特許第5965684号(P5965684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965684
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】めっき加工されたプラスチックシャーシ
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/04 20060101AFI20160728BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20160728BHJP
   C25D 5/56 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   H05K7/04 B
   C23C18/16 A
   C25D5/56 B
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-57957(P2012-57957)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-189690(P2013-189690A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】502163421
【氏名又は名称】ユーエムジー・エービーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】中本 正仁
(72)【発明者】
【氏名】川口 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 比呂志
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−253897(JP,A)
【文献】 特開昭61−123082(JP,A)
【文献】 特開平07−278318(JP,A)
【文献】 特表2010−541279(JP,A)
【文献】 特開平10−233585(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/083991(WO,A1)
【文献】 特開平04−197718(JP,A)
【文献】 特開平02−098426(JP,A)
【文献】 特開平10−056283(JP,A)
【文献】 特開平10−117082(JP,A)
【文献】 特開平10−150285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/04
H05K 5/00 − 5/06
C23C 18/16
C25D 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISO 178:2001の曲げ弾性率が8,30020,500MPaである充填剤強化プラスチックを成形してなるプラスチックシャーシ本体と、
該プラスチックシャーシ本体の表面の少なくとも一部に形成された、厚さ1642μmのめっき層と
を有し、
下記の要件を満足する、めっき加工されたプラスチックシャーシ。
前記充填剤強化プラスチックを成形してなる12.5mm×127mm×1mm厚の試験片の表面に、前記めっき層と同じ条件にてめっき層を形成してなる、めっき加工試験片のISO 178:2001の曲げ弾性率が、30,200〜54,200MPaである。
【請求項2】
請求項に記載のめっき加工されたプラスチックシャーシと、
該めっき加工されたプラスチックシャーシに密着した、熱可塑性樹脂からなる部品基材と
を有する、電気製品用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気製品の内部シャーシ等として用いられる、めっき加工されたプラスチックシャーシに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン等の弱電製品の筐体には、製品の薄肉化に伴い高い剛性が必要とされている。本用途では、従来からマグネシウムのダイキャストやチクソモールディングで成形された金属筐体が多く用いられている。最近では、金属筐体の代替品として、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート/ABS樹脂等のプラスチック筐体に電気めっきで金属を厚付けして剛性を高めたものも用いられるようになっている。
【0003】
また、電気製品の内部に設けられる内部シャーシにも、高い剛性が必要とされることから、マグネシウム等の金属シャーシが用いられている。最近では、電気製品の内部シャーシについても、金属シャーシの代替として、プラスチックシャーシが検討されてきている。その理由は、樹脂化による複雑な形状の成形が可能となる上、薄肉化、軽量化が可能となるためである。
【0004】
ところで、複雑な形状のプラスチックシャーシにも、マグネシウムの金属シャーシと同等の高い剛性、強度および耐久性が要求され、樹脂化により薄肉化や軽量化を図った上での安全性の確保が要求される。しかし、従来のプラスチックシャーシは、これらの要求に充分に応えるものであるとは言えない。
【0005】
なお、特許文献1には、ABS樹脂とABS樹脂以外の樹脂とを2色成形した筐体本体のABS樹脂部にめっきしたプラスチック筐体が提案されている。しかし、該プラスチック筐体は、プリント配線板に実装された電子部品をシールドするためのものであって、プラスチックシャーシに関するものではない。
【0006】
また、特許文献2には、プラスチック筐体に厚さ5〜30μmのめっき層を析出させて剛性および硬度を高める方法が提案されている。しかし、該方法は、電気製品の内部シャーシ向けとしては考慮されておらず、該方法のみでは、内部シャーシの樹脂化による形状の複雑化、薄肉化、軽量化に伴う安全性の確保は充分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平7−1833号公報
【特許文献2】特開2005−154864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、樹脂化による形状の複雑化、薄肉化および軽量化が可能であり、薄肉化や軽量化してもマグネシウムの金属シャーシと同等の剛性および高温度条件下での耐久性を有し、かつ薄肉化や軽量化に伴う反りや寸法精度の低下を抑えることによって製品の安全性を確保できるプラスチックシャーシ;該プラスチックシャーシに、熱可塑性樹脂からなる部品基材を密着させた電気製品用部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のめっき加工されたプラスチックシャーシは、ISO 178:2001の曲げ弾性率が8,30020,500MPaである充填剤強化プラスチックを成形してなるプラスチックシャーシ本体と、該プラスチックシャーシ本体の表面の少なくとも一部に形成された、厚さ1642μmのめっき層とを有し、下記の要件を満足することを特徴とする。
前記充填剤強化プラスチックを成形してなる12.5mm×127mm×1mm厚の試験片の表面に、前記めっき層と同じ条件にてめっき層を形成してなる、めっき加工試験片のISO 178:2001の曲げ弾性率が、30,200〜54,200MPaである。
【0011】
本発明の電気製品用部品は、本発明のめっき加工されたプラスチックシャーシと、該めっき加工されたプラスチックシャーシに密着した、熱可塑性樹脂からなる部品基材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のめっき加工されたプラスチックシャーシは、樹脂化による形状の複雑化、薄肉化および軽量化が可能であり、薄肉化や軽量化してもマグネシウムの金属シャーシと同等の剛性および高温度条件下での耐久性を有し、かつ薄肉化や軽量化に伴う反りや寸法精度の低下を抑えることによって製品の安全性を確保できる。
本発明の電気製品用部品は、本発明のプラスチックシャーシに、熱可塑性樹脂からなる部品基材を密着させたものであるため、内部シャーシを内蔵した製品により近い部品として仕上げられており、製品の組み立て工程を簡素化できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書におけるシャーシとは、プリント配線板や電子部品が固定されるベース部材を意味し、これらを収納する筐体(ケース、ハウジングとも呼ばれる。)とは区別される。
本明細書における充填剤強化プラスチックの曲げ弾性率は、12.5mm×127mm×4mm厚の試験片についてISO 178:2001に準拠して測定される曲げ弾性率である。
本明細書におけるめっき加工試験片の曲げ弾性率は、12.5mm×127mm×1mm厚の試験片をめっき加工したものについてISO 178:2001に準拠して測定される曲げ弾性率である。
【0014】
<めっき加工されたプラスチックシャーシ>
本発明のめっき加工されたプラスチックシャーシは、充填剤強化プラスチックを成形してなるプラスチックシャーシ本体と、該プラスチックシャーシ本体の表面の少なくとも一部に形成されためっき層とを有する。
【0015】
(充填剤強化プラスチック)
充填剤強化プラスチックは、熱可塑性樹脂と、充填剤と、必要に応じて他の成分とを含む。
【0016】
熱可塑性樹脂の種類は、特に限定されない。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、スチレン系樹脂(ポリスチレン、ABS樹脂等)、液晶ポリエステル等が挙げられる。また、共重合体(アクリロニトリルとスチレンとの共重合体、ナイロン6とナイロン66との共重合体等)であってもよく、前記熱可塑性樹脂の混合物(アロイを含む)であってもよい。
【0017】
充填剤の種類は、特に限定されない。充填剤としては、無機充填剤、有機充填剤、植物系充填剤等が挙げられる。
無機充填剤としては、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)、無機繊維に金属コーティングしたもの、無機物(ウオラストナイト、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、ケッチェンブラック等)、金属や合金(鉄、銅、亜鉛、アルミニウム等)、金属酸化物の繊維、金属酸化物の粉末等が挙げられる。
有機充填剤としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維、アクリル繊維等が挙げられる。
植物系充填剤としては、ケナフ、竹繊維等が挙げられる。
繊維は、チョップドファイバーであってもよく、ロングファイバーであってもよい。
充填剤としては、少ない配合で高い剛性が得られる点から、ガラス繊維または炭素繊維が好ましい。
【0018】
他の成分としては、帯電防止剤、難燃剤(臭素系、リン系、水酸化物等)、難燃助剤(三酸化アンチモン、ポリテトラフルオロエチレン等)、表面外観改良剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、粘着付与剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー、老化防止剤、防制曇剤等が挙げられる。
【0019】
充填剤強化プラスチックは、熱可塑性樹脂と充填剤、必要に応じて他の成分とを混合装置(ヘンシェルミキサ、タンブラーミキサ、ナウターミキサ等)を用いて混合することによって得られる。さらに、混練装置(単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、コニーダ等)を用いて混練してもよい。
【0020】
熱可塑性樹脂および充填剤の配合量は、充填剤強化プラスチックの曲げ弾性率が4,000〜22,000MPaになるような量とする。
充填剤強化プラスチックの曲げ弾性率は、4,000〜22,000MPaであり、8,000〜21,000MPaが好ましい。充填剤強化プラスチックの曲げ弾性率が4.000MPa以上であれば、めっき加工されたプラスチックシャーシの反りが抑えれ、また、ヒートサイクル性に優れる。充填剤強化プラスチックの曲げ弾性率が22,000MPa以下であれば、成形加工性が良好となる。
【0021】
(プラスチックシャーシ本体)
プラスチックシャーシ本体は、充填剤強化プラスチックを成形したものである。充填剤強化プラスチックの成形加工法としては、射出成形法、射出圧縮成形法、プレス成形法、押出成形法(異型を含む)、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等が挙げられる。これらの中でも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができる点から、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
【0022】
(めっき層)
めっき層の厚さは、5〜50μmであり、10〜45μmが好ましく、15〜40μmがより好ましく、25〜40μmがさらに好ましい。めっき層の厚さが5μm以上であれば、めっき加工されたプラスチックシャーシの剛性が充分に高くなる。めっき層の厚さが50μm以下であれば、反りが抑えれ、また、ヒートサイクル性に優れる。
【0023】
めっき層の厚さの測定方法としては、電解式膜厚計による方法、走査型電子顕微鏡によるめっき層断面観察等が挙げられる。
電解式膜厚計による方法は、めっき層を陽極として電気分解すると、めっき層の溶解量が通電した電気量に比例するというファラデーの法則を基本原理としている。溶解量は、溶解面積〔A〕と厚さ〔t〕の積で表され、電気量は通電時間〔T〕と電流〔I〕の積で表される。
溶解量=A・t=K・I・T
ただし、Kは、めっき層によって異なる定数である。
【0024】
走査型電子顕微鏡によるめっき層断面観察は、めっき加工されたプラスチックシャーシの断面を切出し、走査型電子顕微鏡で観察する方法である。断面を切出す方法としては、ファインカッタによる方法、レーザーカッタによる方法、FIBによる方法等が挙げられる。ファインカッタによる方法においては、切削面を研磨する必要があり、研磨後の断面(多層皮膜(銅、ニッケル、クロム等))を硝酸エッチングすることによって、多層皮膜の境界を顕著にできる。
本発明においては、正確なめっき層の厚さを測定できる点から、電解式膜厚計による方法が好ましい。
【0025】
めっき加工の方法としては、湿式めっき方法(無電解めっき、ダイレクトめっき、電気めっき等)、乾式めっき方法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等)が挙げられる。本発明においては、めっき加工されたプラスチックシャーシの曲げ弾性率が優れ、良好なめっき特性が得られる点から、湿式めっき方法が好ましい。
【0026】
無電解めっき法は、ニッケル、銅等の金属イオンを含む水溶液に還元剤(次亜リン酸ナトリウム、ホウスイ素ナトリウム等)を加え、該水溶液を40〜100℃に加温し、該水溶液にプラスチックシャーシ本体を浸漬させることによって該プラスチックシャーシ本体の表面に均一に金属を析出させ、めっき層を形成する方法である。無電解めっき法においては、プラスチックシャーシ本体の表面をエッチング処理(硫酸/クロム等の混合液)で化学的に粗面化し、感応性付与(触媒化)しておくことが好ましい。
【0027】
電気めっき法は、無電解めっき法によってプラスチックシャーシ本体の表面に導電性皮膜を形成した被めっき体を陰極とし、陽極にめっきしようとする金属または白金等の不溶性陽極を用い、両極間に直流電源を接続し、適当な電位差を与えることによって、陰極表面に金属イオンから還元された金属を析出させ、めっき層を形成する方法である。析出させる金属としては、銅、ニッケル、クロム、金、銀、合金等が挙げられる。
【0028】
(めっき加工試験片の曲げ弾性率)
めっき加工されたプラスチックシャーシは、下記の要件を満足することが好ましい。
充填剤強化プラスチックを成形してなる試験片の表面に、製品のめっき層と同じ条件にて目標とする厚さのめっき層を形成してなる、めっき加工試験片の曲げ弾性率が、25,000〜60,000MPaであり、好ましくは30,000〜50,000MPaである。
【0029】
めっき加工試験片の曲げ弾性率が25,000MPa以上であれば、マグネシウム等の金属シャーシ相当の曲げ弾性率が得られる。めっき加工試験片の曲げ弾性率が60,000MPa以下であれば、寸法精度が良好となる。めっき加工試験片の曲げ弾性率は、30,000〜50,000MPaが好ましい。
【0030】
(作用効果)
以上説明した本発明のめっき加工されたプラスチックシャーシにあっては、充填剤強化プラスチックを原材料としているため、樹脂化による形状の複雑化、薄肉化および軽量化が可能である。
また、曲げ弾性率が4,000〜22,000MPaである充填剤強化プラスチックを成形してなるプラスチックシャーシ本体の表面の少なくとも一部に厚さ5〜50μmのめっき層を形成しているため、薄肉化や軽量化してもマグネシウムの金属シャーシと同等の剛性を有する。
また、曲げ弾性率が4,000〜22,000MPaである充填剤強化プラスチックを成形してなるプラスチックシャーシ本体をベースにしているため、高温度条件下での耐久性を有する。
このようなめっき加工されたプラスチックシャーシあっては、薄肉化や軽量化に伴う反りや寸法精度の低下を抑えることによって製品の安全性を確保できる。
【0031】
<電気製品用部品>
本発明の電気製品用部品は、本発明のめっき加工されたプラスチックシャーシと、該めっき加工されたプラスチックシャーシに密着した、熱可塑性樹脂からなる部品基材とを有する。
【0032】
(部品基材)
部品基材は、熱可塑性樹脂を成形してなるものである。めっき加工されたプラスチックシャーシとの密着性が優れる点から、インモールド成形によってめっき加工されたプラスチックシャーシと一体化されたものが好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂の種類は、特に限定されない。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、スチレン系樹脂(ポリスチレン、ABS樹脂等)、液晶ポリエステル等が挙げられる。また、共重合体(アクリロニトリルとスチレンとの共重合体、ナイロン6とナイロン66との共重合体等)したもの、ウレタン、軟質材、エラストマーであってもよい。さらに、これらの混合物(アロイを含む)であってもよく、充填剤によって強化されたものであってもよい。
【0034】
(インモールド成形)
インモールド成形は、本発明のめっき加工されたプラスチックシャーシを成形金型内に設置し、該成形金型内に熱可塑性樹脂を注入することによって、熱可塑性樹脂からなる部品基材とめっき加工されたプラスチックシャーシとを密着させて複合部品を得る成形法である。
【0035】
(作用効果)
以上説明した本発明の電気製品用部品にあっては、本発明のプラスチックシャーシに、熱可塑性樹脂からなる部品基材を密着させたものであるため、内部シャーシを内蔵した製品により近い部品として仕上げられており、製品の組み立て工程を簡素化できる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
<測定、評価>
実施例および比較例における各種測定、評価は、以下の方法によって行った。
【0038】
(充填剤強化プラスチックの曲げ弾性率)
表1に示すプラスチックまたは充填剤強化プラスチックについて、12.5mm×127mm×4mm厚の試験片を作製し、ISO 178:2001に準拠して試験片の曲げ弾性率を測定した。
【0039】
(めっき加工試験片の曲げ弾性率)
表1に示すプラスチックまたは充填剤強化プラスチックについて、12.5mm×127mm×1mm厚の試験片を作製し、表2に示す構成、目標合計厚さにて、めっき層を形成した後、ISO 178:2001に準拠してめっき加工試験片の曲げ弾性率を測定した。
【0040】
(めっき層の厚さ)
めっき層の厚さは、電解式膜厚計(電測社製、CT−2)を用いて、下記のように測定した。
めっき加工されたプラスチックシャーシを電解式膜厚計にセッティングした。まず、電気クロムめっきの厚さを測定するために、R−51電解液(電測社製)をガスケット内に注入し、電気クロムめっきの厚さを測定した。次いで、電気ニッケルめっきの厚さを測定するために、R−54電解液(電測社製)をガスケット内に注入し、電気ニッケルめっきの厚さを測定した。次いで、電気銅めっきの厚さを測定するために、R−44電解液(電測社製)をガスケット内に注入し、電気銅めっきの厚さを測定した。
【0041】
(ソリ)
めっき加工されたプラスチックシャーシを平滑な標準台に放置し、目視観察によってソリの有無を確認し、下記の基準にて評価した。
◎:ソリ無し。
○:若干ソリ発生。
△:ソリ発生。
×:大きなソリ発生。
【0042】
(寸法精度)
めっき加工されたプラスチックシャーシのボス部(内径φ4mm、肉厚1mm)に金属ナット(外径φ4mm)を圧入し、目視観察によってボス部のめっき層の割れの有無を確認し、下記の基準にて評価した。
◎:割れ発生無し。
○:一部に小さな割れ発生。
△:割れ発生。
×:プラスチック面まで割れ発生。
【0043】
(ヒートサイクル性)
めっき加工されたプラスチックシャーシについて、下記のヒートサイクル条件で試験し、目視観察によってめっき層の膨れの有無を確認し、下記の基準にて評価した。
○:膨れなし。
○△:接点部に微小クラック。
△:ゲート近傍に微小膨れ。
×:ゲート部より膨れ。
「ヒートサイクル条件」
−30℃×1時間→23℃×15分→80℃×1時間→23℃×1時間を1サイクルとして、5サイクルを1セットとし、3セット実施した。
【0044】
<プラスチック、充填剤強化プラスチック>
実施例および比較例にて用いたプラスチック、充填剤強化プラスチック(以下、材料と記す。)は、下記の通りである。
【0045】
【表1】
【0046】
表中の略号は、下記の意味を表す。
PC:ポリカーボネート、
ASA:アクリロニトリル−スチレン−アクリレート樹脂、
PPA:ポリフタルアミド、
MXD6:ナイロンMXD6、
PPE:ポリフェニレンエーテル、
GF:ガラス繊維、
CF:炭素繊維。
【0047】
<めっき加工>
実施例および比較例におけるめっき層の構成および合計の厚さを表2に示す。また、材料ごとのめっき加工の条件を、めっき加工1、2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
(めっき加工1)
対象となる材料:材料A〜E、H。
【0050】
無電解ニッケルめっき:
〔1〕脱脂(68℃ ×5分)、処理液:荏原ユージライ社製、ENILEX WE。
〔2〕水洗。
〔3〕プリエッチング(40℃×5分)、処理液:荏原ユージライト社製、ENILEX PE−300A,B。
〔4〕水洗。
〔5〕エッチング(68℃ ×10分)、処理液:クロム酸400g/L、硫酸200cc/L。
〔6〕回収。
〔7〕水洗。
〔8〕中和(常温×1分)、処理液:荏原ユージライト社製、ENILEX RD。
〔9〕水洗。
〔10〕特殊中和(常温×2分)、処理液:荏原ユージライト社製、ENILEX NW。
〔11〕水洗。
〔12〕プリディップ(常温×1分)、処理液:35質量%塩酸100cc/L。
〔13〕触媒化処理(30℃×4分)、処理液:荏原ユージライト社製、ENILEX CT−580。
〔14〕水洗。
〔15〕活性化処理(40℃×3分)、処理液:35質量%塩酸100cc/L。
〔16〕水洗。
〔17〕無電解ニッケルめっき(40℃×5分、目標厚さ0.5μm)、処理液:荏原ユージライト社製、ENILEX NI−100。
〔18〕水洗。
【0051】
厚付け無電解ニッケルめっき:
〔1〕脱脂(68℃ ×5分)、処理液:荏原ユージライ社製、ENILEX WE。
〔2〕水洗。
〔3〕プリエッチング(40℃×5分)、処理液:荏原ユージライト社製、ENILEX PE−300A,B。
〔4〕水洗。
〔5〕エッチング(68℃ ×10分)、処理液:クロム酸400g/L、硫酸200cc/L。
〔6〕回収。
〔7〕水洗。
〔8〕中和(常温×1分)、処理液:荏原ユージライト社製、ENILEX RD。
〔9〕水洗。
〔10〕特殊中和(常温×2分)、処理液:荏原ユージライト社製、ENILEX NW。
〔11〕水洗。
〔12〕プリディップ(常温×1分)、処理液:35質量%塩酸100cc/L。
〔13〕触媒化処理(30℃×4分)、処理液:荏原ユージライト社製、ENILEX CT−580。
〔14〕水洗。
〔15〕活性化処理(40℃×3分)、処理液:35質量%塩酸100cc/L。
〔16〕水洗。
〔17〕厚付け無電解ニッケルめっき(90℃×60分、目標厚さ20μmの場合)、処理液:荏原ユージライト社製、ENIPAC MM。
〔18〕水洗。
【0052】
電気めっき:
〔1〕硫酸銅めっき(25℃×4A/dm×20分、目標厚さ20μmの場合)、処理液:硫酸銅200g/L、硫酸60g/L、光沢剤 適量。
〔2〕光沢ニッケルめっき(55℃×3.5A/dm×30分、目標厚さ20μmの場合)、処理液:硫酸ニッケル300g/L、塩化ニッケル50g/L、ホウ酸40g/L、光沢剤 適量。
〔3〕クロムめっき(45℃×30A/dm×2分、目標厚さ0.5μm)、処理液:無水クロム酸200g/L、硫酸2g/L、添加剤 適量。
【0053】
(めっき加工2)
対象となる材料:材料F、G。
【0054】
無電解ニッケルめっき:
〔1〕脱脂(68℃ ×5分)、処理液:荏原ユージライ社製、ENILEX WE。
〔2〕水洗。
〔3〕エッチング(35℃×7分)、処理液:35質量%塩酸220cc/L、TNエッチャント200cc/L。
〔4〕ポストエッチング(25℃ ×2分)、処理液:35質量%塩酸60cc/L。
〔5〕水洗。
〔6〕触媒化処理(25℃×3分)、処理液:荏原ユージライト社製、ENILEX CT−580。
〔7〕水洗。
〔8〕アクセレータ(40℃×3分)、処理液:98%硫酸50cc/L。
〔9〕水洗。
〔10〕ポストアクセレータ(40℃×2分)、処理液:水酸化ナトリウム20g/L。
〔11〕水洗。
〔12〕無電解ニッケルめっき(40℃×5分、目標厚さ0.5μm)、処理液:荏原ユージライト社製、ENILEX NI−100。
〔13〕水洗。
【0055】
電気めっき:
〔1〕硫酸銅めっき(25℃×4A/dm×20分、目標厚さ20μmの場合)、処理液:硫酸銅200g/L、硫酸60g/L、光沢剤 適量。
〔2〕光沢ニッケルめっき(55℃×3.5A/dm×30分、目標厚さ20μmの場合)、処理液:硫酸ニッケル300g/L、塩化ニッケル50g/L、ホウ酸40g/L、光沢剤 適量。
〔3〕クロムめっき(45℃×30A/dm×2分、目標厚さ0.5μm)、処理液:無水クロム酸200g/L、硫酸2g/L、添加剤 適量。
【0056】
比較
(充填剤強化プラスチックの曲げ弾性率)
射出成形機を用いて、材料Fを12.5mm×127mm×4mm厚の試験片に成形し
た。該試験片について曲げ弾性率の測定を行った。結果を表3に示す。
【0057】
(めっき加工試験片の曲げ弾性率)
射出成形機を用いて、材料Fを12.5mm×127mm×1mm厚の試験片に成形し、表2に示す構成、目標合計厚さaにて、めっき層を形成し、めっき加工試験片を得た。該めっき加工試験片について曲げ弾性率の測定を行った。結果を表3に示す。
【0058】
(めっき加工されたプラスチックシャーシ)
射出成形機を用いて、材料Fを80mm×125mm×1.5mm厚のプラスチックシャーシ本体(モバイル機器用内部シャーシ試験片)に成形し、表2に示す構成、目標合計厚さaにて、めっき層を形成し、めっき加工されたプラスチックシャーシを得た。該めっき加工されたプラスチックシャーシについてめっき層の厚さを測定し、ソリ、寸法精度およびヒートサイクル性を評価した。結果を表3に示す。
【0059】
〔実施例5、9,10、1221、比較例1〜17
材料Fを表3、4に示す材料に変更し、めっき層の構成、目標合計厚さaを表3、4に
示す構成、目標合計厚さに変更した以外は、比較と同様にして試験片、めっき加工試
験片およびめっき加工されたプラスチックシャーシを得た。結果を表3、4に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
〔考察〕
実施例5、9,10、1221のめっき加工されたプラスチックシャーシは、曲げ弾性率が30,200MPa以上の高い剛性が確保されている上に、ソリ、寸法精度、ヒートサイクル性等のめっき特性が優れている。
これに対し、めっき層が薄い比較例1〜3は、曲げ弾性率が25,000MPa以下で剛性が不十分であった。材料の剛性が4,000MPa未満の比較例4、5のめっき加工されたプラスチックシャーシは、曲げ弾性率が25,000MPa以上で剛性は確保されているが、めっき特性が大幅に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のめっき加工されたプラスチックシャーシは、ノートブック型のPC、タブレット型のPC、携帯情報端末、携帯電話機、スマートフォン、携帯型ゲーム機、電子辞書、電子ブック端末、携帯型オーディオ/ビデオプレイヤー、カーナビゲーション装置、他のあらゆる電気製品の内部シャーシに適用可能である。また、めっき加工されたプラスチックシャーシを成形金型内に設置して、インモールド成形によって部品基材と密着させた電気製品用部品は、内部シャーシを内蔵した製品により近い部品として仕上げられており、製品の組み立て工程を簡素化できる。