(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
最初に、本発明は次に示す効果を奏するものであり、本発明の一実施形態として示す植物栽培システムは、分散型の植物工場において、以下のポイントを改善することができる。
【0022】
(1)生産性の向上
・植物工場(栽培ユニット)の稼働管理を簡素化する。
植物栽培システムは、収益性の高い栽培場所(栽培ユニットの場所)を選定し、選定した栽培場所に基づいた栽培計画を作成する。また、植物栽培システムは、作成した栽培計画と栽培場所(栽培ユニットの場所)の稼動状態を管理する。
・生産量を増大させ、収穫時期を調整する。
植物栽培システムは、栽培中の植物の成長度合いを検出し、計画通りの時期に予定の収穫量を得る。
・予定の収穫量を安定に確保できるようにする。
植物栽培システムは、栽培中の植物の成長度合いを制御して、予定の収穫量を確保する。
【0023】
(2)収穫品の質の向上
栽培環境を制御することにより、収穫品の質を向上させる。例えば、収穫品の質を計る指標には、「味」、「特定機能成分の含有率」、「外観」などがある。
【0024】
(3)病害虫の発生率低減・耐性UP
・栽培過程における病害虫の発生要因を隔離する。
・発病害虫の検出:栽培する植物の画像に基づいて、画像処理により検出する。
・予防処理:環境管理を行うとともに、バランスのとれた環境になるように制御する。
【0025】
なお、対象となる植物の特性に応じて、上記の改善ポイントの一部を組み合わせて実施することも可能である。
【0026】
次に、本実施形態における植物栽培システムを、次に示す分散型の植物工場に適用した場合の概要について説明する。
本実施形態に示す分散型の植物工場は、分散配置された複数のユニット(栽培ユニット)を組み合わせ、植物栽培システムがその管理を行う。
a)栽培ユニットを管理対象の単位(単位セル)とする。栽培管理の方式は、栽培ユニットを単位セルとしたセル生産方式をとる。作付けから収穫までの栽培工程を栽培ユニット単位で統一することにより栽培ユニット単位の環境制御が可能となり、少量・多品種の栽培を可能とする。
b)植物栽培システムは、栽培環境を制御して、栽培ユニット内において栽培する植物を所望の状態となるように成長度合いを常時管理する。
c)植物栽培システムは、各栽培工程における処理を自動化する。これにより、作付け(定植)から収穫までの栽培中に管理者が栽培ユニット内に直接入ることがなくなることにより、栽培過程における管理者が行う処理を簡素化することができる。これにより、植物栽培システムは、管理者の栽培管理の負担を軽減する。
d) 栽培工程中、管理者が栽培ユニット内に直接入ることがなくなることで、病害虫の侵入率を減らし、病害虫の発生リスクを低減させている。
e)植物栽培システムは、検出対象とする植物と栽培環境を計測した結果を数値化し、数値化した計測結果に基づいて栽培状態を判定する。
f)栽培ユニットの稼働率が向上するように、生産計画にあわせて栽培ユニット内の配置を変更する。例えば、栽培ユニットには棚20が設けられており、棚20に設けられている棚板21の高さ方向の間隔(パレット(栽培槽61)の高さ方向の間隔)、棚板21に配置するパレット(栽培槽61)内の株の配置密度を変更する。植物栽培システムは、その配置案を作成し、その配置案に基づいた情報を、現場の管理者又は作業者に提供する。
【0027】
以下、本発明の植物栽培システム(分散型の植物工場)の一実施態様について、より具体的に説明する。
図1は、本実施形態による植物栽培システムの概要を示す図である。
この
図1に示す植物栽培システム1は、栽培制御装置200を備えている。植物栽培システム1は、植物栽培装置100(栽培ユニット10)、情報提供装置300、端末400を備えていてもよい。栽培制御装置200のほか、植物栽培装置100(栽培ユニット10)、情報提供装置300、端末400は、それぞれがネットワーク500を介して通信可能な状態にある。
植物栽培装置100は、栽培ユニット10を含み、栽培ユニット10の内部で植物を栽培する。
栽培制御装置200は、植物栽培装置100を制御することにより、植物栽培装置100における植物の栽培を制御する。栽培制御装置200は、制御処理部210と記憶部290とを備える。栽培制御装置200の詳細は後述する。
このように、植物栽培システム1は、栽培制御装置200が植物の栽培を行う植物栽培装置100を制御することにより、植物栽培装置100における植物栽培過程の栽培環境の維持管理を行うことができる。
【0028】
例えば、
図1に示すように、地域ZAからZCに対応させて設けられた栽培拠点PAからPCがある。各栽培拠点は、植物栽培システム1が当該地域において植物を栽培する施設の位置を示す。地域ZAからZCに対応する栽培拠点PAからPCには、植物栽培システム1の植物栽培装置100がそれぞれ設けられている。
複数の栽培拠点(PAからPC)のそれぞれには、植物を栽培する領域を内部に含み、内部で栽培する植物の栽培環境を調整できる栽培ユニット10が、植物栽培装置100の構成の一部としてそれぞれ設けられている。
【0029】
上記の栽培ユニット10として、地域ZA(第1の地域)に設けられた栽培拠点PAの栽培ユニット10(10A、第1の栽培ユニット)と、地域ZB(第2の地域)に設けられた栽培拠点PBの栽培ユニット10(10B、第2の栽培ユニット)とがある場合について説明する。これらの栽培ユニット10(10A、第1の栽培ユニット)と栽培ユニット10(10B,第2の栽培ユニット)とにおいては、所定の栽培ユニットごとにそれぞれ定められた栽培計画に従って植物が栽培されているものとする。なお、各栽培拠点に設けられる栽培ユニット10の数量は、単数又は複数の何れでもよい。栽培ユニット10の数量は、栽培拠点の規模、栽培量に応じて定められる。
【0030】
植物栽培システム1における植物栽培過程の栽培環境の維持管理の一例を示す。
例えば、栽培ユニット10A(第1の栽培ユニット)において、栽培計画(第1栽培計画)に基づいた予定収穫量が予め定められている。さらに、栽培ユニット10A(第1の栽培ユニット)において、栽培されている植物の成長度合いに応じて植物の推定収穫量が所定の間隔で算出されている。このような条件の下で、植物栽培システム1は、上記の栽培計画(第1栽培計画)と、上記の推定収穫量とに基づいて、栽培ユニット10A(第1の栽培ユニット)における植物の栽培状況を判定する。また、植物栽培システム1は、上記の判定の結果により必要に応じて、栽培ユニット10A(第1の栽培ユニット)における栽培計画(第1栽培計画)、及び、栽培ユニット10B(第2の栽培ユニット)において植物を栽培する第2栽培計画を植物の栽培過程においてそれぞれ変更する。
このような計画管理を行うことにより、植物栽培システム1(制御処理部)は、栽培ユニット10A(第1の栽培ユニット)における栽培計画(第1栽培計画)に基づいた予定収穫時期に予定の収穫量を確保することができる。
【0031】
端末400は、植物栽培システム1に係る情報を登録し、また、生成された情報を確認するための端末装置である。
情報提供装置300は、内部に記憶部、通信処理部、制御部(何れも、不図示)を備えており、端末400と通信することにより、制御部が生成した情報を、通信処理部によって端末400に提供し、端末400に登録された情報を取得して記憶部に記憶させる。情報提供装置300は、端末400から取得した情報を栽培制御装置200に送り、栽培制御装置200の記憶部290に記憶させる。例えば、情報提供装置300は、端末400を通して、植物栽培装置100によって栽培されている植物の情報の提供や、契約情報の登録などを行い、契約情報を栽培制御装置200の契約情報処理部240(
図4参照)を介して記憶部290に記憶させる。
【0032】
次に、本実施形態による植物栽培システムを適用する植物栽培装置の概要について説明する。
図2は、本実施形態による植物栽培システムにおける植物栽培装置の概要を示す図である。
図2(a)は、植物栽培装置の平面図を示し、
図2(b)は、その植物栽培システムにおける植物栽培装置の断面図を示す。
植物栽培装置100は、植物を栽培する領域を内部に含み、植物を栽培する領域における植物の栽培環境を調整できる栽培ユニット10と、栽培ユニット10の内外に設けられる各設備とにより構成される。
【0033】
栽培ユニット10は、壁11、天井12、床13によって囲まれた領域を内部に設けている。栽培ユニット10において、壁11、天井12、床13が栽培床62の周辺を外気空間と隔てることにより、栽培ユニット10は、植物を栽培する領域として設けられている栽培床62の周辺を栽培される植物に適した雰囲気に、外部環境から独立させて調整できる。
例えば、
図2(a)に示すように、栽培ユニット10の内部には、床13上に棚20が設けられている。棚20は、栽培ユニット10の対向する壁11の一方に寄せて配置されている。対向する壁11の他方と棚20の間には、作業者が作業する空間が確保されている。本実施形態による植物栽培システム1においては、この空間を資材の搬入、収穫物の取り出しなどの際に通路として利用する。
【0034】
上記通路の一方の端には壁11があり、その壁11には空気調和装置(エアコン)81の室内機が設けられている。エアコン81の室内機には、室内機に対応して設けられる室外機(不図示)が接続されている。室外機は、栽培ユニット10の外に設けられている。エアコン81の室内機は、温度、湿度、風量、風向などの制御情報に応じて、温度、湿度、風量、風向を制御しつつ、栽培ユニット10の内部の空気を循環させる。なお、エアコン81は、栽培ユニット10の外部から空気を内部に取り込み、内部の空気を外部に排出させる機能を有するものであってもよい。また、エアコン81は、栽培ユニット10の内部の空気のCO
2濃度を制御する機能を有するものであってもよい。
また、通路の他方の端には、扉14があり、資材の搬入、収穫物の取り出しなどのために作業者が出入りする際に利用する。この扉14は、植物の栽培過程の期間においては、閉ざされた状態に保つことにより、外気が内部に入ることを防ぐ。扉14は、一般的な扉に限られず、ビニールカーテンなどでもよい。
なお、壁11、天井12、床13についても、栽培床62の周辺を外部環境から独立させて調整できるように形成されているものであればよく、例えば、ビニールシートなどの材質で形成されていてもよい。
【0035】
以下、栽培ユニット10における栽培方法を水耕栽培にした場合について説明する。栽培ユニット10の外部には、所定量の栽培溶液を貯留し、栽培ユニット10の内部に貯留した栽培溶液を供給するためのタンク30と、環境制御処理部134(本図において不図示、
図4参照)とが設けられている。環境制御処理部134は、栽培ユニット10の内部の環境を制御する。環境制御処理部134の詳細を後述する。
このように、植物栽培装置における栽培ユニット10は、栽培ユニット10の内部と外部の設備を分離するとともに、さらに栽培ユニット10の内部には、必要時以外に入場しないようにして植物を栽培するようにする。
【0036】
以下、植物栽培装置における栽培床62への栽培溶液の供給について説明する。
棚20とタンク30との間には、その間を繋いで栽培溶液を流す給水路40と排水路50とがあり、タンク30に貯留している栽培溶液を棚20とタンク30との間で循環するように構成されている。
タンク30から棚20までの間を接続する給水路40には、ポンプ41が設けられており、ポンプ41の吸入側がタンク30側に、ポンプ41の吐出側が棚20側になるように接続されている。ポンプ41を駆動することにより、タンク30の内部に貯留している栽培溶液を棚20に送ることができる。
棚20からタンク30までの間を接続する排水路50には、棚20からタンク30に向かう方向に、止水弁54と、ポンプ55が順に設けられており、ポンプ55の吸入側が止水弁54側に、ポンプ55の吐出側がタンク30側になるように接続されている。棚20から止水弁54までの間の排水路50には、分水路56が設けられており、分水路56には止水弁57が設けられている。止水弁54を開き、止水弁57を閉じた状態でポンプ55を駆動することにより、棚20側からタンク30に栽培溶液を循環(還流)させることができる。止水弁57を開き、止水弁54を閉じることにより、棚20側から栽培溶液を排水させることができる。
【0037】
また、タンク30には、上水が供給される上水供給路31が接続されており、上水供給路31には、図示していない流量計と止水弁とが設けられている。さらに、タンク30には、タンク30に栽培溶液が供給される溶液供給路32が接続されており、溶液供給路32には、図示していない流量計と止水弁とが設けられている。
【0038】
また、タンク30には、栽培溶液の貯留量を検出する水位検出手段33があり、水位検出手段33による検出結果によって、所定の貯水量になるように制御される。所定の貯水量は、上限値と下限値とが定められており、所定の貯水量が下限値より低下すると上水が注入され、上限値に達すると上水の注入が停止するように制御される。また、上水の注入に応じて、栽培溶液も注入するように制御される。
また、タンク30には、栽培溶液を撹拌する攪拌器34と、溶液濃度検出手段35とがタンク30の内部に設けられており、所定のタイミングにおいて撹拌器が溶液を撹拌するように制御される。溶液濃度検出手段35は、栽培溶液の所定の成分の濃度を検出し、濃度検出信号を出力する。
【0039】
また、
図2(b)に示すように、棚20には、複数段の棚板21がそれぞれ設けられている。また、各棚板21上には、各棚板21に対応させて栽培床62がそれぞれ設けられている。棚板21を配置する高さは、栽培床62において栽培する植物の種類に応じて定められた所定の間隔に応じて定められている。栽培床62は、同じ形の栽培槽61に設けられており、栽培槽61に設けられた状態で各棚板21上に設けられている。
前述の給水路40は各栽培槽61に応じてそれぞれ分岐され、給水路40から分岐された分岐路の端部には、流量調整弁44がそれぞれ設けられている。各栽培槽61には、給水路40から供給される栽培溶液が分岐路を介して、それぞれ注入される。
また、棚20には、最下段の栽培槽61より低い位置に、各栽培槽61からの排水を一時的に貯留する仮貯留タンク53が設けられている。また、各栽培槽61から仮貯留タンク53までの排水を流す排水路51が設けられており、仮貯留タンク53は、各栽培槽61からの排水を一時的に貯留する。各栽培槽61には、栽培槽61に溜め置いた栽培溶液を排水させるメンテナンス用の排水弁52がそれぞれ設けられている。
【0040】
また、上記の栽培槽61は、注水された栽培溶液を溜めて置く箱型の貯水槽を備えている。例えば、栽培槽61は、ステンレス鋼などの腐食しない金属材、又は、プラスチック材などによって形成される。
図3は、本実施形態による栽培槽を説明する図である。
図3(a)は、栽培槽61を棚板21に配置した状態の俯瞰図である。
図3(b)は、栽培槽61を棚板21に配置した状態の断面図である。
栽培槽61(貯水槽)の底面には、栽培槽61における底面を平面視した状態で、底面の一部の領域を仕切る仕切り板が設けられている。仕切り板の形状は、予め定められる所定の深さの栽培溶液を栽培槽61に溜め置くことができるように形成されている。
図3(a)に示される栽培槽61は、2つの仕切り板により3つの領域(Zo1からZo3)に仕切られており、各領域に注水された栽培溶液は、栽培溶液の深さが仕切り板の栽培溶液の深さ方向の幅を超えたときに仕切り板を越流して移動する。
領域Zo1は、栽培溶液が給水路40から注入される領域であり、栽培溶液の注入時に栽培床62を乱さないように設けられている。領域Zo2は、栽培床62が設けられる領域であり、3つの領域のなかで最も面積が広くなるように確保されている。領域Zo2には、メンテナンス用の排水弁52が設けられている、栽培時には、排水弁52を閉じた状態で用いられ、領域Zo2は所定量の栽培溶液によって満たされる。領域Zo3は、領域Zo2から仕切り板を越流した栽培溶液を排水口58から排水する。
上記のような栽培槽61は、栽培溶液を循環させつつ、予め定められた量の栽培溶液を溜めて置くことができるようになる。また、本実施形態に示す栽培槽61においては、栽培槽61に溜めて置くことができる栽培溶液の量を一定に保つことができることから、予め定められた量の栽培溶液が溜め置かれた栽培槽61の重量を一定に保つことが可能となる。
また、
図3(b)に示すように、このような栽培槽61を棚板21上にそれぞれ設ける際には、棚板21に対する栽培槽61の荷重(重量)を検出する圧力検出手段151(検出部150、圧力センサー)を栽培槽61の下面と棚板21の上面との間に挟み、圧力検出手段151(圧力センサー)が栽培槽61の荷重を検出できるように固定する。
【0041】
次に、照明装置の配置について説明する。
棚板21の下部には、当該栽培槽61が設けられた棚板21より1段下段に設けられる栽培槽61における栽培床62に所定の光量とスペクトル(波長成分)の光を照射する照明装置82が設けられている。例えば、照明装置82はLED照明である。LED照明は、効率が高く発熱量が少ないものであるが、点灯時には少ないながら所定の熱量が発生する。各栽培槽61の下部に照明装置82を設けたことにより、点灯時の熱量を栽培溶液の加温に利用することができる。また、栽培溶液を循環させているため、栽培ユニットの外部(例えば、タンクなど)において放熱させてもよい。このようにして、照明装置82の熱によるエアコン81の冷房負荷の増大を防ぎ、空調負荷を低減できる。
次に、検出部150の配置について説明する。
検出部150は、前述の圧力検出手段151のほか、撮像部152を含む画像処理部155を備えるものであってもよい。撮像部152は、天井12に固定するか、撮像部152を旋回させる雲台に取り付けてもよい。画像処理部155は、栽培過程にある植物を撮像した画像情報から植物の背丈、繁茂量、色素割合、及び、温度分布情報のうちの少なくとも何れかの情報を検出する。画像処理部155は、撮像部152に設けられていてもよい。
【0042】
図4を参照し、植物栽培システム1の構成について説明する。
図4は、本実施形態の植物栽培システム1の構成を示す図である。この
図4に示される植物栽培システム1には、栽培制御装置200と、複数の植物栽培装置100を代表する1つの植物栽培装置100が示されている。栽培制御装置200は、複数の植物栽培装置100における植物の栽培を管理して、複数の植物栽培装置100を連係させることが可能である。以下の説明において、k番目の植物栽培装置100を特定する識別情報として、「k」を附して説明する場合がある。
栽培制御装置200は、制御処理部210、記憶部290を備える。制御処理部210は、計画作成部220、状態推定部231、判定部233、及び、契約情報処理部240を備える。制御処理部210において、状態推定部231と判定部233は、各植物栽培装置100に対応して設けられている。N台の植物栽培装置100を管理する場合には、それぞれN個の状態推定部231と判定部233が設けられる。また、計画作成部220と契約情報処理部240は、各植物栽培装置100に共通の構成として設けられている。なお、制御処理部210における各機能部間の情報交換は、記憶部290に記憶された情報を参照する形式で行うこととする。
【0043】
記憶部290は、栽培制御装置200が管理する各植物栽培装置100に係る情報を、植物栽培装置100を識別する識別情報にそれぞれ関連付けて記憶する。各植物栽培装置100に係る情報には、植物栽培装置100の設備情報が含まれる。植物栽培装置100に設けられている設備に対する制御項目には、例えば、植物工場における栽培ユニット10(ユニット)内の栽培環境を制御する項目がある。栽培ユニット10内の栽培環境を制御する項目には、気温、湿度、CO
2濃度、溶液温度(水温)、給水量、pH(水素イオン指数)、EC(電気伝導度))、光量(質:波長、強度、時間)、外気導入量などがある。記憶部290は、これらの制御項目に応じた設備情報を記憶する。さらに、これらの制御項目を制御した履歴を記憶する制御履歴情報があり、記憶部290は、制御した時刻と関連付けて制御履歴情報を記憶する。また、植物栽培装置100において検出可能な情報として、植物の状態を直接的に検出する情報と、間接的に検出した情報とがある。植物の状態を直接的に検出する情報には、植物の重量のほかに、画像情報により検出する情報がある。画像情報から得られる情報には、大きさ、背丈、葉の広がり、葉の茂み具合(繁茂量)、色、特定波長の吸収量とその分布情報(色素割合)、熱画像計測装置(サーモカメラ)によって検出された温度分布情報、赤外線距離センサーなどによって検出された距離情報などが含まれる。間接的に検出した情報には、養分やCO
2の消費量などが含まれる。記憶部290は、これらの情報の検出値を、情報を検出した時間と関連付けて検出履歴情報として記憶する。さらに、記憶部290は、植物の状態を推定した結果として、状態推定部231が算出する推定収穫量(Yest))と推定状態量(Xest)とを記憶する。
【0044】
制御処理部210は、栽培計画(第1栽培計画)と、予定収穫時期の推定収穫量とに基づいて、栽培ユニット10A(第1の栽培ユニット)における植物の栽培状況を判定する。植物栽培システム1は、上記の判定の結果により必要に応じて、栽培ユニット10A(第1の栽培ユニット)における栽培計画(第1栽培計画)、及び、栽培ユニット10B(第2の栽培ユニット)において植物を栽培する栽培ユニット10B(第2の栽培ユニット)における栽培計画(第2栽培計画)を植物の栽培過程においてそれぞれ変更する。
制御処理部210がこのような計画管理を行うことにより、植物栽培システム1(制御処理部)は、栽培ユニット10A(第1の栽培ユニット)における栽培計画(第1栽培計画)に基づいた予定収穫時期に予定の収穫量を確保することができる。なお、制御処理部210は、予定収穫量に対して不足する収穫量を補うことが可能な場合には、栽培ユニット10B(第2の栽培ユニット)を選択する。
【0045】
また、制御処理部210は、栽培ユニット10の内部に設けられている栽培床62に定植されている植物の栽培に適するように栽培ユニット10の内部の環境を調整する制御情報を生成する。制御処理部210が生成する制御情報には、次の2つの情報が含まれる。1つ目の情報は、植物の種別に応じて定められる制御モデルを設定する設定情報(栽培環境条件設定情報)である。2つ目の情報は、上記の種別の植物を栽培する条件を定める栽培条件(指定栽培条件)に応じて植物の成長度合いを制御する制御情報(成長度合い制御情報)である。
【0046】
以下、制御処理部210が備える各構成要素について順に説明する。
計画作成部220は、指定栽培条件、搬送先、「要求収穫量」、「栽培するユニット」、「コスト」、「販売見込み価格」などを条件にして「栽培(作付け・収穫)、選果・出荷」の計画を作成する。計画作成部220は、「栽培(作付け・収穫)、選果・出荷」の計画を作成する場合は、後述する2つのステップ(「予定収穫量の算出」のステップと「栽培する場所の特定」のステップ)の処理を行う。上記の処理により、植物の種別に応じて定められる制御モデルを設定する設定情報(栽培環境条件設定情報)と、上記の種別の植物を栽培する条件を定める栽培条件(指定栽培条件)に応じて植物の成長度合いを制御する制御情報(成長度合い制御情報)を生成する。また、計画作成部220は、「栽培拠点情報」、「ユニット情報」、「栽培数量」を上記の制御情報に関連付けて記憶部290に記憶させる。
また、前述したとおり、計画作成部220は、複数の植物栽培装置100について管理する。計画作成部220は、各植物栽培装置100によって検出・推定・判定された情報を参照し、植物栽培装置100を連係させて、必要な出荷量、品質を確保するように制御する。例えば、計画作成部220は、植物栽培装置100Aにおける栽培ユニット10Aの状態から栽培の継続が困難と判定した場合、栽培制御装置200が管理する他の栽培ユニットの情報を参照し、代替栽培ユニットの抽出処理を行う。計画作成部220は、各栽培ユニットにおける栽培計画の情報を始めとする各種情報を参照する。例えば、各種情報として、各植物栽培装置100に対応する状態推定部231がそれぞれ検出した各栽培ユニットの状態を示す情報、各植物栽培装置100に対応する判定部233がそれぞれ判定した各栽培ユニットの状態の判定結果などが含まれる。
【0047】
状態推定部231は、現在の植物の状態と、現在の植物の成長度合いに基づいて推定される収穫量(推定収穫量(Yest))を算出する。状態推定部231は、上記の推定演算において、環境制御部80に供給された操作量Uと、植物の状態を示す検出情報(検出情報DET)とに基づいて、推定収穫量(Yest)と推定状態量(Xest)とを算出する。状態推定部231は、算出した推定収穫量(Yest)を判定部233に供給し、推定状態量(Xest)を環境制御処理部134に供給する。このような状態推定部231は、状態観測器として構成してもよい。なお、植物の状態を示す情報(検出情報DET)は、検出部150において検出された植物の重量を含み、さらに、植物を撮像して得られた画像情報から検出される植物の背丈、繁茂量、色素割合、及び、温度分布情報のうちの少なくとも何れかを含むものであってもよい。
【0048】
判定部233は、状態推定部231が推定した推定収穫量(Yest)と、当初の計画作成時に設定されている予定収穫量rとの差(誤差情報ΔY)に基づいて、植物の成長度合いが標準モデルからの乖離が大きくなっているか否かを判定する。例えば、判定部233における判定演算部235(
図5)は、上記の判定を2つの閾値に基づいて判定し、判定結果(成長度合い判定情報)を環境制御処理部134に供給する。また、判定部233は、誤差情報ΔYを環境制御処理部134に供給する。
【0049】
植物栽培装置100は、栽培ユニット10、環境制御部80、環境制御処理部134を備える。
栽培ユニット10は、植物の栽培過程において外部との出入りを行わないように制御されている。そのため、植物の成長状態を検出するための検出部150を栽培ユニット10の内部に設けている。検出部150は、前述のとおり、植物の情報(育成状況(画像)、状態(重さ、長さ、表面温度))などを検出して、検出情報DETとして出力する。
環境制御部80は、栽培ユニット10に対応させて設けられており、環境制御処理部134から供給される操作量Uに応じて栽培ユニット10における植物の栽培環境を調整する。環境制御部80は、前述のエアコン81、照明装置82、タンク30に溜め置かれた栽培溶液を循環させる溶液処理部などが含まれる。環境制御部80は、図示するエアコン81、照明装置82、溶液処理部が行う栽培環境の調整項目に限らず、例えば、気温、湿度、CO
2濃度、溶液温度(水温)、給水量、pH(水素イオン指数)、EC(電気伝導度))、光量(質:波長、強度、時間)、外気導入量などの項目を制御してもよい。また、環境制御部80は、上記の制御項目に応じた検出項目を検出する。例えば、環境情報には、ユニット内環境項目として、気温、湿度、CO
2濃度、溶液温度(水温)、給水量、pH(水素イン指数)、EC(電気伝導度))、光量等がある。環境制御部80は、上記の制御項目の操作量Uか、制御項目の操作量Uに対応する検出情報を出力する。
環境制御処理部134は、栽培ユニット10から供給される検出情報DETと、環境制御部80から供給される制御項目の操作量Uとを中継して状態推定部231に送る。また、環境制御処理部134は、計画作成時の段階で、計画作成部220から、植物の種別に応じて定められる制御モデルを設定する設定情報(栽培環境条件設定情報)と、上記の種別の植物を栽培する条件を定める栽培条件(指定栽培条件)に応じて植物の成長度合いを制御する制御情報(成長度合い制御情報)の供給を受け、内部に備える記憶領域に記憶する。環境制御処理部134は、計画作成部220から供給された情報と、状態推定部231において推定された推定状態量(Xest)と、判定部233から供給される誤差情報ΔYとに基づいて環境制御部80を制御する操作量Uを生成する。なお、環境制御処理部134は、計画作成部220から供給された情報の切換を、判定部233から供給される成長度合い判定情報に基づいて行う。環境制御処理部134における詳細の処理は後述とする。
【0050】
図5を参照し、
図4に示した植物栽培システム1の制御系統を説明する。
図5は、本実施形態の植物栽培システム1の制御系統を示す図である。この
図5には、植物栽培システム1の制御系統をブロックダイアグラムとして示したものである。各構成と信号は、前述の
図4に対応する。
【0051】
この
図5に示される制御系統において、基準入力(制御目標)とする予定収穫量rが設定され、栽培計画に基づいて栽培された結果により、収穫時期に収穫量Yを得る。このような制御系を構成する一実施態様を示す。この
図5に示される制御系統は、植物栽培装置100ごとに設けられており、予定収穫量rを基準にして所望の収穫量が得られる状態にあると判定されて栽培が進行している場合には、それぞれの制御系統ごとに独立に制御される。
【0052】
栽培対象の植物と、植物の周囲の環境を制御する環境制御部80とをまとめて制御対象として示す。この制御系では、出力である収穫量Yが基準入力(制御目標)として設定された予定収穫量rになるように、植物の栽培環境が制御されている。
植物は、設定された栽培環境の条件の下で成長する。植物は、収穫時期に収穫量Yが予定収穫量rを得ることができるように、各成長過程の各段階において育成に適した環境条件になるように栽培環境が制御される。収穫量Yは、収穫時に確定するものであり、成長過程の期間には検出することができない。
成長過程の期間において、植物の状態を間接的に検出する変数として、例えば、背丈、重量、葉の量(繁茂量)、色(色素割合)、及び、温度分布情報などがある。
植物は、光合成を行いながら、与えられた光量の下で養分とCO
2を吸収し成長する。このように、植物は、与えられた光量の下で、吸収した養分量、吸収したCO
2量を組織内に蓄積して成長し、組織を増加させて背丈Hが伸びる。よい状態で成長している植物は、増加した組織に水分を所定量含むことにより、成長に応じて重量Wが増加する。
【0053】
また、葉の量(繁茂量)は、成長に応じて増加する。ただし、病気などの影響により水分の吸収量が低下すると、見かけの繁茂量が低下する。葉の量(繁茂量)の変化を、植物を撮像した画像情報から検出することにより植物の状態を判定することができる。
また、色の変化や温度分布を、植物を撮像した画像情報から検出することにより、標準状態と病気などの状態を判定することができる。
【0054】
このような植物の状態を検出することにより、間接的に成長度合いを推定することができる。植物の状態を検出した結果を検出情報DET(
図5)として示す。検出情報DETは、重量W、背丈H、葉の量(繁茂量)、色(色素割合)、及び、温度分布情報などの情報を総じた変数である。植物を栽培する環境において、上記の検出情報DETをそれぞれ検出する検出部が設けられており、検出部からの出力が上記の検出情報DETになる。
【0055】
このような植物には、成長過程の期間において成長状態に応じた栽培環境が設定される。栽培対象の植物と、植物の周囲の環境を制御する環境制御部80とを制御対象と見立てることにより、栽培環境の設定条件を制御対象に対する操作量Uとすることができる。要するに、設定された栽培環境に応じた操作量Uが制御対象の環境制御部80に供給されている。
【0056】
上記のとおり、植物の成長状態は、直接的に検出することができない。さらに、植物の状態を示す情報として得られる検出情報DETがあるが、植物の状態を間接的に検出した情報に過ぎない。そこで、植物の状態を示す検出情報DETと、環境状態を示す操作量Uとに基づいて、植物の状態を推定することにより、推定精度を高めるようにした。
状態推定部231は、植物の状態(成長状態)を推定する。状態推定部231は、制御対象に供給される操作量Uと、植物の状態を示す検出情報DETとに基づいて、推定収穫量Yestと、推定状態量Xestとを算出し、算出した推定値のそれぞれを出力する。上記の推定収穫量Yestは、収穫時期の植物の収穫量Yの推定値として、現在の状態量に基づいて算出した推定値を示す。推定状態量Xestは、植物の成長度合いを示す推定値として、現在の状態量に基づいて推定した結果を示す。
【0057】
環境制御処理部134は、入力情報である誤差情報ΔYに応じて、制御対象に対する操作量Uを生成する変換部である。
環境制御処理部134は、誤差情報ΔYの値、制御対象の状態情報に従って、誤差情報ΔYに応じて生成する操作量Uの値を変更する。具体的には、誤差情報ΔYの値については、後述の判定部233からの制御情報に応じて操作量が最適な値になるように制御される。制御対象の状態情報については、状態推定部231によって算出された推定値である、推定状態量Xestに応じて操作量が最適な値になるように制御される。
【0058】
判定部233は、加算器232によって予定収穫量rと推定収穫量Yestとの誤差情報ΔYを算出する。判定部233は、誤差情報ΔYの値に基づいて、環境制御処理部134に対する制御情報を生成する。
図6は、判定部233の処理の一例を示す図である。
図6(a)に示されるグラフは、時間の経過(横軸、(時))に応じて変化する成長度(縦軸(収穫量))を示す成長曲線(成長度曲線)が示されている。
図6に示されるグラフの起点(原点)は、植物が定植された時点を示し、定植されてから予定収穫時期T0に到るまでの植物の成長度合いが示されている。この図に示されるグラフg1が当初の栽培計画に基づいた成長度合いを示し、グラフg2が現在までの成長状態の記録と、将来見込まれる成長度合いの推定結果を示す。また、縦軸のrが予定収穫量を示し、Yestが推定収穫量を示す。
【0059】
植物の成長が順調でない場合に、グラフg1とグラフg2との乖離幅が大きくなり、それに応じて、予定収穫量rと推定収穫量Yestの差も大きくなる。
そこで、予定収穫量rと推定収穫量Yestの差を誤差情報ΔYとすれば、式(1)に示される関係になる。
【0060】
ΔY=(r−Yest) ・・・(1)
【0061】
誤差情報ΔYを、予め定められた閾値を基準に判定し、判定結果に応じた制御情報を生成する。
例えば、2つの閾値Yth1(第1閾値)とYth2(第2閾値、Yth1>Yth2)とを予め定める。
予定収穫量rと推定収穫量Yestの差(ΔY)の大きさが閾値Yth1(第1閾値)より大きい(ΔY>Yth1)と判定した場合、判定部233は、植物に異常状態が生じていることを検出し、検出結果を出力する。植物栽培システム1は、判定部233によって検出された結果に応じて、栽培の継続が不可な状態にあると判定し、当該栽培ユニットにおける植物の栽培を中断するように制御する。植物栽培システム1は、環境制御処理部134に設定されている条件(栽培計画)を次に栽培する植物の条件に合わせて変更する。
【0062】
また、予定収穫量rと推定収穫量Yestの差(ΔY)の大きさが、閾値Yth2(第2閾値)以上で、且つ閾値Yth1(第1閾値)以下(Yth2≦ΔY≦Yth1)と判定した場合、判定部233は、植物の成長が当初の計画との間に乖離が生じてきたことを検出し、検出結果を出力する。植物栽培システム1は、判定部233によって検出された結果に応じて、栽培環境の変更が必要な状態にあると判定し、制御対象に対する操作量Uを適した値になるように制御する。具体的には、判定部233は、環境制御処理部134に設定されている条件を変更し、栽培計画に従うように操作量Uを調整する。
【0063】
また、予定収穫量rと推定収穫量Yestの差(ΔY)の大きさが閾値Yth2(第2閾値)より小さい(ΔY<Yth2)と判定した場合、判定部233は、植物の成長が当初の計画との間に乖離が少ないことを検出し、検出結果を出力する。植物栽培システム1は、判定部233によって検出された結果に応じて、栽培環境の変更が不要な状態にあると判定し、制御対象に対する操作量Uの算出条件を変更することなく制御する。具体的には、判定部233は、環境制御処理部134に設定されている条件を予め定められた栽培計画に従って算出される操作量Uを生成する。
【0064】
なお、予定収穫量rと推定収穫量Yestの差(ΔY)の大きさが閾値Yth1(第1閾値)より大きい(ΔY>Yth1)と判定した場合に、植物栽培システム1は、栽培継続の判定を栽培支援者に委ねて、栽培支援者にその結果を通知するようにしてもよい。その場合、植物栽培システム1は、栽培支援者に栽培の継続可否の判定を行うように促す表示を行うとともに、栽培支援者による判定結果の処理を行う。栽培支援者による判定結果、継続不可と判定された場合には、植物栽培システム1は、環境制御処理部134に設定されている条件を変更する。
【0065】
なお、上記の説明において、予定収穫量rと推定収穫量Yestの差(ΔY)の大きさを、2つの閾値Yth1(第1閾値)とYth2(第2閾値、Yth1>Yth2)とによって判定するものとして説明したが、予定収穫量rと推定収穫量Yestの差(ΔY)の絶対値|ΔY|の大きさを、上記と同様に判定するものとしてもよい。
【0066】
図6(b)に示されるグラフは、時間の経過(横軸、(時))に応じて変化する色彩分析の結果を品質の成長曲線として示されている。
品質の成長度として、味、色などの形状によって判定しにくい価値の高さを示す指標を定義する。例えば、味であれば、実が熟すにつれて糖度が高くなる。糖度を赤外線の吸収量などによって検出することにより、糖度によって味を判定することができる。色であれば、検出した色を彩度、色度などの判定基準に応じて判定することにより、所定の色の範囲に含まれるか否かを判定することができる。色の判定は、白色光を照射した場合の連続スペクトルの強度分布として検出するだけに限られず、特定の波長の光の吸収量を検出してもよい。
【0067】
図6(b)に示されるグラフの原点は、植物が定植された時点を示し、定植されてから予定収穫時期T0に到るまでの品質の成長度合いが示されている。この
図6(b)に示されるグラフg3が当初の栽培計画に基づいた品質の成長度合いを示し、グラフg4が現在までの品質の成長状態の記録と、将来見込まれる品質の成長度合いの推定結果を示す。また、縦軸は、所望の品質が得られたときを100%とする100分率によって示されている。
【0068】
植物の成長が順調でない場合に、成長過程の段階でグラフg3とグラフg4との乖離幅が大きくなり、それに応じて、収穫予定時期の品質も所望の品質から乖離することが推定できる。
図6(a)に示した、成長度合いの推定と同様な閾値判定を行うことにより、品質についても、成長過程の段階で、回復処置や、栽培断念などを判定することが可能となる。
【0069】
図6(c)に示されるグラフは、時間の経過(横軸、(時))に応じて変化する背丈Hを品質の成長曲線として示されている。
図6(c)に示されるグラフの原点は、植物が定植された時点を示し、定植されてから予定収穫時期T0に到るまでの背丈Hが、品質の成長度合いとして示されている。この
図6(c)に示されるグラフg5が当初の栽培計画に基づいた背丈Hの成長度合いを示し、グラフg6とg7のそれぞれが、判定閾値の下限値と上限値を示す。
背丈Hの場合、商品価値が認められる適当な大きさがある。この大きさから大きすぎても、或は、小さすぎても商品としての品質レベルが低下する。背丈Hを品質の指標にする場合には、このように上限と下限とを示す許容範囲を定めることにより、将来見込まれる品質の成長度合いを推定することができる。
【0070】
次に、
図7を参照して、環境制御処理部134について説明する。
図7は、環境制御処理部134を示す図である。環境制御処理部134は、栽培環境条件設定情報に従って、植物の種別に応じて定められる制御モデル情報を設定し、種別の植物を栽培する条件を定める指定栽培条件に応じて植物の成長度合いを制御する。
この
図7に示される環境制御処理部134は、標準操作量生成部134a、補正操作量生成部134b、係数設定部134cを備える。
標準操作量生成部134aは、予定収穫量rを得る標準的な成長度合いに沿って、植物が成長している場合に、誤差情報ΔYに応じて標準的な操作量Uを生成する。標準操作量生成部134aにおける変換特性は、制御の規範とする標準モデルとして設定した情報により設定される。
補正操作量生成部134bは、予定収穫量rを得る標準的な成長度合いから乖離して植物が成長している場合に、標準的な成長度合いになるような操作量Uを誤差情報ΔYに応じて生成する。補正操作量生成部134bにおける変換特性は、標準的な成長度合いに補正するような制御モデルに応じた情報によって設定される。
係数設定部134cは、推定状態量Xestに応じて定数sの値を変更し、標準操作量生成部134aからの出力値に定数sを乗じて得られた結果(第1の積)と、補正操作量生成部134bからの出力値に定数(1−s)を乗じて得られた結果(第2の積)とを加算する。推定状態量Xestに応じた定数sの値を「1」とすれば、標準操作量生成部134aから出力された値(第1の積)が操作量Uとして出力される。一方、推定状態量Xestに応じた定数sの値を「0」とすれば、補正操作量生成部134bから出力された値(第2の積)が操作量Uとして出力される。
【0071】
次に、植物栽培システム1において実施される各処理について順に説明する。
【0072】
(1)計画作成(栽培(作付け・収穫)・選果・出荷)処理について
以下に示す処理は、作付け前に栽培計画を作成する処理である。
植物栽培システムにおける計画作成部220は、「要求収穫量」、「栽培するユニット」、「コスト」、「販売見込み価格」を条件にして「栽培(作付け・収穫)、選果・出荷」の計画を作成する。以下、計画作成部220による「栽培(作付け・収穫)、選果・出荷」の計画を作成する処理を説明する。
【0073】
a)計画作成時における予定収穫量の算出
最初に、計画作成部220は、次の手順に従って予定収穫量rを算出する。
ア)栽培する植物の種別(品目)の標準的な成長度合いをモデル化した、時間の経過に応じて変化する重量(株・個数)の変化を示す成長曲線、最適収穫量と最適収穫時期の標準値を設定する(標準モデルの設定)。
栽培する植物の種別(品目)を定めることにより、植物の種別(品目)に応じた標準的な成長モデルを定める。なお、植物の種別(品目)に応じた標準的な成長モデルは、過去の統計データに基づいて予め設定されている情報群であって、植物の種別(品目)の標準的な成長曲線、最適収穫量と最適収穫時期を示す情報を含む。標準的な成長曲線とは、植物を定植した時点からの時間と、植物の成長が標準的に推移したときの成長度合いとの対応関係を示す曲線をいう。例えば、成長度合いとして用いることができる指標には、植物の重量、収穫物の重量などがある。植物と収穫物の重量は、株ごとの重量、又は、株数(又は個数)に応じた総重量として示すことができる。
上記の植物の種別に応じた標準的な成長モデルは、植物の種別を識別する識別情報に関連付けられて、記憶部290に記憶されているものとする。また、標準モデルは、規範とする成長モデルを数値化した情報群を示し、計画作成部220が栽培計画を作成する際に参照する。例えば、計画作成部220は、栽培する植物として定めた植物の種別(品目)を識別する識別情報に基づいて、識別情報に関連付けられて記憶部290に記憶されている植物の種別に応じた標準的な成長モデルを検索し、植物の種別に応じた標準モデルとして定める。
【0074】
イ)次に示す指定栽培条件に基づいて、収穫量と収穫時期の補正値(標準モデルに対する補正値)を算出する。
指定栽培条件には、栽培種別(品目)、出荷重量(株数又は個数)、積算光量、出荷予定日などの栽培条件を指定する項目を含む。それらの項目を総じて、指定栽培条件という。なお、積算光量は、スペクトル分布と、スペクトル成分に応じた照度の積算値などの情報を含むものとしてもよい。以下の説明において、照明光のスペクトル分布を照明光の質という場合がある。
【0075】
ウ)栽培する植物の種別(品目)の収穫量と収穫時期を、指定栽培条件に従って算出された補正値に応じて補正する。
前述のとおり、所定の栽培ユニットにおいて収穫可能な標準収穫量が、栽培する植物の種別に応じて定められている。この補正は次に示す場合などに適用される。
例えば、1つの栽培ユニットにおける標準収穫量より多い収穫量(要求収穫量)の要求があり、標準収穫量と要求収穫量との差が少ない場合には、2つの栽培ユニットを用いて栽培するより、1つの栽培ユニットにおける収穫量について栽培コストをかけても増加させた方が経済的な場合がある。このように、栽培計画の作成処理において、標準モデルを補正することにより、標準的な栽培条件から指定栽培条件に応じて補正することが可能か否かを判定する。さらに、補正したときの栽培条件(栽培コスト、期間など)が指定栽培条件を満たす場合の条件を抽出することができる。
【0076】
エ)指定栽培条件の出荷予定日に要求されている出荷重量(要求収穫量)を満たす栽培計画を、予定出荷量を計算するシミュレーションの結果により判定する。
上記シミュレーションの結果による判定は、積算光量とユニット内環境条件を変数にした重み付け演算の結果に基づいて行う。例えば、成長を促進させるために、積算光量を増加させたり、栽培ユニット内の環境条件を標準条件から変更したりする。このように標準栽培条件から補正する場合には、栽培コストの増加を伴うことが多くなる。例えば、補正量に応じて重み付け演算の結果が大きな値を示すように重み付け係数を設定する。このような重み付け係数を設定した場合には、重み付け演算の結果が小さいほど経済的な条件として判定することができる。
このような重み付け演算処理の結果を参照して、指定栽培条件との差異が少なく、標準モデルとの栽培コストの差異が少ない成長促進モデルを数個抽出する。抽出した成長促進モデルを栽培計画の候補とする。
【0077】
b)栽培する場所の特定
次に、上記の栽培計画の候補として抽出された栽培計画に従って、栽培する場所を特定する処理について説明する。栽培する場所の特定は、以下示す処理によって行われる。
【0078】
・収穫品の鮮度維持(品質向上)のため流通期間が短縮でき、かつ生産コストが低減できる栽培ユニットの場所を選定する。
栽培する植物の種別(品目)、出荷情報(時期、量、搬送先住所)、販売見込み額に基づき、栽培ユニットの現地情報(住所、栽培履歴、稼動状況、光熱水費、労働人件費)、取引運送会社情報(運送能力、運賃)に応じて重み付けをして、単独又は複数の変数に基づいた重み付け演算の結果により、予め登録されている栽培ユニットにおいて、所定の期間に遊休状態にある栽培ユニットのなかから選択(抽出)する。
【0079】
植物の栽培拠点が複数あり、栽培拠点には植物を栽培する植物栽培装置100が配置されている。また、予め定められる所定量の植物の供給を予定する搬送先がある場合には、植物栽培装置100と搬送先との対応付けが必要になる。
計画作成部220は、植物栽培装置100に搬送先を対応付けるとともに、植物栽培装置100から搬送先への供給を予定する所定量(要求収穫量)に基づいて、植物栽培装置100において栽培する植物の予定収穫量rを定め、予定収穫量rを確保するように植物栽培装置100における植物の栽培計画を作成する。
また、計画作成部220は、収穫した植物を搬送先に届くまでの期間が短くなるように搬送先と栽培拠点との関係を対応付ける。このように、収穫した植物を搬送先に届くまでの期間が短くなるように対応づけることにより、鮮度を維持して届けることが可能になる。
【0080】
上記を実現するために、計画作成部220は、複数の栽培拠点にそれぞれ設けられている栽培装置と、搬送先とを関連付ける複数の組み合わせを定義する。計画作成部220は、定義した複数の組み合わせのうちから、収穫した植物が搬送先に届くまでの期間が短くなるような、栽培装置と搬送先との組み合わせを選択する。例えば、計画作成部220は、栽培拠点の位置情報と、搬送先の位置情報とを含む情報に基づいて、植物栽培装置100に搬送先を対応付けて、上記の組み合わせを定義する。また、栽培拠点と搬送先のそれぞれの位置情報から得られる距離情報に、搬送経路に応じた重みを付加して、搬送先に届くまでの期間を算出してもよい。
また、計画作成部220は、栽培拠点の情報と、搬送先の位置情報とを含む情報に基づいて、植物栽培装置100に搬送先を対応付ける。
また、計画作成部220は、栽培拠点における栽培費用と、栽培拠点から搬送先までの輸送費用情報と含む情報に基づいて、植物栽培装置100に搬送先を対応付けてもよい。
【0081】
また、計画作成部220は、栽培拠点の情報と、搬送先の位置情報とを変数に含む評価関数が定められており、評価関数により算出された結果から植物栽培装置100に搬送先を対応付けてもよい。
また、計画作成部220は、栽培拠点における栽培費用と、栽培拠点から搬送先までの輸送費用情報とを変数に含む評価関数が定められており、評価関数に基づいて算出された結果に基づいて、植物栽培装置100に搬送先を対応付けてもよい。その場合、計画作成部220は、評価関数において、予め定められた重み付け係数が変数に応じて定められており、評価関数には重み付け係数に基づいた加重加算演算が含まれるようにしてもよい。栽培拠点の情報には、栽培拠点の位置情報が含まれるようにしてもよい。
また、計画作成部220は、栽培拠点から搬送先までの輸送費用情報を、栽培拠点の位置情報と、搬送先の位置情報とに基づいて算出してもよい。
【0082】
計画作成部220は、植物栽培装置100において収穫が見込まれる時期と、搬送先に供給を予定する時期とに基づいて、植物栽培装置100に搬送先を対応付ける必要がある。
仮に、搬送先に供給を予定する時期に対して、植物栽培装置100において収穫が見込まれる標準的な収穫時期がずれている場合、計画作成部220は、植物栽培装置100における収穫時期を搬送先に供給を予定する時期に合わせる栽培計画を作成する。
また、計画作成部220は、予め記憶部290において記憶されている栽培ユニット10のうち、所定の期間が遊休状態にある栽培ユニット10のうちから栽培ユニット10を特定するようにする。
【0083】
(2)作成した計画を動的に修正する処理について
以下に示す処理は、作付け前に作成した栽培計画について、栽培過程における栽培を継続しながら修正する処理である。
a)状況に応じて動的に見直した修正計画案の作成
例えば、栽培過程における状態が、栽培計画に対する乖離が大きくなる状況が生じる場合がある。本実施形態に示す植物栽培システム1は、このような状況が生じていることを検出し、状況に応じた栽培計画を修正した修正計画案を作成する。
修正計画案の作成に当たり、栽培状況によって複数の対処方法が用意されており、以下、それぞれの対処方法について順に説明する。
【0084】
a-1)栽培状況の把握を行う処理
まず、植物栽培システム1(計画作成部220)は、栽培状況を以下の手順により検出する。
【0085】
ア)当初の栽培計画による予定収穫量rと予定収穫時期の推定収穫量Yestの差異を算出する。
例えば、自動で生成される成長曲線の推定値から算出される推定収穫量と、当初の栽培計画に基づいて算出されている予定収穫量とを比較し、推定収穫量と当初の栽培計画による収穫量との差(重量差)を算出する。
【0086】
イ)成長曲線の推定値は、環境情報及び植物の状態情報のうちの少なくとも何れかにより算出する。
例えば、環境情報により算出する場合を例示する。環境情報の一例として、栽培溶液の濃度と供給量の情報がある。栽培溶液の濃度と供給量の情報から、植物が吸収した栽培溶液に含まれていた養分の積算吸収量を推定する。
植物は、成長する過程で、養分、CO
2を吸収し光合成を行い成長する。植物の成長度合いに応じて、養分の積算吸収量が変化する。そこで、栽培ユニットごとに設けられているタンク30に供給される養分の量を、養分供給路に設けた流量計によって検出する。養分供給路に設けた流量計によって検出された流量と、養分供給路から供給した養分の濃度との積により、タンク30に供給された養分の量が算出できる。なお、タンク30内の栽培溶液の濃度は、上水によって希釈された栽培溶液の状態で所定の範囲に収まるように安定化されている。また、タンク30内の栽培溶液の量は、所定の範囲に収まるように安定化されている。このように栽培溶液の濃度と量が安定になるように管理されていることにより、例えば、タンク30に溜め置かれている栽培溶液の量が所定の水位まで低下した場合や、所定の濃度まで低下した場合には、植物栽培装置100の制御によって、栽培溶液が補充される。
このように、植物が実際に吸収した養分の量を直接検出することができないが、タンク30に供給した栽培溶液の濃度と供給量の情報から、植物が吸収した養分の量を推定することができる。
なお、環境情報の一例として、栽培溶液の濃度と供給量の情報を示したが、積算光量を適用してもよい。
【0087】
例えば、植物の状態情報により算出する場合を例示する。植物の状態情報の一例として、植物の重量の情報がある。植物の重量の情報は、棚20に設けられた栽培槽61の重量に含めて検出部150によって検出される。栽培槽61には、溜め置かれている栽培溶液の量が一定になるように、栽培溶液が供給される。栽培溶液と栽培床62とを含む栽培槽61の重量は、植物の成長に応じて変化しない定数として扱うことができる所定の値になる。従って、栽培槽61の重量として検出された重量から、栽培溶液と栽培床62とを含む栽培槽61の重量を引く(減算する)ことにより、その栽培槽61において栽培されている植物の重量を検出することができる。
このように、検出部150は、植物の重量を直接検出することができないが、栽培槽61の重量の情報から、植物の重量を推定することができる。
なお、植物の状態情報の一例として、植物の重量の情報を示したが、背丈などの他の情報を適用してもよい。
【0088】
ウ)さらに、植物の状態を直接的に検出部150が検出した情報(画像により、大きさ、背丈、葉の広がり、葉の茂み具合、色、特定波長の吸収量、熱画像計測装置(サーモカメラ)や赤外線距離センサーなどによって検出された温度分布情報)、間接的に環境制御部80が検出した情報(養分やCO
2の消費量)に基づいて、状態推定部231が推定した推定情報を判定部233が判定する。
【0089】
エ)上記の「イ」「ウ」における判定により、判定部233は、成長曲線が、計画時に設定された成長曲線から逸脱し予定収量が得られないと判定した場合、「通常時」として制御できる場合から「非常時」と判定すべき状態に達している確率が高いと識別する。
以上に示す手順により、栽培状況の把握を行うことができる。
【0090】
a-2)非常時のリカバリー支援(栽培断念)を行う処理
次に、
図8を参照して、特定の栽培ユニットに病害虫等が発生して収穫を断念する場合について説明する。
図8は、特定の栽培ユニットに病害虫等が発生して収穫を断念する場合について示す図である。
この
図8は、横軸が時間の経過を示し、計画当初の出荷順による栽培ユニット10の識別番号((a))、計画を見直した出荷順による栽培ユニット10の識別番号((b))を示す。例えば、同じ栽培拠点に複数の栽培ユニット10があり、同種(同じ品目)の植物が栽培されているものとする。ただし、予定の出荷日が異なり、出荷予定の早い順にAk、Ak+1、Ak+2、Ak+3の識別番号に対する栽培ユニット10がある。ここで、識別番号がAk+1の栽培ユニット10の栽培を断念する場合を想定する。
特定の栽培ユニットに病害虫等が発生して収穫を断念する場合、予定の収穫量が得られない。このような場合(非常時)には、当該栽培ユニット(Ak+1)の栽培(出荷)を断念して、栽培を中断させる。栽培を断念したことにより不足する出荷量について、当該栽培ユニットと出荷日程が近い他の栽培ユニット(Ak+2)を代替栽培ユニットとして選定する。その代替栽培ユニットにおいて栽培されている分を充当する。代替栽培ユニットは、流通期間(コスト)が低減できるような生産場所と出荷先との関連付けに従って、栽培可能な(出荷可能な)栽培ユニットが抽出される。
そして、抽出された栽培ユニットの成長促進制御を行い、当初の予定出荷日に出荷する収穫量を確保するように制御する(出荷時期シフト)。
このように、各栽培ユニット10における栽培計画と、成長度合いを示す情報を参照することにより、複数の候補のなかから、連係させることが容易な栽培ユニット10を選択することが容易に行えるようになる。
以上に示す手順により、たとえ栽培を断念するような状況が特定の栽培ユニット10に生じた場合であっても、収穫量の不足を他の栽培ユニット10を連係させることにより補うことができる。
【0091】
a-3)非常時のリカバリー支援(収穫量不足)を行う処理
次に、前述のように「栽培を断念」するほどの状況には到っていないものの、予定の栽培ユニットから予定した収量が得られないと判定される場合がある。このような収穫量不足の場合の収穫量不足を補う処理について説明する。
予定の栽培ユニットから予定した収量が得られないと判定した場合、不足分を当該栽培ユニットと出荷日程が近く、不足収量を補える他の栽培ユニットを代替栽培ユニットとする。代替栽培ユニットには、流通期間(コスト)が低減できるような生産場所と出荷先との関連付けに従って、栽培可能な(出荷可能な)栽培ユニットを抽出する。
抽出された栽培ユニットは不足収量を補うための成長促進制御を行い、当初の予定出荷日に出荷する収穫量を確保するように制御する。
以上に示す手順により、特定の栽培ユニット10に収穫量不足が生じることが推定された場合には、栽培断念の場合と同様に、収穫量の不足を他の栽培ユニット10を連係させることにより補うことができる。
【0092】
b)利益・効率を向上させるように計画を再構築(動的修正)する処理
続いて、利益・効率を向上させるように計画を再構築(動的修正)する場合について説明する。
市場の販売見込み額と、出荷時期を調整した出荷量の最適化による収益率と、を向上させるように計画を再構築する。
図9は、利益・効率を向上させるように計画を再構築する場合を示す図である。
横軸が時間の経過を示し、縦軸が市場の流通量を示す。
例えば、
図9に示されるように、悪天候、異常気象などの要因で露地栽培の出荷量(市場の流通量)が落ち込む場合がある。このような状況が発生するか否かを、植物栽培システム1の計画作成部220が、当年の気象情報と市場動向、過去の気象データと市場動向に基づいて判定してもよい。植物栽培システム1は、このような判定を行うことにより、市場に影響を与える異常気象が生じる虞があると判定した場合、次のような栽培計画に再構築する。再構築する栽培計画においては、出荷調整して、露地栽培の出荷量が落ち込む時期における市場の流通量を、本植物栽培システム1からの出荷量を多くするように計画を再構築する。
なお、当年の気象情報は、例えば、気象庁等が報じるエリアごとの気象情報や、インターネットなどで公開されている気象に係わる情報などから得ることができる。また、過去の気象データは、例えば、気象庁等が報じるエリアごとのエリア情報、新聞記事、論文などの情報から得ることができる。
このような出荷時期の調整を行うことで、市場が品薄になる状況に多く出荷することができるようになり、品薄により市場の単価が上昇しているなかで、より多くの商品をさばくことができることにより、利益・効率を向上させることができる。
上記の説明では、「利益・効率の向上」を行う手法として示したが、災害発生時の食糧不足を緩和する方法として応用することができる。
【0093】
(3)収穫量(生産量)と質を安定化する処理について
a)各ユニットにおいて、栽培計画通りの収穫ができるようにする処理
植物栽培システム1においては、計画作成時に予定収穫量rを得るための栽培計画(環境制御計画)が構築され、各栽培ユニット10内は、栽培計画に応じた環境制御計画に基づいて栽培環境が自動制御される。栽培計画に基づいて栽培するために自動で実施される処理には、例えば「栽培環境条件の調整」、「成長度合いの判定」、「成長度合いの判定結果に基づいた成長度合いの調整」がある。これらの処理を組み合わせて実施することにより、より効果を高めることが可能となる。例えば、植物栽培システム1は、成長度合いの判定を行い、その判定結果に異常が確認されず、「正常状態(正常時)」にあると判定された場合、当初の栽培計画における成長曲線との差分(誤差情報ΔY)が小さくなるように(極力最小限にするように)、栽培環境を制御する。
計画作成時に作成する標準の栽培計画においては、その栽培計画に従って植物を栽培することができれば、余計な操作量Uを環境制御部80に供給する必要がないため、最も経済的に栽培することができる。
【0094】
(計画作成処理)
図10を参照し、栽培計画の計画作成処理について説明する。
図10は、栽培計画の計画作成処理を示すフローチャートである。
【0095】
計画作成部220は、栽培する種類(品目)に応じた標準モデルを設定する。
計画作成部220は、栽培する種類(品目)に対応する識別情報により、記憶部290に記憶されている各植物の標準モデルのなかから、当該標準モデルを抽出する。計画作成部220は、標準モデルを制御の規範とする制御予測モデルとして設定し、記憶部290に記憶させる(標準収穫量・標準収穫時期の設定、ステップSa105)。
計画作成部220は、条件の異なる指定栽培条件を複数設定する。計画作成部220は、指定栽培条件を定める変数の一部を変更した複数の指定栽培条件を生成し、記憶部290に記憶させる(ステップSa110)。
計画作成部220は、設定された指定栽培条件に応じて、記憶部290に記憶されていた標準モデルに対する収穫量・収穫時期の補正量をそれぞれ算出し、記憶部290に記憶させる(ステップSa115)。
計画作成部220は、ステップSa105において設定された標準モデルとされた標準収穫量・標準収穫時期に対して、ステップSa115において算出された補正量により収穫量・収穫時期をそれぞれ補正する(ステップSa120)。
計画作成部220は、ステップSa120において補正された収穫量・収穫時期に基づいて、予定収穫量rを算出する(推定する)(ステップSa125)。
計画作成部220は、算出された予定収穫量rが、要求条件に応じた出荷重量(要求出荷量)を満たす場合を、成長促進モデルとする(ステップSa130)。
【0096】
計画作成部220は、複数の成長促進モデルが得られたか否かを判定する(ステップSa135)。ステップSa135における判定により、複数の成長促進モデルが得られなかったと判定した場合(No)、計画作成部220は、異なる指定栽培条件を複数設定するとともに(ステップSa140)、ステップSa115からの処理を続ける。
【0097】
ステップSa135における判定により、複数の成長促進モデルが得られたと判定した場合(Yes)、計画作成部220は、得られた成長促進モデルのうちから、栽培する場所の条件による重み付け判定を行う。計画作成部220は、重み付け判定の結果から栽培する場所を特定し、計画作成の処理を終える(ステップSa150)。
以上に示した手順により、植物栽培システム1は、栽培計画の計画作成処理を行う。
【0098】
(栽培計画の動的修正処理)
図11を参照し、栽培計画の動的修正処理について説明する。
図11は、栽培計画の動的修正処理を示すフローチャートである。
【0099】
植物の育成状況及び状態を検出した検出部から出力された植物の状態情報(検出信号DET)を、状態推定部231が取得する(ステップSb205)。
状態推定部231は、栽培環境に応じた環境情報(操作量U)を取得する(ステップSb210)。
状態推定部231は、植物の状態情報(検出信号DET)、又は、環境情報(操作量U)に基づいて推定状態量(Xest)を算出する(ステップSb215)。
【0100】
状態推定部231は、推定状態量(Xest)が妥当か否かを判定する(ステップSb220)。例えば、推定状態量(Xest)が妥当か否かの判定は、推定状態量(Xest)の履歴情報を参照し、過去の推定状態量(Xest)を基にして外挿される推定範囲に、今回の推定状態量(Xest)が含まれているか否かによって行うことができる。ステップSb220における判定により、推定状態量(Xest)は妥当であると判定した場合(Yes)、成長モデルを補正することなく、ステップSb290の処理に進む。
【0101】
一方、ステップSb220における判定により、推定状態量(Xest)は妥当でないと判定した場合(No)、状態推定部231は、推定状態量(Xest)に基づいて、推定収穫量(Yest)を算出する(ステップSb225)。
判定部233は、栽培計画時の予定収穫量rと推定収穫量(Yest)の差(ΔY)を算出する(ステップSb230)。
【0102】
判定部233は、栽培計画時の予定収穫量rと、推定収穫量(Yest)の差(ΔY)の大きさを判定する。判定部233は、この判定に基づいて、栽培計画からの変更が必要な状況にあるか否かを検出する(ステップSb235)。ステップSb235における判定により、栽培計画時の予定収穫量と収穫見込み量(推定収穫量)の差(ΔY)の大きさが(ΔY<Yth2)の場合、ステップSb280の処理に進む。
【0103】
ステップSb235における判定により、栽培計画時の予定収穫量と収穫見込み量(推定収穫量)の差(ΔY)の大きさが(ΔY>Yth1)の場合、判定部233は、当該栽培ユニットにおいて栽培を継続するか否かの判定をする(ステップSb250)。ステップSb250における判定により、当該栽培ユニットにおいて栽培を継続すると判定した場合(Yes)、ステップSb270の処理に進む。
【0104】
ステップSb250における判定により、当該栽培ユニットにおいて栽培を継続しないと判定した場合(No)、計画作成部220は、当該栽培ユニットの栽培を断念して、当該栽培ユニットからの予定収穫量rを収穫計画から削除する(ステップSb255)。
植物栽培システム1は、栽培を断念したことにより不足する出荷量を補うリカバリー支援処理を行い(ステップSb260)、ステップSb280の処理に進む。
【0105】
一方、ステップSb235における判定により、予定収穫量rと推定収穫量Yestの差(ΔY)の大きさが(Yth2≦ΔY≦Yth1)の場合、或は、ステップSb250における判定により、当該栽培ユニットにおいて栽培を継続すると判定した場合(No)、計画作成部220は、不足する出荷量を補うリカバリー支援処理を行う(ステップSb270)。
【0106】
計画作成部220は、記憶部290に記憶されている情報として、当該地域の気象予測情報、過去の被害状況などの履歴情報、などを参照し、利益・収益率を向上させるための補正量を算出する。計画作成部220は、算出された補正量に基づいて利益・収益率を向上させるように栽培計画を再構築(動的修正)する(ステップSb280)。
【0107】
植物栽培装置100は、栽培計画に基づいて栽培環境を制御する(収穫量と質の安定化処理、ステップSb290)。
【0108】
以上に示した手順により、植物栽培システム1は、栽培計画の動的修正処理を行う。
【0109】
以上に示すように、本実施形態における植物栽培システム1によれば、生産性を下げることなく収穫量を安定化させることが可能になる。また、本実施形態における植物栽培システム1によれば、栽培管理における負荷を低減しつつ、栽培する植物の品質を高めることが可能になる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更等も含まれる。
例えば、上記の実施形態においては、2つの閾値を基準に植物の成長度合いを判定する構成について説明したが、1つ、又は3つ以上の閾値を基準に植物の成長度合いを判定することも可能である。栽培継続を断念する状態に至る前に、栽培計画を変更することにより植物の状態を回復させることが望ましい場合がある。1つの閾値を基準にする判定においては、栽培計画を変更するか否かを判定する基準としてもよい。
【0111】
なお、上述の植物栽培システム1は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、各機能部の動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいうコンピュータシステムとは、CPU及び各種メモリーやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。
【0112】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。