(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明に係る車両用エアサスペンション式シート支持装置(以下、シート支持装置)の一実施形態を説明する。
【0016】
(1)基本構成
図1は一実施形態のシート支持装置の全体を示す斜視図であり、
図2は平面図、
図3は側面図である。このシート支持装置は、車両用のシートを上下動可能に支持し、シートに着座する乗員の荷重をエアスプリング41で緩衝的に受けるエアサスペンション機構1と、このエアサスペンション機構1に組み込まれ、バルブ70によりエアスプリング41に対し給排気を行ってシートの高さ位置を調節し、かつシート高さを一定に保持するハイト装置50とを備えている。なお、参照図面で矢印Fは車両に組み込まれた状態での前方、矢印Rは後方を示しており、以下の説明での前後方向、左右方向および上下方向は、これら図面に基づくものとする。
【0017】
エアサスペンション機構1は、互いに平行なロアフレーム10およびアッパーフレーム20と、ロアフレーム10上にアッパーフレーム20を上下動可能に支持するX型のリンク機構30と、エアスプリング41とを主体としている。アッパーフレーム20上には、乗員が着座するシートのシートクッション(図示略)が設置される。アッパーフレーム20とロアフレーム10との間には、アッパーフレーム20が上方から受ける荷重を受ける上記エアスプリング41と、このエアスプリング41の振動を吸収する油圧シリンダ式のダンパ42が配設されている。
【0018】
ロアフレーム10は、前後方向に延びる左右一対のレールメンバー11と、レールメンバー11の前端どうし、および後端どうしを連結する左右方向に延びる前後一対の横メンバー12とを備えている。ロアフレーム10は、車体フロア上にほぼ水平な状態で固定される。また、アッパーフレーム20は、前後方向に延びる左右一対のレールメンバー21と、各レールメンバー21の外側に配されシートを保持する強度メンバー24と、レールメンバー21および強度メンバー24の前端どうし、および後端どうしを連結する左右方向に延びる前後一対の横メンバー22とを備えている。レールメンバー21の中間には、左右方向に延びる強度メンバー23が架け渡されて固定されている。
【0019】
リンク機構30は、2本のリンクアーム31,32がリンク軸33を介してX状に組まれた左右一対のXリンク34と、前側の上下の可動軸36,38とを備えている。Xリンク34は、前上がりに傾斜するリンクアーム31と前下がりに傾斜するリンクアーム32の中間部がリンク軸33を介してX状に組まれ、リンク軸33を支点として相対回転可能とされたものである。左右のXリンク34はリンク軸33を共有しており、換言すると、1本のリンク軸33の両端部に、Xリンク34の2本のリンクアーム31,32がそれぞれ回転可能に支持されている。
【0020】
図3に示すように、左右のXリンク34における前上がり側のリンクアーム31は、後端部が左右方向に延びる固定軸35を介してロアフレーム10の各レールメンバー11の後端部に回転可能に支持され、またこれと同様に、前下がり側のリンクアーム32は、後端部が左右方向に延びる固定軸37を介してアッパーフレーム20の各レールメンバー21の後端部に回転可能に支持されている。アッパーフレーム20側の固定軸37は、左右一対のレールメンバー21の後端部に架け渡されてこれらレールメンバー21に回転自在に支持されており、ロアフレーム10側の固定軸35は、左右一対のレールメンバー11の後端部に架け渡されて回転自在に支持されている。
【0021】
一方、各リンクアーム31,32の前端部は、可動軸36,38を介して、それぞれアッパーフレーム20およびロアフレーム10の各レールメンバー21,11に沿って前後方向に移動可能に支持されている。アッパーフレーム20側の可動軸36は、左右一対のレールメンバー21の前端部に架け渡され、両端部に装着された転動ローラ36aを介してレールメンバー21に沿って前後方向に移動可能に支持されている。また、ロアフレーム10側の可動軸38は、左右一対のレールメンバー11の前端部に架け渡され、両端部に装着された転動ローラ38aを介してレールメンバー11に沿って前後方向に移動可能に支持されている。
【0022】
リンク機構33によれば、ロアフレーム10側の固定軸35を支点として左右のXリンク34が同期して伸縮し、伸縮に伴ってアッパーフレーム20が昇降する。すなわち、リンクアーム31,32が開くようにして立ち上がるとXリンク34が上方に伸張してアッパーフレーム20が上昇し、逆に、リンクアーム31,32が閉じるように折り畳まれるとXリンク34が下方に縮小してアッパーフレーム20が下降する。このようにリンク機構33が作動してアッパーフレーム20が上昇する際には、各リンクアーム31,32の前端部は可動軸36,38とともに後方の固定軸37,35にそれぞれ接近し、縮小してアッパーフレーム20が下降する際には、各リンクアーム31,32の前端部は可動軸336,38とともに固定軸37,35から離間する。
【0023】
上記エアスプリング41は、ロアフレーム10内の後側のスペースに配置されており、その上端部が、左右の前上がり側のリンクアーム31間にわたって固定されリンク機構33の作動に伴って昇降する受圧板13に固定されている。エアスプリング41には、例えば車両のエアブレーキ装置を構成するエアコンプレッサ(空気供給源)から圧縮空気が供給されるようになっている。エアスプリング41は、空気が供給されると上方に膨出し、排気されると下方に縮小する。
【0024】
アッパーフレーム20上に設置されたシートに着座する乗員の荷重は、受圧板13を介してエアスプリング41で受けられ、ダンパ42の振動吸収作用とともに緩衝される。また、エアスプリング41は、空気が供給されると上方に膨出し、これによりアッパーフレーム20が上昇してシートが高く調整され、排気されると下方に縮小し、これによりアッパーフレーム20が下降してシートが低く調整される。
【0025】
上記ハイト装置50は、バルブ70により、上記空気供給源から送られる空気をエアスプリング41に供給したり、エアスプリング41内の空気を排出したりするものである。バルブ70が給気状態になってエアスプリング41に空気が供給されるとアッパーフレーム20が上昇させられ、シートが上昇するようになっている。また、バルブ70が排気状態になると、シートに着座する乗員の荷重によりエアスプリング41から空気が排出され、これによりシートが下降するようになっている。
【0026】
以上が、一実施形態のシート支持装置の基本構成である。このシート支持装置においては、アッパーフレーム20内の前側のスペースに、バルブ70の開閉によってシート高さを調節するハイト装置50が配設されている。以下、このハイト装置50について説明する。
【0027】
(2)ハイト装置
図4に示すように、ハイト装置50は、アッパーフレーム20の前部下方に配設されたバルブフレーム51を有している。このバルブフレーム51は全体が前後方向に長い平面視長方形状で、前上がり側のリンクアーム31の前端間に架け渡された上側の可動軸(以下、上側可動軸36)の下方に水平に配されている。バルブフレーム51は、下板51Aの上方にスペースを空けて上板51Bが平行に組み合わされて互いに固定されたもので、上板51Bの前端部がアッパーフレーム20の前側の横メンバー22に固定され、上板51Bの後端部がブラケット52を介して強度メンバー23に固定されている。上板51Bの幅方向中央には、長手方向の中央から後端にわたって前後方向に延びる長孔51bが形成されている。
【0028】
上記バルブ70は、バルブフレーム51の内部、すなわち下板51Aと上板51Bとの間のスペースの後部に配されている。バルブ70は、
図6および
図7に示すように筐体71を有しており、筐体71の内部には、給気弁および排気弁が収容されている。バルブ70の筐体71は、筐体71の左側(
図7で下側)の側面に形成された前後一対の突出部74を介しバルブフレーム51に設けられた前後方向に延びるガイドロッド53に沿って前後方向に移動可能となっており、かつ、ガイドロッド53に外装された圧縮コイルばね53aによって常に前方に付勢されている。
【0029】
バルブ70の右側(
図6および
図7で上側)の側面の前側(
図6および
図7で左側)には、バルブ70内の給気弁を開く給気弁棒(ストッパ手段)72Aが突出しており、後側には、バルブ70内の排気弁を開く排気弁棒(ストッパ手段)73Aが突出している。これら弁棒72A,73Aは常に右側に突出する方向に付勢されており、付勢力に抗して内部方向に押し込まれることによって給気弁および排気弁は開状態となる。また、バルブ70の左側の側面(
図6および
図7で下側)の前側には、上記空気供給源から圧縮空気をバルブ70内に導入する配管が接続される給気口72Bが設けられており、後側には、空気を排出して上記エアスプリング41に空気を送出する配管が接続される排気口73Bが設けられている。
【0030】
バルブ70の筐体71上には、軸線が上下方向に延びる第1カム軸(回転軸)55aを介して第1カム(カム部材)55が回転可能に支持されている。第1カム55は、
図7に示すように前後対称の形状であって、第1カム軸55aを中心にして前方および後方に延びる前後の翼部55cと、第1カム軸55aの右側に突出するカム部(係合部)55dとを有している。前後の翼部55cは、前方および後方に向かうにしたがって斜め左側に延びている。これら翼部55cの基端部には、上下方向および左側に開放する円弧状の凹部55eが形成されており、この凹部55eに、上下方向に延びる高さ位置伝達ピン(高さ位置伝達部材)56が係脱可能に係合するようになっている。カム部55dの先端は、円弧状の曲面に形成されている。
【0031】
高さ位置伝達ピン56は、バルブフレーム51上に前後方向に沿って移動可能に支持されたスライダ57に貫通して下端部がスライダ57の下面から突出している。高さ位置伝達ピン56は、上端に一体に形成されたボルト部がスライダ57にねじ込まれることにより、スライダ57に固定されている。
【0032】
バルブフレーム51の上板51Bの左右両側には、前後方向に延びるガイド壁部58Aと折り曲げ部58Bとがそれぞれ設けられ、スライダ57は、これらガイド壁部58Aと折り曲げ部58Bにガイドされて前後方向に移動可能に支持されている。スライダ57の上面の、高さ位置伝達ピン56の前方には、上方に開放して左右方向に延びる溝57bが形成されており、この溝57bに、上記リンク機構33の上側可動軸36が回転摺動自在に嵌め込まれて連結されている。
【0033】
溝57bの深さは、上側可動軸36が確実に嵌め込まれるように上側可動軸36の半径よりも長い寸法を有するものとなっており、また、溝57bの底面と上側可動軸36との間には、上下方向の寸法誤差等を吸収するための隙間が形成される。図示例では溝57bの底面は上側可動軸36の外周面に沿った湾曲面に形成されているが、底面形状はこれに限られず、例えば水平な平面であってもよい。また、溝57bの幅は、上側可動軸36が嵌め込まれることが可能な寸法であることは勿論であるが、上側可動軸36の前後移動がダイレクトにスライダ57に伝達させることができる観点から、上側可動軸36の直径と同等で、上側可動軸36の外周面が溝57bの前後の内面と隙間なく接触する状態が達成され得る寸法が望ましい。
【0034】
上記のように溝57bに上側可動軸36が嵌め込まれることにより、エアサスペンション機構1が伸張・縮小するとスライダ57および高さ位置伝達ピン56は上側可動軸36と一体に前後移動する。エアサスペンション機構1が伸張・縮小する際には、上側可動軸36はスライダ57の溝57b内である程度回転する。高さ位置伝達ピン56が前後移動すると、第1カム55は高さ位置伝達ピン56に押し引きされて
図8に示すように第1カム軸55aを支点として回転する。第1カム55は
図8(c)に示すようにカム部55dが左右方向に平行で前後対称の時が中立状態とされる。
【0035】
図7に示すように、バルブ70の筐体71上における各弁棒72A.73Aの間には、第1カム軸55aと前後方向の位置が同じであって軸線が上下方向に延びる第2カム軸59aを介して、第2カム59(カム部材)が回転可能に支持されている。この第2カム59は前後対称な形状であって、第2カム軸59aの両側(前後)に、各弁棒72A.73Aの先端に対向し、かつ第2カム59の回転に応じて各弁棒72A.73Aを押すカム部59cがそれぞれ形成されている。
【0036】
第2カム59の左側(
図7で下側)の端部には、第1カム55のカム部55dの先端が摺動可能に嵌合する凹部59bが形成されている。第1カム55が、
図8(c)に示す中立状態の時には第2カム59も中立状態となり、この時、前後のカム部59cは突出状態の各弁棒72A.73Aの先端から離れた状態となる。そして、第1カム55が中立状態から
図8で時計回りに回転すると、
図8(a)〜(b)に示すようにカム部55dに押されて第2カム59が第2カム軸59aを支点に反転させられ、給気弁棒72Aがカム部59cに押されてバルブ70は給気状態となる。また、第1カム55が中立状態から反時計回りに回転すると、
図8(d)〜(e)に示すようにカム部55dによって第2カム59が逆方向に反転させられ、排気弁棒73Aがカム部59cに押されてバルブ70は排気状態となる。
【0037】
図5に示すように、バルブ70の筐体71には係止片71aが形成されており、この係止片71aに、後方に延びるケーブル81が係止されている。このケーブル81が引っ張られるとバルブ70は圧縮コイルばね53aに抗して後方に動かされ、ケーブル81を引っ張る力を緩めると圧縮コイルばね53aによってバルブ70は前方に移動する。ケーブル81の操作は、アッパーフレーム20の右側の強度メンバー24に取り付けられた
図1および
図2に示すレバー61を乗員が操作することによってなされる。レバー61には、押したり引いたりする回動操作を停止した位置で回動を停止させるブレーキ機構が設けられており、レバー61の操作を停止するとケーブル81が固定されてバルブ70の前後移動が停止するようになされている。
【0038】
このようにケーブル81によってバルブ70が前後移動することによっても、バルブ70は給気や排気の状態になる。すなわち、バルブ70が前方に移動すると、第1カム軸55aが前方に移動するため第1カム55が
図8(d)〜(e)に示すように反時計回りに回転し、反転した第2カム59のカム部59cで排気弁棒73Aが押されてバルブ70は排気状態となる。また、バルブ70が後方に移動すると、第1カム軸55aが後方に移動するため第1カム55が
図8(a)〜(b)に示すように時計回りに回転し、反転した第2カム59のカム部59cで給気弁棒72Aが押されてバルブ70は給気状態となる。
【0039】
図7に示すように、第2カム59の凹部59bは前後対称(
図7で左右対称)に形成されているが、この凹部59bの内面の前後には、凹部59bを底部側と開口側に区分する凸部59dがそれぞれ形成されている。そして、この凸部59dの開口側には、第1カム55のカム部55dの先端面が係合する第1ストッパ面(係合部)59eが形成されている。第1ストッパ面59eは、カム部55dの先端面が嵌って係合するように凹状に僅かに湾曲した面に形成されている。また、第2カム59の凹部59bの開口縁から外面にわたる箇所には、第1ストッパ面59と鋭角をなして凸状に僅かに湾曲した第2ストッパ面(係合部)59fが形成されている。一方、第1カムの翼部55cの基端部の第2カム59側の面には、鈍角状の凸部(係合部)55bが形成されている。
【0040】
上記のように高さ位置伝達ピン56はバルブ70に対し前後方向に相対的に移動し、これによって第1カム55を介して第2カム59が回転してバルブ70が開閉する。高さ位置伝達ピン56が、
図8(a)に示すように相対的に前方(
図8で左方)に移動して第1カム55が時計方向に回転すると、第1カム55のカム部55dの先端面が、第2カム59の
図8で右側の凸部59dを乗り越え、
図8(b)に示すように第1のカム55のカム部55dの先端面が第2カム59の第1ストッパ面59eに係合するとともに、第2カム59の
図8で左側の第2ストッパ面59fが第1カム55の左側の翼部55cの凸部55bに当接して係合する。また、高さ位置伝達ピン56が、
図8(d)に示すように相対的に後方(
図8で左方)に移動した場合にも、左右対称の状態で、同様の動きが生じる。
【0041】
この時、
図8(b)および
図8(e)に示すように、高さ位置伝達ピン56は第1カム55の凹部55eから抜け出て翼部55cの基端部に当接しているが、さらに前方あるいは後方に移動すると翼部55cから離れる。したがって第1カム55は高さ位置伝達ピン56の支持を受けない状態となるが、第2カム59が、カム部59cで押さえている給気弁棒72Aもしくは排気弁棒73Aの突出しようとする押圧力(
図8:Pで示す)を受け、その反動で逆方向(
図8(b)では時計方向、
図8(e)では反時計方向、)に回転しようとすることにより、第1カム55にはモーメント力Mが生じ、
図8(b)または(e)に示す状態が保持される。
【0042】
すなわち、第1のカム55のカム部55dの先端面が第2カム59の第1ストッパ面59eに係合するとともに、第2カム59の第2ストッパ面59fが第1カム55の翼部55cの凸部55bに当接して係合することにより、第2カム59および第1カム55の回転が規制され、回転停止状態が保持される。この時の第1カム55の回転角度が、給気弁棒72Aもしくは排気弁棒73Aを押さえて給気もしくは排気を保持する第1カム55の作動角度とされ、この作動角度が保持される。したがって、高さ位置伝達ピン56が第1カム55から離間しても、バルブ70の給気状態または排気状態は保持される。
【0043】
また、高さ位置伝達ピン56がバルブ70に対して前後方向に相対的に移動することにより第1カム55方向に戻ってきた場合には、高さ位置伝達ピン56が第1カム55の凹部55eに入り込むことによって第1カム55は中立方向に回転させられ、給気または排気の保持状態が解除される。
図8に示すように、第1カム55および第2カム59は、いずれもその回転範囲における前後方向の最大寸法が、バルブの前後方向の寸法よりも小さい寸法となっている。
【0044】
図6に示すように、バルブ70の筐体71の後端部にはステー部71cが突設されており、このステー部71c上に、バルブフレーム51の上板51Bの上方に配される円板ギヤ54が、軸線が上下方向に延びる回転軸54aを介して回転自在に支持されている。円板ギヤ54は上記ガイド壁部58Aと折り曲げ部58Bとの間に配されており、左側のガイド壁部58Aの内面に形成された前後方向に延びるラックギヤ58aに噛み合っている。円板ギヤ54はバルブ70と一体に前後移動し、前後移動する時には外周面の歯がラックギヤ58aに噛み合うことにより転動する。
【0045】
上側可動軸36が嵌合し、高さ位置伝達ピン56が固定されたスライダ57は、円板ギヤ54の前方に配されており、スライダ57の後端には、円板ギヤ54の歯に噛合可能な左右方向に延びるラック状のロックギヤ57aが設けられている。
【0046】
図6(a),(b)に示すように、ロックギヤ57aと円板ギヤ54との間には上側可動軸36の前後方向の位置に応じた所定の間隙が空くように設定されているが、エアサスペンション機構1が急激に伸張した場合には、上側可動軸36が急激に後退してスライダ57のロックギヤ57aが円板ギヤ54に噛み合う。これにより、スライダ57の後退が規制され、上側可動軸36の後退も規制される。その結果、エアサスペンション機構1がロックし、それ以上のシートの上昇が抑えられるようになっている。
【0047】
本実施形態では、バルブフレーム51と、このバルブフレーム51に組み込まれたバルブ70、スライダ57、第1カム55、第2カム59、円板ギヤ54を主体として、ハイト装置50が構成されている。続いて、このハイト装置50の作用を説明する。
【0048】
(3)ハイト装置の機能
ハイト装置50によると、シートを所望の高さに設定することができる“シート高さ設定機能”と、シートの高さが自動的に一定高さに保たれる“シート高さ一定機能”を有している。
【0049】
(3−1)シート高さ設定機能
シート高さ設定機能は、レバー61を押したり引いたりして操作し、ケーブル81を介してバルブ70を前後方向に移動させることにより実行させることができる。すなわち、レバー61を引くと、ケーブル81が引っ張られてバルブ70が後方に移動させられる。これにより第1カム軸55aが後方に移動し、第1カム55が
図8(a)〜(b)に示すように時計回りに回転して反転した第2カム59のカム部59cで給気弁棒72Aが押され、バルブ70が給気状態となる。バルブ70が給気状態になるとエアスプリング41に空気が供給され、エアサスペンション機構1が上方に伸張してシートが上昇する。レバー61の引き操作を止めると、シートはその時の高さに保持される。
【0050】
一方、シートを低くしたい時にはレバー61を押してケーブル81による引っ張り力を緩める。すると、バルブ70が圧縮コイルばね53aによって前方に移動させられる。これにより第1カム軸55aが前方に移動し、第1カム55が
図8(d)〜(e)に示すように反時計回りに回転して反転した第2カム59のカム部59cで排気弁棒73Aが押され、バルブ70が排気状態となる。バルブ70が排気状態になるとエアスプリング41内の空気がバルブ70から排出され、エアサスペンション機構1が下方に縮小してシートが下降する。レバー61の回転操作を止めると、シートはその時の高さに保持される。
【0051】
(3−2)シート高さ一定機能
次に、シート高さ一定機能は、シートに乗員が着座した状態でシートが一定高さに保たれる機能である。すなわち、シートに乗員が着座すると、アッパーフレーム20から下方に荷重を受けたエアサスペンション機構1が下方に縮小し、これに伴って上側可動軸36が前進する。すると、上側可動軸36にスライダ57を介して連結されている高さ位置伝達ピン56も前進する。
【0052】
高さ位置伝達ピン56が前進すると、
図8(a)〜(b)に示すように第1カム55が中立状態から時計回りに回転し、カム部55dで押された第2カム59が第2カム軸59aを支点に反転させられ、給気弁棒72Aがカム部59cに押されてバルブ70が給気状態となる。これによりエアスプリング41に空気が供給され、エアサスペンション機構1が伸張してシートが上昇する。
【0053】
シートが上昇したら上側可動軸36は後退し、今度は逆に
図8(d)〜(e)に示すように高さ位置伝達ピン56で後方に押された第1カム55が反時計回りに回転する。これにより反転した第2カム59のカム部59cで排気弁棒73Aが押されて排気状態となり、エアスプリング41内の空気はバルブ70から排出され、エアサスペンション機構1が下方に縮小してシートが下降する。
【0054】
このようにエアサスペンション機構1の伸縮に追従してエアスプリング41に対する空気の供給/排出が繰り返されることにより、シートは上下に振動しながら自動的に一定高さに保たれる。シートが一定高さに保たれている時には、
図8(c)に示すように第1カム55は中立となってエアスプリング41に対する給排気は行われない状態となる。
【0055】
また、シートから乗員が立ち上がって負荷が無くなった時、エアスプリング41の力でエアサスペンション機構1は上方に伸張してシートが上昇するが、スライダ57のロックギヤ57aが円板ギヤ54に噛合することによりシートの上昇高さが規制される。このため、シートから乗員が立ち上がる際に急激にシートが上昇して乗員に当たるといった不快な動きが防止される。
【0056】
(4)実施形態の作用効果
上記実施形態のシート支持装置によれば、バルブの各弁棒72A,72Bの押圧作用により第2カム59を介して第1カム55をバルブ70の開閉状態を保持する作動角度に保持する構成となっている。このため、上記のシート高さ設定機能、あるいはシート高さ一定機能を働かせた場合において、高さ位置伝達ピン56とバルブ70とが前後方向に大きく相対移動して、第1カム55が高さ位置伝達ピン56から離れ逸脱しても、第1カム55の作動角度が保持されてバルブ70の開状態または閉状態が保持される。よって、第1カム55における高さ位置伝達ピン56に当接する部分は、作動角度に回転するまでの長さがあるだけでよく、その結果、第1カム55の小型化が図られる。そして第1カム55の小型化が可能になるということは、シート高さ調整量の増加に対して確実に対応することができるとともに、第1カム55の周辺部材への干渉を抑えることができる。
【0057】
図9の符号100は、本実施形態とは異なり、高さ位置伝達ピン56が常に当接している状態でバルブ70を開閉可能となる第1カムを示している。この第1カム100では、翼部101の前後方向長さが大きく先端部がバルブ70の前後からはみ出しており、周辺の部材へ干渉しやすいことが考えられる。これに対し本実施形態の第1カム55は、翼部55cの長さが抑えられ、その回転範囲における前後方向の最大寸法がバルブ70の前後方向の寸法よりも小さいため、第1カム55が周辺の部材に干渉しにくいものとなっている。
【0058】
また、上記実施形態では、第1カム55および第2カム59のバルブ70を開状態または閉状態に保持する作動角度を保持するストッパ手段として、給気弁棒72Aおよび排気弁棒73Aの押圧力を利用している。したがって、そのような機能のストッパ手段を別個に設ける必要がなく、これによっても省スペース化が図られるとともに、部品点数の増加を抑えることができる。