【実施例】
【0015】
実施例に係るロック機構40は、インストルメントパネル10に対して回動(移動)可能に支持されたグローブボックス20を、インストルメントパネル10に近接させた閉成姿勢(近接姿勢)で回動(移動)規制するよう構成される(
図1(a)参照)。また、ロック機構40は、グローブボックス20の回動規制状態を解除し得るよう構成され、該グローブボックス20がインストルメントパネル10から離れた開放姿勢(離間姿勢)へ回動するのを許容するようになっている(
図1(b)参照)。また、実施例のロック機構40は、閉成姿勢にあるグローブボックス20のガタツキを防止する緩衝手段を備えている。
【0016】
図1に示すように、グローブボックス20は、インストルメントパネル10における助手席側の下部に設けられた設置部12に設置される。設置部12は、車室R側に開口する凹状に形成され、インストルメントパネル10の意匠面に連なる上および左右の縁部に、段状に形成された受面部14を備えている。すなわち、設置部12は、インストルメントパネル10の意匠面よりも凹む上および左右の受面部14の内側が更に凹む形状になっている。設置部12には、受面部14の内縁に連なる左右の側壁12a,12aの下部に軸孔(図示せず)が夫々開設されると共に、左右の側壁12a,12aの上部に、ロック機構40の後述するロック部材42が係脱する係合孔(係合部)16が夫々開設される(
図5参照)。ここで、係合孔16は、側壁12aを左右に貫通するよう形成され、該側壁12aにおいて車室R側に偏って配置される。そして、係合孔16における前側(グローブボックス20の閉成姿勢から開放姿勢への移動方向前側)の開口縁に、ロック部材42が引っ掛かることで、閉成姿勢から開放姿勢への回動を規制するようになっている。
【0017】
図2に示すように、グローブボックス20は、車室R側に露出する意匠面を構成する蓋部22と、この蓋部22の後側に設けられた物品収納部24とから基本的に構成される。グローブボックス20は、物品収納部24における左右の側面下部に外側方へ向けて突出形成された支持軸21,21の夫々を、設置部12における対応する側の前記軸孔に挿入することで、インストルメントパネル10に対して回動可能に支持される。そして、グローブボックス20は、物品収納部24を設置部12に収納すると共に蓋部22で設置部12を塞ぐ閉成姿勢と、この閉成姿勢からインストルメントパネル10から離すように車室R側に傾倒させた開放姿勢との間で姿勢変位される。グローブボックス20は、閉成姿勢で蓋部22の前面がインストルメントパネル10の前面(意匠面)に揃い(
図1(a)参照)、開放姿勢で物品収納部24の上部開口24aが車室Rに臨み、物品収納部24に対する物品の出し入れが可能となる(
図1(b)参照)。なお、以下の説明では、グローブボックス20を閉成姿勢から開放姿勢とする移動方向を開放方向といい、グローブボックス20を開放姿勢から閉成姿勢とする移動方向を閉成方向という。
【0018】
前記グローブボックス20は、蓋部22が設置部12の開口に整合する形状に形成されると共に、物品収納部24が蓋部22の上縁および左右の側縁よりも内側位置から後側に向けて張り出すように形成される(
図2参照)。グローブボックス20は、閉成姿勢において、物品収納部24が設置部12における上および左右の受面部14の内縁に連なる壁間に収納されると共に、蓋部22の上および左右の縁部(以下、鍔部26,27という)が受面部14に相対するようになっている。また、グローブボックス20には、ロック機構40の構成部材が配設される機構配設部28が物品収納部24の上側に設けられる。機構配設部28は、蓋部22の後面をなす裏板22bが上鍔部26および横鍔部27をなす部位よりも後側へ張り出すことで、該裏板22bと蓋部22の前面をなす表板22aとの間にロック機構40の配設空間を画成している。機構配設部28は、閉成姿勢において設置部12における左右の受面部14の内縁に連なる側壁12a,12aの間に収納されて、該機構配設部28の側壁面がインストルメントパネル10の前記係合孔16に対向するようになっている(
図5(a)参照)。更に、グローブボックス20には、蓋部22における機構配設部28に対応する上部位置に後側へ凹む操作凹部30が形成されている。
【0019】
実施例に係るロック機構40は、係合孔16に対して係脱するよう進退移動可能に配設されたロック部材42と、このロック部材42を係合孔16に係合する方向(係合方向)へ付勢する付勢手段44と、ロック部材42を係合孔16から退く方向(退避方向)へ移動させる操作手段46とを備えている。ロック機構40は、略水平に延びる棒状に形成された一対のロック部材42,42を有し(
図2参照)、両ロック部材42,42が互いに反対向きに移動するよう構成される。各ロック部材42は、長手方向一端が機構配設部28内で操作手段46に連結されると共に、該長手方向他端(係合端部43という)が機構配設部28の側壁面に開設された通口32から外側方へ突出している。ロック部材42は、左右方向へ進退移動可能に配設され、通口32からの係合端部43の突出寸法が変わるようになっている。そして、各ロック部材42は、係合端部43が係合孔16に係合可能な位置まで突出する係合位置(
図5参照)と、係合端部43が係合孔16に係合しない外れた位置まで退いた係合解除位置(
図6参照)との間で進退移動するよう構成される。ロック機構40は、係合孔16に挿入された係合端部43の前面(開放方向に臨む面)と係合孔16における前側(開放方向前側)の開口縁とがグローブボックス20の開放方向に重なって引っ掛かることで、グローブボックス20の開放方向への移動を規制している。
【0020】
図3および
図4に示すように、操作手段46は、操作凹部30に固定されたベース48に姿勢変位可能に支持されて、操作凹部30から前側に臨むよう配設された操作ノブ52と、ベース48に対して姿勢変位可能に支持されて、機構配設部28の内側に配設された連係部材54とを備えている。操作ノブ52は、ベース48の前面に左右に離間形成された一対の支軸49,49に回動可能に支持されて、板状の指掛け部分がベース48から前側に離して配設される。操作ノブ52は、両支軸49,49を支点に水平な軸線周りに回動するよう構成され、操作凹部30の開口面に略揃った非操作姿勢(
図4の実線参照)と、この非操作姿勢から指掛け部分下部を車室R側に引き出すように傾動させた操作姿勢(
図4(a)の2点鎖線参照)との間で姿勢変位可能になっている。また、ベース48と操作ノブ52との間には、ねじりコイルばねからなる弾性部材51が配設され、この弾性部材51によって操作ノブ52が非操作姿勢へ向けて付勢されている。操作ノブ52の後面には、後側に向けて突出する連係アーム53が形成され、この連係アーム53の突出端がベース48に開設された開口部48aを介して機構配設部28の内側に臨むようになっている。連係アーム53は、操作ノブ52の姿勢変位につれて上下方向に揺動し、該操作ノブ52を非操作姿勢から操作姿勢とするロック解除操作を行うことで下方へ変位するよう構成される。
【0021】
図3および
図4に示すように、連係部材54は、ベース48における開口部48aの左側縁後面に機構配設部28に向けて突出形成された連係軸50に回転筒部54aを嵌め合わせることで回転可能に支持され、前後の軸線周りに姿勢変位するようになっている。また、連係部材54は、回転筒部54aから回転軸線と直交するように上方へ延出する第1レバー部55と、回転筒部54aから回転軸線と直交するように下方へ延出する第2レバー部56とを備え、第1レバー部55と第2レバー部56とが回転筒部54aを挟んで対称な関係で形成されている。第1レバー部55の延出端には、左側のロック部材42の長手方向一端(右端)が回転可能に連結されると共に、第2レバー部56の延出端には、右側のロック部材42の長手方向一端(左端)が回転可能に連結される。また、連係部材54は、第1レバー部55と第2レバー部56との間に、回転筒部54aから回転軸線と直交するように右方へ延出する連係受部57が形成され、この連係受部57の延出端が開口部48aの後方に臨んでいる。また、連係受部57の延出端は、操作ノブ52の非操作姿勢から操作姿勢への姿勢変位に伴う連係アーム53の変位軌跡に重なるように配置される。ベース48と連係部材54との間には、ねじりコイルばねからなる付勢手段44が配設され、この付勢手段44によって連係部材54を反時計回りに付勢するようになっている。付勢手段44は、延出端に連結されたロック部材42が通る通口32側に近づく方向へ各レバー部55,56を変位するように連係部材54を付勢することで、各ロック部材42を係合位置へ向けて付勢するよう構成される。
【0022】
前記操作手段46は、操作ノブ52が非操作姿勢にあると共にロック部材42が係合位置にある状態で、連係アーム53の下側に連係受部57が当接するよう構成される(
図3および
図4参照)。操作手段46は、操作ノブ52のロック解除操作に伴って下方へ変位する連係アーム53に押されて連係受部57が下方へ変位することで、連係部材54が付勢手段44の付勢に抗して時計回りに回転される。そして、連係部材54の時計回りの回転によって、延出端に連結されたロック部材42が通る通口32側から遠ざかる方向へ各レバー部55,56が変位するので、各ロック部材42が係合位置から係合解除位置に向けて移動される。また、操作姿勢にある操作ノブ52を離せば、操作ノブ52が弾性部材51に付勢されて非操作姿勢に戻って連係アーム53が上方へ変位することで、付勢手段44の付勢による連係部材54の反時計回りの回転が許容される。そして、連係部材54の反時計回りの回転によって、延出端に連結されたロック部材42が通る通口32側に近づく方向へ各レバー部55,56が変位するので、各ロック部材42が係合解除位置から係合位置に向けて移動される。すなわち、操作ノブ52のロック解除操作を解除すれば、付勢手段44の付勢によって各ロック部材42は係合解除位置から係合位置に自動的に復帰するようになっている。
【0023】
前記ロック機構40は、操作ノブ52が非操作姿勢にある状態で、連係アーム53から連係受部57が離れる連係部材54の時計回りの回転変位が可能であるので、インストルメントパネル10による係合端部43の押圧に伴うロック部材42の係合解除位置への移動が許容される。このとき、連係部材54の回転により両ロック部材42,42が移動する構成であるので、一方のロック部材42の動きに他方のロック部材42が連動するようになっている。ロック機構40は、グローブボックス20を開放姿勢から閉成姿勢に戻す際に、操作手段46をロック解除操作することなく、係合端部43を設置部12の側壁12aに当接させることでロック部材42を係合解除位置に移動させることができる。そして、閉成姿勢で係合孔16に係合端部43が重なってロック部材42が設置部12の側壁12aから解放されることで、付勢手段44の付勢によりロック部材42が係合位置に移動されて、係合孔16に係合端部43が挿入される。なお、係合端部43には、先端側に向かうにつれて開放方向に傾く係合ガイド面43aが後面側に形成され(
図6参照)、グローブボックス20の開放姿勢から閉成姿勢への移動に伴って側壁12aに当接する係合ガイド面43aの傾斜によって、ロック部材42を係合位置から係合解除位置へ向けて円滑に移動させることができる。
【0024】
次に、グローブボックス20に配設された緩衝手段60について説明する。実施例のロック機構40は、左側のロック部材42に対応した左側の緩衝手段60と、右側のロック部材42に対応した右側の緩衝手段60とを有している。なお、左右の緩衝手段60,60は、配置が左右対称である以外は基本的な構成が同じであるので、右側の緩衝手段60を参照して以下に説明する。
【0025】
図5,
図6および
図8に示すように、緩衝手段60は、インストルメントパネル10に対して進退移動可能に設けられた緩衝体62と、ロック部材42の進退移動に連係して緩衝体62を移動させるリンク手段68,70,72とを備えている。前記緩衝体62は、横鍔部27の後面上部から該横鍔部27が対向する受面部14に向けて突出するように配設され(
図2参照)、閉成姿勢でグローブボックス20とインストルメントパネル10との対向面間に臨むようになっている(
図5(a)および
図7参照)。緩衝体62は、ロック部材42が通る機構配設部28の通口32および該ロック部材42が係合する係合孔16よりも外側方に配設され、ロック部材42の係合端部43が係合孔16に係合する箇所よりも外側方で受面部14に当接するようになっている。また、緩衝体62は、ロック部材42よりも開放方向側(グローブボックス20の閉成姿勢から開放姿勢への移動方向前側)に配置され、側面視で緩衝体62とロック部材42とがグローブボックス20の移動方向(前後方向)に並ぶ関係になっている(
図7参照)。すなわち、係合孔16に係合したロック部材42の係合端部43と緩衝体62との間に、受面部14(インストルメントパネル10)が挟まれる。
【0026】
前記緩衝体62は、横鍔部27の後面からの突出寸法が変化するように進退移動し、閉成姿勢で受面部14に当接し得る前進位置(
図5参照)と、受面部14に当接しないように退いた後退位置(
図6(b)参照)との間で移動するようになっている。また、緩衝体62は、グローブボックス20の移動方向に進退移動するよう構成され、グローブボックス20の閉成方向に変位することで前進位置となり、グローブボックス20の開放方向に変位することで後退位置となる。このように、緩衝体62は、グローブボックス20の移動方向と交差する左右方向へ進退移動するロック部材42と異なる方向に進退移動し、緩衝体62とロック部材42との互いの進退移動方向が交差するように構成される。なお、グローブボックス20の移動方向とは、実施例のグローブボックス20の如く支持軸21,21を支点とする回動変位であれば、該グローブボックス20の回動軌跡の接線方向をいい、グローブボックス20をインストルメントパネル10に対してスライド変位させるのであれば、グローブボックス20のスライド方向をいう。
【0027】
前記緩衝体62は、閉成姿勢にある横鍔部27と受面部14との間の平面投影間隔W1(
図5(a)参照)よりも、前進位置において横鍔部27の後面からの後側への突出寸法D1(
図5(b)参照)が大きくなるよう設定される(W1<D1)。これにより、緩衝体62は、閉成姿勢においてロック部材42の係合端部43が係合孔16に係合した状態で受面部14に弾力的に当接するようになっている。そして、緩衝体62は、閉成姿勢で移動方向に対向する受面部14に当接した状態で、受面部14から離れる方向(開放方向)へグローブボックス20を付勢している。また、緩衝体62は、閉成姿勢にある横鍔部27と受面部14との間の平面投影間隔W1よりも、後退位置において横鍔部27の後面からの後側への突出寸法D2(
図6(b)参照)が小さくなるよう設定される(W1>D1)。すなわち、後退位置にある状態では、グローブボックス20が閉成姿勢にあっても、緩衝体62が受面部14に当接しないようになっている。
【0028】
前記緩衝体62は、円柱形のホルダ64と、このホルダ64に固定された円柱状の当接部66とから基本的に構成され、ホルダ64が横鍔部27の内側に配設されると共に、当接部66が横鍔部27の後面に開設された連通口34から後側へ向けて突出している(
図5〜
図7参照)。ホルダ64は、横鍔部27をなす表板22a後面から後側へ突出形成された左右一対の保持片36,36の間に前後方向(グローブボックス20の移動方向)に移動可能に保持されている。また、当接部66は、ゴムなどの弾力性を有する材料から形成され、グローブボックス20が閉成姿勢にあると共に緩衝体62が前進位置にある状態で、該当接部66の突出端面が受面部14に当接するようになっている。ここで、前進位置にある緩衝体62は、グローブボックス20の閉成姿勢において受面部14と干渉するように寸法設定されているが、受面部14との当接下に当接部66が干渉寸法分だけ弾性変形することで、ロック部材42の係合端部43の係合孔16への挿入が許容される。これにより、前進位置にある緩衝体62は、閉成姿勢でグローブボックス20にインストルメントパネル10から離れる開放方向へ反力をかけている。そして、緩衝体62は、閉成姿勢にあるグローブボックス20をロック部材42の係合端部43が係合孔16に引っ掛かる方向へ付勢している。すなわち、閉成姿勢にあるグローブボックス20では、ロック部材42の係合端部43の前面が開放方向に対向する係合孔16の前側開口縁に押し付けられる。
【0029】
前記緩衝手段60は、ロック部材42の係合位置から係合解除位置への移動に伴って、リンク手段68,70,72によって緩衝体62を受面部14から退く方向へ移動するよう構成される(
図6参照)。また、実施例の緩衝手段60は、ロック部材42の係合解除位置から係合位置への移動に伴って、リンク手段68,70,72によって緩衝体62を受面部14に近づく方向へ移動するよう構成される。緩衝手段60は、ロック部材42が係合位置にある状態で緩衝体62をリンク手段68,70,72によって前進位置に保持すると共に(
図5参照)、ロック部材42が係合解除位置にある状態で緩衝体62をリンク手段68,70,72によって後退位置に保持するようになっている(
図6(b)参照)。
【0030】
図8に示すように、リンク手段は、ロック部材42に設けられ、ロック部材42の進退移動に連係して該ロック部材42と同じ方向へ移動する連動部68と、この連動部68および緩衝体62の何れか一方に設けられた軸部70と、連動部68および緩衝体62の何れか他方に設けられ、軸部70を案内する誘導面73a,73bを有する誘導部72とを備えている。なお、実施例では、緩衝体62に軸部70が設けられると共に、連動部68の端部に誘導部72が設けられる。リンク手段は、連動部68の移動に伴って変位する誘導部72における該連動部68の移動方向と斜めに交差するように延在する誘導面73a,73bで、連動部68の進退移動方向(左右方向)と交差するグローブボックス20の移動方向(前後方向)に軸部70を案内するようになっている。
【0031】
前記連動部68は、機構配設部28内においてロック部材42から前側へ延出するように分岐した後に該ロック部材42に沿って延在するよう形成され、その延出端部は、ロック部材42よりも前側(グローブボックス20の開放方向)に配置される(
図5および
図7参照)。また、連動部68の延出端部は、横鍔部27の内側に配置されて、ロック部材42の係合端部43よりも外側方に位置している。更に、連動部68の延出端部は、二股に分岐して上下方向に対向する一対の延出片69,69が形成され、両延出片69,69の間に横鍔部27内側に形成された両保持片36,36を上下に挟んでいる(
図7参照)。各延出片69には、上下に貫通する孔状の誘導部72が形成され、ホルダ64の上面に上方へ突出形成された上側の軸部70が上側の延出片69に形成された誘導部72に挿入されると共に、ホルダ64の下面に下方へ突出形成された下側の軸部70が下側の延出片69に形成された誘導部72に挿入される。このように、緩衝体62は、左右の保持片36,36にホルダ64が保持されると共に、左右の保持片36,36の間から突出する上下の軸部70,70がホルダ64を上下に挟む延出片69,69に形成された上下の誘導部72,72に対応的に係合するようになっている。
【0032】
図5および
図6に示すように、前記誘導部72は、外側方(係合解除位置から係合位置)へ向かうにつれて受面部14から離間する方向(前側)に偏倚するよう傾斜形成された後退誘導面73aと、この後退誘導面73aの受面部14から離れた側(前側)に連設されて連動部68の進退移動方向(左右方向)に延在する前進規制面74aとによって、受面部14側の面(後面)が画成される。また、誘導部72は、後退誘導面73aと平行に形成された前進誘導面73bと、この前進誘導面73bの受面部14から離れた側(前側)に連設されて前進規制面74aと平行に形成された後退規制面74bとによって、受面部14から離間する側の面(前面)が画成される。誘導部72は、ロック部材42の進退移動方向と交差するように延在する後退誘導面73aと前進誘導面73bとによって画成される傾斜部分で軸部70を前後に案内するようになっている。また、誘導部72における前進規制面74aと後退規制面74bとによって画成される直線部分では、軸部70の前後の移動が規制される。なお、誘導部72の幅は、円柱状に形成された軸部70の外形寸法に合わせて設定される。
【0033】
前記リンク手段は、軸部70が誘導部72の傾斜部分における受面部14側(後側)の端部に位置した状態で緩衝体62が前進位置となるよう構成される(
図5参照)。この際、軸部70が前進誘導面73bに当接することで緩衝体62の受面部14から離れる方向(前側)への移動が規制されると共に、軸部70が後退誘導面73aに当接することで緩衝体62の受面部14に近づく方向(後側)への移動が規制される。リンク手段は、連動部68の係合位置から係合解除位置への移動に伴って誘導部72が変位することで、誘導部72の傾斜部分にある軸部70を後退誘導面73aで受面部14から離れる方向(前側)へ移動するようになっている(
図6参照)。また、リンク手段は、連動部68の係合解除位置から係合位置への移動に伴って誘導部72が変位することで、誘導部72の傾斜部分にある軸部70を前進誘導面73bで受面部14に近づく方向(後側)へ移動するようになっている。そして、リンク手段は、軸部70が誘導部72の直線部分に位置した状態で連動部68(ロック部材42)が進退移動しても軸部70を変動しないようになっている(
図6(b)参照)。このように、緩衝手段60は、係合位置にあるロック部材42に対応して緩衝体を前進位置で保持し、ロック部材42の係合位置から係合解除位置への移動に伴って緩衝体62を前進位置から後退位置へ移動するよう構成される。また、緩衝手段60は、係合解除位置にあるロック部材42に対応して緩衝体62を後退位置で保持し、ロック部材42の係合解除位置から係合位置への移動に伴って緩衝体62を後退位置から前進位置へ移動するよう構成される。
【0034】
前記ロック機構40によれば、付勢手段44の付勢により係合位置に保持されたロック部材42の係合端部43を係合孔16に挿入することで、係合端部43の前面が係合孔16の前側開口縁に引っ掛かり、閉成姿勢にあるグローブボックス20の開放方向の回動を規制することができる。グローブボックス20の閉成姿勢においてロック部材42が係合孔16に係合する係合位置にある状態では、緩衝体62がリンク手段68,70,72によって前進位置に保持されて受面部14に弾力的に当接している。緩衝体62は、前進位置で受面部と干渉するよう横鍔部27の後面から受面部14に向けて突出しているので、受面部14との当接によって弾性変形した当接部66による反力が受面部14から離れる方向へグローブボックス20に加わる。これにより、ロック部材42の係合端部43を係合孔16の前側開口縁に押し付けるように力が作用するので、係合端部43と係合孔16の前側開口縁との当接状態が維持される。また、受面部14と横鍔部27との間に介在する緩衝体62によって、グローブボックス20の後側(受面部14に近づく方向)への回動が規制される。従って、ロック機構40は、受面部14に弾力的に当接する緩衝体62によってグローブボックス20の前後方向(受面部14に対する接離方向)の移動を規制できるので、閉成姿勢にあるグローブボックス20をガタツキなく保持し得る。
【0035】
前記ロック機構40は、操作ノブ52のロック解除操作によりロック部材42が係合位置から係合解除位置に移動することで係合端部43が係合孔16から抜け出て、閉成姿勢にあるグローブボックス20の開放方向への回動が許容される。この際、ロック機構40は、ロック部材42が係合位置から係合解除位置に移動するのにつれて連動部68が同じ方向に動き、後退誘導面73aに軸部70が受面部14から離れるように案内されることで、緩衝体62が後退位置に変位する。そして、ロック機構40は、開放姿勢等のグローブボックス20が設置部12から離れた状態で操作ノブ52のロック解除操作を取りやめれば、付勢手段44の付勢によりロック部材42が係合解除位置から係合位置に戻る。そして、ロック機構40は、ロック部材42が係合解除位置から係合位置に移動するのにつれて連動部68が同じ方向に動き、外側方(係合解除位置から係合位置)へ向かうにつれて受面部14から離間する方向(前側)に傾斜する前進誘導面73bに軸部70が受面部14に近づくように案内されることで、緩衝体62が前進位置に変位する。
【0036】
前記グローブボックス20を開放姿勢から閉成姿勢に戻す際には、ロック部材42の係合端部43が設置部12の側壁12aに当接することで、ロック部材42が付勢手段44の付勢に抗して係合位置から係合解除位置に押し退けられる。ロック機構40は、ロック部材42が係合位置から係合解除位置に移動するのにつれて連動部68が同じ方向に動き、後退誘導面73aに軸部70が受面部14から離れるように案内されることで、緩衝体62が後退位置に変位する。後退位置にある緩衝体62は、閉成姿勢での横鍔部27と受面部14との間隔よりも突出寸法が小さくなるから、開放姿勢から閉成姿勢に至る前までに緩衝体62が受面部14に当接しない。そして、グローブボックス20の開放姿勢から閉成姿勢への変位につれてロック部材42の係合端部43が付勢手段44の付勢により係合孔16に挿入される。ロック機構40は、ロック部材42が係合解除位置から係合位置に移動するのにつれて連動部68が同じ方向に動き、前進誘導面73bに軸部70が受面部14に近づくように案内されることで、緩衝体62が前進位置に変位する。これにより、係合位置にあるロック部材42の係合端部43が係合孔16に係合したグローブボックス20の閉成姿勢において、前進位置にある緩衝体62が受面部14に弾力的に当接する。
【0037】
このように、ロック機構40によれば、グローブボックス20を開放姿勢から閉成姿勢に戻す際に、緩衝体62が受面部14に当接しないので、緩衝体62がグローブボックス20を閉める際の抵抗にならない。すなわち、緩衝体62を押し当てながら閉める構成と比べて、グローブボックス20を閉じる際の操作荷重を低減することができる。また、ロック機構40は、緩衝体62の干渉寸法を大きく設定しても、グローブボックス20を閉じる際の操作荷重の増加を招かないので、緩衝体62の弾力的な当接によって閉成姿勢にあるグローブボックス20のガタツキをより確実に低減することができる。従って、ロック機構40によれば、グローブボックス20の操作荷重の低減と、グローブボックス20のより確実なガタツキのない移動規制とを両立することができる。
【0038】
(変更例)
前述した実施例の構成に限定されず、以下のように変更することができる。
(1)緩衝手段は、実施例の構成に限定されず、軸部を連動部に設けると共に誘導部を緩衝体に設けてもよい。また、誘導部の形状も実施例の如く孔状でなく、連動部または緩衝体から立ち上がる壁であってもよい。更に、
図9および
図10に示す変更例の緩衝手段80のように、誘導部82に前進誘導面を設けず、コイルばね等の弾性体86によって緩衝体62を受面部14(前進位置)へ向けて付勢する構成であってもよい。弾性体86は、横鍔部27の表板22a後面と緩衝体62のホルダ64との間に介挿され、緩衝体62を横鍔部27の後面から突出するように常に弾力を加えている。
図9に示すように、誘導部82は、外側方(係合解除位置から係合位置)へ向かうにつれて受面部14から離間する方向(前側)に偏倚するよう傾斜形成された後退誘導面83aを有している。誘導部82は、後退誘導面83aに対向する側が連動部68の進退移動方向に延在しており、緩衝体62の後退移動に伴う軸部70の相対的な移動を許容する空間部84が形成されている。すなわち、誘導部82は、平面視で略三角形状に形成されている。変更例の緩衝手段80は、ロック部材42が係合位置から係合解除位置に移動するのにつれて連動部68が同じ方向に動き、後退誘導面83aに軸部70が受面部14から離れるように案内されることで、緩衝体62が後退位置に変位する。そして、緩衝手段80は、操作ノブ52のロック解除操作を取りやめれば、ロック部材42が付勢手段44の付勢により係合位置に戻ると共に弾性体86の付勢により緩衝体62が前進位置に戻る。変更例の緩衝手段80は、閉成姿勢において緩衝体62の当接部66の弾力だけでなく、弾性体86の弾力をかけることができる。また、空間部84によって緩衝体62の受面部14から退く方向の後退移動を許容し得るので、緩衝体62を受面部14により適切に当接させることができる。なお、
図9および
図10では、実施例と同様の構成は同じ符号を付してある。
【0039】
(2)インストルメントパネル側にロック機構を配設してもよい。グローブボックス等の動く側は、固定側に対して回動する構成に限定されず、例えば前後方向等にスライドさせる進退移動であってもよい。
(3)グローブボックスに限定されず、コンソールボックスのリッド、灰皿やカップホルダー等のその他のものに前記ロック機構は適用可能である。
(4)ロック部材、付勢手段および操作手段からなる移動規制する機構は、実施例の構成に限定されず、ロック部材を1本とする等、種々の変更が可能である。