(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965769
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】能動制御サスペンションシステム
(51)【国際特許分類】
B60G 7/00 20060101AFI20160728BHJP
B60G 3/20 20060101ALI20160728BHJP
B60G 17/015 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
B60G7/00
B60G3/20
B60G17/015 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-167045(P2012-167045)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2013-121829(P2013-121829A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2015年7月1日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0132821
(32)【優先日】2011年12月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 成 培
(72)【発明者】
【氏名】姜 秉 求
(72)【発明者】
【氏名】柳 尚 勳
(72)【発明者】
【氏名】李 彦 求
【審査官】
菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−207468(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0233880(US,A1)
【文献】
特開2011−042350(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0042907(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 7/00
B60G 3/20
B60G 17/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪側ナックルとサブフレームとの間において、上部の一側にアッパーアームが連結され、上部の他側に節点可変手段と連結されたアシストリンクが設けられた能動制御サスペンションシステムであって、
前記節点可変手段は、前記サブフレームの一部に形成されたハウジングと、前記ハウジングのブラケットに着脱式に結合された可変軌跡キットと、前記可変軌跡キットに固定されたカム作動レールと、前記可変軌跡キットに上下方向にスライド可能に配置されたカムと、前記カム及びアシストリンクの車体側連結部を連結するカムボルトと、を有することを特徴とする能動制御サスペンションシステム。
【請求項2】
前記可変軌跡キットは、両側面を形成し前記ハウジングのブラケットに着脱式に固定される一対の縦部材と、前記一対の縦部材の下部を連結する横部材と、で構成され、前記縦部材それぞれの中央に貫通孔が形成され、前記アシストリンクの車体側連結部が前記一対の縦部材の間に位置されることを特徴とする請求項1に記載の能動制御サスペンションシステム。
【請求項3】
前記可変軌跡キットは、前記一対の縦部材の中の一方の縦部材の上側及び車体側に突出部が形成され、前記突出部にボルト貫通孔が形成されて、前記ブラケットにボルトで締結されることを特徴とする請求項2に記載の能動制御サスペンションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動制御サスペンションシステムに係り、より詳しくは、精密部品をキット化しハウジングを共用化することにより開発費用、製造費用、及び点検費用を節減した能動制御サスペンションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、リアサスペンションに適用される能動制御サスペンションシステム(AGCS:Active Geometry Control Suspension System)は、走行中の急旋回時に、リアサスペンションのジオメトリを変化させることによって後輪の接地力を向上させ、ハンドリング性能を改善する装置である。
車両の急旋回走行時にオーバーステア傾向が現れて操縦安定性が低下するが、能動制御サスペンションシステムはこれを解消するために、急旋回走行時に旋回外側後輪をトーイン(Toe−in)に誘導して車両の操縦安定性を向上させる。
【0003】
図1は、一般的な能動制御サスペンションシステムの一例を示す斜視図である。
図1に示すように、能動制御サスペンションシステムは、後輪(W)側ナックル1とクロスメンバ3に設置されたサブフレーム5との間の、下部にロアアーム7が設置され、上部の一側にアッパーアーム9が設置され、上部の他側に節点可変手段20と連結されたアシストリンク11が設置されて構成される。
アシストリンク11は、一端がボールジョイント(BJ)によってナックル1の上部に連結され、他端は節点可変手段20によってサブフレーム5に連結されて車体側節点(P)を形成する。
【0004】
図2は、
図1の能動制御サスペンションシステムに適用されるアシストリンク及び節点可変手段の側面斜視図であり、
図3は、
図1の内部構成図である。
図2、3に示すように、節点可変手段20は、レール装着溝21が形成されたハウジング23、カム作動レール25、カム27、回転レバー29、モータ31、及びスライダ33を含んで構成される。
【0005】
ハウジング23は、サブフレーム5と一体に形成される。ハウジング23の両側面に円弧形のレール装着溝21が形成される。
カム作動レール25は、ハウジング23のレール装着溝21に固定される。
カム27は、カム作動レール25の外側に車両の上下方向スライド可能に結合され、アシストリンク11の車体側連結部とボルト35によって連結される。
アシストリンク11の車体側連結部の一側の両面に接して一対の回転レバー29が設置される。それぞれの回転レバー29は、一端がハウジング23にヒンジ連結されてヒンジ点(H)を形成し、他端にはフォーク37が形成されてスライダ33と連結される。
モータ31は減速機39を含み、回転軸を形成するスクリュー軸41が車両下方に向かうように配置される。
【0006】
スライダ33は、中央部分がスクリュー軸41にスクリュー結合され、スクリュー軸41の回転方向に応じて車両の上下方向に移動するように構成される。
また、スライダ33には2つのガイドピン43が車両の上下方向に貫通して配置され、スクリュー軸41の回転時にスライダ33の回転を防ぎながら、スライダ33の車両上下方向への移動を案内する。
また、スライダ33の両側にフォーク突起45が形成され、回転レバー29のフォーク37に係合される。
【0007】
上述した能動制御サスペンションシステムは、車両の急旋回走行時にバンプが起こる旋回外側後輪(W)をトーインに誘導する。
すなわち、車両の急旋回走行時に、図示しない制御装置が、モータ31を駆動してスライダ33を下方へ移動させることにより、スライダ33に連結された回転レバー29がヒンジ点(H)を基準として回転される。
【0008】
これにより、アシストリンク11の車体側節点(P)をなす車体側連結部がカム27と共にカム作動レール25に沿って下降し、アシストリンク11の車体側節点(P)の位置を下方に移動させる。
したがって、旋回外側後輪(W)はトーイン値が増大し、車両の高速旋回時、横風時、急斜線変更時などの状況で車両の旋回安定性を向上させ、車両の安定した走行性能を実現させる。
【0009】
しかし、上述した能動制御サスペンションシステムは、レール装着溝21がハウジング23自体に形成されているため、開発過程においてカム作動レール25の軌跡を変更しながら性能チューニングを行う場合に、レール装着溝21の軌跡も変更しなければならないため、軌跡を変更するたびごとにハウジング23全体を新たに製作しなければならず、過大な費用を要するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−52583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
かかる課題を解決するための本発明は、開発費用、製作費用、及び点検費用を節減できるようにした能動制御サスペンションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の能動制御サスペンションシステムは、後輪側ナックルとサブフレームとの間において、上部の一側にアッパーアームが連結され、上部の他側に節点可変手段と連結されたアシストリンクが設けられた能動制御サスペンションシステムであって、
節点可変手段は、サブフレームの一部に形成されたハウジングと、ハウジングのブラケットに着脱式に結合された可変軌跡キットと、可変軌跡キットに固定されたカム作動レールと、可変軌跡キットに上下方向にスライド可能に配置されたカムと、カム及びアシストリンクの車体側連結部を連結するカムボルトと、を有することを特徴とする。
【0013】
また本発明の可変軌跡キットは、両側面を形成しハウジングのブラケットに着脱式に固定される一対の縦部材と、一対の縦部材の下部を連結する横部材と、で構成され、縦部材それぞれの中央に貫通孔が形成され、アシストリンクの車体側連結部が一対の縦部材の間に位置されることを特徴とする。
また本発明の可変軌跡キットは、一対の縦部材の中の一方の縦部材の上側及び車体側に突出部が形成され、突出部にボルト貫通孔が形成されて、ブラケットにボルトで締結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の能動制御サスペンションシステムは、開発過程において車両のトー変化性能の向上のためのチューニング作業中に軌跡を変形しようとする場合には、ハウジングを共用化し可変軌跡キットのみを新たに製作して適用することにより、開発費を節減することができる。
また、本発明の能動制御サスペンションシステムは、車両製造時に、多車種共用のハウジングを大量生産することにより、製造費を節減できる。
更に、本発明の能動制御サスペンションシステムは、点検よる部品の交替時に可変軌跡キットのみを交替できるようにすることにより、修理・点検費用を節減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一般的な能動制御サスペンションシステムの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の能動制御サスペンションシステムに適用されるアシストリンク及び節点可変手段の側面斜視図である。
【
図3】
図1の能動制御サスペンションシステムに適用されるアシストリンク及び節点可変手段の内部構成図である。
【
図4】本発明の能動制御サスペンションシステムの分解斜視図である。
【
図5】本発明の能動制御サスペンションシステムに適用される可変軌跡キットの組み立て部を切開した斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る能動制御サスペンションシステムに適用されるアシストリンク及び節点可変手段の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。ここで、同一又は類似する構成要素については同一の符号を付す。
図4は、本発明の能動制御サスペンションシステムの分解斜視図であり、
図5は、本発明の能動制御サスペンションシステムに適用される可変軌跡キットの組み立て部を切開した斜視図である。
【0017】
図4、5に示すように、能動制御サスペンションシステムの節点可変手段20が配置されるハウジング100は、後輪側クロスメンバ110の両側に設置されるサブフレーム111の一部に形成される。
【0018】
ハウジング100には、車両の長さ方向に互いに一定の間隔をおいて、ホイール側に突出する一対のブラケット101が形成され、ブラケット101それぞれにはレール装着ホール102が形成される。
【0019】
レール装着ホール102には、可変軌跡キット120が着脱可能に設置される。
可変軌跡キット120は、両側面を形成する一対の縦部材121と、縦部材121の下部を一体に連結する横部材122と、を有する。
縦部材121は、ブラケット101に対応して形成されブラケット101に着脱式に固定される。縦部材121の中央部分には、貫通孔123が形成され、貫通孔123にはカムボルト112が貫通され、カム140が車両上下方向にスライド可能に設置される。一対の縦部材121の間にはアシストリンクの車体側連結部が位置される。
【0020】
また、縦部材121の両側面にはレール載置部124が形成され、レール載置部124にカム作動レール130が載置される。
一側の縦部材121の、車両上下方向上方、及び車幅方向内側それぞれには突出部125が突設され、それぞれの突出部125にはボルト貫通孔126が形成される。
可変軌跡キット120がブラケット101に挿入された状態で、固定ボルト127がボルト貫通孔126に挿入されブラケット101に螺結される。
【0021】
ボルト貫通孔126を、上方に設けられた突出部125に1個、車幅方向に設けられた突出部125に2個形成することにより、3点固定がなされる。
レール載置部124に配置されるカム作動レール130は、精密加工品として別途に製作して適用される。カム作動レール130のみを別途に製作する理由は、カム作動レール130を一体に形成すると、カム140の軌跡を変更するたびに可変軌跡キット120全体を精密加工しなければならず、製造原価が上昇するためである。
【0022】
図6は、本発明の実施形態に係る能動制御サスペンションシステムに適用されるアシストリンク及び節点可変手段の側面図である。
図6に示すように、カム140が、カム作動レール130の外側に上下方向にスライド可能に結合され、アシストリンク113の車体側連結部とカムボルト112によって組み立てられる構成により、節点可変手段20が形成される。
【0023】
なお、カム作動レール130、カム140などの構成及び節点可変手段20の作動は既存のものと同じであるため、詳細な説明は省略する。
上述したように、可変軌跡キット120を別途に製作して節点可変手段20を構成すれば、車両のトー変化性能向上のためのチューニング作業過程中にカムの移動軌跡を変形する場合、可変軌跡キット120のみを新たに製作して適用すれば、加工費を節減することができる。
【0024】
また、車種別の最適性能を発揮する作動軌跡が変わる場合にも、ハウジング100は各車種共用で制作し、可変軌跡キット120のみを別途製作して適用すれば良いため、車両の開発費及び大量生産による量産製品の価格を削減するることができる。
さらに、実車に適用される場合、点検による部品の交換時にも、可変軌跡キット120のみを交換することにより、費用を削減することができ、消費者の満足度を向上させることができるようになる。
【0025】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0026】
20 節点可変手段
100 ハウジング
101 ブラケット
102 レール装着ホール
110 後輪側クロスメンバ
111 サブフレーム
112 カムボルト
113 アシストリンク
120 可変軌跡キット
121 縦部材
122 横部材
123 貫通孔
124 レール載置部
125 突出部
126 ボルト貫通孔
127 固定ボルト
130 カム作動レール
140 カム