特許第5965790号(P5965790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チェイル インダストリーズ インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許5965790-樹脂膜及び樹脂膜の製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965790
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】樹脂膜及び樹脂膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/111 20150101AFI20160728BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20160728BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20160728BHJP
【FI】
   G02B1/111
   C08J5/18CEY
   G02B1/18
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-194568(P2012-194568)
(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-52394(P2014-52394A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】500005066
【氏名又は名称】チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000981
【氏名又は名称】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小堀 重人
【審査官】 大隈 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−85983(JP,A)
【文献】 特開2007−264221(JP,A)
【文献】 特開2008−44979(JP,A)
【文献】 特開2012−63687(JP,A)
【文献】 特開2012−93689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10〜1/18
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空シリカ粒子と、前記中空シリカ粒子同士を結合するバインダ樹脂とを含む低屈折率層と、
前記低屈折率層の表面に分布した中空シリカ粒子に結合し、かつ、前記バインダ樹脂と反発する光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーと、を備え、
前記中空シリカ粒子の含有率は30質量%以上60質量%以下であり、
前記光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーの含有率の合計は1質量%より大きく7質量%以下であり、
前記熱重合性フッ素ポリマーの含有率は2質量%以下であり、
前記熱重合性フッ素ポリマーの含有率と前記光重合性フッ素ポリマーの含有率との比は0.1以上0.7以下であることを特徴とする、樹脂膜。
【請求項2】
前記バインダ樹脂は、他の官能基と水素結合を形成可能な水素結合形成基を有することを特徴とする、請求項1記載の樹脂膜。
【請求項3】
前記バインダ樹脂は、前記水素結合形成基として水酸基を有することを特徴とする、請求項2記載の樹脂膜。
【請求項4】
前記熱重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量は、前記光重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量よりも大きいことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂膜。
【請求項5】
前記熱重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量は10000以上であり、前記光重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量は10000未満であることを特徴とする、請求項4記載の樹脂膜。
【請求項6】
中空シリカ粒子と、前記中空シリカ粒子同士を結合可能なバインダ用モノマーと、前記中空シリカ粒子に結合可能であり、かつ、前記バインダ用モノマーと反発する光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーと、を含むコート液を生成するステップと、
前記コート液を基板に塗布するステップと、
重合反応を開始させるステップと、を含み、
前記中空シリカ粒子の含有率は30質量%以上60質量%以下であり、
前記光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーの含有率の合計は1質量%より大きく7質量%以下であり、
前記熱重合性フッ素ポリマーの含有率は2質量%以下であり、
前記熱重合性フッ素ポリマーの含有率と前記光重合性フッ素ポリマーの含有率との比は0.1以上0.7以下であることを特徴とする、樹脂膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂膜及び樹脂膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の表面には、反射防止フィルムが貼り付けられることが多い。反射防止フィルムは、ディスプレイ表面での光の反射を防止することで、ディスプレイの視認性を向上させる。従来の反射防止フィルムは、屈折率が低い低屈折率層と、低屈折率層よりも屈折率が高い高屈折率層とを備える。低屈折率層は、中空シリカ粒子と、アクリル樹脂と、フッ素化アクリル樹脂と、添加剤とを含む。
【0003】
中空シリカ粒子は、中空構造のシリカ粒子であり、低屈折率層の屈折率を低下させる役割を有する。中空シリカ粒子は、水酸基と、光重合性官能基とを有する。ここで、光重合性官能基としては、アクリロイル基及びメタクリロイル基が知られている。光重合性官能基は、電離放射線硬化性基とも称される。
【0004】
アクリル樹脂は、中空シリカ粒子同士を結合させるバインダの役割を有する。フッ素化アクリル樹脂は、中空シリカ粒子同士を結合させるとともに、低屈折率層の屈折率を低下させる役割を有する。添加剤は、低屈折率層の表面に分布した中空シリカ粒子の官能基と結合することで、低屈折率層、すなわち反射防止フィルムに防汚性及び滑り性を付与するものである。添加剤としては、シリコーン及びフッ素ポリマーが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−11323号公報
【特許文献2】特開2005−99778号公報
【特許文献3】特開2006−291077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、添加剤は、低屈折率層の表面に存在する場合に、その機能が発揮される。しかし、従来の低屈折率層は、添加剤が表面だけでなく内部にも分布していた。添加剤が低屈折率層の内部に分布する理由としては、中空シリカ粒子及びフッ素化アクリル樹脂が添加剤のブリードアウト(表面への移動)を阻害することが挙げられる。すなわち、添加剤は、中空シリカ粒子が障壁となるため、表面へ効果的に移動することができない。また、添加剤はフッ素化アクリル樹脂と親和する。例えば、フッ素ポリマー及びフッ素化アクリル樹脂は、いずれもフッ素を含むので、親和しやすい。すなわち、添加剤は、フッ素化アクリル樹脂の近傍にとどまってしまう。
【0007】
したがって、従来の低屈折率層は、添加剤を低屈折率層の表面に効果的に偏在させることができなかった。このため、従来の低屈折率層は、初期の防汚性及び滑り性はある程度良好となるが、表面拭き取り等を繰り返すことで、これらの特性が顕著に低下するという問題があった。
【0008】
また、従来の低屈折率層は、低屈折率層の内部に分布した添加剤がバインダ樹脂(すなわち、アクリル樹脂及びフッ素化アクリル樹脂)の架橋密度を低下させるため、膜強度も下がってしまうという問題もあった。具体的には、添加剤(特にフッ素ポリマー)は、アクリル樹脂と反発する。このため、添加剤の周辺にはアクリル樹脂が分布しにくくなり、結果として、アクリル樹脂の架橋密度が低下する。
【0009】
一方、特許文献1〜3は、反射防止フィルムに関する技術を開示するが、上記の問題を何ら解決することができなかった。すなわち、特許文献1は、表面にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する中空シリカ粒子と、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するアクリル系モノマーと、を含む重合性組成物を開示する。特許文献2は、電離放射線硬化型樹脂組成物と、電離放射線硬化性基を有するシランカップリング剤により粒子表面の少なくとも一部が処理された中空シリカ粒子とを含む反射防止積層体を開示する。特許文献3は、パーフルオロ基含有(メタ)アクリル酸エステル樹脂と、所定の構造を有するシランカップリング剤で処理された中空シリカ粒子とからなる低屈折率膜形成用組成物を開示する。しかし、いずれの技術も、中空シリカ粒子同士を強固に結合することを目的とした技術であるので、上記の問題を何ら解決することができなかった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、防汚性及び滑り性を向上し、かつ、膜強度を向上することが可能な、新規かつ改良された樹脂膜及び樹脂膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数の中空シリカ粒子と、中空シリカ粒子同士を結合するバインダ樹脂とを含む低屈折率層と、低屈折率層の表面に分布した中空シリカ粒子に結合し、かつ、バインダ樹脂と反発する光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーと、を備え、中空シリカ粒子の含有率は30質量%以上60質量%以下であり、光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーの含有率の合計は1質量%より大きく7質量%以下であり、熱重合性フッ素ポリマーの含有率は2質量%以下であり、熱重合性フッ素ポリマーの含有率と光重合性フッ素ポリマーの含有率との比は0.1以上0.7以下であることを特徴とする、樹脂膜が提供される。
【0012】
この観点によれば、樹脂膜は、低屈折率層の表面に分布した中空シリカ粒子に結合し、かつ、バインダ樹脂と反発する光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーを備える。したがって、光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーがバインダ樹脂による反発力により効果的にブリードアウトするので、樹脂膜は、光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーを低屈折率層の表面に偏在させることができる。これにより、樹脂膜は、防汚性及び滑り性を向上することができ、かつ、膜強度を向上させることができる。
【0013】
ここで、バインダ樹脂は、他の官能基と水素結合を形成可能な水素結合形成基を有していてもよい。
【0014】
この観点によれば、バインダ樹脂は、水素結合形成基を有するので、光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーを効果的にブリードアウトさせることができる。
【0015】
また、バインダ樹脂は、水素結合形成基として水酸基を有していてもよい。
【0016】
この観点によれば、バインダ樹脂は、水素結合形成基として水酸基を有するので、光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーを効果的にブリードアウトさせることができる。
【0017】
また、熱重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量は、光重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量よりも大きくてもよい。
【0018】
この観点によれば、光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーは、効果的にブリードアウトすることができる。また、光重合性フッ素ポリマーが相溶化剤として機能するので、熱重合性フッ素ポリマーの溶媒への溶解性が向上する。
【0019】
また、熱重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量は10000以上であり、光重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量は10000未満であってもよい。
【0020】
この観点によれば、光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーは、効果的にブリードアウトすることができる。また、光重合性フッ素ポリマーが相溶化剤として機能するので、熱重合性フッ素ポリマーの溶媒への溶解性が向上する。
【0021】
本発明の他の観点によれば、中空シリカ粒子と、中空シリカ粒子同士を結合可能なバインダ用モノマーと、中空シリカ粒子に結合可能であり、かつ、バインダ用モノマーと反発する光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーと、を含むコート液を生成するステップと、コート液を基板に塗布するステップと、重合反応を開始させるステップと、を含み、中空シリカ粒子の含有率は30質量%以上60質量%以下であり、光重合性フッ素ポリマー及び熱重合性フッ素ポリマーの含有率の合計は1質量%より大きく7質量%以下であり、熱重合性フッ素ポリマーの含有率は2質量%以下であり、熱重合性フッ素ポリマーの含有率と光重合性フッ素ポリマーの含有率との比は0.1以上0.7以下であることを特徴とする、樹脂膜の製造方法が提供される。
【0022】
この観点によれば、樹脂膜は、各材料が溶解したコート液を基板に塗布し、重合反応を開始させるだけで作成可能である。したがって、防汚性、滑り性、及び膜強度に優れた樹脂膜が容易に作成される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、樹脂膜は、防汚性及び滑り性を向上することができ、かつ、膜強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る樹脂膜の構成を模式的に示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
<1.樹脂膜の構成>
まず、図1に基づいて、本実施形態に係る樹脂膜10の構成について説明する。樹脂膜10は、低屈折率層10aと、添加剤40とを含む。低屈折率層10aは、中空シリカ粒子20と、バインダ樹脂30と、光開始剤とを有する。本実施形態の樹脂膜10は、例えば反射防止フィルムに使用されるが、他の分野、例えば低屈折率の膜を使用する分野等に好適に適用される。
【0027】
中空シリカ粒子20は、低屈折率層10a内に分散しており、熱重合性官能基及び光重合性官能基を有するナノスケールの粒子である。具体的には、中空シリカ粒子20は、外殻層を有し、外殻層の内部は中空または多孔質体となっている。外殻層及び多孔質体は、主に酸化ケイ素で構成される。また、外殻層には、熱重合性官能基及び光重合性官能基が多数結合している。熱重合性官能基及び光重合性官能基と外殻層とは、Si−O−Si結合及び水素結合のうち、少なくとも一方の結合を介して結合されている。熱重合性官能基はとしては、例えば水酸基、シラノール基、アルコキシ基、ハロゲン、水素、イソシアネート基などが挙げられる。光重合性官能基としては、アクリロイル基及びメタクリロイル基が挙げられる。すなわち、中空シリカ粒子20は、光重合性官能基として、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうち少なくとも一方を含む。光重合性官能基は、電離放射線硬化性基とも称される。中空シリカ粒子20は熱重合性官能基及び光重合性官能基を有していればよく、これらの官能基の数、種類は特に限定されない。
【0028】
中空シリカ粒子20の平均粒径は特に限定されないが、10〜100nmであることが好ましく、40〜60nmであることがより好ましい。平均粒径が10nm未満の場合、中空シリカ粒子20が凝集しやすくなるので、中空シリカ粒子20の均一な分散が容易でない場合がある。また、平均粒径が100nmを超える場合、低屈折率層10aの透明性が落ちる場合がある。
【0029】
ここで、平均粒径は、中空シリカ粒子20の粒径(中空シリカ粒子20を球と仮定したときの直径)の算術平均値である。中空シリカ粒子20の粒径は、例えば、レーザー回折・散乱粒度分布計(具体的には、HORIBA LA−920)によって測定される。なお、レーザー回折・散乱粒度分布計は、HORIBA LA−920に限られない。また、中空シリカ粒子20の屈折率は、低屈折率層10aに要求される屈折率に応じて変動するが、例えば1.10〜1.40、好ましくは1.15〜1.25となる。中空シリカ粒子20の屈折率は、例えば、シミュレーションソフト(Lambda Reserch社TracePro)によって測定される。
【0030】
中空シリカ粒子20の含有率(中空シリカ粒子20、バインダ樹脂30、添加剤40、及び光開始剤の総質量に対する質量%)は、30〜60質量%となる。後述するように、中空シリカ粒子20の含有率がこの範囲となる場合に、樹脂膜10の特性が良好となる。中空シリカ粒子のより好ましい含有率は、40質量%以上50質量%以下となる。中空シリカ粒子の含有率がこの範囲となる場合、樹脂膜10の特性がさらに良好になる。
【0031】
バインダ樹脂30は、網目構造となっており、中空シリカ粒子20同士を連結する。バインダ樹脂30を構成するモノマー、すなわちバインダ用モノマーは、水素結合形成基と、2以上の光重合性官能基とを有する。水素結合形成基は、他の官能基と水素結合を形成可能な官能基であり、例えば水酸基である。なお、水素結合形成基は、この例に限られず、水素結合(すなわち、共有結合で他の原子と結びついた水素原子が、水素原子の近傍に位置する窒素、酸素、硫黄、フッ素、π電子系などの孤立電子対とつくる非共有結合性の引力的相互作用)を形成するものであれば、どのような官能基であってもよい。光重合性官能基は、上述したように、例えばアクリロイル基及びメタクリロイル基となる。したがって、バインダ用モノマーは、多官能アクリレートモノマーである。
【0032】
ここで、バインダ樹脂30は、水素結合形成基を有するバインダ用モノマーを重合したものなので、後述する添加剤40を効果的にブリードアウトさせることができる。すなわち、バインダ樹脂30は水素結合形成基を有するため、表面張力が大きくなる。一方、添加剤40は、フッ素ポリマーであるので、表面張力が低い。したがって、添加剤40は、バインダ樹脂30と反発することで、効果的にブリードアウトする。なお、バインダ用モノマーの表面張力、好ましくは36以上45以下となる。表面張力がこの範囲となる場合に、添加剤40は効果的にブリードアウトする。表面張力は、例えば、自動表面張力計(具体的には、協和界面科学 DY−300)によって測定される。なお、自動表面張力計は、協和界面科学 DY−300に限られない。
【0033】
バインダ用モノマーとしては、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソシアヌレートアクリレート等のジアクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート誘導体、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等のペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。もちろん、バインダ用モノマーは、これら以外のものであってもよい。すなわち、バインダ用モノマーは、水素結合形成基と、2以上の光重合性官能基とを有するものであれば、どのようなものであってもよい。
【0034】
バインダ用モノマーは、合計で3つ以上の官能基を有するので、互いに重合することで複雑な3次元構造(網目構造)のバインダ樹脂30を形成する。すなわち、バインダ用モノマーの水素結合形成基は、中空シリカ粒子20の熱重合性官能基または他のバインダ用モノマーの水素結合形成基と熱重合(縮重合)する。また、バインダ用モノマーの光重合性官能基は、中空シリカ粒子20の光重合性官能基または他のバインダ用モノマーの光重合性官能基と光重合する。これにより、複雑な3次元構造(網目構造)のバインダ樹脂30が形成される。また、バインダ用モノマーは添加剤40をブリードアウトするので、低屈折率層10a内に残留する添加剤40を少なくすることができる。したがって、バインダ樹脂30の架橋密度が向上し、ひいては、低屈折率層10aの機械強度が向上する。
【0035】
なお、中空シリカ粒子20同士が直接結合する場合もある。すなわち、中空シリカ粒子20の熱重合性官能基は、他の中空シリカ粒子20の熱重合性官能基と結合し、中空シリカ粒子20の光重合性官能基は、他の中空シリカ粒子20の光重合性官能基と結合する。このような結合が可能になるのは、後述するように、樹脂膜10の製造時に中空シリカ粒子20を事前に修飾しないからである。
【0036】
これに対し、例えば特許文献3では、中空シリカ粒子を事前にシランカップリング剤で修飾する(中空シリカ粒子の官能基にシランカップリング剤を結合させる)。そして、シランカップリング剤で修飾された中空シリカ粒子を用いて低屈折率層を生成する。このため、中空シリカ粒子同士が接近しにくくなり、ひいては、直接結合しにくくなる。また、シランカップリング剤は直鎖構造となっているので、シランカップリング剤同士が結合しても、本実施形態のような複雑な網目構造は形成されない。したがって、特許文献3の低屈折率層は、本実施形態の低屈折率層10aよりも強度が低くなる。
【0037】
添加剤40は、低屈折率層10aに防汚性及び滑り性を付与するために添加されるものである。添加剤40は、具体的には、光重合性フッ素ポリマー41と熱重合性フッ素ポリマー42とで構成される。
【0038】
光重合性フッ素ポリマーは、光重合性官能基を有するフッ素ポリマーであり、以下の化学式(1)で表される。
【0039】
【化1】
【0040】
化学式(1)中、Rf1は(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、W1は連結基、RA1は重合性不飽和基を有する官能基、すなわち光重合性官能基を表す。nは1〜3、mは1〜3の整数を表す)。
【0041】
(パー)フルオロアルキル基の構造は、特に限定されない。すなわち、(パー)フルオロアルキル基は、直鎖(例えば−CFCF,−CH(CFH,−CH(CFCF,−CHCH(CFH等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF,CHCF(CF,CH(CH)CFCF,CH(CH)(CFCFH等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)であっても良い。
【0042】
(パー)フルオロポリエーテル基は、エーテル結合を有する(パー)フルオロアルキル基であり、その構造は特に限定されない。すなわち、(パー)フルオロポリエーテル基としては、例えばCHOCHCFCF、CHCHOCHH、CHCHOCHCH17、CHCHOCFCFOCFCFH、フッ素原子を5個以上有する炭素数4〜20のフルオロシクロアルキルエーテル基等があげられる。また、他の例としては、(CFO(CFCFO)、[CF(CF)CFO]―[CF(CF)]、(CFCFCFO)、(CFCFO)などが挙げられる。ここで、x、yは任意の自然数である。
【0043】
連結基は特に限定されるものではないが、例えば、メチレン基、フェニレン基、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアルキレン基、又はこれらの組み合わさった連結基が挙げられる。これらの連結基は、更に、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、スルホンアミド基等やこれらの組み合わさった官能基を有しても良い。光重合性官能基としては、アクリロイル基及びメタクリロイル基等が挙げられる。
【0044】
光重合性フッ素ポリマー41の重量平均分子量Mwは、後述する熱重合性フッ素ポリマー42の重量平均分子量Mwよりも小さく、好ましくは10000未満である。なお、光重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量Mwの下限値は特に限定されないが、例えば3000以上となる。また、光重合性フッ素ポリマー41のオレイン酸転落角は、樹脂膜10に要求される防汚性、滑り性に応じて選択されるが、例えば10度以下となる。オレイン酸転落角は、例えば、全自動接触角計DM700(協和界面科学株式会社製)によって測定される。
【0045】
熱重合性フッ素ポリマー42は、熱重合性官能基を有するフッ素ポリマーであり、以下の化学式(2)で表される。
【0046】
【化2】
【0047】
化学式(2)中、Rf2は(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、W2は連結基、Xは熱重合性官能基であり、例えば炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲンまたは水素である。nは1〜3を表す。熱重合性官能基は、上述した水素結合形成基を含む概念である。
【0048】
(パー)フルオロアルキル基、(パー)フルオロポリエーテル基、及び連結基の構造は光重合性フッ素ポリマーと同様である。熱重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量Mwは、光重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量Mwよりも大きく、好ましくは10000以上である。なお、熱重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量Mwの上限値は特に限定されないが、例えば50000以下となる。また、光重合性フッ素ポリマー41のオレイン酸転落角は、樹脂膜10に要求される防汚性、滑り性に応じて選択されるが、例えば10度以下となる。
【0049】
このように、光重合性フッ素ポリマー41及び熱重合性フッ素ポリマー42は、基本骨格としてフッ素ポリマー部分を有するので、このフッ素ポリマー部分とバインダ樹脂30の水素結合形成基とが反発しあう。これにより、光重合性フッ素ポリマー41及び熱重合性フッ素ポリマー42は、効果的にブリードアウトする(すなわち、低屈折率層10aの表面に偏在する)。
【0050】
そして、光重合性フッ素ポリマー41は、低屈折率層10aの表面に分布した中空シリカ粒子20及びバインダ樹脂30の光重合性官能基と結合し、熱重合性フッ素ポリマー42は、低屈折率層10aの表面に分布した中空シリカ粒子20及びバインダ樹脂30の熱重合性官能基と結合する。このように、本実施形態では、低屈折率層10aの表面に配置された中空シリカ粒子20及びバインダ樹脂30は、光重合性フッ素ポリマー41及び熱重合性フッ素ポリマー42で保護される。
【0051】
一方、従来は、添加剤として光重合性ポリマーのみが使用されていた。したがって、従来の低屈折率層では、表面に配置された中空シリカ粒子の水酸基部分が露出していた。このため、低屈折率層の防汚性、滑り性が顕著に低下するという問題があった。
【0052】
これに対し、本実施形態では、低屈折率層10aの表面に配置された中空シリカ粒子20は、光重合性フッ素ポリマー41及び熱重合性フッ素ポリマー42で保護される。すなわち、中空シリカ粒子20の水酸基も熱重合性フッ素ポリマー42で保護される。したがって、本実施形態では、低屈折率層10aの表面を光重合性フッ素ポリマー41及び熱重合性フッ素ポリマー42で均一に保護することができるので、防汚性、滑り性が向上する。
【0053】
また、熱重合性フッ素ポリマー42の重量平均分子量Mwは、光重合性フッ素ポリマー41の重量平均分子量Mwよりも大きい。光重合性フッ素ポリマー41及び熱重合性フッ素ポリマー42の重量平均分子量Mwがこのように設定されるのは以下の理由による。すなわち、光重合性フッ素ポリマー41及び熱重合性フッ素ポリマー42は、重量平均分子量Mwが大きいほど表面張力が小さくなる(すなわち、防汚性、滑り性、ブリードアウト性が向上する)ので好ましい。
【0054】
しかし、アクリロイル基及びメタクリロイル基は極性が大きいので、フッ素ポリマーの重量平均分子量Mwが大きすぎると、フッ素ポリマーにこれらの官能基を導入しにくくなる。すなわち、光重合性フッ素ポリマー41が製造されにくくなる。また、光重合性フッ素ポリマー41及び熱重合性フッ素ポリマー42は、重量平均分子量Mwが大きすぎると、樹脂膜10の製造時に溶媒に溶解しにくくなる(詳細には、バインダ用モノマーとの相溶性が低下する)。
【0055】
そこで、光重合性フッ素ポリマー41の重量平均分子量Mwを上記のように設定した。これにより、アクリロイル基及びメタクリロイル基が導入されるフッ素ポリマーの重量平均分子量Mwを小さくすることができるので、アクリロイル基及びメタクリロイル基をフッ素ポリマーに容易に導入することができる。
【0056】
また、光重合性フッ素ポリマー41は、熱重合性フッ素ポリマー42に対して相溶化剤の役割を果たすようになる。すなわち、熱重合性フッ素ポリマー42は、重量平均分子量Mwの小さい光重合性フッ素ポリマー41と共に溶媒に投入されることで、溶媒に容易に溶解されるようになる。すなわち、本実施形態では、熱重合性フッ素ポリマー42の重量平均分子量Mwを大きくすることで、添加剤40全体の重量平均分子量Mwを大きくする一方、光重合性フッ素ポリマー41の重量平均分子量Mwを小さくすることで、添加剤40を溶媒に溶かしやすくしている。
【0057】
なお、添加剤40の含有率(中空シリカ粒子20、バインダ樹脂30、添加剤40、及び光開始剤の総質量に対する質量%)は1質量%より大きく7質量%以下となる。好ましくは2質量%以上7質量%以下、より好ましくは、4質量%以上6質量%以下となる。また、熱重合性フッ素ポリマー42の含有率(中空シリカ粒子20、バインダ樹脂30、添加剤40、及び光開始剤の総質量に対する質量%)は、2質量%以下となる。下限値は特に制限されないが、例えば0.5質量%以上が好ましい。また、熱重合性フッ素ポリマー42の含有率と光重合性フッ素ポリマー41の含有率との比は0.1以上0.7以下となる。より好ましくは、0.3以上0.5以下となる。これらの条件が満たされる場合に、樹脂膜10の特性が良好となる。
【0058】
光開始剤は、光重合を開始させるための材料であり、その種類は問われない。すなわち、本実施形態では、あらゆる光開始剤を使用することができる。ただし、光開始剤は、酸素阻害を受けにくく、表面硬化性が良いものが好ましい。
【0059】
<2.樹脂膜10の製造方法>
次に、樹脂膜10の製造方法について説明する。まず、中空シリカ粒子20と、光開始剤と、バインダ用モノマーと、添加剤40とを溶媒に投入、攪拌することで、コート液を生成する。溶媒の種類は特に限定されないが、沸点110℃以上のケトン系溶媒が好適に使用される。この溶媒は、各材料を安定して溶解することができ、かつ、光重合性フッ素ポリマー41及び熱重合性フッ素ポリマー42を容易にブリードアウトさせることができるからである。ついで、コート液を任意の基板に塗布(塗工)することで、塗工層を形成する。なお、塗布の方法は特に問われず、公知の方法が任意に適用される。このとき、光重合性フッ素ポリマー41及び熱重合性フッ素ポリマー42は、バインダ用モノマーからの反発力によってブリードアウトし、塗工層の表面に偏在する。ついで、各重合反応を開始させる。これにより、バインダ樹脂30が形成される一方、光重合性フッ素ポリマー41及び熱重合性フッ素ポリマー42は、塗工層の表面に配置された中空シリカ粒子20に結合する。これにより、樹脂膜10が形成される。
【0060】
このように、バインダ用モノマーが光重合性フッ素ポリマー41及び熱重合性フッ素ポリマー42を効果的にブリードアウトさせることができるので、本実施形態に係る樹脂膜10は、非常に簡単なプロセスで製造される。また、低屈折率層10aの表面に添加剤40が偏在するため、低屈折率層10aの表面に別途防汚シート等を貼り付ける必要がない。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
次に、本実施形態の実施例について説明する。実施例1では、以下の製法により樹脂膜10を製造した。
【0062】
バインダ用モノマーとして45質量%(質量部)のペンタエリスリトールトリアクリレート、50質量%の中空シリカ粒子(日揮触媒化成 スルーリア4320)、添加剤として1.8質量%の光重合性パーフルオロポリエーテル(PFPE)(信越化学工業 KY−1203)及び0.2質量%の熱重合性PFPE(信越化学工業 KY−108)、光開始剤として3質量%のイルガキュア184(長瀬産業株式会社製)を用意した。そして、これらの材料を8000質量%のメチルイソブチルケトン(MIBK)に投入、攪拌することで、コート液を作成した。
【0063】
ここで、中空シリカ粒子の平均粒径は50nm〜60nmであった。また、中空シリカ粒子の屈折率は1.25であった。また、ペンタエリスリトールトリアクリレートの表面張力は39.8であった。また、光重合性PFPEの重量平均分子量Mwは8000であり、オレイン酸転落角は5°であった。熱重合性PFPEの重量平均分子量Mwは17000であり、オレイン酸転落角は7°であった。なお、測定は上述した装置またはシミュレーションソフトにより行われた。
【0064】
ついで、コート液を基板上に塗布することで、塗工層を形成した。ついで、塗工層を110℃で約1分間乾燥処理した後に、窒素雰囲気化(酸素濃度1000ppm以下)で紫外線照射(メタルハライドランプ:光量1000mJ/cm)を5秒間行うことにより硬化させた。これにより、樹脂膜を作成した。樹脂膜の厚さは約110nmとなった。
【0065】
(実施例2〜14、比較例1〜20)
各材料の含有率、光重合性樹脂の種類、熱重合性樹脂の種類、及びバインダ用モノマーの種類を変更したほかは、実施例1と同様の処理を行うことで、実施例2〜14、及び比較例1〜20に係る樹脂膜を作成した。ここで、各材料の含有率及びバインダ用モノマーの種類を表1にまとめて示す。
【0066】
【表1】
【0067】
アクリル樹脂の項目中、※1は水素結合形成基(具体的には水酸基)を有しないバインダ用モノマー、すなわちペンタエリスリトールテトラアクリレート(38.9)を示す。※2は、水酸基含有のバインダ用モノマー、すなわちイソシアヌレートジアクリレート(40.2)を示す。※3は、水酸基含有のバインダ用モノマー、すなわちジペンタエリスリトールペンタアクリレート(39.7)を示す。※4は、光重合性シリコーン X−22−164E(信越化学工業社製)を示す。※5は、光重合性フッ素樹脂、すなわちオプツールDAC(ダイキン工業社製)を示す。※6は、熱重合性フッ素樹脂、すなわちKY−164(信越化学工業社製)を示す。※7は、水素結合形成基(具体的には水酸基)を有しないバインダ用モノマー、すなわちエトキシ化(n=6)トリメチロールプロパントリアクリレート(38.9)を示す。※8は、水素結合形成基(具体的には水酸基)を有しないバインダ用モノマー、すなわちプロポキシ化(n=6)トリメチロールプロパントリアクリレート(34.1)を示す。無印は、水酸基含有のバインダ用モノマー、すなわちペンタエリスリトールトリアクリレート(39.8)を示す。各バインダ用モノマーに付された数値(カッコ内の数値)は各バインダ用モノマーの表面張力を示す。
【0068】
(試験)
つぎに、各実施例及び比較例に係る樹脂膜について、以下の試験を行った。
【0069】
(ワイプ擦り試験)
樹脂膜をコートした基板の表面を垂直方向に500g/cmの荷重をかけながらワイプにて100往復の摩耗を行った。ワイプは、日本製紙クレシア社製のキムワイプワイパーS−200を使用した。
【0070】
(消しゴム擦り試験)
樹脂膜をコートした基板の表面を垂直方向に500g/cmの荷重をかけながら消しゴムにて100往復の摩耗を行った。消しゴムは、株式会社トンボ鉛筆社製のMONOPE−04Aを使用した。
【0071】
(評価)
初期(コットン擦り試験、及び消しゴム擦り試験を行う前)、コットン擦り試験後、消しゴム擦り試験後のそれぞれの樹脂膜について、以下の評価を行った。
【0072】
(接触角評価)
全自動接触角計DM700(協和界面科学株式会社製)を使用し、樹脂膜をコートした基板上に2μlの純水を滴下し接触角を測定した。
【0073】
(マジック拭き取り評価)
樹脂膜をコートした基板の表面(すなわち、樹脂膜の表面)にマジックペンにて約3cm線を描き、1分間放置した。その後、キムワイプにて円を描くようにふき取った。マジックペンは、ZEBRA社製マッキー黒の細を使用し、キムワイプはワイプ擦り試験と同様のものを用いた。その後、目視にて拭き残りの有無を確認した。拭き残りなしをOKとし、拭き残りありをNGとした。
【0074】
(指紋付着性及び拭き取り評価)
樹脂膜をコートした基板の表面(すなわち、樹脂膜の表面)に指先の指紋を約200g荷重になるように押しつけた。その後、指紋の有無を目指で確認した。押しつけた部分の指紋が全面はっきり確認できる場合を「多い」、押しつけた部分の指紋が一部確認できる場合を「やや多い」、押しつけた部分の指紋がうすいが確認できる場合を「少ない」と評価した。その後、指紋をキムワイプにて円を描くようにふき取った。キムワイプはワイプ擦り試験と同様のものを用いた。その後、目視にて拭き残りの有無を確認した。拭き残りなしをOKとし、拭き残りありをNGとした。評価結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
実施例と比較例とを比較すると、実施例は、初期特性のみならず、擦り試験後の特性も良好な結果が得られた。一方、比較例では、比較例16を除き初期特性は良好であるものの、擦り試験後の結果は良くなかった。したがって、各材料の含有率は上述した範囲が好ましいことがわかる。
【0077】
以上により、本実施形態によれば、樹脂膜10は、低屈折率層10aの表面に分布した中空シリカ粒子に結合し、かつ、バインダ樹脂30と反発する添加剤40とを備える。したがって、添加剤40がバインダ樹脂30による反発力により効果的にブリードアウトするので、樹脂膜10は、添加剤40を低屈折率層10aの表面に偏在させることができる。これにより、樹脂膜10は、防汚性及び滑り性を向上することができ、かつ、膜強度を向上させることができる。
【0078】
さらに、バインダ樹脂30は、水素結合形成基を有するので、添加剤40を効果的にブリードアウトさせることができる。
【0079】
また、バインダ樹脂30は、水素結合形成基として水酸基を有するので、添加剤40を効果的にブリードアウトさせることができる。
【0080】
さらに、熱重合性フッ素ポリマー42の重量平均分子量は、光重合性フッ素ポリマー41の重量平均分子量よりも大きい。したがって、添加剤40は、効果的にブリードアウトすることができる。また、光重合性フッ素ポリマー41が相溶化剤として機能するので、添加剤40の溶媒への溶解性が向上する。
【0081】
さらに、熱重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量は10000以上であり、光重合性フッ素ポリマーの重量平均分子量は10000未満であるので、添加剤40は、効果的にブリードアウトすることができる。また、光重合性フッ素ポリマー41が相溶化剤として機能するので、添加剤40の溶媒への溶解性が向上する。
【0082】
また、樹脂膜10は、各材料が溶解したコート液を塗布し、重合反応を開始させるだけで作成可能であるので、容易に作成される。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0084】
10 樹脂膜
20 中空シリカ粒子
30 バインダ樹脂
40 添加剤
41 光重合性フッ素ポリマー
42 熱重合性フッ素ポリマー

図1