【実施例1】
【0024】
以下、本発明の具体的実施例を説明する。
図2(a)は、カルテ情報共有機関が管理する個人情報の一例を示す。患者IDには、当該患者のメイルアドレスを用いている。この患者IDの下に、氏名や生年月日、性別、住所などの、個人を特定するための情報が記録されている。
図2(b)では、カルテ情報地域共有サーバー内の記録形態の一例を示す。患者IDには、前記当該患者のメイルアドレスが記録されている。次のカルテ情報共有機関IDは、当該共有カルテ情報を提供したカルテ情報共有機関のIDを示し、患者IDと同様にメイルアドレスを用いている。その後、共有カルテ情報の作成日時、その内容などが記録されている。
【0025】
共有カルテ情報の閲覧の際は、
図2(a)に示す当該カルテ情報共有機関内で管理されている個人情報のリストを下に、閲覧したい患者を選び、当該患者IDをカルテ情報地域共有サーバーに送信する。これを受信したカルテ情報地域共有サーバーは、
図2(b)に示されるような共有カルテ情報を検索し、当該患者IDと一致する記録を抽出し(要求共有カルテ情報抽出手段)、要求元のカルテ情報共有機関に送信する(要求共有カルテ情報送信手段)。
【0026】
ここで、
図2(a)に示すような個人情報のリストは、物理的に当該カルテ情報共有機関内のPCなどに記録管理されても良いし、院内LANのサーバー、或いはクラウド上の記録媒体に記録管理されても良いが、いずれにしても、カルテ情報地域共有サーバーとは別のセキュリティで保護しておき、個人情報と、それを除外している共有カルテ情報の両者のセキュリティが同時に破られることが無いようにしておくことが望ましい。
【0027】
図3では、同一患者IDを共有しているカルテ情報共有機関どうしは、自らの提供した共有カルテ情報はもちろんであるが、他のカルテ情報共有機関の提供した当該患者の共有カルテ情報も閲覧できることを示す。逆に言えば、自らの患者ID管理手段に登録されていない患者に関しては、その存在自体が見えない。
【0028】
共有カルテ情報の提供の際は、まず当該患者IDが既に患者ID管理手段に登録されていれば、その患者IDを用い、未登録であれば、患者IDとなるメイルアドレスを始めとする
図2(a)の内容を登録した後、当該患者IDを用いる。自らの管理するカルテから、共有すべき共有カルテ情報を抽出、作成するが(共有カルテ情報作成手段)、
図2(a)に示すような、個人が特定される情報は全て削除ないし含まれないように配慮する。作成された当該共有カルテ情報を、当該患者IDとともに、通信回線を介して前記カルテ情報地域共有サーバーに送信する(共有カルテ情報送信手段)。さらに、希望する患者については、患者IDとして用いられているメイルアドレス宛に、共有カルテ情報を送信する(共有カルテ情報患者メイル送信手段)。
共有カルテ情報は、電子カルテから電子的かつ論理的に抽出されたものだけでなく、電子カルテ画面の画面ショット、紙カルテの撮影ないしスキャンイメージでも良い。このようにすることで、院内LANからなる電子カルテを装備した大病院だけでなく、PC一台の診療所、手書きのカルテを使用しているところでも、カルテ情報地域共有システムへの参加が可能である。
【0029】
このように、個人情報は全てカルテ情報共有機関内に留め、カルテ情報地域共有サーバーには、個人情報を除去した共有カルテ情報のみが記録される。カルテ情報共有機関内の個人情報と、個人情報を除去したカルテ情報地域共有サーバー内共有カルテ情報とは、患者IDのみでリンクすることとなる。この患者個人情報と個人情報以外の共有カルテ情報を分離して記録、管理する構成をとることにより、万一カルテ情報地域共有サーバーのセキュリティが破られたとしても、内部には個人情報を除去した共有カルテ情報しか存在しないので、個々のカルテ情報共有機関が管理する患者ID管理手段のセキュリティも同時に破られない限り、個人情報の大量流出は起こりえない。
カルテ情報地域共有サーバー内の患者IDやカルテ情報共有機関IDの欄には、当該メイルアドレスを基にしたハッシュ関数、或いは同様な暗号化処理を行った数値や文字列を記入しておくと、より匿名化が進み、さらに安全となる。
【0030】
患者IDはメイルアドレスとしている。これは、メイルアドレスは、世界に一つしかない一意的な文字列であることが保障されているためである。既に大多数の国民がメイルアドレスを有している現状では、これを利用することが最も実用的である。さらに、前記共有カルテ情報患者メイル送信手段のように、患者に共有カルテ情報を直接送信することがきわめて容易となる。一般論として、一意的であればID足りうるのであるが、もし数値などのID番号で管理しようとすると、複数の医療機関にわたって同一のID番号が他の患者に使用されていないかどうかを確認する必要があり、大変な手間とコストを要する。URLを用いることも可能であるが、同様に管理が大変であり、患者への直接送信手段とならないので、好ましいとは言えない。
【0031】
現在、メイルアドレスの取得は、きわめて安価ないし無料となっている。もし、患者が自ら既に保有しているメイルアドレスの告知を拒否した場合には、一旦無料のメイルサービスプロバイダーでメイルアドレスを取得して患者IDとし、患者は、後で当該無料メイルアドレスに、自らが既に保有しているメイルアドレスにメイルを転送する設定を行えば良い。
【0032】
患者IDとしてメイルアドレスを用いると、カルテ情報を共有する医療機関の範囲を、患者自身が制御することが出来る。通常は同じメイルアドレスを医療機関に告知するが、他の医療機関に知られたくないような疾患の場合などは、その疾患で受診している医療機関には、通常とは別のメイルアドレスで登録すれば、当該カルテ情報は、当該メイルアドレスでのみ管理されるため、同じ患者であっても、別のメイルアドレスで管理されている他の医療機関からは一切参照することはできない。
【0033】
本発明のカルテ情報地域共有システムにおいては、種々の管理者やスタッフが関係する。
図4においては、それらの権限の階層構造を示している。各々は、IDとパスワードで認証され、予め与えられている権限の範囲で本システムに関与する。
認証は、ログインしてきたユーザーに対して、IDとパスワードの入力を要求する通常の認証でも良いし、よりセキュリティが求められる場合は、ICカードや生体識別などの技術を併用しても良い。さらには、使い捨てのパスワードを、IDで示されるメイルアドレスに送信し、画面からの入力を求める方法もある。
【0034】
最上位のカルテ情報地域共有システム統括管理者は、傘下のドメイン毎に、ドメイン管理者にドメイン管理IDと、それに付随する権限を付与する。また、ドメイン毎に使用できる上限の記録容量を割り当てたり、ドメインの合併、分離、或いは削除したりを行う。これらの手段は、
図2(b)のテーブルを、併合、或いはカルテ情報共有機関IDをグループに分け、各々のグループごとにテーブルを分割する、テーブル自体を削除するなどを行い、新たなドメイン管理者にドメイン管理IDと、それに付随する権限を付与することにより実行される。この機能により、気の合った医療機関だけで小規模のドメインからカルテ情報地域共有システムの利用を開始し、徐々に拡大、再編成してゆくことが容易となり、従来の運用上の交渉作業が軽減される。
【0035】
前記により権限を付与されたドメイン管理者は、ドメイン傘下のカルテ情報共有機関に対して、カルテ情報共有機関管理者を選定し、カルテ情報共有機関IDと、それに付随する権限を付与し、カルテ情報共有機関IDのリストを管理する。
前記により権限を付与されたカルテ情報共有機関管理者は、自院のスタッフに対して、スタッフIDと、それに付随する権限を付与する。スタッフは、自らに付与された権限に基づいて、カルテ情報を共有すべき患者のID作成と、患者IDごとに個人情報の作成、管理を行う。さらに、共有カルテ情報を作成し、カルテ情報地域共有サーバーに送信する。業務上の必要に応じて、他医療機関から提供されている当該患者の共有カルテ情報を閲覧する。また、不要となった共有カルテ情報や患者IDの削除を行う。
【0036】
患者は、共有を認めたカルテ情報共有機関に対して、メイルアドレスを告知し、或いは新規作成を許可し、自らの患者IDを管理する。また、カルテ情報地域共有サーバーにアクセスして自らのカルテを参照したり、自らの携帯電話に共有カルテ情報を受信したり、場合によっては、共有カルテ情報に対するコメントを作成、送信する。
このように、それぞれのレベルのユーザーは、カルテ情報地域共有サーバーにアクセスしてIDとパスワードを入力して認証を受け、自らに付与されている権限に基づいて作業を行う。当然ながら、全ユーザーについてのIDとパスワード、付与された権限のリストがカルテ情報地域共有サーバー内に管理されており、アクセスしてきたユーザーに対して認証を行う。
【0037】
この種のシステムでは、もはや参照されることの無くなった不要な患者データが増大し、記録容量の増大から来るコスト増に直結する。本発明では、望ましい形態として、記録容量の不必要な増加を避けるため、ドメインごとに使用記憶容量の上限を指定するドメイン毎使用記憶容量制限手段を備えている。これにより、使用記録容量の無秩序な増大が避けられる。
【0038】
ドメイン管理者は、自分のドメインに割り当てられた記録容量の範囲で運用するため、カルテ情報共有機関ごとの記録容量の上限を管理するカルテ情報共有機関毎使用記憶容量制限手段を用い、傘下の各カルテ情報共有機関が無秩序に記録容量を浪費しないよう管理することが出来る。
【0039】
カルテ情報共有機関管理者は、自院スタッフに指示して、共有の必要性が乏しくなった自院提供の共有カルテ情報、或いは患者IDそのものを削除し、自院に割り当てられたカルテ情報共有機関毎使用記憶容量の制限を越えないようにすることが出来る。共有カルテ情報は削除しても、自院内には、オリジナルのカルテ情報が記録管理されているため、一部を抽出した共有カルテ情報を削除しても、問題はない。
【0040】
以上、医療機関を例にとり実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、介護、福祉機関、さらにはそれらの組み合わせについても本発明に含まれる。また発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。