特許第5965738号(P5965738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965738
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】コネクタ、及び充填材の注入方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20160728BHJP
   H01R 43/18 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   H01R13/52 301F
   H01R43/18
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-140197(P2012-140197)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-6988(P2014-6988A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 旭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一栄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悦郎
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−126802(JP,A)
【文献】 特開平10−012319(JP,A)
【文献】 特開2010−182493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 43/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状のコネクタハウジングと、
電線の一端部に接続された端子を支持し、前記コネクタハウジング内部に収容されるインナプレートと、
前記インナプレートが収容された前記コネクタハウジング内部において、前記電線と前記端子との接続部を被覆する硬化した状態の充填材と、
を備え、
前記充填材が、前記コネクタハウジングの内面のうちの第1の部分と、前記インナプレートの外面と、に固着し、
前記コネクタハウジングの内面のうちの第2の部分と、該第2の部分と対向する前記充填材の外面と、の間には、第1の空隙が形成されている、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記コネクタハウジングの内面のうちの第3の部分と、該第3の部分と対向する前記インナプレートの外面と、の間には、第2の空隙が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1の空隙が、前記第2の部分と、該第2の部分と対向する前記インナプレートの外面の一部に固着した、前記充填材の外面と、の間に形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
電線の一端部に接続された端子を支持するインナプレートが収容された筒形状のコネクタハウジング内部に、前記コネクタハウジングの内面と前記インナプレートの外面との間から治具を挿入する治具挿入工程と、
前記電線と前記端子との接続部を被覆するように、前記コネクタハウジング内部に充填材を充填して硬化させ、前記充填材を前記コネクタハウジングの内面のうちの一部と前記インナプレートの外面とに固着させる充填工程と、
前記治具を前記コネクタハウジングから抜去する抜去工程と、
を含むことを特徴とする充填材の注入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ、及び充填材の注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタの中には、コネクタ外部に存在する液体がコネクタ内部に浸入することを防ぐこと、即ち液密性を要求されるものがある。
【0003】
従来より、高い液密性を備えるコネクタを提供することを目的として、種々の構造のコネクタが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−270283号公報
【特許文献2】特開2012―59652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示されているコネクタは、例えば自動車等のオートマチックトランスミッション(AT)に取付け固定されて用いられる。
【0006】
特許文献1及び特許文献2に開示されている従来のコネクタの構造の概略を説明する。当該コネクタは、両端が開口する略筒状に構成され、その一端側が相手側コネクタのコネクタハウジングに嵌合固定されると共にその他端側がオートマチックトランスミッションのハウジングに嵌着固定されるコネクタハウジングと、該コネクタハウジング内に収容配置され、このコネクタハウジングの他端側開口を挿通する複数の電線の各先端部に圧着された雄型の端子を集合保持する端子ホルダ(インナプレート)と、各電線が挿通された状態でコネクタハウジングの他端側開口に圧入され、各電線を集合保持しながら当該他端側開口を閉塞するゴム栓と、を備えている。そして、コネクタハウジング内部における端子ホルダとゴム栓との間に画成される空間にエポキシ樹脂(充填材)が充填されることで、端子ホルダ及び各電線を保持すると共に、コネクタハウジングの一端側開口内に画成されて各端子が臨むコネクタ嵌合室を液密にシールするものである。
【0007】
しかしながら、このような従来のコネクタでは、使用時間が経過するに伴って、コネクタハウジング内部に充填されて硬化した充填材としてのエポキシ樹脂にクラックが発生する場合があった。また、一旦充填材に発生したクラックは、その後充填材の内部において徐々に拡大しがちである。
【0008】
このように充填材にクラックが発生した場合には、例えば毛細管現象により端子ホルダに挿通された電線を伝ってコネクタハウジング内部に浸入したATオイルが、当該クラック内部を移動してコネクタ嵌合室に滲出するおそれがある。この結果、従来のコネクタでは、コネクタハウジング内部に充填された充填材にクラックが発生し、コネクタの液密性が損なわれるおそれがあった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コネクタハウジング内部に充填された充填材におけるクラックの発生が抑制可能なコネクタ、及び充填材の注入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1)筒形状のコネクタハウジングと、
電線の一端部に接続された端子を支持し、前記コネクタハウジング内部に収容されるインナプレートと、
前記インナプレートが収容された前記コネクタハウジング内部において、前記電線と前記端子との接続部を被覆する硬化した状態の充填材と、
を備え、
前記充填材が、前記コネクタハウジングの内面のうちの第1の部分と、前記インナプレートの外面と、に固着し、
前記コネクタハウジングの内面のうちの第2の部分と、該第2の部分と対向する前記充填材の外面と、の間には、第1の空隙が形成されている、
こと。
(2)上記(1)に記載のコネクタであって、
前記コネクタハウジングの内面のうちの第3の部分と、該第3の部分と対向する前記インナプレートの外面と、の間には、第2の空隙が形成されている、
こと。
(3)上記(1)又は(2)に記載のコネクタであって、
前記第1の空隙が、前記第2の部分と、該第2の部分と対向する前記インナプレートの外面の一部に固着した、前記充填材の外面と、の間に形成されている、
こと。
(4)上記(2)に記載のコネクタであって、
前記第1の空隙と前記第2の空隙とが連通されている、
こと。
(5)上記(2)に記載のコネクタであって、
前記第2の空隙が、前記コネクタハウジング内部のうちの相手方のコネクタハウジングを収容する空間と連通されている、
こと。
【0011】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係る充填材の注入方法は、下記(6)及び(7)を特徴としている。
(6)電線の一端部に接続された端子を支持するインナプレートが収容された筒形状のコネクタハウジング内部に、前記コネクタハウジングの内面と前記インナプレートの外面との間から治具を挿入する治具挿入工程と、
前記電線と前記端子との接続部を被覆するように、前記コネクタハウジング内部に充填材を充填して硬化させ、前記充填材を前記コネクタハウジングの内面のうちの一部と前記インナプレートの外面とに固着させる充填工程と、
前記治具を前記コネクタハウジングから抜去する抜去工程と、
を含むこと。
(7)上記(6)に記載の充填材の注入方法であって、
前記挿入工程においては、前記治具を、前記コネクタハウジングの内面に形成された突出部に該治具が突き当たるまで挿入する、
こと。
【0012】
本発明に係るコネクタの作用を説明する。
本発明の発明者らは、従来のコネクタにおいて充填材にクラックが発生する1つの原因は、以下に説明するように充填材に発生する熱応力にある可能性があることを見出した。
コネクタの周辺温度は、例えばコネクタがオートマチックトランスミッションに取付け固定されて使用される場合には、エンジン駆動中に上昇してエンジン停止中に低下するオートマチックトランスミッション内部の温度にしたがって変化する。ここで、従来のコネクタにおいては、コネクタハウジング内部に充填された充填材は、コネクタハウジングにより拘束されている。このため、コネクタの周辺温度が変化すると、充填材にはひずみが生じる代わりに熱応力が生じる。したがって、従来のコネクタでは、コネクタの周辺温度の変化に伴い、充填材に熱応力が繰り返し発生する。この結果、充填材が疲労して劣化することによって、充填材にクラックが発生していた可能性があると本発明の発明者らは認識している。また、従来のコネクタにおいて充填材にクラックが発生する別の原因として、コネクタハウジング内部に相手方コネクタが嵌入される際に、疲労して劣化した充填材に対して外力が作用することによっても、充填材の内部にクラックが発生していた可能性があると本発明の発明者らは認識している。さらに、従来のコネクタにおいて充填材にクラックが発生する更に別の原因として、コネクタの周辺温度が急激に変化した場合に、急激な温度変化に起因する熱応力である熱衝撃が充填材に発生することによっても、上記原因により疲労して劣化した充填材の内部にクラックが発生していた可能性があると本発明の発明者らは認識している。
【0013】
これに対して、上記(1)の構成のコネクタによれば、コネクタハウジングの内面のうちの第2の部分と、該第2の部分と対向する充填材の外面と、の間に第1の空隙が形成されているため、当該空隙が無い場合と比較して、コネクタハウジングによる充填材の拘束の程度が軽減される。このため、当該空隙が無い場合と比較して、コネクタの周囲温度が変化した場合に充填材が自由膨張及び自由収縮できる量が増加する。したがって、充填材に発生する熱応力が低減され、充填材の疲労及び劣化が抑制される。また、充填材に発生する熱衝撃が低減される。この結果、充填材におけるクラックの発生が抑制される。
上記(2)の構成のコネクタによれば、コネクタハウジングの内面のうちの第3の部分と、該第3の部分と対向するインナプレートの外面と、の間に第2の空隙が形成されているため、当該空隙が無い場合と比較して、コネクタハウジングによるインナプレートの拘束の程度が軽減される。このため、当該空隙が無い場合と比較して、コネクタの周囲温度が変化した場合にインナプレートが自由膨張及び自由収縮できる量が増加する。したがって、インナプレートに発生する熱応力が低減するため、該インナプレートの外面に固着する充填材に対して該インナプレートから作用する外力が低減される。この結果、充填材におけるクラックの発生が抑制される。このように、インナプレートに発生する熱応力によっても、充填材にクラックが発生していた可能性があると本発明の発明者らは認識している。
また、上記(2)の構成のコネクタにおいて第2の空隙が形成されている部分は、当該空隙が無く当該部分に充填材が充填されている場合には、充填材と熱膨張係数が異なる端子、電線、及びインナプレートが集合している箇所の近傍に位置するために、熱応力が発生し易くクラックが発生し易い部分である。これに対して、上記(2)の構成のコネクタでは、当該部分には空隙が形成されているため、充填材におけるクラックの発生が抑制される。
上記(3)の構成のコネクタによれば、コネクタハウジングの内面のうちの第2の部分と、該第2の部分と対向するインナプレートの外面の一部に固着した、充填材の外面と、の間に第1の空隙が形成されているため、当該空隙が無い場合と比較して、コネクタハウジングによる充填材の拘束の程度が軽減される。このため、当該空隙が無い場合と比較して、コネクタの周囲温度が変化した場合に充填材が自由膨張及び自由収縮できる量が増加する。したがって、充填材に発生する熱応力が低減され、充填材の疲労及び劣化が抑制される。さらに、インナプレートが自由膨張及び自由収縮してそのインナプレートの外面の一部に固着した充填材に対して外力が作用しても、充填材は、第1の空隙に向かって変形して、その外力を逃すことができる。この結果、充填材におけるクラックの発生が抑制される。
また、上記(3)の構成のコネクタにおいて第1の空隙が形成されている部分は、前述したようにクラックが発生し易い部分である。これに対して、上記(3)の構成のコネクタでは、当該部分に空隙が形成されているため、充填材におけるクラックの発生が抑制される。
上記(4)の構成のコネクタによれば、第1の空隙と第2の空隙とが連通されているため、これらの空隙が連通されずに別々に形成されている場合と比べて、平易にこれらの空隙を設けることができる。また、充填材に発生する熱応力が低減され、且つ、クラックが発生し易いインナプレート近傍に空隙が形成される。この結果、充填材におけるクラックの発生が抑制される。
上記(5)の構成のコネクタによれば、第2の空隙が相手方のコネクタハウジングを収容する空間と連通されているため、平易に空隙を設けることができる。また、コネクタハウジングによる充填材の拘束の程度が軽減される。このため、充填材に発生する熱応力が低減され、充填材におけるクラックの発生が抑制される。
【0014】
上記(6)の構成の充填材の注入方法によれば、コネクタハウジングの内面のうちの一部と、該一部と対向するインナプレート若しくはインナプレート及び充填材の外面と、の間に空隙が形成されるように、コネクタハウジング内部に充填材が充填される。この結果、充填材に発生する熱応力が低減されて充填材の疲労及び劣化が抑制され、充填材におけるクラックの発生が抑制される。
上記(7)の構成の充填材の注入方法によれば、コネクタハウジングの内部への治具の挿入時において、治具が突出部に突き当たることによって治具の挿入が完了したことが特定される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコネクタ、及び充填材の注入方法によれば、コネクタハウジング内部に充填された充填材におけるクラックの発生が抑制可能なコネクタ、及び充填材の注入方法を提供できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係るコネクタ1の外観を示す斜視図である。
図2図2は、図1におけるコネクタ1の縦断面図である。
図3図3は、図1におけるコネクタ1を前側から視た図である。
図4図4は、インナプレート3に、電線Wに圧着接続された端子4を挿入する端子挿入工程を示す斜視図である。
図5図5は、コネクタハウジング2に、端子挿入工程で得られたインナプレート3を挿入するインナプレート挿入工程を示す斜視図である。
図6図6は、インナプレート挿入工程で得られたコネクタハウジング2に、ゴム栓6を挿入する栓部材挿入工程を示す斜視図である。
図7図7は、栓部材挿入工程で得られたコネクタハウジング2に、治具7を挿入する治具挿入工程を示す斜視図である。
図8図8は、治具挿入工程で得られたコネクタ1を前側から視た図であり、治具7の本体部71及びインナプレート3を把持部72に透過させて示している。
図9図9は、治具挿入工程で得られたコネクタ1の縦断面図である。
図10図10は、治具挿入工程で得られたコネクタハウジング2の内部に、充填材5を充填する充填工程を示す斜視図である。
図11図11は、充填工程で得られたコネクタハウジング2から治具7を抜去する抜去工程を示す斜視図である。
図12図12は、抜去工程で得られたコネクタハウジング2にOリング8を取付けるシール部材取付け工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のコネクタに関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0019】
図1は、実施形態に係るコネクタ1の外観を示す斜視図である。図2は、図1における縦断面図である。図3は、図1におけるコネクタ1を前側から視た図である。以下、本明細書中では、各図に矢印で示すように前側、後側、上側、下側、左側、右側を規定して説明する。
【0020】
本実施形態に係るコネクタ1は、周辺温度が大気温度にしたがって変化する一般的な使用環境下だけではなく、周辺温度が短周期で大幅に変化し得る環境下においても好適に使用可能なコネクタである。コネクタ1は、例えば、自動車のオートマチックトランスミッションに取付け固定されて使用され、エンジン駆動中に上昇してエンジン停止中に低下するオートマチックトランスミッション内部の温度にしたがって、その周辺温度が変化する環境下で使用されることができる。
【0021】
本実施形態に係るコネクタ1は、概略的には、図1及び図2に示すように、オートマチックトランスミッションのケース(図示外、以下ミッションケースと称する場合がある。)に嵌挿固定される略筒形状のコネクタハウジング2と、該コネクタハウジング2の前側に設けられる端子収容部21内に収容され、複数の電線Wの一端部にそれぞれ圧着されて接続された雄型の各端子4を保持するインナプレート3と、コネクタハウジング2の内部の主に後側に画成される充填空間Saに充填されて硬化し、コネクタハウジング2の内部において各電線Wの前記一端部やインナプレート3を保持する充填材5と、コネクタハウジング2の後側の開口に嵌挿され、その開口に各電線Wを挿通しつつコネクタハウジング2の後側開口を閉塞する栓部材であるゴム栓6と、コネクタハウジング2の後側外周に嵌着され、コネクタハウジング2とミッションケースとの間を液密にシールするシール部材である円環形状のOリング8と、を備えている。そして、端子収容部21が図外の相手側コネクタと嵌合して相手方コネクタのコネクタハウジング(図示外。)をその内部に収容し、当該相手側コネクタの内部に収容される図外の雌型の端子に各端子4が嵌挿されることで、相手側の電線との電気接続が行われる。
【0022】
コネクタハウジング2は、所定の樹脂材料によって全体として筒形状に形成されている。コネクタハウジング2は、該コネクタハウジング2の前側に設けられ、その内部にインナプレート3と各端子4とを収容する端子収容部21と、該端子収容部21に隣接するように当該コネクタハウジング2の後側に設けられ、その内部に各電線Wの一端側を収容する電線収容部22と、該電線収容部22の外周に突設され、当該コネクタハウジング2のミッションケースへの固定に供するブラケット部23と、を有している。そして、ミッションケースに穿設された図外のコネクタ収容部内に電線収容部22が嵌挿され、ブラケット部23を介して図外のボルトによりミッションケースに固定される。これにより、各端子4が臨む端子収容部21がミッションケース外部に向かって開口した状態で、コネクタハウジング2の電線収容部22がミッションケースのコネクタ収容部内に収容される。
【0023】
端子収容部21は、略矩形状をなす角筒状に形成され、その内部には、上下方向を長軸とし左右方向を短軸とする楕円状の開口が前後方向に穿設された端子収容空間Sbが画成されている。端子収容部21は、上下方向に対向する一対の側壁211,211と、左右方向に対向する一対の側壁212,212と、を有している。そして、側壁212,212の各内面には、インナプレート3に形成された後記の各係止アーム32,32が係止されることによってインナプレート3をコネクタハウジング2に対して固定する係止爪(図示せず。)が、対向して突出形成されている。尚、これら係止爪は、端子収容部21の前側に向かってその高さが漸次減少するように形成されている。これにより、端子収容部21の前側から挿入されるインナプレート3は、各係止アーム32,32が当該テーパ形状に案内されて各係止爪に円滑に係止される。このため、インナプレート3はコネクタハウジング2に対して容易に固定される。
【0024】
また、左右方向の側壁212,212のうちの左側の側壁212の外面には、図5に示すように、相手側コネクタが有する係止爪に係止する係止突起26が突設されている。当該係止突起26に相手方コネクタの係止爪が係止することにより、コネクタ1と相手側コネクタとが固定される。
【0025】
電線収容部22は、略円筒形状に形成され、端子収容部21の後端に連設されている。電線収容部22は、その内部に、端子収容空間Sbと連通されている電線収容空間Scが画成されている。そして、この電線収容部22の後端部は、円柱状のゴム栓6を収容する栓部材収容部24が形成されており、所定の内径をもって外部に開口して形成されている。栓部材収容部24の内径は、電線収容空間Scを画成する電線収容部22の内径に対し拡径状に設けられている。尚、この栓部材収容部24の内径は、ゴム栓6の外径よりも僅かに小さく設定されて、栓部材収容部24に対してゴム栓6が圧入される構成とされている。さらに、栓部材収容部24の深さは、ゴム栓6の厚さよりも僅かに大きく設定されて、ゴム栓6の収容状態において、電線収容部22の後端からゴム栓6が突出しない構成とされている。
【0026】
図2に示すように、端子収容部21と電線収容部22とは、端子収容空間Sbを上下に二等分する中心線と電線収容空間Scを上下に二等分する中心線とが略一致し、端子収容部21の内形状は電線収容部22の内形状より大きく設定されている。これにより、コネクタハウジング2の内面における端子収容部21と電線収容部22とが連結される箇所には、内形状の差の分、突出部としての段部27が形成されている。この段部27の機能については後述する。
【0027】
また、電線収容部22の外周には、その前後方向における略中間位置に、Oリング8が嵌着する円環状のシール部材収容溝25が周方向に沿って切欠形成されている。即ち、Oリング8は、電線収容部22の外周側からこのシール部材収容溝25に嵌着されることにより、当該シール部材収容溝25に収容固定される。尚、シール部材収容溝25の深さは、Oリング8の線径よりも小さく設定されている。これにより、Oリング8の外周がシール部材収容溝25の開口縁から径方向外側へと突出している。そして、この突出したOリング8の外周がミッションケースのコネクタ収容部の内周面に弾接することによって、このコネクタ収容部とコネクタハウジング2(電線収容部22)との間が液密にシールされる。
【0028】
ブラケット部23には、その厚み方向(図2における前後方向。)に沿ってボルト挿通孔23aが貫通形成されている。このボルト挿通孔23aに挿通されるボルトによって、コネクタハウジング2がミッションケースに固定される。
【0029】
インナプレート3は、図3及び図4に示すように、その全体が所定の樹脂材料により略矩形ブロック状に形成され、内部がいわゆる格子状に構成されている。これにより、インナプレート3の内部には、端子4の挿通方向(図2における前後方向。)に沿って貫通する複数の窓部31が上下方向に4つに並んで左右方向に2段に構成されている。これら各窓部31に各端子4が挿通されて保持される。より具体的には、各端子4は、相手側コネクタの雌型端子との接続に供する先端部41(図2における前側に位置する端部。)と、該先端部41に対し幅広に形成され、電線Wの一端部との圧着接続に供する基端側(図2における後側に位置する端部。)の接続部42と、から構成されている。そして、各端子4がインナプレート3の後側から各窓部31に挿入されると、接続部42の一部が各窓部31に圧入状態で保持され、先端部41の一部がインナプレート3の窓部31の前側から突出し、端子収容部21内部に臨むように構成されている。
【0030】
また、インナプレート3の左右方向の側面3b,3bには、コネクタハウジング2の前記各係止爪に係止する一対の係止アーム32,32が、インナプレート3の後側へ延出するように図2中の前後方向に沿ってそれぞれ延設されている。さらに、インナプレート3の上下方向の側面3c,3cには、係止部33,33がそれぞれ突設されている。
【0031】
充填材5は、例えばエポキシ樹脂等の熱可塑性を有する樹脂材から成る。充填材5は、後述する方法により、図2に示すように、コネクタハウジング2内部において該コネクタハウジング2の内面とインナプレート3とゴム栓6との間に画成される充填空間Saのうちの、後述する空隙9を除く部分にポッティングにより充填されて硬化し、電線Wと端子4との接続部である接続部42を被覆している。充填空間Saは、端子収容部21の内面の一部及び電線収容部22の内面22aと、インナプレート3の後端側の側面3aと、ゴム栓6の図2における前端側の側面6aと、により画成されている。充填材5は、端子収容部21の内面の一部及び電線収容部22の内面22a(コネクタハウジング2の内面のうちの第1の部分)と、インナプレート3の後端側の側面3aと、ゴム栓6の前端側の側面6aと、に固着して、インナプレート3や各電線Wをコネクタハウジング2に対して保持している。即ち、インナプレート3や各電線Wは、充填材5を介してコネクタハウジング2に保持されている。また、充填材5が充填されることにより、各電線Wと各端子4との接続箇所である接続部42が液密に保たれている。
【0032】
図2に示すように、コネクタハウジング2の内面と、インナプレート3の側面及び充填材5の外面と、の間には、空隙9が形成されている。空隙9は、第1の空隙9aと、該第1の空隙9aに連通された第2の空隙9bと、から成る。第1の空隙9aは、図2に示すように、端子収容部21の側壁211,211の後端側における内面211a,211a(コネクタハウジング2の内面のうちの第2の部分)と、該内面211a,211aと対向する充填材5の外面と、の間に形成されている。また、より詳細には、第1の空隙9aは、図2に示すように、内面211a,211a(コネクタハウジングの内面のうちの第2の部分)と、該内面211a,211aと対向するインナプレート3の外面の一部に固着した、充填材5の外面と、の間に形成されている。一方、第2の空隙9bは、内面211aに連設されている、端子収容部21の側壁211,211の内面211b,211b(コネクタハウジング2の内面のうちの第3の部分)と、該内面211b,211bと対向するインナプレート3の側面3cと、の間に形成されている。図2に示すように、第1の空隙9aの後端側と第2の空隙9bの前端側とは連通されている。また、第2の空隙9bは、端子収容部21のうちの相手方のコネクタハウジングを収容する空間である相手方コネクタ収容空間Sdと連通されている。
【0033】
栓部材としてのゴム栓6は、図6に示すように、ゴム等の弾性材料によって略円柱形状に形成され、栓部材収容部24内に圧入されることで、その外周が栓部材収容部24の内周壁に弾接した状態でコネクタハウジング2の後端側開口を閉塞している。これにより、後述する充填工程において、充填空間Saに充填された硬化前の液状の充填材5がコネクタハウジング2の後端側開口から漏出しないように構成されている。また、これにより、コネクタハウジング2の後端側開口が液密にシールされた状態となっている。そして、このゴム栓6には、インナプレート3の各窓部31に対応するように上下方向に4つ並んで左右2段に並列に位置する、その内部を各電線Wが挿通(貫通)する複数の電線挿通孔61が、ゴム栓6の厚さ方向に沿って貫通形成されている。これにより、各電線挿通孔61を介して各電線Wの他端側を栓部材収容部24よりも後方へと引き出すことが可能となっている。ここで、各電線挿通孔61は、その前後方向における一部の内径が各電線Wの線径より僅かに小さく設定され、その内部を挿通する各電線Wの外周面と弾接することによって、各電線Wとの間が液密にシールされた状態となっている。これによっても、充填空間Saに充填された液状の充填材5がコネクタハウジング2の後端側開口から漏出しないように構成されると共に、コネクタハウジング2の後端側開口が液密にシールされた状態となっている。
【0034】
シール部材としてのOリング8は、図2及び図12に示すように、周知のOリングであって、シール部材収容溝25に嵌着されることにより、コネクタハウジング2に組付固定されている。そして、このOリング8は、その外周がミッションケースのコネクタ収容部の内周面に弾接することにより、ミッションケースとコネクタハウジング2との間を液密にシールしている。
【0035】
以下では、本発明の充填材の注入方法を含む本実施形態に係るコネクタ1の製造方法を図4図12に基づいて説明する。図4は、インナプレート3に、電線Wに圧着接続された端子4を挿入する端子挿入工程を示す斜視図である。図5は、コネクタハウジング2に、端子挿入工程で得られたインナプレート3を挿入するインナプレート挿入工程を示す斜視図である。図6は、インナプレート挿入工程で得られたコネクタハウジング2に、ゴム栓6を挿入する栓部材挿入工程を示す斜視図である。図7は、栓部材挿入工程で得られたコネクタハウジング2に、治具7を挿入する治具挿入工程を示す斜視図である。図8は、治具挿入工程で得られたコネクタ1を前側から視た図であり、治具7の本体部71及びインナプレート3を把持部72に透過させて示している。図8では、把持部72に透過させた治具7の本体部71を一点鎖線により、把持部72に透過させたインナプレート3を点線により示している。図9は、治具挿入工程で得られたコネクタ1の縦断面図である。図10は、治具挿入工程で得られたコネクタハウジング2の内部に、充填材5を充填する充填工程を示す斜視図である。図11は、充填工程で得られたコネクタハウジング2から治具7を抜去する抜去工程を示す斜視図である。図12は、抜去工程で得られたコネクタハウジング2にOリング8を取付けるシール部材取付け工程を示す斜視図である。
【0036】
まず、コネクタ1の製造方法において用いられる治具7について説明する。
治具7は、金属材料により形成され、図7に示すように、略筒形状に形成された本体部71と、該本体部71の図7における前端に一体に形成された鍔形状の把持部72と、を有している。本体部71の図7における後側の端面には、該本体部71の前側に向かって切り欠かれた複数の切欠きが形成されている。言い換えると、本体部71は、上下方向に対向する一対の切欠片73,73と、該切欠片73,73の図8における左方に並んで形成された一対の切欠片74,74と、該切欠片73,73の図8における右方に並んで形成され、該切欠片74,74に左右方向にそれぞれ対向する切欠片75,75と、を有している。また、本体部71の外形状は、端子収容部21の内形状と対応する形状に形成されている。即ち、本体部71は、その外面が端子収容部21の側壁211,211及び側壁212,212の内面に沿うように、該端子収容部21に対して前側から挿入可能に形成されている。尚、本実施形態では、治具7が金属製である構成としたが、治具7は伸縮性が高い材料により形成されていてもよく、例えば樹脂製であっても構わない。
【0037】
次に、本実施形態に係るコネクタ1の製造方法を説明する。以下、コネクタ1の製造方法の説明に際して、製造に係る作業を作業者が実施する態様を説明するが、本発明の実施態様はこれに限られない。例えば、製造に係る作業の一部又は全てが製造装置により為される態様であってもよい。
【0038】
本実施形態に係るコネクタ1の製造方法は、概略的には、インナプレート3に、電線Wに圧着接続された端子4を挿入する端子挿入工程と、コネクタハウジング2に、端子挿入工程で得られたインナプレート3を挿入するインナプレート挿入工程と、インナプレート挿入工程で得られたコネクタハウジング2に、ゴム栓6を挿入する栓部材挿入工程と、栓部材挿入工程で得られたコネクタハウジング2に、治具7を挿入する治具挿入工程と、治具挿入工程で得られたコネクタハウジング2の内部に、充填材5を充填して硬化させる充填工程と、充填工程で得られたコネクタハウジング2から治具7を抜去する抜去工程と、抜去工程で得られたコネクタハウジング2にOリング8を取付けるシール部材取付け工程と、を順に実施することにより実現される。以下では、上記各工程について順に説明する。
【0039】
端子挿入工程では、まず、作業者は、電線Wの一端に雄型の各端子4の接続部42を圧着し、電線Wと端子4とを圧着接続する。その後、作業者は、図4に示すように、電線Wに圧着接続された各端子4を図4における後側からインナプレート3の各窓部31に挿通し、各端子4をインナプレート3に保持させる。
【0040】
インナプレート挿入工程では、作業者は、図5に示すように、端子挿入工程で得られた各端子4が保持されたインナプレート3を前側から端子収容部21の端子収容空間Sbに挿入する。このとき、インナプレート3の係止アーム32,32が該端子収容部21の左壁213及び右壁214の各内面に形成された係止爪と係合する。これにより、インナプレート3がコネクタハウジング2に対して固定される。インナプレート3の挿入と同時に、電線Wが電線収容部22の電線収容空間Scに収容される。
【0041】
栓部材挿入工程では、作業者は、図6に示すように、インナプレート挿入工程で得られたコネクタハウジング2内部にゴム栓6を挿入する。より具体的には、作業者は、ゴム栓6を、電線挿通孔61に各電線Wが挿通された状態で、栓部材収容部24内に後側から圧入する。これにより、ゴム栓6がコネクタハウジング2に対して固定される。
【0042】
治具挿入工程では、作業者は、図7に示すように、栓部材挿入工程で得られたコネクタハウジング2内部に治具7を挿入する。より具体的には、作業者は、該本体部71の外面が端子収容部21の側壁211,211及び側壁212,212の内面に沿うように、治具7の本体部71の後端を端子収容部21の端子収容空間Sbに前側から挿入する。作業者は、図9に示すように、本体部71の後端面がコネクタハウジング2の内部に形成された段部27に当接するまで治具7を端子収容部21に挿入する。このとき、作業者は、図9に示すように、コネクタハウジング2の内面とインナプレート3の外面との間から充填空間Sa内部に進入するように、治具7の本体部71を端子収容部21に挿入する。以上の治具挿入工程により、治具7は、コネクタハウジング2内部に挿入され、図9に示すように、端子収容部21の側壁211,211の内面と、インナプレート3及び端子4と、の間に配置される。尚、治具7に把持部72が形成されているため、作業者は、治具挿入工程において把持部72を把持して作業を実施できる。このため、作業者は、治具7をコネクタハウジング2に対して容易に挿抜できる。
【0043】
治具挿入工程でコネクタハウジング2内部に治具7が挿入された状態においては、図8に示すように、切欠片73,73は、それぞれインナプレート3の係止部33,33と端子収容部21の側壁211,211の内面との間に位置する。切欠片74,74は、それぞれインナプレート3の外面と端子収容部21の側壁212,212のうちの一方の内面との間に位置する。また、切欠片74,74の間には、インナプレート3の左側の側面3bに形成された係止アーム32が位置する。切欠片75,75は、それぞれインナプレート3の外面と端子収容部21の側壁212,212のうちの他方の内面との間に位置する。また、切欠片75,75の間には、インナプレート3の右側の側面3bに形成された係止アーム32が位置する。
【0044】
充填工程では、作業者は、図10に示すように、治具挿入工程で得られたコネクタハウジング2の内部に充填材5を充填して硬化させる。より具体的には、作業者は、ポッティング材としての充填材5を射出するノズルを、コネクタハウジング2の内面とインナプレート3との間にコネクタハウジング2の前側から差し込み、充填材5をコネクタハウジング2内部の充填空間Sa内に充填させて硬化させる。これにより、電線Wと端子4との接続部である接続部42が充填材5により被覆される。また、電線収容部22の内面22aと、インナプレート3の後端側の側面3aと、ゴム栓6の図2における前端側の側面6aと、に充填材5が固着する。一方、充填空間Saのうちの治具7が占める部分には充填材5が充填されない。
【0045】
抜去工程では、作業者は、図11に示すように、充填工程で得られたコネクタハウジング2から治具7を抜去する。これにより、充填空間Saのうちの充填工程において治具7が占めていた部分に空隙9が形成される。尚、抜去工程における治具7の抜去を容易とするために、治具7には、治具挿入工程でコネクタハウジング2内に挿入する前に、充填材5の固着を防止する剥離材が予め塗布されている。
【0046】
以上説明した治具挿入工程、充填工程、及び抜去工程から成る充填材の注入方法により、コネクタハウジング2の内面と、インナプレート3の側面及び充填材5の外面と、の間に空隙9が形成されるように、コネクタハウジング2内部に充填材5が充填される。
【0047】
シール部材取付け工程では、作業者は、図12に示すように、抜去工程で得られたコネクタハウジング2にOリング8を取付ける。
【0048】
以上の一連の工程により、図2に示すように、コネクタハウジング2の内面と、インナプレート3の側面及び充填材5の外面と、の間に空隙9が形成されたコネクタ1が製造される。より具体的には、第1の空隙9aが、端子収容部21の内面211a,211aと、該内面211a,211aと対向する充填材5の外面と、の間に形成され、該第1の空隙9aと連通する第2の空隙9bが、端子収容部21の内面211b,211bと、該内面211b,211bと対向するインナプレート3の側面と、の間に形成されたコネクタ1が製造される。
【0049】
以下では、本実施形態に係るコネクタ1、及び充填材の注入方法の作用及び効果を説明する。
【0050】
本実施形態に係るコネクタ1は、筒形状のコネクタハウジング2と、電線Wの一端部に接続された端子4を支持し、コネクタハウジング2内部に収容されるインナプレート3と、インナプレート3が収容されたコネクタハウジング2内部に充填されて硬化し、電線Wと端子4との接続部42を被覆する充填材5と、を備え、充填材5が、コネクタハウジング2の内面のうちの第1の部分である端子収容部21の内面の一部及び電線収容部22の内面22aと、インナプレート3の側面3aと、に固着し、コネクタハウジング2の内面のうちの第2の部分である内面211a,211aと、該内面211a,211aと対向する充填材5の外面と、の間には、第1の空隙9aが形成されている。
これにより、内面211aと、該内面211aと対向する充填材5の外面と、の間に第1の空隙9aが形成されているため、第1の空隙9aが無い場合と比較して、コネクタハウジング2による充填材5の拘束の程度が軽減される。このため、第1の空隙9aが無い場合と比較して、コネクタ1の周囲温度が変化した場合に充填材5が自由膨張及び自由収縮できる量が増加する。したがって、充填材5に発生する熱応力が低減され、充填材5の疲労及び劣化が抑制される。また、充填材5に発生する熱衝撃が低減される。この結果、充填材5におけるクラックの発生が抑制される。
よって、本実施形態に係るコネクタ1によれば、コネクタハウジング2内部に充填された充填材5におけるクラックの発生が抑制可能なコネクタを提供できる。
【0051】
また、本実施形態に係るコネクタ1は、コネクタハウジング2の内面のうちの第3の部分である内面211b,211bと、該内面211b,211bと対向するインナプレート3の外面と、の間には、第2の空隙9bが形成されている。
これにより、内面211b,211bと、該内面211b,211bと対向するインナプレート3の外面と、の間に第2の空隙9bが形成されているため、第2の空隙9bが無い場合と比較して、コネクタハウジング2によるインナプレート3の拘束の程度が軽減される。このため、第2の空隙9bが無い場合と比較して、コネクタ1の周囲温度が変化した場合にインナプレート3が自由膨張及び自由収縮できる量が増加する。したがって、インナプレート3に発生する熱応力が低減するため、インナプレート3の側面3aに固着する充填材5に対してインナプレート3から作用する外力が低減される。この結果、充填材5におけるクラックの発生が抑制される。
また、コネクタ1において第2の空隙9bが形成されている部分は、第2の空隙9bが無く当該部分に充填材5が充填されている場合には、充填材5と熱膨張係数が異なる端子4、電線W、及びインナプレート3が集合している箇所の近傍に位置するために、熱応力が発生し易くクラックが発生し易い部分である。これに対して、コネクタ1では、当該部分には第2の空隙9bが形成されているため、充填材5におけるクラックの発生が抑制される。
よって、本実施形態に係るコネクタ1によれば、コネクタハウジング2内部に充填された充填材5におけるクラックの発生が抑制可能なコネクタを提供できる。
【0052】
また、本実施形態に係るコネクタ1は、第1の空隙9aが、コネクタハウジング2の内面のうちの第2の部分である内面211a,211aと、該内面211a,211aと対向するインナプレート3の外面の一部に固着した、充填材5の外面と、の間に形成されている。
これにより、内面211a,211aと、該内面211a,211aと対向するインナプレート3の外面の一部に固着した、充填材5の外面と、の間に第1の空隙9aが形成されているため、当該第1の空隙9aが無い場合と比較して、コネクタハウジング2による充填材5の拘束の程度が軽減される。このため、当該第1の空隙9aが無い場合と比較して、コネクタ1の周囲温度が変化した場合に充填材5が自由膨張及び自由収縮できる量が増加する。したがって、充填材5に発生する熱応力が低減され、充填材5の疲労及び劣化が抑制される。さらに、インナプレート3が自由膨張及び自由収縮してインナプレート3の外面の一部に固着した充填材5に対して外力が作用しても、充填材5は、第1の空隙9aに向かって変形して、その外力を逃がすことができる。この結果、充填材5におけるクラックの発生が抑制される。
また、当該構成に係るコネクタにおいて第1の空隙9aが形成されている部分は、前述したようにクラックが発生し易い部分である。これに対して、当該構成に係るコネクタでは、当該クラックが発生し易い部分に第1の空隙9aが形成されているため、充填材5におけるクラックの発生が抑制される。
【0053】
また、本実施形態に係るコネクタ1は、第1の空隙9aと第2の空隙9bとが連通されている。
これにより、第1の空隙9aと第2の空隙9bとが連通されているため、これらの空隙が連通されずに別々に形成されている場合と比べて、平易にこれらの空隙を設けることができる。また、充填材5に発生する熱応力が低減され、且つ、クラックが発生し易いインナプレート3近傍に空隙が形成される。この結果、充填材5におけるクラックの発生が抑制される。
【0054】
また、本実施形態に係るコネクタ1は、第2の空隙9bが、コネクタハウジング2内部のうちの相手方のコネクタハウジングを収容する空間である相手方コネクタ収容空間Sdと連通されている。
これにより、第2の空隙9bが相手方コネクタ収容空間Sdと連通されているため、平易に空隙を設けることができる。また、コネクタハウジング2による充填材5の拘束の程度が軽減される。このため、充填材5に発生する熱応力が低減され、充填材5におけるクラックの発生が抑制される。
【0055】
本実施形態に係る充填材の注入方法は、電線Wの一端部に接続された端子4を支持するインナプレート3が収容された筒形状のコネクタハウジング2内部に、コネクタハウジング2の内面とインナプレート3の外面との間から治具7を挿入する治具挿入工程と、電線Wと端子4との接続部42を被覆するように、コネクタハウジング2内部に充填材5を充填して硬化させ、充填材5をコネクタハウジング2の内面のうちの一部とインナプレート3の外面とに固着させる充填工程と、治具7をコネクタハウジング2から抜去する抜去工程と、を含む。
これにより、コネクタハウジング2の内面のうちの一部と、該一部と対向するインナプレート3若しくはインナプレート3及び充填材5の外面と、の間に空隙が形成されるように、コネクタハウジング2内部に充填材5が充填される。この結果、充填材5に発生する熱応力が低減されて充填材5の疲労及び劣化が抑制され、充填材5におけるクラックの発生が抑制される。
よって、本実施形態に係る充填材の注入方法によれば、コネクタハウジング2内部に充填された充填材5におけるクラックの発生が抑制可能な充填材の注入方法を提供できる。また、本実施形態に係る充填材の注入方法を含むコネクタ1の製造方法によれば、コネクタハウジング2内部に充填された充填材5におけるクラックの発生が抑制可能なコネクタの製造方法を提供できる。
【0056】
また、本実施形態に係る充填材の注入方法では、挿入工程において、治具7を、コネクタハウジング2の内面に形成された段部27に治具7が突き当たるまで挿入する。
これにより、コネクタハウジング2内部への治具7の挿入時において、治具7が段部27に突き当たることによって治具7の挿入が完了したことが特定される。
したがって、作業者が治具7のコネクタハウジング2への挿入が完了したことを容易に特定できるため、作業性が向上する。
【0057】
尚、本明細書中では、コネクタハウジング2の内面と、インナプレート3の側面及び充填材5の外面と、の間に形成される空隙のうちの、図2に示す断面に現れる空隙、即ちコネクタハウジング2の側壁211,211の内面と、インナプレート3の側面及び充填材5の外面と、の間に形成される空隙9のみについて説明したが、図8及び充填工程についての説明から明らかなように、本実施形態に係るコネクタ1では、コネクタハウジング2の側壁212,212の内面と、インナプレート3の側面及び充填材5の外面と、の間にも空隙が形成されている。即ち、図8における欠片74,74及び切欠片75,75の位置にも、空隙9と同様に空隙が形成されている。上下方向の側壁211,211の内面と、インナプレート3の側面及び充填材5の外面と、の間だけではなく、左右方向の側壁212,212の内面と、インナプレート3の側面及び充填材5の外面と、の間にも空隙が形成されていることにより、充填材5に発生する熱応力が更に低減され、充填材5におけるクラックの発生が更に抑制される。
【0058】
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態は、本発明の技術的範囲内で種々の変形や改良等を伴うことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 コネクタ
2 コネクタハウジング
21 端子収容部
211 側壁
211a 内面(第2の部分)
211b 内面(第3の部分)
212 側壁
22 電線収容部
22a 内面
23 ブラケット部
23a ボルト挿通孔
24 栓部材収容部
25 シール部材収容溝
26 係止突起
27 段部(突出部)
3 インナプレート
3a 側面
3b 側面
3c 側面
31 窓部
32 係止アーム
33 係止部
4 端子
41 先端部
42 接続部
5 充填材
6 ゴム栓
6a 側面
61 電線挿通孔
7 治具
71 本体部
72 把持部
73 切欠片
74 切欠片
75 切欠片
8 Oリング
9 空隙
9a 第1の空隙
9b 第2の空隙
W 電線
Sa 充填空間
Sb 端子収容空間
Sc 電線収容空間
Sd 相手方コネクタ収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12