特許第5965765号(P5965765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965765
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】衛星測位信号受信方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/32 20100101AFI20160728BHJP
   G01S 19/31 20100101ALI20160728BHJP
   G01S 19/24 20100101ALI20160728BHJP
【FI】
   G01S19/32
   G01S19/31
   G01S19/24
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-164578(P2012-164578)
(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公開番号】特開2014-25744(P2014-25744A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年2月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年7月20日電子情報通信学会技術研究報告で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】507395692
【氏名又は名称】ライトハウステクノロジー・アンド・コンサルティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136744
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 佳正
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】谷島 潔
(72)【発明者】
【氏名】前田 裕昭
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−265476(JP,A)
【文献】 特開2007−187462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14
G01S19/00−19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数の異なる第1の信号と第2の信号とを送信する1以上の測位衛星を含む衛星測位システムの衛星測位受信装置であって、前記衛星測位受信装置は、前記第1の信号の受信を開始または継続的に行う際に取得する周波数及び位相情報に基づいて、前記第2の信号の周波数及び位相情報に変換処理し、
前記変換された前記第2の信号の周波数及び位相情報に基づいて、前記第2の信号に含まれるメッセージ情報を解読するものであって、
前記メッセージ情報の解読は、前記変換された前記第2の信号の周波数及び位相情報に基づいた前記第2の信号の追尾とは独立に行われることを特徴とする衛星測位受信装置。
【請求項2】
前記第1の信号の周波数及び位相情報、又は変換された前記第2の信号の周波数及び位相情報に基づいて、前記測位衛星と前記衛星測位受信装置との間の距離を測定することを特徴とする請求項1に記載の衛星測位受信装置。
【請求項3】
前記第1の信号がL1周波数帯(1575.42MHz帯)のC/A信号であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の衛星測位受信装置。
【請求項4】
前記第2の信号がE6周波数帯(1278.75MHz帯)のLEX信号であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の衛星測位受信装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の衛星測位受信装置であって、前記第2の信号の周波数及び位相情報の変換処理に際し、前記第1の信号の周波数と前記第2の信号の周波数との差分によって生じる電離層遅延誤差成分に基づいて、前記変換処理を行うことを特徴とする衛星測位受信装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の衛星測位受信装置であって、前記第2の信号の周波数及び位相情報の変換処理に際し、前記第1の信号の位相情報及び前記第2の信号の位相情報に含まれる誤差に基づき、前記第2の信号の位相情報に複数の候補を設定した上で、前記変換処理を行うことを特徴とする衛星測位受信装置。
【請求項7】
周波数の異なる第1の信号及び第2の信号を送信する測位衛星と衛星測位受信装置とを含む衛星測位システムにおける衛星測位信号受信方法であって、前記衛星測位受信装置は、前記第1の信号の受信を開始又は継続的に行う際に取得する周波数及び位相情報に基づいて、前記第2の信号の周波数及び位相情報に変換し、
前記変換された前記第2の信号の周波数及び位相情報に基づいて、前記第2の信号に含まれるメッセージ情報を解読するものであって、
前記メッセージ情報の解読は、前記変換された前記第2の信号の周波数及び位相情報に基づいた前記第2の信号の追尾とは独立に行われることを特徴とする方法。
【請求項8】
前記第1の信号の周波数及び位相情報、又は変換された前記第2の信号の周波数及び位相情報に基づいて、前記測位衛星と前記衛星測位受信装置との間の距離を測定することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の信号がL1周波数帯(1575.42MHz帯)のC/A信号であることを特徴とする請求項7〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の信号がE6周波数帯(1278.75MHz帯)のLEX信号であることを特徴とする請求項7〜のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全地球測位システム(GPS)に代表される衛星測位システムから送信される衛星測位信号を受信する信号受信技術に関し、より具体的には、周波数の異なる2種類の信号を受信する受信方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星測位システムは、複数の人工衛星によって放送される衛星測位信号の受動的測定に依拠する。オンボードクロックが、しばしば「エポック」と呼ばれる規則的な、通常連続した一連のイベントを生成するのに使用され、規則的なエポックの間隔で、乱数符号または疑似乱数符号が繰り返される。拡散符号化された電波を受信装置で受信することで、受信装置の時刻タイミングで生成した拡散符号と、受信した信号の拡散符号との位相差を計測し、測位衛星と受信装置間の距離を測定することができる。
【0003】
そのような衛星測位システムの例として、全地球測位システム(GPS)が挙げられる。一般に、GPSは、それぞれ1575.42MHz、1227.6MHz、および1176.45MHzを中心とするL1、L2、およびL5等と称される複数の周波数を使用して動作する。これらの信号のそれぞれが、それぞれの拡散信号によって変調される。当業者であれば容易に理解できるように、GPS衛星ナビゲーションシステムが発するCA(Coarse Acquisition)コード信号は、1575.42MHzの周波数(L1帯と呼ばれる。)で送信され、1.023MHzの拡散符号レート(チップレート)を有する。さらにこれらの信号は航法メッセージと呼ばれるデータを重畳しており、そのデータ伝送レートは50bpsである。この拡散符号レート1.023MHz、データ伝送レート50bpsの信号は、一般に「L1 C/A信号」と呼ばれる。図8に、L1 C/A信号の信号構造を示す。
【0004】
また、衛星測位システムの一事例として、日本において開発されている準天頂衛星システム(QuasiZenith Satellite System:QZSS)が挙げられる(非特許文献1)。QZSSもGPSと同様に、それぞれ1575.42MHz、1227.6MHz、および1176.45MHzを中心とするL1、L2、およびL5などの複数の周波数を使用して動作する方針で開発が進められようとしている。また、QZSSには、1278.75MHzを中心とするE6の周波数も使われており、「LEX信号」がこの周波数で送信されている。
【0005】
GPSを始めとする衛星測位システムによる位置決定においては、測位衛星から送信される電波を地上の受信装置で受信し、衛星から受信装置までの電波伝搬時間に基づいて衛星と受信装置との間の距離を計測する。ここで、測位衛星から送信される電波に対しては、測位衛星自身の位置を示す軌道情報と、衛星自身の時刻のズレを意味するクロック情報とが重畳される。
【0006】
受信装置は、測位衛星から送信される軌道情報とクロック情報とを復調することにより、衛星の位置と時刻とを知ることができる。そして、受信装置は、複数の衛星と受信装置との間の距離の計測値と、衛星の位置と、時刻とを用いて、受信装置自身の位置を例えば三辺測量の要領で決定する。
【0007】
図9に、従来の衛星測位受信装置を有する衛星測位システムの構成を示す。受動的測定を行う受信装置902は、衛星測位システム900の複数の測位衛星901a〜901dからの衛星測位信号を継続的に受信し、測位などを行う。衛星測位受信装置902は、受信アンテナ部9021から入力された信号に対して、フロントエンド部9022にて前処理を行い、ADC部9023にてデジタル信号に変換し、データ処理部9024に送る。
【0008】
図10に、従来の受信装置のデータ処理部のブロック構成を示す。データ処理部1000は、1つもしくは複数の受信チャネル(図において、チャンネル1〜チャンネルn)を備えており、複数の衛星から発信された衛星測位信号に対して、各受信チャネルにつき1つの衛星測位信号を割り当てて継続的な受信処理を行っている。継続的な受信処理とは、対象とする衛星測位信号に対して、追尾を継続しながら信号に含まれるメッセージを解読できる状態に処理することであり、場合によっては同時並行的に測距(衛星と受信装置との距離の測定)が行われる。
【0009】
ここで、各受信チャネルが継続的な受信処理を行うためには、衛星測位信号の周波数及び拡散符号の位相を知る必要がある。しかしながら、一般には、衛星測位信号の周波数及び拡散符号の位相は変動しているため、受信を開始する際にはこれらを探索しないと取得することができない。
【0010】
また、衛星測位信号の周波数に関しては、衛星と受信装置との相対速度によって生じるドップラー効果が加わることや、受信装置の内部発信機の周波数誤差の影響もあることから、周波数は未知である。各受信チャネルが継続的に受信可能な状態に移行するためには、衛星測位信号の周波数に、ドップラー効果による周波数(ドップラー周波数)や、受信装置の内部発信機の周波数誤差が加わった周波数を、探索する必要がある。
【0011】
さらに、拡散符号に関しても、衛星測位信号は、繰り返される拡散符号によって拡散されているため、同じ拡散符号系列を、位相を一致させて、衛星測位信号との相関をとらなければ衛星測位信号を受信することはできない。一方で、拡散符号の符号レートは、通常はMHzのオーダーであり、受信装置の持つオンボードクロックが長期的にその精度で安定的に動作することは難しく、常に、衛星測位信号を送信する衛星の時計と時刻が一致することは起こりえない。従って、事前に拡散符号の位相を知ることは不可能に近い。そのため、拡散符号の位相も探索する必要がある。
【0012】
従って、受信チャネルが1つの衛星測位信号の継続的な受信を開始するためには、周波数並びに拡散符号の位相を、あらかじめ探索する必要がある。この探索の一連の処理は「捕捉処理」あるいは「捕捉」と呼ばれる。捕捉処理の結果、追尾処理を開始するための周波数並びに拡散符号の位相を取得することができる。
【0013】
なお、捕捉処理では、基本的に、衛星測位信号が存在しうる全ての周波数(L1 C/A信号の場合は±5kHz程度)と、全ての拡散符号の位相(L1 C/A信号の場合は、1023チップ)とについて探索が行われる。探索をする周波数間隔は、衛星測位信号の特性に応じて決められ、L1 C/A信号の場合は、500Hz程度とするのが一般的である。また、探索をする拡散符号の位相は、拡散符号のチップ数分だけ探索する必要がある。つまり、拡散符号の長さ並びにチップ数が増えると、全体として捕捉処理に必要となる計算処理量は増加する。
【0014】
受信チャネルは、捕捉により追尾を開始するための周波数並びに拡散符号の位相を取得できたら、その後、衛星測位信号の周波数並びに拡散符号の位相を更新しながら、受信状態を保つように制御される。具体的には、図11に図示するような一般的な追尾回路1100を用いて、継続的に受信する衛星測位信号に基づいて、周波数及び拡散符号の位相のそれぞれを、後述の同期回路により別々に制御し、受信状態を保つようにする。
【0015】
まず周波数に関しては、位相同期回路(Phase Lock Loop:PLL)1101を用いるのが一般的である。PLLは、周期的な信号を入力として、フィードバック制御により、安定した信号受信処理を行う処理回路である。衛星測位の受信装置においては、捕捉で取得した周波数を初期値とし、入力された衛星測位信号に対して、逐次更新された周波数fL1を出力として取得することができる。
【0016】
次に、拡散符号の位相に関しては、遅延同期回路(Delay Lock Loop:DLL)1104を用いるのが一般的である。DLLもPLLと同様に、周期的な信号を入力として、フィードバック制御により、安定した信号受信処理を行う処理回路である。衛星測位受信装置においては、捕捉で取得した拡散符号の位相を初期値とし、入力された測位信号に対して、逐次更新された拡散符号の位相φL1を出力として取得することができる。
【0017】
以上のように、受信する衛星測位信号を入力とし、周波数並びに拡散符号の位相を用いて、それぞれの同期回路で同期させる一連の処理を「追尾処理」あるいは「追尾」と呼ばれる。追尾処理は、衛星測位信号の特性に基づいた特定の周期で行われ、追尾処理の都度、更新された周波数並びに拡散符号の位相を取得することができる。また追尾回路から、衛星測位信号に含まれるメッセージを、出力として得る。
【0018】
次に、追尾が行われている受信チャネルでは、その衛星測位信号に含まれるメッセージを解読することが可能である。メッセージの解読は、「解読部」にて行われる。また、追尾が行われている受信チャネルでは、衛星と受信装置との距離を測定することが可能である。これを「測距」と称し、「測距部」で行われる。測距の原理は、衛星側で既知の時刻に送信された拡散符号に対して、追尾によって位相が一致している(受信装置側で生成した)拡散符号との時間差から伝搬時間を読み取り、それに光速をかけることで距離を測る仕組みである。具体的には、以下の通りである。
【0019】
測位衛星における時刻は、精密な衛星時計によって管理されており、拡散符号が送信されるタイミングは衛星時計に正確に則している。一方、衛星測位信号受信装置は、衛星測位信号が追尾され、メッセージ解読が行われれば、その信号が送信された瞬間の正確な時刻
を知ることができる。また、衛星測位信号受信装置は、測位衛星からの衛星測位信号を追尾している間、測位衛星と同じ拡散符号を一致した位相で生成している。衛星測位信号は拡散符号が一定周期で繰り返されているため(例えば、L1 C/A信号の場合は1ms)、衛星測位信号と同期している拡散符号の位相
の値が、(L1 C/A信号の場合)1msよりも細かい精度での、受信の瞬間の時刻Tuにおける信号の発信時刻を意味する。
【0020】
従って、衛星測位信号受信装置は、衛星測位信号が衛星から送信された時刻

と、拡散符号の位相

とを元にして、測位衛星から衛星測位信号受信装置までの伝搬時間を知ることができる。
実際には、受信装置内のオンボードクロックは、測位衛星の時計ほどの正確さはない。つまり、測位衛星と衛星測位信号信機間の差は、誤差を含んだ見かけの伝搬時間となる。しかし、全ての測位衛星に対して同一の誤差で伝搬時間が計測されるために、これは大きな問題にはならない(後述)。これ故、受信装置側で測距した距離は、通常「疑似距離」と呼ばれる。疑似距離の計算手順を、図12に示す。
【0021】
図12は、L1 C/A信号に基づいた、従来の擬似距離の計算手順例を示すフローチャートである。図12における各変数の意味は、次の通りである。




【0022】
図12において、疑似距離の計算は、まず対象とするk 番目の受信チャネルが衛星測位信号を追尾している状態から始まる(S1201)。
【0023】
は、k番受信チャネルの衛星の拡散符号の位相であるが、これは、追尾により都度更新された周波数並びに拡散符号の位相を取得することができることから、そのまま追尾により取得した拡散符号の位相を
とする(S1202)。なお、L1 C/A信号の場合、拡散符号の位相は、0以上1023未満の値を取り得る。
【0024】
次に、
が分かっていない場合(S1203において、No)
を求めるが、メッセージの解読が既に行われていれば、メッセージに含まれる時刻情報から、衛星が信号を送信した時刻を計算することができる(S1204)。例えば、L1 C/A信号のメッセージの場合、6秒ごとに週内秒で表現した時刻情報が含まれている。そこには、そのメッセージが含まれた信号の送信開始時刻が分かる内容が、メッセージ内に記されている。従って、時刻情報が含まれたメッセージを一度でも解読していれば、継続的に受信しているL1 C/A信号が衛星から送信された時刻を知ることができ、その後も逐次更新することが可能である。この時刻を
と置く。
【0025】
次に、
が分かったものとして(S1203において、Yes)、
を求めるが、最初の追尾ではなく、既に、
が設定されている場合(S1205において、Yes)は、S1207へ進むが、最初の追尾の場合(S1205において、No)は、S1206へ進み、最初に追尾した受信チャネルを基準として、受信装置内の時計
を適切な値に設定する。例えば、その方法は、最初に追尾した受信チャネルがk番受信チャネルであるとすると、
の設定は、
に対して適当な値(例えば、100ms)を加算した値とすることができ、以後、受信装置内の時計は、これを基準として動作する。なお、ここで用いる適当な値とは、各衛星と受信装置間の疑似距離を表現するための共通の誤差分に相当するので、基本的にはいかなる値でも構わない。
【0026】
上述の通り、
が求まると、光速Cに基づき、L1 C/A信号における疑似距離dk は、次式により算出することができる(S1207)。
【0027】
以上の様にして、各受信チャネルにて得られた測距の結果(疑似距離)に基づいて、「測位演算部」で受信装置の位置を演算することができる。これが「測位」処理の概要である。測位を行うためには、通常4機以上の測位衛星からの衛星測位信号を必要とする。最低限4機の測位衛星との疑似距離を得ることにより、受信装置内の時計の設定で用いた「適当な値」による誤差分が解消される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】宇宙航空研究開発機構:”準天頂衛星システムユーザインタフェース仕様書(IS−QZSS)1.1版”、2009年7月31日、インターネット<URL:http://qzss.jaxa.jp/is-qzss/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
さて、衛星測位システムが放送する衛星測位信号には、測距そのものを目的としたものではなく、測距で得られた衛星と受信装置間の距離や、受信装置の測位位置を補正・補強する機能を持つ信号がある。これを「補強信号」といい、補強信号の中に含まれる情報を「補強情報」という。補強信号における補強情報は、メッセージ部分に含まれるのが一般的である。
【0030】
そして、一般的な方法で補強信号から補強情報を解読するためには、受信装置は、測距信号に対して行う場合と同じ手法で1受信チャネルを補強信号に割り当て、該当する周波数帯での捕捉処理及び追尾処理、並びに、解読処理をする必要がある。
【0031】
しかしながら、補強信号が放送される周波数帯や補強信号の拡散符号は、一般的に測距に使用される信号の周波数帯や拡散符号とは異なることが多い。測距に用いる信号だけを扱う受信装置の処理能力やリソースと比較して、補強信号を扱う受信装置は、より大きな処理能力やリソースを必要とする。また、LEX信号の場合は更に特殊であり、LEX信号ショートコードに含まれる補強信号を含むメッセージ解読をするためには、まず、2.5575MCps・410ms長のロングコードにより拡散されている信号を受信すること必要である。これは、通常測距に用いられるL1 C/A信号の、1.023MHz・1ms長拡散符号により拡散されている信号よりも遥かに長い。そのため、L1 C/Aを扱うことを想定した受信装置で、LEX信号の捕捉処理及び追尾処理を行おうとすると、部品や処理が増大化し、大きなコストアップを招いてしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、周波数の異なる第1の信号と第2の信号とを送信する1以上の測位衛星を含む衛星測位システムの衛星測位受信装置であって、前記衛星測位受信装置は、前記第1の信号の受信を開始または継続的に行う際に取得する周波数及び位相情報に基づいて、前記第2の信号の周波数及び位相情報に変換処理することを特徴とする。
【0033】
また、変換された前記第2の信号の周波数及び位相情報に基づいて、前記第2の信号に含まれるメッセージ情報を解読することを特徴とする。
【0034】
また、変換された前記第2の信号の周波数及び位相情報に基づいて、前記第2の信号の追尾を継続的に行うことを特徴とする。
【0035】
また、前記第1の信号の周波数及び位相情報、又は変換された前記第2の信号の周波数及び位相情報に基づいて、前記測位衛星と前記衛星測位受信装置との間の距離を測定することを特徴とする。
【0036】
また、本発明は、周波数の異なる第1の信号及び第2の信号を送信する測位衛星と衛星測位受信装置とを含む衛星測位システムにおける衛星測位信号受信方法であって、前記衛星測位受信装置は、前記第1の信号の受信を開始又は継続的に行う際に取得する周波数及び位相情報に基づいて、前記第2の信号の周波数及び位相情報に変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明にかかる衛星測位信号受信方法及び装置により、2つの異なる周波数の衛星測位信号の捕捉処理及び追尾処理において、演算処理量の軽減し、演算処理部品に要するコストを軽減することができる方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態にかかる衛星測位信号受信装置を有する衛星測位システムの概略構成を説明する説明図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる衛星測位信号受信装置のブロック構成を説明する説明図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる衛星測位信号受信装置における処理フローを説明するフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態にかかる衛星測位システムにおけるL1 C/A信号とLEX信号との関係を説明する説明図である。
図5】本発明の他の実施形態にかかる衛星測位信号受信装置を有する衛星測位システムの概略構成を説明する説明図である。
図6】本発明の他の実施形態にかかる衛星測位信号受信装置のブロック構成を説明する説明図である。
図7】本発明の一実施形態にかかる衛星測位システムにおける信号生成回路を説明する説明図である。
図8】従来のL1 C/A信号の信号構造を説明する説明図である。
図9】従来の衛星測位受信装置を有する衛星測位システムの構成を説明する説明図である。
図10】従来の受信装置のデータ処理部のブロック構成を説明する説明図である。
図11】従来の追尾回路のブロック構成を説明する説明図である。
図12】従来の擬似距離の計算手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明にかかる衛星測位信号受信方法及び装置を実施するための形態ついて、図面を参照しながら詳述する。
【実施例1】
【0040】
図1に、本発明の一実施形態にかかるに衛星測位信号受信装置を有する衛星測位システムの概略構成を示す。本発明の一実施形態においては、LEX信号を取り扱うものとし、LEX信号を送信するQZSS(準天頂衛星システム)を衛星測位システムのモデルとして採用するものとする。
【0041】
図1において、QZSSシステム100の測位衛星101a〜101dからそれぞれ放送されたL1 C/A信号及びLEX信号は、宇宙空間および大気中を伝搬し、衛星測位受信装置102に到達する。受信装置102に到達したL1 C/A信号及びLEX信号は、フロントエンド部1022にてそれぞれの搬送波周波数を、扱い易い周波数(中間周波数)に変換する(ダウンコンバージョンもしくはダウンコンバートという)。中間周波数は、受信装置の設計思想によって異なるものであり、本明細書では、便宜的にL1 C/A信号の中間周波数を
とし、LEX信号の中間周波数を
とする。ダウンコンバートされた各信号はその後、ADC部1023a及び1023bにてそれぞれ量子化され、データ処理部1024へ送られて受信処理される。
【0042】
次に、図1におけるデータ処理部1024の詳細構成を図2に示す。
【0043】
図2において、一般的には、測位受信装置は複数の測位衛星からの信号を受信するため、データ処理部には複数の受信チャネルが存在するが、本明細書では発明の理解と説明の便宜のため、1受信チャンネルにおける動作の説明に留める。また、例示的に、LEX信号のメッセージを解読を行う実施例として説明する。
【0044】
図2において、データ処理部200は、例示的に、L1 C/A信号の捕捉処理を行うL1捕捉部201と、L1 C/A信号の追尾を行うL1追尾部202と、L1 C/A信号の解読を行うL1解読部203と、L1 C/A信号の周波数並びに拡散符号の位相からLEX信号の周波数並びに拡散符号の位相への変換処理を行うL1−E6変換処理部204と、LEX信号の解読を行うE6解読部205とによって構成される。
なお、複数受信チャネルの衛星測位受信装置の場合は、これらの構成要素が1つの受信チャネルの構成要素として含まれ、場合によっては各チャネル内に「測距部」と1つの「測位演算部」とを備える構成を採用することも可能である。この場合、「測距部」及び「測位演算部」は、一般的な受信装置のデータ処理部と共通する構成を採用することができる。
【0045】
図3に、データ処理部200における処理フローを示す。
【0046】
データ処理部200では、まず、S301において処理を開始し、S302において衛星測位信号の周波数の初期値fL1及び拡散符号の位相の初期値φL1を取得した後、L1 C/A信号に対する捕捉処理が行われる(S303)。捕捉処理は、取得したfL1及びφL1に基づいて、入力された衛星測位信号との相関演算を行い、相関値の大小で捕捉の成否を判断する(S304)。追尾で用いるfL1及びφL1の取得に成功しない限り(S304においてYes)、S303に復帰して補足処理が行われる。補足処理の間、fL1及びφL1を徐々に変更し、最も高い相関値が得られた時のfL1及びφL1を捕捉成功時点での周波数及び拡散符号の位相とし、その後の追尾で用いる周波数及び拡散符号の位相の初期値とする(S305)。
【0047】
なお、fL1及びφL1を徐々に変更する手法や、捕捉の成否の判断基準など、捕捉で用いられるアルゴリズムは、従来に用いられてきた捕捉アルゴリズムを採用することができる。捕捉処理の結果、L1 C/A信号を追尾するための周波数fL1、及び拡散符号の位相φL1を取得することができる。
【0048】
そして、上述のL1 C/A信号の捕捉により、追尾で最初に用いる周波数及び拡散符号の位相が決定されると、捕捉は一旦終了し、引き続き、L1 C/A信号に対する追尾が行われる(S305)。まず捕捉によって得られたfL1を衛星測位信号の周波数、 φL1を衛星測位信号の拡散符号の位相とし、追尾処理を行う。
【0049】
追尾で用いられるアルゴリズムは、従来用いられてきた既知の追尾アルゴリズムを採用することができる。L1 C/A信号を入力とした追尾処理により、周波数及び拡散符号の位相が逐次更新され、新たなfL1、φL1となる。
【0050】
なお、信号の追尾が行われる周波数は、具体的には、中間周波数にドップラー周波数が加わったものである。ドップラー周波数は、測位衛星と衛星測位受信装置の相対速度と、送信される周波数とによって決定される値である。つまり、同じ測位衛星から送信されていても、L1 C/A信号とLEX信号とでは送信する周波数が異なるため、ドップラー周波数も異なる値となる。
【0051】
また、L1 C/A信号の追尾処理においては、受信状態に何らかの異常が発生しない限り(S306において、Yes)、正しい受信状態であるものとして、追尾処理(S306)を継続する。何らかの原因によりL1 C/A信号の追尾処理が正しく継続されなかった場合(S306において、No)は、捕捉処理(S303)に戻り、捕捉処理が終了したら、再度追尾を行う、という処理を繰り返す。
L1 C/A信号の追尾処理が継続されている間、解読部において、L1 C/A信号のメッセージ解読が行われる(S307)。
【0052】
続いて、L1 C/A信号の追尾が継続されている間、時刻情報が1度でも取得されれば(S309)、この時刻情報とfL1及びφL1(S308)とに基づいて、L1−E6変換処理が行われる(S310)。なお、時刻情報は、追尾が継続している間は、1回取得できれば足りる。
【0053】
L1−E6変換処理では、以下の2つの処理が行われる。
(処理A)L1 C/A信号の周波数からLEX信号の周波数への変換処理
(処理B)L1 C/A信号の拡散符号の位相からLEX信号の拡散符号の位相への変換処理
【0054】
なお、上記で「LEX信号の拡散符号」と記しているのは、LEX信号のメッセージがCSK変調されている、4ms周期のショートコードを指し、従来技術のようにロングコードの受信を行わないことが本発明の特徴となっている。
【0055】
L1 C/A信号の周波数からLEX信号の周波数への変換(上記、処理A)は、次式(2)に基づいて行われる。
但し、





である。
【0056】
上式(2)は、 LEX信号の周波数 fE6が、L1 C/A号の周波数fL1と、L1 C/A信号の中心周波数fIFL1と、LEX信号の中間周波数fIFE6と、L1 C/A信号の中心周波数L1と、LEX信号の中心周波数E6とを用いて計算できるということを示している。
ここで、L1は既知の値(1575.42MHz)であり、E6は既知の値(1278.75MHz)である。fIFL1及びfIFE6は、受信装置の設計思想によって固有の既知の値を用いることができる。
L1は、L1 C/A信号の周波数であるから、追尾にて用いられる周波数 fL1をそのまま用いればよい。
【0057】
以上の通り、上式(2)に基づいて、L1 C/A信号の周波数からLEX信号の周波数への変換処理が行われる。
【0058】
また、L1 C/A信号の拡散符号の位相からLEX信号の拡散符号の位相への変換(上記、処理B)は、次式(3)に基づいて行われる。
但し、kは、0、1、2、3のうちのいずれかの値をとるものとし、




である。
【0059】
上記(3)は、LEX信号の拡散符号の位相φE6が、L1 C/A信号の拡散符号の位相φL1と、L1 C/A信号の拡散符号のチップレートRL1と、L1信号の拡散符号の周期TL1と、LEX信号の拡散符号のチップレートRE6とを用いて計算できるということを示している。
ここで、RL1は既知の値(1.023MCps)であり、また、TL1は既知の値(0.001sec)であり、また、RE6は、既知の値(2.5575MCps)である。φL1は、L1 C/A信号の拡散符号の位相であるから、追尾にて用いられる拡散符号の位相φL1をそのまま用いることができる。
【0060】
なお、kは、2つの信号の拡散符号周期によって変わる値であり、L1 C/AとLEXの場合は、[0,3]の値を取る整数である。すなわち、kは、0,1,2,3,0,1,2,3,0,・・・と、1ms毎に更新される。kの値は、L1 C/A信号のメッセージ解読により時刻情報が取得された後に決定される。具体的には、図4に示すL1 C/A信号とLEX信号との関係を参照しながら説明する。
【0061】
図4において、現在受信している衛星測位信号が送信された時刻をtX[sec]とする。tXは、L1 C/A信号の追尾処理後、メッセージ解読により、6秒に1回の割合でメッセージに含まれている時刻情報を基準にして、拡散符号が繰り返された回数と、追尾しているL1 C/A信号の拡散符号の位相φL1とから、求めることができる。
【0062】
次に、L1 C/A信号の拡散符号と、LEX信号の拡散符号とが、同時に開始した時刻をt0[sec]と定義する。L1 C/A信号及びLEX信号は、週の始まりを基準として、同時に信号の送信を開始する。LEX信号の拡散符号周期TE6は4msであり、L1 C/A信号の拡散符号周期TL1は1msであるため、週の始まり以後は、正確に4ms毎に、L1 C/A信号の拡散符号及びLEX信号の拡散符号は同時に開始する。つまり、週の始まりを基準として、4msの倍数の時刻では、L1 C/A信号の拡散符号とLEX信号の拡散符号は必ず同時に開始される。図4において、tX以前の直近を見ると、L1 C/A信号の拡散符号を4周期分遡るまでに、必ず、L1 C/A信号の拡散符号とLEX信号の拡散符号とが同時に開始する時刻が存在する。つまり、tX以前で、4msの倍数となる直近の時刻がt0である。
【0063】
上式(3)で表されるkの値は、tXとt0との間に含まれるL1 C/A信号の拡散符号の周期の数である。つまり、L1 C/A信号の拡散符号とLEX信号の拡散符号とが同時に開始された時刻を基準に、k=0から1ms毎に更新される。
【0064】
以上のように、L1 C/A信号の拡散符号の位相からLEX信号の拡散符号の位相への変換が行われる。
【0065】
S310においてL1−E6変換処理が終わると、S311に進み、LEXメッセージ解読が行われる。
【0066】
再び、図2を参照する。L1−E6変換処理部204にて計算されたLEX信号の周波数及び拡散符号の位相は、E6解読部205に渡され、E6解読部205においてLEX信号に含まれるメッセージを解読するのに用いられる。
なお、図2において、L1追尾部202からL1−E6変換処理部204を経て、E6解読部205までの信号の流れを点線で表したのは、ブロック間で引き渡されるのが、データ処理部に入力された衛星測位信号ではなく、それらに基づいて計算された周波数及び拡散符号の位相、並びに、解読部で解読されたメッセージに基づいた時刻情報であることを意味する。
【0067】
E6解読部205では、変換されたLEX信号の周波数及び拡散符号の位相に基づき、信号に含まれるメッセージが解読される。実際にLEX信号のメッセージを解読するには、4ms毎のLEX拡散符号の開始時刻を知る必要があるが、これは、L1−E6変換処理部204にてLEX信号の拡散符号の位相を計算する際に用いた、拡散符号同時開始時刻t0に該当する。t0は、変換されたLEX信号の拡散符号の位相φE6を用いて、次式で表すことができる。
【0068】
つまり、LEX拡散符号の開始時刻(=拡散符号同時開始時刻)t0は、現在受信している信号の送信時刻tXと、変換されたLEX信号の拡散符号の位相φE6と、LEX信号の拡散符号のチップレートRE6とを用いて計算することができる。
【0069】
結局、LEX信号のメッセージ解読は、t0から4ms毎のLEX信号のメッセージに対して、変換されたLEX信号の周波数に基づきLEX信号に重畳されている周波数成分を除去し、CSK変調されたショートコードをデコードすることによって、LEX信号のメッセージを解読することができる。
【0070】
以上の様にして、変換されたLEX信号の周波数並びに拡散符号の位相に基づき、LEX信号に含まれるメッセージを直接解読することが可能である。
【0071】
また、より高度な処理としては、変換されたLEX信号の周波数及び拡散符号の位相に基づき、改めてLEX信号に1受信チャネルを割り当て、LEX信号のロングコードの追尾を開始することも可能である。この場合、通常の従来技術によるLEX信号のロングコードの追尾を開始するために必要となる、LEX信号のロングコードによる捕捉処理を省くことができるという利点を持っている。
【0072】
この場合、LEX信号のロングコードの追尾処理を継続しながら、LEX信号のショートコードに含まれるメッセージを解読することになる。
【0073】
本発明の特徴の一つは、LEX信号の捕捉処理・追尾処理を省略して、L1 C/A信号の捕捉処理・追尾処理によって取得した周波数及び拡散符号の位相から、LEX信号に含まれる補強情報を解読する点にある。送信している周波数は異なるが、L1 C/A信号とLEX信号とが同じ衛星から送信されているために、2つの号の拡散符号が定期的に同じタイミングで送信されていることを利用している。
【0074】
以上に示した発明を実施するための最良の形態においては、L1 C/A信号を継続的に受信し、その周波数及び拡散符号の位相から、LEX信号の周波数及び拡散符号の位相を求め、そこからLEX信号に含まれる補強情報を解読すると好適である。
【実施例2】
【0075】
以上説明した実施の形態では、データ処理部内にE6解読部を設けた構成を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、データ処理部5024の外の系としてE6解読部5025を設置することも可能である。即ち、データ処理部5024の出力として、LEX信号の周波数及び拡散符号の位相を、他の系にあるE6解読部5025に渡すことが考えられる。この場合、受信装置としてはADC部5023bから出力された衛星測位信号と、変換されたLEX信号の周波数及び拡散符号の位相とが出力され、別途、E6解読部(専用機)5025に渡される。
なお、この場合、データ処理部5024の詳細ブロック図として例示的に図6に示したデータ処理部600に示されるように、データ処理部600には、L1 C/A信号が入力されるだけでE6信号が入力される必要はない。
【実施例3】
【0076】
また、上述の説明では、2つの異なる信号として、L1 C/A信号とLEX信号とを取り扱ったが、本発明は、L1 C/A信号とLEX信号との組み合わせに限定されるものではなく、同じ測位衛星から送信された2つの異なる周波数の衛星測位信号であれば、同様に、捕捉処理・追尾処理に関して相対的に軽い処理能力を要する衛星測位信号に基づいて、捕捉処理・追尾処理に関して相対的に重い処理能力を要する衛星測位信号の情報を取得することが可能である。
【実施例4】
【0077】
また、L1 C/A信号が搬送されるL1帯と、LEX信号が搬送されるE6帯の周波数との差分によって、2つの信号が宇宙空間および大気中を伝搬する際に、地球上空に存在する電離層の影響を受け、一般的には、2つの周波数の信号間で伝搬距離に差分が生じる(これを「電離層遅延誤差」という。)。電離層遅延誤差は、L1 C/A信号の拡散符号の位相とLEX信号の拡散符号の位相にも影響を及ぼすため、L1 C/A信号の拡散符号の位相からLEX信号の拡散符号の位相への変換に際し、2つの周波数の間で生じる電離層遅延誤差を考慮すると更に好適である。
電離層遅延誤差による差分は、一例として、ロバッチャーモデルのような、学術的なモデルに従って予測をすることが可能である。従って、この場合、上式(3)にて表した、L1 C/A信号の拡散符号の位相からLEX信号の拡散符号の位相への変換は、電離層遅延誤差によるL1 C/A信号の拡散符号とLEX信号の拡散符号との位相差を表す項であるψKを含めて、以下のように表現することができる。

但し、

である。
【実施例5】
【0078】
また、上述の実施例では、L1 C/A信号とLEX信号とが受信装置に入力された後、ADC部で各々ADC変換され、データ処理部に入力されているが、各々の電気的な経路の差分などの影響により、L1 C/A信号の拡散符号の位相とLEX信号の拡散符号のと位相に誤差分が生じる場合がある。
従って、L1 C/A信号の拡散符号の位相からLEX信号の拡散符号の位相への変換に際し、2つの周波数の間で生じる誤差分を考慮すると更に好適である。
【0079】
この場合、誤差分となる値をいくつか予測し、各々を考慮に入れた変換を行い、複数の結果を得ることができる。具体的な処理手順としては、上式(3)にて表した、L1 C/A信号の拡散符号の位相からLEX信号の拡散符号の位相への変換は、誤差分によるL1 C/A信号の拡散符号とLEX信号の拡散符号との位相差を表す項であるψnを含めて、次式のように改良することができる。
但し、
【0080】
なお、誤差分となる値をいくつか予測し、各々を考慮に入れた変換を行う場合、その誤差分には、上述の電離層遅延誤差を考慮したL1 C/A信号の拡散符号の位相とLEX信号の拡散符号の位相との差分が含まれても構わない。
【実施例6】
【0081】
最後に、本発明の一実施形態にかかる衛星測位システムにおける信号生成回路例を説明しておく。図7に、本発明の一実施形態にかかる衛星測位システムにおいて使用されるLEX信号の生成回路を示す。
【0082】
信号生成回路700は、一例として、準天頂衛星システム(QZSS)の1278.75MHz帯(E6帯)にて放送されるLEX信号に係るものであるが、LEX信号は補強信号として利用されている。
LEX信号は、拡散符号生成器701より生成され、4ms長の8bit(=256通り)メッセージによりCSK変調器702でCSKコード変調された「ショートコード」と呼ばれる2.5575Mcpsの拡散符号と、拡散符号生成器701より生成され、方形波生成器703から生成される方形波に重畳された、410ms長であって2.5575Mcpsの「ロングコード」と呼ばれる拡散符号とを、5.115Mcpsの間隔で交互に選択するようクロック制御され、搬送波生成器705で生成された1278.75MHzの搬送波周波数に重畳されて送信される。
なお、CSK変調とは、コードシフトキーイングの略であり、データの値によって拡散符号の位相を変化させる変調方式の一つである。
【0083】
[公知の技術等]
本発明に関連して、本明細書と同時に出願されたかその前に出願され、公に自由に入手できるすべての論文および文書の内容は、参照によって本明細書の記載内容として組み込まれる。
【0084】
[組み合わせ]
本明細書(請求項、実施例、要約、及び図面を含む)に記載された構成要件の全て及び/又は開示された全ての方法又は処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。
【0085】
[特徴の一例]
本明細書(請求項、実施例、要約、及び図面を含む)に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、または類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一又は均等となる特徴の一例にすぎない。
【0086】
本発明は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本発明は、本明細書(請求項、実施例、要約、及び図面を含む)に記載された全ての新規な特徴又はそれらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法又は処理のステップ、又はそれらの組合せに拡張することができる。
【符号の説明】
【0087】
100 衛星測位システム
101a〜101d 測位衛星
102 測位測位受信装置
1021 受信アンテナ部
1022 フロントエンド部
1023a、1023b ADC部
1024 データ処理部
図1
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