特許第5965694号(P5965694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965694
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ねじ締め装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   B25B23/14 610A
   B25B23/14 610K
   B25B23/14 620C
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-75653(P2012-75653)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-202744(P2013-202744A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】593103250
【氏名又は名称】株式会社バンガードシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】特許業務法人エム・アイ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】萩原 恭
(72)【発明者】
【氏名】北 明彦
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−150978(JP,A)
【文献】 特開平06−113594(JP,A)
【文献】 特開2006−238674(JP,A)
【文献】 特開昭55−070578(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0808011(EP,A1)
【文献】 特許第5806915(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
B25F 5/00
H02P 8/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじに嵌合させるためのビットと、
前記ビットを回転させるために動力を与えるステッピングモータと、
入力されたPWM(Pulse Width Modulation)信号により前記ステッピングモータを駆動させる駆動手段と、
前記駆動手段において検出された電流値から前記ステッピングモータのトルクを算出し、算出した前記トルクを用いてねじ締めの状態を判断し、判断した前記状態に応じて前記駆動手段への前記PWM信号の入力を継続または遮断する制御手段と
新しくトルクが算出されるたびに最新のトルクから順に並べて指定された数のトルクを記憶する記憶手段と
を有し、
前記制御手段は、前記最新のトルクまたは該最新のトルクから順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルクが、設定されたトルク以上であるか否かを判定し、前記設定されたトルク以上と判定した場合に締め付けが完了したと判断して前記PWM信号の入力を遮断する、
ねじ締め装置。
【請求項2】
前記ステッピングモータと、前記駆動手段と、前記制御手段とが、前記ねじ締め装置が有する筺体内に収容される、請求項1に記載のねじ締め装置。
【請求項3】
前記ステッピングモータは、前記ビットに直接動力を与えて当該ビットを回転させる、請求項1または2に記載のねじ締め装置。
【請求項4】
前記ステッピングモータの回転方向の位置または回転角度を検出する位置検出手段を含み、
前記制御手段は、検出された前記位置または回転角度の情報から得られる回転速度が、設定された回転速度になるように前記PWM信号を制御する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のねじ締め装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、さらに、前記最新のトルクが算出されるたびに前記指定された数のトルクを用いて計算された順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルクを最新の平均トルクから順に並べて記憶し、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記トルクまたは前記平均トルクを用い、互いに隣り合う前記トルクまたは前記平均トルクの差を計算し、それぞれの差を比較してねじが着座した状態になったかどうかを判定し、前記着座した状態になったと判定した後、前記位置検出手段により検出された前記位置または前記回転角度が、設定された位置または回転角度に達したかどうかを判定し、達したと判定した場合に締め付けが完了したと判断して前記PWM信号の入力を遮断する、請求項に記載のねじ締め装置。
【請求項6】
前記記憶手段は、さらに、前記最新のトルクが算出されるたびに前記指定された数のトルクを用いて計算された順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルクを最新の平均トルクから順に並べて記憶し、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記トルクまたは前記平均トルクを用い、互いに隣り合う前記トルクまたは前記平均トルクの差を計算し、それぞれの差を比較してねじが着座した状態になったかどうかを判定し、前記着座した状態になったと判定した後、再び、前記記憶手段に記憶された前記トルクまたは前記平均トルクを用い、互いに隣り合う前記トルクまたは前記平均トルクの差を計算し、それぞれの差を比較してねじの降伏点に達したかどうかを判定し、前記降伏点に達したと判断した場合に締め付けが完了したと判断して前記PWM信号の入力を遮断する、請求項に記載のねじ締め装置。
【請求項7】
前記記憶手段は、さらに、前記設定されたトルクと、前記設定された回転速度と、前記ステッピングモータの駆動により得られた回転速度、すべてのトルクおよびねじ締めに要した回転数とを記憶する、請求項5または6に記載のねじ締め装置。
【請求項8】
ねじ締め装置が備える制御手段により実行される制御方法であって、
前記ねじ締め装置が備える駆動手段において検出された電流値からステッピングモータのトルクを算出するステップと、
新しくトルクが算出されるたびに最新のトルクから順に並べて指定された数のトルクを記憶する記憶ステップと、
算出した前記トルクを用いてねじ締めの状態を判断するステップと、
判断した前記状態に応じて前記駆動手段へのPWM信号の入力を継続または遮断するステップと
を有し、
前記判断するステップにおいて、前記最新のトルクまたは該最新のトルクから順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルクが、設定されたトルク以上であるか否かを判定し、前記設定されたトルク以上と判定した場合に締め付けが完了したと判断して、前記PWM信号の入力を遮断する、
制御方法。
【請求項9】
記ステッピングモータの回転方向の位置または回転角度を検出するステップと、
出された前記位置または回転角度の情報から得られる回転速度が、設定された回転速度になるように前記PWM信号を制御するステップをさらに含む、
請求項に記載の制御方法。
【請求項10】
前記記憶ステップにおいて、さらに、前記最新のトルクが算出されるたびに前記指定された数のトルクを用いて計算された順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルク最新の平均トルクから順に並べて記憶し、
前記判断するステップでは、前記記憶された前記トルクまたは前記平均トルクを用い、互いに隣り合う前記トルクまたは前記平均トルクの差を計算し、それぞれの差を比較してねじが着座した状態になったかどうかを判定し、前記着座した状態になったと判定した後、前記検出された前記位置または前記回転角度が、設定された位置または回転角度に達したかどうかを判定し、前記継続または遮断するステップでは、前記設定された位置または回転角度に達したと判定した場合に締め付けが完了したと判断して前記PWM信号の入力を遮断する、
請求項に記載の制御方法。
【請求項11】
前記記憶ステップにおいて、さらに、前記最新のトルクが算出されるたびに前記指定された数のトルクを用いて計算された順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルク最新の平均トルクから順に並べて記憶し、
前記判断するステップでは、前記記憶された前記トルクまたは前記平均トルクを用い、互いに隣り合う前記トルクまたは前記平均トルクの差を計算し、それぞれの差を比較してねじが着座した状態になったかどうかを判定し、前記着座した状態になったと判定した後、再び、前記記憶された前記トルクまたは前記平均トルクを用い、互いに隣り合う前記トルクまたは前記平均トルクの差を計算し、それぞれの差を比較してねじの降伏点に達したかどうかを判定し、前記継続または遮断するステップでは、前記降伏点に達したと判断した場合に締め付けが完了したと判断して前記PWM信号の入力を遮断する、
請求項に記載の制御方法。
以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な構成で、かつ高精度のねじ締めを実現できるねじ締め装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ締め作業を、迅速かつ容易に行うために電動ドライバーが用いられている。電動ドライバーは、例えば、先端がねじの頭部の溝や穴に嵌合可能な形状とされたビットと、回転力を発生させるモータと、モータが発生させた回転力を伝達するギアと、その回転力を伝達したり、切り離したりするクラッチ機構とを含んで構成される。
【0003】
電動ドライバーは、ギアおよびクラッチ機構を備えることにより、高トルクで締め付けることが可能であり、回転力の伝達およびその切り離しを行い、締め付けトルクの制限を安価で実現している。
【0004】
その一方で、クラッチ機構を備える電動ドライバーは、例えば、M2以下といった小さいねじの微小トルクでの締め付けトルクの安定性に欠けるという欠点がある。また、ビットを高速で回転させるため、ねじの頭部にある溝や穴をつぶしてしまうという欠点もある。それに加えてギアが介在する場合、モータをトルク制御したとしても、バックラッシュや摩擦があり、締め付けトルクが安定せず、クラッチ機構によるトルク制御に頼らざるを得ないという問題がある。
【0005】
そのため、クラッチ機構を使用せず、ロードセルで締め付けトルクを制御する場合もあるが、高価となり、汎用性に乏しい。したがって、これらのクラッチ機構やギアを用いることなく、トルク制御を行うことができる電動ドライバーが望まれている。
【0006】
例えば、ブラシレス直流方式のモータと、モータの回転を制御する回転制御回路と、モータによって駆動されるインパクトユニットと、インパクトユニットのシャフトに連結され先端工具が装着される出力軸と、トルク検出手段と、トルク検出手段の出力を用いて先端工具の締め付けを制御するマイコンと、記憶手段とを備える電動工具が提案されている(特許文献1参照)。この電動工具は、締め付けトルクの検出を行い、規定どおりの締め付けが行われたかを工具本体内で判定し、そのデータを工具本体内で保存する。
【0007】
このようなトルク検出手段であるトルクセンサを備えた電動工具は、高精度のトルク制御を実現することができるが、トルクセンサを備えるため、安価で提供することができない。
【0008】
そこで、トルクセンサを用いることなく、信頼性の高いねじ締めを実現することができるねじ締め装置が提案されている(特許文献2参照)。このねじ締め装置は、上下動可能なブレードに取り付けられ高速回転する電動ドライバーモータの回転速度検出信号を発生する手段と、ブレード上に上下方向に摺動可能な真空吸引パイプに設けた上下動検出信号を発生する手段と、2種の検出信号より所定のモータに流れる電流をフィードバックしながら電源およびモータの駆動回路をPWM制御する回路、外部からねじおよびワークに応じたねじ締めのパターンを選択するための入力回路、ねじ締めのトルクデータを表示および出力するための回路を備えている。
【0009】
このねじ締め装置は、トルクセンサを用いないことから、ローコストで提供することができ、電流の変化を検出することにより着座の検出を非常に短時間で実施し、電流制限を含めた逆転ブレーキ回路によりイナーシャ(慣性)による締めすぎ、不安定さを発生しないようにして、高精度のねじ締めを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−12587号公報
【特許文献2】特許第2682084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献2に記載のねじ締め装置は、エアーシリンダ、真空吸引パイプ、上下動検出センサ等を含むことから、構成が複雑で、まだ高価なものである。また、ギアを備えることから、上記のバックラッシュや摩擦があり、締め付けトルクが安定しないという問題がある。
【0012】
このねじ締め装置は、電流の変化により着座を検出した後、設定された時間ブレーキ電流を流し、ねじの種類に応じた低いトルクで電流値として出力することを経て、増し締めを行い、また、設定トルク電流値で一定時間モータを駆動するため、ねじ締めに時間を要する。これでは、作業が効率的とは言えない。
【0013】
ところで、モータには、上記特許文献1に記載の、ブラシの機能を半導体スイッチで置き換えたブラシレス直流方式のモータのほか、ステッピングモータ(パルスモータとも呼ばれる。)がある。ステッピングモータは、安価であり、回転角度と回転速度が、与えるパルス信号の数と周期によって決まり、その結果、定格負荷内であればフィードバック制御することなく、思い通りの動作を実現できる。
【0014】
そこで、このステッピングモータを用い、簡単な構成にして安価で提供でき、作業効率を向上させることができ、ねじの再利用も可能にし、さらには高精度でねじの締め付けを実現できるねじ締め装置やその制御方法の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、上記課題は、本発明のねじ締め装置およびその制御方法を提供することにより解決することができる。
【0016】
本発明のねじ締め装置は、ねじに嵌合させるためのビットと、前記ビットを回転させるために動力を与えるステッピングモータと、入力されたPWM(Pulse Width Modulation)信号により前記ステッピングモータを駆動させる駆動手段と、前記駆動手段において検出された電流値から前記ステッピングモータのトルクを算出し、算出した前記トルクを用いてねじ締めの状態を判断し、判断した前記状態に応じて前記駆動手段への前記PWM信号の入力を継続または遮断する制御手段とを含む。
【0017】
前記ステッピングモータと、前記駆動手段と、前記制御手段とが、前記ねじ締め装置が有する筺体内に収容されていることが好ましい。筐体内に収容することにより配線の本数を少なく(省配線化)することができるからである。
【0018】
前記ステッピングモータは、前記ビットに直接動力を与えて当該ビットを回転させる。したがって、ビットとステッピングモータとの間には、クラッチ機構やギアは存在しない。
【0019】
前記ねじ締め装置は、新しくトルクが算出されるたびに最新のトルクから順に並べて指定された数のトルクを記憶する記憶手段を含み、前記制御手段は、前記最新のトルクまたは該最新のトルクから順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルクが、設定されたトルク以上であるか否かを判定し、前記設定されたトルク以上と判定した場合に締め付けが完了したと判断して前記PWM信号の入力を遮断することができる。なお、駆動手段へのPWM信号の入力を遮断することにより、ステッピングモータは自然停止する。
【0020】
また、前記ねじ締め装置は、前記ステッピングモータの回転方向の位置または回転角度を検出する位置検出手段を含み、前記制御手段は、検出された前記位置または回転角度の情報から得られる回転速度が、設定された回転速度になるように前記PWM信号を制御することにより速度制御を行うことができる。
【0021】
また、新しくトルクが算出されるたびに最新のトルクから順に並べて指定された数のトルクを記憶するとともに、前記最新のトルクが算出されるたびに前記指定された数のトルクを用いて計算された順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルクも最新の平均トルクから順に並べて記憶する記憶手段を含み、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記トルクまたは前記平均トルクを用い、互いに隣り合う前記トルクまたは前記平均トルクの差を計算し、それぞれの差を比較してねじが着座した状態になったかどうかを判定し、前記着座した状態になったと判定した後、前記位置検出手段により検出された前記位置または前記回転角度が、設定された位置または回転角度に達したかどうかを判定し、達したと判定した場合に締め付けが完了したと判断して前記PWM信号の入力を遮断することができる。
【0022】
さらに、新しくトルクが算出されるたびに最新のトルクから順に並べて指定された数のトルクを記憶するとともに、前記最新のトルクが算出されるたびに前記指定された数のトルクを用いて計算された順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルクも最新の平均トルクから順に並べて記憶する記憶手段を含み、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記トルクまたは前記平均トルクを用い、互いに隣り合う前記トルクまたは前記平均トルクの差を計算し、それぞれの差を比較してねじが着座した状態になったかどうかを判定し、前記着座した状態になったと判定した後、再び、前記記憶手段に記憶された前記トルクまたは前記平均トルクを用い、互いに隣り合う前記トルクまたは前記平均トルクの差を計算し、それぞれの差を比較してねじの降伏点に達したかどうかを判定し、前記降伏点に達したと判断した場合に締め付けが完了したと判断して前記PWM信号の入力を遮断することもできる。
【0023】
前記記憶手段は、さらに、前記設定されたトルクと、前記設定された回転速度と、前記ステッピングモータの駆動により得られた回転速度、すべてのトルクおよびねじ締めに要した回転数とを記憶することができる。
【0024】
本発明の制御方法は、上記ねじ締め装置の制御手段が実行する処理を処理ステップとして含む。すなわち、駆動手段において検出された電流値からステッピングモータのトルクを算出するステップと、算出した前記トルクを用いてねじ締めの状態を判断するステップと、判断した前記状態に応じて前記駆動手段への前記PWM信号の入力を継続または遮断するステップとを含む。
【0025】
ねじ締め装置は、新しくトルクが算出されるたびに最新のトルクから順に並べて指定された数のトルクを記憶する記憶手段を含み、前記判断するステップでは、前記最新のトルクまたは該最新のトルクから順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルクが、設定されたトルク以上であるか否かを判定し、前記継続または遮断するステップでは、前記設定されたトルク以上と判定した場合に締め付けが完了したと判断して前記PWM信号の入力を遮断することができる。
【0026】
また、ねじ締め装置は、前記ステッピングモータの回転方向の位置または回転角度を検出する位置検出手段を含み、前記制御方法は、検出された前記位置または回転角度の情報から得られる回転速度が、設定された回転速度になるように前記PWM信号を制御するステップをさらに含む。
【0027】
新しくトルクが算出されるたびに最新のトルクから順に並べて指定された数のトルクを記憶するとともに、前記最新のトルクが算出されるたびに前記指定された数のトルクを用いて計算された順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルクも最新の平均トルクから順に並べて記憶する記憶手段を含み、前記判断するステップでは、前記記憶手段に記憶された前記トルクまたは前記平均トルクを用い、互いに隣り合う前記トルクまたは前記平均トルクの差を計算し、それぞれの差を比較してねじが着座した状態になったかどうかを判定し、前記着座した状態になったと判定した後、前記位置検出手段により検出された前記位置または前記回転角度が、設定された位置または回転角度に達したかどうかを判定し、前記継続または遮断するステップでは、設定された位置または回転角度に達したと判定した場合に締め付けが完了したと判断して前記PWM信号の入力を遮断することができる。
【0028】
新しくトルクが算出されるたびに最新のトルクから順に並べて指定された数のトルクを記憶するとともに、前記最新のトルクが算出されるたびに前記指定された数のトルクを用いて計算された順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルクも最新の平均トルクから順に並べて記憶する記憶手段を含み、前記判断するステップでは、前記記憶手段に記憶された前記トルクまたは前記平均トルクを用い、互いに隣り合う前記トルクまたは前記平均トルクの差を計算し、それぞれの差を比較してねじが着座した状態になったかどうかを判定し、前記着座した状態になったと判定した後、再び、前記記憶手段に記憶された前記トルクまたは前記平均トルクを用い、互いに隣り合う前記トルクまたは前記平均トルクの差を計算し、それぞれの差を比較してねじの降伏点に達したかどうかを判定し、前記継続または遮断するステップでは、前記降伏点に達したと判断した場合に締め付けが完了したと判断して前記PWM信号の入力を遮断することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のねじ締め装置は、安価なステッピングモータを用い、簡単な構成であるため、安価で提供することができる。また、本発明のねじ締め装置およびその制御方法は、直接ねじの締め付けトルクを制御することができるため、特に微細ねじの締め付けに対して、嵌合溝をつぶすことなく、高速で、かつ高精度のねじ締めを実現することができる。また、締め付けられる側が樹脂である場合においても、その締め付けられる側のねじ溝をつぶすことがなくなる。
【0030】
また、ねじ締めの途中でブレーキをかけたり、低トルクで回転させたりする必要がないので、作業効率を向上させることができる。ねじ締め作業において降伏点を大きく超えるようなことがないので、ねじの再利用が可能となる。
【0031】
さらに、モータ、駆動手段および制御手段を1つの筐体内に収容することで、コンパクトになり、さらに配線の本数を少なく(省配線化)することができる。また、記憶手段に得られた回転速度、トルク、回転数を記録することで、その後、トレースすることができ、間違った長さのねじを使用した場合や、斜めに挿入され所定の回転数より少ない回転数で締め付けられた場合等の締め付け異常を検出することが可能となる。そして、トルクカーブを記録しトレースすることも可能となり、これらの情報を記録管理することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明のねじ締め装置の構成例を示した図。
図2】ねじ締め装置が備える駆動回路の一例を示した回路構成図。
図3】ねじ締め装置が備える制御回路の一例を示した機能ブロック図。
図4】ねじの締め付け角度と締め付けトルクとの関係を示した図。
図5】ねじ締め装置が備えるデータテーブルを例示した図。
図6】トルク法を採用してねじ締めを実施する場合の処理の流れを示したフローチャート。
図7】回転角法を採用してねじ締めを実施する場合の処理の流れを示したフローチャート。
図8】トルク勾配法を採用してねじ締めを実施する場合の処理の流れを示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明のねじ締め装置の構成例を示した図である。なお、図1に示した実施形態は1つの構成例であるので、本発明はこの実施形態に限定されるものでない。本発明のねじ締め装置は、様々な種類やサイズのねじに適用可能であるが、好適には、例えば、M2(メートルねじの呼び径2mm)以下の微細ねじに適用することができる。
【0034】
ねじは、その要素として、巻き方向、条数、ねじ溝の形状、径、ピッチ、山数等がある。条数は、1つのねじに何本のねじ溝が切ってあるかを示すものである。これらの要素の情報から何回転させれば締め付けることができるかを想定することができる。
【0035】
また、ねじは、雄ねじと雌ねじがあり、雄ねじは、頭部、座面、軸、ねじ先を有している。頭部頂面には、工具で回すための嵌合溝が形成され、嵌合溝としては、一文字の溝であるすりわり、十文字の穴である十字穴等がある。
【0036】
このねじ締め装置は、図1に示すように、この嵌合溝に挿入し、嵌合させるためのビット10と、そのビット10を回転させるために動力を与えるステッピングモータ11と、入力されたPWM信号によりステッピングモータ11を駆動させる駆動回路12と、位置検出手段としての位置検出器13と、制御手段としての制御回路14とを含んで構成される。なお、位置検出器13は、必要に応じて設けることができる。
【0037】
また、このねじ締め装置は、ステッピングモータ11と、駆動回路12と、位置検出器13と、制御回路14とが、ねじ締め装置が有する筐体内に収容されていることが好ましく、図1に示すように一体化されていることがより好ましい。これは、ねじ締め装置をコンパクトにすることができ、さらに配線の本数を少なく(省配線化)することができる。なお、一体化する場合は、図1に示すようにビット10にステッピングモータ11を接続し、ステッピングモータ11と位置検出器12および駆動回路13とを接続し、位置検出器12および駆動回路13と制御回路14とを接続して一体化することができる。
【0038】
ビット10は、ねじと同様の炭素鋼やステンレス鋼等から製造され、その先端部がねじの嵌合溝に嵌合する形状とされる。このため、ビット10をねじの嵌合溝に挿入し、嵌合させた後、ビット10を回転させることにより、ねじを回転させ、締め付けることができる。
【0039】
ステッピングモータ11は、位置検出器13を付加し、制御回路14を図3に示すような構成にすることにより正確な速度制御を実現することができる。
【0040】
ステッピングモータ11は、シャフトに連結される回転子と、回転子の周囲に離間して設けられる電線が巻かれた固定子とを含んで構成される。シャフトの一端は、上記のビット10を着脱するためのチャック等が連結され、回転子の回転によりシャフトおよびチャックを介してビット10を回転させることができる。回転子は、磁化されており、対向する固定子に巻かれた電線に電流が供給され、固定子が同じ磁極に磁化すると、吸引力や反発力を生じて一定方向へ一定角度だけ回転する。
【0041】
ステッピングモータ11は、電流を流す方向を切り替えて、この吸引力や反発力を順次発生させることにより回転子を回転させる。ちなみに、ステッピングモータ11には、PM(永久磁石)型、VR(歯車状鉄心)型、HB(複合)型の3種類があるが、VR型は吸引力のみを生じて回転子を回転させ、PM型およびHB型は吸引力および反発力を生じて回転子を回転させる。
【0042】
ステッピングモータ11では、回転子とそれに対向する固定子の2つの磁極で1つの相を形成する。この相が2組あるものを2相ステッピングモータといい、ステッピングモータには、そのほか、3相ステッピングモータや5相ステッピングモータがある。本発明ではいずれの相のステッピングモータでも採用することができる。
【0043】
本発明では、後述する制御回路14により起動、自然停止、トルク制御を行うことができるので、ギアやクラッチ機構は必要なく、ステッピングモータ11が直接ビット10に動力を与えてビット10を回転させ、また、自然停止させることができる。
【0044】
駆動回路12は、制御回路14により生成され、入力されたPWM信号によりステッピングモータ11を駆動させる。また、制御回路14がPWM信号の入力を遮断したことを受けて、駆動回路12は、ステッピングモータ11を自然停止させる。駆動回路12は、2相ステッピングモータの場合、例えば、8つのFET(電界効果トランジスタ)と、2つのコイルとを備え、FETで電流をオンオフし、2つのコイルに交互に電流を供給して交互にコイルを磁化することにより、回転子を回転させ、ステッピングモータ11を駆動させる。
【0045】
駆動回路12は、一例として、図2に示すような8つのFET20〜27と、2つのコイル28、29と、2つの電流検出器30、31とから構成することができる。制御回路14は、8つのFETゲート信号を出力し、各FET20〜27のゲートへ入力する。電流検出器30、31は、コイル28、29に流れる電流を検出し、各相の電流の電圧変換信号VSa、VSbとして制御回路14へフィードバックする。
【0046】
再び図1を参照して、位置検出器13は、ステッピングモータ11の回転方向の位置あるいは回転角度を検出する。したがって、位置検出器13は、ステッピングモータ11の回転子がどの程度の角度だけ回転したかを検出することができる。具体的には、1°や2°といった角度である。この位置や回転角度を検出するための装置としては、エンコーダやレゾルバ等を挙げることができる。この位置検出器13は、その位置または回転角度を表すパルス信号として出力することができる。
【0047】
制御回路14は、位置検出器13から出力されたパルス信号の入力を受け付け、そのパルス数から回転速度および回転子が回転する数(以下、回転数とする。)を算出する。そして、制御回路14は、その得られた回転速度が、図示しない外部のPC等に設定され、そのPC等からケーブルを介して入力された回転速度あるいは内部のメモリに予め設定された回転速度になるように、駆動回路12に入力するPWM信号を制御する。
【0048】
例えば、設定された回転速度と得られた回転速度との差を求め、その差の分だけ回転速度を上げる、または下げるように制御して、その設定された回転速度になるように制御することができる。具体的には、駆動回路12へ入力するPWM信号のパルス幅を変えて電線に与える電圧を制御する。これにより、回転子の単位時間当たりの回転角度が変わり、その結果、その設定された回転速度へ変わる。このようにして、制御回路14は回転速度制御を行う。
【0049】
また、制御回路14は、回転速度制御を行いながらPWM信号を駆動回路12へ入力するが、その駆動回路12が備える電流検出器30、31により検出された電流値からステッピングモータ11のトルクを算出し、算出したトルクを用いてねじ締めの状態を判断する。そして、制御回路14は、判断した状態に応じて駆動回路12へのPWM信号の入力を継続または遮断する。PWM信号の入力を継続する場合、制御回路14はそのまま回転速度制御を続ける。
【0050】
制御回路14としては、マイクロコントローラ(マイコン)を挙げることができる。マイコンは、CPUコア、上記の処理を実現するためのプログラム等を格納するメモリ、タイマー、I/Oインタフェースを備えることができる。また、マイコンは、PC等と通信するための通信インタフェースを備えていてもよい。その通信インタフェースは、有線通信を行うためのインタフェースであってもよいし、無線通信を行うためのインタフェースであってもよい。なお、無線通信は、無線LANやBluetooth(登録商標)を使用して行うことができる。
【0051】
図3に示す制御回路14の一例を示した機能ブロック図を参照して、制御回路14の詳細な構成および各機能部が行う処理について説明する。制御回路14は、速度検出部40、速度演算部41、リミット処理部42、電流演算部43、A/Dコンバータ44、第1座標変換部45、第2座標変換部46、PWM電圧変換部47、リミット時間計数部48、PWM遮断処理部49、回数検出部50、回数判断部51、警告部52を含んで構成される。
【0052】
速度検出部40は、位置検出器13から入力されたパルス信号から回転速度を算出することにより回転速度を検出する。位置検出器13がパルス信号へ変換する際、任意の回転角度につき1つのパルスを発生させるようにパルス信号を生成するので、回転速度は、1回転するパルス数を用いて算出することができる。
【0053】
速度演算部41は、図示しない外部のPC等に設定され、そのPC等から与えられる回転速度指令値、あるいは内部のメモリに予め設定された回転速度指令値を用い、速度検出部40で検出された回転速度が、その回転速度指令値に設定された回転速度になるように、現在、コイル28、29に与えている電流値に対して一定の電流値を増加あるいは減少させる指示を速度演算の結果としてリミット処理部42に対して出力する。なお、図3では、外部のPC等から回転速度指令値が与えられる場合について示している。
【0054】
リミット処理部42は、その結果を受け付け、外部のPC等に設定され、そのPC等から与えられる電流リミット値あるいは内部のメモリに予め設定された電流リミット値を参照し、駆動回路12で現在コイル28、29に与えている電流値に、一定の電流値を増加あるいは減少させた値が、その電流リミット値に達するか否かを判断する。図3では、外部のPC等から電流リミット値が与えられる場合について示している。
【0055】
モータのトルクTMは、下記式1から計算することができる。式1中、IMはコイル28、29に与える電流値、KTはモータのトルク定数である。
【0056】
【数1】
【0057】
上記式1を参照すると、モータのトルクTMは、電流値IMに比例しており、電流値IMが電流リミット値に達したか否かを判断することにより、トルクTMがトルクリミット値に達したか否かを判断することができる。この判断は、モータのトルクを制限し、ねじに過度なトルクがかからないようにするために行われる。
【0058】
ここで、図4に、ねじの締め付け角度と締め付けトルクとの関係を示す。締め付けトルクは、締め付け角度に応じて変化し、一般に6つの段階に分けることができる。第1段階は、ねじがねじ穴へ嵌合するまでの区間である。このときのトルクは、モータ自身およびビット10を空回りさせたときのトルクに一致すると考えられる。
【0059】
第2段階は、ねじがねじ穴に嵌合し、着座工程に入るまでの区間である。着座は、ねじの座面が被締結物に付いたときの状態である。ねじ穴に嵌合するので、第1段階よりトルクが増加するが、その増加量はわずかなものと考えられる。
【0060】
第3段階は、着座工程における区間であり、このときのトルクは、スナッグトルクと呼ばれる。第1段階および第2段階では、ほぼ一定のトルクであったが、この第3段階では、トルクFが角度θに応じて増加する。Fをθで微分したdF/dθが一定の値になった時点が、着座完了時と考えられる。
【0061】
第4段階は、通常の締め付け工程における区間であり、弾性域と呼ばれる。ねじ締めは、ねじを伸ばすことにより軸力を高めるものであり、伸びる長さに比例して軸力が増加する。このことから、トルクは、角度の増加に比例して増加する。したがって、dF/dθは、この弾性域ではほぼ一定となる。
【0062】
第5段階は、ねじの降伏点を超え、角度に対するトルクの増加率が低下する区間であり、塑性域と呼ばれる。この第5段階は、第4段階で伸びたねじが元に戻らない弾性域を脱した区間である。この降伏点を大きく超えて塑性域に深く入り込むと、ねじの復元力が失われ、同じねじを再利用することができなくなる。
【0063】
第6段階は、角度に対するトルクの増加率が低下する区間であって、その増加率が負の区間である。この区間は、ねじまたは被締結物の破損が進んでいる状態と考えられる。したがって、このまま締め付けを続けると、いずれねじが空回りするものと考えられる。
【0064】
本発明では、制御回路14が、電流検出器30、31により検出された電流値からステッピングモータ11のトルクを算出することができることから、その算出したトルクを用いてねじ締めの状態、すなわち、どの段階にあるかを判断することができる。そして、制御回路14は、判断した状態に応じて駆動回路12へのPWM信号の入力を継続または遮断することができる。例えば、設定されたトルクに達するまで、もしくは着座後、設定された位置または回転角度に達するまで、または降伏点に達するまでは、PWM信号の入力を継続し、達したときに遮断することができる。
【0065】
また、降伏点におけるトルクをトルクリミットとし、そのトルクリミットに対応する電流値を電流リミット値として設定し、それ以上のトルクへ増加しないようにトルクを制限して、ねじの破損等を確実に防止できるようにすることが可能である。電流リミット値は、このように降伏点におけるトルクに対応する電流値に設定することも可能であるが、降伏点におけるトルクを超えるトルクであっても、ねじの復元力が失われない範囲内にあるトルクに対応する電流値に設定することも可能である。
【0066】
再び図3を参照して、リミット処理部42は、電流リミット値に達していないと判断した場合、その結果を電流指令として電流演算部43へ送る。A/Dコンバータ44は、駆動回路12の電流検出器30、31により検出された電流の電圧変換信号(アナログ)を電圧変換信号(デジタル)へ変換する。第1座標変換部45は、それら2つの電圧変換信号(デジタル)を受け付け、電流演算部43で電流演算処理を行うための信号へ変換するべく、固定座標から回転座標へ座標変換し、座標変換値を得る。
【0067】
電流演算部43は、その電流指令を受け、得られた座標変換値を用いて、駆動回路12でコイル28、29に流す電流値を計算する。電流演算部43は、一定の電流値だけ増加させる旨の指示を受け付けた場合、座標変換値に一定の電流値を加算して、コイル28、29に流すべき電流値とする。これに対し、一定の電流値だけ減少させる旨の指示を受け付けた場合、電流演算部43は、座標変換値から一定の電流値を減算して、コイル28、29に流すべき電流値とする。
【0068】
電流演算部43は、得られた電流値の情報を第2座標変換部46へ送付し、第2座標変換部46が、2つの相への電圧指令に振り分けるための戻し座標変換処理を行う。具体的には、第2座標変換部46は回転座標から固定座標へ戻す座標変換を行う。PWM電圧変換部47は、第2座標変換部46から受け付けた電圧指令をパルス電圧に変換し、PWM信号を生成する。PWM信号は、G〜Gとして参照されるFETゲート信号として駆動回路12へ与えられる。
【0069】
リミット処理部42が、電流リミット値に達したと判断した場合、その電流リミット値の電流値にするように指示し、電流演算部43がその電流値の情報を第2座標変換部46へ送り、PWM電圧変換部47がその電流値を与えるPWM信号を生成し、駆動回路12へ入力する。これにより、その電流リミット値に対応するトルク以上のトルクにならないように制限することができ、ねじの復元力が失われることがなくなり、ねじの再利用が可能となる。
【0070】
その一方で、リミット処理部42は、リミット時間計数部48へ通知し、一定時間計測させる。リミット時間計数部48は、設定された時間を計測し、その時間に達したところでPWM遮断処理部49へ通知する。PWM遮断処理部49は、その通知を受けてすぐ、PWM電圧変換部47から駆動回路12へのPWM信号の入力を遮断することにより、ステッピングモータ11を自然停止させる。
【0071】
回数検出部50は、位置検出器13の出力信号からステッピングモータ11の回転数を検出する。図3では、制御回路14内で分岐して速度検出部40と回数検出部50へ入力されているが、位置検出器13の出力信号が外部で分岐され、速度検出部40と回数検出部50とに別個に入力される構成であってもよい。なお、この回数検出部50も、位置検出器13がパルス信号へ変換する際、任意の回転角度につき1つのパルスを発生させるようにパルス信号を生成するので、回転数は、パルス数を用いて算出することができる。また、回数検出部50は、後述する回転角法においてパルス信号により発生するパルスをカウント指令信号として検出し、それを検出するたびにカウントし、カウント値として回数判断部51へ送付する。
【0072】
回数判断部51は、回数検出部50から得られたカウント値を用い、外部の管理サーバ等に設定され、その管理サーバ等から与えられるカウント値、あるいは内部のメモリに予め設定されたカウント値と比較して、同じ値かどうかを判断する。上述したように、ねじを締め付けるために必要とされる回転数は、予め想定されるため、その回転数をカウント値として設定し、その設定されたカウント値と同じ値かどうかを判断することにより、正しく締め付けられたかどうかを判断することができる。
【0073】
回数判断部51は、両者が一致する場合、正しく締め付けられていることを示しているので、何ら指示することなく、処理を終了することができる。ねじ締め装置が表示部を備えている場合、回数判断部51は、表示部に対し、正しく締め付けられた旨を表示させることも可能である。これに対し、回数判断部51は、両者が一致しない場合、斜めに挿入されている等、正しく締め付けられていないことを示しているので、警告部52へ指示し、警告部52がエラー音を鳴らしたり、表示部を備える場合にはその表示部に対し、エラーが発生した旨を表示させる。
【0074】
本発明では、ねじ締めを実施するための方法として、これまでに知られたトルク法、回転角法、トルク勾配法のいずれの方法でも採用することができる。トルク法は、ねじの締め付けトルクを管理する方法であり、回転角法は、着座後のねじの回転角度を管理する方法であり、トルク勾配法は、ねじの降伏点まで締め付ける方法である。
【0075】
これらの方法を採用してねじを締め付ける際、制御回路14は、トルクを算出し、その算出したトルクを用いて演算を行い、その演算結果を利用してねじ締めの状態を判断する。このため、ねじ締め装置は、算出したトルクや演算結果を記憶するための記憶手段を備えることができる。この記憶手段は、外部のPC等から与えられた設定されたトルク、設定された回転速度、設定されたカウント値、電流リミット値等を記憶し、また、得られた回転速度や回転数、すべての算出されたトルク等も記憶することができる。
【0076】
図5は、記憶手段が記憶するデータテーブルを例示した図である。記憶手段は、図5(a)〜(c)に示す3つのデータテーブルを記憶する。図5(a)に示す第1データテーブルは、新しくトルクが算出されるたびに最新のトルクから順に並べて指定された数のトルクを記憶する。図5(a)では、7つのトルクがトルクデータとして記憶可能なフィールドが設けられ、新しくトルクが算出されるたびに先頭のD1で示されるフィールドに記憶する。このとき、最新のトルクから順に並ぶように記憶されるので、D1にあったデータはD2へ、D2にあったデータはD3へ、D3にあったデータはD4へ、D4にあったデータはD5へ、D5にあったデータはD6へ、D6にあったデータはD7へそれぞれ移動させる。なお、D7にあったデータはこの第1データテーブルから削除する。
【0077】
図5(b)に示す第2データテーブルは、5つのデータが記憶可能なフィールドが設けられ、新しくトルクが算出されるたびに第1データテーブルのトルクデータを使用して計算された結果を各フィールドに記憶する。この第2データテーブルは、トルクのゆらぎを吸収することを目的として、第1データテーブル内で順に並ぶ所定の数のトルクを平均した平均トルクをトルクデータとして記憶する。この図5(b)では、3つのトルクを平均した平均トルクを記憶していて、A1で示されるフィールドには、第1データテーブル内のD1、D2、D3のトルクを平均した平均トルクが記憶され、A2にはD2、D3、D4の平均トルク、A3にはD3、D4、D5の平均トルク、A4にはD4、D5、D6の平均トルク、A5にはD5、D6、D7の平均トルクがそれぞれ記憶される。
【0078】
図5(c)に示す第3データテーブルは、4つのデータが記憶可能なフィールドが設けられ、新しくトルクが算出されるたびに第2データテーブルの平均トルクを使用して計算された結果を各フィールドに記憶する。この第3データテーブルは、トルクの変化率データを記憶するテーブルであって、第2データテーブル内の互いに隣り合う平均トルクの差を変化率データとして記憶する。この図5(c)では、差としてのΔ1には、第2データテーブル内のA1からA2を減算した値、Δ2にはA2からA3を減算した値、Δ3にはA3からA4を減算した値、Δ4にはA4からA5を減算した値がそれぞれ記憶される。
【0079】
この実施形態では、7つのトルクのみを記憶し、その7つのトルクを使用して演算を行っているが、データ数は、7つに限定されるものではなく、いかなる数であってもよい。また、第2データテーブルに記憶する平均トルクは、第1データテーブル内の順に並ぶ3つのトルクを平均することに限られるものではなく、2つや4つ以上を平均したトルクを記憶することも可能である。
【0080】
図6は、上記のトルク法を採用してねじ締め制御を行う処理の流れを示したフローチャートである。ステップ600から処理を開始し、ステップ605では、外部のPC等から与えられた設定された回転速度となるようにPWM信号を制御し、その制御したPWM信号を駆動回路12へ入力してステッピングモータ11の回転を開始させる。
【0081】
ステップ610では、駆動回路12が備える電流検出器30、31により検出された電流値から、制御回路14がトルクを算出し、算出したトルクの値を初期トルクとして記憶手段に記憶する。また、ステップ615において、制御回路14が、第1データテーブルのD1〜D7のフィールドすべてにこの初期トルクをセットする。ステップ620では、制御回路14が、第1データテーブルにセットされた初期トルクを用い、第2データテーブルのA1〜A5のフィールドにセットするための平均トルクを求める。そして、制御回路14は、求めた平均トルクを第2データテーブルにセットする。
【0082】
ステップ625では、駆動回路12から電流値が入力されると、制御回路14がトルクを算出し、第1データテーブル内のデータを1つずつシフトさせ、空いたD1のフィールドに最新のトルクをセットする。これに続いて、ステップ630で、制御回路14が第2データテーブルのA1〜A5のフィールドへ入力するための平均トルクを演算して求める。そして、制御回路14は、求めた平均トルクを第2データテーブルにセットする。
【0083】
ステップ635では、第2データテーブルのA1のフィールドにセットされた平均トルクが、設定されたトルク以上であるかを判定する。新しく電流値が検出されるたびに、ステップ625〜ステップ635のトルクの算出、第1データテーブルへセット、平均トルクの計算、第2データテーブルへセット、設定されたトルク以上であるかの判定が繰り返し行われる。
【0084】
設定されたトルク以上であると判定した場合、ステップ640へ進み、制御回路14は、駆動回路12へのPWM信号の入力を遮断し、ステッピングモータ11を自然停止させ、ステップ645でこの処理を終了する。
【0085】
図3に示す構成では、リミット処理部42が電流値を制限するため、電流リミット値と同じ電流値になるようにPWM信号を生成し、そのPWM信号を駆動回路12へ入力するが、これと同時に時間の計測を開始するリミット時間計数部48の時間設定値を0に設定しておくことで、PWM遮断処理部49へ即座に通知し、駆動回路12へのPWM信号の入力を遮断して、ステッピングモータ11を自然停止させることができる。
【0086】
また、図6に示した実施形態では、トルクデータのゆらぎ吸収を目的として平均トルクを採用しているが、新しく算出された最新のトルクを用い、その最新のトルクが設定されたトルク以上であるかを判定することも可能である。
【0087】
図7は、上記の回転角法を採用してねじ締め制御を行う処理の流れを示したフローチャートである。ステップ700からこの処理を開始し、ステップ702では、外部のPC等から与えられた設定された回転速度となるようにPWM信号を制御し、その制御したPWM信号を駆動回路12へ入力してステッピングモータ11の回転を開始する。
【0088】
ステップ704では、駆動回路12が備える電流検出器30、31により検出された電流値から、制御回路14がトルクを算出し、算出したトルクの値を初期トルクとして記憶手段に記憶する。ステップ706では、制御回路14が、第1データテーブルのD1〜D7のフィールドすべてにこの初期トルクをセットする。ステップ708では、制御回路14が、第1データテーブルにセットされた初期トルクを用い、第2データテーブルのA1〜A5のフィールドにセットするための平均トルクを求める。そして、制御回路14は、求めた平均トルクを第2データテーブルにセットする。
【0089】
この回転角法では、さらに、ステップ710で、制御回路14が第3データテーブル内のΔ1〜Δ4にセットするトルクの変化率データを求める。そして、制御回路14は、求めた変化率データを第3データテーブルにセットする。その後、ステップ712で、制御回路14は、位置検出器13から出力されるパルス信号において所定角度だけ回転したことを示すカウント指令信号が検出されるのを待つ。
【0090】
そのカウント指令信号が検出されると、ステップ714で、制御回路14は、駆動回路12により検出された最新の電流値からトルクを算出し、第1データテーブル内のデータを1つずつシフトさせ、空いたD1のフィールドに最新のトルクをセットする。これに続いて、ステップ716で、制御回路14は、第2データテーブルのA1〜A5のフィールドにセットするための平均トルクを演算して求める。そして、制御回路14は、求めた平均トルクを第2データテーブルにセットする。さらに、ステップ718で、制御回路14は、第3データテーブルのΔ1〜Δ4のフィールドにセットするための変化率データを演算して求める。そして、制御回路14は、求めた変化率データを第3データテーブルにセットする。
【0091】
その後、ステップ720で、制御回路14は、Δ1〜Δ4の変化率データを比較し、Δ1>Δ2>Δ3>Δ4の不等式が成立するかどうかを判定する。このステップ720は、図4に示す第3段階の初期の曲線が上昇し始めている箇所に該当するかどうかを判定するものであって、第3段階に入ったかどうかを判定するステップである。
【0092】
ステップ720の不等式が成立しないと判定した場合、ステップ712へ戻り、制御回路14は、再びカウント指令信号が検出されるのを待つ。これに対して、不等式が成立すると判定した場合、そのままステップ724へ進むことも可能であるが、ここでは、第1段階や第2段階においても、上記不等式が成立する場合がないとは言えないので、誤った判断がなされるのを防止するため、ステップ722で、制御回路14は、第2データテーブルのA1のフィールドにセットされた平均トルクが、初期トルクの4倍以上であるかを判定する。この4倍という値は例示であり、誤った判断がなされるのを防止することができれば、2倍や3倍等であってもよい。
【0093】
上記の4倍以上でないと判定した場合、誤った判断がなされたものであり、ステップ712へ戻り、再びカウント指令信号が検出されるのを待つ。これに対し、4倍以上であると判定した場合、ステップ724へ進み、制御回路14は、カウント指令信号が検出されるのを待つ。この後、ステップ726で、制御回路14は、駆動回路12により検出された最新の電流値からトルクを算出し、第1データテーブル内のデータを1つずつシフトさせ、空いたD1のフィールドに最新のトルクをセットする。
【0094】
ステップ726に続いて、ステップ728で、第2データテーブルのA1〜A5のフィールドにセットするための平均トルクを演算して求める。そして、制御回路14は、求めた平均トルクを第2データテーブルにセットする。さらに、ステップ730で、制御回路14は、第3データテーブルのΔ1〜Δ4のフィールドにセットするための変化率データを演算して求める。そして、制御回路14は、求めた変化率データを第3データテーブルにセットする。
【0095】
ステップ732では、制御回路14が、Δ1〜Δ4の変化率データを比較し、Δ1>Δ2>Δ3>Δ4の不等式が成立しないかどうかを判定する。このステップ732は、図4に示す第3段階から第4段階の曲線から直線へと変化し、Δ1とΔ2が同じ値になって上記不等式が成立しなくなったかどうかを判定するものであり、着座点を判定するステップである。
【0096】
不等式が成立すると判定した場合は、まだ第3段階の途中にあり、ステップ724へ戻り、制御回路14は、再びカウント指令信号が検出されるのを待つ。これに対し、不等式が成立しないと判定した場合、ステップ734へ進み、制御回路14は、判定した着座点におけるトルクを「スナッグトルク」として記憶手段に記憶する。そして、ステップ736で、制御回路14は、位置検出器13からのカウント指令信号のカウントを開始する。
【0097】
回転角法は、着座点からカウントを開始し、そのカウント値が設定されたカウント値に達したかどうかを判定することで、正しく締め付けられたかどうかを判定することができる。
【0098】
そこで、ステップ738では、カウントを開始してから検出されたカウント指令信号の数をカウント値とし、制御回路14は、そのカウント値が設定されたカウント値に達したかどうかを判定する。ステップ738で、設定されたカウント値に達していないと判定した場合、ステップ738の判定を繰り返し、達したと判定した場合、ステップ740へ進み、制御回路14は、駆動回路12へのPWM信号の入力を遮断し、ステッピングモータ11を自然停止させ、ステップ742でこの処理を終了する。
【0099】
図8は、上記のトルク勾配法を採用してねじ締め制御を行う処理の流れを示したフローチャートである。ステップ800からこの処理を開始し、ステップ802では、外部のPC等から与えられた設定された回転速度となるようにPWM信号を制御し、その制御したPWM信号を駆動回路12へ入力してステッピングモータ11の回転を開始する。
【0100】
ステップ804では、駆動回路12が備える電流検出器30、31により検出された電流値から、制御回路14がトルクを算出し、算出したトルクの値を初期トルクとして記憶手段に記憶する。ステップ806では、制御回路14が、第1データテーブルのD1〜D7のフィールドすべてにこの初期トルクをセットする。ステップ808では、制御回路14が、第1データテーブルにセットされた初期トルクを用い、第2データテーブルのA1〜A5のフィールドにセットするための平均トルクを求める。そして、制御回路14は、求めた平均トルクを第2データテーブルにセットする。
【0101】
このトルク勾配法では、さらに、ステップ810で、制御回路14が第3データテーブル内のΔ1〜Δ4にセットするトルクの変化率データを求める。そして、制御回路14は、求めた変化率データを第3データテーブルにセットする。その後、ステップ812で、制御回路14は、位置検出器13から出力されるパルス信号において所定角度だけ回転したことを示すカウント指令信号が検出されるのを待つ。
【0102】
そのカウント指令信号が検出されると、ステップ814で、制御回路14は、駆動回路12により検出された最新の電流値からトルクを算出し、第1データテーブル内のデータを1つずつシフトさせ、空いたD1のフィールドに最新のトルクをセットする。これに続いて、ステップ816で、制御回路14は、第2データテーブルのA1〜A5のフィールドにセットするための平均トルクを演算して求める。そして、制御回路14は、求めた平均トルクを第2データテーブルにセットする。さらに、ステップ818で、制御回路14は、第3データテーブルのΔ1〜Δ4のフィールドにセットするための変化率データを演算して求める。そして、制御回路14は、求めた変化率データを第3データテーブルにセットする。
【0103】
その後、ステップ820で、制御回路14は、Δ1〜Δ4の変化率データを比較し、Δ1>Δ2>Δ3>Δ4の不等式が成立するかどうかを判定する。ステップ820の不等式が成立しないと判定した場合、ステップ812へ戻り、制御回路14は、再びカウント指令信号が検出されるのを待つ。
【0104】
不等式が成立すると判定した場合、そのままステップ824へ進むことも可能であるが、ここでは、第1段階や第2段階においても、上記不等式が成立する場合がないとは言えないので、誤った判断がなされるのを防止するため、ステップ822で、制御回路14は、第2データテーブルのA1のフィールドにセットされた平均トルクが、初期トルクの4倍以上であるかを判定する。この4倍という値は例示であり、誤った判断がなされるのを防止することができれば、2倍や3倍等であってもよい。
【0105】
上記の4倍以上でないと判定した場合、誤った判断がなされたものであり、ステップ812へ戻り、再びカウント指令信号が検出されるのを待つ。これに対し、4倍以上であると判定した場合、ステップ824へ進み、制御回路14は、カウント指令信号が検出されるのを待つ。この後、ステップ826で、制御回路14は、駆動回路12により検出された最新の電流値からトルクを算出し、第1データテーブル内のデータを1つずつシフトさせ、空いたD1のフィールドに最新のトルクをセットする。
【0106】
ステップ826に続いて、ステップ828で、第2データテーブルのA1〜A5のフィールドにセットするための平均トルクを演算して求める。そして、制御回路14は、求めた平均トルクを第2データテーブルにセットする。さらに、ステップ830で、制御回路14は、第3データテーブルのΔ1〜Δ4のフィールドにセットするための変化率データを演算して求める。そして、制御回路14は、求めた変化率データを第3データテーブルにセットする。
【0107】
ステップ832では、制御回路14が、Δ1〜Δ4の変化率データを比較し、Δ1>Δ2>Δ3>Δ4の不等式が成立しないかどうかを判定する。不等式が成立すると判定した場合は、まだ第3段階の途中にあり、ステップ824へ戻り、制御回路14は、再びカウント指令信号が検出されるのを待つ。これに対し、不等式が成立しないと判定した場合、ステップ834へ進み、制御回路14は、判定した着座点におけるトルクを「スナッグトルク」として記憶手段に記憶する。ここまでは、上記の回転角法と同様である。
【0108】
ステップ836では、制御回路14は、カウント指令信号が検出されるのを待つ。その後、ステップ838で、制御回路14は、駆動回路12により検出された最新の電流値からトルクを算出し、第1データテーブル内のデータを1つずつシフトさせ、空いたD1のフィールドに最新のトルクをセットする。
【0109】
ステップ838に続いて、ステップ840で、第2データテーブルのA1〜A5のフィールドにセットするための平均トルクを演算して求める。そして、制御回路14は、求めた平均トルクを第2データテーブルにセットする。さらに、ステップ842で、制御回路14は、第3データテーブルのΔ1〜Δ4のフィールドにセットするための変化率データを演算して求める。そして、制御回路14は、求めた変化率データを第3データテーブルにセットする。
【0110】
ステップ844では、制御回路14は、Δ1〜Δ4の変化率データを比較し、今度はΔ1<Δ2<Δ3<Δ4の不等式が成立するかどうかを判定する。このステップ844は、図4に示す第5段階初期のトルク増加率が減少し始めている箇所に該当するかどうかを判定するものであって、降伏点に達したかどうかを判定するステップである。
【0111】
不等式が成立しないと判定した場合は、まだ第4段階の途中にあり、ステップ836へ戻り、制御回路14は、再びカウント指令信号が検出されるのを待つ。これに対し、不等式が成立すると判定した場合、ステップ846へ進み、制御回路14は、判定した降伏点におけるトルクを「降伏点トルク」として記憶手段に記憶する。ステップ848では、制御回路14は、駆動回路12へのPWM信号の入力を遮断し、ステッピングモータ11を自然停止させ、ステップ850でこの処理を終了する。
【0112】
また、図7および図8に示した実施形態でも、トルクデータのゆらぎ吸収を目的として平均トルクを採用しているが、第1データテーブル内のトルクを用いて、互いに隣り合うトルクの差を変化率データとして計算し、その変化率データを用いて着座点の判断や降伏点の判断を行うことも可能である。
【0113】
本発明のねじ締め装置を用いて、ねじ締めを行う場合、最初から最後まで一定の回転速度で行うこともできるし、途中で回転速度を変える可変速で行うことも可能である。特に、可変速で行うと、最初に短時間である程度まで締め付け、その後は回転速度をゆるめ、所定の速度でゆっくり締め付けることができるため、高速で、かつより確実にねじの嵌合溝をつぶすことなく締め付けることができる。また、締め付けられる側が樹脂である場合においても、その締め付けられる側のねじ溝をつぶすことがなくなる。
【0114】
制御回路14が制御途中で算出した回転速度、すべてのトルク、回転数等は、制御回路14が備える記憶手段のほか、外部の管理サーバ等が備える記憶手段等に記憶することができ、それによって、その後トレースを行うことができ、間違った長さのねじを使用した場合や、斜めに挿入され所定の回転数より少ない回転数で締め付けられた場合等の異常を検出することができる。また、トルクカーブも記録することができ、これらの情報の記録管理が可能となる。
【0115】
これまで本発明のねじ締め装置およびその制御方法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。したがって、制御方法を実現するための制御プログラムを提供することもでき、この制御プログラムは、記憶媒体に格納して、あるいはダウンロード形式で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0116】
10…ビット、11…ステッピングモータ、12…駆動回路、13…位置検出器、14…制御回路、20〜27…FET、28、29…コイル、30、31…電流検出器、40…速度検出部、41…速度演算部、42…リミット処理部、43…電流演算部、44…A/Dコンバータ、45…第1座標変換部、46…第2座標変換部、47…PWM電圧変換部、48…リミット時間計数部、49…PWM遮断処理部、50…回数検出部、51…回数判断部、52…警告部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8