(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
IT機器や通信装置等の電算機が収容されたサーバラックなどの機器収容用ラックが設置されるデータセンタにおいては、空調機を用いた冷却システムを用いてデータセンタ内の空調を管理することが一般的である。
【0003】
データセンタは、一般的な居室とは異なるため、二重床・天井といった建築二次部材は必須要素ではないが、空調機が出力する冷気の流路としてこれらを設置している。例えば、
図6に示すデータセンタ102においては、冷気は空調機4下部より供給され、二重床51の床下空間を流路として、機器収容用ラック3付近に設置された床吹出口52より吹き出される。また、機器収容用ラック3を冷却した後の暖気は、天井53に設置された吸込口54から天井裏空間に流入し、空調機4まで還気される(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の冷却システムにおいて空調空気の流路を形成するための二重床51や天井53を構築することは、冷却システム導入のためのコストの増大に直結するという問題がある。また、空調空気の流路となる二重床51の下の空間や天井裏空間には、建築構造上の梁や配管・配線類が存在しているため、これらが空調空気の空気抵抗になる。これにより、大容量の空調機が必要となるため、消費電力(ランニングコスト)が増大するという問題もある。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、データセンタに設置されている機器収容用ラックを冷却する冷却システムにおいて、システム導入のためのコストを低減することができる冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提供している。
上述した課題を解決するために、本発明は、1又は複数の空調機と、前記空調機が出力する冷気を送風する1又は複数の冷気送風部と、を備える冷却システムにおいて、前記冷気を取り込む1又は複数の機器収容用ラックを含んで構成された区画列に沿って冷気風路が区画されており、前記冷気送風部は前記冷気が前記冷気風路に導入されるように前記冷気を送風し、前記冷気風路における前記冷気送風部と反対の位置に前記冷気の流れを遮蔽する遮蔽部材が設けられ
、前記冷気風路の上部の少なくとも一部に、前記冷気の鉛直方向への流れを遮蔽する水平遮蔽板が設けられ、前記水平遮蔽板は、前記区画列の一部に設けられ、かつ、前記遮蔽部材に接続されていることを特徴とする冷却システムである。
【0010】
また、本発明は、前記区画列の前記冷気風路とは反対の側には、前記機器収容用ラックから暖気が排出される暖気風路が区画され、前記暖気風路における前記冷気送風部の側に前記冷気の流れを遮断する暖気遮蔽部材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記1又は複数の空調機が出力する前記冷気を前記1又は複数の冷気送風部へ送風する風路を有する架台を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、冷気が冷気風路に導入されるように冷気送風部を設けるとともに、冷気風路における冷気送風部と反対の位置に冷気の流れを遮蔽する遮蔽部材が設けることによって、冷気風路に導入された冷気が機器収容用ラックの配置箇所に留まり、二重床を構築することなしに機器収容用ラックを冷却することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1、
図2、及び
図3に示すように、本実施形態の冷却システム1は、サーバラックなどの機器収容用ラック3(以下、ラックと呼ぶ)が設置されたデータセンタ2(情報通信機械室)の空調を管理するシステムであって、ラック3より排出される暖気(高温排気)を空調機4まで還気した後、空調機4により冷却して再度室内に循環させるシステムである。
【0015】
データセンタ2は、床、天井、及び壁からなる、平面視が矩形の空間である。
冷却システム1は、2つの空調機4と、床上に設置されるとともに2つの空調機4を支持するように配置された架台5と、複数のラック3(本実施形態では5台)を接続することによって形成された区画列6と、空調機4が出力する冷気の流れの拡散を妨げる遮蔽部材16と、を有している。なお、以下の説明においては、区画列6の延在方向をX方向と呼び、X方向に直交する方向をY方向と呼ぶ。
【0016】
ラック3は、箱形状の筐体を有し、その内部に通信装置等のIT機器類を収容するものである。ラック3は、前面3aに設けられた吸気口から空気を吸気し、背面3bの排気口から後方に向けて空気を排気するようになっている。詳しくは、ラック3に収容された機器より発生する熱は、各機器が備える冷却ファン(図示せず)により、前面3aから吸気した空気とともに背面3bに排気される。ラック3の高さは、例えば2,000mmである。
【0017】
区画列6は、ラック3の側面同士を、ラック3の前面3a(吸気口)が一の側に揃うように接続することによってなされている。即ち、区画列6の一の側から吸気された空気は、区画列6の他の側から排出される。これにより、背面3b側には暖気風路であるホットアイル8が、前面3a側には冷気風路であるコールドアイル9が区画される。
なお、区画列6は、全てが機器収容用ラック3で構成される必要はなく、機器収容用ラック3を含んで構成されていればよい。例えば、区画列6には所定の位置に物品を収容する同形状の棚を配置してもよい。
また、区画列6を構成するラック3の背面3bとデータセンタ2の壁との間にホットアイル8が区画される構成としてもよい。
【0018】
架台5は、四角筒形状の部材であり、空調機4の形状に応じた大きさに形成されている。具体的には、複数の形鋼からなる空調機4の重量に耐えうる剛性を有する骨組みに、四角筒を形成するようにパネル(側板)を取り付けることによって形成されている。架台5は、その内部の冷気共有風路7に空調機4から吹き出される冷気が導入されるとともに、冷気が架台5の長手方向に充満し、導入された冷気を後述する冷気送風部10から送風するように形成されている。
また、架台5は、複数の空調機4(本実施形態は2台)を接続することが可能となっている。即ち、複数の空調機4に対して架台5は、共通化されており、複数の空調機4から出力される冷気が同一の冷気共有風路7に導入されるようになっている。
【0019】
なお、架台5の形状は四角筒形状に限ることはなく、空調機4を支持するとともに冷気を流せる形状であれば、どのような形状としてもよい。例えば、冷気の漏出を防止することができれば、床に面するパネルを省略し、コ字状とすることもできる。
【0020】
冷気送風部10は、架台5の側面に形成されている。冷気送風部10は複数の送風孔によって構成されており、架台5に導入された冷気を送風するように構成されている。
【0021】
空調機4は、下面の吹出口12から冷気(冷却用空気)を吹き出し、ラック3を冷却した後の暖気を上面の吸引口13から吸引し、冷却した後、再び下面から冷気を吹き出すように構成されている。空調機4は、架台5の上面に載置されており、下面の吹出口12は、架台5の冷気取込口14と接続されている。即ち、架台5の上面であって、空調機4が載置される箇所には、冷気取込口14が形成されている。
【0022】
複数のラック3にて構成されている区画列6は、X方向に沿って2列に配列されている。本実施形態に係る冷却システム1においては、2列の区画列6を配置した例を示したが、区画列6は3列以上としてもよいし、1列としてもよい。
架台5は、Y方向に沿うとともに、区画列6の一端よりやや離間して配置されている。即ち、架台5の区画列6に面する側面5a(
図3参照)と、区画列6の最も架台5側に配置されたラック3の側面とは、所定の距離を隔てて配置されている。
【0023】
冷気送風部10は、X方向に沿うコールドアイル9の長手方向の延長線上に配置されている。即ち、冷気送風部10は、冷気送風部10から送風される冷気がコールドアイル9に導入されるような位置に配置されている。
【0024】
また、遮蔽部材16は、ラック3の高さと略同一の高さを有する板状の部材であって、コールドアイル9において架台5とは反対側の端部に設置されている。具体的には、区画列6の最も架台5とは遠い側に配置されたラック3の側面同士を接続するように配置されている。
なお、遮蔽部材16は、気体の流れを遮蔽することができれば板状の部材とする必要はない。例えば、布によって形成されたカーテン状の部材を配置してもよい。
【0025】
遮蔽部材16の上端には、冷気の鉛直方向への流れを遮蔽する水平遮蔽板17が接続されている。具体的には水平遮蔽板17は、床面と平行となるように配置されている板状の部材であって、Y方向の幅が遮蔽部材16と略同一とされている。
【0026】
また、水平遮蔽板17のX方向の幅、即ち、コールドアイル9の長手方向に沿う長さは、1台のラック3のX方向の幅と略同一とされている。即ち、水平遮蔽板17は、コールドアイル9の長手方向全幅に亘って設けられておらず、コールドアイル9の上部の少なくとも一部に設けられている。
なお、水平遮蔽板17のX方向の幅は、1台のラック3の幅と略同一に限ることはなく、ラック3よって構成される区画列6の長さに応じて適宜調節することができる。例えば、区画列6が10台のラックによって構成されている場合は、X方向の幅をより長くすることが好ましい。
【0027】
さらに、ホットアイル8における冷気送風部10の側の端部には、冷気の流れを遮断する暖気遮蔽部材18が設けられている。暖気遮蔽部材18は、ラック3の高さと略同一の高さを有する板状の部材であって、区画列6の最も架台5に近い側に配置されたラック3の側面同士を接続するように配置されている。
なお、暖気遮蔽部材18も遮蔽部材16と同様に、気体を遮蔽することができればどのような部材を採用しても構わない。
【0028】
次に、本実施形態の冷却システム1の作用について説明する。
まず、2台の空調機4から出力された冷気は、共通の架台5に導入されて架台5内に充満する。次いで、架台5内に充満した冷気は、冷気送風部10から送風される。ここで、冷気送風部10は、コールドアイル9の延長線上に設けられていることから、冷気はコールドアイル9に導入される。また、暖気遮蔽部材18が設けられていることによって、コールドアイル9に導入されなかった冷気がホットアイル8に漏出することがない。
【0029】
コールドアイル9に導入された冷気は、遮蔽部材16によって周囲への拡散が妨げられる。さらに、遮蔽部材16の上部に取り付けられている水平遮蔽板17によってラック3の高さ以上への拡散が妨げられる。
また、冷気送風部10の開口率が適切に設定され、冷気の吹出し風速が最適化されていることから、ラック3の高さ以下に冷気が充満する。換言すれば、ラック3の高さ以上の空間には、暖気H(
図3参照)が充満し、ラック3の高さで温度境界層が形成され、冷暖の混合が防止される。
【0030】
ラック3の高さで温度境界層が形成され、冷暖の混合が防止される点については、シミュレーションを実施することによって、その効果が確認された。
【0031】
次いで、冷気はラック3の前面3aより吸気され、ラック3に収容されている機器を冷却したのち、ラック3の背面3b、即ちホットアイル8に排気される。
ホットアイル8に排気された暖気は、ラック3の高さより上方へ上昇し、空調機4へ還気される。
【0032】
上記実施形態によれば、冷気がコールドアイル9に導入されるように冷気送風部10を設けるとともに、コールドアイル9における冷気送風部10と反対の位置に冷気の流れを遮蔽する遮蔽部材16が設けることによって、コールドアイル9に導入された冷気がラック3の配置箇所に留まり、二重床を構築することなしにラック3を冷却することができる。
【0033】
また、水平遮蔽板17を設けることによって、冷気のラック3の高さ以上への拡散を防ぐことができる。さらに、水平遮蔽板17がコールドアイル9の上部の一部にしか設けられていないことによって、コールドアイル9の全体を覆う場合と比較して、より低コストで冷却システム1を構築することができる。
【0034】
また、複数の空調機4に対して架台5を共通化することで、一部の空調機4に障害が発生した場合においても、システム全体の冗長性を確保することができる。
【0035】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
上記実施形態においては、ラック3は、前面に設けられた吸気口から空気を吸気し、背面の排気口から後方に向けて空気を排気する構造としたが、これに限ることはない。例えば、
図4及び
図5に示す冷却システム1Bのように、前面及び背面から空気を導入し、上面から排気するラック3Bを採用してもよい。即ち、区画列6Bの両側にコールドアイル9が形成されるような構成としてもよい。
【0036】
また、空調機4の数は、2台に限ることはなく、3台以上としてもよい。また冗長性を考慮する必要がなければ、空調機4を1台としてもよい。
また、冷気送風部10は、必ずしもコールドアイル9の正面に設置する必要はなく、冷気のコールドアイル9への導入に差し支えなければ、コールドアイル9の正面からずらして設置することもできる。一方、冷気送風部10をコールドアイル9の正面に設ける場合においては、暖気遮蔽部材18を省略することもできる。
また、データセンタ2の形状は平面視が矩形であるとしたが、これに限ることはなく、例えば矩形以外の多角形状、円形、これらを組み合わせた形状としてもよい。