特許第5965758号(P5965758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965758
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】アルミドアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/00 20060101AFI20160728BHJP
   C22C 21/06 20060101ALI20160728BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20160728BHJP
   B23K 9/23 20060101ALI20160728BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B23K9/00 501C
   C22C21/06
   B23K20/12 360
   B23K9/23 F
   B60J5/04
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-157045(P2012-157045)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-18806(P2014-18806A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】清水 謙二
(72)【発明者】
【氏名】大澤 成信
(72)【発明者】
【氏名】吉原 二郎
【審査官】 水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−111716(JP,A)
【文献】 特開2001−081903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00
B23K 9/23
B23K 20/12
B60J 5/04
C22C 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のJIS規格6000系アルミ合金材からなるドアフレームと、JIS規格5000系アルミ合金材からなるブラケットとをアーク溶接するステップ;及び
上記JIS規格5000系アルミ合金材からなるブラケットと、第2のJIS規格6000系アルミ合金材からなるインナパネルまたはインナパネルとブラケットを繋ぐ中間ブラケットとを摩擦撹拌接合するステップ;
を有するアルミドアの製造方法であって、
上記JIS規格5000系アルミ合金材からなるブラケットは、Mg含有量2.2〜2.8%の5000系アルミ合金材から構成されていることを特徴とするアルミドアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミドアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミ合金材には、主にMgなどの成分含有量の違いによる異種アルミ材が知られている。例えば、JIS規格5000系アルミ合金材(以下単に5000系と呼ぶことがある)は、JIS規格6000系アルミ合金材(以下単に6000系と呼ぶことがある)より機械的強度が高い。アルミ合金材の接合には、溶接(スポット、アーク、レーザ、摩擦撹拌接合(摩擦撹拌溶接、FSW(Friction Stir Welding))、SPRを含むリベット接合、接着などがあり、中でも溶接は選択使用されることが多い。
【0003】
アルミ合金製の車両用ドアは、大きい要素として、ドアフレーム、該ドアフレームにアーク溶接されるブラケット及び該ブラケットに溶接されるインナパネルを備えている。ブラケットには、例えば、ドアをボディに結合するロックブラケットと、フロントドアのフロントブラケット(ミラーブラケット)あるいはリヤドアのリヤブラケットがある。これらのドアフレームとインナパネルに6000系が選択使用される場合、ブラケットには、強度を必要とすることから従来、Mg含有量4.5%程度の高強度5000系アルミ合金材が採用され、この高強度5000系アルミ合金材ブラケットを、6000系のドアフレームにアーク溶接し、同じく6000系のインナパネルにFSWをする試みがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-206130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、本発明者らによると、高強度5000系は、6000系とのFSWの相性が悪く、溶接強度の維持が困難であり、アルミドアのブラケットに用いた場合、ドアフレームとのアーク溶接強度の確保は比較的容易であるものの、特にロックブラケットではインナパネルとの接続の維持が困難である。また、ブラケットを高強度6000系材から構成すると、同じくインナパネルとのFSWには問題がないが、同じく6000系のドアフレームとアーク溶接すると割れが発生しやすい。また、6000系は5000系に比して比較的軟質であり、ブラケット強度が確保しにくい。
【0006】
従って本発明は、JIS規格5000系とJIS規格6000系の溶接接合性に優れた異種アルミ合金材の接合体からなるアルミドアの製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、JIS規格5000系アルミ合金材には、Mg含有量4.5%程度の高強度5000系アルミ合金材の他に、Mg含有量2.2〜2.8%の中強度5000系アルミ合金材が存在すること、及びこの中強度5000系アルミ合金材は、6000系との溶接の相性がよく、アーク溶接とFSW溶接の双方にバランスがよい接合体が得られることを見出してなされたものである。
【0008】
本発明によるアルミドアの製造方法は、第1のJIS規格6000系アルミ合金材からなるドアフレームと、JIS規格5000系アルミ合金材からなるブラケットとをアーク溶接するステップ;及び上記JIS規格5000系アルミ合金材からなるブラケットと、第2のJIS規格6000系アルミ合金材からなるインナパネルまたはインナパネルとブラケットを繋ぐ中間ブラケットとを摩擦撹拌接合するステップ;を有するアルミドアの製造方法であって、上記JIS規格5000系アルミ合金材からなるブラケットは、Mg含有量2.2〜2.8%の5000系アルミ合金材から構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるアルミドアの製造方法によれば、JIS規格5000系とJIS規格6000系の異種アルミ合金材を確実に接合した接合強度に優れたアルミドアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるアルミドアの一実施形態を示す側面図である。
図2図1のアルミドアのアーク溶接部分の概念図である。
図3図1のアルミドアの摩擦撹拌接合部分の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は自動車の前部座席用のアルミフロントドア10の骨格を示している。アルミフロントドア10は、二点鎖線で概略形状を示すインナパネル12と、インナパネル12の上部に枠状に形成されたドアフレーム14とを有し、インナパネル12の上縁部とドアフレーム14の内縁部とで囲まれる窓開口16内にドアガラスが昇降する。ドアフレーム14は、ドア上縁部を形成するアッパサッシュ18と、インナパネル12の後部から上方へ延設された立柱サッシュ20を備えており、アッパサッシュ18の後端部と立柱サッシュ20の上端部がドアコーナー部で接合される。インナパネル12は車外側のアウタパネルと組み合わせてドアパネルを構成し、アッパサッシュ18の前方下部はミラーブラケット31を介してインナパネルに固定され、立柱サッシュ20の下部はロックブラケット32を介してインナパネルに固定される。ミラーブラケット31とロックブラケット32に対して、車両前後方向に延びるベルトラインリンフォース33が固定される。図1では、ミラーブラケット31とロックブラケット32にハッチングを付した。
【0015】
インナパネル12は、JIS規格6000系材からなる第1の部材であり、ドアフレーム14(アッパサッシュ18と立柱サッシュ20)は、同じくJIS規格6000系アルミ合金材からなる第2の部材である。これに対し、ミラーブラケット31とロックブラケット32は、Mg含有量2.2〜2.8%の程度のJIS規格中強度5000系アルミ合金材からなっている。ドアフレーム14(のアッパサッシュ)18とミラーブラケット31、及びドアフレーム14(の立柱サッシュ20)とロックブラケット32は、溶接箇所W1においてそれぞれアーク溶接され、ミラーブラケット31、ロックブラケット32とインナパネル12とは、複数の接合ポイントW2にてFSWされる。
【0016】
アーク溶接は、図2に概念的に示すように、接合する2部材A、Bを突き合わせ、その空隙Cをアーク放電による熔融金属で埋めることで接合する周知の接合方法である。
【0017】
また、FSWは、図3に概念的に示すように、接合する2部材A、Bを重ね合わせ、先端に突起のある円筒状の工具Cを回転させながら強い力で押し付けることで突起部を2部材A、Bの接合部に貫入させ、これによって摩擦熱を発生させて母材を軟化させるとともに、工具Cの回転力によって接合部周辺を塑性流動させて練り混ぜることで接合する周知の接合方法である。
【0018】
本実施形態は、ドアフレーム14(のアッパサッシュ18)とミラーブラケット31、及びドアフレーム14(の立柱サッシュ20)とロックブラケット32をそれぞれアーク溶接し、ミラーブラケット31、ロックブラケット32とインナパネル12をFSWにて接合するという接合体において、インナパネル12とドアフレーム14(アッパサッシュ18と立柱サッシュ20)を、JIS規格6000系アルミ合金材から構成し、ミラーブラケット31とロックブラケット32を、Mg含有量2.2〜2.8%の程度のJIS規格中強度5000系アルミ合金材から構成している。具体的に、Mg系で、Mg含有量2.2〜2.8%の程度のJIS規格中強度5000系アルミ合金材としては、少なくとも、5052材、5021材、5652材(JIS規格)を用いることができる。
またJIS規格6000系アルミ合金材は、Mg-Si系のアルミ合金材として知られており、具体的には、6016材(JIS規格)、6N01材、またはそれ相当のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0020】
10 アルミフロントドア
12 インナパネル12(第1のJIS規格6000系アルミ合金材)
14 ドアフレーム(第2のJIS規格6000系アルミ合金材)
18 アッパサッシュ(第2のJIS規格6000系アルミ合金材)
20 立柱サッシュ20(第2のJIS規格6000系アルミ合金材)
31 ミラーブラケット(ブラケット、JIS規格中強度5000系アルミ合金材)
32 ロックブラケット(ブラケット、JIS規格中強度5000系アルミ合金材)
図1
図2
図3