特許第5965747号(P5965747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉野工業所の特許一覧

<>
  • 特許5965747-加熱容器 図000002
  • 特許5965747-加熱容器 図000003
  • 特許5965747-加熱容器 図000004
  • 特許5965747-加熱容器 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965747
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】加熱容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/26 20060101AFI20160728BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B65D81/26 E
   B65D81/34 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-146779(P2012-146779)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-9002(P2014-9002A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】石原 智幸
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
【審査官】 神山 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/061346(WO,A1)
【文献】 特開2005−047584(JP,A)
【文献】 特表2005−535335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/26
B65D 81/34
B65D 77/20
B65D 51/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状に形成されるとともに、内部に内容物が収容される容器本体と、
該容器本体の開口部を離脱自在に閉塞するシート体と、
を備える加熱容器であって、
前記シート体は、前記容器本体の内部に臨む内層と、前記容器本体の外部に臨む外層と、これらの内層と外層との間に配設された中間層と、を備え、
前記内層及び前記外層には、前記容器本体の開口部の開口面に沿う位置を互いに異ならせて、少なくとも前記中間層との界面に達する切込みが各別に形成され、これらの切込みのうちの少なくとも内側の切込みが前記中間層を貫いていて、
前記シート体のうち、その平面視において、前記内層及び前記外層に各別に形成された切込み同士の間に位置する部分における少なくとも前記外層と、前記中間層と、が剥離自在に積層されていることを特徴とする加熱容器。
【請求項2】
前記内層及び前記外層それぞれの切込みは、平面視で互いに平行に且つ一定間隔を保って配置されていることを特徴とする請求項に記載の加熱容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内部に内容物を収容し、有底筒状に形成された容器本体と、該容器本体の開口部を離脱自在に閉塞するシート体と、を備え、該シート体の一部を開口部から剥離して、内容物を容器本体ごと電子レンジで加熱されるものが知られている。また、加熱時の圧力上昇を回避するために、例えば下記特許文献1に示されるような、容器本体と、この容器本体の開口部を閉塞する蓋体と、を備え、該蓋体に圧力開放機能を設けた加熱容器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−93576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の加熱容器では、加熱する前に、シート体の少なくとも一部を容器本体から剥がして開口部を開放させておかないと、容器本体の内圧が上昇するおそれがあった。
また、蓋体に圧力開放機能を設けた加熱容器では、構成が複雑となり、設計上の制約を受けたり、コストアップが生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、加熱する前に、容器本体の開口部を開放させておく必要がなく、優れた操作性を具備させることができる加熱容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係る加熱容器は、有底筒状に形成されるとともに、内部に内容物が収容される容器本体と、該容器本体の開口部を離脱自在に閉塞するシート体と、を備える加熱容器であって、前記シート体は、前記容器本体の内部に臨む内層と、前記容器本体の外部に臨む外層と、これらの内層と外層との間に配設された中間層と、を備え、前記内層及び前記外層には、前記容器本体の開口部の開口面に沿う位置を互いに異ならせて、少なくとも前記中間層との界面に達する切込みが各別に形成され、これらの切込みのうちの少なくとも内側の切込みが前記中間層を貫いていて、前記シート体のうち、その平面視において、前記内層及び前記外層に各別に形成された切込み同士の間に位置する部分における少なくとも前記外層と、前記中間層と、が剥離自在に積層されていることを特徴としている
【0007】
本発明に係る加熱容器によれば、加熱によって容器本体内の圧力が高まったときに、この圧力を、内層に形成された切込みを通して、少なくとも外層と、中間層と、の間に及ぼして両者を剥離させることができる。
これにより、シート体のうち、その平面視において、内層及び外層に各別に形成された切込み同士の間に位置する部分の、剥離される界面を通して、切込み同士が連通され、容器本体の内圧が外部に開放される。これにより、容器本体内の圧力を容器外に逃がすことができ、内圧上昇を防止することができる。
【0008】
また、本発明に係る加熱容器では、前記内層及び前記外層それぞれの切込みは、平面視で互いに平行に且つ一定間隔を保って配置されていることが好ましい。
【0009】
この場合には、シート体のうち、切込み同士の間に位置する部分が全域にわたって前述のように剥離し易くなり、剥離箇所が部分的に集中するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る加熱容器によれば、容器本体の内圧によってシート体に形成された切込みからシート体を層間剥離させて、容器本体の内圧を開放させることができるので、加熱する前に、容器本体の開口部を開放させておく必要がなく、優れた操作性を具備させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による加熱容器の側断面図である。
図2図1に示すA−A線矢視図であって、蓋体を省略した加熱容器を上方から見た図である。
図3図1の加熱容器の要部を示す拡大側断面図である。
図4図3に示す領域Bにおいて本実施形態の加熱容器の作用を説明するための要部側断面図であって、(a)は排気通路の形成前の図、(b)は排気通路の形成後の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る加熱容器の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の加熱容器1は、有底筒状に形成されるとともに、内部に内容物Wが収容される容器本体2と、この容器本体2の上端開口部2aを離脱自在に閉塞するシート体3(図2参照)と、容器本体2に着脱自在に被着された蓋体4と、を備えている。
【0014】
なお、容器本体2及び蓋体4それぞれの中心軸は、共通軸上に位置している。本実施形態では、この共通軸を中心軸Oといい、この中心軸Oに直交する方向を径方向とする。また、中心軸Oに沿って蓋体4側を上側とし、容器本体2の底部2b側を下側とする。また、内容物Wの一例として、図1では液体状の食品や食材等を想定して図示している。
【0015】
容器本体2は、上部が開口しており、底部2bと胴部2cとを備えている。なお、本実施形態の胴部2cは、円筒状に形成されている。胴部2cの上端開口部2aには、径方向外方に延在する環状のフランジ部2dが連設されている。
なお、この容器本体2は、図示しない金型を利用した各種の成形方法、例えば、射出成形、熱成形(シート成形)や圧縮成形等、を利用して形成してもよい。
【0016】
蓋体4は、容器本体2の上端開口部2aの上方を覆う部材であり、有頂筒状に形成され、天板4aと周壁部4bとを備えている。天板4aのうち、外周縁部4cは、他よりも下方に位置していて、容器本体2のフランジ部2d上に配置されている。周壁部4bは、外周縁部4cの外周縁から下方に向けて延在している。この周壁部4bの内周面には、径方向内方に向かって突出した環状の係合凸部4dが形成されている。そして、この係合凸部4dがフランジ部2dに係合することで、蓋体4は容器本体2の上端開口部2aに着脱自在に被着されている。
なお、この蓋体4は、容器本体2と同様に、射出成形、熱成形(シート成形)や圧縮成形等、種々の方法によって成形することができる。
【0017】
シート体3は、図1及び図3に示すように、平面視円形状のシート(フィルム)であり、容器本体2の上端開口部2aの開口を覆うようにフランジ部2d上に重ねられている。シート体3は、外周縁部がフランジ部2dの上面に接着されることで容器本体2内をシールしている。このシール部による接着は、熱圧着や接着剤等の各種の方法を利用すれば良い。なお、蓋体4は、容器本体2の開口がシート体3によって閉塞されている状態で、フランジ部2dに係合凸部4dが係合することで、容器本体2の上端開口部2aに被着されている。
【0018】
シート体3は、容器本体2の内部に臨む内層3Aと、容器本体2の外部に臨む外層3Bと、これらの内層3Aと外層3Bとの間に配設された中間層3Cと、を備えている。
【0019】
内層3A及び外層3Bには、容器本体2の上端開口部2aの開口面に沿う位置を互いに異ならせて、少なくとも中間層3Cとの界面に達する第1切込み3a及び第2切込み3bが各別に形成され、これらの切込み3a、3bそれぞれが中間層3Cを貫いていている。第1切込み3aと第2切込み3bは、互いに一定間隔を保って平行に延在し、シート体3の外周縁より径方向の内側に位置している。図示の例では、第1切込み3a及び第2切込み3bは、容器本体2の上端開口部2aの内周面より径方向の内側に位置している。
【0020】
図1及び図3に示すように、シート体3のうち、その平面視において、内層3A及び外層3Bに各別に形成された切込み3a、3b同士の間に位置する部分(以下、切込み間領域)3cにおける内層3A及び外層3Bと、中間層3Cと、は剥離自在に積層されている。なお、切込み間領域3c以外の部分の、内層3A及び外層3Bと、中間層3Cと、は剥離自在でもよいし、溶着、融着、接着等により剥離不能であってもよい。なお、図2に示すように、平面視で切込み間領域3cは、中心軸Oから離れた位置に配置されている。
【0021】
本実施形態によれば、切込み間領域3cにおける内層3A及び外層3Bと、中間層3Cと、が剥離すると、第1切込み3aと第2切込み3bとが切込み間領域3cを介して連通し、容器本体2内とシート体3の外方(シート体3と蓋体4との間の外部空間R)とが連通し、容器本体2内で発生したガスGを外部空間Rへ逃がす排気通路3d(図4参照)が形成される。
【0022】
また、本実施形態では、内層3A及び外層3Bを予め形成しておき、これらを積層した状態に配置し、両者間に溶融状態にある中間層3Cを形成する材料を流し込んで中間層3Cを形成する。このとき、中間層3Cを構成する材料と、内層3A及び外層3Bを構成する材料と、で相溶性のない材料を選択することにより、内層3A及び外層3Bと、中間層3Cと、が剥離自在に積層(疑似接着状態)されたシート体3が得られる。この場合、例えば、外層3Bをポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム又はシートで形成し、内層3Aを無延伸ポリプロピレン(CPP)製フィルム又はシートで形成するとともに、中間層3Cを溶融状態で押出しされるポリエチレン(PE)により形成することができる。
なお、内層3Aと中間層3C、又は外層3Bと中間層3C、の少なくとも一方が剥離可能に積層されていれば良いため、他方を相溶性のある材料で接着状態としてもよい。
【0023】
以上説明した本実施形態による加熱容器1によれば、以下の作用効果を奏する。ここでは、加熱容器1を加熱した場合について説明する。
本実施形態による加熱容器1では、まず図1に示すように加熱によって内容物Wから水蒸気等のガスGが発生して容器本体2の内圧が高まったとき、この圧力を、図4(a)に示すように内層3Aに形成された第1切込み3aを通して、外層3Bと、中間層3Cと、の間に及ぼして両者3B、3Cを剥離させることができる。
【0024】
つまり、図4(b)に示すように、切込み間領域3cにおける剥離が第2切込み3bに到達することで、外層3Bと、中間層3Cと、の層間に、切込み3a、3b同士を連通する排気通路3dが形成され、この排気通路3dを通じて容器本体2内のガスGが外部空間Rに排出され、容器本体2の内圧が外部に開放される。この場合、内層3Aと、中間層3Cと、は剥離しない。これにより、容器本体2内の圧力を容器外に逃がすことができ、内圧上昇を防止することができる。なお、上記ガスGは発生しなくてもよい。
【0025】
また、本実施形態の加熱容器1では、上述したように外層3Bと、中間層3Cと、が剥離する場合に限らず、切込み間領域3cで内層3Aと、中間層3Cと、を剥離させる場合もある。この場合、容器本体2の圧力を、第1切込み3aを通して、内層3Aと、中間層3Cと、の間に及ぼして両者3A、3Cを剥離させることができ、その両者3A、3Cの層間に切込み3a、3b同士を連通する排気通路3dが形成されることになる。なお、この場合、外層3Bと、中間層3Cと、は剥離しない。
【0026】
また、内層3A及び外層3Bそれぞれの切込み3a、3bは、平面視で互いに平行に且つ一定間隔を保って配置されているので、シート体3のうち切込み間領域3cが全域にわたって前述のように剥離し易くなり、剥離箇所が部分的に集中するのを防ぐことができる利点がある。
【0027】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0028】
例えば、上記実施形態では、切込み3a、3bを内層3A及び外層3Bそれぞれにおいて1箇所ずつ設けているが、各層3A、3Bに複数の切込みを設けるようにしてもよいし、各層3A、3Bの切込み数が異なっていてもよい。例えば、内層3Aの切込みを1箇所とし、外層3Bの切込みを平面視で内層3A側の第1切込み3aを挟んだ両側に2箇所設けることも可能である。
また、それら切込みの位置や切込み同士の間隔(切込み間領域3cの幅寸法)は、適宜設定することができる。例えば、容器本体2内の内圧を切込み同士の間隔によって調整することも可能であり、容器本体2の内圧を外部に開放するまでの時間を長くする場合には、その時間に応じて切込み同士の間隔を広くすればよい。
【0029】
切込み間領域3c以外の部分を剥離可能とすることも、剥離不能とすることも可能である。また、切込み間領域3cにおける各層間の接着力を、他の部分における各層間の接着力よりも小さくしておくことで、切込み間領域3cのみを先に剥離させることができ、効率よく排気通路3dを形成することができる。
【0030】
さらに、本実施の形態では第1切込み3a及び第2切込み3bの両者共に、中間層3Cを貫いているが、少なくとも一方が中間層3Cを貫いていればよい。すなわち、中間層3Cを貫かない他方の切込みは内層3A又は外層3Bのみを貫く構成となる。この場合には、中間層3Cを厚さ方向に貫いていない側の中間層との界面で層間剥離が進行することになる。
さらに、上記実施形態において、内層、外層、中間層をそれぞれ単層で構成したが、それぞれの層を複数の膜からなるように構成してもよい。
【0031】
さらにまた、本実施形態では、シート体3を内層3A、外層3B、および中間層3Cの3層構造としているが、内層3Aと外層3Bの2層とすることも可能である。この場合、内層及び外層には、容器本体の開口部の開口面に沿う位置を互いに異ならせて、両層の界面に達する切込みが各別に形成され、それら切込み同士の間に位置する部分で両層が剥離自在に積層されていれば良い。
【0032】
また、上記実施形態では、容器本体2を円筒状としたが、有底筒状であれば、断面楕円形状や断面角形状にしても構わない。この際、容器本体2の形状に合わせて蓋体4の形状を適宜変更すれば良い。
【0033】
また、上記実施形態では、容器本体2のフランジ部2dに蓋体4の係合凸部4dを係合させることで、容器本体2の上端開口部2aに蓋体4を着脱自在に被着させた構成としたが、この場合に限られるものではない。例えば、蓋体4を容器本体2に螺合させることで着脱自在に被着させる構成としても構わないし、蓋体4を設けなくても良い。
【0034】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 加熱容器
2 容器本体
2a 上端開口部
3 シート体
3A 内層
3B 外層
3C 中間層
3a 第1切込み
3b 第2切込み
3c 切込み間領域
3d 排気通路
4 蓋体
G ガス
O 中心軸
R 外部空間
W 内容物
図1
図2
図3
図4