特許第5965685号(P5965685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965685梁の断熱構造及び建物の断熱ライン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965685
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】梁の断熱構造及び建物の断熱ライン形成方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20160728BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20160728BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   E04B1/76 400F
   E04B1/80 100A
   E04B2/56 645B
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-62715(P2012-62715)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-194431(P2013-194431A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】若木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】高杉 弘
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−027619(JP,A)
【文献】 特開2010−037891(JP,A)
【文献】 特開2010−037740(JP,A)
【文献】 実開平07−006326(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/74−1/90
E04B 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブと、
前記床スラブを支持する鉄骨梁と、
前記鉄骨梁の屋外側の側面に対向して前記鉄骨梁に支持される外壁と、を有する建物に対して、前記外壁から前記鉄骨梁の下面及び屋内側の側面に亘る断熱ラインを形成する建物の断熱ライン形成方法であって、
前記鉄骨梁の下面を覆う平板状の梁下断熱部を、鉄骨梁の下面から突出する突出部に突き刺すことにより前記鉄骨梁の下面に仮止めする第1工程と、
前記外壁の前記屋内側の側面を覆う平板状の外壁断熱部を、その上端小口面を前記梁下断熱部の下面に当接させた状態で前記外壁の屋内側の側面に沿って設ける第2工程と、
前記鉄骨梁の屋内側の側面を覆う平板状の梁側断熱部を、その下端小口面を前記梁下断熱部の上面に当接させた状態で前記鉄骨梁の屋内側の側面に沿って設ける第3工程と、を有することを特徴とする建物の断熱ライン形成方法。
【請求項2】
床スラブと、
前記床スラブを支持する鉄骨梁と、
前記鉄骨梁の屋外側の側面に対向して前記鉄骨梁に支持される外壁と、を有する建物に対して、前記外壁から前記鉄骨梁の下面及び屋内側の側面に亘る断熱ラインを形成する建物の断熱ライン形成方法であって、
前記鉄骨梁の屋内側の側面を覆う平板状の梁側断熱部を、前記鉄骨梁の屋内側の側面に沿って設ける第1工程と、
前記鉄骨梁の下面を覆う平板状の梁下断熱部を、その上面を前記梁側断熱部の下端小口面に当接させた状態で、鉄骨梁の下面から突出する突出部に突き刺すことにより前記鉄骨梁の下面に仮止めする第2工程と、
前記外壁の前記屋内側の側面を覆う平板状の外壁断熱部を、その上端小口面を前記梁下断熱部の下面に当接させた状態で前記外壁の屋内側の側面に沿って設ける第3工程と、を有することを特徴とする建物の断熱ライン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁の断熱構造及び建物の断熱ライン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物においては、鉄骨で梁や柱等の躯体を形成すると共に外壁材としてALC(Autoclaved Lightweight aerated Concretepanelsの略。軽量気泡コンクリートともいう)パネルを用いるのが一般的に行われている。また、この種の建物においては、暖房効率や冷房効率を向上させて省エネルギー化を図ることを目的としてALCパネルに沿って断熱材が充填されており、当該ALCパネルの有する断熱性と、断熱材の断熱性とによって建築物としての断熱効果を得ている。
【0003】
一方、鉄骨造の建物においては、躯体を構成する梁や柱等の構造部材が熱伝導率の大きな鉄や鋼等により形成されるため、外壁を支持する梁や柱が屋内外の熱の伝達経路となり、熱橋となってしまう問題がある。かかる問題を解決するには、これら躯体を構成する構造部材に対しても断熱材を設けることが好ましいが、これら構造部材の形状や取合いは外壁の平板面等と比較して著しく複雑である。よって、構造部材に対し断熱性を効果的に発揮させることを可能とする断熱材の取付方法について研究開発がなされている。
【0004】
例えば特許文献1には、外壁の屋内側の側面から鉄骨梁の下面及び屋内側の側面に沿って断熱ラインを形成した構成が開示されている。当該断熱ラインは、外壁の屋内側の側面に沿って設けられる外壁断熱部と、鉄骨梁の下フランジ下面から該下フランジの屋内側の端部を回り込んで設けられる梁下部断熱部と、鉄骨梁の屋内側の側面に沿って設けられる梁側断熱部が設けられると共に、外壁断熱部と梁下部断熱部の継ぎ目に充てられる断熱ブロックとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2010−37740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、梁下部断熱部は、鉄骨梁のフランジ下面のみならず当該フランジの端部を回りこむ複雑な形状を呈しているのみならず、断熱ブロックで外壁断熱部と梁下部断熱部の継ぎ目を塞ぐものとなっており、断熱ラインを形成するための部材自体が複雑な形状となって各部材の製造に手間がかかるのみならず、部材点数が増大し、ひいては施工手間が掛かってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、外壁から鉄骨梁にわたる断熱ラインを形成する場合でも、部材点数を可及的抑制して施工手間(施工工程)を可能な限り抑えることができる梁の断熱構造及び建物の断熱ライン形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る梁の断熱構造は、床スラブと、床スラブを支持する鉄骨梁と、鉄骨梁の屋外側の側面に対向して鉄骨梁に支持される外壁と、外壁から鉄骨梁の下面及び屋内側の側面に亘って設けられる断熱ライン形成部と、を備え、断熱ライン形成部は、鉄骨梁の屋内側の側面を覆う梁側断熱部と、外壁の屋内側の側面を覆う外壁断熱部と、鉄骨梁の下面を覆い、外壁断熱部と梁側断熱部とを連結する梁下断熱部と、を備え、梁下断熱部は、鉄骨梁の幅よりも幅広な平板状に形成されると共に、屋外側小口部の下面を外壁断熱部の上端小口面に当接させた状態で設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る梁の断熱構造によれば、梁下断熱部が平板状に形成されるので、部材としての単純化が図られることとなる。また、当該部材を鉄骨梁の下方に対向させて設置するため、施工中に落下することが考えられるが、当該梁下断熱部の屋外側小口部の下面に外壁断熱部の上端小口面が当接し、これによって、梁下断熱部は、屋外側小口部が外壁断熱部と鉄骨梁とにより挟持されることとなり、落下が防止される。これにより、落下防止のための施工の手間を削減することができる。以上により、外壁から鉄骨梁にわたる断熱ラインを形成する場合でも、部材点数を可及的抑制して施工手間(施工工程)を可能な限り抑えることができる。
【0010】
また、本発明に係る梁の断熱構造によれば、鉄骨梁には、外壁を支持する支持金具と、当該支持金具を鉄骨梁に固定する固定具が設けられ、固定具は、鉄骨梁の下面から突出する突出部を有し、梁下断熱部は、少なくとも突出部の突出長さよりも大きい厚さを有し、当該突出部に突き刺された状態で鉄骨梁の下面の下方に設けられていることが好ましい。これによれば、梁下断熱部は、固定具の突出部に突き刺されることで一時的に仮固定されることとなる。これによって当該梁下断熱部を鉄骨梁の下面に対向させた状態に保持するための施工手間を削減することができる(あるいは、当該部材の施工時の落下の頻度をさらに下げることができる)。また、梁下断熱部の厚さが固定具の突出部の突出長さよりも大きく形成されているので、当該梁下断熱部を固定具の突出部に突き刺したとしても、当該固定具が梁下断熱部を貫通する虞はなく、これによって、かかる施工に伴う断熱ラインの破断を回避することができる。また、固定具は断熱材と外壁よりも内側となる梁設置空間に設けられているために当該空間の空気と接触して冷たくなるが、上記の如き断熱ラインの破断の回避により、当該冷たくなった固定具と屋内側の空気が接触することが回避され、これらの接触に伴う結露の発生が防止されるものとなっている。
【0011】
また、本発明に係る梁の断熱構造において、鉄骨梁には、外壁を支持する支持金具と、当該支持金具を鉄骨梁に固定する固定具が設けられ、固定具は、鉄骨梁の下面から突出する突出部を有し、梁下断熱部は、突出部の圧入に伴う膨出を許容する膨出性を有しており、当該突出部に突き刺された状態で鉄骨梁の下面の下方に設けられていることが好ましい。これによれば、梁下断熱部は、固定具の突出部に突き刺されることで一時的に仮固定されることとなり、これによって当該梁下断熱部を鉄骨梁の下面に対向させた状態に保持するための施工手間を削減することができる(あるいは、当該部材の施工時の落下の頻度をさらに下げることができる)。また、梁下断熱部が上述の如き膨出性を備えているので、当該梁下断熱部を固定具の突出部に突き刺したとしても、当該固定具が梁下断熱部を貫通する虞はなく、これによって、かかる施工に伴う断熱ラインの破断を回避することができる。また、固定具は断熱材と外壁よりも内側となる梁設置空間に設けられているために当該空間の空気と接触して冷たくなるが、上記の如き断熱ラインの破断の回避により、当該冷たくなった固定具と屋内側の空気が接触することが回避され、これらの接触に伴う結露の発生が防止されるものとなっている。
【0012】
また、本発明に係る梁の断熱構造において、各断熱部は、気密性を有して形成されると共に、各断熱部の継ぎ目には、一方の断熱部から他方の断熱部に亘って気密テープが貼着されていることが好ましい。これにより、断熱部間の継ぎ目が気密テープにより塞がれることとなるので、断熱部を連結することにより形成される断熱ラインに一致させて気密ラインを形成することができるものとなっている。
【0013】
また、本発明に係る建物の断熱ライン形成方法は、床スラブと、床スラブを支持する鉄骨梁と、鉄骨梁の屋外側の側面に対向して鉄骨梁に支持される外壁と、を有する建物に対して、外壁から鉄骨梁の下面及び屋内側の側面に亘る断熱ラインを形成する建物の断熱ライン形成方法であって、鉄骨梁の下面を覆う平板状の梁下断熱部を、前記鉄骨梁の下面に仮止めする第1工程と、外壁の屋内側の側面を覆う平板状の外壁断熱部を、その上端小口面を梁下断熱部の下面に当接させた状態で外壁の屋内側の側面に沿って設ける第2工程と、鉄骨梁の屋内側の側面を覆う平板状の梁側断熱部を、その下端小口面を梁下断熱部の上面に当接させた状態で鉄骨梁の屋内側の側面に沿って設ける第3工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る建物の断熱ライン形成方法によれば、第1工程、第2工程、及び第3工程に係る手順により、これら断熱部によって形成される断熱ラインの内側と外側に跨る小口面が鉛直状に形成される構成を簡便な施工手順により形成することができる。また、第1工程で鉄骨梁の下面に仮固定された梁下断熱部は、その後に続く第2工程により外壁断熱部に支持される(鉄骨梁と外壁断熱部により挟持される)こととなり、その後の施工における梁下断熱部の落下の頻度を可及的下げることができる。
【0015】
本発明に係る建物の断熱ライン形成方法は、床スラブと、床スラブを支持する鉄骨梁と、鉄骨梁の屋外側の側面に対向して鉄骨梁に支持される外壁と、を有する建物に対して、外壁から鉄骨梁の下面及び屋内側の側面に亘る断熱ラインを形成する建物の断熱ライン形成方法であって、鉄骨梁の屋内側の側面を覆う平板状の梁側断熱部を、鉄骨梁の屋内側の側面に沿って設ける第1工程と、鉄骨梁の下面を覆う平板状の梁下断熱部を、その上面を梁下断熱部の下端小口面に当接させた状態で鉄骨梁の下面に仮止めする第2工程と、外壁の屋内側の側面を覆う平板状の外壁断熱部を、その上端小口面を梁下断熱部の下面に当接させた状態で外壁の屋内側の側面に沿って設ける第3工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る建物の断熱ライン形成方法によれば、第1工程、第2工程、及び第3工程に係る手順により、これら断熱部によって形成される断熱ラインの内側と外側に跨る小口面が鉛直状に形成される構成を簡便な施工手順により形成することができる。また、第1工程で鉄骨梁の側面に設けられた梁側断熱部の下端小口面は、その後に続く第2工程に仮止めされる梁下断熱部の屋内側の上面と接合することによって、当該梁下断熱部を支持できることとなり、その後の施工における梁下断熱部の落下の頻度を可及的下げることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外壁から鉄骨梁にわたる断熱ラインを形成する場合でも、部材点数を可及的抑制して施工手間(施工工程)を可能な限り抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る断熱構造が適用された建物の断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る断熱構造の断面図である。
図3図2に示すIII−III線に沿った断面図である。
図4】梁下断熱部の仮固定の構造を示す拡大断面図である。
図5】本実施形態に係る梁床断熱部材の構造を示す図である。
図6】変形例に係る梁床断熱部材の構造を示す図である。
図7】変形例に係る断熱構造の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1及び図2に基づいて、本発明の実施形態について、詳細に説明する。図1に示す如く、本発明に係る断熱構造100が適用された建物は、基礎10と、該基礎10上に組み上げられる構造躯体11と、該構造躯体11に支持される外壁12と、該外壁12及び構造躯体11に沿って設けられる断熱ライン形成部30と、建物の居室の壁面及び天井面を形成する内装構造14とを備えて形成される例えば地上2階の組立住宅である。
【0020】
基礎10は、外壁12や間仕切り壁の長さ方向に連続する同一断面の鉄筋コンクリート製の布基礎として形成されている。構造躯体11は、基礎10上に立設される鉄骨柱(図示省略)と、該鉄骨柱間に架け渡される鉄骨梁15と、基礎10や鉄骨梁15に支持される床スラブ16とを備えて形成される鉄骨の軸組構造として構成されている。また、鉄骨柱の間に耐震要素(図示省略)を設置する構成も採用可能であり、この場合は鉄骨軸組ブレース構造として構成されることとなる。鉄骨柱は、鋼製の角パイプにより又は該角パイプの端部に柱頭部材や柱脚部材を取り付けて形成されている。耐震要素は、一対の角パイプをブレースや制振フレームにより連結して形成される。
【0021】
図2に示す如く、鉄骨梁15は、上下一対のフランジ15a、15bと、該上下一対のフランジ15a、15bの中央部間を連結するウェブ15cとを備えて形成される所謂I型鋼又はH型鋼により形成されており、同じく鋼製のジョイントピースを介して鉄骨柱に連結支持されている。なお、これら鉄骨柱、ジョイントピース、鉄骨梁15間の接続は高力ボルト接合等の機械的手段によりなされており、これによって溶接接合を排することとして作業者の熟練によらず接合部位の品質を一定のものとしている。また、鉄骨梁15には、当該鉄骨梁15に垂直な方向に延びる直交(鉄骨梁)25が接合されている。直交梁25は、上下一対のフランジ25a、25bと、当該一対のフランジ25a、25bの中央部間を連結するウェブ25cとを備えている。直交梁25は、鉄骨梁15と同じ高さに設置されている。
【0022】
床スラブ16は、1階床スラブ16a、2階床スラブ16b、屋根スラブ16cからなり、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)製の床パネルを敷設することにより形成されている。図1に示す如く、1階床スラブ16aを形成する床パネルは、端部を基礎10の上面に載置した状態で当該基礎10に支持されている。また、2階の床スラブ16b及び屋根スラブ16cを形成する床パネルは、端部を鉄骨梁15の上フランジ15a上面に載置した状態で、該鉄骨梁15に取り付けられた剛床金物(図示省略)を介して当該鉄骨梁に支持されている。
【0023】
外壁12は、1階外壁12a及び2階外壁12bからなり、それぞれ、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)製の外壁パネルを並べて配備することにより形成されている。また、各外壁パネルは、当該各階の床スラブ16(16a、16b)の下面から鉄骨梁15の上フランジ15aの上面に至る少なくとも各階の高さに相当する高さを有している。また、図2中に示す如く、各階の外壁パネルは、鉄骨梁15や基礎10から外壁パネルに向けて突出した状態に取り付けられる各種支持金物17を介して鉄骨梁15や基礎10に上下端部が支持されている。上述の如く軽量気泡コンクリートにより形成される床スラブ16や外壁12は、軽量で且つ高い断熱性能を有するものとなる。なお、本実施形態においては、外壁12として軽量気泡コンクリートからなる外壁パネルを採用しているが、PCコンクリート製のパネル、木製パネルやサイディング、及びこれらのパネルに外装部材等を取り付けたもの等、上記鉄骨梁15よりも熱伝達率が大きく、これによって鉄骨梁15が相対的に熱橋を形成することとなる構成であれば、如何なる材料により外壁12を形成することとしても構わない。
【0024】
また、鉄骨梁15の上方には、該鉄骨梁15に支持される床スラブ16と該床スラブ16に対向する2階の外壁12の下端部との間となる位置に間隙が形成されており、該間隙は、上記剛床金物、自重受け金物やイナズマプレート等の各種金物17を梁に取り付けるためのスペースであって、これら各種金物17、床スラブ16及び外壁12の設置後にモルタル18が充填される。
【0025】
また、内装構造14は、居室の壁面を構成する壁板19と、該壁板19を支持する下地部材20と、居室の天井を形成する天井板21と、該天井板21を支持する野縁部材22とを備えている。下地部材20は、外壁12に所定の間隔を空けて対向する位置で格子状に組み立てられており、該下地部材20に壁板19が隙間なく敷設されている。
【0026】
野縁部材22は、床スラブ16に所定の間隔を空けて対向する位置で格子状に組み立てられており、該野縁部材22に天井板21が隙間なく敷設されている。また、野縁部材22は、吊木部材(図示省略)を介して鉄骨梁に支持されている。これら壁板19と外壁12の間の隙間により形成される壁内空間S1と天井板21と床スラブ16の間の隙間により形成される天井裏空間S2とは鉄骨梁15の下方で連通されており、これによって、天井裏空間S2から壁内空間S1に亘って配管等の配設が可能となっている。
【0027】
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態に係る断熱構造100及び梁床断熱部材50について説明する。なお、図2及び図3は、一階と二階の間における梁15周辺の断熱構造100のみを示しているが、二階と屋上の間における梁15周辺についても同趣旨の構造を有している。図2及び図3に示すように、断熱構造100は、床スラブ16と、床スラブ16を支持する鉄骨梁15と、鉄骨梁15の屋外側の側面に対向して鉄骨梁15に支持される外壁12と、断熱ライン形成部30と、を備えている。
【0028】
断熱ライン形成部30は、外壁12から鉄骨梁15の下面及び屋内側の側面に沿って設けられて床スラブ16の直下の階を断熱するものである。断熱ライン形成部30は、鉄骨梁15の屋内側の側面を覆う平板状の梁側断熱部31と、床スラブ16の下面を覆う平板状の床側断熱部32と、外壁12の屋内側の側面を覆う平板状の外壁断熱部33と、鉄骨梁15の下面を覆い、外壁断熱部33と梁側断熱部31とを連結する平板状の梁下断熱部34と、直交梁25のウェブ25cを覆う平板状の直交梁断熱部36と、を備えている。梁側断熱部31及び床側断熱部32は、平板を折り曲げた梁床断熱部材50によって構成されている。梁床断熱部材50の詳細な構成については後述する。外壁断熱部33、梁下断熱部34及び直交梁断熱部36は、互いに別体の平板部材によって構成されている。本実施形態では、各断熱部として、フェノール樹脂発泡体からなるものを採用しており、具体的にネオマフォーム(登録商標)を用いている。このように、各断熱部は、気密性を有して形成される。また、各断熱部の継ぎ目は、一方の断熱部から他方の断熱部に亘って気密テープが貼着されることで塞がれている。また、各断熱部として、上記フェノール樹脂発泡体に変えてポリエチレンフォーム(PE)を採用することも可能である。
【0029】
梁側断熱部31は、鉄骨梁15の上フランジ15a及び下フランジの屋内側の端面に接触するように設けられており、上フランジ15aの屋内側の端面から下フランジ15bの屋内側の端面に亘って上下方向に延びている。床側断熱部32は、鉄骨梁15の上フランジ15aの屋内側の端面から床スラブ16の下面を覆うように、屋内側へ向かって水平に延びている。外壁断熱部33は、床スラブ16の直下の階の外壁12の屋内側の側面の略全域を覆うように上下方向に延びている。外壁断熱部33の上端小口面33aは、鉄骨梁15の下フランジ15bの下面との間で梁下断熱部34の厚さ程度の隙間を空けている。梁側断熱部31の上端部と上フランジ15aの端部との間には、気密性を有する貼着部材(両面テープ)46が貼り付けられている。
【0030】
梁下断熱部34は、鉄骨梁15の幅よりも幅広な平板状に形成される。梁下断熱部34の外壁側小口部は、鉄骨梁15の下フランジ15bの外壁側の端部よりも外壁側まで延びており、屋内側小口部は、鉄骨梁15の下フランジ15bの屋内側の端部よりも屋内側まで延びている。屋内側小口部は、梁側断熱部31を載置できる程度に、下フランジ15bの端部より、屋内側に突出している。梁下断熱部34は、外壁側小口部の下面34cを外壁断熱部33の上端小口面33aに当接させた状態で設けられている。梁下断熱部34は、屋内側小口部の上面34dを梁側断熱部31の下端小口面31aに当接させた状態で設けられている。これによれば、梁下断熱部34の上面34dが梁側断熱部31の下端小口面31aを受けることとなる。
【0031】
鉄骨梁15には、外壁12を支持する支持金具17と、当該支持金具17を鉄骨梁15に固定する固定具40が設けられている。図4に示すように、固定具40は、ボルト41及びナット42で構成されており、支持金具17と鉄骨梁15の下フランジ15bとを重ね合わせた部分を締結している。固定具40は、鉄骨梁15の下面から突出する突出部43を有している。突出部43は、ボルト41のうち、支持金具17及び下フランジ15bよりも下方に突出した部分、及びナット42で構成されている。
【0032】
図4(a)に示す例では、梁下断熱部34は、少なくとも突出部43の突出長さD1よりも大きい厚さt1を有している。梁下断熱部34は、突出部43に突き刺された状態で鉄骨梁15の下面の下方に設けられている。梁下断熱部34は、突出部43の部分で押しつぶされており、当該突出部43が挿入された部分で支持される。梁下断熱部34の厚さt1は突出部43の突出長さD1よりも大きいため、突出部43の先端が梁下断熱部34を貫通することが防止されている。
【0033】
図4(b)に示す例では、梁下断熱部34は、突出部43の圧入に伴う膨出を許容する膨出性を有している。梁下断熱部34は、突出部43に突き刺された状態で鉄骨梁15の下面の下方に設けられている。梁下断熱部34は、突出部43の部分で押しつぶされており、更に当該突出部43が挿入された部分が膨出している。また、突出部43が挿入された部分で支持される。梁下断熱部34は、突出部43が挿入された部分で膨出するため、突出部43の先端が梁下断熱部34を貫通することが防止されている。梁下断熱部34の厚さt1は特に限定されないが、突出部43の突出長さD1と略同じ厚さであっても、貫通することが防止される。
【0034】
図2及び図3に戻り、直交梁断熱部36は、直交梁25の上フランジ25aと下フランジ25bとの間に配置される平板状に形成される。直交梁断熱部36の上端小口面36cは上フランジ25aと当接し、下端小口面36dは下フランジ25bと当接する。直交梁断熱部36は、直交梁25の外壁側の端面から屋内側へ向かって延びており、少なくとも床側断熱部32よりも屋内側まで延びている。直交梁断熱部36の一方の平板面36aはウェブ25cと当接しており、他方の平板面36bは、上フランジ25a及び下フランジ25bの端部と略一致している。直交梁25が鉄骨梁15と接合される部分では、床側断熱部32及び梁側断熱部31、すなわち梁床断熱部材50の端部50aは、直交梁断熱部36の平板面36bと当接している。梁下断熱部34は、直交梁25の下面を跨いでいる。ただし、梁下断熱部34は、図示されない柱の部分で当該柱の形状に合わせてカットされている。
【0035】
次に、梁側断熱部31及び床側断熱部32を備え、鉄骨梁15及び床スラブ16の下面とを同時に覆う梁床断熱部材50について説明する。この梁床断熱部材50は、梁側断熱部31と、床側断熱部32を備えており、当該梁側断熱部31と床側断熱部32とは、互いの一方の平板面31b,32b同士が可撓性を有するシート状の連結材51で連結されている。他方の平板面31c,32cは、隙間SPの部分で切断されたシート52で覆われる。このような梁床断熱部材50は、一対のシート層(連結材51とシート52にそれぞれ該当)間にフェノールフォームからなる気密断熱層(断熱部31,32に該当)を挟み込んで形成される板状の断熱板の一方のシート層(シート52)から気密断熱層に亘って切り込みを入れることで形成される。これにより、梁側断熱部31と床側断熱部32が、気密断熱層によりそれぞれ形成されると共に、連結材51が、切り込みの入っていない他方のシート層により形成される。
【0036】
図5(a)に示す例では、互いの一方の平板面31b,32bを同一平面上とした状態では、梁側断熱部31の小口面31dと床側断熱部32の小口面32dとは隙間SPを有して対向している。小口面31dと小口面32dとは平行となるように対向している。隙間SPの大きさD2は、梁側断熱部31の小口面31dの高さt2及び床側断熱部32の小口面32dの高さt3の何れか一方と同一或いは僅かに小さく設定されている。隙間SPの大きさD2を梁側断熱部31の小口面31dの高さt2に合わせて設定した場合、図5(b)に示すように、梁側断熱部31及び床側断熱部32が折り込まれることで、隙間SPに梁側断熱部31(一方の断熱部)の小口部が隙間SPに嵌め込まれる。また、梁側断熱部31(一方の断熱部)の小口部における他方の平板面31cが、床側断熱部32(他方の断熱部)の小口面32dに密着した状態となる。また、梁側断熱部31(一方の断熱部)の小口面31dが隙間SPで露出した連結材51に密着した状態となる。梁床断熱部材50は、この状態にて、鉄骨梁15の側面を梁側断熱部31で覆うと共に、床スラブ16の下面を床側断熱部32で覆っている。なお、隙間SPの大きさD2を床側断熱部32の小口面32dの高さt3に合わせて設定した場合、梁側断熱部31及び床側断熱部32が折り込まれることで、隙間SPに床側断熱部32(一方の断熱部)の小口部が隙間SPに嵌め込まれる。また、床側断熱部32(一方の断熱部)の小口部における他方の平板面32cが、梁側断熱部31(他方の断熱部)の小口面31dに密着した状態となる。また、床側断熱部32(一方の断熱部)の小口面32dが隙間SPで露出した連結材51に密着した状態となる。ただし、小口面31dの高さt2と小口面32dの高さt3が等しい場合は、どちらに合わせて隙間SPの大きさD2を設定しても同じ大きさとなるので、梁側断熱部31の小口部と床側断熱部32の小口部のいずれを隙間SPに嵌め込んでもよい。
【0037】
図5(c)に示す例では、梁側断熱部31及び床側断熱部32は、一方の平板面31b,32bから他方の平板面31c,32cに向けて傾斜状に形成された傾斜小口面31e,32eを有している。互いの一方の平板面31b,32bを同一平面上とした状態では、梁側断熱部31の傾斜小口面31eと床側断熱部32の傾斜小口面32eとは、それぞれの先端部31f,32fを突き合わせた状態で対向している。図5(d)に示すように、梁床断熱部材50は、梁側断熱部31及び床側断熱部32が折り込まれることで、互いの傾斜小口面31e,32eが密着した状態となる。梁床断熱部材50は、この状態にて、鉄骨梁15の側面を梁側断熱部31で覆うと共に、床スラブ16の下面を床側断熱部32で覆っている。
【0038】
連結材51は、梁側断熱部31と床側断熱部32とを折り込むときに折り曲げられる折れ部51aを有している。図5(a)に示す梁床断熱部材50の場合、梁側断熱部31を隙間SPに嵌めるように折り込む場合(図5(b)の場合)は、当該梁側断熱部31の小口面31dの位置が連結材51の折れ部51aに該当する。なお、床側断熱部32を隙間SPに嵌めるように折り込む場合は、当該床側断熱部32の小口面32dの位置が連結材51の折れ部51aに該当する。図5(c)に示す梁床断熱部材50の場合、先端部31f,32fの位置が連結材51の折れ部51aに該当する。梁床断熱部材50を設置する際、連結材51の折れ部51aの位置は、鉄骨梁15の上端部(上フランジ15aの端部)と当接する位置に該当する(図2参照)。連結材51の表面には、少なくとも折れ部51aに沿って当該折れ部51aを鉄骨梁15の上端部に貼着する気密性を有する貼着部材46が設けられている。これにより、図2に示すように、梁床断熱部材50では、貼着部材46を介して折れ部51aが鉄骨梁15の上端部に密着している。これにより、梁床断熱部材50と鉄骨梁15の上フランジ15aとの間の気密性が確保されている。なお、図2及び図5に示すように、貼着部材46は、折れ部51a付近の領域のうち鉄骨梁15の上端部と当接する部分にのみ(梁側断熱部31側の一部のみ)形成されていればよい。ただし、後述の図7のように、床側断熱部32まで及んでいてよい。
【0039】
次に、本実施形態に係る断熱ライン形成方法の手順について説明する。まず、鉄骨梁15の下面を覆う平板状の梁下断熱部34を、鉄骨梁15の下面に仮止めする(第1工程)。このとき、梁下断熱部34は、固定具40の突出部43が挿入されることにより仮止めされる。次に、外壁12の屋内側の側面を覆う平板状の外壁断熱部33を、その上端小口面33aを梁下断熱部34の下面34cに当接させた状態で外壁12の屋内側の側面に沿って設ける(第2工程)。次に、鉄骨梁15の屋内側の側面を覆う平板状の梁側断熱部31を、その下端小口面31aを梁下断熱部34の上面34dに当接させた状態で鉄骨梁15の屋内側の側面に沿って設ける(第3工程)。第3工程では、折り込まれた状態の梁床断熱部材50を取り付けるため、梁側断熱部31と同時に床側断熱部32が設けられる。梁床断熱部材50は、貼着部材46を介して鉄骨梁15の上フランジ15aに固定される。
【0040】
または、断熱ライン形成方法の別の手順として、断熱ラインを次の手順にて形成してもよい。まず、鉄骨梁15の屋内側の側面を覆う平板状の梁側断熱部31を、鉄骨梁15の屋内側の側面に沿って設ける(第1工程)。第1工程では、折り込まれた状態の梁床断熱部材50を取り付けるため、梁側断熱部31と同時に床側断熱部32が設けられる。梁床断熱部材50は、貼着部材46を介して鉄骨梁15の上フランジ15aに固定される。次に、鉄骨梁15の下面を覆う平板状の梁下断熱部34を、その上面34dを梁側断熱部31の下端小口面31aに当接させた状態で鉄骨梁15の下面に仮止めする(第2工程)。次に、外壁12の屋内側の側面を覆う平板状の外壁断熱部33を、その上端小口面33aを梁下断熱部の下面34cに当接させた状態で外壁12の屋内側の側面に沿って設ける(第3工程)。
【0041】
次に、本実施形態に係る断熱構造100、断熱方法、及び梁床断熱部材50の作用・効果について説明する。
【0042】
本実施形態に係る梁の断熱構造100によれば、梁下断熱部34が平板状に形成されるので、部材としての単純化が図られることとなる。また、当該部材を鉄骨梁15の下方に対向させて設置するため、施工中に落下することが考えられるが、当該梁下断熱部34の外壁側小口部の下面34cに外壁断熱部33の上端小口面33aが当接し、これによって、梁下断熱部34は、外壁側小口部が外壁断熱部33と鉄骨梁15とにより挟持されることとなり、落下が防止される。これにより、落下防止のための施工の手間を削減することができる。以上により、外壁12から鉄骨梁15にわたる断熱ラインを形成する場合でも、部材点数を可及的抑制して施工手間(施工工程)を可能な限り抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る梁の断熱構造100によれば、梁下断熱部34は、少なくとも突出部43の突出長さD1よりも大きい厚さt1を有し、当該突出部43に突き刺された状態で鉄骨梁15の下面の下方に設けられている(図4(a)参照)。これによれば、梁下断熱部34は、固定具40の突出部43に突き刺されることで一時的に仮固定されることとなる。これによって当該梁下断熱部34を鉄骨梁15の下面に対向させた状態に保持するための施工手間を削減することができる(あるいは、当該部材の施工時の落下の頻度をさらに下げることができる)。また、梁下断熱部34の厚さt1が固定具40の突出部43の突出長さD1よりも大きく形成されているので、当該梁下断熱部34を固定具40の突出部43に突き刺したとしても、当該固定具40が梁下断熱部34を貫通する虞はなく、これによって、かかる施工に伴う断熱ラインの破断を回避することができる。また、固定具40は断熱ライン形成部30と外壁12との間の梁設置空間に設けられているために当該空間の空気と接触して冷たくなるが、上記の如き断熱ラインの破断の回避により、冷たくなった固定具40と屋内側の空気が接触することが回避され、これらの接触に伴う結露の発生が防止されるものとなっている。
【0044】
また、本実施形態に係る梁の断熱構造100において、梁下断熱部34は、突出部43の圧入に伴う膨出を許容する膨出性を有しており、当該突出部43に突き刺された状態で鉄骨梁15の下面の下方に設けられている(図4(b)参照)。これによれば、梁下断熱部34は、固定具40の突出部43に突き刺されることで一時的に仮固定されることとなり、これによって当該梁下断熱部34を鉄骨梁15の下面に対向させた状態に保持するための施工手間を削減することができる(あるいは、当該部材の施工時の落下の頻度をさらに下げることができる)。また、梁下断熱部34が上述の如き膨出性を備えているので、当該梁下断熱部34を固定具40の突出部43に突き刺したとしても、当該固定具40が梁下断熱部34を貫通する虞はなく、これによって、かかる施工に伴う断熱ラインの破断を回避することができる。また、固定具40は断熱ライン形成部30と外壁12との間の梁設置空間に設けられているために当該空間の空気と接触して冷たくなるが、上記の如き断熱ラインの破断の回避により、冷たくなった固定具40と屋内側の空気が接触することが回避され、これらの接触に伴う結露の発生が防止されるものとなっている。
【0045】
また、本実施形態に係る梁の断熱構造100において、各断熱部31〜36は気密性を有して形成されると共に、各断熱部31〜36の継ぎ目には、一方の断熱部から他方の断熱部に亘って室内側から気密テープ(図示省略)が貼着されている。これにより、断熱部間の継ぎ目が気密テープにより塞がれることとなるので、断熱部を連結することにより形成される断熱ラインに一致させて気密ラインを形成することができるものとなっている。
【0046】
また、本実施形態に係る断熱ライン形成方法では、梁下断熱部34を鉄骨梁15の下面に仮止めする工程(第1工程)、外壁断熱部33を、その上端小口面33aを梁下断熱部34の下面に当接させた状態で外壁12の屋内側の側面に沿って設ける工程(第2工程)、梁側断熱部31を、その下端小口面31aを梁下断熱部34の上面34dに当接させた状態で鉄骨梁15の屋内側の側面に沿って設ける工程(第3工程)という手順により、これら断熱部によって形成される断熱ラインの内側と外側に跨る小口面が鉛直状に形成される構成を簡便な施工手順により形成することができる。また、第1工程で鉄骨梁15の下面に仮固定された梁下断熱部34は、その後に続く第2工程により外壁断熱部33に支持される(鉄骨梁15と外壁断熱部33により挟持される)こととなり、その後の施工における梁下断熱部34の落下の頻度を可及的下げることができる。
【0047】
本実施形態に係る建物の断熱ライン形成方法では、梁側断熱部31を鉄骨梁15の屋内側の側面に沿って設ける工程(第4工程)、梁下断熱部34を、その上面34dを梁側断熱部31の下端小口面31aに当接させた状態で鉄骨梁15の下面に仮止めする工程(第5工程)、外壁断熱部33を、その上端小口面33aを梁下断熱部の下面34cに当接させた状態で外壁12の屋内側の側面に沿って設ける工程(第6工程)という手順により、これら断熱部によって形成される断熱ラインの内側と外側に跨る小口面が鉛直状に形成される構成を簡便な施工手順により形成することができる。また、第4工程で鉄骨梁15の側面に設けられた梁側断熱部31の下端小口面31aは、その後に続く第5工程に仮止めされる梁下断熱部34の屋内側の上面34dと接合することによって、当該梁下断熱部34を支持できることとなり、その後の施工における梁下断熱部34の落下の頻度を可及的下げることができる。
【0048】
本実施形態の図5(a)に示す梁床断熱部材50、及びそれを用いた断熱構造100によれば、梁側断熱部31と床側断熱部32の何れか一方の小口面31d,32dで当該隙間SPを埋めるように折り込むことで、一方の断熱部の小口部における他方の平板面に他方の断熱部の小口面が当接する。これによって、梁床断熱部材50が図5(b)に示すような屈曲状に折れた形状となる。このように折れた形状の梁床断熱部材50を鉄骨梁15の側面と床スラブ16の下面に当接させることにより、入り隅状に形成されて断熱施工を施し難い鉄骨梁15から床スラブ16の下面に切り替わる部分の断熱施工を1の断熱部材をもって容易に行うことができるものとなる。また、上述の如く小口面31d,32d同士を突き合わせて折れ部が形成されており、該折れ部に沿って両断熱部31,32を折り込むことで当該両断熱部31,32の小口部同士が突き合わされた状態が形成されるため、当該折れ部は、平板部と同程度の断熱性が確保されるものとなっている。以上によって、鉄骨梁15と床スラブ16の下面とに亘って断熱施工を施す場合でも、断熱性を確保しつつ、部材点数を削減して且つ施工順の削減も図ることができる。
【0049】
本実施形態の図5(c)に示す梁床断熱部材50、及びそれを用いた断熱構造100では、梁側断熱部31と床側断熱部32の傾斜小口面31e,32eを当接させることで、図5(d)に示すように、梁床断熱部材50が屈曲状に折れた形状となる。そして、当該折れた形状の梁床断熱部材50を鉄骨梁15の側面と床スラブ16の下面に当接させることにより、入り隅状に形成されて断熱施工を施し難い鉄骨梁から床スラブ16の下面に切り替わる部分の断熱施工を1の断熱部材をもって容易に行うことができるものとなる。また、上述の如く傾斜小口面31e,32e同士を突き合わせて折れ部が形成されており、該折れ部に沿って両断熱部31,32を折り込むことで当該両断熱部31,32の小口部同士が突き合わされた状態が形成されるため、当該折れ部は、平板部と同程度の断熱性が確保されるものとなっている。以上によって、鉄骨梁15と床スラブ16の下面とに亘って断熱施工を施す場合でも、断熱性を確保しつつ、部材点数を削減して且つ施工順の削減も図ることができる。
【0050】
本実施形態に係る梁床断熱部材50では、一対のシート層間にフェノールフォームからなる気密断熱層を挟み込んで形成される板状の断熱板の一方のシート層から気密断熱層に亘って切り込みを入れることで、梁側断熱部31と床側断熱部32が、気密断熱層によりそれぞれ形成されると共に、連結材51が、切り込みの入っていない他方のシート層により形成される。これによれば、平板状の断熱板の一方のシート層を切断することなく切り込みを入れることで、容易に梁床断熱部材50を形成することができる。
【0051】
本実施形態に係る梁床断熱部材50及びそれを用いた断熱構造100において、連結材51は、梁側断熱部31と床側断熱部32とを折り込むときに折り曲げられる折れ部51aを有し、連結材51の表面には、少なくとも折れ部51aに沿って当該折れ部51aを鉄骨梁15の上端部に貼着する気密性を有する貼着部材46が設けられておる。折り込まれた梁床断熱部材50は、当該貼着部材46を介して折れ部51aが鉄骨梁15の上端部に密着している。これによれば、折れ部51aが鉄骨梁15の上端部に取り付けられ、それに合わせて床側断熱部32が床スラブ16の下面に当接すると共に梁側断熱部31も鉄骨梁15の側面に沿うこととなり、当該梁床断熱部材50の取り付けが著しく容易なものとなる。また、当該貼着部材46を介して梁床断熱部材50が梁に取り付けられることとなるので、作業者は、当該梁床断熱材50から手を離して作業を行うことができ、建物に断熱を施す施工全体の作業性を向上させることができるものとなっている。また、当該貼着部材46は気密性を有しているため、小口面同士が当接あるいは対向する折れ部51a付近の気密性も確保される。
【0052】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、外壁12や構造躯体11の構成は、本発明の趣旨の範囲で適宜変更してもよい。それに応じて、各断熱部の材料、厚さ、形状を変更してもよい。
【0053】
例えば、梁床断熱部材50の変形例として、図6に示すような構成を採用してもよい。図6(a)に示す梁床断熱部材50は、連結材51が隙間SP付近にのみ設けられている。すなわち、梁側断熱部31の平板面31b,32bはシート材で覆われることなく露出しており、小口面31d,32dが対向する隙間SPのみにおいて、平板面31b,32bの隙間SP付近の縁部に連結材51が取り付けられている。図6(b)に示す梁床断熱部材50は、両断熱部31,32の小口面31d,32dの高さが異なっている。隙間SPの大きさD2は、小口面31d,32dの何れか一方の高さに対応するように形成される。図6(c)に示す梁床断熱部材50は、一方の平板面31b,32bから他方の平板面31c,32cへ向かって平行な小口面31d,32dが形成され、途中から傾斜小口面31e,32eが形成されている。傾斜小口面31eと傾斜小口面32eとは、それぞれの先端部31f,32fが互いに突き合わされた状態で対向している。この梁床断熱部材50を折り曲げた場合、傾斜小口面31e,32e同士が接触する。
【0054】
例えば、図7に示すような建物に対して、本発明の変形例に係る断熱構造200を適用してもよい。図7に示す建物においては、床スラブ16は、鉄骨梁15の上面ではなく、鉄骨梁15に接続された取付金具72に取り付けられている。取付金具72はL字状の部材であって、鉄骨梁15のウェブ15cに固定されたブラケット71を介して鉄骨梁15に支持されている。このように、鉄骨梁15の側面からはこれらのブラケット71及び取付金具72が突出した構成となっている。断熱構造200では、梁床断熱部材50の梁側断熱部31と床側断熱部32が直角よりも大きな角度にて折れ曲がっている。すなわち、梁側断熱部31は、下フランジ15bの端部から屋内側へ傾斜するように上側へ延び、ブラケット71及び取付金具72を避けるように床スラブ16の下面まで延びている。梁床断熱部材50の折れ部51aは貼着部材46を介して取付金具72の縁部に貼着している。このような梁側断熱部31と床側断熱部32との間の角度調整は、例えば、隙間SPの傾斜小口面31eと傾斜小口面32eとの間の角度AGの調整によって可能となる(図5(c)参照)。
【0055】
なお、本発明においては、梁側断熱部31と床側断熱部32とが、連結材51によって連結された梁床断熱部材を用いていればよく、各断熱部の小口部の上下面や小口面同士の当接のパターンは、上述のものに限定されない。
【符号の説明】
【0056】
12…外壁、15,25…鉄骨梁、16…床スラブ、17…支持金具、30…断熱ライン形成部、31…梁側断熱部、32…床側断熱部、33…外壁断熱部、34…梁下断熱部、36…直交梁断熱部、40…固定具、43…突出部、46…貼着部材、50…梁床断熱部材、51…連結材、100,200…断熱構造。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7