(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.表面保護フィルム
本発明の表面保護フィルムは、各種樹脂製品、金属製品、ガラス製品等の傷付きや、塵の付着を防止するためのフィルム、もしくは半導体基板研削時に、回路形成面を保護するためのフィルムである。
【0016】
本発明の保護フィルムの構成の一例を
図1に示す。本発明の表面保護フィルム100には、通常、被保護部材を外部の衝撃等から保護するための吸収層1と、被保護部材に貼着するための粘着層2が含まれる。また吸収層1の他方の面には、必要に応じて、表面保護フィルム100の形状を保持するための基材層3が含まれる。さらに、保護フィルムの用途等に応じて、吸収層1と粘着層2との間には、弾性率の低い他の層(図示せず)が含まれてもよい。
【0017】
(吸収層について)
本発明の表面保護フィルムには、特定の熱可塑性樹脂Aを含む吸収層3が含まれる。熱可塑性樹脂Aは、周波数1.6Hzで温度を変化させながら動的粘弾性を測定した際に、貯蔵弾性率G’
Aが極小となる極小温度(T
A)を有する。熱可塑性樹脂Aは、表面保護フィルムの製造直後、保管中、及び使用時のいずれかの時に上記極小温度(T
A)を有していればよいが、特に表面保護フィルムの使用時に上記極小温度(T
A)を有することが好ましい。
【0018】
ここで、極小温度(T
A)を有するとは、熱可塑性樹脂Aを加温しながら貯蔵弾性率G’
Aを測定していくと、温度上昇とともに貯蔵弾性率G’
Aが降下するが、ある温度(極小温度(T
A))を境に、貯蔵弾性率G’
Aが上昇することをいう。
【0019】
例えば、0.4℃ごとに動的粘弾性測定を行なう場合、(1)ある温度T
Xにおける貯蔵弾性率の平均値G’
A(T
X)と、(2)温度T
X−2℃、T
X−1.6℃、T
X−1.2℃、T
X−0.8℃、T
X−0.4℃における貯蔵弾性率G’
Aの5点の平均値G’
A(T
X1)と、(3)温度T
X+0.4℃、T
X+0.8℃、T
X+1.2℃、T
X+1.6℃、T
X+2.0℃の5点の平均値G’
A(T
X2)とを比較する。このとき、G’
A(T
X)<G’
A(T
X1)、及びG’
A(T
X)<G’
A(T
X2)の関係を満たす温度T
Xを、極小温度とする。
【0020】
このような極小温度(T
A)を有する熱可塑性樹脂Aは、熱可塑性樹脂Aに含まれる結晶性が高い成分と非晶性の成分とのバランス、コモノマー種、コモノマー含量、及び熱可塑性樹脂Aの結晶化速度を制御すること等で発現する。
【0021】
例えば熱可塑性樹脂Aが、結晶性が高いモノマー成分と、非晶性かつ柔軟なモノマー成分とを含むコポリマーである場合、極小温度(T
A)付近の温度でいったん柔軟なモノマー成分が流動性を有し、貯蔵弾性率が低下する。一方、極小温度(T
A)以上の温度で、結晶性が高いモノマー成分が結晶化し、極小温度(T
A)における貯蔵弾性率G’
Aより、極小温度(T
A)より高い温度における貯蔵弾性率G’
Aが大きくなる。結晶性が高いモノマー成分の例にはエチレン、プロピレン等がある。一方、非晶性かつ柔軟なモノマー成分の例には1−オクテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等がある。
【0022】
また、熱可塑性樹脂Aが、結晶化速度が遅いポリマーである場合、冷却固化時に完全に結晶が成長していないことがある。この場合、極小温度(T
A)付近の温度まで温度が上昇すると、熱可塑性樹脂Aの流動性が高くなり、結晶化が進行して極小温度(T
A)より高い温度で貯蔵弾性率G’
Aが大きくなる。
【0023】
ここで、表面保護フィルム100と被保護部材21との間に、異物31が入り込むと、通常、
図2(A)に示すように、表面保護フィルム100と被保護部材21との間に隙間が生じる。この状態で表面保護フィルム100を加温すると、
図2(B)に示すように、吸収層1を構成する樹脂等が軟らかくなり、異物31を包みこむ。しかし、通常の樹脂は、温度が高くなると貯蔵弾性率が単調に低下しつづけ、流動性が高くなる。そのため、通常の樹脂からなる吸収層1に包み込まれた異物31が動きやすく、被保護部材21が損傷することがあった。また表面保護フィルム100と被保護部材21との間に入り込んだ異物31が空気や液体等、流動性を有する場合、吸収層1が軟らかくなると、異物が表面保護フィルム100と被保護部材21との界面で広がりやすい。したがって、表面保護フィルム100と被保護部材21との密着性が低下したり、意匠性が低下することがあった。
【0024】
これに対し、本発明では、吸収層1に含まれる熱可塑性樹脂Aが極小温度(T
A)を有する。そのため、加温すると、吸収層1を構成する熱可塑性樹脂Aの貯蔵弾性率G’
Aが極小温度(T
A)までは低下し、異物31を包み込む。この状態でさらに加温すると、熱可塑性樹脂Aの貯蔵弾性率G’
Aが高くなり、吸収層1が硬くなる。つまり、異物31が吸収層1に包み込まれた状態で保持されて異物31が動き難い。したがって、異物により被保護部材21が損傷される可能性が少ない。また、表面保護フィルム100と被保護部材21との間に入り込んだ異物が空気である場合にも、異物が表面保護フィルム100と被保護部材21との界面で広がらない。したがって、表面保護フィルム100と被保護部材21との密着性が低下することがなく、さらに意匠性も良好に保つことができる。
【0025】
上記熱可塑性樹脂Aの極小温度(T
A)は、熱可塑性樹脂Aのガラス転移温度(Tg)、及び熱可塑性樹脂Aの溶融温度(Tm)と下記の関係を満たせばよく、表面保護フィルムの貼着温度や、被保護部材の材質、表面保護フィルムの用途等により、適宜選択される。
Tg ≦ T
A < Tm
熱可塑性樹脂Aの極小温度(T
A)は、70℃以下であることがより好ましく、さらに好ましくは、20〜65℃である。熱可塑性樹脂Aの極小温度(T
A)が高すぎると、異物31を吸収層1で包み込むために、高温まで加熱しなければならず、被保護部材21に悪影響を及ぼす可能性がある。上記極小温度(T
A)は、熱可塑性樹脂Aを構成するコモノマー種およびコモノマー量を調整すること等で調整できる。
【0026】
熱可塑性樹脂Aの極小温度(T
A)における、周波数1.6Hzで測定した貯蔵弾性率G’
A(T
A)は、8×10
6Pa以下であることが好ましく、より好ましくは1×10
5〜6×10
6Pa、さらに好ましくは1×10
5〜4×10
6Paである。表面保護フィルムの極小温度(T
A)における貯蔵弾性率G’
A(T
A)が8×10
6Paを超えると、極小温度(T
A)での熱可塑性樹脂Aの柔軟性が十分でなく、吸収層1が異物31を十分に包みこめないおそれがある。
【0027】
また、吸収層を構成する熱可塑性樹脂Aの25℃における、周波数1.6Hzで測定した貯蔵弾性率G’
A(25)は、1×10
7Pa以上であることが好ましく、より好ましくは1×10
8〜1×10
9Pa、さらに好ましくは1×10
8〜5×10
8Paである。表面保護フィルムの25℃における貯蔵弾性率G’
A(25)が1×10
7Paを下回ると、常温において、吸収層が軟らかすぎるため、表面保護フィルムの取り扱い性が低下し、表面保護フィルムを、被保護部材に貼着することが困難となる場合がある。
【0028】
貯蔵弾性率G’
Aの測定は、動的粘弾性装置(商品名「RSA−II」、ティー・エイ・インスツルメント社製)で、−40℃から160℃まで0.4℃/分の速度で昇温しながら測定周波数1.6Hzで行いうる。
【0029】
熱可塑性樹脂Aは、上記貯蔵弾性率G’
Aが極小温度(T
A)を有する樹脂であれば、特に制限されない。貯蔵弾性率G’
Aが極小温度(T
A)を有する樹脂は、例えば4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位を70〜90モル%、炭素原子数2または3のα−オレフィンに由来する構成単位を10〜30モル%、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位を0〜10モル%含む4−メチル−1−ペンテン系共重合体でありうる。
【0030】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体において、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位が、70〜90モル%含まれていることが好ましく、75〜87モル%含まれていることがより好ましく、さらに好ましくは80〜86モル%である。4−メチル−1−ペンテン系の共重合体中の、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位が70モル%を下回ると、上記貯蔵弾性率G’
Aが極小温度(T
A)を有さない可能性がある。
【0031】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体には、炭素原子数2または3のα−オレフィン由来の構成単位が含まれる。炭素原子数2または3のα−オレフィン由来の構成単位は、エチレンまたはプロピレンであり、特にプロピレンが好ましい。
【0032】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体中に、炭素原子数が2または3のα−オレフィン由来の構成単位は、10〜30モル%含まれていることが好ましく、13〜25モル%含まれていることがより好ましく、さらに好ましくは14〜20モル%である。
【0033】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体には、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位が含まれていてもよい。炭素数が4〜20のα−オレフィンの例には、直鎖状または分岐状のα−オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物が含まれる。
【0034】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となりうる直鎖状または分岐状のα−オレフィンの例には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素原子数が4〜20、好ましくは4〜10の直鎖状のα−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセンなどの好ましくは炭素原子数が5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状のα−オレフィンが含まれる。
【0035】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となりうる環状オレフィンの例には、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンなどの炭素原子数が4〜20、好ましくは5〜15の化合物が含まれる。
【0036】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となりうる芳香族ビニル化合物の例には、スチレン;及び、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレンなどのモノまたはポリアルキルスチレンが含まれる。
【0037】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となりうる共役ジエンの例には、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは4〜10の化合物が含まれる。
【0038】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となりうる非共役ポリエンの例には、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペンル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエンなどの炭素原子数が5〜20、好ましくは5〜10の化合物が含まれる。
【0039】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となりうる官能化ビニル化合物の例には、水酸基含有オレフィン;ハロゲン化オレフィン;アクリル酸、プロピオン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸などの不飽和カルボン酸類;アリルアミン、5−ヘキセンアミン、6−ヘプテンアミンなどの不飽和アミン類;(2,7−オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物、上記不飽和カルボン酸類の酸無水物などの不飽和酸無水物類;上記不飽和カルボン酸類のハロゲン化物;4−エポキシ−1−ブテン、5−エポキシ−1−ペンテン、6−エポキシ−1−ヘキセン、7−エポキシ−1−ヘプテン、8−エポキシ−1−オクテン、9−エポキシ−1−ノネン、10−エポキシ−1−デセン、11−エポキシ−1−ウンデセンなどの不飽和エポキシ化合物類;などが挙げられる。
【0040】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となりうる水酸基含有オレフィンは、水酸基を有するオレフィン系化合物であれば特に制限は無いが、好ましくは末端水酸化オレフィン化合物である。末端水酸化オレフィン化合物の例には、ビニルアルコール、アリルアルコール、水酸化−1−ブテン、水酸化−1−ペンテン、水酸化−1−ヘキセン、水酸化−1−オクテン、水酸化−1−デセン、水酸化−1−ドデセン、水酸化−1−テトラデセン、水酸化−1−ヘキサデセン、水酸化−1−オクタデセン、水酸化−1−エイコセンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは2〜10の直鎖状の水酸化α−オレフィン;水酸化−3−メチル−1−ブテン、水酸化−4−メチル−1−ペンテン、水酸化−3−メチル−1−ペンテン、水酸化−3−エチル−1−ペンテン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、水酸化−4−メチル−1−ヘキセン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、水酸化−4−エチル−1−ヘキセン、水酸化−3−エチル−1−ヘキセンなどの好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状の水酸化α−オレフィンが含まれる。
【0041】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となりうるハロゲン化オレフィンの例には、ハロゲン化−1−ブテン、ハロゲン化−1−ペンテン、ハロゲン化−1−ヘキセン、ハロゲン化−1−オクテン、ハロゲン化−1−デセン、ハロゲン化−1−ドデセン、ハロゲン化−1−テトラデセン、ハロゲン化−1−ヘキサデセン、ハロゲン化−1−オクタデセン、ハロゲン化−1−エイコセンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは4〜10の直鎖状のハロゲン化α−オレフィン;例えばハロゲン化−3−メチル−1−ブテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−エチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4−エチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−3−エチル−1−ヘキセンなどの炭素原子数が5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状のハロゲン化α−オレフィンが含まれる。
【0042】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となりうる炭素原子数4〜20のα−オレフィンは、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ビニルシクロヘキサン、及びスチレンが好ましい。4−メチル1−ペンテン系共重合体には、炭素原子数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位が、1種のみ含まれてもよく、また2種以上含まれてもよい。
【0043】
吸収層を構成する熱可塑性樹脂Aでありうる4−メチル−1−ペンテン系共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)がポリスチレン換算で1×10
4〜2×10
6であると好ましく、より好ましくは1×10
4〜1×10
6である。
【0044】
4−メチル1−ペンテン系共重合体の合成方法は、国際公開第2005/121192号明細書、国際公開第2011/055803号明細書に記載の方法と同様でありうる。
【0045】
吸収層には、上記4−メチル−1−ペンテン系共重合体の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂が含まれていてもよい。他の樹脂の例には、4−メチル−1−ペンテンの重合体、炭素原子数2〜4のα−オレフィン等が含まれる。4−メチル−1−ペンテンは、様々な重合体を用いることができるが、代表的市販品には三井化学株式会社製、商品名:TPX(登録商標)、品番:MX−002がある。また、炭素原子数2〜4のα−オレフィンの例には、ポリプロピレン、ポリブテン等がある。代表的市販品には、プライムポリマー社製、商品名:プライムPP(登録商標)、三井化学株式会社製、商品名:ビューロン(登録商標)等がある。
【0046】
吸収層の厚さは、表面保護フィルムの用途に応じて、適宜選択される。例えば、表面保護フィルムを、半導体基板の研削時の回路形成面保護用のフィルムとする場合、吸収層の厚さは、50〜350μmであることが好ましく、より好ましくは、60〜300μm、さらに好ましくは70〜120μmである。吸収層の厚さをこの範囲とすることで、吸収層が前述のように、異物を包み込み、回路形成面を十分に保護することができる。
【0047】
(粘着層について)
本発明の表面保護フィルムは、被保護部材に貼着するための粘着層が含まれることが好ましい。
【0048】
粘着層は、粘着剤等からなる層でありうる。粘着層を構成する粘着剤は、被保護部材の種類に応じて適宜選択される。粘着剤の例には、天然ゴム系;合成ゴム系;シリコーンゴム系;アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル等のアクリル系粘着剤;が含まれる。これらの粘着剤の中でも、粘着性等の面から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0049】
粘着層を構成する粘着剤は、放射線硬化型、熱硬化型、加熱発泡型等、一定条件により粘着力が低下する粘着力スイッチング機能を有する粘着剤であってもよく、スイッチング機能を有さない粘着剤であってもよい。
【0050】
表面保護フィルムを、半導体基板の研削時の回路形成面保護用のフィルムとする場合、粘着力スイッチング機能を有するアクリル系の紫外線硬化型粘着剤が好ましい。粘着層が粘着力スイッチング機能を有すると、回路形成面から容易に剥離でき、回路形成面を損傷するおそれが少ない。
【0051】
アクリル系の紫外線硬化型粘着剤は、例えば(1)分子中に光重合性炭素−炭素二重結合が導入されたアクリル酸エステル系共重合体100重量部と、(2)分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物0.1〜20質量部と、(3)光開始剤5〜15質量部を含む粘着剤等でありうる。
【0052】
アクリル系の紫外線硬化型粘着剤に含まれる、(1)分子中に光重合性炭素−炭素二重結合が導入されたアクリル酸エステル系共重合体は、1)エチレン性二重結合を有するモノマー、及び反応性官能基を有する共重合性モノマーを共重合した共重合体と、2)上記反応性官能基と反応しうる基を有する光重合性炭素−炭素二重結合を含むモノマーと反応させた化合物でありうる。
【0053】
(1)アクリル酸エステル系共重合体を得るための1)共重合体に含まれるエチレン性二重結合を有するモノマーは、メタクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルモノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル;アクリロニトリル;アクリアミド;スチレン;等のエチレン性二重結合を有するモノマー等でありうる。
【0054】
また、(1)アクリル酸エステル系共重合体を得るための1)共重合体に含まれる反応性官能基を有する共重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、Nーメチロール(メタ)アクリルアミド等でありうる。これらのうち1種のみを、上記エチレン性二重結合を有するモノマーと重合させてもよく、2種以上を重合させてもよい。
【0055】
1)共重合体を得る際、エチレン性二重結合を有するモノマーと、反応性官能基を有する共重合性モノマーとの重合比は、70〜99質量%:30〜1質量%であることが好ましく、80〜95質量%:20〜5質量%であることが好ましい。
【0056】
また、(1)アクリル酸エステル系共重合体を合成するための2)光重合性炭素−炭素二重結合を含むモノマーは、特に制限されず、1)共重合体が含む反応性官能基(例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、グリシジル基など)と反応し得る基を有する光重合性炭素−炭素二重結合を含む光反応性モノマーであればよい。
【0057】
1)共重合体の反応性官能基と、2)光反応性モノマーの反応性官能基と反応しうる基との組み合わせの例には、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジル基、水酸基とイソシアネート基等がある。このような組み合わせの中でも、容易に付加反応が起こる組み合わせが望ましい。また、2)光反応性モノマーの反応性と反応しうる基は、1)共重合体の反応性官能基と付加反応する基に限らず、反応性官能基と縮合反応する基であってもよい。
【0058】
アクリル系の紫外線硬化型粘着剤に含まれる、(2)分子中に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物の例には、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が含まれる。これらの(2)低分子量化合物は、アクリル系の紫外線硬化型粘着剤に1種のみが含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。低分子量化合物とは、分子量が10,000以下の化合物であり、上記低分子量化合物の分子量は、さらに好ましくは5,000以下である。
【0059】
アクリル系の紫外線硬化型粘着剤に含まれる(3)光開始剤の例には、ベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が含まれる。紫外線硬化型粘着剤には、光開始剤が1種のみ、もしくは2種以上含まれていてもよい。紫外線硬化型粘着剤中の光開始剤の量は、(1)アクリル酸エステル系共重合体100質量部に対して、5〜15質量部であることが好ましい。より好ましくは、5〜10質量部である。
【0060】
アクリル系の紫外線硬化型粘着剤には、架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤の例には、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリーグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物;等が含まれる。
【0061】
アクリル系の紫外線硬化型粘着剤には、ロジン系、テルペン樹脂系等のタッキファイヤー、各種界面活性剤等が含まれていてもよい。これらが含まれると、粘着特性が調整される。
【0062】
本発明の表面保護フィルムに含まれる粘着層の厚さは、特に制限はない。例えば、表面保護フィルムが半導体基板の研削時の回路形成面保護用のフィルムである場合、3〜100μmであることが好ましく、10〜100μmであることが好ましい。粘着層の厚さが過剰に厚いと、吸収層が異物を十分に保持できなくなるおそれがある。一方、粘着層の厚さが過剰に薄いと、十分な粘着性が得られない可能性がある。
【0063】
粘着層の粘着力は、表面保護フィルムの用途等に応じて、適宜選択する。粘着層の粘着力が低すぎると、表面保護フィルムを被保護部材に十分に貼着できないおそれがある。また、表面保護フィルムの粘着力が高すぎると、表面保護フィルムを剥離する際に、被保護部材を破損したり、表面保護フィルムの剥離後に被保護部材の表面に粘着層が残ること等がある。
【0064】
表面保護フィルムを、半導体基板の研削時の回路形成面保護用のフィルムとする場合、表面保護フィルムの粘着力は、SUS304−BA板に対する粘着力に換算して0.1〜5N/25mmであることが好ましく、0.1〜3N/25mmであることがより好ましい。なお、粘着剤が放射線硬化型、熱硬化型、加熱発泡型等の粘着力スイッチング機能を有する粘着剤の場合には、放射線照射等により粘着力をスイッチングさせて低下させた後の粘着力が上記範囲内にあることが好ましい。
【0065】
(基材層について)
本発明の表面保護フィルムには、弾性率の高い基材層が含まれてもよい。基材層は、通常、前述の吸収層の一方の面に積層される。表面保護フィルムに基材が含まれると、表面保護フィルムの変形が防止される。
【0066】
基材層の弾性率は、表面保護フィルムの用途等に応じて、適宜選択される。例えば、表面保護フィルムを、半導体基板の研削時の回路形成面保護用のフィルムとする場合、周波数1.6Hzで測定した25℃における貯蔵弾性率G’
B(25)が、5×10
7Pa以上であることが好ましく、より好ましくは、1×10
8Pa〜2×10
10Paである。基材層の貯蔵弾性率G’
B(25)が低いと、半導体基板研削中、もしくは半導体基板研削後に、半導体基板と表面保護部材とを貼着した積層体が変形し、半導体基板が割れる可能性がある。
【0067】
基材層は、所望の形状に成形可能であり、かつ上記吸収層を構成する熱可塑性樹脂Aとの親和性が良好な樹脂からなることが好ましく、例えばポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等からなる層であることが好ましい。
【0068】
基材層の厚さは、表面保護フィルムの用途等に応じて、適宜選択する。表面保護フィルムを、半導体基板の研削時の回路形成面保護用のフィルムとする場合には、20〜100μmが好ましく、より好ましくは38〜50μmである。基材層の厚さが、薄すぎると、半導体基板研削中または研削後に、表面保護フィルム変形し、半導体基板が割れる可能性がある。一方、基材層の厚さが厚すぎると、表面保護フィルムの厚さが厚くなり、取り扱い性が低下する。
【0069】
(その他の層について)
本発明の表面保護フィルムには、吸収層と粘着層との間に、弾性率の低いその他の層が含まれていてもよい。その他の層の弾性率は、吸収層の弾性率より低いことが好ましい。具体的には、周波数1.6Hzで測定した25℃における貯蔵弾性率G’
C(25)が8×10
6Pa以下であることが好ましく、より好ましくは1×10
4〜8×10
6Paである。その他の層の貯蔵弾性率G’
C(25)が8×10
6Paを超えると、表面保護フィルムと被保護部材との間に入り込んだ異物を、吸収層が包み込むことを阻害する可能性がある。
【0070】
表面保護フィルムに含まれるその他の層は、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体(アルキル基の炭素数1〜4)、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数3〜8)等を含む樹脂層でありうる。中でも、酢酸ビニル単位の含有量が5〜50質量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む層が、好ましい。
【0071】
(表面保護フィルムの製造方法)
本発明の表面保護フィルムは特に制限されない。例えば、基材層、吸収層、及び粘着層が含まれる表面保護フィルムは、1)基材層及び吸収層を積層し、さらに2)吸収層上に粘着層を形成して得られる。
【0072】
1)基材層及び吸収層の積層は、基材層を構成する樹脂と、吸収層を形成する樹脂を多層製膜機により押出製膜して行ってもよい。また基材層及び樹脂層を、それぞれカレンダー法、Tダイ押出法、インフレーション法、キャスト法等、公知の方法により成膜しておき、これらをドライラミネートして積層してもよい。この場合には、基材層と吸収層との接着力を高めるために、両者の間に新たに接着層を形成してもよい。また、基材層及び吸収層に、それぞれにコロナ放電処理等の易接着処理を施してもよい。
【0073】
2)粘着層は、上記粘着剤を溶液又はエマルション液等の粘着剤塗布液とし、これをロールコーター、コンマコーター、ダイコーター、メイヤーバーコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター等の公知の方法で吸収層上に塗布・乾燥して得られる。粘着層形成後、粘着層の汚染防止のため、粘着層表面に剥離フィルムを貼着することが好ましい。
【0074】
粘着層は、剥離フィルムの一方の面に、上述の方法で粘着剤塗布液を塗布・乾燥して粘着層を形成し、これをドライラミネート法等により、吸収層上に転写して形成してもよい。
【0075】
粘着剤塗布液を乾燥する際の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜300℃の温度範囲において、10秒〜10分間乾燥することが好ましく、80〜200℃の温度範囲において15秒〜5分間乾燥することがさらに好ましい。また、粘着剤塗布液の乾燥終了後、表面保護粘着フィルムを40〜80℃で5〜300時間程度加熱してもよい。
【0076】
本発明の表面保護フィルムが、半導体基板の研削時の回路形成面保護用のフィルムである場合には、半導体基板の回路形成面の汚染防止の観点から、基材層、吸収層、粘着層等の全ての製膜環境や、これらの原料資材の製造環境が、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持されていることが好ましい。
【0077】
(表面保護フィルムの用途)
本発明の表面保護フィルムは、建材や光学部品等の各種樹脂製品、金属製品、ガラス製品等の輸送時、保管時、加工時の傷付き防止や、防塵を目的として、これらの表面に貼着されるフィルムでありうる。本発明の表面保護フィルムは、表面保護フィルムと被保護部材との間に異物が入り込んだ場合、吸収層の極小温度(T
A)以上n温度まで加温して、異物を吸収層で包み込むことが好ましい。
【0078】
また、本発明の表面保護フィルムは、半導体基板の回路非形成面を研削して、半導体基板を所望の厚さとする際の、半導体基板の回路形成面の傷付きや破損を防止するためのフィルムでありうる。特に、半導体基板の研削時には、摩擦熱で半導体基板の温度が上昇する。本発明の表面保護フィルムでは、高い温度でも、表面保護フィルムと半導体基板との間に入り込んだ異物が吸収層に包み込まれた状態で保持できる。したがって、表面保護フィルムの温度が上昇しても、異物と半導体基板とが擦れること等を防ぐことができる。また、表面保護フィルムが異物を包み込むため、異物と回路形成面との界面のみに局所的に荷重が加わることを防止でき、半導体基板が割れる恐れが少ないものとできる。
【0079】
2.半導体装置の製造方法
本発明の半導体装置の製造方法は、一方の面のみに回路が形成された半導体基板を準備する準備工程と、前記半導体基板の回路形成面に、前述の表面保護フィルムの粘着層を貼着する貼着工程と、半導体基板の回路非形成面を研削する研削工程と、表面保護フィルムを、前記半導体基板の前記回路形成面から剥離する剥離工程とを含む。
【0080】
一般的な半導体装置の製造方法では、500〜1000μm程度の厚さの半導体基板の一方の面に、回路を形成する。その後、回路を形成していない側の面(回路非形成面)を研削し、半導体基板を薄層化する。準備工程は、回路非形成面を研削する前の、厚さの厚い半導体基板を準備する工程でありうる。半導体基板は、例えばシリコンウェハ、ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、ガリウム−リン、ガリウム−ヒ素−アルミニウム等の基板でありうる。
【0081】
貼着工程は、上記半導体基板の回路形成面に、前述の表面保護フィルムの粘着層を貼着する工程である。貼着は、人手で行ってもよいが、通常、ロール状の表面保護フィルムを取り付けた自動貼り機によって行う。自動貼り機の例には、タカトリ社製、型式:ATM−1000B、同ATM−1100、同TEAM−100、帝国精機社製、型式:STLシリーズ、日東精機社製、型式:DR−8500II、同DR−3000II等がある。
【0082】
研削工程は、上記半導体基板の回路非形成面を研削する工程である。研削は、スルーフィード方式、インフィード方式等、公知の方法で行うことができる。いずれの方法においても、砥石で半導体基板を研削する。
【0083】
研削工程では、砥石と半導体基板との摩擦熱により、半導体基板の温度が上昇する。本発明では、研削工程開始時の半導体基板の温度が表面保護フィルムの吸収層に含まれる熱可塑性樹脂Aの極小温度(T
A)より低い温度であり、研削工程中の半導体基板の温度が、上記極小温度(T
A)より高い温度であることが好ましい。これにより、研削中に半導体基板と表面保護フィルムとの間に異物(研削クズ等)が入り込んだとしても、吸収層の温度が上昇することで、異物が吸収層に包み込まれる。さらに吸収層の温度が上昇することで、この異物が吸収層に包み込まれたまま保持される。したがって、研削時に異物と回路形成面とが擦れることがない。また異物が吸収層に包み込まれているため、回路形成面と異物との界面に局所的に荷重がかかることも少ない。したがって、研削工程で半導体基板が割れることを防止できる。
【0084】
研削工程開始時の半導体基板の温度は、通常18〜28℃程度であり、好ましくは20〜25℃である。また研削工程中の半導体基板の温度は、研削する基板の材質に依存するが、通常、20〜120℃であり、30〜80℃であることが好ましく、さらに好ましくは40〜70℃である。
【0085】
研削工程後、必要に応じて、半導体基板の回路非形成面をさらに処理してもよい。回路非形成面の処理は、表面保護フィルムを介して、半導体基板を裏面加工機のチャックテーブル等に固定して行う。非形成面の処理の例には、半導体基板のポリッシング、ケミカルエッチング、ドライエッチング、プラズマ処理等が含まれ、半導体基板の回路非形成面に生じた歪みの除去や、半導体基板のさらなる薄層化、酸化膜等の除去、電極形成前の処理等を行う。
【0086】
また、上記研削工程後、半導体基板の裏面にダイボンディング用接着フィルムを、貼着する工程を行ってもよい。ダイボンディング用接着フィルムを貼着する装置の例には、タカトリ社製、型式:ATM−8200、同DM−800等がある。また、最近では、裏面加工部、ダイボンディング用接着フィルム貼り付け部、表面保護フィルム剥離部が一体の装置となったいわゆるインライン裏面加工機も実用化されている。このようなインライン裏面加工機の例には、東京精密製社製、型式:PG300RMがある。
【0087】
上記研削工程後、半導体基板の回路形成面から表面保護フィルムを剥離する剥離工程を行う。表面保護フィルムの剥離は、人手により行ってもよいが、一般的に自動剥がし機と称される装置により行う。自動剥がし機の例には、タカトリ社製、型式:ATRM−2000B、同ATRM−2100、帝国精機社製、型式:STPシリーズ、日東精機社製、型式:HR8500−II等がある。また、表面保護フィルムの剥離性を高めるため、半導体基板を加熱しながら剥離してもよい。
【0088】
表面保護フィルムを剥離した後の半導体基板の回路形成面を、必要に応じて洗浄する。洗浄方法の例には、水洗浄、溶剤洗浄等の湿式洗浄、プラズマ洗浄等の乾式洗浄等がある。湿式洗浄する場合には、超音波洗浄を併用してもよい。これらの洗浄方法は、半導体基板表面の汚染状況により適宜選択する。
【0089】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、前述のように、研削工程において半導体基板が割れるおそれが少ない。したがって、半導体基板を50μm以下まで、薄層化することも可能である。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0091】
以下に熱可塑性樹脂の製造方法を示す。
(合成例1)熱可塑性樹脂A−1の調製
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温30℃まで加熱し、全圧が0.12MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.005mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を130℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは45.9gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は88mol%、プロピレン含量は12mol%であった。ポリマーの融点(T
m)は145℃であり、極限粘度[η]は1.7dl/gであった。
【0092】
(合成例2)熱可塑性樹脂A−2の調製
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4−メチル−1−ペンテンを450ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.19MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは44.0gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は85mol%、プロピレン含量は15mol%であった。
【0093】
(合成例3)熱可塑性樹脂A−3の調製
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4−メチル−1−ペンテンを450ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.28MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは32.5gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は80mol%、プロピレン含量は20mol%であった。
【0094】
(合成例4)熱可塑性樹脂A−4の調製
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.11MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは23.9gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は80mol%、プロピレン含量は20mol%であった。
【0095】
(合成例5)熱可塑性樹脂A−5の調製
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.13MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは36.9gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は71.9mol%、プロピレン含量は28.1mol%であった。
【0096】
(合成例6)熱可塑性樹脂A−6の調製
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.15MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは36.9gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は70.9mol%、プロピレン含量は29.1mol%であった。
【0097】
(合成例7)熱可塑性樹脂A−7の調製
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温30℃まで加熱し、全圧が0.20MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは36.9gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は60mol%、プロピレン含量は40mol%であった。
【0098】
(合成例8)粘着剤塗布液Nの調整
アクリル酸エチル48重量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル27重量部、アクリル酸メチル20重量部、メタクリル酸グリシジル5重量部、及び重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5重量部を混合し、トルエン65重量部、酢酸エチル50重量部が入った窒素置換フラスコ中に撹拌しながら80℃で5時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌して反応させた。反応終了後、冷却し、これにキシレン25重量部、アクリル酸2.5重量部、及びテトラデシルベンジルアンモニウムクロライド1.5重量部を加え、空気を吹き込みながら80℃で10時間反応させ、光重合性炭素−炭素二重結合が導入されたアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。この溶液に、共重合体(固形分)100重量部に対して光開始剤としてベンゾイン7重量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名:オレスターP49−75S)1.0重量部、1分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亜合成化学工業(株)製、商品名:アロニックスM−400)5重量部を添加し、トルエン及び酢酸エチルにより塗布に適した粘度に調製して粘着剤塗布液Nを得た。
【0099】
[実施例1]
熱可塑性樹脂A−1を、単軸単層押出機により、下記条件で厚さ160μmのフィルム状に製膜した。
(単軸単層押出機条件)
シリンダー温度:230〜250℃
アダプター温度:230〜250℃
Tダイ温度:230〜250℃
キャスティングロール温度:20℃
【0100】
上記フィルム(吸収層)を、基材層(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム:(厚さ38μm、帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンGEC))にドライラミネートした。さらに、前記吸収層の基材層ラミネート面と反対側の面に、前記粘着剤塗布液Nをコンマコーターにより、厚さ40μmとなるように塗工した。塗工後、60℃において24時間加熱し、これを室温まで冷却して粘着層として、表面保護フィルムを得た。
【0101】
[実施例2]
熱可塑性樹脂Aを熱可塑性樹脂A−2とした以外は、実施例1と同様に吸収層を作製した。この吸収層を、実施例1と同様に基材層と積層した。続いて、吸収層の基材層ラミネート面と反対側の面に前記粘着剤塗布液Nをコンマコーターにより、厚さ20μmとなるように塗工した。塗工後、60℃において24時間加熱し、これを室温まで冷却して粘着層として、表面保護フィルムを得た。
【0102】
[実施例3]
吸収層の厚さを120μmとし、粘着層の厚さを5μmとした以外は、実施例2と同様に表面保護フィルムを得た。
【0103】
[実施例4]
吸収層の厚さを70μmとし、粘着層の厚さを5μmとした以外は、実施例2と同様に表面保護フィルムを得た。
【0104】
[実施例5]
熱可塑性樹脂Aを熱可塑性樹脂A−3とした以外は、実施例1と同様に吸収層を作製した。この吸収層に、実施例1と同様に基材層を積層した。続いて、吸収層の基材層ラミネート面と反対側の面に前記粘着剤塗布液Nをコンマコーターにより、厚さ5μmとなるように塗工した。塗工後、60℃において24時間加熱し、これを室温まで冷却して粘着層として、表面保護フィルムを得た。
【0105】
[実施例6]
熱可塑性樹脂Aを熱可塑性樹脂A−4とした以外は、実施例1と同様に表面保護フィルムを得た。
【0106】
[比較例1]
熱可塑性樹脂Aを熱可塑性樹脂A−5とした以外は、実施例1と同様に表面保護フィルムを得た。
【0107】
[比較例2]
熱可塑性樹脂Aを熱可塑性樹脂A−6とした以外は、実施例1と同様に表面保護フィルムを得た。
【0108】
[比較例3]
熱可塑性樹脂Aを熱可塑性樹脂A−7とした以外は、実施例1と同様に表面保護フィルムを得た。
【0109】
[比較例4]
熱可塑性樹脂AをEV460(三井・デュポンポリケミカル株式会社製)とし、厚さを120μmとした以外は、実施例1と同様に吸収層を作製した。この吸収層を、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム:(厚さ25μm、帝人デュポンフィルム株式会社製、テオネックスQ81)に積層した。続いて、吸収層の基材層ラミネート面と反対の面に前記粘着剤塗布液Nをコンマコーターにより、厚さ20μmとなるように塗工した。塗工後、60℃において24時間加熱し、これを室温まで冷却して粘着層として、表面保護フィルムを得た。
【0110】
[比較例5]
熱可塑性樹脂AをEV460(三井・デュポンポリケミカル株式会社製)とし、厚さを70μmとした以外は、実施例1と同様に吸収層を作製した。この吸収層を、基材層(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム:(厚さ50μm、帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンGEC))にドライラミネートした。続いて、吸収層上に前記粘着剤塗布液Nをコンマコーターにより、厚さ50μmとなるように塗工した。塗工後、60℃において24時間加熱し、これを室温まで冷却して粘着層として、表面保護フィルムを得た。
【0111】
[実施例7]
実施例5と同様に、吸収層を作製した。この吸収層の一方の面に、前記粘着剤塗布液Nをコンマコーターにより、厚さ40μmとなるように塗工した。塗工後、60℃において24時間加熱し、これを室温まで冷却して粘着層として、表面保護フィルムを得た。
【0112】
[実施例8]
基材層を積層しなかった以外は、実施例1と同様に表面保護フィルムを得た。
【0113】
[比較例6]
熱可塑性樹脂AをEV460(三井・デュポンポリケミカル株式会社製)とし、厚さを120μmとした以外は、実施例1と同様に吸収層を作製した。この吸収層の一方の面に前記粘着剤塗布液Nをコンマコーターにより、厚さ10μmとなるように塗工した。塗工後、60℃において24時間加熱し、これを室温まで冷却して粘着層として、表面保護フィルムを得た。
【0114】
[評価]
実施例及び比較例に使用した熱可塑性樹脂の密度、メルトフローレート、吸収層の貯蔵弾性率G’
A、損失弾性率G”
A、及び損失正接tanδ(G”
A/G’
A)、基材層の引張弾性率を下記の方法で測定した。また、実施例及び比較例で作製した表面保護フィルムを、半導体基板に貼着し、半導体基板の研削を行った場合の、半導体基板の割れ及び反りを評価した。これらの結果を、表1及び表2に示す。
【0115】
(熱可塑性樹脂のメルトフローレートの測定)
各実施例及び比較例で用いた熱可塑性樹脂について、メルトフローレート(MFR)をASTM D1238に準じ、荷重2.16kg、温度230℃の条件で測定した。
【0116】
(熱可塑性樹脂の融点(T
m)の測定)
各実施例及び比較例で用いた熱可塑性樹脂について、融点(T
m)を、セイコーインスツルメンツ社製DSC測定装置(DSC220C)を用い、測定用アルミパンに約5mgの試料をつめて、100℃/minで200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、10℃/minで−50℃まで降温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点から融点(T
m)を算出した。
【0117】
(熱可塑性樹脂の密度の測定)
各実施例及び比較例で用いた熱可塑性樹脂について、密度をJIS K7112の密度勾配管法に従って測定した。
【0118】
(吸収層の貯蔵弾性率G’
A、損失弾性率G”
A、損失正接tanδ(G”
A/G’
A)、及びガラス転位温度(Tg)の測定)
各実施例及び比較例で用いた吸収層について、貯蔵弾性率G’
A、損失弾性率G”
A、及び損失正接tanδ(G”
A/G’
A)を測定した。これらは、動的粘弾性装置(商品名「RSA−II」、ティー・エイ・インスツルメント社製)を使用し、−40℃から160℃まで0.4℃/分の速度で昇温しながら測定周波数1.6HzでフィルムのMD方向の弾性率を測定した。またtanδが最大となる温度からガラス転移温度(Tg)を算出した。25℃におけるG’
A(25)、G”
A(25)、tanδ(25)、60℃におけるG’
A(60)、G”
A(60)、tanδ(60)、極小温度(T
A)、極小温度(T
A)におけるG’
A(T
A)、ガラス転移温度(Tg)を表1及び表2に記載する。
【0119】
(基材層の引張弾性率の測定)
実施例及び比較例で用いた基材層と同様のフィルムから試験片を切り出し、JIS K 6301−2に準拠し、200mm/minにて引張試験を行い23℃での引張弾性率を測定した。
【0120】
(半導体基板の反り及び割れの評価)
ミラーウエハ(8インチコインロールウエハ(SUMCO社製)の一方の面に、100μmガラスビーズ(SPL−100、UNION社製)を、3個配置した。ミラーウエハのガラスビーズを配置した面に、実施例または比較例で作製した表面保護フィルムを貼着した。表面保護フィルムは、ウエハ貼り付け装置(DR−3000、日東電工社製)で貼着した。貼着温度は23℃とした。
【0121】
続いて、ミラーウエハの表面保護フィルムを貼着していない面を、研削機(DFG860、DISCO社製)により研削した。研削は、ミラーウエハの厚さが50μm、20μm、もしくは15μmとなるまで行った。いずれも、研削終了時のミラーウエハの温度は60℃であった。
研削後、ミラーウエハの厚さが50μmであるときの半導体基板の割れ、ミラーウエハの厚さが20μmであるときの半導体基板の割れ及び反り、ミラーウエハの厚さが15μmであるときの半導体基板の割れをそれぞれ観察し、下記のように評価した。
【0122】
・ミラーウエハの割れ
ミラーウエハ3枚研削(合計9個のビーズで評価)したときの、割れを観察し、以下のように評価した。
割れ無し率が70%:A
割れ無し率が50%以上70%未満:B
割れ無し率が35%以上50%未満:C
割れ無し率が35%未満:D
【0123】
・ミラーウエハの反り
研削後の半導体基板を、水平面上に載置したとき、ミラーウエハと水平面との隙間の最大距離を測定し、以下のように評価した。
最大距離が15mm以下:○(反りなし)
最大距離が15mmを超える:×(反りあり)
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
表1及び表2に示されるように、貯蔵弾性率G’
Aを測定した際に、ガラス転位温度Tgから溶融温度までの間に極小温度(T
A)が観察される熱可塑性樹脂を吸収層とした場合(実施例1〜8)、ミラーウエハを厚さ20μmまで研削しても、ミラーウエハに割れが生じ難かった。実施例1〜9では、ガラスビーズが吸収層に包み込まれ、その状態で吸収層によって保持されたことで、表面保護フィルムと異物との界面に、局所的な荷重がかからなかったと推察される。
【0127】
一方、上記極小温度(T
A)が観察されない熱可塑性樹脂からなる吸収層を有する表面保護フィルムでは、ミラーウエハを厚さ20μmまで研削すると、ミラーウエハに割れが生じた(比較例1〜5)。これは、ミラーウエハと表面保護フィルムとの間のガラスビーズが動いてミラーウエハが傷ついたり、吸収層が十分にガラスビーズを包み込めず、ガラスビーズとミラーウエハとの接触位置に局所的に荷重がかかったためであると推察される。
【0128】
また、表面保護フィルムに基材層を形成しなかった場合には、研削後のミラーウエハと表面保護フィルムとの積層体に反りが生じやすかった(実施例7、8、及び比較例6)。これは、表面保護フィルムが研削時の熱で歪んだためと推察される。また特に、吸収層がエチレン酢酸ビニル系の樹脂である比較例6では、研削後の積層体が丸まってしまった。