特許第5965734号(P5965734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本特殊陶業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5965734-センサ素子 図000002
  • 特許5965734-センサ素子 図000003
  • 特許5965734-センサ素子 図000004
  • 特許5965734-センサ素子 図000005
  • 特許5965734-センサ素子 図000006
  • 特許5965734-センサ素子 図000007
  • 特許5965734-センサ素子 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965734
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】センサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20160728BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   G01N27/409 100
   G01N27/416 331
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-133392(P2012-133392)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-257215(P2013-257215A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 将生
(72)【発明者】
【氏名】繁田 春彦
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−517605(JP,A)
【文献】 特開2008−286810(JP,A)
【文献】 特開昭63−038154(JP,A)
【文献】 特開2002−202280(JP,A)
【文献】 特開平11−153571(JP,A)
【文献】 特開平11−304752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406−27/41
G01N 27/417−27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる板状の固体電解質層と、前記固体電解質層上に積層された一対の電極部と、前記固体電解質層上に積層され、前記電極部と電気的に接続されて前記長手方向に延びると共に、前記電極部よりも幅が狭い一対のリード部と、を備えるセンサ素子において、
前記電極部と前記リード部との間に位置し、前記電極部と前記リード部とを接続する接続部を有し、
前記リード部の幅は前記電極部の幅の50%未満であり、
前記接続部の両側面は、前記センサ素子を積層方向に沿って見たときに、半径0.4mm以上の内側に凸となるアール面であり、
前記長手方向のうち、前記電極部が配置された側を先端側、前記リード部が配置された側を後端側とした場合に、
前記接続部の両側面のうち、前記長手方向において先端側に設けられる外側面は、前記電極部の後端よりも先端側に位置する、ことを特徴とするセンサ素子。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ素子において、
前記長手方向と直交する前記固体電解質層の短手方向について、前記電極部と前記リード部とは異なる範囲に配置されている、ことを特徴とするセンサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、窒素酸化物(NOx)や酸素といった特定のガス成分の検出や、特定のガス成分の濃度測定を行うガスセンサが知られている(例えば、特許文献1,2)。ガスセンサは、濃度等の検出信号を出力するセンサ素子を備える。
【0003】
センサ素子は、固体電解質層と、電極部と、リード部とを備える。固体電解質層は、例えばジルコニアを主成分として形成され、長手方向に延びる板状部材である。電極部は、例えば白金を主成分として形成され、固体電解質層上に積層される。リード部は、例えば白金を主成分として形成され、固体電解質層上に積層され電極部と電気的に接続される。また、リード部は、長手方向に延び電極部よりも幅が狭い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−66192号公報
【特許文献2】特開2010−122187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極部とリード部との固体電解質層上の形成は、白金等の導電材料を含むペーストを固体電解質層上に印刷して乾燥することで行なわれる。ここで、電極部とリード部とを固体電解質層上に形成する際に、リード部と電極部との境界である接続部に亀裂が生じる場合があった。
【0006】
接続部での亀裂の発生を低減するために、電極部とリード部とを形成するためのペーストの配合組成を変更することが考えられる。しかしながら、ペーストの配合組成の変更は、検出精度の低下等の不具合を生じさせる可能性がある。
【0007】
従って本発明は、接続部の形状を工夫することで、接続部での亀裂の発生を低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[形態1]
長手方向に延びる板状の固体電解質層と、前記固体電解質層上に積層された一対の電極部と、前記固体電解質層上に積層され、前記電極部と電気的に接続されて前記長手方向に延びると共に、前記電極部よりも幅が狭い一対のリード部と、を備えるセンサ素子において、
前記電極部と前記リード部との間に位置し、前記電極部と前記リード部とを接続する接続部を有し、
前記リード部の幅は前記電極部の幅の50%未満であり、
前記接続部の両側面は、前記センサ素子を積層方向に沿って見たときに、半径0.4mm以上の内側に凸となるアール面であり、
前記長手方向のうち、前記電極部が配置された側を先端側、前記リード部が配置された側を後端側とした場合に、
前記接続部の両側面のうち、前記長手方向において先端側に設けられる外側面は、前記電極部の後端よりも先端側に位置する、ことを特徴とするセンサ素子。
この形態によれば、リード部の幅を電極部の幅よりも狭くすることで、固体電解質層を挟んで両側に電極部とリード部とを配置する場合に、両側に配置された一対のリード部の距離を長くできる。これにより、一対のリード部の絶縁を良好に図ることができる。その上、リード部の幅が電極部の幅の50%未満となるセンサ素子において、接続部の両側面の形状が半径0.4mm以上の内側に凸となるアール面とすることで、電極部の幅に対してリード部の幅を狭くしたとしても、接続部での亀裂の発生を低減できる。また、短手方向において接続部の幅が極端に短くなる部分が発生する可能性を低減できる。これにより、電極部とリード部との電気的な接続が遮断される可能性を低減できる。
【0009】
[適用例1]長手方向に延びる板状の固体電解質層と、前記固体電解質層上に積層された一対の電極部と、前記固体電解質層上に積層され、前記電極部と電気的に接続されて前記長手方向に延びると共に、前記電極部よりも幅が狭い一対のリード部と、を備えるセンサ素子において、
前記電極部と前記リード部との間に位置し、前記電極部と前記リード部とを接続する接続部を有し、
前記リード部の幅は前記電極部の幅の50%未満であり、
前記接続部の両側面は、前記センサ素子を積層方向に沿って見たときに、半径0.4mm以上の内側に凸となるアール面である、ことを特徴とするセンサ素子。
適用例1に記載のセンサ素子によれば、リード部の幅を電極部の幅よりも狭くすることで、固体電解質層を挟んで両側に電極部とリード部とを配置する場合に、両側に配置された一対のリード部の距離を長くできる。これにより、一対のリード部の絶縁を良好に図ることができる。
その上、リード部の幅が電極部の幅の50%未満となるセンサ素子において、接続部の両側面の形状が半径0.4mm以上の内側に凸となるアール面とすることで、電極部の幅に対してリード部の幅を狭くしたとしても、接続部での亀裂の発生を低減できる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載のセンサ素子において、
前記長手方向と直交する前記固体電解質層短手方向について、前記電極部と前記リード部とは異なる範囲に配置されている、ことを特徴とするセンサ素子。
適用例2に記載のセンサ素子によれば、固体電解質層を挟んで両側に電極部とリード部とを配置する場合に、両側に配置された一対のリード部の距離をより長くできる。これにより、一対のリード部の絶縁をより良好に図ることができる。
【0011】
[適用例3]適用例1又は適用例2に記載のセンサ素子において、
前記長手方向のうち、前記電極部が配置された側を先端側、前記リード部が配置された側を後端側とした場合に、
前記接続部の両側面のうち、前記長手方向において先端側に設けられる外側面は、前記電極部の後端よりも先端側に位置する、ことを特徴とするセンサ素子。
適用例3に記載のセンサ素子によれば、短手方向において接続部の幅が極端に短くなる部分が発生する可能性を低減できる。これにより、電極部とリード部との電気的な接続が遮断される可能性を低減できる。
【0012】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、センサ素子の製造方法、センサ素子を備えたガスセンサ、ガスセンサを備えた内燃機関等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例としてのガスセンサ200を示す断面図である。
図2】センサ素子10の断面図である。
図3】センサ素子10の分解斜視図である。
図4】電極ユニットの詳細を説明するための図である。
図5】第1実験結果を示すグラフである。
図6】第2実験結果を示すグラフである。
図7】第1変形例の電極ユニット300aを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.実施例:
B.変形例:
【0015】
A.実施例:
A−1:ガスセンサの全体構成:
図1は、本発明の実施例としてのガスセンサ200を示す断面図である。このガスセンサ200は、図示しない内燃機関(エンジン)の排気管に固定されて、窒素酸化物(NOx)の濃度を測定する(以下、ガスセンサ200のことを「NOxセンサ200」とも呼ぶ)。図1は、NOxセンサ200の長手方向D1と平行な断面を示している。以下、図1における下方向(下側)をNOxセンサ200の先端側FWDと呼び、図1における上方向(上側)をNOxセンサ200の後端側BWDと呼ぶ。
【0016】
NOxセンサ200は、筒状の主体金具138と、長手方向D1に延びる板状形状をなすセンサ素子10(単に「センサ素子10」ともいう。)と、センサ素子10を囲む筒状のセラミックスリーブ106と、絶縁コンタクト部材166と、6個の接続端子110(図1では、4個図示されている)と、を備えている。主体金具138の外表面には、排気管に固定されるためのねじ部139が形成されている。セラミックスリーブ106は、センサ素子10の径方向周囲を取り囲むように配置されている。絶縁コンタクト部材166には、長手方向D1に貫通するコンタクト挿通孔168が形成されている。絶縁コンタクト部材166は、コンタクト挿通孔168の内壁面がセンサ素子10の後端部の周囲を取り囲むように、配置されている。各接続端子110は、センサ素子10と絶縁コンタクト部材166との間に配置されている。
【0017】
主体金具138は、軸線方向(「長手方向D1」ともいう。)に貫通する貫通孔154を有し、貫通孔154の径方向内側に突出する棚部152を有する略筒状形状に構成されている。主体金具138は、センサ素子10の先端が貫通孔154の先端側FWDの外部に配置され、センサ素子10の後端側が貫通孔154の後端側BWDの外部に配置されるように、センサ素子10を貫通孔154内に保持している。棚部152は、長手方向D1に垂直な平面に対して傾斜したテーパ面を含んでいる。このテーパ面は、先端側FWDの直径が、後端側BWDの直径と比べて小さくなるように、形成されている。
【0018】
主体金具138の貫通孔154の内部には、セラミックホルダ151、粉末充填層153、156(以下、滑石リング153、156ともいう)、セラミックスリーブ106が、この順に先端側FWDから後端側BWDに向かって積層されている。セラミックホルダ151、滑石リング153、156、セラミックスリーブ106によってセンサ素子10は保持されている。
【0019】
セラミックスリーブ106と主体金具138の後端部140との間には、加締めパッキン157が配置されている。セラミックホルダ151と主体金具138の棚部152との間には、滑石リング153とセラミックホルダ151を保持するための金属ホルダ158が配置されている。なお、主体金具138の後端部140は、加締めパッキン157を介してセラミックスリーブ106を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0020】
また、主体金具138の先端側FWDの外周には、外部プロテクタ142および内部プロテクタ143が、溶接等によって取り付けられている。この二重のプロテクタ142、143は、複数の孔を有する金属(例えば、ステンレスなど)によって形成されており、センサ素子10の突出部分を覆っている。
【0021】
主体金具138の後端側BWDの外周には、外筒144が固定されている。外筒144の後端側BWDの開口部には、グロメット150が配置されている。グロメット150には、リード線挿通孔161が形成されている。リード線挿通孔161には、6本のリード線146が挿通される(図1では5本のリード線146のみが示されている)。これらのリード線146は、センサ素子10の後端側BWDの外表面に設けられた電極パッド(図示せず)にそれぞれ電気的に接続される。
【0022】
また、主体金具138の後端部140より突出されたセンサ素子10の後端側BWDには、絶縁コンタクト部材166が配置される。この絶縁コンタクト部材166は、センサ素子10の後端側BWDの表面に形成される電極バッド(図示せず)の周囲に配置される。絶縁コンタクト部材166は、筒状形状に形成され、長手方向D1に貫通するコンタクト挿通孔168を有する。また、絶縁コンタクト部材166は、外表面から径方向外側に突出する鍔部167を有する。絶縁コンタクト部材166と外筒144との間には、保持部材169が挿入されている。保持部材169は、外筒144と鍔部167とに接触することによって、絶縁コンタクト部材166を外筒144の内部に配置する。
【0023】
図2は、センサ素子10の断面図である。図2では、センサ素子10のうち、先端側部分を示している。またこの断面図は、長手方向D1と平行な断面を示している。図2において、左方向は先端方向(先端側)FWDを示し、右方向は後端方向(後端側)BWDを示している。センサ素子10は、絶縁層14e、第1固体電解質層11a、絶縁層14a、第2固体電解質層12a、絶縁層14b、第3固体電解質層13a、及び絶縁層14c、14dをこの順に積層した構造を有する。これらの層は、長手方向D1とは垂直な積層方向D2に沿って積層されている。図中では、説明を容易にするために、絶縁層14eが第1固体電解質層11aから分離して示されているが、実際には、絶縁層14eは、第1固体電解質層11a上に積層されている。
【0024】
第1固体電解質層11aと第2固体電解質層12aとの間には、第1測定室16が形成されている。第1測定室16の左端(入口)に配置された第1拡散抵抗体15aを介して外部から被測定ガスGMが導入される。第1測定室16の入口とは反対側の端には第2拡散抵抗体15bが配置されている。
【0025】
第1測定室16の右側には、第2拡散抵抗体15bを介して第1測定室16と連通する第2測定室18が形成されている。第2測定室18は、第2固体電解質層12aを貫通して第1固体電解質層11aと第3固体電解質層13aとの間に形成されている。
【0026】
絶縁層14c、14dの間には、長手方向D1に沿って延びるヒータ50が埋設されている。ヒータ50は、ガスセンサ素子10を所定の活性温度に昇温し、固体電解質層の酸素イオンの伝導性を高めて動作を安定化させるために用いられる。ヒータ50は、タングステン等の導体によって形成された発熱抵抗体であり、供給された電力によって熱を生じる。なお、ヒータ50は、2つの層14c、14dによって支持されている。
【0027】
なお、本実施例では、固体電解質層11a、12a、13aは、それぞれ、酸素イオン伝導性を有するジルコニアを主成分に用いて形成されている。絶縁層14a〜14eはアルミナを主成分に用いて形成されており、第1拡散抵抗体15a及び第2拡散抵抗体15bは、アルミナ等の多孔質物質を用いて形成されている。なお、主成分とは「セラミック層中の主材料の含有量が50wt%以上であることを指し、例えば、固体電解質層は、ジルコニアが50wt%以上含有すること」を指す。固体電解質層と絶縁層との8つの層のうちの6つの層14e、11a、12a、13a、14c、14dは、それぞれ、原材料のシートを用いて形成されている(例えば、ジルコニアやアルミナ等のセラミックのシート)。2つの絶縁層14a、14bは、セラミックシート上へのスクリーン印刷によって形成されている。そして、焼成前の各層を積層して得られる積層体を焼成することによって、センサ素子10が形成される。
【0028】
ガスセンサ素子10は、第1ポンピングセル11と、酸素濃度検出セル12と、第2ポンピングセル13とを有している。
【0029】
第1ポンピングセル11は、第1固体電解質層11aと、これを挟持するように配置された内側第1電極ユニット11c、及び、対極である外側第1電極ユニット11bとを備えている。内側第1電極ユニット11cは第1測定室16に面している。内側第1電極ユニット11c及び外側第1電極ユニット11bはいずれも白金を主成分にして形成されている。また、内側第1電極ユニット11cの表面は多孔質体からなる保護層11eで覆われている。また、外側第1電極ユニット11bは、絶縁層14eのうちの外側第1電極ユニット11bと対向する部分に埋め込まれた、ガス(例えば、酸素)が通過可能な多孔質11d(例えば、アルミナ)により覆われている。
【0030】
酸素濃度検出セル12は、第2固体電解質層12aと、これを挟持するように配置された検知電極ユニット12b及び基準電極ユニット12cとを備えている。検知電極ユニット12b及び基準電極ユニット12cはいずれも白金を主成分として形成されている。
【0031】
絶縁層14bは、第2固体電解質層12aに接する基準電極ユニット12cが内部に配置されるように切り抜かれている。その切り抜き部には多孔質体が充填されて基準酸素室17を形成している。酸素濃度検出セル12に予め微弱な一定値の電流を流すことにより、酸素が第1測定室16から基準酸素室17内に送り込まれる。そして、基準酸素室17内の酸素濃度は、所定の濃度に維持される。これにより、基準酸素室17は、酸素濃度の基準として利用される。
【0032】
第2ポンピングセル13は、第3固体電解質層13aと、第3固体電解質層13aのうち第2測定室18に面した表面に配置された内側第2ポンプ電極ユニット13b、及び、対極である第2対極電極ユニット(対極第2ポンプ電極ユニット)13cとを備えている。内側第2ポンプ電極ユニット13b及び対極第2ポンプ電極ユニット13cはいずれも白金を主成分として形成されている。なお、対極第2ポンプ電極ユニット13cの電極部は、第3固体電解質層13a上における絶縁層14bの切り抜き部に配置され、基準電極ユニット12cの電極部に対向して基準酸素室17に面している。
【0033】
なお、図2には、NOxセンサ200(センサ素子10)の制御部CUも示されている。制御部CUには、図1に示す接続端子110とリード線146とを介して、ヒータ50と、各電極ユニット11b、11c、12b、12c、13b、13cが接続されている。後述するように、制御部CUは、ヒータ50に電力を供給する。また、制御部CUは、各電極ユニット11b、11c、12b、12c、13b、13cに対して信号を送受信することによって、NOxセンサ200(センサ素子10)を制御する。なお、本実施例では、制御部CUは、オペアンプ等を用いて形成された電子回路である。制御部CUを、CPUとメモリとを有するコンピュータを用いて形成してもよい。
【0034】
次に、センサ素子10の動作の一例について説明する。まず、エンジンの始動によって制御部CUが起動する。制御部CUは、ヒータ50に電力を供給する。ヒータ50は、第1ポンピングセル11、酸素濃度検出セル12、第2ポンピングセル13を活性化温度まで加熱する。そして、各セル11〜13が活性化温度まで加熱されたことに応じて、制御部CUは、第1ポンピングセル11に電流を流す。これにより、第1ポンピングセル11は、第1測定室16に流入した被測定ガス(排ガス)GM中の過剰な酸素を内側第1電極ユニット11cから外側第1電極ユニット11bへ向かって汲み出す。
【0035】
制御部CUは、酸素濃度検出セル12の電極間電圧(端子間電圧)が一定電圧V1(例えば425mV)になるように、第1ポンピングセル11の電極間電圧(端子間電圧)を制御する。酸素濃度検出セル12の電圧は、検知電極ユニット12bにおける酸素濃度を表している。この制御によって、第1測定室16内の酸素濃度は、NOxが分解しない程度に調整される。
【0036】
酸素濃度が調整された被測定ガスGNは、第2測定室18に向かってさらに流れる。制御部CUは、第2ポンピングセル13に電極間電圧(端子間電圧)を印加する。この電圧は、被測定ガスGN中のNOxガスが酸素と窒素ガスに分解する程度の一定電圧に設定されている(酸素濃度検出セル12の制御電圧の値より高い電圧、例えば450mV)。これにより、被測定ガスGN中のNOxが、窒素と酸素に分解される。
【0037】
制御部CUは、NOxの分解により生じた酸素を第2測定室18から汲み出すように、第2ポンピングセル13に第2ポンプ電流を流す。第2ポンプ電流とNOx濃度の間には直線関係があるので、電流を検出することによって被測定ガスGN中のNOx濃度を検出することができる。
【0038】
図3は、センサ素子10の分解斜視図である。絶縁層14eの外表面には、3つの電極パッド125,126,127が形成されている。絶縁層14dの外表面には、3つの電極パッド128,129,130が形成されている。
【0039】
絶縁層14eには、3つのスルーホールH15,H16,H17が形成されている。第1固体電解質層11aには、2つのスルーホールH26,H27が形成されている。絶縁層14aには、2つのスルーホールH36,H37と、第2測定室18の一部を構成する貫通孔18aと、第1測定室16とが形成されている。第2固体電解質層12aには、2つのスルーホールH46,H47と、第2測定室18の一部を構成する貫通孔18bと、が形成されている。絶縁層14bには、1つのスルーホールH57と、第2測定室18の一部を構成する貫通孔18cと、基準酸素室17と、が形成されている。第3固体電解質層13aには、1つのスルーホールH66が形成されている。絶縁層14cには、1つのスルーホールH76が形成されている。また、絶縁層14cには、2つのスルーホールH66,H76を電気的に接続するための接続ラインL76が形成されている。絶縁層14dには、3つのスルーホールH86,H88,H89が形成されている。上記各スルーホールは、焼成前のセラミックシートに穴を開けることで形成される。なお、スルーホールには、焼成前に導電性ペーストを形成することで、焼成後にスルーホール導体が形成されている。
【0040】
外側第1電極ユニット11bは、第1固体電解質層11aの2つ主面のうちの一方の面上に配置されている。内側第1電極ユニット11cは、第1固体電解質層11aの2つの主面のうちの他方の面上に配置されている。外側第1電極ユニット11bと内側第1電極ユニット11cのそれぞれの電極部は第1固体電解質層11aを挟んで対向する。
【0041】
検知電極ユニット12bは、第2固体電解質層12aの2つの主面のうちの一方の面上に配置されている。基準電極ユニット12cは、第2固体電解質層12aの2つの主面のうちの他方の面上に配置されている。詳細には、検知電極ユニット12bと基準電極ユニット12cのそれぞれの電極部が第2固体電解質層12aを挟んで対向する。
【0042】
対極第2ポンプ電極ユニット13cと内側第2ポンプ電極ユニット13bとは、第3固体電解質層13aの2つの主面のうちの一方の面上に配置されている。対極第2ポンプ電極13cと基準電極ユニット12cのそれぞれの電極部は、基準酸素室17を挟んで対向する。
【0043】
内側第1電極ユニット11c,検知電極ユニット12b,内側第2ポンプ電極ユニット13bは、スルーホールH17,H27,H37,H47,H57を介して電極パッド124に電気的に接続されている。電極パッド127は、基準電位に接続されている。外側第1電極ユニット11bはスルーホールH15を介して電極パッド125に電気的に接続されている。基準電極ユニット12cは、スルーホールH16,H26,H36,H46を介して電極パッド126に電気的に接続されている。対極第2ポンプ電極ユニット13cは、スルーホールH86,H76、H66及び接続ラインL76を介して電極パッド130に電気的に接続されている。ヒータ50は、一方のリード線がスルーホールH88を介して電極パッド128に電気的に接続され、他方のリード線がスルーホールH89を介して電極パッド129に電気的に接続されている。
【0044】
A−2.電極ユニットの詳細構成:
図4は、電極ユニットの詳細を説明するための図である。図4は、外側第1電極ユニット11bの先端側部分を積層方向D2に沿って見たときの図である。ここでは、外側第1電極ユニット11bについて説明を行うが、他の電極ユニット(例えば、内側第1電極ユニット11c)も同様の構成である。また、以下では、各電極ユニット11b,11c,12b,12c,13c,13bを区別することなく用いる場合は「電極ユニット300」とも呼ぶ。
【0045】
電極ユニット300は、先端側FWDから後端側BWDに向かう順に、電極部302と、接続部303と、リード部304と、を備える。なお、各部302,303,304の境界には、点線を付している。電極部302は、対極の電極部302との間で電流が流れてガスセンサ素子10で行なわれるNOxの濃度検出に利用される。
【0046】
リード部304は、電極部302と外部(詳細には制御部CU)とを電気的に接続するために用いられる。リード部304は、長手方向D1に延び、後端側BWDに位置する後端部で対応する電極パッド125,126,127,130に電気的に接続される。リード部304の幅Bは、電極部302の幅Aよりも狭い。これにより、固体電解質層11a,12aを挟んで両側に電極部302とリード部304とを配置する場合に、両側に配置された一対のリード部304の距離を長くできる。これにより、一対のリード部304の絶縁を良好に図ることができる。
【0047】
接続部303は、電極部302とリード部304との間に位置し、電極部302とリード部304とを電気的に接続する。すなわち、接続部303は、電極部302とリード部304との境界部であるとも言える。接続部303の両側面には、内側に凸のアール面310,312が形成されている。なお、説明の便宜上、アール面310,312のうち一方を「第1アール面310」とも呼び、他方を「第2アール面312」とも呼ぶ。第1アール面310は、半径Raである。第2アール面312は、半径Rbである。第1アール面310は、電極部302よりも後端側BWDにアールの中心Paが位置する。第2アール面312は、リード部304よりも先端側FWDにアールの中心Pbが位置する。また、本実施例では、第2アール面312は、第1アール面310よりも先端側FWDに設けられている。ここで、第2アール面312が、課題を解決するための手段に記載の「外側面」に相当する。
【0048】
上記のような電極ユニット300は、例えば、白金を主成分としたペーストをスクリーンマスクで対応する固体電解質層11a,12a,13a上に印刷し、印刷後に所定温度(例えば、80〜90℃)で乾燥することで形成できる。
【0049】
ここで、長手方向D1と直交する短手方向D3について、電極部302とリード部304とは異なる範囲に配置されることが好ましい。すなわち、図4に記載するように、短手方向D3について、電極部302が位置する範囲Daと、リード部304が位置する範囲Dbとが重なることなくずれていることが好ましい。こうすることで、固体電解質層11a,12aを挟んで、電極ユニット11b,11c,12b,12cを配置する場合に、両側に配置された一対のリード部304の距離を長くできる。すなわち、図4に示す電極ユニット300の対極となる電極ユニット(単に「対極ユニット」とも呼ぶ。)を、長手方向D1を軸に反転させて、電極ユニット300と対極ユニットとを固体電解質層11a,12aを挟んで配置する。これにより、電極ユニット300のリード部304と対極ユニットのリード部とが、固体電解質層11a,12aを挟んで対向する可能性をより低減できる。これにより、一対のリード部304の絶縁をより良好に図ることができる。
【0050】
また、第2アール面312は、電極部302の後端330より先端側FWDに位置することが好ましい。図4に示す電極ユニット300では、第2アール面312は、後端330よりも距離Laだけ先端側FWDに位置する。言い換えれば、長手方向D1について、第1アール面310と第2アール面312とは異なる範囲に位置することが好ましい。こうすることで、接続部303の幅(短手方向D3の長さ)が極端に短くなる可能性を低減できる。これにより、電極部302とリード部304との電気的な接続が遮断される可能性を低減できる。
【0051】
A−3.実験結果:
評価試験は以下の手順で行なった。すなわち、白金を主成分としたペーストをグリーンシート上にスクリーンマスクで印刷し、乾燥前の電極ユニット300を形成する。次に乾燥機内にペーストを印刷したグリーンシートを入れる。そして、乾燥機にて乾燥温度95℃にて3分間乾燥し、その後グリーンシートを取り出して大気中で5分間放置する。このサイクルを5回繰り返し、その後、拡大鏡で目視することで電極ユニット300に亀裂が発生したか否かを判断する。作製した複数の電極ユニット300に対して亀裂が発生した電極ユニット300の割合を発生率VD(%)とした。なお、乾燥後の電極ユニット300のうち、電極部302の厚みは15μmとし、リード部304の厚みは25μmとした。また、乾燥後の接続部303の厚みは、電極部302とリード部304の厚みの間の値とし、電極部302からリード部304に近づくに従って厚みを大きくした。なお、電極ユニット300の作製に用いたペースト組成は以下の通りである。
【0052】
<ペースト組成>白金100に対する比率(wt%)
白金 100
セラミック粉末 20
有機バインダー 8
溶剤 25
【0053】
A−3−1.第1実験結果:
電極ユニット300の形状について、電極部302の幅Aとリード部の幅Bの割合(B/A)を変化させたサンプルを用いて、上記評価試験を行った。幅Aと幅Bの割合(幅割合)の変化は、幅Bを0.39mmに固定し幅Aを変化させることで行なった。各サンプルを100本ずつ作製した。なお、第1実験に用いた各サンプルの接続部303の半径Ra,Rbは、共に0.3mmである。
【0054】
図5は、第1実験結果を示すグラフである。横軸は幅割合(B/A)を示し、縦軸は発生率VDを示している。
【0055】
A−3−2.第2実験結果:
電極ユニット300の形状について、幅割合(B/A)が一定(13%)で、半径Ra,Rbを共に変化させたサンプルを用いて、上記評価試験を行った。なお、第2実験で用いたサンプルの幅Aは3.1mmであり、幅Bは0.39mmである。すなわち、図5中に記載のサンプルNo.1と幅A,Bが同じ値のサンプルを用いた。なお、各サンプルを100本ずつ作製した。
【0056】
図6は、第2実験結果を示すグラフである。横軸は半径Ra,Rbの値を示し、縦軸は、発生率VDを示している。
【0057】
A−4.効果:
図5に示すように、半径Ra,Rbが0.3mm、幅割合B/Aが50%以上のサンプルにおいては発生率VDが0%であったのに対し、半径Ra,Rbが0.3mm、幅割合B/Aが40%のサンプルNo.1においては発生率VDが0.4%であった。さらに、半径Ra,Rbが0.3mm、幅割合B/Aが50%未満のサンプルにおいては発生率VDが増加した。つまり、一対のリード部の絶縁を良好に図るために、リード部の幅を電極部の幅の50%未満とすると、接続部303に亀裂が発生することがわかる。
しかしながら、図6に示すように、幅割合B/AがサンプルNo.1と同一のサンプルで半径Ra,Rbを変化させた評価試験では、半径Ra,Rbが0.4mm以上では、発生率VDが0%であった。すなわち、図5に示すような、発生率VDが増加する(つまり接続部303に亀裂が発生する)接続部303の両側面310,312を内側に凸となるアール面とし、アール面の半径を0.4mm以上とすることで、接続部303での亀裂の発生を低減できた。また、接続部303の両側面310,312の形状によって亀裂発生を低減しているため、電極ユニット300を形成するためのペースト組成の設計自由度を向上できる。
【0058】
B.変形例:
本発明は、上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0059】
B−1.第1変形例:
図7は、第1変形例の電極ユニット300aを説明するための図である。第1実施例の電極ユニット300と異なる点は、接続部303aの形状である。その他の構成については第1実施例と同様の構成であるため、同様の構成については同一の符号を付すと共に説明を省略する。なお、電極部302、接続部303a、リード部304の境界には点線を付している。上記第1実施例の接続部303は、短手方向D3について、電極部302が位置する範囲Daと、リード部304が位置する範囲Dbとが重なることなくずれている関係を有していた。しかしながら、接続部303aの両側面310a,312aが、センサ素子10を積層方向に沿って見たときに、接続部303aの両側面310a,312aが、半径0.4mm以上の内側に凸のアール面となる限りにおいて、第1変形例の電極ユニット300aのように範囲Dbの全てが範囲Da内に位置する関係であっても良い。このようにしても、アール面である両側面310a,312aの半径Rc,Rdが0.4mm以上であることから、上記第1実施例と同様に、接続部303aの亀裂の発生を低減できる。
【符号の説明】
【0060】
10…センサ素子
11…第1ポンピングセル
11a…第1固体電解質層
11b…外側第1電極ユニット
11c…内側第1電極ユニット
11d…多孔質
11e…保護層
12…酸素濃度検出セル
12a…第2固体電解質層
12b…検知電極ユニット
12c…基準電極ユニット
13…第2ポンピングセル
13a…第3固体電解質層
13b…内側第2ポンプ電極ユニット
13c…対極第2ポンプ電極ユニット
14a,14b,14c,14d,14e…絶縁層
15a…第1拡散抵抗体
15b…第2拡散抵抗体
16…第1測定室
17…基準酸素室
18…第2測定室
18a,18b,18c…貫通孔
50…ヒータ
110…接続端子
138…主体金具
200…ガスセンサ
300…電極ユニット
300a…電極ユニット
302…電極部
303…接続部
303a…接続部
304…リード部
310,312…側面
310a,312a…側面
330…後端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7