(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の冷凍サイクル装置は、凝縮器から送出される冷媒で冷媒圧縮機の密閉容器の底部に貯留される機油を冷却する機油冷却機構を備えることを主な特徴とする。本発明の冷凍サイクル装置は、冷蔵庫、冷凍機、ヒートポンプ式給湯機、空気調和機等に適用することができる。以下では、この冷凍サイクル装置を空気調和機に適用することを想定して本発明の第1実施形態から第4実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1は、圧縮機1、凝縮器18、減圧装置19(膨張弁)及び蒸発器20が順次に配管31、配管32(32a,32b)、配管33、及び配管34を介して環状に接続されて冷媒のサイクル流路を構成している。
なお、配管31は、凝縮器18の入口配管に相当し、配管32aは、凝縮器18の出口配管に相当し、配管33は、蒸発器20の入口配管に相当し、配管34は、蒸発器20の出口配管に相当する。
また、冷凍サイクル装置A1は、機油冷却機構15を更に備え、この機油冷却機構15については、圧縮機1と共に後に詳しく説明する。
ちなみに、本実施形態では、作動流体(冷媒)としてHFC32(ジフルオロメタン(R32))を使用することを想定し、機油(冷凍機油)として、HFC32に対して良好な相溶性を示すポリオールエステル系油又はポリビニルエーテル系油を使用することを想定している。
【0012】
例えば、冷房運転時の空気調和機としての冷凍サイクル装置A1においては、圧縮機1で圧縮された高温高圧の冷媒(ホットガス)は、圧縮機1の吐出管2e及び配管31を介して凝縮器18(室外熱交換器)に流入し、空気との熱交換により放熱して凝縮する。その後、冷媒は、配管32の延在途中に設けられた、後に詳しく説明する機油冷却機構15を介して減圧装置19に供給される。そして、冷媒は、減圧装置19を通過する際に等エンタルピ膨張し、低温低圧でガス冷媒と液冷媒とが混在した気液二相流となる。この気液二相流となった冷媒は、配管33を介して蒸発器20(室内熱交換器)へ流入する。
【0013】
蒸発器20での液冷媒は、図示しない冷媒管及びこれらに取り付けられたフィンを通して空気からの吸熱作用によりガス冷媒に気化する。つまり、液冷媒が気化する際に蒸発器20が周囲の空気を冷却することで冷凍サイクル装置A1は、冷房機能を発揮する。次いで、蒸発器20を出た冷媒は、配管34を介して圧縮機1の吸込管2dに吸入される。そして、冷媒は、圧縮機1で高温高圧に圧縮されると共に、再び圧縮機1の吐出管2eから吐出されて前記のサイクル流路を循環する。
ちなみに、暖房運転時の冷凍サイクル装置A1においては、図示しない四方弁が切り替えられることによって、吐出管2eから吐出される冷媒(ホットガス)は、冷房運転時とは逆のサイクル流路を流れることとなる。つまり、室内熱交換器が凝縮器18となり、室外熱交換器が蒸発器20となる。
なお、
図1中、符号15aは、機油冷却機構15を構成する略環状の管体であり、符号15bは、機油冷却機構15を構成する第1接続配管であり、符号15cは、機油冷却機構15を構成する第2接続配管である。
【0014】
<圧縮機>
次に、圧縮機1について説明する。
図2は、
図1の冷凍サイクル装置を構成する圧縮機の縦断面図である。
図3は、
図2の圧縮機における圧縮機構部の拡大断面図である。
図2に示すように、本実施形態での圧縮機1は、高圧チャンバ方式の密閉型スクロール圧縮機で構成され、広範囲にわたる運転条件の下で使用される。
【0015】
圧縮機1は、旋回スクロール6及び固定スクロール5からなる圧縮機構部3と、この圧縮機構部3を駆動する電動機部4と、この圧縮機構部3と電動機部4を収納する密閉容器2を備えている。
【0016】
密閉容器2内の上部には圧縮機構部3が、下部には電動機部4が配置されている。そして、密閉容器2の底部には機油13(潤滑油)が貯留されている。
密閉容器2は、円筒状のケース2aに蓋チャンバ2bと底チャンバ2cが上下に溶接されて構成されている。蓋チャンバ2bには吸込管2dが設けられ、ケース2aの側面には吐出管2eが設けられている。密閉容器2の内部は吐出圧室2fとなる。
【0017】
圧縮機構部3は、固定スクロール5と、旋回スクロール6と、固定スクロール5にボルト等の締結具で締結されて旋回スクロール6を支持するフレーム9と、を備えて構成されている。
固定スクロール5には、相対向して旋回スクロール6が旋回自在に配置されており、両者によって、吸込室10と圧縮室11が形成されている。
【0018】
フレーム9は、その外周側が溶接によって密閉容器2の内壁面に固定されており、クランク軸7を回転自在に支持する主軸受9aを備えている。旋回スクロール6の下面側に、クランク軸7の偏心部7bが連結されている。
【0019】
旋回スクロール6の下面側とフレーム9の間には、オルダムリング12が配置されており、オルダムリング12は旋回スクロール6の下面側に形成された溝とフレーム9に形成された溝に装着されている。このオルダムリング12は、旋回スクロール6を自転することなく、クランク軸7の偏心部7bの偏心回転を受けて公転運動をさせる働きをする。
【0020】
電動機部4は、ステータ4a及びロータ4bを備えている。ステータ4aは密閉容器2に圧入、溶接等により固定されている。ロータ4bはステータ4a内に回転可能に配置されている。ロータ4bにはクランク軸7が固定されている。
【0021】
クランク軸7は、前記のように、主軸7aと偏心部7bとを備えて構成されており、フレーム9に設けた主軸受9aと下軸受17とで支持されている。偏心部7bはクランク軸7の主軸7aに対して偏心して一体に形成されており、旋回スクロール6の背面に設けた旋回軸受6aに嵌合されている。クランク軸7は電動機部4によって駆動され、偏心部7bは主軸7aに対して偏心回転運動し、旋回スクロール6を旋回運動させるようになっている。また、クランク軸7には、主軸受9a、下軸受17及び旋回軸受6aへ機油13を導く給油通路7cが設けられ、電動機部4側の軸端に機油13を吸い上げて給油通路7cに導く給油管7dが装着されている。
【0022】
ガス冷媒は、電動機部4で駆動されるクランク軸7を介して旋回スクロール6が旋回運動すると、吸込管2dから旋回スクロール6及び固定スクロール5により形成される圧縮室11に導かれる。そして、ガス冷媒は、旋回スクロール6と固定スクロール5との間で中心方向に移動するに従って容積を縮小して圧縮される。圧縮されたガス冷媒は固定スクロール5の略中央に設けられた吐出口5eから密閉容器2内の吐出圧室2fへ吐出され、吐出管2eから外部へと流出していく。
【0023】
次に、背圧室14の圧力調整機構である背圧制御弁16について説明する。
図3に示すように、固定スクロール5には、ばね収納穴5fが形成されている。また、ばね収納穴5fの背圧室14側に貫通穴5gが形成されている。また、ばね収納穴5fと圧縮室11とは連通穴5bを介して連通している。ばね収納穴5fには貫通穴5gを塞ぐように弁体16cが、ばね16dによって押付けられている。ばね16dはシール部材16eに取り付けられている。そして、シール部材16eは、ばね収納穴5fと吐出圧室2fを区画するように固定スクロール5に圧入されている。
なお、
図3中、符号1は圧縮機であり、符号6は旋回スクロールであり、符号6aは旋回軸受であり、符号7はクランク軸であり、符号7cは給油通路であり、符号9はフレームであり、符号9aは主軸受であり、符号12はオルダムリングである。
【0024】
次に、背圧制御弁16の動作について説明する。
再び
図2に戻って、密閉容器2の底部に溜められた機油13は密閉容器2と背圧室14の圧力差により給油管7dと給油通路7cを通って各軸受部に給油される。主軸受9aと旋回軸受6aに給油された機油13は背圧室14に入り、ここで機油13内に溶け込んでいた冷媒が発泡し背圧室14の圧力を上昇させる。次に
図3を参照して、背圧室14とばね収納穴5fの圧力差がばね16dの押付力より勝ると弁体16cが開く。これにより、背圧室14内の機油13は連通穴5bから溝5aを通って圧縮室11に供給される。溝5aと圧縮室11が連通している間の圧縮室11内圧力はあまり上昇しない区間である。ちなみに、背圧室14の圧力は、おおよそ吸込圧力に所定の値(ばね16dのばね力によって決まる一定値)を加えた程度の値となる。
【0025】
<機油冷却機構>
次に、機油冷却機構15について説明する。
図4は、一部に切欠き部を含む圧縮機の部分拡大斜視図であり、冷凍サイクル装置の機油冷却機構の構成説明図である。
【0026】
図4に示すように、機油冷却機構15は、円筒状のケース2aの下部でケース2aの内周面に沿って延在する略環状の管体15aを備えている。この管体15aの両端には、第1接続配管15b及び第2接続配管15cが設けられている。これらの第1接続配管15b及び第2接続配管15cは、それぞれ底チャンバ2cを貫通して密閉容器2の外側にそれらの先端開口を臨ませている。
管体15aは、密閉容器2の底部に貯留された機油13(
図1参照)に浸漬されている。なお、管体15aは、密閉容器2内で延在する略全長が機油13に侵漬されているものであっても、また延在する一部が機油13に侵漬されているものであってもよい。
なお、
図4中、符号4aはステータであり、符号4bはロータであり、符号7はクランク軸である。
【0027】
再び
図1に戻って、機油冷却機構15は、前記したように、凝縮器18から送出される冷媒を減圧装置19に供給する配管32の延在途中に介在するように配置される。つまり、配管32が延在途中で2分された上流側の配管32aに機油冷却機構15の第1接続配管15bが接続され、下流側の配管32bに機油冷却機構15の第2接続配管15cが接続される。これにより、凝縮器18から送出される冷媒は、機油冷却機構15の管体15aを通流した後に、減圧装置19に供給されることとなる。冷媒が通流する管体15aは、密閉容器2の底部に貯留される機油13を冷却するオイルクーラーパイプを構成している。
【0028】
次に、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1の作用効果について説明する。
冷凍サイクル装置A1に作動流体(冷媒)として使用される前記のHFC32の断熱指数は、空気調和機の冷媒として広く使用されているR410Aの断熱指数よりも大きい。
【0029】
図5は、R32(HFC32)及びR410Aにおける、圧力比に対する理論吐出ガス温度の関係を示すグラフである。
図5に示すように、吸込圧力と吐出圧力との圧力比が高くなるほど吐出ガス温度は上昇する。そして、HFC32の吐出ガス温度は、R410Aよりも大きい。
よって、HFC32を冷媒として使用する冷凍サイクル装置A1は、R410Aを冷媒として使用するものよりも、圧縮機1の吐出ガス温度が高くなる。したがって、HFC32を冷媒として使用すると、R410Aを冷媒として使用するものよりも、圧縮機1の電動機部4における樹脂部品等の劣化が進行し易い。これに対して、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1では、密閉容器2の底部に貯留される機油13を冷却することで吐出ガス温度を低下させる構成となっている。
【0030】
更に詳しく説明すると、
図1に示す圧縮機1の吐出管2eから吐出される高温高圧の冷媒は、凝縮器18に供給される。この冷媒は、凝縮器18にて放熱して凝縮すると、凝縮温度よりも5℃から10℃低い液冷媒となる。そして、凝縮器18から送出される液冷媒は、圧縮機1の下部から機油冷却機構15の管体15aを通流して減圧装置19に向かう。この際、管体15aは、密閉容器2の底部に貯留される機油13に浸漬されているので、管体15aを通流する液冷媒は、機油13を冷却する。
【0031】
一方、冷却された機油13は、クランク軸7の給油通路7cにより吸い上げられて、主軸受9a、旋回軸受6a等に供給される。これにより、主軸受9a、旋回軸受6a等を介して旋回スクロール6及び固定スクロール5が冷却されることで、吐出ガス温度が低下する。また、圧縮室11内では、機油13の顕熱による冷媒の冷却効果によっても吐出ガス温度が低下する。
【0032】
そして、機油冷却機構15の管体15aから減圧装置19に送出された冷媒は、この減圧装置19によって減圧されて低温低圧の冷媒となる。その後、冷媒は、蒸発器20で吸熱して気化する。そして冷媒は、再び圧縮機1に吸い込まれ、圧縮されることでサイクル流路を循環する。
【0033】
一般に、機油に溶け込む冷媒溶解量は、吐出ガス温度が上昇すると減少する。
図6は、ポリオールエステル系機油に対するR32(HFC32)の冷媒溶解量比と吐出ガス温度との関係を示すグラフである。なお、
図6中、縦軸の冷媒溶解量比は、吐出ガス温度86℃における冷媒溶解量を「1」とした比率を表している。
【0034】
図6に示すように、吐出ガス温度が上昇すると、ポリオールエステル系機油に対するR32(HFC32)の溶解量が減少し(冷媒溶解量比が減少し)、背圧室14の圧力が低下する傾向にある。これに対して、本実施形態では、前記したように、吐出ガス温度を低下させることができるので、背圧室14の圧力低下を機油13抑制することができる。つまり、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1によれば、圧縮機1の吸込圧と背圧とのバランスを良好にし、固定スクロール5に対する旋回スクロール6の押圧力を適度に維持することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1によれば、吐出ガス温度が低下するので、圧縮機1の温度が低下する。次に、参照する
図7は、圧縮機の温度に対する電動機効率の関係を示すグラフである。
図7に示すように、圧縮機1の温度が低下すると、電動機効率が向上する。したがって、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1によれば、電動機効率が向上すると共に、吸気加熱損失が低減するので、圧縮機1への入力を低減することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1では、前記したように、凝縮器18から送出される、凝縮温度よりも5℃から10℃低い液冷媒で機油13を冷却する。これに対して、例えば、冷凍サイクル装置A1の外部から供給される冷却材を使用して機油13を冷却する装置を仮に想定すると、この装置では別途に前記の冷却材を循環させるための配管や熱交換器が必要となる。つまり、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1によれば、このような熱交換器等を設ける必要がないので、コンパクト化を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1では、液冷媒を使用して機油13を冷却するので、ガス冷媒よりも熱容量が大きく、機油冷却機構15での機油13の冷却効率が良好となる。
【0038】
一般に、機油13の温度が冷媒の二相分離温度を超えた場合には背圧室14への冷媒の供給量が低下する。これに対して、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1(特に、スクロール圧縮機を有するもの)によれば、機油13の温度を低下させるので、冷媒の吐出温度が高い場合であっても、機油13に対する所定の冷媒の溶解量を確保し、背圧室14への冷媒の供給量を良好に維持することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図8は、本発明の第2実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成説明図である。なお、本実施形態において前記第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0040】
図8に示すように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A2は、前記第1実施形態に係る冷凍サイクル装置A1(
図1参照)において、凝縮器18と機油冷却機構15とを接続する配管32aの延在途中に開閉弁22が設けられている。また、この冷凍サイクル装置A2においては、開閉弁22の上流側で配管32aから分岐すると共に、機油冷却機構15と減圧装置19とを接続する配管32bの延在途中に合流するように、配管32cが設けられている。そして、この配管32cの延在途中には、開閉弁21が設けられている。
なお、開閉弁21,22は、特許請求の範囲にいう「前記二方向に分岐した配管のいずれか一方に冷媒の流れる方向を切替える弁」に相当する。
【0041】
図8中、符号23は、圧縮機1の温度(例えば、圧縮機構部3(
図2参照)近傍の密閉容器2(
図2参照)の温度)、又は圧縮機1の吐出管2eの温度を検出する温度検出器(例えば、サーミスタ等)である。ちなみに、本実施形態での温度検出器23は、圧縮機1の温度を検出するように配置されている。符号24は、制御部である。この制御部24は、温度検出器23の出力する温度検出信号に基づいて、後記する手順に従って開閉弁21,22の開閉を制御するように構成されている。符号2dは、吸込管であり、符号2eは、吐出管であり、符号20は、蒸発器であり、符号31,33,34は、配管である。
【0042】
次に、制御部24の実行する手順について説明しつつ、この冷凍サイクル装置A2の動作について説明する。
制御部24は、温度検出器23の温度検出信号に基づいて圧縮機1の温度が、所定の閾値(例えば、100℃)以上になったと判断した場合には、開閉弁21を閉じて、開閉弁22を開く。これにより、圧縮機1から吐出される冷媒は、配管31、凝縮器18、配管32a(開閉弁22)、機油冷却機構15、配管32b、減圧装置19、配管33、蒸発器20、及び配管34を介して再び圧縮機1に戻る。
つまり、凝縮器18から送出される冷媒は、機油冷却機構15を通過することによって、密閉容器2の底部に貯留された機油13(
図2参照)を冷却する。
【0043】
また、制御部24は、温度検出器23の温度検出信号に基づいて圧縮機1の温度が、所定の閾値(例えば、100℃)よりも小さいと判断した場合には、開閉弁21を開いて、開閉弁22を閉じる。これにより、圧縮機1から吐出される冷媒は、配管31、凝縮器18、配管32a、配管32c(開閉弁21)、配管32b、減圧装置19、配管33、蒸発器20、及び配管34を介して再び圧縮機1に戻る。
つまり、凝縮器18から送出される冷媒は、機油冷却機構15を通過しない。よって、密閉容器2の底部に貯留された機油13(
図2参照)は、この冷媒によっては冷却されない。
【0044】
次に、この冷凍サイクル装置A2の作用効果について説明する。
図5に示すように、圧力比が大きくなるほど、つまり吸入圧力と吐出圧力の差が大きいほど、前記したように、HFC32を使用した圧縮機1は、R410Aを使用した圧縮機1よりも吐出ガス温度が高くなる。そして、HFC32を使用した空気調和機(冷凍サイクル装置A2)において、吐出ガス温度が高くなって、電動機部4の樹脂部品等の劣化が進行し易いのは、外気温が低く、室内の設定温度が高くなる暖房運転時である。
【0045】
そして、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A2では、圧縮機1の温度が所定の閾値(例えば、100℃)以上となった暖房運転時のみ、制御部24が開閉弁21を閉じて、開閉弁22を開くことによって、機油冷却機構15が機油13(
図2参照)を冷却することができる。つまり、この冷凍サイクル装置A2によれば、吐出ガス温度を低下させることで、電動機部4の樹脂部品等の劣化を防止することができる。また、前記したように、背圧室14の背圧の低下を抑制することができる。
【0046】
また、圧縮機1の温度が所定の閾値(例えば、100℃)よりも低くなる冷房運転時には、前記したように、機油冷却機構15は機油13を冷却しない設定とすることができる。
【0047】
次に参照する
図9は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A2のモリエル線図である。
図9中、符号SLは、飽和液線であり、符号SVは、飽和蒸気線であり、符号CPは臨界点である。
図9に示すように、冷凍サイクル装置A2の冷凍サイクルでは、IIからIIIの凝縮過程で、凝縮器18(室内熱交換器)では加熱能力Qhが得られる。そして、IIIからIII´の機油冷却機構15による機油13の冷却過程で、Qo分の熱量が冷媒に加えられる。その後、III´からIV´の絞り膨張(等エンタルピ膨張)過程を経る。次いで、IV´からIの蒸発過程で、蒸発器20では、冷凍能力Qcが得られる。つまり、暖房運転では、機油13の冷却によりQo分の熱量が冷媒に加えられても、加熱能力Qhは維持されて、凝縮器18(室内熱交換器)で加熱能力が低下することはない。
【0048】
これとは逆に、冷房運転時の冷凍サイクル装置A2では、前記したように、機油冷却機構15が機油13を冷却しない設定となっている。これにより、冷凍サイクル装置A2は、
図9に示すように、IIIからIII´の機油13の冷却過程が省略される。つまり、IIIからIVの絞り膨張(等エンタルピ膨張)過程、及びIVからIの蒸発過程で、蒸発器20の冷凍能力は、熱量Qo分を減少することがない所期の冷凍能力(Qo+Qc)を得ることができる。換言すれば、冷房運転時の冷凍サイクル装置A2では、減圧装置19の上流側での冷媒温度が上昇することがないので、冷房運転時の冷凍能力が低下しない。
【0049】
次に、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A2の第1変形例及び第2変形例について説明する。
図10は、本発明の第2実施形態に係る冷凍サイクル装置の第1変形例に係る冷凍サイクル装置の構成説明図、
図11は、第2実施形態に係る冷凍サイクル装置の第2変形例に係る冷凍サイクル装置の構成説明図である。
【0050】
図10に示すように、第1変形例に係る冷凍サイクル装置A2は、蒸発器20の下方に露受け皿26を備え、配管32bが、機油冷却機構15から露受け皿26を経由して減圧装置19に接続されている以外は、前記の第2実施形態に係る冷凍サイクル装置A2(
図8参照)と同様に構成されている。
【0051】
この第1変形例に係る冷凍サイクル装置A2においては、デフロスト運転に入ると、霜が融けた水滴が露受け皿26に落下し、再び氷結して露受け皿26の排出通路を塞ぐことがある。この際、第1変形例に係る冷凍サイクル装置A2によれば、配管32bを流れる冷媒の熱によって、水滴の氷結を防止して露受け皿26の排出通路を確保することができる。
【0052】
次に、第2変形例に係る冷凍サイクル装置A2について説明する。
図11に示すように、第2変形例に係る冷凍サイクル装置A2は、機油冷却機構15から延出した配管32bが、蒸発器20の冷媒出口近傍(冷媒出口寄り)で配管34と近接してから減圧装置19に向かうように配置されている以外は、前記の第2実施形態に係る冷凍サイクル装置A2(
図8参照)と同様に構成されている。
【0053】
この第2変形例に係る冷凍サイクル装置A2においては、蒸発器20内の配管の圧力損失によって蒸発器20の冷媒出口近傍が最も温度が低くなる。そのため、暖房運転時には、蒸発器20の冷媒出口近傍が起点となって霜が着いていく。この際、第2変形例に係る冷凍サイクル装置A2によれば、配管32bを流れる冷媒の熱によって、蒸発器20の出口近傍の温度を高めることができるので霜が着き難くなる。これにより、第2変形例に係る冷凍サイクル装置A2によれば、デフロスト運転の時間が短くなり、暖房能力を向上させることができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図12は、本発明の第3実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成説明図、
図13は、
図12の変形例に係る冷凍サイクル装置の構成説明図である。なお、本実施形態において前記第1実施形態及び前記第2実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0055】
図12に示すように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A3は、凝縮器18と減圧装置19とを接続する配管32の延在途中で分岐すると共に、機油冷却機構15の第1接続配管15bと接続される配管35aを備え、この配管35aには、流量調整弁25が配置されている。
また、この冷凍サイクル装置A3は、機油冷却機構15の第2接続配管15cにその一端が接続されて機油冷却機構15から延出するその他端が配管34に合流する配管35bを備えている。この第3実施形態における配管35bは、機油冷却機構15の戻り配管に相当する。
なお、
図12中、符号23は、圧縮機1の圧縮機構部3(
図2参照)近傍の密閉容器2(
図2参照)の温度を検出する温度検出器である。符号24は、制御部である。この制御部24は、温度検出器23の出力する温度検出信号に基づいて、後記する手順に従って流量調整弁25を制御することで配管35aを通流する冷媒の流量を調整するようになっている。符号2dは、吸込管であり、符号2eは、吐出管であり、符号20は、蒸発器であり、符号31,33は、配管である。
この冷凍サイクル装置A3においては、次に説明する制御部24の実行する手順によって、温度検出器23による検出温度が予め設定した所定の温度以上とならないように、流量調整弁25の開度が調整されるようになっている。
【0056】
次に、制御部24の実行する手順について説明しつつ、この冷凍サイクル装置A3の動作について説明する。
暖房運転時において、制御部24は、温度検出器23の温度検出信号に基づいて圧縮機1の温度が所定の閾値(例えば、100℃)以上になったと判断した場合には、流量調整弁25を第1の開度で開いて機油冷却機構15に対して液冷媒を通流させる。そして、機油冷却機構15において、機油13と熱交換して気化した冷媒は、蒸発器20の冷媒出口に接続される配管34と合流する。
【0057】
また、冷房運転時において、制御部24は、温度検出器23の温度検出信号に基づいて圧縮機1の温度が、所定の閾値(例えば、100℃)よりも小さいと判断した場合には、流量調整弁25を前記第1の開度よりも小さい第2の開度(例えば、全閉)とする。これにより、機油冷却機構15に対して通流する液冷媒の流量は低減され、又は液冷媒は遮断される。
【0058】
このような冷凍サイクル装置A3によれば、吐出ガス温度が高くなる暖房運転時においては、制御部24が第1の開度で流量調整弁25を開いて機油冷却機構15に対して液冷媒を通流させることにより機油13(
図2参照)を冷却することができる。つまり、この冷凍サイクル装置A3は、吐出ガス温度を低下させることで、圧縮機1の温度が、予め設定した所定の温度以上とならないように構成されている。
なお、ここでの「予め設定した所定の温度」は、電動機部4の樹脂部品等の劣化を防止することができる温度とすることができ、前記の所定の閾値(例えば、100℃)は、ここでの「予め設定した所定の温度」よりも小さい温度となるように設定される。
したがって、この冷凍サイクル装置A3によれば、電動機部4の樹脂部品等の劣化を防止することができる。また、前記したように、背圧室14の背圧の低下を抑制することができる。
【0059】
また、圧縮機1の温度が所定の閾値(例えば、100℃)よりも低くなる冷房運転時には、制御部24が流量調整弁25を第2の開度(例えば、全閉)とすることで、配管32から減圧装置19に供給される冷媒の流量が増大して、蒸発器20における冷凍能力の低下を抑制することができる。
【0060】
次に、前記の第3実施形態に係る冷凍サイクル装置A3の変形例について説明する。
図13は、
図12の変形例に係る冷凍サイクル装置の構成説明図である。
図13に示すように、変形例に係る冷凍サイクル装置A3は、配管35bの他端が、配管33に合流するように構成されている以外は、前記の第3実施形態に係る冷凍サイクル装置A3(
図12参照)と同様に構成されている。
この変形例に係る冷凍サイクル装置A3によっても、第3実施形態に係る冷凍サイクル装置A3と同様に、吐出ガス温度を低下させることができる。
【0061】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図14は、本発明の第4実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成説明図である。
図15は、本発明の第4実施形態に係る冷凍サイクル装置のモリエル線図である。なお、本実施形態において前記第1実施形態から第3実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0062】
図14に示すように、第4実施形態に係る冷凍サイクル装置A4は、凝縮器18から送出される冷媒を減圧装置19を介して機油冷却機構15に供給する配管35aを備えている。この配管35aは、減圧装置19と蒸発器20とを接続する配管33の延在途中でその一端が分岐し、その他端が機油冷却機構15の第2接続配管15cに接続されている。そして、この配管35aには、流量調整弁25が設けられている。
【0063】
また、冷凍サイクル装置A4は、機油冷却機構15の第1接続配管15bにその一端が接続され、その他端が配管34の延在途中に合流する配管35bを備えている。この配管35bは、機油冷却機構15の管体15aを通流した冷媒を、蒸発器20から圧縮機1の吸込管2dに向かって流れる低温低圧のガス冷媒に合流させるものである。
【0064】
なお、
図14中、符号23は、圧縮機1の温度(例えば、圧縮機構部3(
図2参照)近傍の密閉容器2(
図2参照)の温度)、又は圧縮機1の吐出管2eの温度を検出する温度検出器(例えば、サーミスタ等)である。ちなみに、本実施形態での温度検出器23は、圧縮機1の温度を検出するように配置されている。符号24は、制御部である。この制御部24は、温度検出器23の出力する温度検出信号に基づいて、後記する手順に従って流量調整弁25の開度を制御するように構成されている。符号31,32は、配管である。
【0065】
次に、制御部24の実行する手順について説明しつつ、この冷凍サイクル装置A4の動作について説明する。
暖房運転時において、制御部24は、温度検出器23の温度検出信号に基づいて圧縮機1の温度が所定の閾値(例えば、100℃)以上になったと判断した場合には、流量調整弁25を第1の開度で開く。これにより、減圧装置19の下流側で気液二相流となった冷媒を機油冷却機構15に対して通流させる。そして、機油冷却機構15において、機油13と熱交換して気化した冷媒は、蒸発器20の冷媒出口に接続される配管34と合流する。
【0066】
また、冷房運転時において、制御部24は、温度検出器23の温度検出信号に基づいて圧縮機1の温度が、所定の閾値(例えば、100℃)よりも小さいと判断した場合には、流量調整弁25を前記第1の開度よりも小さい第2の開度(例えば、全閉)とする。これにより、機油冷却機構15に対して通流する冷媒の流量は低減され、又は冷媒は遮断される。
【0067】
このような冷凍サイクル装置A4によれば、吐出ガス温度が高くなる暖房運転時においては、制御部24が第1の開度で流量調整弁25を開いて機油冷却機構15に対して冷媒を通流させることにより機油13(
図2参照)を冷却することができる。つまり、この冷凍サイクル装置A4によれば、吐出ガス温度を低下させることで、電動機部4の樹脂部品等の劣化を防止することができる。また、前記したように、背圧室14の背圧の低下を抑制することができる。
【0068】
また、冷凍サイクル装置A4によれば、減圧装置19を介して気液二相の低温の冷媒を機油冷却機構15の管体15aに流すことができるので、機油冷却機構15での機油13の冷却効果に優れる。
【0069】
また、圧縮機1の温度が所定の閾値(例えば、100℃)よりも低くなる冷房運転時には、制御部24が流量調整弁25を第2の開度(例えば、全閉)とすることで、配管32から減圧装置19に供給される冷媒の流量が増大して、蒸発器20における冷凍能力の低下を抑制することができる。
【0070】
次に参照する
図15は、本発明の第4実施形態に係る冷凍サイクル装置のモリエル線図である。
図15中、符号SLは、飽和液線であり、符号SVは、飽和蒸気線であり、符号CPは臨界点である。
【0071】
図15に示すように、冷凍サイクル装置A4の暖房運転時の冷凍サイクルでは、IIからIIIの凝縮過程で、凝縮器18(室内熱交換器)では加熱能力Qhが得られる。そして、IIIからIVの絞り膨張(等エンタルピ膨張)過程を経る。その後、IVからIV´の機油冷却機構15による機油13の冷却過程で、Qo分の熱量が冷媒に加えられる。次いでIV´からIの蒸発過程で、蒸発器20では、冷凍能力Qcが得られる。つまり、暖房運転では、機油13の冷却によりQo分の熱量が冷媒に加えられても、加熱能力Qhは維持されて、凝縮器18(室内熱交換器)で加熱能力が低下することはない。
【0072】
また、冷房運転時の冷凍サイクル装置A4では、前記したように、機油冷却機構15の管体15aにおける冷媒の流量が低減されるか、又は冷媒の通流が遮断されるので、蒸発器20における冷凍能力の低下を抑制できる。
【0073】
なお、本実施形態では、
図14に示すように、機油冷却機構15からの戻り配管である配管35bは、蒸発器20の出口配管である配管34に合流しているが、本発明は、配管35bが、蒸発器20の入口配管である配管33に合流するように構成することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記第1実施形態から第3実施形態では、機油冷却機構15の第1接続配管15bから管体15aに冷媒が流入し、第2接続配管15cから冷媒が排出されるように構成されているが、本発明は第2接続配管15cから冷媒が流入し、第1接続配管15bから冷媒が排出される構成とすることもできる。また、第4実施形態では、第1接続配管15bから管体15aに冷媒が流入し、第2接続配管15cから冷媒が排出されるように構成することもできる。
【0075】
また、前記第1実施形態から第4実施形態では、冷凍サイクル装置A1乃至A4を空気調和機に適用することを想定して暖房運転時及び冷房運転時を、図示しない四方弁を切替えて前記のサイクル流路における冷媒通流方向を順逆切替える構成となっているが、例えば、本発明の冷凍サイクル装置を冷凍機、冷蔵庫、ヒートポンプ式給湯機等に適用する場合には、冷媒通流方向を切替える必要がない。
【0076】
また、前記第1実施形態から第4実施形態では、圧縮機1がスクロール圧縮機である場合について説明したが、吐出ガス温度を下げるといった意味では、ロータリ圧縮機等の他形式の圧縮機にも適用可能であり、同様な作用効果が得られる。
【0077】
また、第1実施形態から第4実施形態で使用される機油13は、ポリオールエステル系油又はポリビニルエーテル系油である。
【0078】
ポリオールエステル系油は、下記化学式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される化合物(式中、R
1〜R
11は、炭素数4〜9のアルキル基を表す)並びにコンプレックスエステル油からなる群より選択される少なくとも一種類を基油として含む。
【0083】
また、ポリビニルエーテル系油は、下記化学式(5)で表される基油(式中、Q
i(iは、1〜mのいずれかであって、Q
1〜Q
mは、上付き文字の数値の順に直列に結合している)は、下記化学式(6)で表される化学構造を有し、下記化学式(6)におけるOR
12は、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基又はブチルオキシ基であり、Q
1〜Q
mのいずれか1つに含まれるOR
12は、メチルオキシ基であり、mは、5〜15である)を含む。
【0086】
前記機油13には、濃度に応じて低温側臨界溶解温度、高温側臨界溶解温度が存在する。冷媒と機油13は、低温側臨界溶解温度と高温側臨界溶解温度との間の温度域で相溶し、低温側臨界溶解温度よりも低い温度域、及び、高温側臨界溶解温度よりも高い温度域では二相分離する。圧縮機1内での寝込み現象を防止するためには、圧縮機1内を高温側臨界溶解温度以下に保ち、二相分離を防止する必要がある。
【0087】
さらに、機油13に溶けた冷媒を背圧室14へ供給することで、背圧室14の圧力を調整する構造のスクロール圧縮機が存在する。このスクロール圧縮機において、背圧室14へ供給される機油13の温度が高温側臨界溶解温度より高い場合、機油13に冷媒が溶け込みづらくなるため、背圧室14へ冷媒を十分に供給することができなくなる。特に、冷媒としてR32を採用した場合、R410Aに比べて圧縮機1の吐出温度が高いため、圧縮機1内にある油の温度が高温側臨界溶解温度を超える可能性がある。
【0088】
本発明によれば、機油冷却機構15によって機油13を冷却するため、背圧室14へ供給する機油13の温度を高温側臨界溶解温度より低く保つことができる。そのため、吐出温度が高い場合であっても、背圧室14へ冷媒を供給することができる。
【0089】
なお、本発明は例示の前記機油13に限定されず、種々の機油13を使用することができる。