特許第5965783号(P5965783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965783
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】静圧気体ラジアル軸受の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/06 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   F16C32/06 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-187458(P2012-187458)
(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-43918(P2014-43918A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 真文
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−062966(JP,A)
【文献】 特開2005−221002(JP,A)
【文献】 特開2000−009142(JP,A)
【文献】 特開2006−097797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持対象である回転体のラジアル方向の荷重を軸受面で非接触支持する静圧気体ラジアル軸受の製造方法であって、
内周面を前記軸受面とする筒状の第一の金属粉末焼結層部を、一次焼結することにより形成し
前記第一の金属粉末焼結層部の外周面上に形成され、前記第一の金属粉末焼結層部よりも大きな気孔率を有する第二の金属粉末焼結層部を、前記第一の金属粉末焼結層部をコアとして、当該コアを筒状の型内に配置し、当該コアと当該型との隙間に金属粉末を充填して二次焼結することにより形成
ことを特徴とする静圧気体ラジアル軸受の製造方法
【請求項2】
請求項1に記載の静圧気体ラジアル軸受の製造方法であって、
前記第一および第二の金属粉末焼結層部、ほぼ同じ平均粒径の球状青銅合金粉末を用
前記第二の金属粉焼結層部、前記第一の金属粉末焼結層部の一次焼結条件よりも低温かつ短時間とする二次焼結条件で焼結することにより形成する
ことを特徴とする静圧気体ラジアル軸受の製造方法
【請求項3】
請求項1に記載の静圧気体ラジアル軸受の製造方法であって、
前記第二の金属粉末焼結層部、前記第一の金属粉末焼結層部に用いる球状青銅合金粉末より大きな平均粒径の球状青銅合金粉末用い
ことを特徴とする静圧気体ラジアル軸受の製造方法
【請求項4】
支持対象である回転体のラジアル方向の荷重を軸受面で非接触支持する静圧気体ラジアル軸受の製造方法であって、
内周面を前記軸受面とする筒状の第一の金属粉末焼結層部と、前記第一の金属粉末焼結層部の外周面上に形成され、前記第一の金属粉末焼結層部よりも大きな気孔率を有する第二の金属粉末焼結層部とを、電解銅粉末および錫粉末を含む混合粉末からなる筒状の圧粉体をコアとして、当該コアを筒状の型内に配置し、当該コアと当該型との隙間に球状青銅合金粉末を充填して焼結することにより一緒に形成
ことを特徴とする静圧気体ラジアル軸受の製造方法
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の静圧気体ラジアル軸受の製造方法であって、
前記型として用いた金属製のスリーブを用いて、前記第二の金属粉末焼結層部の外周面上バックメタルを形成する
ことを特徴とする静圧気体ラジアル軸受の製造方法
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の静圧気体ラジアル軸受の製造方法であって、
前記型として成形型を用いることにより形成された前記第一の金属粉末焼結層部および前記第二の金属粉末焼結層部からなる積層体を、金属製のスリーブに圧入して、前記第二の金属粉末焼結層部の外周面上バックメタルを形成する
ことを特徴とする静圧気体ラジアル軸受の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持対象である回転体のラジアル方向の荷重を非接触で支持する静圧気体ラジアル軸受に関し、特に、軸受面の全面から圧縮気体を均一に吐出可能であり、かつより高い絞り効果を得することが可能な静圧気体ラジアル軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軸受面に形成される気孔のサイズおよび分布状態を精度よく調整でき、これにより軸受面からの気体の吐出に絞り効果を付与することが可能な静圧気体軸受が開示されている。
【0003】
この静圧気体軸受は、平均粒径60μmの青銅粉末の焼結体からなる多孔質材である母材に、平均粒径5μmの青銅粉末の焼結体からなる多孔質材である表面絞り層を接合した二層構造を有している。製造方法としては、まず、平均粒径60μmの青銅粉末に対して1回目の焼結処理を行うことにより母材を作製する。つぎに、表面絞り層との接合面となる母材の面を機械加工により仕上げ、それから、容器内に充填された表面絞り層となる平均粒径5μmの青銅粉末上に、母材を、表面絞り層との接合面となる母材の面を下にして載せ、2回目の焼結処理を行う。これにより、母材と表面絞り層との二層構造を有した焼結体かなる静圧気体軸受が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−27865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の静圧気体軸受は、スラスト軸受に用いられるプレート型の軸受であり、ラジアル軸受に用いられるブッシュ型の軸受への適用が考慮されていない。また、母材と表面絞り層とに、互いに平均粒径の異なる青銅粉末を用いるため、材料の管理、調達コストが嵩む。その上、母材を構成する青銅粉末に予め焼結処理を行って母材を作成した後、表面絞り層を構成する青銅粉末に焼結処理を行って母材上に表面絞り層を形成するため、2回の焼結処理が必要となり、製造コストが嵩む。このため、さらにコストが嵩む。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸受面の全面から圧縮気体を均一に吐出可能であり、かつより高い絞り効果を得ることが可能な静圧気体ラジアル軸受の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、低コストで製造可能な静圧気体ラジアル軸受の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様では、内周面を軸受面とする筒状の第一の金属粉末焼結層部をコアとして、このコアを筒状の型内に配置し、このコアと型との隙間に金属粉末を充填して焼結することにより、第一の金属粉末焼結層部の外周面上に形成され、第一の金属粉末焼結層部よりも気孔率が大きい第二の金属粉末焼結層部を有する静圧気体ラジアル軸受を形成した。
【0008】
例えば、本発明の第一の態様は、支持対象である回転体のラジアル方向の荷重を軸受面で非接触支持する静圧気体ラジアル軸受の製造方法であって、
内周面を前記軸受面とする筒状の第一の金属粉末焼結層部を、一次焼結することにより形成し
前記第一の金属粉末焼結層部の外周面上に形成され、前記第一の金属粉末焼結層部よりも大きな気孔率を有する第二の金属粉末焼結層部を、前記第一の金属粉末焼結層部をコアとして、当該コアを筒状の型内に配置し、当該コアと当該型との隙間に金属粉末を充填して二次焼結することにより形成る。
【0009】
ここで、前記第一および第二の金属粉末焼結層部に、ほぼ同じ平均粒径の金属粉末を用い、前記第一の金属粉末焼結層の一次焼結条件よりも低温かつ短時間とする二次焼結条件で焼結することにより、前記第二の金属粉末焼結層部を形成してもよい。
【0010】
また、本発明の第二の態様では、電解銅粉末および錫粉末を含む混合粉末からなる筒状の圧粉体をコアとして、このコアを筒状の型内に配置し、このコアと型との隙間に球状青銅合金粉末を充填して焼結することにより、内周面を軸受面とする筒状の第一の金属粉末焼結層部と、第一の金属粉末焼結層部の外周面上に形成され、第一の金属粉末焼結層部よりも気孔率が大きい第二の金属粉末焼結層部と、を有する静圧気体ラジアル軸受を形成した。
【0011】
例えば、本発明の第二の態様は、支持対象である回転体のラジアル方向の荷重を軸受面で非接触支持する静圧気体ラジアル軸受の製造方法であって、
内周面を前記軸受面とする筒状の第一の金属粉末焼結層部と、前記第一の金属粉末焼結層部の外周面上に形成され、前記第一の金属粉末焼結層部よりも大きな気孔率を有する第二の金属粉末焼結層部とを、電解銅粉末および錫粉末を含む混合粉末からなる筒状の圧粉体をコアとして、当該コアを筒状の型内に配置し、当該コアと当該型との隙間に球状青銅合金粉末を充填して焼結することにより一緒に形成る。
【0012】
なお、第一および第二の態様において、筒状の型として金属製のスリーブを使用することにより、このスリーブがバックメタルとして機能するようにしてもよい。あるいは、筒状の型として成形型を使用することにより第一の金属粉末焼結層部および第二の金属粉末焼結層部からなる積層体を先に形成し、その後、この積層体を金属製のスリーブに圧入することにより、このスリーブがバックメタルとして機能するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、第一の金属粉末焼結層部あるいは電解銅粉末および錫粉末を含む混合粉末からなる筒状の圧粉体をコアとして、このコアを筒状の型内に配置し、このコアと型との隙間に金属粉末を充填して焼結することにより、内周面を軸受面とする筒状の第一の金属粉末焼結層部よりも気孔率が大きい第二の金属粉末焼結層部を第一の金属粉末焼結層部の外周面に形成するので、軸受面の全面から圧縮気体を均一に吐出可能であり、かつより高い絞り効果を得ることが可能な静圧気体ラジアル軸受を提供できる。
【0014】
また、本発明において、第一および第二の金属粉末焼結層部にほぼ同じ平均粒径の金属粉末を用い、第一の金属粉末焼結層の一次焼結条件よりも低温かつ短時間とする二次焼結条件により第二の金属粉末焼結層を形成する場合には、第一および第二の金属粉末焼結層部に同じ材料を用いることができるので、材料の管理、調達コストを低減でき、これにより低コストで静圧気体ラジアル軸受を製造できる。
【0015】
また、本発明において、電解銅粉末および錫粉末を含む混合粉末からなる筒状の圧粉体をコアとして、このコアを筒状の型内に配置し、このコアと型との隙間に球状青銅合金粉末を充填して焼結することにより、第一および第二の金属粉末焼結層部を形成する場合には、一回の焼結で第一および第二の金属粉末焼結層部を同時に形成でき、かつ、支持対象が挿入される貫通孔を形成するための柱状のコアが不要となるため、製造コストを低減でき、これにより低コストで静圧気体ラジアル軸受を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(A)は、本発明の第一〜第三実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1A〜1Cの外観図であり、図1(B)は、本発明の第一実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Aの正面図であり、図1(C)は、図1(B)に示す静圧気体ラジアル軸受1AのA−A断面図である。
図2図2(A)は、本発明の第二実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Bの正面図であり、図2(B)は、図2(A)に示す静圧気体ラジアル軸受1BのB−B断面図であり、図2(C)は、鋳型内の配置を説明する図である。
図3図3(A)は、本発明の第三実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Cの正面図であり、図3(B)は、図3(A)に示す静圧気体ラジアル軸受1CのC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1(A)は、本発明の第一〜第三実施形態に係る静圧気体ラジアル軸受1A〜1Cの外観図である。
【0019】
<第一実施の形態>
まず、本発明の第一実施の形態を説明する。
【0020】
図1(B)は、本実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Aの正面図であり、図1(C)は、図1(B)に示す静圧気体ラジアル軸受1AのA−A断面図である。
【0021】
図示するように、本実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Aは、内周面21を軸受面とする円筒状の第一の金属粉末焼結層部2Aと、第一の金属粉末焼結層部2Aの外周面22上に形成された第二の金属粉末焼結層部3と、第二の金属粉末焼結層部3の外周面32上に形成されたバックメタル4と、を備えている。このような構造により、静圧気体ラジアル軸受1Aは、支持対象である回転体のラジアル方向の荷重を非接触で支持する。
【0022】
第一の金属粉末焼結層部2Aは、球状青銅合金粉末を焼結することにより得られる多孔質体で構成されている。例えば、支持対象である回転体が挿入される貫通孔11を第一の金属粉末焼結層部2Aの内部に形成するために、円筒状の成形型内に円柱状のコアを互いの軸心が一致するように配置し、このコアの外周面と成形型の内周面との隙間に、所望の平均粒径を有する球状青銅合金粉末を充填し、加圧後に一次焼結することにより作製される。このとき、焼結温度、焼結時間等の一次焼結の条件は、第一の金属粉末焼結層部2Aの気孔率が例えば10%以下となるように調整される。
【0023】
第二の金属粉末焼結層部3は、第一の金属粉末焼結層部2Aとほぼ同じ平均粒径の球状青銅合金粉末を焼結することにより得られる多孔質体で構成されている。例えば、円筒状の第一の金属粉末焼結層部2Aをコアとして、このコアを型として用いる金属製の円筒状のスリーブ内に互いの軸心が一致するように配置し、このコアの外周面とスリーブの内周面との隙間に球状青銅合金粉末を充填して、コア、充填された球状青銅合金粉末、およびスリーブを一緒に二次焼結することにより、第二の金属粉末焼結層部3が、第一の金属粉末焼結層部2Aの外周面22上に、第一の金属粉末焼結層部2Aと拡散接合した状態で形成されるとともに、このスリーブにより、バックメタル4が、第二の金属粉末焼結層部3の外周面32上に、第二の金属粉末焼結層部3と拡散接合した状態で形成される。このとき、焼結温度、焼結時間等の二次焼結の条件は、第二の金属粉末焼結層部3の気孔率が第一の金属粉末焼結層部2Aの気孔率よりも大きくなるように(例えば第二の金属粉末焼結層部3の気孔率が25%以上となるように)、一次焼結の条件よりも低温、短時間に設定される。
【0024】
このような静圧気体ラジアル軸受1Aにおいて、図示していない給気ポンプによりバックメタル4を介して第二の金属粉末焼結層部3の外周面32に供給された圧縮気体は、第二の金属粉末焼結層部3内の気孔を介して第二の金属粉末焼結層部3の内周面31に到達し、第一の金属粉末焼結層部2Aの外周面22に供給される。それから、第一の金属粉末焼結層部2A内の気孔を介して、軸受面である第一の金属粉末焼結層部2Aの内周面21に到達して、この内周面21全域から均一に吐出される。これにより、軸受面21と静圧気体ラジアル軸受1Aの貫通孔11に挿入された不図示の回転体の外周面との間に圧縮気体層が形成され、この回転体のラジアル方向の荷重が非接触で支持される。この際、第一の金属粉末焼結層部2Aの気孔率(例えば10%以下)が第二の金属粉末焼結層部3の気効率(例えば25%以上)よりも小さく、この第の金属粉末焼結層部2A内の気孔が圧縮気体の流路の絞り部として機能するため、第一の金属粉末焼結層部2Aの内周面21から吐出される圧縮気体が絞られ、その吐出量が調整される。
【0025】
本実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Aでは、第一および第二の金属粉末焼結層部2A、3の形成材料に、共通の測定・算出方法(例えばふるい分け法等)により決定された平均粒径がほぼ等しい球状青銅合金粉末を用い、第一の金属粉末焼結層部2Aの一次焼結条件よりも低温かつ短時間とする二次焼結条件で焼結して第二の金属粉末焼結層部3を形成することにより、第二の金属粉末焼結層部3の気孔率を第一の金属粉末焼結層部2Aの気孔率よりも大きくしている。このように、第一および第二の金属粉末焼結層部2A、3に同じ材料を用いることで、材料の管理、調達コストを低減することができ、これにより低コストで静圧気体ラジアル軸受1Aを製造することができる。
【0026】
また、型として金属製のスリーブを用いることにより、バックメタル4を第二の金属粉末焼結層部3と一緒に形成することが可能となり、これにより製造コストをさらに低減することができる。
【0027】
また、第一の金属粉末焼結層部2Aに対しては2回の焼結処理(一次焼結、二次焼結)が行われるため、二次焼結中、第一の金属粉末焼結層部2Aが第二の金属粉末焼結層部3と拡散接合するとともに、第一の金属粉末焼結層部2Aの焼結がさらに進んで、第一の金属粉末焼結層部2Aの気孔率がさらに小さくなる。このため、第一の金属粉末焼結層部2Aの内周面21から吐出する圧縮気体をより効果的に絞ることが可能となり、圧縮空気の消費量がより少なく、かつ、より高剛性な静圧気体ラジアル軸受1Aを実現することができる。
【0028】
なお、本実施の形態において、第一および第二の金属粉末焼結層部2A、3の両端面23、33に図示していないシール層を設けることにより、第一および第二の金属粉末焼結層部2A、3の両端面23、33からの圧縮気体の漏れを防止するようにしてもよい。
【0029】
<第二実施の形態>
つぎに、本発明の第二実施の形態を説明する。
【0030】
図2(A)は、本実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Bの正面図であり、図2(B)は、図2(A)に示す静圧気体ラジアル軸受1BのB−B断面図である。なお、図2において、図1に示す第一実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Aと同じ機能を有するものには同じ符号を付している。
【0031】
本実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Bは、上記第一実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Aと同様、支持対象である回転体のラジアル方向の荷重を非接触で支持する。
【0032】
図示するように、静圧気体ラジアル軸受1Bは、内周面21を軸受面とする円筒状の第一の金属粉末焼結層部2Bと、第一の金属粉末焼結層部2Bの外周面22上に形成された第二の金属粉末焼結層部3と、第二の金属粉末焼結層部3の外周面32上に形成されたバックメタル4と、を備えている。
【0033】
第一の金属粉末焼結層2Bは、図2(C)に示すように、少なくとも電解銅粉末および錫粉末を含む銅錫混合粉末で構成された円筒状の圧粉体5を焼結することにより形成される。ここで、電解銅粉末は、球状青銅合金粉末と異なり、固形化が容易な枝葉形状を有しており、錫粉末は、球状青銅合金粉末に比べて柔らかい。このため、電解銅粉末および錫粉末を含む銅錫混合粉末の加圧成形により円筒状の圧粉体5を容易に得ることができる。
【0034】
第二の金属粉末焼結層部3は、球状青銅合金粉末を焼結することにより得られる多孔質体で構成されている。図2(C)に示すように、第一の金属粉末焼結層部2Bとなる円筒状の圧粉体5をコアとして、この圧粉体5を型として用いる金属製の円筒状のスリーブ7内に互いの軸心が一致するように配置し、この圧粉体5の外周面とスリーブ7の内周面との隙間に所望の平均粒径を有する球状青銅合金粉末6を充填して、コア、充填された球状青銅合金粉末6、およびスリーブ7を一緒に焼結する。これにより、1回の焼結処理で圧粉体5が焼結されて、第一の金属粉末焼結層部2Bが形成されるとともに、充填された球状青銅合金粉末6が焼結されて、第二の金属粉末焼結層部3が、第一の金属粉末焼結層部2Bの外周面22上に、第一の金属粉末焼結層部2Bと拡散接合した状態で形成される。さらに、スリーブ7により、バックメタル4が、第二の金属粉末焼結層部3の外周面32上に、第二の金属粉末焼結層部3と拡散接合した状態で形成される。ここで、第二の金属粉末焼結層部3を形成するために用いられる球状青銅合金粉末には、少なくとも第二の金属粉末焼結層部3の気孔率を第一の金属粉末焼結層部2Bの気孔率よりも大きくすることのできる平均粒径のものが用いられる。例えば、第一の金属粉末焼結層部2Bの気孔率が10%以下である場合、第二の金属粉末焼結層部3の気孔率が25%以上となるように、第二の金属粉末焼結層部3を形成するために用いられる球状青銅合金粉末の平均粒径が選択される。
【0035】
上記構成の静圧気体ラジアル軸受1Bにおいて、図示していない給気ポンプによりバックメタル4を介して第二の金属粉末焼結層部3の外周面32に供給された圧縮気体は、第二の金属粉末焼結層部3内の気孔を介して第二の金属粉末焼結層部3の内周面31に到達し、第一の金属粉末焼結層部2Bの外周面22に供給される。それから、第一の金属粉末焼結層部2B内の気孔を介して、軸受面である第一の金属粉末焼結層部2Bの内周面21に到達し、この内周面21全域から均一に吐出される。これにより、軸受面21と静圧気体ラジアル軸受1Bの貫通孔11に挿入された不図示の回転体との間に圧縮気体層が形成され、この回転体のラジアル方向の荷重が非接触で支持される。この際、第一の金属粉末焼結層部2Bの気孔率(例えば10%以下)が第二の金属粉末焼結層部3の気効率(例えば25%以上)よりも小さく、この第の金属粉末焼結層部2B内の気孔が圧縮気体の流路の絞り部として機能するため、第一の金属粉末焼結層部2Bの内周面21から吐出される圧縮気体が絞られ、その吐出量が調整される。
【0036】
本実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Bでは、少なくとも電解銅粉末および錫粉末を含む銅錫混合粉末からなる円筒状の圧粉体5をコアとして、この圧粉体5を円筒状のスリーブ7内に配置し、この圧粉体5の外周面とスリーブ7の内周面との隙間に球状青銅合金粉末6を充填して焼結することにより、1回の焼結で、第一および第二の金属粉末焼結層部2B、3を互いに接合した状態で同時に作製することができ、さらに、第二の金属粉末焼結層部3の外周面32上にバックメタル4を同時に接合することができる。また、少なくとも電解銅粉末および錫粉末を含む銅錫混合粉末を加圧成形することにより得られる圧粉体5をコアとして利用可能なため、コアとして利用するために第一の金属粉末焼結層2Bを一次焼結により予め作製しておく必要がない。このため、上記の第一実施の形態とは異なり、焼結工程が一回で済む。したがって、上記の第一実施の形態に比べて製造コストをさらに低減でき、これにより、さらに低コストな静圧気体ラジアル軸受1Bを製造することができる。
【0037】
なお、上記第一実施の形態と同様に、本実施の形態において、第一および第二の金属粉末焼結層部2B、3の両端面23、33に、図示していないシール層を設けることにより、第一および第二の金属粉末焼結層部2B、3の両端面23、33からの圧縮気体の漏れを防止するようにしてもよい。
【0038】
<第三実施の形態>
つぎに、本発明の第三実施の形態を説明する。
【0039】
図3(A)は、本実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Cの正面図であり、図3(B)は、図3(A)に示す静圧気体ラジアル軸受1CのC−C断面図である。なお、図3において、図1に示す第一実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Aと同じ機能を有するものには同じ符号を付している。
【0040】
本実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Cは、上記第一および第二実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1A、1Bと同様、支持対象である回転体のラジアル方向の荷重を非接触で支持する。
【0041】
図示するように、静圧気体ラジアル軸受1Cは、内周面21を軸受面とする円筒状の第一の金属粉末焼結層部2Cと、第一の金属粉末焼結層2Cの外周面22上に形成された第二の金属粉末焼結層部3と、第二の金属粉末焼結層部3の外周面32上に形成されたバックメタル4と、を備えている。
【0042】
第一の金属粉末焼結層部2Cは、球状青銅合金粉末を焼結することにより得られる多孔質体で構成されている。例えば、支持対象である回転体が挿入される貫通孔11を第一の金属粉末焼結層部2Cの内部に形成するために、円筒状の成形型内に円柱状のコアを互いの軸心が一致するように配置し、このコアの外周面と成形型の内周面との隙間に、所望の平均粒径を有する球状青銅合金粉末を充填し、一次焼結することにより作製される。このとき、焼結温度、焼結時間等の一次焼結の条件は、第一の金属粉末焼結層部2Cの気孔率が例えば10%以下となるように調整される。
【0043】
第二の金属粉末焼結層部3は、第一の金属粉末焼結層部2Cに用いる球状青銅合金粉末よりも大きな平均粒径の球状青銅合金粉末を焼結することにより得られる多孔質体で構成されている。例えば、円筒状の第一の金属粉末焼結層部2Cをコアとして、このコアを型として用いる金属製の円筒状のスリーブ内に互いの軸心が一致するように配置し、このコアの外周面とスリーブの内周面との隙間に、第一の金属粉末焼結層部2Cに用いる球状青銅合金粉末よりも大きな平均粒径の球状青銅合金粉末を充填して、コア、充填された、第一の金属粉末焼結層部2Cに用いる球状青銅合金粉末よりも大きな平均粒径の球状青銅合金粉末、およびスリーブを一緒に二次焼結することにより、第二の金属粉末焼結層部3が、第一の金属粉末焼結層部2Cの外周面22上に、第一の金属粉末焼結層部2Cと拡散接合した状態で形成されるとともに、このスリーブにより、バックメタル4が、第二の金属粉末焼結層部3の外周面32上に、第二の金属粉末焼結層部3と拡散接合した状態で形成される。ここで、第二の金属粉末焼結層部3に用いる球状青銅合金粉末には、少なくとも第二の金属粉末焼結層部3の気孔率を第一の金属粉末焼結層部2Cの気孔率より大きくすることのできる平均粒径のものが用いられる。例えば、第一の金属粉末焼結層部2Cの気孔率が10%以下である場合、第二の金属粉末焼結層部3の気孔率が25%以上となるように、球状青銅合金粉末の平均粒径が選択される。
【0044】
上記構成の静圧気体ラジアル軸受1Cにおいて、図示していない給気ポンプによりバックメタル4を介して第二の金属粉末焼結層部3の外周面32に供給された圧縮気体は、第二の金属粉末焼結層部3内の気孔を介して第二の金属粉末焼結層部3の内周面31に到達し、第一の金属粉末焼結層部2Cの外周面22に供給される。それから、第一の金属粉末焼結層部2C内の気孔を介して、軸受面である第一の金属粉末焼結層部2Cの内周面21に到達し、この内周面21全域から均一に吐出される。これにより、軸受面21と静圧気体ラジアル軸受1Cの貫通孔11に挿入された不図示の回転体の外周面との間に圧縮気体層が形成され、この回転体のラジアル方向の荷重が非接触で支持される。この際、第一の金属粉末焼結層部2Cの気孔率(例えば10%以下)が第二の金属粉末焼結層部3の気孔率(例えば25%以上)より小さく、この第一の金属粉末焼結層部2C内の気孔が圧縮気体の流路の絞り部として機能するため、第一の金属粉末焼結層部2Cの内周面21から吐出される圧縮気体が絞られ、その吐出量が調整される。
【0045】
本実施の形態に係る静圧気体ラジアル軸受1Cでは、型として金属製のスリーブを用いることにより、バックメタル4を第二の金属粉末焼結層部3と一緒に形成することが可能となり、これにより製造コストを低減することができる。
【0046】
また、第二の金属粉末焼結層部3の形成材料に、第一の金属粉末焼結層部2Cの形成材料とする球状青銅合金粉末よりも、共通の測定・算出方法(例えばふるい分け法等)により決定された平均粒径が大きな球状青銅合金粉末を用い、かつ、第一の金属粉末焼結層部2Cの一次焼結条件よりも低温かつ短時間とする二次焼結条件で焼結して第二の金属粉末焼結層部3を形成しているため、より確実に第二の金属粉末焼結層部3の気孔率を第一の金属粉末焼結層部2Cの気孔率よりも大きくすることができる。
【0047】
また、第一の金属粉末焼結層部2Cに対しては2回の焼結処理(一次焼結、二次焼結)が行われるため、二次焼結中、第一の金属粉末焼結層部2Cが第二の金属粉末焼結層部3と拡散接合するとともに、第一の金属粉末焼結層部2Cの焼結がさらに進んで、第一の金属粉末焼結層部2Cの気孔率がさらに小さくなる。このため、第一の金属粉末焼結層部2C全体においてより確実に目詰まりが生じ、第一の金属粉末焼結層部2Cの内周面21から吐出される圧縮気体をより効果的に絞ることが可能となり、圧縮空気の消費量がより少なく、かつ、より高剛性な静圧気体ラジアル軸受1Cを実現することができる。
【0048】
なお、上記第一実施の形態と同様に、本実施の形態において、第一および第二の金属粉末焼結層部2C、3の両端面23、33に図示していないシール層を設けることにより、第一および第二の金属粉末焼結層部2C、3の両端面23、33からの圧縮気体の漏れを防止するようにしてもよい。
【0049】
なお、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。例えば、上記の各実施の形態において、バックメタル4の外形は円柱状に形成されているが、角柱状であってもよい。また、第一の金属粉末焼結層部2A〜2Cの軸受面の形状も、円柱状に限定されるものではなく、角柱状等、支持対象の形状に合わせた形状であればよい。
【0050】
また、上記の各実施の形態では、型として金属製のスリーブを用いることにより、バックメタル4を第二の金属粉末焼結層部3と一緒に形成しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、型として金属製のスリーブを用いる代わりに一般的な筒状の成形型を用いて、第一の金属粉末焼結層部2Cおよび第二の金属粉末焼結層部3からなる積層体をバックメタル4より先に形成し、その後、互いに拡散接合されて一体化された第一および第二の金属粉末焼結層部2A〜C、3を金属製のスリーブに圧入することにより、このスリーブをバックメタル4として機能させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1A、1B、1C:静圧気体ラジアル軸受、 2A、2B、2C:第一の金属粉末焼結層部、 3:第二の金属粉末焼結層部、 4:バックメタル、5:圧粉体、6:球状青銅合金粉末、7:スリーブ、 11:貫通孔、 21:第一の金属粉末焼結層2A〜2Cの内周面(軸受面)、 22:第一の金属粉末焼結層2A〜2Cの外周面、 23:第一の金属粉末焼結層2A〜2Cの両端面、 31:第二の金属粉末焼結層3の内周面、 32:第二の金属粉末焼結層3の外周面、 33:第二の金属粉末焼結層3の両端面
図1
図2
図3