特許第5965779号(P5965779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965779
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20160728BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
   H02M3/00 Y
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-184769(P2012-184769)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-45529(P2014-45529A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】濱埜 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正
(72)【発明者】
【氏名】広田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】中村 寛志
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−198169(JP,A)
【文献】 特開2002−151874(JP,A)
【文献】 実開平01−180104(JP,U)
【文献】 実開昭61−015471(JP,U)
【文献】 特開2013−093364(JP,A)
【文献】 特開2011−050166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体と、
前記半導体を駆動する回路を有する主回路基板と、
前記半導体と前記主回路基板とを格納し、少なくとも一の面に開口部を有するケースと、
記半導体からの熱を放熱する冷却フィンと、
前記冷却フィンを空冷する冷却ファンと、を有し、
前記ケースの開口部と所定の間隙をもってカバーが配置され、
前記冷却フィンが配置される側を前記カバーの後方としたとき、前記カバーの後方及び
前記カバーの側面は、前記ケースと接触し、
前記冷却フィンからの冷却風と前記ケースの開口部からの冷却風は、前記カバーの開口部から排出されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
半導体と、
前記半導体を駆動する回路を有する主回路基板と、
前記半導体と前記主回路基板とを格納し、少なくとも一の面に開口部を有するケースと、
前記半導体からの熱を放熱する冷却フィンと、
前記冷却フィンを空冷する冷却ファンと、を有し、
前記ケースの開口部と所定の間隙をもってカバーが配置され、
前記冷却フィンが配置される側を前記カバーの後方としたとき、前記カバーの後方及び
前記カバーの側面は、前記ケースと接触し、
前記冷却フィンからの冷却風は、前記カバーにあたり方向を変えて前記ケースの開口部
の近傍を流れることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
半導体と、
前記半導体を駆動する回路を有する主回路基板と、
前記半導体と前記主回路基板とを格納し、少なくとも一の面に開口部を有するケースと、
前記半導体からの熱を放熱する冷却フィンと、
前記冷却フィンを空冷する冷却ファンと、を有し、
前記ケースの開口部と所定の間隙をもってカバーが配置され、
前記冷却フィンが配置される側を前記カバーの後方としたとき、前記カバーの後方及び前記カバーの側面は、前記ケースと接触し、
前記冷却フィンからの冷却風と前記ケースの開口部からの冷却風は、電力変換装置の使用状態において、後方から前方に流れることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
半導体と、
前記半導体を駆動する回路を有する主回路基板と、
前記半導体と前記主回路基板とを格納し、少なくとも一の面に開口部を有するケースと、
前記半導体からの熱を放熱する冷却フィンと、
前記冷却フィンを空冷する冷却ファンと、を有し、
前記ケースの開口部と所定の間隙をもってカバーが配置され、
前記冷却フィンが配置される側を前記カバーの後方としたとき、前記カバーの後方及び前記カバーの側面は、前記ケースと接触し、
前記ケースの開口部から排出される冷却風の流速は、前記ケースの開口部の近傍を流れる前記冷却フィンからの冷却風により、電力変換装置内部での流速よりも速くなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
半導体と、
前記半導体を駆動する回路を有する主回路基板と、
前記半導体と前記主回路基板とを格納し、少なくとも一の面に開口部を有するケースと、
前記半導体からの熱を放熱する冷却フィンと、
前記冷却フィンを空冷する冷却ファンと、を有し、
前記ケースの開口部と所定の間隙をもってカバーが配置され、
前記冷却フィンが配置される側を前記カバーの後方としたとき、前記カバーの後方及び前記カバーの側面は、前記ケースと接触し、
前記ケースの開口部からの冷却風と前記冷却フィンからの冷却風は、前記カバーと前記ケースの開口部との間を流れることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項に記載の電力変換装置であって、
前記ケースの開口部の近傍を流れる前記冷却フィンからの冷却風は、前記ケースの開口
部から排出される冷却風よりも速いことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の電力変換装置であって、
前記ケースの開口部は前記電力変換装置の使用状態において前記ケースの上面に設けられており、
前記カバーは前記ケースの開口部の上部に所定の間隙をもって配置されていることを特
徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の電力変換装置であって、
前記冷却フィンからの冷却風と前記ケースの開口部からの冷却風は、前記電力変換装
置の使用状態において、下方から上方に流れることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電力変換装置であって、
前記カバーは、前記ケースの開口部の面と前記カバーとの距離が概略同一になるように
配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電力変換装置であって、
前記カバーと前記ケースの開口部の面とが平行であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電力変換装置であって、
前記冷却フィンが配置される側を前記電力変換装置の後方としたとき、
前記カバーと前記ケースの開口部の面との距離は、前記電力変換装置の後方よりも前方
の方が大きいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電力変換装置であって、
前記冷却フィンが配置される側を前記電力変換装置の後方としたとき、
前記カバーと前記ケースの開口部の面との距離は、前記電力変換装置の後方よりも前方
に向かって広がることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電力変換装置であって、
前記カバーは、前記ケースの開口部の面に対して傾斜して配置されていることを特徴と
する電力変換装置。
【請求項14】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電力変換装置であって、
前記冷却フィンが配置される側を前記電力変換装置の後方としたとき、
前記カバーは、前記ケースの開口部の面に対して傾斜して配置されており、前記電力変
換装置の後方よりも前方に向かって広がる直線状の形状であることを特徴とする電力変換
装置。
【請求項15】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電力変換装置であって、
前記カバーは、円弧状であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項16】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電力変換装置であって、
前記冷却フィンが配置される側を前記電力変換装置の後方としたとき、
前記カバーは、前記電力変換装置の後方から前方に向かって弧を描きながら隙間が広が
るように傾斜することを特徴とする電力変換装置。
【請求項17】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電力変換装置であって、
前記冷却フィンが配置される側を前記電力変換装置の後方としたとき、
前記カバーと前記ケースの開口部の面との間の距離は、前記電力変換装置の後方よりも
前方の方が狭いことを特徴とする電力変換装置。
【請求項18】
半導体と、
前記半導体を駆動する回路を有する主回路基板と、
前記半導体と前記主回路基板とを格納し、少なくとも一の面に開口部を有するケースと、
前記半導体からの熱を放熱する冷却フィンと、を有し、
前記ケースの開口部と所定の間隙をもってカバーが配置され、
前記カバーの開口部に対向する前記カバーの後方、及び、前記カバーの側面は、前記ケ
ースと接触し、
前記冷却フィンからの冷却風と前記ケースの開口部からの冷却風は、前記カバーの開口部から排出されることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置において、IGBTやDM(ダイオードモジュール)などの半導体は入力された電力の変換を行う。変換の際に発生する損失による発熱の冷却に関しては、例えば特許文献1(特開2004−71594号公報)に「盤枠2と、盤枠2を仕切る仕切り8a、8bと、仕切り8a、8bを貫通し、仕切り8a、8bより上方側に放熱部7を有するヒートパイプ9と、仕切り8a、8bより下方側に配設された電気部品6とを有し、更に、外部と直接連通する吸気口4及び排気口5を、仕切り8a、8bより上方側の扉3aに設け、放熱部7が設けられた部分と電気部品6が設けられた部分とを連通する連通口11、12を仕切り8a、8bに設け、吸気側となる連通口11にガイド板10を設けることで、外部からの空気の流れを、盤枠2の内部全体へ導いて、ヒートパイプ9による吸放熱だけではなく、導かれた空気の自然対流により、電気部品6の冷却を行うようにした冷却構造及びそれを用いた電力変換装置。」と記載されている。
【0003】
また、特許文献2(特開2009−033910号公報)には「パワー半導体を冷却する冷却フィンを覆うケーシングと、パワー半導体を駆動するドライバ回路を備えた主回路基板と、主回路基板を覆うカバーとを備えた電力変換装置において、前記カバーに設けられた吸気口よりも上側の前記主回路基板に設けられた第1の通気口と、この第1の通気口よりも下側で且つ前記冷却フィンよりも下側に設けられた第2の通気口とを備え、冷却ファンによって第2の通気口からの空気を前記冷却フィンに流す。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−71594号公報
【特許文献2】特開2009−033910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力変換装置において、変換の際に発生する損失による発熱の冷却は、特許文献1に記載のように、一般に冷却フィンによって自然空冷、または、冷却フィンと冷却ファンによって強制空冷、または、水冷装置等によって冷却フィンのベースに流路を設けて冷却を行い、温度上昇による半導体の熱破壊を防止している。
【0006】
ところで電力変換装置の小型化に伴い主回路基板も小型化せざるを得なく、結果として主回路基板は高密度実装される。主回路基板はアルミ電解コンデンサや抵抗などの部品が多数実装されており、主回路基板の発熱も無視できなくなっている。また高密度実装されることにより部品同士の隙間が狭くなり、冷却するための冷却風が流れにくくなり、従来の電力変換装置の自然対流による冷却風では部品が冷却されにくく、尚且つ半導体の発熱を吸熱した冷却フィンの熱が、主回路基板に伝達されるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載のように、主回路基板を保護する役割である本体ケースには冷却のため多数の開口部を設けることがある。開口部は主回路基板を冷却する空気を吸排気する重要な役割を担っているが、その分、設置される場所に浮遊する塵埃を本体ケース内部に引き込んでしまう。その結果ほこり等により主回路基板に実装されている部品が短絡してしまい、本来の役割である主回路基板の保護ができなくなるという問題がある。
【0008】
さらに劣悪な環境では開口部に塵埃が堆積し、その塵埃を取り除こうとすると本体ケース開口部より本体ケース内部に入り込んでしまい、そのまま電力変換装置に電源を投入すると短絡に至ってしまう。さらに、塵埃を本体ケースの上面壁の開口部に堆積させたままにすると主回路基板の発熱を外気に吐き出すことが出来なくなり、基板実装部品の熱破壊に至る可能性がある。
【0009】
また電力変換装置の設置状況において、半導体冷却と主回路基板冷却のために電力変換装置の左右、上下には一定の空間を設けなければ、本来の冷却性能を得られない。そのため従来の電力変換装置でいくら小型化を図ってもユーザ先での設置においては、冷却スペースの確保が必要であり、結果、ユーザ先で設置環境を広く確保する必要がある。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決し、安価に冷却性を向上させ、装置の動作上の安全性を向上し、設置スペースを縮小する電力変換装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、例えば特許請求項の範囲に記載された構成を採用する。
本発明は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、電力変
換装置であって、半導体と、前記半導体を駆動する回路を有する主回路基板と、前記主回
路基板と半導体を格納する本体ケースと、前記半導体の熱を放熱する冷却フィンと、前記冷却フィンを冷却するための冷却ファンと、前記冷却ファンから排出される風の方向を制御するための上面カバーを有し、前記本体ケースは、箱型の形状をしており、主回路基板の冷却のため上面壁と下面壁が複数の開口部を有し、その上面壁に設けられた開口部表面近傍を前記上面カバーによって整流された前記冷却ファンの風が流れ、前記上面壁の開口部表面近傍を負圧状態とし、前記本体ケース内部に格納された主回路基板の放出した熱を吸い出すように構成することにより実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安価に冷却性を向上させ、安全性を向上し、設置スペースを縮小することが可能な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来の電力変換装置の概略図である。
図2】本発明の実施例1にかかる電力変換装置の本体ケースの上面壁に設けられた開口部と上面カバーにて空間を設ける構造とした概略図である。
図3】本発明の実施例2にかかる電力変換装置の上面カバーの形状に傾斜をつける構造とした概略図である。
図4】本発明の実施例3にかかる電力変換装置の上面カバーの形状を曲線状の傾斜をつける構造とした概略図である。
図5】本発明の実施例4にかかる電力変換装置の上面カバーの形状を半円状のドームから、途中で狭くなる構造とした概略図である。
図6】従来の電力変換装置の右側面から見た冷却風の流れを示した概略図である。
図7】本発明の実施例1にかかる電力変換装置の右側面から見た冷却風の流れを示した概略図である。
図8】本発明の実施例2にかかる電力変換装置の右側面から見た冷却風の流れを示した概略図である。
図9】本発明の実施例3にかかる電力変換装置の右側面から見た冷却風の流れを示した概略図である。
図10】本発明の実施例4にかかる電力変換装置の右側面から見た冷却風の流れを示した概略図である。
図11】本発明の実施例1から4にかかる電力変換装置の右側面から見た塵埃の影響を比較した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による電力変換装置について、以下の実施例を図面を用いて説明する。
【0015】
はじめに、従来の電力変換装置について説明する。図1は従来の電力変換装置1aの概略図であり、本図は電力変換装置1aの通常の使用状態で設置される状態において、部品ごとに分解した図である。
【0016】
図6は従来の電力変換装置を側面から見た断面図であり、冷却風の流れを示す図である。
【0017】
まず図1において電力変換装置1aは、入力された直流電力を交流電力に変換する半導体5aと、半導体5aを駆動する主回路基板4aとを有し、主回路基板4a及び半導体5aは本体ケース3aに周囲を覆われている。
【0018】
また本体ケース3a内部の主回路基板4a及び半導体5aが接続される面の反対側には表面カバー2aが取付けられ、また、本体ケース3aの設置面と直交する下面8aと上面壁9aには複数の開口部10aが形成されて空気が流入出できるようになっている。
【0019】
電力変換装置1aの通常の使用状態では、表面カバー2aを正面手前に配置し、冷却フィン6aを後ろ側(壁側)に配置し、本体ケース下面8aを下側に配置して用いる。
【0020】
ここで、半導体5aの冷却について述べる。主回路基板4aは半導体5aに半田で固定され、その半導体5aは隣接した冷却フィン6aの冷却フィンベース面11aに取付けられており、半導体5aで発生した熱が冷却フィン6aに伝導され、冷却フィン6aの上面に固定された冷却ファン7aによって強制空冷する構造となっている。つまり、図6に示すように、半導体5aで発生した熱は冷却ファン7aの冷却風に伝達され、その冷却風は冷却フィン6aの下面から上面に向かって排出され、冷却フィン6aから排出された冷却風はそのまま上方に流れていく。
【0021】
次に、主回路基板4aの冷却について述べる。主回路基板4aは本体ケース3aに設けられた開口部10aによって自然空冷される構造となっている。つまり、図6に示すように、主回路基板4aの冷却風は、本体ケース3aの下面8aから本体ケース3aの上方に設けられた上面壁9aに向かって流れ、上面壁9aに設けられた複数の開口部10aから排出され、複数の開口部10aから排出された冷却風もそのまま上方に流れていく。
【0022】
つまり、半導体5aからの発熱を含む冷却風も主回路基板4aの冷却風も、電力変換装置内でともに下方から上方に向かって流れることになるが、これらの冷却風は半導体5aの固定されている冷却フィン6aのベース面11aで完全に分断され、冷却フィン6aと主回路基板4aの冷却は完全に独立している。また、電力変換装置の外部に排出された後も、それぞれ上方に向かって流れるため、冷却フィン6aと主回路基板4aの冷却は完全に独立している。
【実施例1】
【0023】
本実施例では、図1の説明にて既に述べた電力変換装置の基本的構成についての説明は省略し、従来の電力変換装置との相違点について述べる。
【0024】
図2は本実施例の電力変換装置1bの構成図の例である。図7は本実施例の電力変換装置1bを側方から見たときの断面図であり、冷却風の流れを示す図である。実施例1は、開口部10bと冷却フィン6bの上方に上面カバー11bを設ける点を特徴とする。
【0025】
本実施例の電力変換装置1bには、電力変換装置1bの本体ケース3bの上面壁9bに形成された開口部10bと冷却フィン6bの上方に所定の空間を空けて上面カバー11bが設けられている。
【0026】
ここでまず、本実施例の特徴である上面カバー11bの構造について説明する。
上面カバー11bの左右の側面には壁12bがあり、この壁は本体ケース3bの左右の壁13bと接触し、この上面カバー11bの左右の側面からは空気の流入出は行えない構造となっている。
また、上面カバー11bの後側面にも壁が設けられているため、上面カバー11bの後側面からも空気の流入出は行えない構造となっている。
【0027】
また、上面カバー11bの上面にもカバーが設けられているため、上面カバー11bの上面からも空気の流入出は行えない構造となっている。
【0028】
よって、従来の電力変換装置1aでは、冷却ファン7aからの冷却風は冷却ファン7aの上面を越えてそのまま上に排出されていたが、本実施例では、図7の電力変換装置1bの断面図に示すように、冷却ファン7bから吐き出された冷却風は冷却フィン6bの上面を越えた後、上面カバー11bにぶつかり空気の流れが変わり、電力変換装置1bの後側方から正面手前側に向かって流れることになる。つまり、冷却フィン6bの上面を越えた後、開口部10bと上面カバー11bとの間に空けた空間を流れて上面カバー11bの正面手前のスペースから外に吐き出される。
【0029】
冷却ファン7bからの冷却風は強制空冷であるため、主回路基板4bからの自然空冷よりも冷却風の流れが速い。一般的に流速が速い場所は圧力が低く、その圧力の低い場所に物体は引き寄せられる。この性質を利用し開口部10bと上面カバー11bとの間に冷却ファン7bによる流速の速い冷却風を流すと開口部10b近傍の圧力は低い状態となり、その低い圧力によって上向きの空気の流れが発生し主回路基板4bから放出された熱が引き寄せられ、その結果、自然空冷よりも速い流速の空気が主回路基板4b上を流れることになる。
【0030】
このように、上面カバー11bを設けることにより主回路基板4bからの冷却風の流速は従来よりも速くなるため、主回路基板4bの冷却効率が向上する。
【0031】
さらに、本体ケース3bの上面壁9bに形成された開口部10bの上方に上面カバー11bを設けることにより、図11に示すように電力変換装置の上方から塵埃が降ってきても、本体ケース3b内部に入り込むことを防ぐことが可能となり、製品の信頼性、安全性が向上する。
【0032】
さらに、従来は電力変換装置1aを複数個縦に配置する場合、冷却ファン7aや主回路基板4aから吐き出される暖められた冷却風が上に配置された電力変換装置1aに影響を及ぼさないよう冷却風が流れる幅を上方に確保することが必要であったため、電力変換装置1a間の幅を空けることが必要であったが、本発明によれば、冷却ファン7bや主回路基板4bからの冷却風は正面手前側から排出されるため、電力変換装置1bを複数個縦に配置する場合にも電力変換装置1b間の幅を空けることが不要となり、省スペースで多くの電力変換装置1bを配置することが可能となる。
【実施例2】
【0033】
図3は本発明における実施例2にかかる電力変換装置1cの構成図の例である。また、図8は、本実施例の電力変換装置1cを側方から見たときの断面図であり、冷却風の流れを示す図である。本実施例についても、実施例1と同様の構成については説明を省略し、従来の電力変換装置1aとの相違点について述べる。
【0034】
本実施例における上面カバー11cは、側面から見たときに、電力変換装置1cとの設置面から正面手前に向かって斜めに広がる形状となっており、電力変換装置1cを真上から見ると開口部10cのほとんどの領域に上面カバー11cが覆い被さっている点に特徴を有する。つまり、電力変換装置1cの後方よりも正面手前になるほど、電力変換装置1cの上面壁9cと上面カバー11cとの間の距離が長くなるように構成され、冷却ファン7cから吐き出された冷却風はほとんどが開口部10c近傍を通過した後に外気に吐き出される。
【0035】
上面カバー11cを電力変換装置1cの上面壁9cに対して傾斜した形状とすることで、図8に示すように冷却ファン7cより排気された冷却風は上面カバー11cに垂直に当たり風の流れが乱れることは少なくなり、早い流速を保ったまま電力変換装置1cの正面手前方向に流れ、上面壁9cの開口部10c近傍を沿うように流れる。
【0036】
上面カバー11bが電力変換装置1bの上面に対して水平に配置されている場合(図7)と傾斜して配置されている場合(図8)とを比較すると、傾斜した図8の方が風の流れが乱れにくいので、より開口部10cに近い位置に流速の速い冷却風を流すことが出来、より圧力を低い状態にすることができる。よって本体ケース3cの内部に配置された主回路基板4cの放出した熱の流れが前記開口部10cに近い位置に流れる流速の速い冷却風に引っ張られ、自然対流よりも流速が速くなり冷却効果が向上する。このときの冷却効果は、上面カバー11cが傾斜して配置されている方が水平に配置されている場合よりも、開口部10cに近い位置の圧力を低くすることが可能なため、大きくなる。
【0037】
さらに、実施例1同様に塵埃を防ぐことが可能なので、製品の信頼性、安全性が向上する。
【0038】
さらに、電力変換装置1cを複数個縦に配置する場合の省スペース化が可能となる。
【実施例3】
【0039】
図4は本発明における実施例3にかかる電力変換装置1dの構成図の例である。また、図9は、本実施例の電力変換装置1dを側方から見たときの断面図であり、冷却風の流れを示す図である。本実施例についても、実施例1と同様の構成については説明を省略し、従来の電力変換装置1aとの相違点について述べる。
本実施例における上面カバー11dは、側面から見たときに電力変換装置1dとの設置面から正面手前に向かって、斜めに弧を描きながら広がる板形状となっており、電力変換装置1dを真上から見ると開口部10dのほとんどの領域に上面カバー11dが覆い被さっている点に特徴を有する。つまり、電力変換装置1dの後方よりも正面手前になるほど、電力変換装置1dの上面壁9dと上面カバー11dとの間の距離が長くなるように構成され、冷却ファン7dから吐き出された冷却風はほとんどが開口部10d近傍を通過した後に外に吐き出されている点は実施例2と同様だが、本実施例では上面カバー11dが円弧状に構成されている点が異なる。
【0040】
上面カバー11dを電力変換装置1dの上面壁9dに対して傾斜した円弧状とすることで、局所的にみると風が壁面に当たったときの反射角度が浅くなる。よって、図9に示すように実施例2より更に風の流れを乱さずに開口部10dに近い位置に流速の速い冷却風を流すことが可能となる。
【0041】
上面カバー11dが、実施例2のように電力変換装置1cの上面に対して傾斜して直線的に配置されている場合(図8)と円弧状を描くように滑らかに配置されている場合(図9)とを比較すると、円弧状の図9の方が風の流れが乱れにくいので、より開口部10dに近い位置に流速の速い冷却風を流すことが出来、より圧力を低い状態にすることができる。よって本体ケース3dの内部に配置された主回路基板4dの放出した熱の流れが前記開口部10dに近い位置に流れる流速の速い冷却風に引っ張られ、自然対流よりも流速が速くなり冷却効果が向上する。このときの冷却効果は、上面カバー11dが円弧状の方が傾斜して直線的に配置されている場合よりも、開口部10dに近い位置の圧力を低くすることが可能なため、大きくなる。
【0042】
さらに、上面カバー11dを弧を描いたような形状とすることで、その上面カバー11d自体の強度を上げることが可能となる。
【0043】
さらに、実施例1同様に塵埃を防ぐことが可能なので、製品の信頼性、安全性が向上する。
【0044】
さらに、電力変換装置1dを複数個縦に配置する場合の省スペース化が可能となる。
【実施例4】
【0045】
図5は本発明における実施例4にかかる電力変換装置1eの構成図の例である。また、図10は、本実施例の電力変換装置1eを側方から見たときの断面図であり、冷却風の流れを示す図である。本実施例についても、実施例1と同様の構成については説明を省略し、従来の電力変換装置1aとの相違点について述べる。
【0046】
本実施例における上面カバー11eは、真上から見ると開口部10eの領域に上面カバー11eが覆い被さっており、側面から見たときに電力変換装置1eとの設置面から正面手前に向かって、斜めに弧を描きながら広がり、途中、電力変換装置1eの開口部10e近くで上面壁9eと上面カバー11eとの空間距離が絞られる点に特徴を有する。
【0047】
つまり、冷却フィン6e上部では上面カバー11eを円弧状にしているのは実施例3と同様だが、本実施例では冷却フィン6e上部では冷却フィン6eと上面カバー11eとの空間距離を広くし、開口部10e上部では上面壁9eと上面カバー11eとの空間距離を狭くする構成としている。
【0048】
一般的に流路の広いところから狭いところに流体が流れる場合、流速が速くなる。
つまり、冷却ファン7eから吐き出される冷却風の流速より開口部10eのすぐ上の流速を速くすることが可能となる。
【0049】
上面カバー11eが、実施例3のように電力変換装置1dの上面に対して円弧状を描くように滑らかに外気部分まで広がるように配置されている場合(図9)と円弧状を描くように滑らかに広がり、その後開口部10eのすぐ上の空間距離を狭く配置されている場合(図10)とを比較すると、広い流路(空間距離)から狭い流路(空間距離)に風を流した方が、より開口部10eに近い位置に流速の速い冷却風を流すことが出来、より圧力を低い状態にすることができる。よって本体ケース3eの内部に配置された主回路基板4eの放出した熱の流れが前記開口部10eに近い位置に流れる流速の速い冷却風に引っ張られ、自然対流よりも流速が速くなり冷却効果が向上する。このときの冷却効果は、上面カバー11eが広い流路(空間距離)から狭い流路(空間距離)に流れるような構成とした方が円弧状に外気まで広がるように配置されている場合よりも、開口部10eに近い位置の圧力を低くすることが可能なため、大きくなる。
【0050】
さらに、実施例3同様に上面カバー11e自体の強度を上げることが可能となる。
【0051】
さらに、実施例1同様に塵埃を防ぐことが可能なので、製品の信頼性、安全性が向上する。
【0052】
さらに、電力変換装置1eを複数個縦に配置する場合の省スペース化が可能となる。
【実施例5】
【0053】
実施例1から4では、上面カバー11b−11eの左右側面と後側面には壁があり、冷却風が流入出できない形態であったが、これらの壁はなくても良い。この場合は、開口部からの塵埃防止や縦方向への省スペース化を実現できる。
【0054】
さらに、実施例1から4の上面カバー11b−11eの左右側面と後側面の壁は必要に応じて取り外したり、取り付けたりすることの出来る構成となっていても良い。この場合は、電力変換装置が配置されるスペースの特徴に応じた使い方をすることが出来、ユーザニーズに応じた省スペース化や冷却効果向上を実現することが出来る。
【0055】
また、上面カバーは全面を覆うだけでなく、部分的に覆う構造でも良い。
【0056】
実施例1から4では、冷却ファン7b−7eより吐き出された冷却風は上面カバー11b−11eによって空気の流れを変えられ、その冷却風は電力変換装置1b−1eの開口部10b−10e上部を通過し、電力変換装置1b−1eの正面に向けて外に吐き出していたが、電力変換装置1b−1eの開口部10b−10e領域のすぐ上に速い流速の冷却風が流れていれば、そこを通過した後、外に吐き出される冷却風の向きは正面に限定されてなくても良い。いずれの実施例も電力変換装置1b−1eの開口部10b−10e領域のすぐ上に速い流速の冷却風を流すことに特徴がある。
【0057】
また、上記実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1a・・・従来の電力変換装置、2a・・・表面カバー、3a・・・本体ケース、4a・・・主回路基板、5a・・・半導体、6a・・・冷却フィン、7a・・・冷却ファン、8a・・・本体ケース下面、9a・・・本体ケース上面壁、10a・・・開口部、11a・・・冷却フィンベース面1b・・・実施例1の電力変換装置、2b・・・表面カバー、3b・・・本体ケース、4b・・・主回路基板、5b・・・半導体、6b・・・冷却フィン、7b・・・冷却ファン、8b・・・本体ケース下面、9b・・・本体ケース上面壁、10b・・・開口部、11b・・・上面カバー、12b・・・上面カバー左右側壁、13b・・・本体ケース左右側壁、14b・・・遮蔽板
1c・・・実施例2の電力変換装置、2c・・・表面カバー、3c・・・本体ケース、4c・・・主回路基板、5c・・・半導体、6c・・・冷却フィン、7c・・・冷却ファン、8c・・・本体ケース下面、9c・・・本体ケース上面壁、10c・・・開口部、11c・・・上面カバー、12c・・・上面カバー左右側壁、13c・・・本体ケース左右側壁、14c・・・遮蔽板
1d・・・実施例3の電力変換装置、2d・・・表面カバー、3d・・・本体ケース、4d・・・主回路基板、5d・・・半導体、6d・・・冷却フィン、7d・・・冷却ファン、8d・・・本体ケース下面、9d・・・本体ケース上面壁、10d・・・開口部、11d・・・上面カバー、12d・・・上面カバー左右側壁、13d・・・本体ケース左右側壁、14d・・・遮蔽板
1e・・・実施例4の電力変換装置、2e・・・表面カバー、3e・・・本体ケース、4e・・・主回路基板、5e・・・半導体、6e・・・冷却フィン、7e・・・冷却ファン、8e・・・本体ケース下面、9e・・・本体ケース上面壁、10e・・・開口部、
11e・・・上面カバー、12e・・・上面カバー左右側壁、13e・・・本体ケース左右側壁、14e・・・遮蔽板
図1
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図11