【実施例1】
【0040】
図1に、本発明の一実施形態にかかるに衛星測位信号受信装置を有する衛星測位システムの概略構成を示す。本発明の一実施形態においては、LEX信号を取り扱うものとし、LEX信号を送信するQZSS(準天頂衛星システム)を衛星測位システムのモデルとして採用するものとする。
【0041】
図1において、QZSSシステム100の測位衛星101a〜101dからそれぞれ放送されたL1 C/A信号及びLEX信号は、宇宙空間および大気中を伝搬し、衛星測位受信装置102に到達する。受信装置102に到達したL1 C/A信号及びLEX信号は、フロントエンド部1022にてそれぞれの搬送波周波数を、扱い易い周波数(中間周波数)に変換する(ダウンコンバージョンもしくはダウンコンバートという)。中間周波数は、受信装置の設計思想によって異なるものであり、本明細書では、便宜的にL1 C/A信号の中間周波数を
とし、LEX信号の中間周波数を
とする。ダウンコンバートされた各信号はその後、ADC部1023a及び1023bにてそれぞれ量子化され、データ処理部1024へ送られて受信処理される。
【0042】
次に、
図1におけるデータ処理部1024の詳細構成を
図2に示す。
【0043】
図2において、一般的には、測位受信装置は複数の測位衛星からの信号を受信するため、データ処理部には複数の受信チャネルが存在するが、本明細書では発明の理解と説明の便宜のため、1受信チャンネルにおける動作の説明に留める。また、例示的に、LEX信号のメッセージを解読を行う実施例として説明する。
【0044】
図2において、データ処理部200は、例示的に、L1 C/A信号の捕捉処理を行うL1捕捉部201と、L1 C/A信号の追尾を行うL1追尾部202と、L1 C/A信号の解読を行うL1解読部203と、L1 C/A信号の周波数並びに拡散符号の位相からLEX信号の周波数並びに拡散符号の位相への変換処理を行うL1−E6変換処理部204と、LEX信号の解読を行うE6解読部205とによって構成される。
なお、複数受信チャネルの衛星測位受信装置の場合は、これらの構成要素が1つの受信チャネルの構成要素として含まれ、場合によっては各チャネル内に「測距部」と1つの「測位演算部」とを備える構成を採用することも可能である。この場合、「測距部」及び「測位演算部」は、一般的な受信装置のデータ処理部と共通する構成を採用することができる。
【0045】
図3に、データ処理部200における処理フローを示す。
【0046】
データ処理部200では、まず、S301において処理を開始し、S302において衛星測位信号の周波数の初期値f
L1及び拡散符号の位相の初期値φ
L1を取得した後、L1 C/A信号に対する捕捉処理が行われる(S303)。捕捉処理は、取得したf
L1及びφ
L1に基づいて、入力された衛星測位信号との相関演算を行い、相関値の大小で捕捉の成否を判断する(S304)。追尾で用いるf
L1及びφ
L1の取得に成功しない限り(S304においてYes)、S303に復帰して補足処理が行われる。補足処理の間、f
L1及びφ
L1を徐々に変更し、最も高い相関値が得られた時のf
L1及びφ
L1を捕捉成功時点での周波数及び拡散符号の位相とし、その後の追尾で用いる周波数及び拡散符号の位相の初期値とする(S305)。
【0047】
なお、f
L1及びφ
L1を徐々に変更する手法や、捕捉の成否の判断基準など、捕捉で用いられるアルゴリズムは、従来に用いられてきた捕捉アルゴリズムを採用することができる。捕捉処理の結果、L1 C/A信号を追尾するための周波数f
L1、及び拡散符号の位相φ
L1を取得することができる。
【0048】
そして、上述のL1 C/A信号の捕捉により、追尾で最初に用いる周波数及び拡散符号の位相が決定されると、捕捉は一旦終了し、引き続き、L1 C/A信号に対する追尾が行われる(S305)。まず捕捉によって得られたf
L1を衛星測位信号の周波数、 φ
L1を衛星測位信号の拡散符号の位相とし、追尾処理を行う。
【0049】
追尾で用いられるアルゴリズムは、従来用いられてきた既知の追尾アルゴリズムを採用することができる。L1 C/A信号を入力とした追尾処理により、周波数及び拡散符号の位相が逐次更新され、新たなf
L1、φ
L1となる。
【0050】
なお、信号の追尾が行われる周波数は、具体的には、中間周波数にドップラー周波数が加わったものである。ドップラー周波数は、測位衛星と衛星測位受信装置の相対速度と、送信される周波数とによって決定される値である。つまり、同じ測位衛星から送信されていても、L1 C/A信号とLEX信号とでは送信する周波数が異なるため、ドップラー周波数も異なる値となる。
【0051】
また、L1 C/A信号の追尾処理においては、受信状態に何らかの異常が発生しない限り(S306において、Yes)、正しい受信状態であるものとして、追尾処理(S306)を継続する。何らかの原因によりL1 C/A信号の追尾処理が正しく継続されなかった場合(S306において、No)は、捕捉処理(S303)に戻り、捕捉処理が終了したら、再度追尾を行う、という処理を繰り返す。
L1 C/A信号の追尾処理が継続されている間、解読部において、L1 C/A信号のメッセージ解読が行われる(S307)。
【0052】
続いて、L1 C/A信号の追尾が継続されている間、時刻情報が1度でも取得されれば(S309)、この時刻情報とf
L1及びφ
L1(S308)とに基づいて、L1−E6変換処理が行われる(S310)。なお、時刻情報は、追尾が継続している間は、1回取得できれば足りる。
【0053】
L1−E6変換処理では、以下の2つの処理が行われる。
(処理A)L1 C/A信号の周波数からLEX信号の周波数への変換処理
(処理B)L1 C/A信号の拡散符号の位相からLEX信号の拡散符号の位相への変換処理
【0054】
なお、上記で「LEX信号の拡散符号」と記しているのは、LEX信号のメッセージがCSK変調されている、4ms周期のショートコードを指し、従来技術のようにロングコードの受信を行わないことが本発明の特徴となっている。
【0055】
L1 C/A信号の周波数からLEX信号の周波数への変換(上記、処理A)は、次式(2)に基づいて行われる。
但し、
である。
【0056】
上式(2)は、 LEX信号の周波数 f
E6が、L1 C/A号の周波数f
L1と、L1 C/A信号の中心周波数f
IFL1と、LEX信号の中間周波数f
IFE6と、L1 C/A信号の中心周波数L
1と、LEX信号の中心周波数E
6とを用いて計算できるということを示している。
ここで、L
1は既知の値(1575.42MHz)であり、E
6は既知の値(1278.75MHz)である。f
IFL1及びf
IFE6は、受信装置の設計思想によって固有の既知の値を用いることができる。
f
L1は、L1 C/A信号の周波数であるから、追尾にて用いられる周波数 f
L1をそのまま用いればよい。
【0057】
以上の通り、上式(2)に基づいて、L1 C/A信号の周波数からLEX信号の周波数への変換処理が行われる。
【0058】
また、L1 C/A信号の拡散符号の位相からLEX信号の拡散符号の位相への変換(上記、処理B)は、次式(3)に基づいて行われる。
但し、kは、0、1、2、3のうちのいずれかの値をとるものとし、
である。
【0059】
上記(3)は、LEX信号の拡散符号の位相φ
E6が、L1 C/A信号の拡散符号の位相φ
L1と、L1 C/A信号の拡散符号のチップレートR
L1と、L1信号の拡散符号の周期T
L1と、LEX信号の拡散符号のチップレートR
E6とを用いて計算できるということを示している。
ここで、R
L1は既知の値(1.023MCps)であり、また、T
L1は既知の値(0.001sec)であり、また、R
E6は、既知の値(2.5575MCps)である。φ
L1は、L1 C/A信号の拡散符号の位相であるから、追尾にて用いられる拡散符号の位相φ
L1をそのまま用いることができる。
【0060】
なお、kは、2つの信号の拡散符号周期によって変わる値であり、L1 C/AとLEXの場合は、[0,3]の値を取る整数である。すなわち、kは、0,1,2,3,0,1,2,3,0,・・・と、1ms毎に更新される。kの値は、L1 C/A信号のメッセージ解読により時刻情報が取得された後に決定される。具体的には、
図4に示すL1 C/A信号とLEX信号との関係を参照しながら説明する。
【0061】
図4において、現在受信している衛星測位信号が送信された時刻をt
X[sec]とする。t
Xは、L1 C/A信号の追尾処理後、メッセージ解読により、6秒に1回の割合でメッセージに含まれている時刻情報を基準にして、拡散符号が繰り返された回数と、追尾しているL1 C/A信号の拡散符号の位相φ
L1とから、求めることができる。
【0062】
次に、L1 C/A信号の拡散符号と、LEX信号の拡散符号とが、同時に開始した時刻をt
0[sec]と定義する。L1 C/A信号及びLEX信号は、週の始まりを基準として、同時に信号の送信を開始する。LEX信号の拡散符号周期T
E6は4msであり、L1 C/A信号の拡散符号周期T
L1は1msであるため、週の始まり以後は、正確に4ms毎に、L1 C/A信号の拡散符号及びLEX信号の拡散符号は同時に開始する。つまり、週の始まりを基準として、4msの倍数の時刻では、L1 C/A信号の拡散符号とLEX信号の拡散符号は必ず同時に開始される。
図4において、t
X以前の直近を見ると、L1 C/A信号の拡散符号を4周期分遡るまでに、必ず、L1 C/A信号の拡散符号とLEX信号の拡散符号とが同時に開始する時刻が存在する。つまり、t
X以前で、4msの倍数となる直近の時刻がt
0である。
【0063】
上式(3)で表されるkの値は、t
Xとt
0との間に含まれるL1 C/A信号の拡散符号の周期の数である。つまり、L1 C/A信号の拡散符号とLEX信号の拡散符号とが同時に開始された時刻を基準に、k=0から1ms毎に更新される。
【0064】
以上のように、L1 C/A信号の拡散符号の位相からLEX信号の拡散符号の位相への変換が行われる。
【0065】
S310においてL1−E6変換処理が終わると、S311に進み、LEXメッセージ解読が行われる。
【0066】
再び、
図2を参照する。L1−E6変換処理部204にて計算されたLEX信号の周波数及び拡散符号の位相は、E6解読部205に渡され、E6解読部205においてLEX信号に含まれるメッセージを解読するのに用いられる。
なお、
図2において、L1追尾部202からL1−E6変換処理部204を経て、E6解読部205までの信号の流れを点線で表したのは、ブロック間で引き渡されるのが、データ処理部に入力された衛星測位信号ではなく、それらに基づいて計算された周波数及び拡散符号の位相、並びに、解読部で解読されたメッセージに基づいた時刻情報であることを意味する。
【0067】
E6解読部205では、変換されたLEX信号の周波数及び拡散符号の位相に基づき、信号に含まれるメッセージが解読される。実際にLEX信号のメッセージを解読するには、4ms毎のLEX拡散符号の開始時刻を知る必要があるが、これは、L1−E6変換処理部204にてLEX信号の拡散符号の位相を計算する際に用いた、拡散符号同時開始時刻t
0に該当する。t
0は、変換されたLEX信号の拡散符号の位相φ
E6を用いて、次式で表すことができる。
【0068】
つまり、LEX拡散符号の開始時刻(=拡散符号同時開始時刻)t
0は、現在受信している信号の送信時刻t
Xと、変換されたLEX信号の拡散符号の位相φ
E6と、LEX信号の拡散符号のチップレートR
E6とを用いて計算することができる。
【0069】
結局、LEX信号のメッセージ解読は、t
0から4ms毎のLEX信号のメッセージに対して、変換されたLEX信号の周波数に基づきLEX信号に重畳されている周波数成分を除去し、CSK変調されたショートコードをデコードすることによって、LEX信号のメッセージを解読することができる。
【0070】
以上の様にして、変換されたLEX信号の周波数並びに拡散符号の位相に基づき、LEX信号に含まれるメッセージを直接解読することが可能である。
【0071】
また、より高度な処理としては、変換されたLEX信号の周波数及び拡散符号の位相に基づき、改めてLEX信号に1受信チャネルを割り当て、LEX信号のロングコードの追尾を開始することも可能である。この場合、通常の従来技術によるLEX信号のロングコードの追尾を開始するために必要となる、LEX信号のロングコードによる捕捉処理を省くことができるという利点を持っている。
【0072】
この場合、LEX信号のロングコードの追尾処理を継続しながら、LEX信号のショートコードに含まれるメッセージを解読することになる。
【0073】
本発明の特徴の一つは、LEX信号の捕捉処理・追尾処理を省略して、L1 C/A信号の捕捉処理・追尾処理によって取得した周波数及び拡散符号の位相から、LEX信号に含まれる補強情報を解読する点にある。送信している周波数は異なるが、L1 C/A信号とLEX信号とが同じ衛星から送信されているために、2つの号の拡散符号が定期的に同じタイミングで送信されていることを利用している。
【0074】
以上に示した発明を実施するための最良の形態においては、L1 C/A信号を継続的に受信し、その周波数及び拡散符号の位相から、LEX信号の周波数及び拡散符号の位相を求め、そこからLEX信号に含まれる補強情報を解読すると好適である。
【実施例6】
【0081】
最後に、本発明の一実施形態にかかる衛星測位システムにおける信号生成回路例を説明しておく。
図7に、本発明の一実施形態にかかる衛星測位システムにおいて使用されるLEX信号の生成回路を示す。
【0082】
信号生成回路700は、一例として、準天頂衛星システム(QZSS)の1278.75MHz帯(E6帯)にて放送されるLEX信号に係るものであるが、LEX信号は補強信号として利用されている。
LEX信号は、拡散符号生成器701より生成され、4ms長の8bit(=256通り)メッセージによりCSK変調器702でCSKコード変調された「ショートコード」と呼ばれる2.5575Mcpsの拡散符号と、拡散符号生成器701より生成され、方形波生成器703から生成される方形波に重畳された、410ms長であって2.5575Mcpsの「ロングコード」と呼ばれる拡散符号とを、5.115Mcpsの間隔で交互に選択するようクロック制御され、搬送波生成器705で生成された1278.75MHzの搬送波周波数に重畳されて送信される。
なお、CSK変調とは、コードシフトキーイングの略であり、データの値によって拡散符号の位相を変化させる変調方式の一つである。
【0083】
[公知の技術等]
本発明に関連して、本明細書と同時に出願されたかその前に出願され、公に自由に入手できるすべての論文および文書の内容は、参照によって本明細書の記載内容として組み込まれる。
【0084】
[組み合わせ]
本明細書(請求項、実施例、要約、及び図面を含む)に記載された構成要件の全て及び/又は開示された全ての方法又は処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。
【0085】
[特徴の一例]
本明細書(請求項、実施例、要約、及び図面を含む)に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、または類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一又は均等となる特徴の一例にすぎない。
【0086】
本発明は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本発明は、本明細書(請求項、実施例、要約、及び図面を含む)に記載された全ての新規な特徴又はそれらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法又は処理のステップ、又はそれらの組合せに拡張することができる。