(B)が用いられる場合には、インクジェット用硬化性組成物100重量%中、環状エーテル基を有する化合物(C)の含有量は、特に好ましくは50重量%以下、最も好ましくは40重量%以下である。化合物(C)の含有量が上記下限以上であると、熱の付与により硬化性組成物をより一層効果的に硬化させることができる。化合物(C)の含有量が上記上限以下であると、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0066】
[硬化剤(D)]
硬化剤(D)は、ジシアンジアミドと、該ジシアンジアミドと反応しうる官能基を有する官能基含有化合物とを反応させた反応粘稠物である。このような硬化剤(D)が用いられているので、上記硬化性組成物は、熱の付与により硬化可能である。また、環状エーテル基を有する化合物(C)と硬化剤(D)とを併用した硬化性組成物を熱硬化させることにより、硬化物による絶縁信頼性を高くすることができる。
【0067】
なお、上記反応粘稠物は、インクジェット用硬化性組成物に用いる前に反応粘稠物単独で粘稠な性状を有していればよく、インクジェット用硬化性組成物中では粘稠でなくてもよい。また、インクジェット用硬化性組成物から上記反応粘稠物を取り出したときに、該反応粘稠物が粘稠であってもよい。
【0068】
常温(23℃)で固体であるジシアンジアミド(ジシアンジアミド粒子)は、液状成分中に固体で存在するために、保管中に沈降したり、インクジェットヘッドのノズル詰まりを引き起こしたりする可能性がある。このような問題点を解消するために、ジシアンジアミドをあらかじめ、該ジシアンジアミドと反応しうる官能基を有する官能基含有化合物と反応させ、反応粘稠物を作製し、組成物中に添加する。すなわち、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物では、ジシアンジアミドと、該ジシアンジアミドと反応しうる官能基を有する官能基含有化合物とを反応させた反応粘稠物である硬化剤(D)を用いる。この硬化剤(D)を用いれば、組成物のポットライフ及び硬化物による絶縁信頼性が良好になる。
【0069】
上記インクジェット用硬化性組成物中に配合される前の上記反応粘稠物(E1)には、有機溶剤に配合されていないか、又は有機溶剤に配合されておりかつ上記反応粘稠物(E1)100重量部に対して配合されている有機溶剤の量が100重量部以下であることが好ましい。上記反応粘稠物(E1)が有機溶剤に配合されている場合には、上記反応粘稠物(E1)100重量部に対して配合されている有機溶剤の量は50重量部以下であることが好ましく、20重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることが更に好ましく、1重量部以下であることが特に好ましい。
【0070】
上記反応粘稠物は、ジシアンジアミドの活性水素の一部に、上記官能基含有化合物を反応させた反応物であることが好ましい。上記官能基含有化合物のジシアンジアミドと反応しうる官能基は、一般にジシアンジアミドの活性水素の一部と反応する。
【0071】
上記官能基含有化合物と反応される上記ジシアンジアミドは粉末状であることが好ましい。粉末状のジシアンジアミドを上記官能基含有化合物と反応させることにより、粉末状ではなくなり、粘稠な上記反応粘稠物が得られる。
【0072】
上記反応粘稠物を容易に合成し、更にポットライフが長い硬化性組成物を得る観点からは、上記ジシアンジアミドと反応される上記官能基含有化合物は、水酸基、環状エーテル基、カルボキシル基及びイソシアネート基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。
【0073】
上記反応粘稠物を容易に合成し、更にポットライフが長い硬化性組成物を得る観点からは、上記ジシアンジアミドと反応される上記官能基含有化合物は、環状エーテル基を有する化合物であることが好ましい。ジシアンジアミドと反応される該環状エーテル基を有する化合物は、環状エーテル基を1個有する化合物であることが好ましい。
【0074】
上記反応粘稠物を容易に合成し、更にポットライフが長い硬化性組成物を得る観点からは、上記ジシアンジアミドと反応される上記官能基含有化合物は、エポキシ基を有する化合物であることが好ましい。ジシアンジアミドと反応される該エポキシ基を有する化合物は、エポキシ基を1個有する化合物であることが好ましい。
【0075】
上記反応粘稠物を容易に合成し、更にポットライフが長いインクジェット用硬化性組成物を得る観点からは、更に硬化性組成物の硬化物の耐熱性をより一層高める観点からは、上記ジシアンジアミドと反応される官能基含有化合物は、芳香族骨格を有することが好ましく、芳香族骨格と環状エーテル基とを有する化合物であることがより好ましく、芳香族骨格とエポキシ基とを有する化合物であることが特に好ましい。
【0076】
上記官能基含有化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、オルトクレジルグリシジルエーテル、メタクレジルグリシジルエーテル、パラクレジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラt−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類や、グリシジル(メタ)アクリレート、及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0077】
硬化物の耐熱性をより一層高める観点からは、上記官能基含有化合物は、芳香環を有するフェニルグリシジルエーテル、オルトクレジルグリシジルエーテル、メタクレジルグリシジルエーテル、パラクレジルグリシジルエーテル又はパラt−ブチルフェニルグリシジルエーテルであることが好ましい。
【0078】
上記ジシアンジアミドと上記官能基含有化合物との反応において、ジシアンジアミド1モルに対し、上記官能基含有化合物を好ましくは0.2モル以上、より好ましくは1モル以上、好ましくは4モル以下、より好ましくは3モル以下反応させることが望ましい。すなわち、上記反応粘稠物は、上記ジシアンジアミド1モルに対して、上記官能基含有化合物を好ましくは0.2モル以上、より好ましくは1モル以上、好ましくは4モル以下、より好ましくは3モル以下反応させた反応粘稠物であることが望ましい。ポットライフにより一層優れた硬化性組成物を得る観点からは、上記反応粘稠物は、上記ジシアンジアミド1モルに対して、上記官能基含有化合物を1モル以上、3モル以下反応させた反応粘稠物であることが特に望ましい。上記官能基含有化合物の使用量が上記下限未満であると、未反応のジシアンジアミドが析出するおそれがある。上記官能基含有化合物の使用量が上記上限を超えると、上記反応粘稠物の活性水素がすべて失活し、化合物(C)を硬化させることができなくなるおそれがある。なお、この反応では、必要に応じて溶媒又は反応促進剤の存在下、60℃から140℃で反応させることが好ましい。
【0079】
上記ジシアンジアミドと上記官能基含有化合物との反応時に、ジシアンジアミドを溶解させるために溶剤を用いてもよい。該溶剤は、ジシアンジアミドを溶解させることが可能な溶剤であればよい。使用可能な溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド及びメチルセロソルブ等が挙げられる。
【0080】
上記ジシアンジアミドと上記官能基含有化合物との反応を促進するため、反応促進剤を用いてもよい。反応促進剤として、フェノール類、アミン類、イミダゾール類及びトリフェニルフォスフィンなどの公知慣用の反応促進剤を使用できる。
【0081】
ポットライフの低下を抑制し、かつ硬化むらを抑制する観点からは、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物では、上記反応粘稠物は、環状エーテル基を有する化合物(C)と相溶していることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物(A)と相溶していることが好ましく、単官能化合物(E)と相溶していることが好ましく、更に硬化性組成物中に溶解していることが好ましい。
【0082】
上記反応粘稠物は、環状エーテル基を有する化合物(C)と相溶可能であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物(A)と相溶可能であることが好ましく、単官能化合物(E)と相溶可能であることが好ましい。
【0083】
上記反応粘稠物は、例えば、粉末状のジシアンジアミドと上記官能基含有化合物との反応により得られた非粉末状の反応粘稠物である。インクジェット吐出性をより一層高める観点からは、上記反応粘稠物は、固体ではないことが好ましく、結晶ではないことが好ましく、結晶性固体ではないことが好ましい。上記反応粘稠物は、液状又は半固形状であることが好ましい。
【0084】
上記反応粘稠物は、透明又は半透明であることが好ましい。上記反応粘稠物が透明又は半透明であるか否かは、厚み5mmの上記反応粘稠物を介して物体をみたときに、該物体が視認可能であるか否かで判断できる。
【0085】
環状エーテル基を有する化合物(C)と反応粘稠物との配合比率は特に限定されない。反応粘稠物の配合量は、熱の付与により適度に硬化するように適宜調整され、特に限定されない。環状エーテル基を有する化合物(C)100重量部に対して、反応粘稠物の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは60重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。
【0086】
(単官能化合物(E))
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物(E)を含むことが好ましい。さらに、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(A1)と、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物(E)とを含むことがより好ましい。これらの場合には、上記インクジェット用硬化性組成物の硬化物の耐湿熱性がかなり高くなる。従って、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物を用いたプリント配線板などの電子部品をより一層長期間使用でき、かつ該電子部品の信頼性がより一層高くなる。また、単官能化合物(E)の使用により、硬化物の耐湿熱性が高くなるだけでなく、硬化性組成物の吐出性も高くなる。なお、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物(E)を用いた場合には、多環骨格を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物を用いた場合と比べて、硬化物の耐湿熱性が高くなる。
【0087】
上記単官能化合物(E)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有すれば特に限定されない。単官能化合物(E)として、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する従来公知の単官能化合物を用いることができる。単官能化合物(E)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
上記単官能化合物(E)の具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びナフチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、硬化物の耐湿熱性をより一層高める観点からは、単官能化合物(E)は、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0089】
インクジェット用硬化性組成物100重量%中、単官能化合物(E)の含有量は好ましくは5重量%以上、より好ましくは15重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下である。
【0090】
多官能化合物(A1)と単官能化合物(E)と光重合開始剤(B)との合計100重量%中、単官能化合物(E)の含有量は5重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。多官能化合物(A1)と単官能化合物(E)と光重合開始剤(B)との合計100重量%中、単官能化合物(E)の含有量は、より好ましくは15重量%以上、より好ましくは45重量%以下である。単官能化合物(E)の含有量が上記下限以上であると、硬化物の耐湿熱性がより一層高くなる。単官能化合物(E)の含有量が上記上限以下であると、光の照射により硬化性組成物をより一層効果的に硬化させることができる。
【0091】
インクジェット用硬化性組成物100重量%中、多官能化合物(A1)と単官能化合物(E)との合計の含有量の上限は、光重合開始剤(B)の含有量により適宜調整される。
【0092】
[他の成分]
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、上記反応粘稠物以外の熱硬化剤を含んでいてもよい。さらに、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0093】
上記熱硬化剤の具体例としては、有機酸、アミン化合物、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、フェノール化合物、ユリア化合物、ポリスルフィッド化合物及び酸無水物等が挙げられる。上記熱硬化剤として、アミン−エポキシアダクトなどの変性ポリアミン化合物を用いてもよい。
【0094】
上記硬化促進剤としては、第三級アミン、イミダゾール、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、有機金属塩、リン化合物及び尿素系化合物等が挙げられる。
【0095】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で種々の添加剤を配合してもよい。該添加剤としては特に限定されず、着色剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤及び密着性付与剤等が挙げられる。また、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、少量であれば有機溶剤を含んでいてもよい。
【0096】
上記着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック及びナフタレンブラック等が挙げられる。上記重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール及びフェノチアジン等が挙げられる。上記消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤及び高分子系消泡剤等が挙げられる。上記レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤及び高分子系レベリング剤等が挙げられる。上記密着性付与剤としては、イミダゾール系密着性付与剤、チアゾール系密着性付与剤、トリアゾール系密着性付与剤及びシランカップリング剤が挙げられる。
【0097】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物においては、JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が160mPa・s以上、1200mPa・s以下であることが好ましい。インクジェット用硬化性組成物の粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、インクジェット用硬化性組成物をインクジェットヘッドから容易にかつ精度よく吐出できる。さらに、インクジェット用硬化性組成物が50℃以上に加温されても、該組成物をインクジェットヘッドから容易にかつ精度よく吐出できる。
【0098】
上記粘度は、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下である。上記粘度が好ましい上記上限を満足すると、上記硬化性組成物をヘッドから連続吐出したときに、吐出性がより一層良好になる。また、上記硬化性組成物の濡れ拡がりをより一層抑制し、硬化物層を形成する際の解像度をより一層高める観点からは、上記粘度は500mPa・sを超えることが好ましい。
【0099】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、有機溶剤を含まないか、又は有機溶剤を含みかつ上記硬化性組成物100重量%中の上記有機溶剤の含有量は50重量%以下であることが好ましい。上記硬化性組成物100重量%中、上記有機溶剤の含有量はより好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。上記有機溶剤の含有量が少ないほど、硬化物層を形成する際の解像度がより一層良好になる。
【0100】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、有機溶剤を含まないか、又は有機溶剤を含みかつ上記反応粘稠物(E1)100重量部に対して上記有機溶剤の含有量は50重量部以下であることが好ましい。上記反応粘稠物(E1)100重量部に対して、上記有機溶剤の含有量はより好ましくは20重量部以下、更に好ましくは10重量部以下、特に好ましくは1重量部以下である。上記有機溶剤の含有量が少ないほど、硬化物層を形成する際の解像度がより一層良好になる。
【0101】
(電子部品の製造方法)
次に、本発明に係る電子部品の製造方法について説明する。
【0102】
本発明に係る電子部品の製造方法は、上述のインクジェット用硬化性組成物を用いることを特徴とする。すなわち、本発明に係る電子部品の製造方法では、先ず、上記インクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターンを描画する。このとき、上記インクジェット用硬化性組成物を直接描画することが特に好ましい。「直接描画する」とは、マスクを用いずに描画することを意味する。上記電子部品としては、プリント配線板及びタッチパネル部品等が挙げられる。上記電子部品は、配線板であることが好ましく、プリント配線板であることがより好ましい。
【0103】
上記インクジェット用硬化性組成物の塗工には、インクジェットプリンタが用いられる。該インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドを有する。インクジェットヘッドはノズルを有する。インクジェット装置は、インクジェット装置内又はインクジェットヘッド内の温度を50℃以上に加温するための加温部を備えることが好ましい。上記インクジェット用硬化性組成物は、塗工対象部材上に塗工されることが好ましい。上記塗工対象部材としては、基板等が挙げられる。該基板としては、配線等が上面に設けられた基板等が挙げられる。上記インクジェット用硬化性組成物は、プリント基板上に塗工されることが好ましい。
【0104】
また、本発明に係る電子部品の製造方法により、基板をガラスを主体とする部材に変え、液晶表示装置等の表示装置用のガラス基板を作製することも可能である。具体的には、ガラスの上に、蒸着等の方法によりITO等の導電パターンを設け、この導電パターン上に本発明に係る電子部品の製造方法により、インクジェット方式で硬化物層を形成してもよい。この硬化物層上に、導電インク等でパターンを設ければ、硬化物層が絶縁膜となり、ガラス上の導電パターンの中で、所定のパターン間にて電気的接続が得られる。
【0105】
次に、パターン状に描画されたインクジェット用硬化性組成物に熱を付与し、硬化させて、硬化物層を形成する。また、インクジェット用硬化性組成物として多官能化合物(A)と光重合開始剤(B)とを含むインクジェット用硬化性組成物を用いる場合には、パターン状に描画されたインクジェット用硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、硬化物層を形成する。このようにして、硬化物層を有する電子部品を得ることができる。該硬化物層は、絶縁膜であってもよく、レジストパターンであってもよい。該絶縁膜は、パターン状の絶縁膜であってもよい。該硬化物層はレジストパターンであることが好ましい。上記レジストパターンはソルダーレジストパターンであることが好ましい。
【0106】
本発明に係る電子部品の製造方法は、レジストパターンを有するプリント配線板の製造方法であることが好ましい。上記インクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画し、パターン状に描画された上記インクジェット用硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、レジストパターンを形成することが好ましい。
【0107】
パターン状に描画された上記インクジェット用硬化性組成物に、光を照射することにより一次硬化させ、一次硬化物を得てもよい。これにより描画されたインクジェット用硬化性組成物の濡れ拡がりを抑制することができ、高精度なレジストパターンが形成可能となる。また、光の照射により一次硬化物を得た場合には、一次硬化物に熱を付与することにより本硬化させ、硬化物を得、レジストパターンなどの硬化物層を形成してもよい。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、光の照射及び熱の付与により硬化可能である。光硬化と熱硬化とを併用した場合には、耐熱性により一層優れたレジストパターンなどの硬化物層を形成することができる。熱の付与により硬化させる際の加熱温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0108】
上記光の照射は、描画の後に行われてもよく、描画と同時に行われてもよい。例えば、硬化性組成物の吐出と同時又は吐出の直後に光を照射してもよい。このように、描画と同時に光を照射するために、インクジェットヘッドによる描画位置に光照射部分が位置するように光源を配置してもよい。
【0109】
光を照射するための光源は、照射する光に応じて適宜選択される。該光源としては、UV−LED、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及びメタルハライドランプ等が挙げられる。照射される光は、一般に紫外線であり、電子線、α線、β線、γ線、X線及び中性子線等であってもよい。
【0110】
インクジェット用硬化性組成物の塗工時における温度は、インクジェット用硬化性組成物がインクジェットヘッドから吐出できる粘度となる温度であれば特に限定されない。インクジェット用硬化性組成物の塗工時における温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、好ましくは100℃以下である。塗工時におけるインクジェット用硬化性組成物の粘度は、インクジェットヘッドから吐出できる範囲であれば特に限定されない。
【0111】
また、印刷時に、基板を冷却するという方法もある。基板を冷却すると、着弾時に硬化性組成物の粘度が上がり、解像度が良くなる。この際には、結露しない程度に冷却をとどめるか、結露しないよう雰囲気の空気を除湿することが好ましい。また、冷却することで、基板が収縮するので、寸法精度を補正してもよい。
【0112】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、硬化剤(D)として特定の反応粘稠物を含むため、例えば、インクジェットヘッドにおいてインクジェット用硬化性組成物を加熱する場合であっても、インクジェット用硬化性組成物のポットライフが十分に長く、安定した吐出が可能である。さらに、インクジェット用硬化性組成物をインクジェット方式による塗工に適した粘度となるまで加熱できるため、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物の使用により、プリント配線板などの電子部品を好適に製造することができる。
【0113】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0114】
(合成例1)
攪拌器、温度計、滴下ロートを備えた3つ口フラスコに、メチルセロソルブ50g、ジシアンジアミド15g、及び2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン1gを加え、100℃に加熱してジシアンジアミドを溶解させた。溶解後、ブチルグリシジルエーテル130gを滴下ロートから20分かけて滴下し、1時間反応させた。その後60℃に温度を下げ、減圧にして溶媒を除去し、黄色及び半透明の反応粘稠物を得た。得られた反応粘稠物は溶媒を含んでいなかった。
【0115】
(合成例2)
攪拌器、温度計、滴下ロートを備えた3つ口フラスコに、メチルセロソルブ50g、ジシアンジアミド15g、及び2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン1gを加え、100℃に加熱してジシアンジアミドを溶解させた。溶解後、オルソクレジルグリシジルエーテル40gを滴下ロートから20分かけて滴下し、1時間反応させた。その後60℃に温度を下げ、減圧にして溶媒を除去し、黄色及び半透明の反応粘稠物を得た。得られた反応粘稠物は溶媒を含んでいなかった。
【0116】
(合成例3)
オルソクレジルグリシジルエーテルの滴下量を40gから95gに変更したこと以外は合成例2と同様にして、黄色及び半透明の反応粘稠物を得た。得られた反応粘稠物は溶媒を含んでいなかった。
【0117】
また、下記の光重合開始剤を用意した。
Irgacure 907(BASFジャパン社製):ジメチルアミノ基を有さないα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤
Irgacure 369(BASFジャパン社製):ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤
Irgacure 379EG(BASFジャパン社製):ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤
TPO(BASFジャパン社製):アシルフォスフィンオキサイド型光ラジカル重合開始剤
Irgacure 184(BASFジャパン社製):α−ヒドロキシアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤
【0118】
(
参考例1)
多官能化合物(A)に相当するトリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセルサイテック社製「TMPTA」)80重量部と、光重合開始剤(B)に相当するα−アミノアセトフェノン型光ラジカル重合開始剤(BASFジャパン社製「Irgacure 907」)5重量部と、環状エーテル基を有する化合物(C)に相当するビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学社製「YD−127」)20重量部と、合成例1で得られた反応粘稠物4重量部とを混合し、インクジェット用硬化性組成物を得た。
【0119】
(
参考例2)
環状エーテル基を有する化合物(C)に相当するビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学社製「YD−170」)50重量部と、環状エーテル基を有する化合物(C)に相当するネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製「EX−211」)50重量部と、合成例2で得られた反応粘稠物30重量部とを混合し、インクジェット用硬化性組成物を得た。
【0120】
(
参考例3
、実施例4、参考例5、実施例6〜8、参考例9,10、実施例11、参考例12、実施例13、参考例14〜16及び比較例1〜5)
配合成分の種類及び配合量を下記の表1〜3に示すように変更したこと以外は
参考例1と同様にして、インクジェット用硬化性組成物を得た。
【0121】
なお、
参考例1〜
3、実施例4、参考例5、実施例6〜8、参考例9,10、実施例11、参考例12、実施例13、参考例14〜16で得られたインクジェット用硬化性組成物では、上記反応粘稠物は、多官能化合物と相溶しており、かつ環状エーテル基を有する化合物と相溶しており、更に硬化性組成物中に溶解していた。
【0122】
(
参考例1〜
3、実施例4、参考例5、実施例6〜8、参考例9,10、実施例11、参考例12、実施例13、参考例14〜16及び比較例1〜5の評価)
(1)粘度
JIS K2283に準拠して、粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、得られたインクジェット用硬化性組成物の25℃での粘度を測定した。インクジェット用硬化性組成物の粘度を下記の判定基準で判定した。
【0123】
[粘度の判定基準]
A:粘度が1200mPa・sを超える
B:粘度が1000mPa・sを超え、1200mPa・s以下
C:粘度が500mPa・sを超え、1000mPa・s以下
D:粘度が160mPa・s以上、500mPa・s以下
E:粘度が160mPa・s未満
【0124】
(2)インクジェット吐出性
紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、得られたインクジェット用硬化性組成物の吐出試験を行い、下記の判断基準で評価した。なお、粘度が500mPa・s以下である硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超える硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0125】
[インクジェット吐出性の判断基準]
○○:硬化性組成物をヘッドから10時間以上連続して吐出可能であった
○:硬化性組成物をヘッドから10時間以上連続して吐出可能であるが、10時間の連続吐出の間にわずかに吐出むらが生じる
△:硬化性組成物をヘッドから連続して吐出可能であるが、10時間以上連続して吐出不可能であった
×硬化性組成物をヘッドから吐出の初期段階で吐出不可能であった
【0126】
(3)濡れ拡がり
銅箔が上面に貼り付けられている銅箔付きFR−4基板を用意した。この基板上に銅箔の表面の全体を覆うようにインクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、ラインの幅80μmでライン間の間隔が80μmとなるように吐出して塗工し、パターン状に描画した。なお、粘度が500mPa・s以下であるインクジェット用硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超えるインクジェット用硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0127】
基板上に塗工されたインクジェット用硬化性組成物(厚み20μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cm
2となるように照射した。
【0128】
紫外線を照射して5分後に、パターンの濡れ拡がりを目視により観察し、濡れ拡がりを下記の基準で判定した。
【0129】
[濡れ拡がりの判定基準]
○○:濡れ拡がりの状態が、狙いのライン幅+40μm以下
○:濡れ拡がりの状態が、狙いのライン幅+40μmを超え、75μm以下
×:描画部分から組成物層が濡れ拡がっており、ライン間の間隔が無くなっているか、又は濡れ拡がりの状態が、狙いのライン幅+75μmを超える
【0130】
(4)貯蔵安定性(ポットライフの長さ)
5μmのメンブレンフィルターを用いて、得られたインクジェット用硬化性組成物をろ過し、ろ過したインクジェット用硬化性組成物を80℃で12時間加熱した。
【0131】
銅箔が上面に貼り付けられている銅箔付きFR−4基板を用意した。基板上の銅箔上に、インクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、ラインの幅80μmでライン間の間隔が80μmとなるように吐出して塗工し、パターン状に描画しようと試みた。このときのインクジェットヘッドからの吐出性から、貯蔵安定性を下記の判定基準で判定した。なお、粘度が500mPa・s以下である硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超える硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0132】
[貯蔵安定性の判定基準]
○:インクジェットヘッドから組成物を吐出できた
×:吐出前に組成物が硬化しているか、又は組成物の粘度が上昇しており、インクジェットヘッドから組成物を吐出できなかった
【0133】
(5)耐熱性
銅箔が上面に貼り付けられている銅箔付きFR−4基板を用意した。基板上の銅箔上に、インクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、ラインの幅80μmでライン間の間隔が80μmとなるように吐出して塗工し、パターン状に描画した。なお、粘度が500mPa・s以下である硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超える硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0134】
パターン状に描画されたインクジェット用硬化性組成物(厚み20μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cm
2となるように照射し、一次硬化物を得た。次に、一次硬化物を150℃で60分間加熱し、本硬化させ、硬化物であるレジストパターンを得た。
【0135】
得られた基板とレジストパターンとの積層体を270℃のオーブン内で5分間加熱した後、加熱後のレジストパターンの外観を目視で検査した。さらに、加熱後のレジストパターンにセロハンテープを貼り付けて、90度方向にセロハンテープを剥離した。外観検査及び剥離試験により、耐熱性を下記の判定基準で判定した。
【0136】
[耐熱性の判定基準]
○:外観検査において加熱前後でレジストパターンに変化がなく、かつ剥離試験においてレジストパターンが基板から剥離しなかった
×:外観検査においてレジストパターンにクラック、剥離及び膨れの内の少なくとも1つがあるか、又は剥離試験においてレジストパターンが基板から剥離した
【0137】
(6)絶縁信頼性(耐マイグレーション性)
IPC−B−25のくし型テストパターンBを用意した。このくし型テストパターンBを80℃に加温して、くし型テストパターンBの表面の全体を覆うようにインクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、吐出して塗工した。なお、粘度が500mPa・s以下である硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超える硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0138】
塗工されたインクジェット用硬化性組成物(厚み20μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cm
2となるように照射し、一次硬化物を得た。次に、一次硬化物を150℃で60分間加熱し、本硬化させ、硬化物であるレジストパターンを形成し、テストピースを得た。
【0139】
得られたテストピースを、85℃及び相対湿度85%及び直流50Vを印加した条件で、500時間加湿試験を行った。加湿試験後の絶縁抵抗を測定した。
結果を下記の表1〜3に示す。なお、下記の表1〜3において、「−」は評価していないことを示す。なお、貯蔵安定性の評価を除いて、80℃で12時間加熱していないインクジェット用硬化性組成物を用いた。なお、下記の表3において、*1は、絶縁抵抗が1×10
9以上、3×10
10未満であることを示す。
【0143】
なお、α−アミノアセトフェノン型光重合開始剤を用いた
参考例1〜
3、実施例4、参考例5、実施例6〜8、参考例9,10、実施例11、参考例12、実施例13、参考例14の硬化性組成物では、α−アミノアセトフェノン型光重合開始剤以外の光重合開始剤を用いた
参考例15,16の硬化性組成物と比べて、光照射後かつ熱硬化前の一次硬化物の表面のべたつきが少なく、熱硬化時の熱硬化性にも優れており、更に絶縁信頼性の評価結果も良好であった。
【0144】
実施例17〜40では、下記の表4に示す材料を適宜用いた。
【0146】
(実施例17)
多官能化合物(A)に相当するトリシクロデカンジメタノールジアクリレート65重量部と、単官能化合物(E)に相当するイソボルニルアクリレート30重量部と、光重合開始剤(B)に相当するIrgacure 907(α−アミノアセトフェノン型光ラジカル重合開始剤、BASFジャパン社製)5重量部とを混合し、インクジェット用硬化性組成物を得た。
【0147】
(実施例18〜40)
配合成分の種類及び配合量を下記の表5,6に示すように変更したこと以外は実施例17と同様にして、インクジェット用硬化性組成物を得た。
【0148】
なお、実施例17〜40で得られたインクジェット用硬化性組成物では、上記反応粘稠物は、多官能化合物と相溶しており、単官能化合物と相溶しており、かつ環状エーテル基を有する化合物と相溶しており、更に硬化性組成物中に溶解していた。
【0149】
(実施例17〜40の評価)
実施例17〜40について、
参考例1〜
3、実施例4、参考例5、実施例6〜8、参考例9,10、実施例11、参考例12、実施例13、参考例14〜16及び比較例1〜5と同様の評価項目について同様にして評価を実施した。但し、絶縁信頼性(耐マイグレーション性)の評価に関しては、絶縁抵抗を下記の基準で判定し、結果を下記の表5,6に示した。
【0150】
[絶縁信頼性の判定基準]
○:絶縁抵抗が3×10
10Ω以上
△:絶縁抵抗が1×10
9以上、3×10
10未満
×:絶縁抵抗が1×10
9未満
【0151】
さらに、実施例17〜40では、下記の耐湿熱性の評価も実施した。
【0152】
(7)耐湿熱性(耐熱性及び耐湿性)
銅配線が上面に設けられたガラスエポキシ基板(100mm×100mm)を用意した。この基板上にインクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから吐出して、全面に塗工した。なお、粘度が500mPa・s以下である硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超える硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0153】
基板上に塗工されたインクジェット用硬化性組成物(厚み20μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cm
2となるように照射し、次に180℃で1時間加熱し、硬化物(厚み20μm)を得た。
【0154】
得られた基板と硬化物との積層体を130℃及び相対湿度85%RHの条件下で24時間放置した。その後、硬化物の基板に対する密着性をクロスカットテープ試験(JIS 5400 6.15)で確認し、耐湿熱性を下記の判定基準で判定した。1mm間隔で碁盤目に、硬化物に切り込みを100マス分カッターで作成し、次に切り込み部分を有する硬化物にセロハンテープ(JIS Z1522)を十分に貼りつけて、テープの一端を45度の角度で強く引き剥がして剥離状態を確認した。
【0155】
[耐湿熱性の判定基準]
○○:テープの剥離時に硬化物の剥離なし
○:テープの剥離時に硬化物の一部が剥離する
△:テープの剥離時に硬化物の全部が剥離する
×:テープの剥離前に硬化物が剥離している