(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965647
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】相対回動部材の枢着方法
(51)【国際特許分類】
F16C 11/04 20060101AFI20160728BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20160728BHJP
【FI】
F16C11/04 T
B23K26/21 G
B23K26/21 N
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-3714(P2012-3714)
(22)【出願日】2012年1月12日
(65)【公開番号】特開2013-142455(P2013-142455A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏行
【審査官】
稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−133427(JP,A)
【文献】
米国特許第4192622(US,A)
【文献】
特開平10−311334(JP,A)
【文献】
特開平9−126224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/00−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心孔を有する少なくとも一つの中間アーム部材、この中間アーム部材の回転中心孔に相対回動自在に挿入される中心軸状部とこの中心軸状部に直交する抜止部を有する有中心部材、及びこの有中心部材の中心軸状部の外周に嵌合され、上記抜止部との間で該中心軸状部に嵌合された中間アーム部材の軸方向移動を規制する抜止部材を準備するステップ;
有中心部材の中心軸状部を中間アーム部材の回転中心孔に挿入し、該回転中心孔からの突出部分の外周に、上記抜止部材を嵌合させるステップ;及び
有中心部材の中心軸状部と抜止部材を、有中心部材の中心軸状部と抜止部材との径方向の重なり部分において径方向からレーザ溶接で固定するステップ;
を有することを特徴とする相対回動部材の枢着方法。
【請求項2】
請求項1記載の相対回動部材の枢着方法において、上記レーザ溶接ステップの前に、有中心部材の中心軸状部と中間アーム部材の回転中心孔との間に、合成樹脂製のスラストブッシュを介在させるステップをさらに有する相対回動部材の枢着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対回動部材
の枢着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回動運動するアーム部材を回動中心軸で(に)枢着する枢着構造は、機械装置の各所に用いられている。車両関係では、格納式オットマン機構、ドアロック装置、シートの昇降装置、Xアーム式ドアガラス昇降装置等に広く用いられている。このような枢着構造では、回動部材を抜け止めるために金属部材をかしめる(機械的に外力を加えて塑性変形させる)ことが広く行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-43729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かしめには大きな機械設備を要する。さらに、かしめられる部材だけが変形すれば問題はないが、周囲部材にも変形(歪み)が生じる可能性が高く、滑らかな回動運動が妨げられるおそれがある。
【0005】
本発明は、従来の機械的なかしめの問題点を解消し、機械的なかしめを用いることなく、相対回動部材を抜止状態で枢着
できる枢着方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、レーザ溶接によれば、大きな機械的設備を要することなく、機械的な変形も全く生じさせることなく、相対回動部材を抜止状態で枢着できるとの着眼に基づいて完成されたものである。
【0013】
本発明は、回転中心孔を有する少なくとも一つの中間アーム部材、この中間アーム部材の回転中心孔に相対回動自在に挿入される中心軸状部とこの中心軸状部に直交する抜止部を有する有中心部材、及びこの有中心部材の中心軸状部の外周に嵌合され、上記抜止部との間で該中心軸状部に嵌合された中間アーム部材の軸方向移動を規制する抜止部材を準備するステップ;上記有中心部材の中心軸状部を中間アーム部材の回転中心孔に挿入し、該回転中心孔からの突出部分の外周に、上記抜止部材を嵌合させるステップ;及び有中心部材の中心軸状部と抜止部材を
、有中心部材の中心軸状部と抜止部材との径方向の重なり部分において径方向からレーザ溶接で固定するステップ;を有することを特徴としている。
【0014】
この枢着方法では、レーザ溶接ステップの前に、有中心部材の中心軸状部とアーム部材の回転中心孔との間に、合成樹脂製のスラストブッシュを介在させるステップをさらに含むことが好ましい。
【0016】
レーザ溶接は、具体的には、YAGレーザまたは炭酸ガスレーザによって実行することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、少なくとも一つの中間アーム部材の回転中心孔を、有中心部材の中心軸状部に嵌め、該回転中心孔からの中心軸状部の突出部分の外周に、抜止部材を嵌合させてレーザ溶接で固定するため、かしめのような大きな機械的設備を要することなく、機械的な変形も全く生じさせることなく、相対回動部材を抜止状態で枢着できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による
相対回動部材の枢着方法を適用した枢着構造の一実施形態を示すもので、(A)は分解斜視図、(B)は組立状態の縦断面図、(C)は(B)のC矢視図、(D)は(B)のD-D線の拡大模式断面図である。
【
図2】本発明による
相対回動部材の枢着方法を適用した枢着構造の別の実施形態を示すもので、(A)は分解斜視図、(B)は組立状態の縦断面図である。
【
図3】本発明による
相対回動部材の枢着方法を適用した枢着構造のさらに別の実施形態を示す斜視図である。
【
図4】本発明による
相対回動部材の枢着方法を適用した枢着構造の別の実施形態を示すもので、(A)は分解斜視図、(B)は組立状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明による
相対回動部材の枢着方法を適用した枢着構造の第1の実施形態を示している。この実施形態は、金属製の中間アーム部材10を、有中心部材である金属製の端部アーム部材20に枢着する枢着構造である。中間アーム部材10には、その一端部に回転中心孔11が穿設されており、端部アーム部材20には、その一端部に、この回転中心孔11に嵌められる中心軸状部としてのバーリング筒状部21が形成されている。端部アーム部材20のバーリング筒状部21以外の残部は抜止部を構成する。バーリング筒状部21の外周には、合成樹脂製のスラストブッシュ30が嵌められていて、バーリング筒状部21の回転中心孔11からの突出部には、抜止部材としての金属ブッシュ40が嵌められている。スラストブッシュ30は、回転中心孔11とバーリング筒状部21の間に位置して径方向の遊びをとる筒状部31と、中間アーム部材10と端部アーム部材20の間に位置してその軸方向位置を定めるフランジ部32とを有している。金属ブッシュ40は、バーリング筒状部21の外周に嵌められる筒状部41と、中間アーム部材10に接する(対向する)フランジ部42とを有している。
【0020】
以上の第1の実施形態では、
図1(B)のように、端部アーム部材20のバーリング筒状部21、スラストブッシュ30、中間アーム部材10の回転中心孔11、金属ブッシュ40を嵌め合わせて、各部品の軸線方向の位置を定め、その状態で、バーリング筒状部21と筒状部41をレーザ溶接する。このレーザ溶接は、
図1(C)、(D)に示すように、バーリング筒状部21と筒状部41の径方向の重なり部分において、径方向にレーザ光Lを照射して行う。レーザ光は、周方向に適当な間隔をおいて(図示例では120゜間隔)照射することができる。
【0021】
次にレーザ溶接の具体例を挙げる。
筒状部41とバーリング筒状部21の嵌合部径;8mm、
両者の厚さ;1.4mm、
使用レーザ装置;市販のファイバーレーザ装置(出力:5KW)
照射径a(
図1(D));約0.8mmφ前後、
この条件において、良好なレーザ溶接が可能であった。勿論、以上は一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0022】
レーザ光の照射深さは、筒状部41を貫通し、バーリング筒状部21内で留まる(バーリング筒状部21の内周に到達しない)ように定める。すると、
図1(D)に模式的に示すように、照射された部分が熔融し、筒状部41とバーリング筒状部21が接合される。
【0023】
バーリング筒状部21と筒状部41を接合するレーザ光は、
図1(B)に符号L’で示すように、筒状部41とバーリング筒状部21の径方向の微小クリアランスに向けて、クリアランスの内外のバーリング筒状部21と筒状部41が熔融して接合されるように、軸線と平行な方向から照射することも可能である。
【0024】
図2は、本発明による相対回動部材の枢着構造の第2の実施形態を示している。この実施形態は、端部アーム部材20に代えて軸部材20Aを用い、金属ブッシュ40に代えて端部アーム部材40Aを用いたものである。軸部材20Aは、中間アーム部材10の回転中心孔11内に挿入される中実軸20A1と、抜止部としての大径部(フランジ部)20A2を有する段付軸部材である。端部アーム部材40Aは、金属ブッシュ40の筒状部41に代わるバーリング筒状部41’を有している。レーザ光Lは、バーリング筒状部41’と中実軸20A1との重なり部分において径方向から照射されている。
【0025】
図3は、
図2の枢着構造を段付軸部材20Bの左右に対称に配置した本発明の第3の実施形態を示している。段付軸部材20Bは、左右に小径の中実軸20A1を有し、中心部に大径部20A2を有している。左右対称の部材には、
図2と同一の符号を付した。レーザ溶接部位は図示していない。断面は示していないが、
図2(B)と同様(対称)に表れる。
【0026】
図4は、本発明の第4の実施形態を示している。この実施形態は、左右対称の相対回動部材の枢着構造に本発明を適用したもので、
図2の実施形態の段付軸部材20Aと同様の一対の段付軸部材20Aを外側に位置させて対称に配置し、この一対の段付軸部材20Aの間に、この段付軸部材の中実
軸20A1を嵌合させる抜止部材としての筒状体(パイプ体)40Bを配置している。そして、左右の段付軸部材20Aと筒状体40Bの径方向の重なり部分を径方向のレーザ光Lで結合している。また、この実施形態では、中間アーム部材10の回転中心孔11と同様の回転中心孔51を有する第2の中間アーム部材50を、段付軸部材20Aの大径部20A2と筒状体40Bとの間に挟んでいる。つまり、段付軸部材と抜止部材との間に回動自在に保持する、回転中心孔を有するアーム部材は複数枚とすることができる。
【符号の説明】
【0027】
L L’ レーザ光
10 中間アーム部材
11 回転中心孔
20 端部アーム部材(有中心部材)
20A 20B 段付軸部材(有中心部材)
20A1 中実軸(中心軸状部)
20A2 大径部(抜止部)
21 バーリング筒状部(中心軸状部)
30 スラストブッシュ
31 筒状部
32 フランジ部
40 金属ブッシュ(抜止部材)
40A 端部アーム部材(抜止部材)
40B 筒状体(抜止部材)
41 筒状部
41’ バーリング筒状部
42 フランジ部
50 第2の中間アーム部材
51 回転中心孔