(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965751
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】コネクタ端子及びコネクタ端子の止水方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20160728BHJP
H01R 4/70 20060101ALI20160728BHJP
H01R 43/24 20060101ALI20160728BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/70 K
H01R43/24
B29C45/14
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-149674(P2012-149674)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-13657(P2014-13657A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶
(72)【発明者】
【氏名】▲児▼玉 晋司
【審査官】
竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−234144(JP,A)
【文献】
特開2009−176537(JP,A)
【文献】
特開2001−162647(JP,A)
【文献】
特開2006−123458(JP,A)
【文献】
特開平04−324323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 4/70
H01R 43/24
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を有するコネクタ端子であり、電線の外被から露出された導体が導通接続されるバレル部と、前記長手方向における前記バレル部より先端側に位置すると共に相手方端子と導通される端子部とを備え、前記バレル部と前記電線との接続箇所が樹脂からなるモールド部によって覆われて止水された金属材料からなるコネクタ端子であって、
前記モールド部の先端側の端面が、前記バレル部における前記導体の先端の位置よりも前記長手方向において先端側に位置し、
前記バレル部における前記長手方向の先端側の一部の所定範囲であって前記モールド部の先端側の端面に対して前記長手方向の先端側の第1位置と前記長手方向の後端側の第2位置との間の所定範囲の側面にのみ、全周に亘って接着剤の層が設けられたことを特徴とするコネクタ端子。
【請求項2】
長手方向を有するコネクタ端子であり、電線の外被から露出された導体が導通接続されるバレル部と、前記長手方向における前記バレル部より先端側に位置すると共に相手方端子と導通される端子部とを備えた金属材料からなるコネクタ端子の止水方法であって、
前記バレル部における前記長手方向の先端側の一部の所定範囲であって前記導体の先端の位置に対して前記長手方向の先端側の第1位置と前記第1の位置より前記長手方向の後端側の第2位置との間の所定範囲の側面にのみ、全周に亘って接着剤を塗布するプライマー塗布工程と、
前記コネクタ端子を金型に配置させて前記バレル部と前記電線との接続箇所の周囲に射出空間を形成し、前記射出空間へ樹脂を注入して前記バレル部と前記電線との接続箇所を樹脂からなるモールド部であってその先端側の端面が前記長手方向における前記第1位置と前記第2位置との間であって前記導体の先端の位置よりも前記長手方向において先端側に位置するモールド部で覆うモールド部成形工程と、
を含むことを特徴とするコネクタ端子の止水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの端部に接続されるコネクタ端子及びコネクタ端子の止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ケーブルの端部に接続されるコネクタ端子に防水性を持たせるために、上下型からなる成形金型の内部に、被覆電線の先端部導体に端子金具を圧着した端末接続部を収容してセットする成型空洞のモールド部が設けられ、モールド部に溶融状態のモールド樹脂を射出注入して端末接続部を被覆成形することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−162647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、端末接続部を被覆するモールドする樹脂は、その止水性を確保するために、樹脂からなるケーブルの被覆だけでなく、金属材料からなるコネクタ端子にも密着する必要がある。このため、モールドする樹脂として、金属材料への密着性に優れたものを用いるのが好ましい。
【0005】
しかし、金属材料への密着力の強い樹脂を用いると、端末接続部をモールドする際に、樹脂が金型にも密着してしまうため、成形が困難であった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易に成形でき、しかも優れた止水効果を確保することができるコネクタ端子及びコネクタ端子の止水方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタ端子は、下記
(1)を特徴としている。
(1)
長手方向を有するコネクタ端子であり、電線の外被から露出された導体が導通接続されるバレル部と、
前記長手方向における前記バレル部より先端側に位置すると共に相手方端子と導通される端子部とを備え、前記バレル部と前記電線との接続箇所が樹脂からなるモールド部によって覆われて止水された金属材料からなるコネクタ端子であって、
前記モールド部の先端側の端面が、前記バレル部における前記導体の先端の位置よりも前記長手方向において先端側に位置し、
前記バレル部における前記長手方向の先端側の一部の所定範囲であって前記モールド部の先端側の端面に対して前記長手方向の先端側の第1位置と前記長手方向の後端側の第2位置との間の所定範囲の側面にのみ、全周に亘って接着剤の層が設けられたこと。
【0008】
上記(1)の構成のコネクタ端子では、バレル部と電線との接続箇所に
接着材の層が設けられているので、モールド部の樹脂材料として金属材料への密着力が強いものを用いなくても、コネクタ端子のバレル部とモールド部とを接着材を介して確実に密着させて止水性を高めることができる。これにより、金属材料への密着力が弱い樹脂を用いることで、金型によってモールド部を成形する際の金型への樹脂の密着を抑制することができる。よって、モールド部を円滑かつ容易に成形することができる。
加えて、バレル部におけるモールド部の
先端側の縁部との密着箇所に
接着材の層が設けられてモールド部の
先端側の縁部が確実に密着されているので、モールド部内への水の浸入を確実に防止することができる。
【0009】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタ端子の止水方法は、下記
(2)を特徴としている。
(
2)
長手方向を有するコネクタ端子であり、電線の外被から露出された導体が導通接続されるバレル部と、
前記長手方向における前記バレル部より先端側に位置すると共に相手方端子と導通される端子部とを備えた金属材料からなるコネクタ端子の止水方法であって、
前記バレル部における前記長手方向の先端側の一部の所定範囲であって前記導体の先端の位置に対して前記長手方向の先端側の第1位置と前記第1の位置より前記長手方向の後端側の第2位置との間の所定範囲の側面にのみ、全周に亘って接着剤を塗布するプライマー塗布工程と、
前記コネクタ端子を金型に配置させて前記バレル部と前記電線との接続箇所の周囲に射出空間を形成し、前記射出空間へ樹脂を注入して前記バレル部と前記電線との接続箇所を樹脂からなるモールド部
であってその先端側の端面が前記長手方向における前記第1位置と前記第2位置との間であって前記導体の先端の位置よりも前記長手方向において先端側に位置するモールド部で覆うモールド部成形工程と、
を含むこと。
【0010】
上記(
2)の構成のコネクタ端子の止水方法では、バレル部と電線との接続箇所に接着材を塗布し、その後、モールド部を成形するので、モールド部の樹脂材料として金属材料への密着力が強いものを用いなくても、コネクタ端子のバレル部とモールド部とを接着材を介して確実に密着させて高い止水性を有するコネクタ端子とすることができる。また、金属材料への密着力が弱い樹脂を用いることで、金型によってモールド部を成形する際の金型への樹脂の密着を抑制することができる。よって、モールド部を円滑かつ容易に成形することができる。
加えて、バレル部におけるモールド部の
先端側の縁部との密着箇所に接着材を塗布して確実に密着させることができ、モールド部内への水の浸入を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容易に成形でき、しかも優れた止水効果を確保することができるコネクタ端子及びコネクタ端子の止水方法を提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るコネクタ端子及びコネクタ端子が収容されるコネクタハウジングの斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るコネクタ端子の断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るコネクタ端子の後端側から視た斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るコネクタ端子の先端側から視た斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るコネクタ端子の側面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るコネクタ端子のモールド部の成形前における後端側から視た斜視図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るコネクタ端子のモールド部の成形前における側面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係るコネクタ端子の一部の断面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係るコネクタ端子に対する止水方法を説明するコネクタ端子の一部の斜視図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係るコネクタ端子に対する止水方法を説明するコネクタ端子の裏面側から視た一部の斜視図である。
【
図11】
図11は、本実施形態に係るコネクタ端子に対する止水方法を説明するコネクタ端子の側面図である。
【
図12】
図12は、本実施形態に係るコネクタ端子に対する止水方法を説明するコネクタ端子の側面図である。
【
図13】
図13は、本実施形態に係るコネクタ端子に対する止水方法を説明するコネクタ端子の側面図である。
【
図14】
図14は、変形例に係るコネクタ端子の側面図である。
【
図15】
図15は、変形例に係るコネクタ端子に対する止水方法を説明するコネクタ端子の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態の例を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るコネクタ端子及びコネクタ端子が収容されるコネクタハウジングの斜視図、
図2は、本実施形態に係るコネクタ端子の断面図、
図3は、本実施形態に係るコネクタ端子の後端側から視た斜視図、
図4は、本実施形態に係るコネクタ端子の先端側から視た斜視図、
図5は、本実施形態に係るコネクタ端子の側面図、
図6は、本実施形態に係るコネクタ端子のモールド部の成形前における後端側から視た斜視図、
図7は、本実施形態に係るコネクタ端子のモールド部の成形前における側面図、
図8は、本実施形態に係るコネクタ端子の一部の断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るコネクタ端子10は、電線11に接続されている。このコネクタ端子10は、コネクタハウジング1に形成された複数の端子収容室2に挿し込まれて収容される。そして、このコネクタハウジング1を相手側のコネクタハウジングと接続することで、コネクタ端子10が相手側のコネクタ端子と接続されて導通される。
【0017】
図2から
図7に示すように、コネクタ端子10は、銅または銅合金等の導電性金属材料を、例えば、プレス加工することにより形成されたもので、バレル部21及びタブ端子部(端子部)31を有している。このコネクタ端子10には、その表面に錫メッキが施されている。コネクタ端子10に接続される電線11は、芯線(導体)12と、この芯線12の周囲に押出し被覆された外被13とを有している。この電線11の外被13は、ハロゲンフリーの樹脂が用いられている。
【0018】
バレル部21は、芯線圧着部22と、外被圧着部23とを有している。芯線圧着部22は、電線11の端部で露出された芯線12を圧着する。これにより、電線11の芯線12とコネクタ端子10とが導通接続される。また、外被圧着部23は、電線11の端部における外被13部分を圧着する。これにより、電線11の外被13部分がコネクタ端子10に固定される。
【0019】
また、バレル部21は、タブ端子部31側に、連結板部24を有しており、芯線圧着部22に圧着される電線11の芯線12の先端が連結板部24にも配置されている。
【0020】
図8に示すように、バレル部21と電線11との接続箇所における後述するモールド部41の縁部との密着箇所には、プライマー材(接着材)25が塗布されている。このプライマー材25は、絶縁性を有する合成樹脂からなるもので、金属材料からなるコネクタ端子10及び樹脂材料からなる電線11の外被13に対する接着力に優れた、例えば、ポリプロピレン系の樹脂が用いられる。
【0021】
タブ端子部31は、相手方端子のタブが接続される部分であり、このタブ端子部31に相手方端子のタブを接続することにより、コネクタ端子10が相手方端子と導通される。尚、本実施形態では、コネクタ端子10に、相手方端子に接触する端部がタブ形状である場合について説明するが、コネクタ端子10の端部には、オス型形状、メス型形状、またはLA端子(アース端子)等の各種形状を適用することができる。
【0022】
コネクタ端子10は、モールド部41を備えている。このモールド部41は、熱可塑性エラストマー材などの絶縁性を有する合成樹脂を射出成形することにより形成されたもので、樹脂材料としては、例えば、電線11の外被13と同一材料から成形されている。また、モールド部41は、タブ端子部31側においても、プライマー材25が塗布されたバレル部21の連結板部24の外面に、プライマー材25を介して確実に密着されている。そして、コネクタ端子10は、バレル部21と電線11との接続箇所がモールド部41によって覆われて止水されている。
【0023】
次に、モールド部41を成形してコネクタ端子10を止水する場合について説明する。
図9は、本実施形態に係るコネクタ端子に対する止水方法を説明するコネクタ端子の一部の斜視図、
図10は、本実施形態に係るコネクタ端子に対する止水方法を説明するコネクタ端子の裏面側から視た一部の斜視図、
図11は、本実施形態に係るコネクタ端子に対する止水方法を説明するコネクタ端子の側面図、
図12は、本実施形態に係るコネクタ端子に対する止水方法を説明するコネクタ端子の側面図、
図13は、本実施形態に係るコネクタ端子に対する止水方法を説明するコネクタ端子の側面図である。
【0024】
上記のコネクタ端子10に電線11を接続するには、まず、電線11の端部における外被13を切断して除去し、芯線12を露出させる(電線露出工程)。
【0025】
次に、コネクタ端子10に対して、そのバレル部21における芯線圧着部22及び外被圧着部23に、それぞれ電線11の芯線12及び外被13を圧着する(電線圧着工程)。これにより、電線11の芯線12とコネクタ端子10とが導通接続される。
【0026】
その後、
図9から
図11に示すように、バレル部21と電線11との接続箇所におけるモールド部41の縁部が密着する箇所にプライマー材25を塗布する(プライマー塗布工程)。
図9から
図11では、バレル部21の一部において、その側面の全周にプライマー材25を塗布している。尚、
図9から
図11において、プライマー材25が塗布された箇所に、ハッチングを記載している。
【0027】
次に、
図12に示すように、コネクタ端子10を覆うように、下金型(金型)51及び上金型(金型)52を互いに突き合わせる。このようにすると、バレル部21と電線11との接続箇所の周囲に射出空間Sが形成される。この状態において、
図13に示すように、ゲート(図示略)から射出空間Sへ樹脂Rを注入してバレル部21と電線11との接続箇所を樹脂Rからなるモールド部41で覆う(モールド部成形工程)。
【0028】
所定時間の経過後、樹脂Rが硬化したら、下金型51と上金型52とを離間させ、バレル部21と電線11との接続箇所がモールド部41によって覆われたコネクタ端子10を脱型する(脱型工程)。
【0029】
これにより、バレル部21と電線11との接続箇所がモールド部41によって覆われて確実に止水された状態となる。
【0030】
以上、説明したように、本実施形態に係るコネクタ端子及びその止水方法によれば、バレル部21と電線11との接続箇所にプライマー材25を塗布し、その後、モールド部41を成形するので、モールド部41の樹脂Rの材料として金属材料への密着力が強いものを用いなくても、コネクタ端子10のバレル部21とモールド部41とをプライマー材25を介して確実に密着させて高い止水性を有するコネクタ端子10とすることができる。また、金属材料への密着力が弱い樹脂を用いることで、金型によってモールド部41を成形する際の下金型51及び上金型52への樹脂の密着を抑制することができる。よって、モールド部41を円滑かつ容易に成形することができる。
【0031】
このように、バレル部21と電線11との接続箇所をモールド部41で確実に密閉し、高い耐食性を長期的に確保することができるので、例えば、芯線12がアルミニウムの電線11を接続する場合のように、銅または銅合金とアルミニウムとの異種金属同士の接続であっても、接続箇所が被水することによる異種金属接触腐食などの電食を防止することができる。
【0032】
なお、プライマー材25は、上記実施形態のように、少なくともバレル部21におけるモールド部41の縁部との密着箇所に塗布すれば良いが、バレル部21と電線11との接続箇所全体に塗布しても良い。
【0033】
また、
図14に示すように、バレル部21の全体を覆うことなく、バレル部21における下面側を除く部分を覆うようにモールド部41を成形する場合においても、
図15に示すように、電線11が接続されたバレル部21の全体にプライマー材25を滴下して塗布するのが好ましい。
【0034】
このようにすると、モールド部41を成形した際に、その縁部がプライマー材25を介してバレル部21に強固に密着することとなり、良好な止水性を確保することができる。
【0035】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0036】
10 コネクタ端子
11 電線
12 芯線(導体)
13 外被
21 バレル部
25 プライマー材(接着材)
31 タブ端子部(端子部)
41 モールド部
51 下金型(金型)
52 上金型(金型)
R 樹脂
S 射出空間