(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベース部材に、前記ハンドルレバーが前記リテーナによって前記組付位置に保持された状態で前記リテーナに係合し、且つ、該リテーナに前記スプリングの付勢力以上の力が加わった場合に当該リテーナとの係合が解除される傾斜形状を有する第1係合部と、
該第1係合部と前記リテーナとの係合が解除された後に、前記ハンドルレバーの回動によって少なくとも前記リテーナが前記傾斜面に至るまで該リテーナに係合する第2係合部とを設けたことを特徴とする請求項2記載の車両のドアハンドル装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係るドアハンドル装置を備える車両の側面図、
図2は
図1のA−A線断面図であり、
図1に示す車両50の両側部に開口する左右の各乗降口51は、観音開き式のフロントドア52とリヤドア53によって開閉される。ここで、フロントドア52は、その前端部が上下のヒンジ54によって車体に開閉可能に支持され、リヤドア53は、その後端部が上下のヒンジ55によって車体に開閉可能に支持されている。そして、フロントドア52には、車外から該フロントドア52の開閉操作を行うためのドアハンドル56と、車両後方を視認するためのドアミラー57が設けられている。
【0021】
又、
図1に示すように、リヤドア53の前端部の上下にはラッチユニット58,59がそれぞれ設けられており、同リヤドア53の前端部の中間高さ位置(上下方向において上下のラッチユニット58,59の間の位置)には本発明に係るドアハンドル装置1が配置されている。そして、上下のラッチユニット58,59は、連結部材であるコントロールケーブル60,61を介してドアハンドル装置1に連結されている。
【0022】
尚、図示しないが、上下の各ラッチユニット58,59は、車体に設けられたストライカに係脱可能なフォークと、該フォークに係合してフォークとストライカとを係止状態に維持するクローとを備えている。そして、車室内のハンドルグリップ2A(
図2参照)が乗員によって操作されると、その操作力がドアハンドル装置1とコントロールケーブル60,61を介して上下のラッチユニット58,59に伝達され、各ラッチユニット58,59のクローが操作されてフォークとストライカとの係合が解除され、これによってリヤドア53の開放が可能となる。
【0023】
而して、本実施の形態における観音開き式のフロントドア52とリヤドア53にあっては、フロントドア52が優先して開放され、リヤドア53は、フロントドア52の開放後にその開放が許容されるよう構成されている。
【0024】
ところで、
図2に示すように、フロントドア52は、アウタパネル52aとその内側に配されたインナパネル52bの周縁同士をヘミング加工等によって接合することによって中空構造として構成されており、その内側は外装パネルであるドアトリム62によって覆われている。又、リヤドア53においては、アウタパネル53aとその内側に設けられた外装パネルであるドアトリム63によって画成される空間内に矩形筒状のドアフレーム64が上下方向(
図2の紙面垂直方向)に配されており、該ドアフレーム64の前端面に本発明に係る前記ドアハンドル装置1が取り付けられている。このドアハンドル装置1には、前記ハンドルグリップ2Aが図示矢印方向に回動操作可能に設けられており、ドアトリム63には乗員が手を差し込んでハンドルグリップ2Aを操作するための凹部63aが形成されている。ここで、ハンドルグリップ2Aは、ドアトリム63の外部に位置しており、これはドアトリム63に形成された孔63bを介して後述のようにハンドルレバー2B(
図5及び
図6参照)に連結されている。
【0025】
次に、本発明に係るドアハンドル装置1の構成の詳細を
図3〜
図12に基づいて以下に説明する。
【0026】
図3は本発明に係るドアハンドル装置の正面図、
図4は同ドアハンドル装置の背面図、
図5は同ドアハンドル装置の分解斜視図、
図6は同ドアハンドル装置のハンドルレバーの斜視図、
図7は同ハンドルレバーを組付位置に保持した状態を示す部分斜視図、
図8〜
図10はハンドルレバーとハンドルグリップとの組付要領を示す部分平断面図、
図11は同ドアハンドル装置のラッチ側伝達レバーとハンドル側伝達レバーとの組付構造を示す図、
図12(a),(b)は同ドアロック装置の作動部材の構造と作用を示す部分側断面図である。
【0027】
本発明に係るドアハンドル装置1は、ベース部材3にハンドルレバー2Bとこれに連結された前記ハンドルグリップ2A、空振り機構4及び作動部材5を設けて構成されている。ここで、ベース部材3は、リヤドア53の内部に配置される上下方向に長い部材であって、その上端部に形成された左右2つのネジ孔3aと下端部に形成された1つのネジ孔3a(
図5参照)に挿通する不図示のネジによってドアハンドル装置1が
図2に示すようにリヤドア53のドアフレーム64の前端面に取り付けられている。
【0028】
又、ベース部材3の上部には,ハンドルレバー2Bがこれに垂直方向に挿通する支持軸6によって回動可能に軸支されており、このハンドルレバー2Bとハンドルグリップ2Aが上下2本のネジ7によって連結されている。即ち、
図6に詳細に示すように、ハンドルレバー2Bの端部には連結部2dが一体に形成されており、この連結部2dの上下には円孔状のネジ孔2bが形成されている。そして、ハンドルグリップ2Aの上下に形成された2つの切欠き孔2aにネジ7を通し、これらのネジ7をハンドルレバー2Bの連結部2dの上下に形成された前記ネジ孔2bにそれぞれねじ込むことによってハンドルグリップ2Aとハンドルレバー2Bが連結されて一体化されている。尚、ハンドルグリップ2Aのハンドルレバー2Bへの組付要領については後述する。
【0029】
上述のように連結一体化されたハンドルグリップ2Aとハンドルレバー2Bは、ハンドルレバー2B及びベース部材3にそれぞれ縦方向に貫設された軸挿通孔2c,3bに前記支持軸6を上方から通し、該支持軸6の下端にCリング8を嵌め込むことによってベース部材3に回動可能に軸支されており、これらのハンドルグリップ2Aとハンドルレバー2Bは、スプリング9によって
図2に示す初期位置(ハンドルグリップ2Aを操作する前の位置)方向に付勢されている。
【0030】
ところで、
図6に示すように、ハンドルレバー2Bの中間高さ位置には、横方向に長い矩形の凹部2eが形成されており、この凹部2eの相対向する上下には山形状部2fがそれぞれ突設されている。そして、
図7に示すように、各山形状部2fには円孔状の軸受孔2gと該軸受孔2gから径方向外方に向かって直線状に延びる保持溝2hがそれぞれ形成されている。又、各山形状部2fの前記軸受孔2gの周縁には、
図6に示すように両側の第1傾斜面2f1(保持位置側)及び第2傾斜面2f3(収納位置側)と頂点2f2がそれぞれ形成されている。
【0031】
他方、ベース部材3の上部には、
図7に示すように凹部3jが形成されており、この凹部3jの片方の隅角部には
図7及び
図8に示すように第1係合部3j1と第2係合部3j2が形成されている。又、ベース部材3の凹部3jの側方の端面にはゴム等の弾性体から成るストッパ21が突設
されている。
【0032】
而して、ハンドルレバー2Bの前記凹部2eには、ハンドルグリップ2Aをハンドルレバー2Bの連結部2dに連結する際にハンドルレバー2Bを
図7及び
図8に示す所定の組付位置に保持する保持手段であるリテーナ22が回動可能に軸支されている。ここで、リテーナ22は、
図5に示すように、弾性を有する金属線を略U字状に曲げて形成された本体部22aと、該本体部22aの両端をそれぞれ外側に曲げて形成された上下の軸部22bとを有しており、上下の軸部22bを
図7に示すようにハンドルレバー2Bに形成された前記軸受孔2gに差し込むことによって該リテーナ22がハンドルレバー2Bに回転可能に支持されている。
【0033】
ここで、ハンドルグリップ2Aのハンドルレバー2Bへの組付要領を
図6〜
図10に基づいて以下に説明する。
【0034】
先ず、ドアハンドル装置1をドアフレーム64に取り付ける前に、リテーナ22を手動で
図7に示すようにベース部材3の第1係合部3j1に係合させてハンドルレバー2Bを所定の組付位置に保持しておく。この組付位置においては、ハンドルレバー2Bは初期位置から
図8において反時計方向に所定量だけ回転した位置にあり、リテーナ22がベース部材3の第1係合部3j1に係合することによって、ハンドルレバー2Bの初期位置側への回動が規制され、ハンドルレバー2Bはスプリング9の付勢力に抗してこの組付位置に保持される。そして、ドアハンドル装置1をベース部材3に形成された3つのネジ孔3a(
図5参照)に挿通する不図示のネジによって
図8に示すようにドアフレーム64に取り付ける。
【0035】
次に、ドアトリム63の孔63bにハンドルレバー2Bを貫通させながらドアトリム63をリヤドア53のアウタパネル53aに固定する。この状態では、リテーナ22によって所定の組付位置に保持されたハンドルレバー2Bの連結部2dが
図8に示すようにドアトリム63の孔63bから外部に突出するため、この突出した連結部2dにハンドルグリップ2Aをネジ7によって組み付ける。
【0036】
その後、ハンドルグリップ2Aを
図9の矢印方向(時計方向)に押し込むと、リテーナ22にスプリング9の付勢力以上の力が加わり、ベース部材3に形成された第1係合部3j1は傾斜形状を有しているため、リテーナ22が第1係合部3j1を乗り越えて該第1係合部3j1との係合が解除され、該リテーナ22の端部は
図9に示すように第2係合部3j2へと移動して該第2係合部3j2に係合する。これによって、リテーナ22によるハンドルレバー2Bの保持が解除され、該ハンドルレバー2Bはこれに連結されたハンドルグリップ2Aと共に回動可能な状態となる。
【0037】
その後、ハンドルレバー2Bをハンドルグリップ2Aと共に時計方向に更に回動させると、リテーナ22はハンドルレバー2Bに対して反時計方向に回動し、該リテーナ22の端部がハンドルレバー2Bの山形状部2fの第1傾斜面2f1から頂点2f2を越えて第2傾斜面2f3(傾斜面)まで移動すると、該リテーナ22は本体部22aの広がる方向への自身の弾性力によって自力で収納位置まで移動して山形状部2fの保持溝2hに嵌り込み、
図10に示すように収納位置に保持される。このとき、ハンドルレバー2Bは、
図10に示すようにベース部材3に突設されたストッパ21に当接し、該ハンドルレバー2Bとこれに連結されたハンドルグリップ2Aは図示の初期位置に保持されている。
【0038】
以上のように、ハンドルレバー2Bに設けられたリテーナ22は、ベース部材3の第1係合部3j1に係合してハンドルレバー2Bを組付位置に保持する保持位置と、ベース部材3の第1係合部3j1及び第2係合部3j2に係合しない収納位置との間を移動することによって、ハンドルグリップ2Aのハンドルレバー2Bへの組み付けを容易化し、組付後はハンドルレバー2Bとハンドルグリップ2Aの回動を許容する機能を果たす。
【0039】
ところで、
図4及び
図5に示すように、ベース部材3の中間高さ位置には回転レバー10が支持軸11によって回動可能に軸支されている。この回転レバー10は、ハンドルグリップ2Aの回動操作に連動して支持軸11を中心として回動する部材であって、
図5に示すように、その上端に横方向に形成された軸支孔10aとベース部材3に横方向に貫設された軸支孔3cに挿通する前記支持軸11によってベース部材3に回動可能に軸支されており、その上端部が
図6に示すハンドルレバー2Bの下端に形成された凹状の連結部2iに係合している。そして、この回転レバー10の下端には切欠き円状の支持受部10bが形成されている。
【0040】
又、ベース部材3の下半部には前記空振り機構4と作動部材5が設けられている。ここで、空振り機構4は、ハンドルグリップ2Aとラッチユニット58,59(
図1参照)とを連結/非連結状態に切り替える機構であって、中間部がベース部材3に回動可能に軸支されたラッチ側伝達レバー12と、上端が前記回転レバー10に連結されてベース部材3に揺動可能に支持されたハンドル側伝達レバー13を含んで構成されている。
【0041】
上記ラッチ側伝達レバー12の中間部には円孔状のネジ挿通孔12aが形成されており、このネジ挿通孔12aに挿通するネジ14をベース部材3に突設された軸部3Aのネジ孔3dにねじ込むことによってラッチ側伝達レバー12がベース部材3に回動可能に軸支されており、このラッチ側伝達レバー12はコイルスプリング15によってロック方向(
図4の時計方向)に付勢されている。そして、このラッチ側伝達レバー12の一端には、上側のラッチユニット58(
図1参照)に連なるコントロールケーブル60(
図1参照)が連結される第1連結部12bが形成され、同ラッチ側伝達レバー12の他端には、下側のラッチユニット59(
図1参照)に連なるコントロールケーブル61(
図1参照)が連結される第2連結部12cが形成されている。又、ラッチ側伝達レバー12にはピン状の係合部12dが一体に突設されている。尚、ベース部材3には、ラッチ側伝達レバー12の第1連結部12bに連結されるコントロールケーブル60と第2連結部12cに連結されるコントロールケーブル61を保持するケーブル保持部3e,3fがそれぞれ形成されている。
【0042】
ハンドル側伝達レバー13は、その上端に設けられた球状の支持部13aを前記回転レバー10の下端に形成された支持受部10bに嵌め込むことによって回転レバー10の下端にジョイント連結されている。そして、このハンドル側伝達レバー13には、ラッチ側伝達レバー12に突設された前記係合部12dが係合するガイド溝孔13bが形成されており、このガイド溝孔13bは、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dとの係合を回避して該係合部12dをガイドするための上下方向に長い長孔部13b1と、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dと係合する段部13b2とで構成されている。又、ハンドル側伝達レバー13には二股状の前側部13cと後側部13dが設けられるとともに、凸状部13eが形成されている。
【0043】
ここで、ラッチ側伝達レバー12とハンドル側伝達レバー13との組付構造を
図11に示すが、ハンドル側伝達レバー13には、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dを通過させるための凸状部13eが形成されているため、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dをハンドル側伝達レバー13の凸状部13eを通過させてガイド溝孔13b内に嵌め込み、ラッチ側伝達レバー12を
図11において時計方向に回転させることによって、ハンドル側伝達レバー13の前側部13cと後側部13dとの間にラッチ側伝達レバー12を挟み込むことによってハンドル側伝達レバー13とラッチ側伝達レバー12が組み付けられる。
【0044】
而して、ハンドル側伝達レバー13は、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dがガイド溝孔13bの段部13b2に係合する連結位置とその係合が解除される非連結位置との間を揺動可能であり、これとベース部材3との間に縮装されたスプリング16によって連結位置方向(
図4の時計方向)に付勢されている。
【0045】
前記作動部材5は、
図5に示すベース部材3の下部に横方向に形成された凹状の作動部材収納部3Bに横方向(ハンドル側伝達レバー13の揺動方向)にスライド可能に収納されており、これのスライドによってハンドル側伝達レバー13に係合して該ハンドル側伝達レバー13の位置を連結/非連結位置に切り替える部材である。尚、
図5に示すように、ベース部材3の作動部材収納部3Bの上下にはレール状溝3g(
図5には一方のみ図示)が横方向に形成されている。
【0046】
ここで、作動部材5は、
図5及び
図12に示すように、フロントドア52に当接する第1スライダ17と、空振り機構4のハンドル側伝達レバー13を操作する第2スライダ18と、第1スライダ17と第2スライダ18をフロントドア52側(
図5及び
図12の左方)に付勢する第1スプリング19と、第1スライダ17と第2スライダ18との間に介装された第2スプリング20を備えている。尚、第1スプリング19の付勢力(バネ定数)は第2スプリング20の付勢力(バネ定数)よりも小さく設定されている。
【0047】
第1スライダ17は、矩形筒状の本体部17Aと該本体部17Aから突出するピン状の当接部17Bを備えており、当接部17Bは、
図2に示すようにリヤドア53のアウタパネル53aに形成された貫通孔53a1を通過してアウタパネル53a外へと突出しており、その前端が閉鎖状態にあるフロントドア52のインナパネル52bに当接している。
【0048】
第1スライダ17の本体部17Aの上下には係合爪17aと横方向に長いレール状凸部17bが形成されており、同本体部17Aの左右及び上下の内壁にはレール状凸部17c(
図5には一方のみ図示)が形成されている。又、本体部17Aの一側部には横方向に長いガイド溝17dが形成されている。この第1スライダ17は、本体部17Aの上下に形成されたレール状凸部17bをベース部材3の作動部材収納部3Bの上下に形成されたレール状溝3gに嵌合させることによってベース部材3に対して横方向にスライド可能に収納保持されており、
図12(a)に示すように本体部17Aの上下に形成された係合爪17aがベース部材3の段部3hに係合することによって該第1スライダ17のベース部材3からの抜け出しが防がれている。
【0049】
第2スライダ18は、矩形筒状に成形されており、その上下には係合爪18aが形成されており、その上下面と左右両側面にはレール状溝18bが横方向に形成されている。又、第2スライダ18の一側面には円柱状の水平な操作部18cが一体に突設されている。この第2スライダ18は、操作部18cを第1スライダ17の本体部17Aに形成されたガイド溝17dに係合した状態で、その上下面と左右両側面に形成されたレール状溝18bに第1スライダ17の本体部17Aの内壁の上下及び左右に形成されたレール状凸部17cを嵌合させることによって、第1スライダ17の内部にスライド可能に収容されており、
図12(a)に示すように、その上下に形成された係合爪18aが第1スライダ17の係合爪17aに係合することによって該第2スライダ18の第1スライダ17からの抜け出しが防がれている。尚、
図12(a)に示すように、ベース部材3の操作部材収納部3Bの端面は、第2スライダ18に係合して該第2スライダ18のハンドル側伝達レバー13側(
図12(a)の右方)への所定以上の移動を規制する規制部3iを構成している。
【0050】
次に、以上のように構成された本発明に係るドアハンドル装置1の作用を
図13〜
図17に基づいて以下に説明する。
【0051】
図13はドアハンドル装置のアンロック状態を示す背面図、
図14は同ドアハンドル装置のアンロック状態からハンドルグリップを操作した状態を示す背面図、
図15は同ドアハンドル装置のロック状態を示す背面図、
図16は同ドアハンドル装置のロック状態からハンドルグリップを操作した状態を示す背面図、
図17は同ドアハンドル装置のロック状態でフロントドアが開放された状態を示す背面図である。
【0052】
図1及び
図2に示すフロントドア52が開放状態(アンロック状態)、リヤドア53が閉鎖状態(ロック状態)にあるとき、ドアハンドル装置1においては第1スライダ17の当接部17Bはフロントドア52から離間するために
図12(a)及び
図13に示すように(
図2に鎖線にて示すように)外方へと突出している。このとき、作動部材5は
図13の左限位置にあるために第2スライダ18の操作部18cはハンドル側伝達レバー13から離間している。このため、ハンドル側伝達レバー13は、スプリング16の付勢力によって連結位置に移動しており、このとき、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dはハンドル側伝達レバー13のガイド溝孔13bの段部13b2に係合してラッチ側伝達レバー12とハンドル側伝達レバー13は連結状態にある。
【0053】
図13に示す状態から乗員がハンドルグリップ2Aを
図14の紙面奥側へと引いてこれを支持軸6を中心として回動させると、このハンドルグリップ2Aの回動運動はハンドルレバー2Bを経て回転レバー10の回動運動に変換され、該回転レバー10に連結されたハンドル側伝達レバー13が上方へと移動する。すると、ハンドル側伝達レバー13のガイド溝孔13bの段部13b2がラッチ側伝達レバー12の係合部12dに係合し、ラッチ側伝達レバー12がネジ14を中心としてコイルスプリング15(
図5参照)の付勢力に抗して
図14の反時計方向に回動するため、該ラッチ側伝達レバー12の第1連結部12bと第2連結部12cに連結されたコントロールケーブル60,61が共に引かれて上下のラッチユニット58,59(
図1参照)が操作され、リヤドア53のロックが解除されて該リヤドア53の開放が許容される。
【0054】
次に、リヤドア53が閉じられて閉鎖状態となり、開放されていたフロントドア52が閉じられて閉鎖状態になると、
図2に実線にて示すようにフロントドア52のインナパネル52bが第1スライダ17の当接部17Bに当接してこれを押圧する。このとき、作動部材5においては、前述のように第1スプリング19の付勢力が第2スプリング20の付勢力よりも小さく設定されているため、
図12(b)に示すように、第1スライダ17が図の右側に押圧され、第2スプリング20は縮むことなく第1スプリング19のみが圧縮されて第1スライダ17と第2スライダ18が一体的に図の右方向に移動する。
【0055】
そして、
図12(b)に示すように第2スライダ18の右端がベース部材3の作動部材収納部3Bに形成された規制部3iに当接すると、該第2スライダ18の操作部18cが
図15に示すようにハンドル側伝達レバー13に当接して該ハンドル側伝達レバー13をスプリング16の付勢力に抗して非連結位置(ラッチ側伝達レバー12の係合部12dがハンドル側伝達レバー13のガイド溝孔13bの長孔部13b1に係合する位置)に移動させる。
【0056】
その後、第1スライダ17は、第2スプリング20を圧縮しながら所定の距離だけ移動するよう設定されている。このため、フロントドア52と第1スライダ17との距離が部品精度によってバラついても、このバラツキが第1スライダ17の移動によって吸収される。即ち、フロントドア52と第1スライダ17との寸法精度が左右方向に
図12(b)に示すa,bの範囲でずれても、第2スライダ18は所定の位置まで確実に移動するとともに、該第2スライダ18の過度の移動による部品の破損が防がれる。
【0057】
フロントドア52が閉じられたために
図15に示すようにドアロック装置1のラッチ側伝達レバー12とハンドル側伝達レバー13とが非連結状態となってから乗員がハンドルグリップ2Aを
図16の紙面奥側へと引いてこれを支持軸6を中心として回動させると、このハンドルグリップ2Aの回動運動がハンドルレバー2Bを経て回転レバー10の回動運動に変換され、該回転レバー10の下端に連結されたハンドル側伝達レバー13が上方へと移動する。
【0058】
ところが、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dは、ハンドル側伝達レバー13のガイド溝孔13bの長孔部13b1内を移動するだけで、ハンドル側伝達レバー13の操作力がラッチ側伝達レバー12に伝達されないため、該ラッチ側伝達レバー12は回動せず、ラッチユニット58,59が動作しないためにリヤドア53のロック状態が維持されて該リヤドア53を開放することができない。
【0059】
フロントドア52が開放されるまでは乗員がハンドルグリップ2Aを操作してもリヤドア53を開放することができないが、ハンドルグリップ2Aが操作された状態で、フロントドア52が開放されると、該フロントドア52による作動部材5への押圧が解除されるために該作動部材5は
図17に示すように外方(図示矢印方向)に突出する。このとき、ハンドル側伝達レバー13は、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dがハンドル側伝達レバー13のガイド溝孔13bの長孔部13b1内に位置しているために連結位置方向への移動が規制されて非連結位置に保持されているが、作動部材5とハンドル側伝達レバー13は分離可能に構成されているため、作動部材5のみが第1スプリング19の付勢力によって
図17の左方向に移動する。
【0060】
そして、ハンドルグリップ2Aの操作が解除されると、該ハンドルグリップ2Aがスプリング9の付勢力によって初期位置側に回動し、このハンドルグリップ2Aの回動に連動して回転レバー10が回動してハンドル側伝達レバー13が下方へと移動し、ラッチ側伝達レバー12の係合部12dとハンドル側伝達レバー13のガイド溝孔13bの長孔部13b1との係合が解除される。すると、ハンドル側伝達レバー13は、スプリング16の付勢力によって連結位置へと移動して
図13に示すようにラッチ側伝達レバー12の係合部12dがガイド溝孔13bの段部13b2に係合するため、該ハンドル側伝達レバー13とラッチ側伝達レバー12が連結状態となる。そして、この状態から乗員がハンドルグリップ2Aを操作すると、
図14に示すようにハンドル側伝達レバー13が上方へと移動してラッチ側伝達レバー12をネジ14を中心として
図14の反時計方向に回動させるため、該ラッチ側伝達レバー12の第1連結部12bと第2連結部12cに連結されたコントロールケーブル60,61が共に引かれて上下のラッチユニット58,59(
図1参照)が操作され、リヤドア53のロックが解除されて該リヤドア53の開放が許容される。
【0061】
以上において、本発明に係るドアハンドル装置1においては、ハンドルレバー2Bは、保持手段であるリテーナ22によって所定の組付位置、即ち、ハンドルレバー2Bの連結部2dがハンドルグリップ2Aとの連結が可能なリヤドア53のドアトリム63の外側の位置に保持されるため、ハンドルグリップ2Aの取付時にハンドルレバー2Bをスプリング9の付勢力に抗して手で保持しておく必要がなく、ハンドルグリップ2Aをネジ7によってハンドルレバー2Bの連結部2dに容易に固定して両者を連結することができる。
【0062】
又、本発明に係るドアハンドル装置1によれば、リテーナ22は、ベース部材3の第1係合部3j1に係合してハンドルレバー2Bを組付位置に保持する保持位置と、ベース部材3の第1係合部3j1及び第2係合部3j2に係合しない収納位置との間を移動可能に設けられているため、ハンドルレバー2Bとハンドルグリップ2Aとの組み付けが完了した後は、リテーナ22を収納位置に移動させることによって、該リテーナ22がハンドルレバー2Bの作動を妨げることがなくなり、ドアハンドル装置1を正常に操作してリヤドア53のロックを解除することができる。
【0063】
そして、ハンドルレバー2Bとハンドルグリップ2Aを組み付けた後もリテーナ22をハンドルレバー2Bに取り付けた状態にしておくことができるため、該リテーナ22を外す手間が省け、例えば、取り外したリテーナ22がリヤドア53内に脱落して車両50の走行時の振動によってリテーナ22が異音を発生する等の不具合が発生することがない。
【0064】
更に、本発明に係るドアハンドル装置1によれば、リテーナ22は、保持位置からハンドルレバー2Bの山形状部2fの頂点2f2を越えて第2傾斜面2f3に至ると自身の弾性力によって収納位置まで自力で移動することができる。即ち、ハンドルレバー2Bとハンドルグリップ2Aとの組み付けが完了した後、リテーナ22を山形状部2fの第2傾斜面2f3まで移動させると、該リテーナ22は自力で収納位置まで移動して保持溝2hに嵌り込んで保持位置に保持される。従って、リテーナ22を保持位置から収納位置に容易に移動させて収納位置に保持することができる。
【0065】
より詳細には、ハンドルグリップ2Aをハンドルレバー2Bに組み付けた後に該ハンドルグリップ2Aを手動で初期位置方向に押し込むと、リテーナ22とベース部材3の第1係合部3j1との係合が解除されてハンドルグリップ2Aとハンドルレバー2Bとの回動が許容され、リテーナ22の端部は続いてベース部材3の第2係合部3j2に係合し、ハンドルレバー2Bの初期位置への回動に伴ってリテーナ22はハンドルレバー2Bの山形状部2fの第2傾斜面2f3に向かって軸部22bを中心として回動する。そして、リテーナ22が第2傾斜面2f3まで移動すると、該リテーナ22は自身の弾性力によって収納位置まで自力で移動してベース部材3の第2係合部3j2との係合が解除されて収納位置に保持される。
【0066】
従って、本発明に係るドアハンドル装置1によれば、ハンドルグリップ2Aを手動で初期位置方向に押し込むだけの簡単な操作によってハンドルレバー2Bの組付位置でのリテーナ22による保持を解除することができるとともに、リテーナ22を収納位置において収納することができる。
【0067】
尚、本実施の形態においては、本発明の構成を、ハンドルグリップが車両の室内側に配設されるドアハンドル装置に適用して採用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ハンドルグリップが車両の室外側に配設されるドアハンドル装置にも採用可能である。又、本実施の形態においては、外装パネルをドアの内側に配設されたドアトリムによって構成しているが、ドアの構造に応じて、例えば、ドアのインナパネル、アウタパネル及びドアの外装面の一部を構成するその他の部材をドアの外装パネルとして構成しても良い。