(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トンネルの切羽前方の地山内にトンネル掘進方向に対して所要の仰角で複数本の注入横孔(13)付きパイプ材(10)を接続しながら長尺打設し、打設後に前記パイプ材(10)内側から地山補強用の注入材(a)を前記注入横孔(13)を介し圧入して周辺地山を改良し、注入材(a)が硬化した後のトンネル掘削時に前記パイプ材(10)を切除しながら掘削を進める長尺鏡ボルト工法において、
前記パイプ材(10)が、外周表面にえくぼ状の独立した凹み(11)をその管軸長手方向に連続配置した薄肉のディンプル鋼管であり、前記管軸長手方向に前記パイプ材(10)を切除する間隔毎に一対のスリット(12)が配置され、加えて複数の前記注入横孔(13)が前記長手方向所定間隔で配置され、かつ前記一対のスリット(12)は前記パイプ材(10)の管軸長手方向及び周方向にずれをもって対向して配置されており、当該ディンプル鋼管(10)の両端には接続用のネジ部材(14a、14b)が接合されていることを特徴とする長尺鏡ボルト工法。
前記注入材(a)の圧入おいて、前記パイプ材(10)のほぼ全長に亘って内設されるエア抜き用インサート管(30)が薄肉鋼管から成り、そのインサート管(30)は当該管軸長手方向に所定間隔で対向する所定深さのインデント加工(31)が施されていることを特徴とする請求項1に記載の長尺鏡ボルト工法。
前記パイプ材(10)の端末部にバルクヘッド(V)領域幅と略同一長さの薄肉で連続するスパイラル突起(40a)を有する多孔質の鋼製シース管(40)を接続して追加削孔打設し、前記鋼製シース管(40)の端末部が切羽(C1)に到達したら削孔を完了し、次に、
前記鋼製シース管(40)端末部内にインサート管(30)口元部のリターン確認パイプ(34)、バルクヘッド形成用のパッカー注入ホース(43)、及び加圧注入用のホース(44)が連通してなるゴムコーン製止水部材(41)を配置し、更に、
前記インサート管(30)口元部から所定のバルクヘッド(V)区間を経てなる1個の袋パッカー(42)を当該インサート管(30)および加圧注入用ホース(44)が連通するように前記鋼製シース管(40)の内側に配置し、前記袋パッカー(42)のバルクヘッド形成側には所要数の小穴(42a)が設けられてその各小穴(42a)には短尺の2次注入ホース(42b)が配置されてなり、
前記袋パッカー(42)にウレタンなどのゲルタイムの短い発泡性樹脂(b)を充填してパッカー(42)を膨張させると同時に小穴(42a)より2次注入ホース(42b)を通じてバルクヘッド(V)区間の鋼製シース管(40)内側にリークさせ、当該バルクヘッド(V)区間の鋼製シース管(40)の注入横孔(40b)より口元周辺地山に浸透固化させて確実なバルクヘッド(V)を構築し、その後、ゲルタイムの長い注入材(a)を加圧注入用ホース(44)からパイプ(10)全長に亘って充填し、インサート管(30)の先端孔(33)から流入し、そのインサート管(30)内を介して口元部のリターン確認パイプ(34)に到達したのち、当該インサート管(30)口元部を閉塞し、続けて加圧注入ホース(44)から注入材(a)を加圧注入してパイプ材(10)全長に亘って設けたパイプ材(10)の注入横孔(13)から周辺地山に浸透固化させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の長尺鏡ボルト工法。
【背景技術】
【0002】
近年、地山状態の悪い場合のトンネル掘削等において切羽の天端部に沿って通常約120°の仰角の範囲に、長尺(例えば12.5m)の補強鋼管を掘進方向より上向きに角度θが4〜6°の小角を持って打設し、この長尺の補強鋼管に樹脂系或いはセメント系の注入材を圧入し、当該鋼管の長手方向に複数設けられた横穴より周辺地山に浸透固化させる手法が取られ、注入式長尺鋼管先受け工法(AGF工法)として各種の派生した工法が紹介され実用化されている(本願
図8及至
図9符号P参照)。
【0003】
また、前記長尺鋼管先受け工法に加えて、長尺鏡ボルト工法と呼ばれる切羽の押し出し変位による切羽崩壊防止を目的とした長尺(前記に同じく例えば12.5m)の鏡ボルトを打設する事例が多くなっている(本願
図8及至
図9符号B参照)。長尺鋼管先受けが切羽前方の打設鋼管上側からの土塊による垂直荷重に対して曲げ剛性で支持するのに対し、長尺鏡ボルトは切羽の押し出し変位を抑えるべくボルトの引張力で切羽の押し出し変位を直接に抑制するため、引張性能に優れ、注入材及び周辺地山との付着が良好で、確実な注入材の圧入による周辺地山の改良が可能なボルト材料の提供が求められる。更に、後掘削で切除する箇所に打設するボルトであるのでトンネル掘削機での切除が容易なことも求められる。
【0004】
前記長尺鏡ボルトの構築技術について特許文献1に記載されており、その技術は、パイプ材にトンネルの後掘削が可能な連続スパイラル突起を有する鋼製シース管を採用し、複数本のパイプ材をトンネル切羽よりトンネル掘進方向に直列に接続しながら2〜3°の小仰角をもって略水平に先端ビット部で牽引打設し、打設が完了したらパイプ材内側に後掘削が可能なFRPロープやFRP中空ボルトなどの引張補強材を口元からパイプ材の略全長に挿入し、口元部での注入材漏れを防止できるバルクヘッドを構築した後で、パイプ材全長に亘って当該パイプ材横孔から周辺地山に注入材を加圧注入し、注入材が固化した後で当該パイプ材を切除しながらトンネル掘削を進めるものである(本願
図8参照、特許文献1
図1、
図16参照)。
【0005】
また、長尺先受け工法および長尺鏡ボルトを包括した技術が特許文献2に記載されているが、ここでは特に長尺鏡ボルトに限定した技術領域を説明すると、長尺鏡ボルトの構築において、同特許文献2
図9(a)(b)の如く、同
図6〜
図8に開示の各種外面状の採用により付着力を改善して複数の横孔を配置した各パイプ材を削孔ビット部で先端牽引しながら、複数本を直列に接続してトンネル切羽より略水平に長尺打設し、打設が完了したら口元部からの加圧注入時の注入材漏れを防ぐ目的でバルクヘッドを形成し(同文献2
図4(b)の符号7参照)、その後でパイプ材横孔から周辺地山にしっかりと加圧注入する技術が紹介されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1記載の技術は、パイプ材が薄肉の鋼製シース管であり、連続スパイラル突起を有するために、複数本のパイプ材を直列に接続しながら、例えば全長12.5mほどを先端牽引する削孔打設時において、周辺の崩壊性地山がパイプ材外面に付着して牽引時に地山との摩擦が生じて牽引力が増大し、パイプ材のシースかしめ部から破損することがあり、パイプ材の面状の改善およびパイプ材の強度改善が求められていた。また、後挿入される引張補強材にはFRP(ガラス繊維強化プラスチック)ロープやFRPパイプが紹介されている。このロープやパイプは、掘削機による後掘削性は良好であるが、鉄に比べて弾性率が極めて低く、地山の微小変位に対しての引張力の発現が鋼製引張材よりも小さい難点があった。
【0008】
また、特許文献2記載の技術は、まず、外周面に凹部を有し、その凹部に吐出孔(横孔)を形成し、その凹部を削岩機の前進回転と反対方向の螺旋状に形成されたパイプ材が開示されている(同文献2
図6参照)。このパイプ材はその外面に突起がなく、削孔において長尺牽引打設しても周辺の崩壊性地山との摩擦増大による牽引力増大の問題は発生しにくい。具体的なパイプの実施形状は同文献
図3(c)及び
図6に示す形状であり、広義には連続するスパイラル状の凹溝も包括している。
しかしながら、これらスパイラル凹溝形状はパイプ材外面側からプレス塑性加工して成形されるため、前記文献2
図6、
図7から明らかなようにパイプ材内面には略全周閉鎖的にスパイラル状の内径側突起が形成され、一般の削孔では削孔された地山(スライム)はパイプ材内側を通過して口元部から排出されることから、特に仰角が2〜3°と小さくて略水平方向に打設される長尺鏡ボルトでは、スライムの排出が悪く、削孔水を多量に送水しながら削孔しても、内面突起部でスライムが堆積して削孔効率が悪くなることが懸念される。
【0009】
つぎに、特許文献2のパイプ材は外周面に凸部を有し、その凸部以外の面が凹部をなす縞鋼管からなるものもある(同文献2
図8参照)。その縞鋼管の内面は通常の鋼管と同じく、内面突起は生じないので、仰角の小さな略水平打設の長尺鏡ボルトへの適用において、スライムの排出が阻害される問題は懸念されない。
しかしながら、縞状突起はパイプ材外周面に独立突起が全面に緻密に配置されており、前記鋼製スパイラルシースの問題点と同じく、周辺の崩壊性地山との削孔時の摩擦増大に起因する先端牽引力増大が懸念され、特に礫岩などの削孔では表面突起部と削孔壁との間でロッキングの発生による削孔不能も想定される。
【0010】
さらに、この特許文献2の技術では、前記各種面状の鋼製パイプ材を用いており、略水平方向に長尺鏡ボルトを打設してからパイプ材内側より周辺地山に注入材を加圧注入し、注入材が固化した後、トンネル掘削機で当該ボルトを掘削・切除しながら工事を進める。このため、前記記載の各種鋼管は、管軸直角方向に環状溝を加工して後掘削での切除を可能としている。
しかしながら、パイプ材に一定間隔で環状溝を形成すると、当該環状溝形成部の管軸直角方向の断面積が小さくなり、耐引張力が低下して長尺鏡ボルトの機能を害する要因となる。
【0011】
本発明は、以上の実状の下、周辺の崩壊性地山での先端牽引型の長尺削孔作業時におけるパイプ外周面の付着力増大による施工トラブルが生じないパイプ面状を有し、一方、注入材が固化した完成時には周辺地山との定着が確実な長尺鏡ボルトを提供することを第1の課題、FRPなどの樹脂系パイプよりも弾性係数の大きな鋼製パイプによる長尺鏡ボルトの採用において、後続のトンネル掘削時の切除が容易であると共に、必要に応じてボルトの耐引張力の改善が可能な長尺鏡ボルトを提供することを第2の課題、前記課題1、2を達成した長尺鏡ボルトにおいて、周辺地山への確実な注入材の加圧注入を実現できるバルクヘッドの構築方法を提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
まず、第1の課題を達成するため、本発明は、
トンネルの切羽前方の地山内にトンネル掘進方向に対して所要の迎角、例えば略2〜3度の仰角で複数本の注入横孔付きパイプ材を直列に接続しながら長尺打設し、打設後にパイプ材内側から地山補強用の注入材を圧入して周辺地山を改良し、注入材が硬化した後のトンネル掘削時に当該パイプ材を切除しながら掘削をすすめる長尺鏡ボルト工法において、パイプ材が、外周表面にえくぼ(笑窪)状の独立した凹みを連続配置した薄肉の鋼管(ディンプル鋼管)であり、
前記パイプ材を切除する間隔毎に管軸長手方向に若干のずれをもって配置した対向する一対のスリットが配置され、加えて複数の注入横孔が所定間隔で配置され、当該鋼管の両端には接続用の厚肉ネジが接合されている構造を採用した。
【0013】
ディンプル鋼管の外面状は独立して連続配置されたえくぼ状の2mm程度の極めて浅い凹みで、その凹み部のスロープも緩やかであり、崩壊性地山における先端牽引型の長尺削孔作業でも当該鋼管外周面の付着力増大による施工トラブルは生じない。このため、先端ビット部で削孔と牽引を行いながら当該ディンプル鋼管を複数本、直列にネジ接合しながら長尺鏡ボルトの削孔打設を円滑に行い得る。
【0014】
削孔が完了したら当該ディンプル鋼管内を介して複数の横孔より注入材を周辺地山に圧入して固化させ、ディンプル鋼管外面と周辺地山との付着を確保でき、一般の丸面状鋼管に比べて極めて高度の付着力を確保できるのである。
また、ディンプル鋼管には掘削と切除および鋼製支保工の建込みを効率よく実施できるように、ディンプル鋼管を横から打撃すれば切除が確実な、
パイプ材を切除する間隔毎に管軸長手方向に若干のずれをもって配置した対向する一対のスリット部を有している。尚、切除する方向性は予想できないのでスリットは対向した一対のスリットとし、またスリットによるディンプル鋼管断面積の減少が相乗しないように、管軸長手方向
及び周方向に若干のずれをもって配置した一対のスリットとすることができる。
【0015】
ディンプル鋼管の肉厚は3.0〜4.5mm程度と薄く、えくぼ状の凹み加工が連続して施されているため端部の接続ネジは直接成形できない。よって別途に所定の引張耐力を有する厚肉の雄ネジ部材もしくは雌ネジ部材を成形し、当該ディンプル鋼管の両端に例えば溶接接合することができる。
【0016】
つぎに、本発明は、第2の課題を達成するため、
前記注入材の圧入おいて、前記パイプ材のほぼ全長に亘って内設されるエア抜き用のインサートチューブを薄肉鋼管(インサート鋼管)とし、当該薄肉鋼管軸長手方向に所定間隔で対向する所定深さのインデント加工を施した構成を採用できる。
【0017】
前記パイプ材は周辺地山との付着が極めて良好な多数の凹みを具備した薄肉鋼管(ディンプル鋼管)であるが、後掘削の作業性向上を目的とした前記一対のスリット部の当該管断面積は比較的小さく、鏡ボルトとして求められる耐引張力もこの部分で小さくなり、現場条件によっては更に高度な耐引張力の長尺鏡ボルトが求められる場合がある。
この場合、前記エア抜き用のインサート鋼管をその鋼管に外装するディンプル鋼管と共に後掘削が可能で小径の薄肉の鋼管とし、当該内径部が閉塞せずにエア抜き機能を維持できる深さで対向するインデント加工を長手方向に所定間隔で配置して外周面の注入材との付着性能を改善し、これをディンプル鋼管内側に略全長に亘って挿入してから注入材を充填・加圧注入すれば、ディンプル鋼管の耐引張力に当該インサート鋼管の耐引張力を追加した高度な長尺鏡ボルトを構築できる。
なお、ディンプル鋼管は薄肉のため、外周面へのディンプル(凹み)加工により内径側にも独立した隣接する多数の内面凸起が形成されており、内面側注入材との付着およびインサート鋼管への引張力の伝達は確実である。
【0018】
さらに、本発明は、第3の課題を達成するため、
前記パイプ材の端末部にバルクヘッド領域幅と略同一短尺長さの薄肉で連続するスパイラル突起を有する多孔質の鋼製シース管を接続して追加削孔打設し、当該
鋼製シース管端末部が切羽に到達したら削孔を完了し、次に、
当該鋼製シース管端末部内に、インサート管口元部のリターン確認パイプ、バルクヘッド形成用のパッカー注入ホース、及び加圧注入用のホースが連通してなる止水部材を配置し、更に当該インサート管口元部から所定のバルクヘッド区間を経てなる1個の袋パッカーを当該インサート管および加圧注入用ホースが連通するよう
に鋼製シース管の内側に配置し、当該袋パッカーのバルクヘッド形成側には所要数の小穴が設けられ、その小穴には短尺の2次注入ホースが配置されてなり、袋パッカーにウレタンなどのゲルタイムの短い発泡性樹脂を充填してパッカーを膨張させると同時に前記小穴の2次注入ホースを通じてバルクヘッド区間の鋼製シース管内側に確実にリークさせ、当該バルクヘッド区間の鋼製シース管の横孔より口元周辺地山に浸透固化させて確実なバルクヘッドを構築し、その後、ゲルタイムの長い注入材を加圧注入用ホースからパイプ材全長に亘って充填し、インサート管の先端孔から流入し、インサート管内を介して口元部のリターン確認パイプに到達したのち、当該インサート管口元部を閉塞し、続けて加圧注入ホースから注入材を加圧注入してパイプ材全長に亘って設けたパイプ横孔から周辺地山に浸透固化させる構成をとることができる。
【0019】
このようにして、確実なバルクヘッド領域を長尺鏡ボルトの口元部に形成できれば、後続の長尺鏡ボルトを介した周辺地山への高圧加圧注入において、口元部での注入材の漏れが生じずに確実に行え、前記ディンプル鋼管外周面と周辺地山の確実な定着および周辺地山への効率的な改良注入を実現できる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、後掘削が必要なトンネル切羽前方に打設される長尺鏡ボルトの引張部材として外周面に突起がなく、えくぼ状の独立した凹みを連続配置したディンプル鋼管を採用したことにより、先端牽引型の長尺削孔作業時における外周面と周辺地山との付着力増大による施工トラブルを回避できるようになった。
【0021】
また、FRPなどの樹脂系パイプよりも弾性係数の大きい鉄系のディンプル鋼管を採用し、地山変位の発生に対して即効性があると同時に高い周面付着力を有する長尺鏡ボルトの提供を実現し、更に当該ディンプル鋼管は後掘削時の切除が容易な薄肉で管軸長手方向
及び周方向に若干ずらした一対のスリットを設けた構造として施工性を改善した。
【0022】
更に、ディンプル鋼管外面の凹み加工によって内面側に形成される独立した凸起によるディンプル鋼管内面の高度な付着力を利用し、必要に応じて内設するエア抜きインサート管を表面にインデント加工を実施した付着力の高い薄肉鋼管とし、ディンプル鋼管内側の略全長に亘って挿設することにより、その隙間に加圧充填される注入材との複合断面による耐引張力の改善も実現できるようになった。
【0023】
そして更に、周辺地山への確実な加圧注入の実現、および前記ディンプル鋼管外面凹みや内面凸起による付着力の改善、および前記インデント加工したインサート鋼管の付着力の改善を目的として、ゲルタイムが長い注入材であっても確実な加圧注入が可能な、独自のバルクヘッド構築方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
図8および
図9は軟弱な地山におけるトンネル掘削における施工実施状態を示し、トンネル天端には鋼製支保工Hの上端に沿うように仰角θ:4〜6°をもって注入式長尺鋼管先受け工法(AGF工法)による長尺先受け鋼管Pが打設され、その長さは一般に12.5m程度であって後続の掘削は9m程度(M寸法)であり、その差12.5m−9m=3.5m(t寸法)は先受け鋼管Pのラップ長さtとなり、通常のAGF工事では9m掘削しては次のシフトの長尺鋼管打設を繰り返すサイクルである。
図8、
図9中、1はトンネル天端仕上がり線、2は上半掘削線である。
【0027】
同様に、トンネル切羽C1には仰角2〜3°程度の小角をもって略水平に本発明に係る長尺鏡ボルト工(長尺鏡ボルト)Bが配置され、その打設長さは前記AGF工法の掘削長さ(M寸法)に合わせて前サイクルで打設された長尺鏡ボルトBの残長と次に打設される同ボルトが同程度のラップ長さ(t寸法)になるように最低12.5mの打設が必要であるが、本例では口元部のバルクヘッド区間1m(
図9に図示せず、
図2及び
図6参照)を余長として加えた13.5mの長尺鏡ボルトBが打設されている事例を説明する。
図9中、Bは現サイクルで打設中の長尺鏡ボルト、B’は前サイクルで打設された長尺鏡ボルトであり、以下、両者をB(10)とする。
【0028】
以下、前記施工実施形態の内、長尺先受け鋼管Pの打設は従来と同様であって、本発明の長尺鏡ボルト工に絞って説明する。この長尺鏡ボルトBは、従来と同様に、トンネルの切羽C1の前方地山内に打設し、その長尺鏡ボルトBの管端末部が切羽C1に到達したら、その管端末部に、下記袋パッカー42を介在してインサート管口元部のリターン確認パイプ34、バルクヘッド形成用のパッカー注入ホース43、及び加圧注入用のホース44が連通してなる止水部材41を配置し、その各ホース43、44でもって周辺地山に固化材b、aをそれぞれ注入浸透固化させる。この作用の詳細は後述する。
【0029】
図1および
図2は、本発明の一実施形態の長尺鏡ボルトBの一例の薄肉鋼製パイプ材10を示す。このパイプ材10は、例えば外径:φ76.3mm、厚さ:3.2mm、長さ:略3mであり、周辺地山との付着を改善する目的で外周表面にはえくぼ状(角錐台状)の独立した深さ11d:2mm程度の微小凹み11を連続配置した薄肉鋼管(ディンプル鋼管)から成る。凹み11は、図示のように外周面全周にその長さ方向等間隔であったり、同千鳥足状であったり、同間欠的であったり等とその作用効果を発揮する限りにおいて任意である。なお、このパイプ材10の最小内径は63mmであった(
図7参照)。
【0030】
また、パイプ材10には、打設後のトンネル掘削工程において支保工Hの建込間隔の略1m毎の間隔での掘削機によるディンプル鋼管10の切除を目的に、管軸直角方向に若干のずれ(例えば100mm)をもって配置した対向する一対の切込み深さ(例えば14mm)のスリット12が配置され、
その一対のスリット12、12は周方向にも若干のずれをもっている(図1(a)、(b)参照)。加えて複数の注入横穴13(例えばφ10mm)が所定間隔で配置されている。さらに、ディンプル鋼管(パイプ材)10両端には接続用の厚肉材から加工した雄・雌ネジ部材14a、14bが突合せ全周溶接により接合されている。
このネジ部材14a、14bは、筒体であって、その一端が雄ねじ又は雌ねじとされ、その雄雌ねじの反対側がパイプ材10に当接されて溶接等によって接合される。
【0031】
前記凹み11のディンプル形状は、
図1(d)に示すように、中央部に幅3mm、長さ18mmの略長方形の窪み部が配置され、その外側に向かってゆるやかな勾配が形成されており、ディンプルの外郭寸法は幅22mm、長さ35mm程度のえくぼ状(錐台状)である。尚、ディンプルの形状は凹み11の深さや中央部窪み底面の形状、鋼管の材質により各種の寸法が実現できる。また、ディンプル鋼管10の肉厚は薄肉のため、外面の凹み11成形により鋼管内面には同程度の独立した微小凸起が連続して配置された面状となっている。
【0032】
この実施形態における前記パイプ材(ディンプル鋼管)10からなる長尺鏡ボルト鋼管Bの一例を
図2に示し、例えば、先頭管B1は前記ディンプル鋼管10先端部に先端シュー21と長さ調整管22を追加接続した3.5m、中間管B2、B3および端末管B4は全て前記ディンプル鋼管10で同一長さ3mであり、更に最端末部にバルクヘッド管B5として1mの多孔質の鋼製シース管40を配置することもでき、全長は13.5mとすることができる。
【0033】
この実施形態におけるインサート鋼管30を
図3に示し、このインサート鋼管30は、前記長尺鏡ボルト鋼管B(B1、B2、B3、B4、B5)の略13.5mのほぼ全長に亘って内設される長さ略13mのものである。例えば、外径:φ27.2mm、厚さ:2.3mmで、管軸長手方向には全長に亘って注入材との付着を改善する目的で所定間隔の、例えば500mmピッチで対向する5mm深さのインデント加工31が施され、長尺であることからトンネル現場への搬送を容易にする目的で中央部に特殊ジョイント35による接続が実施され、最先端部にはエア抜きと注入材充填後のリターン流入を目的とした先端孔33が配置されており、更に口元側には端部に雄ネジ加工が施された注入材のリターン確認パイプ34が溶接固定されている。特殊ジョイント35(35a、35b)は、
図3(d)、(e)に示すように、筒体であって、その一端が雄雌ねじで結合可能となり、その雄雌ねじの反対側がインサート鋼管30に嵌合されて溶接c等によって接合される。
【0034】
図6に、前記長尺鏡ボルトBの最端末部に配置されたバルクヘッド管B5の構造が示され、このバルクヘッド管B5は、バルクヘッド領域幅と略同一短尺長さ(例えば、1m)の薄肉で連続するスパイラル突起40aを有する外径、厚さ及び内径(例えば、φ77mm、厚さ:0.4mm、内径:φ70mm)で多数の横孔40bを具備した多孔質の鋼製シース管40から成り、当該鋼製シース管40の両端には雄・雌ネジを具備したシースジョイント45a、45bが配置され、地中側45aが端末のディンプル鋼管B4とねじ接合され、口元側45bがトンネル切羽C1から若干量突出している。シースジョイント45a、45bの構成は前記ネジ部材14a、14bと同一である。
【0035】
鋼製シース管40口元端末部には止水部材41が嵌め込まれ、この止水部材41に、前記インサート管30口元部のリターン確認パイプ34、バルクヘッド形成用のパッカー注入ホース43、及び加圧注入用のホース44が連通してなる。
前記止水部材41は、例えば
図5に示すゴムコーン製であり、
図6に示すように、シースジョイント45b内側に押えプレート46の内ネジ筒部46aのねじ込みにより押し込まれて配置され、更に当該口元部から所定のバルクヘッド区間(1m程度)Vを経てなる1個の袋パッカー42を
図4の如く前記インサート管30および加圧注入用ホース44が連通するように鋼製シース管40の内面に配置する。この止水部材(ゴムコーン)41には、その連通孔41aを介して袋パッカー注入用ホース43、加圧注入用ホース44及びインサート管30のリターン確認パイプ34が挿通される。
【0036】
袋パッカー42のバルクヘッド形成側には所要数の小穴42aが設けられ、この各小穴42aに短尺の2次注入ホース42bが挿入配置されてなる。袋パッカー42は円筒状袋体にパッカー用注入ホース43の吐出口が内設されるように配置されるとともにテープd等で当該袋体出口部が密封され、更にインサート管30、加圧注入用ホース44は当該円筒状袋体の内側を連通するように配置されるとともに袋体両端部をテープd等で密封固定した構造とすることができる。また、短尺の2次注入ホース42bもテープd等によって袋パッカー42のバルクヘッド形成側端部に固定する(
図4参照)。
【0037】
このような袋パッカー42は、加圧注入用ホース44等の所定位置に取付けた後、その加圧注入用ホース44等のパイプ材10(長尺鏡ボルト鋼管B)内への装入に伴って
図6に示すバルクヘッド管B5(40)内にセットされる。この状態において、
図6の如く袋パッカー42に同注入ホース43を介してウレタンなどのゲルタイムの短い発泡性樹脂bを充填してパッカー42を膨張させると同時に、小穴42aに配置した2次注入ホース42bを介してバルクヘッド区間の鋼製シース管40内にリークさせ、当該バルクヘッド区間V内の鋼製シース管B5の多孔質な横孔40bより口元周辺地山に浸透固化させて確実なバルクヘッドVを構築する。
尚、袋パッカー42は必ずしも
図6の如く鋼製シース管B5(40)内にセットされる必要はなく、袋パッカーの一部あるいは全部の幅がディンプル鋼管10(B4)内に配置されても良い。
【0038】
この後で、ゲルタイムの長い注入材aを加圧注入用ホース44からパイプB(B1、B2、B3、B4)の全長に亘って充填する。すると、注入材aが、インサート管30内にその先端孔33(
図3参照)から流入し、インサート管30内を介して口元部のリターン確認パイプ34に到達すると、当該インサート管口元部のリターン確認パイプ34を閉塞し、続けて加圧注入ホース44から注入材aを加圧注入してパイプ材全長に亘って設けたパイプ横孔13から周辺地山に浸透固化させる構成をとることができる。
【0039】
更に、本発明の実施形態を施工の流れに沿って説明する。
従来と同様に、
図8の如く、長尺鏡ボルBの打設は汎用ドリルジャンボのガイドセルに搭載した削岩機から削孔ロッドを介して、回転打撃と削孔水を先端部の削孔ビットに供給して削孔すると共に、先端部に溶接固定された先端シューを打撃牽引してディンプル鋼管B1、B2、B3、B4及び端末のバルクヘッド管B5(鋼製シース管40)の打設作業を進める。打設を完了したら削孔ロッドおよびビットを口元側から回収する。
【0040】
次に、
図2の構成で打設を完了した長尺鏡ボルトBの内側に、
図3に示すインデント加工付きエア抜きインサート鋼管30の口元側のバルクヘッドV形成区間に、
図6の如くゴムコーン41、袋パッカー42、袋パッカー注入用ホース43、加圧注入用ホース44を前記説明の要領で組み込んだ状態で、当該インサート管30を略全長に亘って挿入する。
【0041】
次に、
図6に示す鋼製シース管40の外周と切羽面C1からのバルクヘッド形成時のウレタン樹脂などのリーク防止を目的に口元のコーキングDを実施する。尚、当該口元コーキングDの実施は、口元側でのゴムコーン41の押えプレート46による押込み固定作業が完了した後で実施するのが一般である。
【0042】
次に、袋パッカー42に注入用ホース43を介してウレタンなどのゲルタイムの短い発泡樹脂bを圧入し、袋パッカー42を膨張させると同時に、同パッカー42のバルクヘッド形成側に設けた複数の小穴42aから短尺の2次注入ホース42bを介してリークさせ、バルクヘッド区間の鋼製シース管40内面を充填した後で同シース管40の多孔質な横穴40b群より周辺地山に浸透固化させて口元部略1m区間にバルクヘッドVを形成する。尚、バルクヘッドVの形成を確実にするため、袋パッカー42へのウレタン注入量は確実に量管理して所定量以上を圧入する。
【0043】
次に、主にディンプル鋼管10で構成される長尺鏡ボルト(B1、B2、B3、B4)の周辺地山領域に加圧注入を行う。注入材aにはセメント系とウレタン系があるが、長尺鏡ボルトBは後掘削を伴う地山補強工法であり、後掘削後の産業廃棄物処理が困難なことからウレタン系の注入材採用は少なくセメント系が主流であるため、本発明の図および説明は全てセメント系で統一する。
図6の加圧注入用ホース44を介して注入材aを充填する。長尺鏡ボルトBは水平に対して2〜3°の小さな仰角を持って打設される長尺ボルトであり、注入材aは口元側からボルト先端側に向かってディンプル鋼管10の内側にほぼ無加圧で充填され、管内のエアはエア抜き用インサート管30の先端孔33から同管内孔を介して口元部より排出されつつ充填が進む。注入材aが先端まで充填されると、前記先端孔33からインサート管30内に流入し、口元のインサート管リターン確認パイプ34に到達して目視で充填完了を確認できる。
【0044】
次に、同リターン確認パイプ34の端部ネジを例えば市販のめくらナットなどで閉塞し(図示せず)、そのまま継続して加圧注入ホース44から注入材aを加圧注入することにより、前記長尺鏡ボルトB全長に亘って注入材aは加圧され、当該ディンプル鋼管10に配置された複数の横穴13から周辺地山に圧入固化される。このとき、口元部には略1mの領域に亘る確実なバルクヘッドVが形成されているため、ゲルタイムの長いセメント系注入材aであっても口元部からの漏れが発生せず、確実で高品質な周辺地山改良が確保できる。
【0045】
次に、本サイクルで打設した全長13.5mの長尺鏡ボルトBに対して、9mのトンネル掘削を行う。このとき、約1m掘削毎に長尺鏡ボルトBの切除と鋼製支保工Hの建込みを行いながらトンネルの掘削を進める。また、掘削機でディンプル鋼管10を打撃すれば、管軸長手方向に100mm程度の若干のずれをもって配置した対向する一対のスリット12に鋼管10の切除位置が誘導され、また打撃の方向性が不明な点は、
その管軸長手方向及び周方向にずれをもって対向する一対のスリット12としたことで確実な切除が可能となる。また当該一対のスリット12は
管軸長手方向に100mm程度の若干のずれを持って配置されており、スリット加工によるディンプル鋼管断面積減少に伴う長尺鏡ボルトBの引張耐力の減少は一対のスリット12、12同士で相乗せず、効果的である。また、長尺鏡ボルトBの引張耐力を改善する目的で内設される薄肉鋼管にインデント加工を施したインサート管30は外径27.2mm、肉厚2.3mmであり、掘削時の切除に支障を生じることはない。