特許第5965730号(P5965730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965730液晶滴下工法用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965730
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】液晶滴下工法用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-126575(P2012-126575)
(22)【出願日】2012年6月1日
(65)【公開番号】特開2013-11881(P2013-11881A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-125416(P2011-125416)
(32)【優先日】2011年6月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 秀幸
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−121069(JP,A)
【文献】 特開2003−020339(JP,A)
【文献】 特開2003−193017(JP,A)
【文献】 特開2005−232369(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/040209(WO,A1)
【文献】 特開2007−249017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、光塩基発生剤とを含有し、
前記光塩基発生剤は、活性エネルギー線の照射によりアミン化合物を生成し、前記生成するアミン化合物が、1級アミン又は2級アミンであることを特徴とする液晶滴下工法用シール剤。
【請求項2】
硬化性樹脂は、エポキシ基を有する樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項3】
硬化性樹脂は、更に、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂を含有することを特徴とする請求項記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項4】
更に、ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項5】
ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤であることを特徴とする請求項記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の液晶滴下工法用シール剤と導電性微粒子とを含有することを特徴とする上下導通材料。
【請求項7】
請求項1、2、3、4又は5記載の液晶滴下工法用シール剤及び/又は請求項記載の上下導通材料を用いてなることを特徴とする液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れ、液晶汚染を引き起こすことがほとんどない液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示装置の製造方法は、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、従来の真空注入方式から、例えば、特許文献1、2に開示されているような光硬化性の(メタ)アクリル樹脂と光重合開始剤、及び、熱硬化性のエポキシ樹脂と熱重合開始剤を含有する、光、熱併用硬化型の樹脂組成物からなるシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式にかわりつつある。
【0003】
光、熱併用硬化型の樹脂組成物からなるシール剤を用いた滴下工法では、まず、2枚の電極付き基板の一方にシールパターンを形成する。次いで、シール剤未硬化の状態で液晶の微小滴を基板の枠内に滴下し、真空下で他方の基板を重ね合わせ、シール部に光を照射して(メタ)アクリル樹脂等の光硬化性の樹脂の硬化を行う(仮硬化工程)。その後、加熱してエポキシ樹脂等の熱硬化性の樹脂の硬化を行い、液晶表示パネルを作製する。
【0004】
滴下工法に用いられるシール剤には、通常、熱硬化性の樹脂を硬化させるために熱硬化剤が用いられる。通常、熱硬化剤としては、シール剤のポットライフを長くして保存安定性を向上させるために、常温固形のものが用いられる。しかしながら、常温固形の熱硬化剤を用いた場合でも、該熱硬化剤と硬化性樹脂との接触面において反応が進行し、シール剤のポットライフが低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−133794号公報
【特許文献2】特開平5−295087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、保存安定性に優れ、液晶汚染を引き起こすことがほとんどない液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬化性樹脂と光塩基発生剤とを含有する液晶表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、熱硬化剤の代わりに熱的に安定な光塩基発生剤を用いることで、保存中における反応の進行を抑制することができ、かつ、活性エネルギー線を照射することにより充分に硬化させることができる液晶表示素子用シール剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、光塩基発生剤を含有する。
上記光塩基発生剤とは、紫外線、電子線、X線、赤外線、可視光線等の活性エネルギー線の作用により塩基を発生する物質であり、より具体的には、活性エネルギー線の照射により脱炭酸して分解する有機酸と塩基との塩、活性エネルギー線の照射による分子内求核置換反応や転位反応等により分解してアミン化合物を生成する化合物、及び、活性エネルギー線の照射により何らかの化学反応を起こして塩基を放出するものの総称である。
【0010】
上記光塩基発生剤は、感光領域が254〜420nmであることが好ましい。上記感光領域が254〜420nmであることにより、汎用されている超高圧水銀ランプを用いて充分に反応させることができる。
【0011】
上記光塩基発生剤としては、例えば、ニトロベンジル系、コバルトアミン錯体系、アルキルアミン塩系、ホルムアミド系、アミンイミド誘導体系、4級アンモニウム塩系、O−アシルオキシム系、ベンジルオキシカルボニル誘導体系、N−メチルナフィジピン系等の光塩基発生剤が挙げられる。なかでも、活性エネルギー線の照射によりアミン化合物を生成する光塩基発生剤が好ましい。
【0012】
上記光塩基発生剤としては、具体的には例えば、下記式(1−1)〜(1−9)で表される化合物等が挙げられる。
【0013】
【化1】
【0014】
また、上記光塩基発生剤として、例えば、下記式(2−1)〜(2−6)で表される化合物を用いることもできる。
【0015】
【化2】
上記式(2−1)〜(2−6)中、R及びRは、下記式(3)で表される置換基である。
【0016】
【化3】
【0017】
上記式(3)中、Arは、下記式(4−1)〜(4−6)で表される置換基であり、R及びRは、それぞれ独立し、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
上記式(3)で表される置換基としては、具体的には例えば、下記式(5−1)〜(5−3)で表される置換基等が挙げられる。
【0018】
【化4】
上記式(4−2)、中、R〜R13は、それぞれ独立し、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
上記式(4−3)中、R14〜R20は、それぞれ独立し、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
上記式(4−4)中、R21〜R29は、それぞれ独立し、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
上記式(4−5)中、R30及びR31は、それぞれ独立し、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R32は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は、炭素数1〜10のアルキルカルボニル基を表し、nは、0〜7の整数を表す。
上記式(4−6)中、R33〜R36は、それぞれ独立し、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0019】
【化5】
【0020】
上記式(2−1)〜(2−6)で表される化合物の中でも、下記式(6−1)〜(6−6)で表される化合物が好適である。
【0021】
【化6】
【0022】
上記アミン化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、メチレンジアミン等の1級脂肪族アミンや、1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン等の2級脂肪族アミンや、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等の3級アミンが挙げられる。
しかしながら、アミン化合物として3級アミンを生成する光塩基発生剤を用いる場合、3級アミンと硬化性樹脂とがアニオン重合的に反応し、硬化性樹脂中に3級アミンが取り込まれずに液晶を汚染することがある。そのため、活性エネルギー線の照射により1級アミン又は2級アミンを生成する光塩基発生剤を用いることが好ましく、1級アミンを生成する光塩基発生剤を用いることがより好ましい。
【0023】
上記光塩基発生剤の含有量は特に限定されないが、硬化性樹脂100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。上記光塩基発生剤の含有量が1重量部未満であると、得られるシール剤を充分に硬化させることができないことがある。上記光塩基発生剤の含有量が20重量部を超えると、分解物が液晶汚染の原因となることがある。上記光塩基発生剤の含有量のより好ましい下限は2重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0024】
本発明の液晶表示素子用シール剤は硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂はエポキシ基を有する樹脂を含有することが好ましい。
上記エポキシ基を有する樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0025】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピコート828EL、エピコート1004(いずれも三菱化学社製)、エピクロン850−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピコート806、エピコート4004(いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、RE−810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピコートYX−4000H(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−50TE(新日鐵化学社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−80DE(新日鐵化学社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP4032、エピクロンEXA−4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−670−EXP−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、NC−3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ESN−165S(新日鐵化学社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピコート630(三菱化学社製)、エピクロン430(DIC社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ZX−1542(新日鐵化学社製)、エピクロン726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YR−450、YR−207(いずれも新日鐵化学社製)、エポリードPB(ダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR(いずれも新日鐵化学社製)、XAC4151(旭化成社製)、エピコート1031、エピコート1032(いずれも三菱化学社製)、EXA−7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0026】
上記硬化性樹脂は、更に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂を含有してもよい。上記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレート、イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において上記(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を意味し、上記(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味し、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。また、本明細書において上記エポキシ(メタ)アクリレートとは、エポキシ樹脂中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0027】
上記(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物は特に限定されず、単官能のものとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
【0028】
また、2官能のものとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
また、3官能以上のものとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。
【0031】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、上述したエポキシ樹脂と同様のものが挙げられる。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレートは、具体的には、例えば、レゾルシノール型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製、「EX−201」)360重量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール2重量部、反応触媒としてトリエチルアミン2重量部、及び、アクリル酸210重量部を、空気を送り込みながら90℃で還流攪拌し、5時間反応させることによって得ることができる。
【0033】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYLRDX63182(いずれもダイセルサイテック社製)、EA−1010、EA−1020、EA−5323、EA−5520、EA−CHD、EMA−1020(いずれも新中村化学工業社製)、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)、デナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314、デナコールアクリレートDA−911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0034】
上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、2つのイソシアネート基を有する化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0035】
上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネートは特に限定されず、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイオシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,10−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
また、上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネートは特に限定されず、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、(ポリ)プロピレングリコール、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネートとの反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
【0037】
上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートの原料となる、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体は特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の市販品やエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートは、具体的には、例えば、トリメチロールプロパン134重量部、重合禁止剤としてBHT0.2重量部、反応触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.01重量部、イソホロンジイソシアネート666重量部を加え、60℃で還流攪拌しながら2時間反応させ、次に、2−ヒドロキシエチルアクリレート51重量部を加え、空気を送り込みながら90℃で還流攪拌し、2時間反応させることにより得ることができる。
【0039】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、M−1100、M−1200、M−1210、M−1600(いずれも東亞合成社製)、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL8804、EBECRYL8803、EBECRYL8807、EBECRYL9260、EBECRYL1290、EBECRYL5129、EBECRYL4842、EBECRYL210、EBECRYL4827、EBECRYL6700、EBECRYL220、EBECRYL2220(いずれもダイセルサイテック社製)、アートレジンUN−9000H、アートレジンUN−9000A、アートレジンUN−7100、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−330、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−1200TPK、アートレジンSH−500B(いずれも根上工業社製)、U−2HA、U−2PHA、U−3HA、U−4HA、U−6H、U−6LPA、U−6HA、U−10H、U−15HA、U−122A、U−122P、U−108、U−108A、U−324A、U−340A、U−340P、U−1084A、U−2061BA、UA−340P、UA−4100、UA−4000、UA−4200、UA−4400、UA−5201P、UA−7100、UA−7200、UA−W2A(いずれも新中村化学工業社製)、AI−600、AH−600、AT−600、UA−101I、UA−101T、UA−306H、UA−306I、UA−306T(いずれも共栄社化学社製)等が挙げられる。
【0040】
上記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂の50重量%以上は、1分子中に少なくとも1つのOH基を有する化合物である。上記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂の50重量%以上が1分子中に少なくとも1つのOH基を有する化合物であることにより、シール剤の液晶への溶出を抑制することができる。
上記1分子中に少なくとも1つのOH基を有する化合物としては、合成の容易さ等からエポキシ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
また、上記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂は、反応性の高さから分子中に(メタ)アクロイルオキシ基を2〜3個有するものが好ましい。
【0041】
また、上記硬化性樹脂は、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する樹脂を含有してもよい。このような化合物としては、例えば、2以上のエポキシ基を有する化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、上記硬化性樹脂は、上記1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する樹脂のみを含有するものであってもよい。
【0042】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。具体的には、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂N−770(DIC社製)190gをトルエン500mLに溶解させ、この溶液にトリフェニルホスフィン0.1gを加え、均一な溶液とし、この溶液にアクリル酸35gを還流撹拌下にて2時間滴下した後、更に還流撹拌を6時間行い、次に、トルエンを除去することによって50モル%のエポキシ基がアクリル酸と反応した部分アクリル変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂を得ることができる(この場合50%部分アクリル変性されている)。
【0043】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂のうち、市販されているものとしては、例えば、UVACURE1561(ダイセルサイテック社製)が挙げられる。
【0044】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂の(メタ)アクリロイルオキシ基とエポキシ基との比をモル比で50:50〜95:5とすることが好ましい。
【0045】
本発明の液晶表示素子用シール剤はラジカル重合開始剤を含有することが好ましく、光ラジカル重合開始剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤を含有することがより好ましい。
【0046】
上記ラジカル重合開始剤のうち、光によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤は特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等を好適に用いることができる。
また、上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACUREOXE01、ルシリンTPO(いずれもBASF Japan社製)、ベンソインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(以上、いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。なかでも吸収波長域が広いことから、IRGACURE651、IRGACURE907、ベンゾインイソプロピルエーテル、及び、ルシリンTPOが好適である。これらの光ラジカル重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記ラジカル重合開始剤のうち、熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤は特に限定されず、過酸化物やアゾ化合物が挙げられ、市販されているものとしては、例えば、パーブチルO、パーヘキシルO、パーブチルPV(いずれも日油社製)、V−30、V−501、V−601、VPE−0201(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
【0048】
上記ラジカル重合開始剤の含有量は特に限定されないが、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記ラジカル重合開始剤の含有量が0.01重量部未満であると、得られるシール剤を充分に硬化させることができないことがある。上記ラジカル重合開始剤の含有量が10重量部を超えると、得られるシール剤が保存安定性に劣るものとなることがある。
【0049】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、保存安定性の観点から熱硬化剤を含有しないことが好ましいが、本発明の目的を阻害しない範囲において、熱硬化剤を含有してもよい。
上記熱硬化剤は特に限定されず、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、常温固形の有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
上記常温固形の有機酸ヒドラジドは特に限定されず、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられ、市販されているものとしては、例えば、SDH(日本ファインケム社製)、アミキュアVDH、アミキュアVDH−J、アミキュアUDH(いずれも、味の素ファインテクノ社製)、ADH(大塚化学社製)等が挙げられる。
【0050】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されないが、上記硬化性樹脂100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記熱硬化剤の含有量が1重量部未満であると、熱硬化剤を含有させる効果がほとんど得られない。上記熱硬化剤の含有量が10重量部を超えると、得られるシール剤が保存安定性に劣るものとなることがある。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は5重量部である。
【0051】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度の調整、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善、硬化物の耐湿性の向上等を目的として充填剤を含有することが好ましい。上記充填剤は特に限定されず、例えば、タルク、石綿、シリカ、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、モンモリロナイト、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、窒化珪素、硫酸バリウム、石膏、珪酸カルシウム、セリサイト活性白土、窒化アルミニウム等の無機充填剤や、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等の有機充填剤が挙げられる。
【0052】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
上記シランカップリング剤は特に限定されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
【0053】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、粘度調整の為の反応性希釈剤、チクソ性を調整する揺変剤、パネルギャップ調整の為のポリマービーズ等のスペーサー、3−P−クロロフェニル−1,1−ジメチル尿素等の硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、その他添加剤等を含有してもよい。
【0054】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、上記硬化性樹脂と、上記光塩基発生剤と、必要に応じて添加するラジカル重合開始剤等とを混合する方法等が挙げられる。この際、含有するイオン性不純物を除去するために、イオン吸着性固体と接触させてもよい。
【0055】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、特に液晶滴下工法用のシール剤として用いることが好ましい。
【0056】
本発明の液晶表示素子用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0057】
上記導電性微粒子は特に限定されず、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0058】
本発明の液晶表示素子用シール剤及び/又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【0059】
本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、例えば、ITO薄膜等の2枚の電極付き透明基板の一方に、本発明の液晶表示素子用シール剤等をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により長方形状のシールパターンを形成する工程、本発明の液晶表示素子用シール剤等が未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに他方の透明基板を重ねあわせる工程、及び、本発明の液晶表示素子用シール剤等のシールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を仮硬化させる工程、及び、仮硬化させたシール剤を加熱して本硬化させる工程を有する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、保存安定性に優れ、液晶汚染を引き起こすことがほとんどない液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0062】
(実施例1〜15、比較例1、2、及び、参考例1、2)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1〜15、比較例1、2、及び、参考例1、2のシール剤を調製した。
なお、表1、2中、「WPBG041」及び「WPBG042」は、いずれも和光純薬工業社製のアントラセン系誘導体系光塩基発生剤である。
【0063】
<評価>
実施例、比較例、及び、参考例で得られたシール剤について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0064】
(保存安定性)
実施例、比較例、及び、参考例で得られたそれぞれのシール剤を、23℃で4日保管したときの粘度と、製造直後の初期粘度とを測定し、(23℃、4日保管後の粘度)/(初期粘度)を粘度変化率(4日後)とし、粘度変化率(4日後)が1.05未満であるものを「◎」、1.05以上1.1未満であるものを「○」、1.1以上1.2未満であるものを「△」、1.2を超えるものを「×」として評価した。
なお、シール剤の粘度は、各シール剤を0.5g取り、E型粘度計(BROOK FIELD社製、「DV−III」)に入れ、25℃において回転速度1rpmで測定を行った。
【0065】
(液晶表示素子の表示性能(色むら評価))
実施例、比較例、及び、参考例で得られたそれぞれのシール剤100重量部にスペーサー微粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI−H050」、5μm)1重量部を分散させ、シリンジに充填し、遠心脱泡機(アワトロンAW−1)にて脱泡し、シリンジの吐出圧100〜400kPa、ノズルギャップ42μm、塗布速度60mm/sec、ノズル径が0.4mmφで2枚の配向膜及びITO付き基板の一方にディスペンサーで塗布した。
続いて液晶(チッソ社製、「JC−5004LA」)の微小滴をITO付き基板のシール剤の枠内全面に滴下塗布し、真空下でもう一方のITO付き基板を貼り合わせた。このときシール剤の線幅が約1.5mmになるようにそれぞれのシール剤に、吐出圧を調整した。貼り合わせ後直ぐにシール剤部分にメタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒照射して仮硬化した。次いで、120℃で1時間加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製した。
得られたそれぞれの液晶表示素子について、液晶表示素子作製直後におけるシール剤付近の液晶配向乱れを目視によって確認した。配向乱れは表示部の色むらより判断しており、色むらの程度に応じて、色むらが全くなかった場合は「◎」、色むらが微かにあった場合は「○」、色むらが少しあった場合は「△」、色むらがかなりあった場合は「×」として評価を行った。なお、評価が◎、○の液晶パネルは、実用に全く問題のないレベルである。
【0066】
(接着性)
実施例、比較例、及び、参考例で得られたそれぞれのシール剤をディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY−10E」)に充填し、脱泡処理を行ってから、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)にてガラス基板(150mm×150mm)の端から30mm内側四方にディスペンスし、別のガラス基板(110mm×110mm)を真空下で重ねて貼り合わせた。高圧水銀ランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒間照射してシール剤を仮硬化させ、次いで、120℃で1時間加熱してシール剤を熱硬化させ、接着試験片を得た。
得られた接着試験片の基板の端部を半径5mmの金属棒を使って5mm/minの速度で押し込んだときに、パネル剥がれが起こる際の強度(Kgf)を測定し、接着力(kg/cm)を算出した。接着力が12kg/cm以上であった場合を「◎」、接着力が8kg/cm以上12kg/cm未満であった場合を「○」、接着力が8kg/cm未満であった場合を「×」として接着性を評価した。
なお、参考例2のシール剤は接着試験片を作製することができなかったため接着性の評価を行わなかった。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、保存安定性に優れ、液晶汚染を引き起こすことがほとんどない液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。