(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965703
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E02D 27/34 20060101AFI20160728BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
E02D27/34 B
E04H9/02 331Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-86749(P2012-86749)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-217053(P2013-217053A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】307041573
【氏名又は名称】三菱FBRシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】杣木 孝裕
(72)【発明者】
【氏名】神島 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】岡村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】深沢 剛司
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−270992(JP,A)
【文献】
特開平09−078880(JP,A)
【文献】
実開昭57−025400(JP,U)
【文献】
特開2000−154550(JP,A)
【文献】
特開平11−081741(JP,A)
【文献】
特開昭62−006073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/34
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤上に設置される基礎版上に免震装置を介して建屋を支持した建築物において、
前記基礎版の下面に形成された凹部からなり、前記岩盤と前記基礎版とが直接接触しないことにより前記岩盤からの上下振動が前記基礎版に対して伝達されないようにした振動遮断部を備え、
前記凹部を、前記岩盤の硬さに応じて、前記建築物の上下振動の共振周期を長周期側に移行させるように決定した面積で構成したことを特徴とする建築物。
【請求項2】
前記凹部内に基礎版より軟質の部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記振動遮断部を、建屋の躯体を支持する位置を外して設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、岩盤上に設置された基礎版上に免震装置を介して建屋を構築してなる建築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の建築物としては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されるような構成が提案されている。これらの従来構成においては、地盤上に基礎版が設置され、その基礎版の上面に免震装置を介して建屋が構築されている。そして、地震の発生時に、建屋に伝達される振動が免震装置により低減されて、建屋が保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−288930号公報
【特許文献2】特開2011−95173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの従来構成の建築物においては、免震装置として複数枚のゴム層が鋼板を介在して積層されているのが一般的である。この免震装置は、上下剛性が水平剛性に比較して高くなっている。このため、地震力(水平振動)に対しては免震装置の積層ゴムが大きく変形して免震効果を得ることができるが、上下の振動はむしろ大きくなる傾向にあった。そして、地盤が硬い岩盤で形成されている場合には、岩盤の上下振動と構築物(建屋)との共振周期のピークが短周期側に現れて、建築物内部の設備が大きく共振することがある。
【0005】
ところで、原子力発電所のような耐震型の建築物は、剛性及び強度が高く、強震を受けても建築物の変形は弾性域にあると考えられる。一方、このような建築物は、支持耐力が高い堅固な岩盤上に設置され、ベタ基礎によって支持地盤と基礎とを密着させており、このような支持地盤も弾性域にあると考えられる。従って、
図6(a)(b)に示すように、建築物21及び地盤の表層22下の岩盤30の振動モデルを、地盤バネ23,基礎版24,免震バネ25及び建屋26を含む連成モデルによって表すのが一般的である。
図6(b)に示す27は基礎版24や建屋26の各階の床の集中マスを表す。この連成モデルにおいて、地震時には、
図6(c)に示すように、上下方向の地盤振動28の振幅は、振動が上層階29に伝播されるにつれて増大する。
【0006】
このような問題に対処するため、近年では積層ゴムやバネの上下剛性を小さくして、上下免震をも可能にした免震装置も提案されている。しかしながら、上下剛性を小さく設定した場合には、建屋の重量により免震装置の積層ゴムやバネが大きく収縮して建屋が沈み込む。このため、建屋の重量に釣り合って縮んだ状態を免震装置の初期値として、地震時の伸縮代をさらに確保する必要があって、厚肉積層ゴムや上下方向へ長いバネを用いる必要があった。従って、厚肉積層ゴムやバネを設置するためのスペースの確保が困難であるとともに、厚肉積層ゴムや長いバネの緩慢な収縮をともないながら建屋の施工が進行するため、その施工も困難をともなうものであった。
【0007】
このような事情に対応するために、例えば空気圧の力により建屋を浮上させる空気バネを用いた3次元免震装置等の新技術も提案されている。この3次元免震装置においては、地震力(水平振動)及び上下振動を同時に低減することができる反面、装置の構造が複雑で高価である。また、空気圧の管理等の点検や定期的なメンテナンスに伴うランニングコストもかかることや、故障・不測の事態への対応という問題があった。
【0008】
この発明は、従来の安価な技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、構造が簡単で低コストを達成できるとともに、上下方向の地震力を同時に低減することができる建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は、岩盤上に設置される基礎版上に免震装置を介して建屋を支持した建築物において、前記基礎版の下面
に形成された凹部からなり、前記岩盤と前記基礎版とが直接接触しないことにより前記岩盤からの上下振動が
前記基礎版に対して伝達されないようにした振動遮断部を
備え、前記凹部を、前記岩盤の硬さに応じて、前記建築物の上下振動の共振周期を長周期側に移行させるように決定した面積で構成したことを特徴としている。
【0010】
従って、この発明の建築物においては、地震の水平力が免震装置により低減されるとともに、上下振動は振動遮断部による振動の伝達抑制によって低減される。このため、空気バネを含む3次元免震装置を備えた構成と比較して、構造が簡単で安価であるとともに、水平振動及び上下振動を同時に低減することができる。
【0011】
更に、地盤(岩盤)の硬さに応じて前記振動遮断部である凹部の面積を変えるだけで、建築物にとって都合のよい共振周期を得ることができる。
【0012】
前記の構成において、前記凹部内に基礎版より軟質の部材を設けてもよい。
前記の構成において、前記振動遮断部を建屋の躯体を支持する位置を外して設けるとよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明によれば、構造が簡単であることができるとともに、建屋に対する地震の振動伝達を低減できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】
図1の建築物における振動遮断部を拡大して示す部分断面図。
【
図4】同振動遮断部を構成する型枠を分解して示す斜視図。
【
図5】第2実施形態の建築物の振動遮断部を示す部分断面図。
【
図6】(a)〜(c)は、地震時の連成震動モデルを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した建築物10の第1実施形態を、
図1〜
図4に従って説明する。
【0016】
図1及び
図2に示すように、地盤の表層22下の第三紀層またはそれ以前の時代の層からなる硬い岩盤30上には、鉄筋コンクリートよりなる基礎版12が設置されている。基礎版12上には、複数の周知構造の免震装置13を介して建屋14が構築されている。免震装置13は、建屋14の荷重が基礎版12によって有効に支持されるように、かつ、免震効果が発揮されるように、建屋14における柱や壁等の躯体部分と上下に対応する位置に配置されている。
【0017】
図1〜
図3に示すように、前記基礎版12の下面には、複数の振動遮断部15が形成されている。この振動遮断部15は平面四角形等の凹部によって構成され、凹部内は空隙になっており、建屋14における柱や壁等の躯体部分と上下に対応する位置、つまり前記免震装置13の配置位置を外して配置されている。そして、これらの振動遮断部15により、岩盤30に対する基礎版12の下面の接触面積が低減されて、岩盤30から基礎版12側への振動の伝達が抑制されるようになっている。
【0018】
なお、振動遮断部15の空隙は、地盤と縁が切れていれば如何なる形状でも良い。
そして、
図3及び
図4に示すように、鉄筋コンクリートにより基礎版12を成形する際には、岩盤30の上面に鋼板よりなり、底部を開放した平箱状の型枠16がアンカーボルト17により岩盤30に固定される。そして、この状態で型枠16を鉄筋(図示しない)とともに埋め殺すように基礎版12のコンクリートが打設される。このようにして、基礎版12の下面に凹部よりなる振動遮断部15が形成される。
【0019】
前記型枠16は、複数のボルト挿通孔18aを有する下板18、長四角枠状の側枠19,側枠19内の補強板19a及び上板20を相互に溶接することによって構成されている。
【0020】
次に、この実施形態の作用を説明する。
この建築物10では、免震装置13が基礎版12と建屋14との間において建屋14の柱や壁等の躯体部分と上下に対応する位置に配置されている。このため、免震装置13を介して建屋14からの鉛直支持荷重及び地震発生時の水平荷重が基礎版12から岩盤30に対して有効に伝達される。
【0021】
そして、地震が発生した場合において、各免震装置13が変形することにより、建屋の水平応答は大幅に低減される。一方、上下応答は、基礎版12の下面に凹部よりなる振動遮断部15を形成したことにより岩盤11に対する基礎版12の接触面積が小さくなるので、地盤バネ23のバネ剛性が低下するため、
図6(a)〜(c)の連成モデルにおける振動系が変わって、共振周期のピークが長周期化する。これにより、建屋14内部の設備等の固有振動と共振することを防止できる。
【0022】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この建築物10においては、基礎版12の下面には、岩盤30との界面に凹部よりなる振動遮断部15を形成しているため、
図6(b)に示す建屋に作用する地盤バネ23のバネ剛性が低下することになり、建築物10の上下振動の共振周期を長周期側に移行させることができる。このため、共振を回避して、建物内に配置する重要な機器設備等の健全性・安全性を保持することができる。そして、振動遮断部15の構成として、凹部を形成しただけであるから、空気バネを含む3次元免震装置を備えた複雑な機構の従来構成に比較して、構造が簡単で施工やメンテナンスのコストダウンが可能になる。
【0023】
(2) この建築物10においては、前記振動遮断部15が、建屋14の躯体部分と対応する位置を外して設けられている。このため、建屋14の躯体部分と対応する位置において、基礎版12の下面が岩盤30に支持されて、建屋14の鉛直支持荷重及び地震発生時の水平荷重を基礎版12から岩盤30に受承させることができるとともに、岩盤30によって建屋14を適切に支持できる。
【0024】
(3) 振動遮断部15の凹部の面積を適宜に設定することにより、たとえ建屋の設計を変更しなくても、異なる建設サイトの地盤(岩盤)条件において上下振動共振周期の長周期側への移行を得ることができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した建築物10の第2実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0026】
この第2実施形態においては、
図5に示すように、振動遮断部15が基礎版12の下面に基礎版12より軟質の部材としての発泡スチロール等の緩衝材15aを埋設することによって形成されている。従って、緩衝材15aが変形することによって、岩盤30の上下振動の伝達が抑制される。
【0027】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態における効果とほぼ同等の効果を得ることができるとともに、この実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
【0028】
(4) この実施形態においては、発泡スチロール等の緩衝材15aを設置するのみで、振動遮断部15が形成されるため、型枠が不要になり、さらなるコストダウンが可能となる。
【0029】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 振動遮断部15を円形,三角形等の矩形以外の平面形状とすること。
【0030】
・ 振動遮断部15を形成するための型枠16を木製板材により構成すること。
・ 基礎版12の下面に基礎版より軟質の部材として角材等の木材を埋設することによってその部分を振動遮断部15とすること。
【0031】
・ 振動遮断部15をより確実に形成するための型枠16の上板20等の上面にスタッドや板を立設して、打設コンクリートに対する型枠16の補強や一体性を高めるように構成すること。
【符号の説明】
【0032】
10…建築物、12…基礎版、13…免震装置、14…建屋、15…振動遮断部、30…岩盤。