特許第5965810号(P5965810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965810
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】端子及び端子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/04 20060101AFI20160728BHJP
   H01R 43/24 20060101ALI20160728BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   H01R13/04 A
   H01R43/24
   H01R13/52 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-220151(P2012-220151)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-72169(P2014-72169A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】福島 宏高
(72)【発明者】
【氏名】杉山 大介
(72)【発明者】
【氏名】澤田 敦
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−018995(JP,U)
【文献】 特開2000−150040(JP,A)
【文献】 特開2011−048983(JP,A)
【文献】 米国特許第7264494(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/04
H01R 13/52
H01R 43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に連通空間部が形成された端子接触部を有する導電性の端子本体と、
前記端子接触部の先端より前方に突出する先端絶縁部と、前記端子接触部の後端側に配置され、前記端子本体を固定する端子保持部と、前記連通空間部に配置され、前記先端絶縁部と前記端子保持部間を連結する連通樹脂部とを有する絶縁性の絶縁部材とを備え
前記端子保持部は、外周側に弾性部材が嵌合する嵌合部を有し、
前記嵌合部は、前後方向に間隔を置いて配置された一対のリブによって囲まれた嵌合凹部であり、前記嵌合凹部に前記弾性部材が装着され、後側の前記リブと前記弾性部材が前記端子保持部が配置される端子保持孔の内面に密着されたことを特徴とする端子。
【請求項2】
軸方向に連通空間部が形成された端子接触部を有する導電性の端子本体をインサート部品として、
前記端子接触部の先端より前方に突出する先端絶縁部と、前記端子接触部の後端側に配置され、前記端子本体を固定する端子保持部と、前記連通空間部に配置され、前記先端絶縁部と前記端子保持部間を連結する連通樹脂部とを有する絶縁性の絶縁部材をインサート射出成形し、
前記端子保持部は、前後方向に間隔を置いて配置された一対のリブによって囲まれた嵌合凹部であり、前記嵌合凹部に前記弾性部材を装着し、
後側の前記リブと前記弾性部材を前記端子保持部が配置される端子保持孔の内面に密着させることを特徴とする端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に絶縁部を備えた端子及び端子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車には、充電スタンド側等の充電コネクタと接続して充電を受ける充電インレット装置が搭載される(例えば、特許文献1参照)。充電インレット装置には、オス端子が内蔵される。
【0003】
図4(a)、(b)には、従来のオス端子100が示されている。このオス端子100は、相手端子(図示せず)に接触される端子接触部111を有する導電性の端子本体110と、この端子本体110に固定され、端子接触部111の先端に設けられる絶縁性(樹脂製)の先端絶縁部120とから構成される。端子接触部111の先端には、前方に延びるくびれ部112及び鍔部113が突設されている。先端絶縁部120には、軸方向に貫通する段付き貫通孔121が設けられ、この先端絶縁部120の後端側には、くびれ部112に係合される係合部122が形成されている。
【0004】
上記構成では、オス端子100を組み立てる際、端子本体110の端子接触部111先端から前方に突出する鍔部113を先端絶縁部120の段付き貫通孔121に挿入すると共に、くびれ部112に先端絶縁部120の後端側の係合部122を係合させることにより、端子本体110に先端絶縁部120を固定する。これにより、ユーザがオス端子100の導電箇所に直接触手するのを絶縁性の先端絶縁部120で防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−275653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来例では、端子本体110のくびれ部112と先端絶縁部120の係合部122間の係合強度を確保する必要から、端子本体110及び先端絶縁部120共に高い製作精度が必要となるため、部品コストの削減を図ることが困難である。特に、端子本体110のくびれ部112は、切削加工で製作する必要があり、切削加工では小さな形状の加工が難しいため、オス端子100の小型化を図ることが難しい。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、先端絶縁部の端子本体への保持強度を向上させることができると共に、部品コストの低減を図ることができる端子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軸方向に連通空間部が形成された端子接触部を有する導電性の端子本体と、前記端子接触部の先端より前方に突出する先端絶縁部と、前記端子接触部の後端側に配置され、前記端子本体を固定する端子保持部と、前記連通空間部に配置され、前記先端絶縁部と前記端子保持部間を連結する連通樹脂部とを有する絶縁性の絶縁部材とを備え、前記端子保持部は、外周側に弾性部材が嵌合する嵌合部を有し、前記嵌合部は、前後方向に間隔を置いて配置された一対のリブによって囲まれた嵌合凹部であり、前記嵌合凹部に前記弾性部材が装着され、後側の前記リブと前記弾性部材が前記端子保持部が配置される端子保持孔の内面に密着されたことを特徴とする端子である。
【0010】
他の本発明は、軸方向に連通空間部が形成された端子接触部を有する導電性の端子本体をインサート部品として、前記端子接触部の先端より前方に突出する先端絶縁部と、前記端子接触部の後端側に配置され、前記端子本体を固定する端子保持部と、前記連通空間部に配置され、前記先端絶縁部と前記端子保持部間を連結する連通樹脂部とを有する絶縁性の絶縁部材をインサート射出成形し、前記端子保持部は、前後方向に間隔を置いて配置された一対のリブによって囲まれた嵌合凹部であり、前記嵌合凹部に前記弾性部材を装着し、後側の前記リブと前記弾性部材を前記端子保持部が配置される端子保持孔の内面に密着させることを特徴とする端子の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、先端絶縁部と端子保持部とこれらを連結する連通樹脂部を有する絶縁部材は、端子接触部の連通空間部を介して連続する部材であるため、絶縁部材は端子本体をインサート部品としてインサート射出成形によって形成できる。従って、従来のように高精度な切削加工が必要なくびれ部と係合部を形成する必要がないと共に、端子本体は、切削加工でなくプレス加工で製作することができるため、部品コストの低減を図ることができる。先端絶縁部は、端子接触部の内部を通る連通樹脂部を介して端子保持部に一体に形成されるため、従来例のくびれ部や係合部のような脆弱な部分がなく、先端絶縁部の端子本体への保持強度が向上する。
【0012】
また、端子は、先端絶縁部と共に一体に形成される端子保持部を有するため、部品点数の削減、部品コストの低減、組立加工費の低減等になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を示し、充電インレット装置の断面図である。
図2】本発明の一実施形態を示し、オス端子の斜視図である。
図3】本発明の一実施形態を示し、オス端子の断面図である。
図4】一従来例を示し、(a)は端子の断面図、(b)は(a)のB部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1図3は本発明の一実施形態である。この実施形態は、充電インレット装置の端子に本発明に係る端子を適用したものである。以下、説明する。
【0016】
図1において、充電インレット装置1は、車両に設置されている。充電インレット装置1は、充電スタンド等の充電コネクタ(図示せず)に嵌合され、充電コネクタを介して受電する。
【0017】
充電インレット装置1は、車体外側に向かって充電口13を開口して車体パネルに固定されたインレットハウジング10と、このインレットハウジング10の内部に配置されたインナーハウジング20と、インレットハウジング10の後方部(車体内側)に嵌合されたリアハウジング30とからなるハウジング群を備えている。
【0018】
インレットハウジング10は、円筒状の外装ケース部11と、この外装ケース部11の内周スペースに配置されたコネクタハウジング部12とを有する。外装ケース部11の開口が充電口13である。コネクタハウジング部12には、複数の端子収容孔14が設けられている。この端子収容孔14に、本発明に係る端子であるオス端子40の端子接触部42がそれぞれ収容されている。オス端子40は、端子収容孔14の挿入口14aより挿入されるメス端子(図示せず)に接続される。尚、図1には、1つのオス端子40のみが図示されている。
【0019】
インナーハウジング20には、各端子収容孔14に開口する位置に端子保持孔21が設けられている。この各端子保持孔21にオス端子40がそれぞれ保持されている。オス端子40の詳しい構成は、下記に詳述する。
【0020】
リアハウジング30は、インレットハウジング10の後方側を覆っている。リアハウジング30には、電線引出用フード部31が設けられている。電線引出用フード部31内には、電線引出用端子50の他端側が配置されている。リアハウジング30は、電線引出用端子50をインサート部品としてインサート射出成形によって形成されている。電線引出用端子50の一端側は、中継電線51を介してオス端子40に接続されている。つまり、リアハウジング30の電線引出用ハウジング31に電線側コネクタ(図示せず)がコネクタ嵌合され、この電線側コネクタから引き出された電線が車体側に配策される。
【0021】
次に、オス端子40の構成を説明する。図2及び図3に詳しく示すように、オス端子40は、導電性の端子本体41と、端子本体41に固定された絶縁樹脂部45とから構成されている。端子本体41は、所定形状の導電性プレートをプレス加工で折り曲げることによって形成されている。端子本体41は、相手端子のメス端子(図示せず)が接触する端子接触部42と、電線接続部43と、これらを連結する繋ぎ部44(図5に示す)とから構成されている。端子接触部42は、軸方向に連通空間部である貫通孔42aが形成された筒状に形成されている。電線接続部43は、一対の加締片43aを有し、一対の加締片43aによって中継電線51が加締め接続されている。
【0022】
絶縁部材45は、絶縁性樹脂より形成されている。絶縁部材45は、端子接触部42の先端より前方に突出する先端絶縁部46と、端子接触部42の後端側である繋ぎ部44の外周に配置された端子保持部47と、端子接触部42の貫通孔42aに配置され、先端絶縁部46と端子保持部47間を連結する連通樹脂部48とから構成されている。
【0023】
端子保持部47は、大略円柱形である。端子保持部47の外周の両端には、リブ47aが全周に亘って突設されている。この一対のリブ47aによって、端子保持部47の外周には嵌合部である嵌合凹部49が設けられている。この嵌合凹部49には、弾性部材である大略筒状のパッキン60が装着されている。このパッキン60装着の端子保持部47がインナーハウジング20の端子保持孔21に嵌合されることによって、オス端子40がインナーハウジング20に固定されている。詳細には、端子保持部47の後側のリブ47aとパッキン60が端子保持孔21の内面に密着している(図1参照)。これにより、オス端子40は、パッキン60の弾性変形によって軸芯の向きをインナーハウジング20に対して変位できる(図1の矢印参照)。オス端子40は、メス端子(図示せず)の軸芯が傾斜して挿入される場合に、調芯できる。
【0024】
このような構成のオス端子40は、内部に軸方向の貫通孔42aが形成された筒状の端子接触部42を有する導電性の端子本体41をインサート部品として、先端絶縁部46と端子保持部47と連通樹脂部48を有する絶縁性の絶縁部材45をインサート射出成形して作製する。
【0025】
上記構成において、ユーザが端子収容孔14に指等を挿入しても先端絶縁部46に接触するが、その奥に位置する導電性部材である端子本体41に指等を直接接触するのを防止できる。
【0026】
以上説明したように、先端絶縁部46と端子保持部47とこれらを連結する連通樹脂部48を有する絶縁部材45は、端子接触部42の貫通孔42aを介して連続する部材であるため、上記したように、絶縁部材45は端子本体41をインサート部品としてインサート射出成形によって形成できる。従って、従来のように高精度な切削加工が必要なくびれ部と係合部を形成する必要がないと共に、端子本体41は、切削加工でなくプレス加工で製作することができるため、部品コストの低減を図ることができる。先端絶縁部46は、端子接触部42の内部を通る連通樹脂部48を介して端子保持部47に一体に形成されるため、従来例のくびれ部や係合部のような脆弱な部分がなく、先端絶縁部46の端子本体41への保持強度が向上する。
【0027】
また、オス端子40は、先端絶縁部46と共に一体に形成される端子保持部47を有するため、部品点数の削減、部品コストの低減、組立加工費の低減等になる。
【0028】
先端絶縁部46は、インサート射出成形であるため、先端絶縁部46の外周面を端子接触部42の外周面に精度良く面一、若しくは、若干低く設定できる。これにより、嵌合されたメス端子(図示せず)の引抜き過程で端子接触部42の外周面と先端絶縁部46の外周面の境界にできる段差によってメス端子が引っ掛かるような事態を確実に防止できる。
【0029】
端子保持部47は、外周側にパッキン60が嵌合する嵌合凹部49を有する。従って、オス端子40は、インナーハウジング20に対して端子保持部47を介して揺動自在に保持できるため、調芯機能を有するオス端子40にできる。
【0030】
上記実施形態では、先端絶縁部46と一体に形成する端子保持部47は、オス端子40をハウジングに対して揺動自在とするための部位であるが、オス端子40をハウジングに移動不能に固定する場合には、端子保持部がハウジング自体であっても良い。つまり、オス端子40は、先端絶縁部46とハウジングを一体に形成したものであっても良い。
【0031】
上記実施形態では、連通空間部は、貫通孔42aにて形成されているが、端子接触部42の先端側と後端側を貫通するように軸方向に沿って溶融樹脂を流すことができる部位であれば良い。
【0032】
上記実施形態では、本発明に係る端子を充電インレット装置1のオス端子40に適用した場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、それ以外の端子に適用することができることはもちろんである。
【符号の説明】
【0033】
40 オス端子(端子)
41 端子本体
42 端子接触部
42a 貫通孔(連通空間部)
45 絶縁部材
46 先端絶縁部
47 端子保持部
48 連通樹脂部
49 嵌合凹部(嵌合部)
60 パッキン(弾性部材)
図1
図2
図3
図4