(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の容器の軽量化、リサイクル性などの観点から、容器の薄肉化が望まれているが、上記特許文献1に記載の容器の製造方法では、薄肉の容器の場合には十分な樹脂溜まりを形成できず、得られた容器について高い密封性が得られない場合がある。
【0006】
本発明は、薄肉の部材でもヒートシールによる樹脂溜まりを形成でき、ヒートシール部分の接着性の強弱を適宜設定可能
な容器、包装容器、
容器の製造方法、および、包装容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の
容器は、
被包装物収納用の開口部周縁から外側に突設されるフランジ部を有する容器であって、当該容器は、3層以上の積層構造を有する多層シート
が熱成形されてなり、
前記多層シートの表面層に隣接した層は、厚さ寸法が35μm以上100μm以下であり、当
該層を構成する材料
の165℃における損失正接tanδの値が0.18以上0.50以下であることを特徴とする。
本発明では、多層シートの
表面層に隣接した層を、厚さ寸法35μm以上100μm以下、165℃における損失正接tanδの値を0.18以上0.50以下とするため、当該多層シートを薄肉に形成して
熱成形により得られた容器にヒートシールする場合でも、当該層の材料が良好に流動してヒートシールの縁に樹脂溜まりを適宜の大きさで形成でき、樹脂溜まりの大小などにより
樹脂溜まりが設けられた縁側におけるヒートシール部分の接着性の強弱を適宜設定できる。
ここで、厚さ寸法が35μmより薄くなるとヒートシールの縁に樹脂溜まりを形成しづらくなるという不都合が生じ、100μmより厚くなると製膜時のコスト増加という不都合を生じるため、上記範囲に設定される。また、tanδの値が0.18より小さくなるとヒートシールの縁に樹脂溜まりを形成しづらくなるという不都合を生じ、0.50より大きくなると共押出成形などの方法により多層シートの外観異常が発生し、好適に多層シートを製造できないため、上記範囲に設定される。
なお、損失正接tanδの測定方法および測定装置は、動的粘弾性測定装置(DMS)である。そして、構成材料である樹脂の損失正接tanδは、使用する原料の配合によって制御することができる。
【0008】
ここで、上記厚さ寸法および損失正接tanδの層以外の他の層は、特に限定されるものではなく、各種材料を用いることができる。
上記の各種材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)およびこれらのブレンド材料などの材料を好適に用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などが挙げられ、ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられる。また、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル(PAN)など、酸素を遮断する樹脂を使用した層を設けることで、酸素透過遮断性を備えた積層シートを提供することもできる。
さらに、積層構造が4層以上を有する場合には、上記厚さ寸法および損失正接tanδの層の他に、上記の材料からなる層を組み合わせることで、様々な積層シートを提供することができる。なお、さらに上記厚さ寸法および損失正接tanδの層を設けることもできる。
【0009】
そして、本発明では、前記の材料からなる層が表面層ではない構成と
している。
本発明では、本発明の少なくとも一層の材料からなる層が表面に面する表面層でない構成とすることで、容
器に成形された際のヒートシールした部分の易剥離性を損なわず、樹脂溜まりが設けられた側の
耐剥離強度が向上して、密封性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明では、前記の材料からなる層が表面層に隣接した層である構成と
している。
本発明では、本発明の少なくとも一層の材料からなる層が表面に面する表面層に隣接した層である構成とすることで、ヒートシールされた際の表面に樹脂溜まりを形成し易くすることができる。
【0011】
本発明の
容器は、
被包装物収納用の開口部周縁から外側に突設されるフランジ部を有する容器であって、当該容器は、剥離層、表下層、基材層をこれらの順で備えた多層シート
が熱成形されてなり、前記表下層は、厚さ寸法が35μm以上100μm以下であり、165℃における損失正接tanδの値が0.18以上0.50以下であることを特徴とする。
本発明では、剥離層、表下層、基材層を順に備えた多層シートにおける表下層を、厚さ寸法35μm以上100μm以下、165℃における損失正接tanδの値を0.18以上0.50以下とするため、当該多層シートを薄肉に形成して
熱成形により得られた容器にヒートシールする場合でも、ヒートシールの縁に樹脂溜まりを形成でき、樹脂溜まりが形成された側の
耐剥離強度が向上して、容
器の密封性を向上させることができる。
【0012】
そして、本発明では、バリア層をさらに備えている構成とすることが好ましい。
本発明では、バリア層を設けることで、外部の酸素や水分と確実に隔離でき、各種封入材料に対応する包装袋に利用できる。
【0013】
また、本発明では、厚さ寸法が、200μm以上2000μm以下である構成とすることが好ましい。
本発明では、厚さ寸法を200μm以上2000μm以下とすることで、容
器として必要最小限の剛性を維持しつつ、使用する材料が多くなることによる製造コスト(原料費)の上昇を抑制することができる。
ここで、厚さ寸法が200μmより薄くなると容
器としての剛性が下がるという不都合を生じるおそれがあり、厚さ寸法が2000μmより厚くなると多くの材料が必要となって製造コスト(原料費)が上がるという不都合を生じるおそれがあるため、上記範囲に設定される。
【0015】
そして、本発明では、前記多層シートを加熱により成形して
容器としている。
本発明では、多層シートの成形として加熱を利用するので、ヒートシールの縁に樹脂溜まりを形成でき、樹脂溜まりが形成された側の
耐剥離強度が向上して
、本発明の
多層シートを用いて製造した容
器の密封性を向上させることができる。
本発明の
容器に用いる多層シートは、前述した各層を構成する材料を用いて共押出成形、ラミネート加工等によって得ることができる。ラミネート加工としては、例えばエキストルージョンラミネート、ホットメルトラミネート、ドライラミネート、ウエットラミネート等の方法を用いることができる。
本発明の
容器に用いる多層シートは、真空成形、圧空成形等の成形方法により、カップ状やトレー状など任意の形状に成形される。用途は特に限定されないが、例えば、ゼリー容器、プリン容器、内容物の色彩を見せる容器等に好適に用いることができる。
【0017】
そして、本発明では、被包装物収納用の開口部周縁から外側に突設されるフランジ部を有する容器
の構成と
している。
本発明では、被包装物収納用の開口部周縁から外側に突設されるフランジ部を有する容器
の構成とすることで、フランジ部上で例えば蓋材とシールされた際、樹脂だまり形成による密封性を発現することができる。
【0018】
また、本発明では、前記容
器の形状は、カップ状あるいはトレー状である構成とすることが好ましい。
本発明では、容
器の形状をカップ状あるいはトレー状とすることで、一般的な充填シール装置でヒートシールを行うことができる。
【0019】
本発明の包装容器は、蓋材が容
器のフランジ部において接着された包装容器であって、前記容
器が本発明の容器であることを特徴とする。
本発明では、蓋材がフランジ部において接着される容
器に、本発明の容器を用いているので、薄肉の容
器でもヒートシールの縁に樹脂溜まりを形成でき、樹脂溜まりが形成された側の
耐剥離強度が向上して、密封性を向上させることができる。
そして、本発明の容器の製造方法は、被包装物収納用の開口部周縁から外側に突設されるフランジ部を有する容器を製造する製造方法であって、当該容器は、3層以上の積層構造を有し、表面層に隣接した層の厚さ寸法が35μm以上100μm以下であり、当該層を構成する材料の165℃における損失正接tanδの値が0.18以上0.50以下である多層シートを熱成形してなることを特徴とする。
また、本発明の容器の製造方法は、被包装物収納用の開口部周縁から外側に突設されるフランジ部を有する容器を製造する製造方法であって、当該容器は、剥離層、表下層、基材層をこれらの順で備え、前記表下層の厚さ寸法が35μm以上100μm以下であり、前記表下層を構成する材料の165℃における損失正接tanδの値が0.18以上0.50以下である多層シートを熱成形してなることを特徴とする。
【0020】
本発明の包装容器の製造方法は、本発明の包装容器を製造する製造方法であって、前記容
器のフランジ部上面に蓋材を重ね、前記フランジ部上面に対して、内周縁にR加工されて断面が曲面状の曲面部が形成された環状シール盤であって、外周縁が当該環状シール盤の先端より蓋材に遅れて接するようにされた形状を、少なくとも一部に有する環状シール盤を前記蓋材上部から押圧し、前記フランジ部の前記環状シール盤の内周縁が接する位置の近傍に、前記容
器の表面にコブ状の樹脂溜まり部を形成しながら、前記フランジ部に現れる前記容
器と、前記蓋材とを環状にヒートシールすることを特徴とする。
本発明では、包装容器を薄肉に成形しても、ヒートシールにより十分な樹脂溜まりを形成でき、ヒートシールの高い
耐剥離強度が得られ、密封性が得られる。
本発明においてシール盤とは、被シール面に圧力、温度を掛けて溶接する盤状の器具をいう。
【0021】
そして、本発明では、前記コブ状の樹脂溜まり部が容
器の表面の少なくとも2層の構成樹脂からなる構成とすることが好ましい。
本発明では、容
器の表面の少なくとも2層の構成樹脂からコブ状の樹脂溜まり部を形成することで、開封性と密封性とを両立することができる。
【0022】
また、本発明では、前記コブ状の樹脂溜まり部がさらに蓋材のシール層の構成樹脂を含む構成とすることが好ましい。
本発明では、蓋材のシール層の構成樹脂をさらに含んでコブ状の樹脂溜まり部を形成することで、開封時に蓋材を剥がしやすくすることができる。
【0023】
そして、本発明では、前記環状シール盤は、環状のシール部と基盤部とを備え、前記シール部は、内周縁に曲面加工された曲面部と、当該曲面部に連続して設けられ外周縁側に被ヒートシール面に対して傾斜する斜面部とを備えることが好ましい。また、前記曲面部の曲率半径Rは、前記内周縁から外周縁までを距離Hとしたとき、0.5Hより大きい構成とすると、薄肉の部材をヒートシールする場合でも、広い面積に渡って樹脂を流動させることでシール部の内周縁に対応するヒートシール部分に樹脂溜まりを形成でき、樹脂溜まりが設けられた側の
耐剥離強度が向上して、密封性の高いヒートシールを得ることが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、本発明の多層シートとして包装容器の容器本体に成形する構成を例示するが、この限りではない。
【0027】
[多層シートの構成]
図1において、10は多層シートで、多層シート10は、表面層11と、この表面層に隣接した中間層12と、基層13の3層が順次積層された積層体である。
【0028】
これら3層のうち、少なくとも1層の厚さ寸法が35μm以上100μm以下であり、165℃における損失正接tanδの値が0.18以上0.50以下、好ましくは0.20以上0.40以下、特に好ましくは0.23以上0.35以下である。
ここで、厚さ寸法が35μmより薄くなるとヒートシールの縁に樹脂溜まりを形成しづらくなるというという不都合があり、100μmより厚くなると製膜時のコスト増加という不都合を生じるため、上記厚さ寸法に設定される。また、165℃における損失正接tanδの値が0.18より小さくなるとヒートシールの縁に脂溜まりを形成しづらくなるという不都合があり、0.50より大きくなると共押出成形などの方法により多層シートの外観異常が発生し、好適に多層シートを製造できないため、上記値の範囲に設定される。
ここで、tanδの値は、例えば、ポリプロピレンを主成分として、ポリエチレンやエラストマーの配合比を変えたり、ホモポリプロピレンとランダムポリプロピレンとの配合割合を変えたり、するなどにより変更することができる。
より具体的には、ホモポリプロピレンの少なくとも一部をランダムポリプロピレンに変更するなどして、ホモポリプロピレンに対するランダムポリプロピレンの配合割合を多くすることで、tanδの値を上げることができる。また、ポリプロピレンよりもtanδの値が高いポリエチレンやエラストマーを添加することで、tanδの値を上げることができる。さらに、通常のポリプロピレンよりも立体規則性の高いホモポリプロピレンを用いることでtanδの値を下げることができる。
【0029】
なお、本実施形態の多層シート10を、後述する易開封性容器の容器本体に成形して用いる場合、上記所定の厚さ寸法および165℃における損失正接tanδの値を示す材料からなる層は、表面層11ではなく、表面層1
1に隣接した層、本実施形態では中間層12とすることが、開封性を維持したまま、ヒートシール部分における
耐剥離強度を樹脂溜まりの大小により適宜設定でき、ヒートシール部分の接着性を適宜設定でき、容器の場合には密封性を向上することができるという理由から好ましい。
【0030】
そして、多層シート10を後述する容器本体に利用する場合、多層シート10の表面層11を構成可能な樹脂は、例えば、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体やスチレングラフトプロピレン樹脂の少なくとも一つを、ポリプロピレン系樹脂にブレンドして得られた樹脂組成物が挙げられる。この場合にあっては、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体やスチレングラフトプロピレン樹脂は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは10重量部以上50重量部以下、特に好ましくは15重量部以上40重量部以下で添加するようにすればよい。
【0031】
また、多層シート10を後述する容器本体に利用する場合、基層13は容器本体の外部に現れる層となる層であり、構成材料としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等のオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂等の材料、およびこれらのブレンド材料の単層または積層体や、また、ガスバリアー性を付与すべく、例えばエチレンビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等の樹脂材料やアルミ蒸着等で形成されたガスバリアー層を形成する樹脂等を使用することができる。
【0032】
[易開封性容器の構成]
次に、上記多層シート10を用いた易開封性容器の構成について、図面を参照して説明する。
図2は、本発明の易開封性容器1の一態様を示した概略図であり、
図2(A)は蓋材3で密封された状態、
図2(B)は開封開始部4から蓋材3を開封した状態をそれぞれ示している。また、
図3は、
図2の開封開始部4の断面図である。
【0033】
本発明の包装容器である易開封性容器1は、
本発明の容器である容器本体2と
、蓋材3とを備え、容器本体2の開口部24に対して蓋材3を載置して、容器本体2の開口部24の周縁に配設されたフランジ部25と蓋材3とをヒートシールして、環状のヒートシール部26(
図3に示す環状シール盤7で形成されるヒートシール部262と環状シール盤7aで形成されるヒートシール部261)が形成され、
図2(A)に示すように、易開封性容器1の内部が密封状態とされる。
一方、密封状態の易開封性容器1を開封するには、
図4(B)に示すように(
図7,8参照)、易開封性容器1の隅角に設けられた開封開始部4において蓋材3を上部(
図2(B)の矢印方向)に引き上げるようにすれば、易開封性容器1が簡便に開封される。
【0034】
図2および
図3に示される容器本体2は、上記多層シート10を成形、具体的には加熱により成形してなるもので、多層シート10の表面層10が剥離層21に、中間層12が表下層22に、基層13が基材層23に相当し、剥離層21、表下層22、基材層23の3層がこれらの順で積層された積層体である。
また、当該容器本体2は、所定の深さを有する略長方形のトレー形状であって、略長方形状の開口部24を有し、当該開口部24の周縁には、外側に張り出すようにフランジ部25が配設されている。
ここで、本実施形態においては、後記する
図7に示すが、容器本体2の剥離層21が凝集破壊される凝集剥離により開封される。
【0035】
また、容器本体2のフランジ部25の厚さ寸法は、好ましくは200μm以上2000μm以下、より好ましくは250μm以上600μm以下、特に好ましくは300μm以上500μm以下とする。
ここで、フランジ部の厚さ寸法が200μmより薄くなると容器としての剛性が下がるという不都合を生じるおそれがあり、2000μmより厚くなると、多くの材料が必要となって製造コスト(原料費)が上がるという不都合を生じるおそれがあることから、上記範囲に設定される。
【0036】
蓋材3は、本実施形態にあっては、易開封性容器1の外部に現れる基材層としての外層32と、容器本体2の剥離層21とヒートシールされるシーラント層であるシール層31からなる積層体である。
容器本体2の剥離層21とヒートシールされる蓋材3のシール層31は、容器本体2の剥離層21が凝集破壊して剥離する開封態様で、当該剥離層21を構成する樹脂として前記した樹脂組成物を採用する場合にあっては、ランダムポリプロピレン(RPP)やブロックポリプロピレン(BPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリエチレン等を使用することができる。
また、蓋材3を構成する外層32は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ナイロンフィルム(O−Ny)等を使用することができる。
【0037】
なお、このような剥離層21を容器本体2に、またシール層31を蓋材3に採用して両者をヒートシールした場合にあっては、両層21,31が融着する一方、開封の際には、応力に対して弱い容器本体2の剥離層21が凝集剥離して、開封が良好に行われることになる。
【0038】
そして、易開封性容器1は、
図3に示すように、フランジ部25上に有るヒートシール部26の内周縁近傍X(
図3参照)に、容器本体2の表下層22、剥離層21および蓋材3のシール層31が、容器本体2の開口部24方向に押し出されるようにして、コブ状の樹脂溜まり部6が形成されている。
図3に示すように、樹脂溜まり部6は、容器本体2の剥離層21の樹脂溜まり61、表下層22の樹脂溜まり62、および蓋材3のシール層31の樹脂溜まり63が集まって形成されている。容器本体2の剥離層21が凝集剥離される開封形態の易開封性容器1にこのような樹脂溜まり部6を形成させることにより、包装容器として高い密封性を備えた上で、凝集剥離による開封形態を採用して易開封性を良好な状態で維持でき、当該樹脂溜まり部6における蓋材3と容器本体2のフランジ部25との切断が簡便に行われるとともに、内圧による応力がかかる向きと凝集破壊による開封しやすい向きを異ならせることにより、密封性の向上を実現することとなる。
【0039】
また、本発明においては、容器のフランジ部25上面にある環状のヒートシール部26の内周縁近傍Xの全周に前記した樹脂溜まり部6があって、易開封性容器1の開封開始部4にある環状のヒートシール部26の外周縁はフラット、若しくは、内周縁近傍Xにある樹脂溜まり部6より小さい樹脂溜まりしかなく、容器本体2の開封開始部4以外の部分には、前記環状のヒートシール部26の外周縁全周にも、内周縁近傍Xにある前記樹脂溜まり部6と略同じ大きさの図示しない樹脂溜まり部がある易開封性容器1が、高密封性、易開封性、および、開封開始部4以外からの蓋材3の開封防止性に優れる点で好ましい。
【0040】
ここで、易開封性容器1を製造するにあって、
図3に示すような環状シール盤7,7aを備えたシール装置70を用いる。容器本体2のフランジ部25と蓋材3とを融着して易開封性容器1を密封状態とするには、容器本体2のフランジ部25に蓋材3を重ね合わせ、この蓋材3の上面から、シール装置70の加熱状態の環状シール盤7(
図4参照)を押圧することによりヒートシールが実施されるのであるが、前記したような、開封開始部4のヒートシール部26の内周縁近傍Xにコブ状の樹脂溜まり部6を形成するには、例えば、下記のような方法を用いればよい。
【0041】
図4は、本実施形態の易開封性容器1を製造する場合における開封開始部4のシール工程を示した模式図である。
容器本体2のフランジ部25と蓋材3とのヒートシールは、
図4に示すように、容器本体2のフランジ部25に蓋材3を重ね合わせ、当該蓋材3の上部から、加熱状態の環状シール盤7を
図4中の矢印方向に押圧することにより実施され、これにより、容器本体2のフランジ部25に現れた剥離層21と蓋材3のシール層31が融着される。
【0042】
また、
図5は、ヒートシール時における環状シール盤7とフランジ部25の状態を示した部分断面図であり、また、
図6は、環状シール盤7の部分拡大断面図である。
本実施形態の易開封性容器1を製造するために使用される環状シール盤7は、環状のシール部7Aと、基盤部7Bとを備えている。環状シール盤7を構成する材料は特に限定されないが、例えば、アルミ、鉄、銅等の伝熱性を有する金属、またはこれらの合金から適宜選択することができる。基盤部7Bの厚みや形状は特に限定されず、シール装置に合わせて、適宜変更したものを好適に用いることができる。
【0043】
シール部7Aは、特に限定されないが、例えば、円型、楕円型、多角型、ひょうたん型、涙型等、目的とする容器のフランジ形状に合わせて、適宜変更することができる。
シール部7Aは、フランジ部25の上面に対して、内周縁にR加工が施され、外周縁が環状シール盤7の先端(
図6の先端73)より遅れて蓋材3に当たるようにされている。具体的には、境界A(環状シール盤7の先端73でもある)を介して、外周縁側には、断面が傾斜状となる斜面部としての傾斜面部71が、また、内周縁側には、R加工されて断面が曲面状の曲面部72が連続して形成されている。
【0044】
このうち、環状シール盤7の外周縁側に形成される傾斜面部71における、
図5のようにフランジ部25に対して内周縁から外周縁に向かって形成されることとなる傾斜角、すなわち被シール面となる水平面Yに対する傾斜面部71の角度(θ)は環状シール盤7の幅である距離Hによって異なるが、2°以上20°以下、好ましくは3°以上15°以下、より好ましくは6°以上12°以下と設定することが好ましい。
この傾斜面部71の角度が2°より小さいと、ヒートシール時に押圧した場合であっても、前記した
図3に示すような樹脂溜まり部6が、ヒートシール部26の外周縁近傍にも形成され易くなり、得られた易開封性容器1の開封時におけるヒートシール部26外側で抵抗が大きくなり、易開封性容器1の開封を円滑に行うことが困難となる。一方、傾斜面部71の角度が20°を超えると、境界Aの周辺がなだらかでなく尖ってしまい、シール時若しくは開封時に蓋材3が切断されてしまう場合があり、易開封性が損なわれるおそれがある。
【0045】
また、環状シール盤7に内周縁側に形成される曲面部72に施されるR加工としては環状シール盤7の幅Hによって異なるが、曲率半径Rが0.5Hより大きい値が好ましく、より好ましくは0.55H以上0.75H以下、さらに好ましくは0.60H以上0.73H以下、特に好ましくは0.65H以上0.70H以下である。かかる曲率半径Rが0.5H以下となると、選択的に内周縁側に樹脂だまりを形成しにくくなるという不都合を生じるおそれがある。なお、曲率半径Rが0.75Hより大きくなるとヒートシール時に蓋材3を傷める可能性があるため、ヒートシール条件の設定が困難になるという不都合を生じるおそれがあるため、上記範囲に設定される。
【0046】
ここで、環状シール盤7に対して、これら傾斜面部71および曲面部72は、境界Aが環状シール盤7の断面幅方向に対して内側寄り(内周縁寄り)となるように形成されることが好ましい。境界Aが環状シール盤7の断面幅方向に対して内側であれば、環状シール盤7の内周縁側に曲面部72、当該環状シール盤7の外周縁側に傾斜面部71が形成されていることも相俟って、ヒートシールに際して環状シール盤7の外周縁側より先端73が先に蓋材3と接すること(環状シール盤7の外周縁が先端73より蓋材3に遅れて接すること)が確実になされ、先に接した内周縁側の開口部24側に対して樹脂溜まり部6が、内側に選択的に形成されることになる。
なお、幅Hは、特に限定されないが、例えば0.8mm以上3.0mm以下、さらに好ましくは0.9mm以上2.5mm以下、特に好ましくは1mm以上2mm以下を好適に用いている。
【0047】
また、本発明においては、易開封性容器1の開封開始部4以外の部位に対応する、環状シール盤7の内周縁、外周縁の全周に、前記R加工されて断面が曲面状の曲面部72が形成されており、易開封性容器1の開封開始部4に対応する環状シール盤7の部位は、内周縁に前記R加工されて断面が曲面状の曲面部72が形成されており、外周縁が環状シール盤7の先端73より蓋材3に遅れて接するようにされた形状を持つ環状シール盤を用いると、高密封性、易開封性、および、開封開始部4以外からの蓋材3の開封防止性に優れる易開封性容器1を製造することができる点で好ましい。
特に、曲率半径Rが0.5Hより大きい値とすることで、表下層22の厚さ寸法が100μmより薄い構成でも、十分な大きさの樹脂溜まり6を形成でき、高密封性、易開封性、および、開封開始部4以外からの蓋材3の開封防止性に優れた易開封性容器1を製造できる。
【0048】
なお、環状シール盤7は、
図2に示すような周状のヒートシール部26を一体的に形成させるため、前記した傾斜面部71と曲面部72を環状に連続して形成した環状シール盤(シールリング)としてもよく、また、易開封性容器1の開封開始部4に対応する部位に対してのみ、当該傾斜面部71と曲面部72を形成した環状シール盤(シールリング)としてもよい。
【0049】
[易開封性容器の製造]
図5および
図6に示した形状の環状シール盤7を用いて、容器本体2のフランジ部25と蓋材3をヒートシールするには、
図5に示すように、まず、環状シール盤7における傾斜面部71と曲面部72との境界Aに対応する先端73が蓋材3に接し、その後、当該境界Aの内周縁側に形成された曲面部72が蓋材3の内側に向かって、また、境界Aの外周縁側に形成された傾斜面部71が蓋材3の外側に向かって押圧していく。これにより、容器本体2の剥離層21と当該剥離層21と隣接する表下層22の樹脂成分は、前記の境界Aの下部から容器本体2の内側に押し出され、フランジ部25の環状シール盤7の内周縁が接する位置の近傍、すなわち、容器本体2のヒートシール部26の内周縁近傍Xに盛り上がったコブ状の樹脂溜まり61,62を形成し、また、蓋材3のシール層31も追随して樹脂溜まり63を形成して、これらが樹脂溜まり部6を形成した状態で、容器本体2のフランジ部25に現れた剥離層21と、蓋材3のシール層31とがヒートシールされ、両者が融着されることになる。
【0050】
ここで、シール条件として、シール温度としては、ヒートシールされる材料の種類等により適宜決定すればよいが、表下層22の溶融温度よりも高い温度、一般に、160℃以上240℃以下程度、より好ましくは180℃以上220℃以下とすればよい。
同様に、シール圧力は、好ましくは0.98Pa以上7.845Pa以下(10kg/cm
2以上80kg/cm
2以下)程度、より好ましくは1.96Pa以上6.86Pa以下(20kg/cm
2以上〜70kg/cm
2以下)、さらに好ましくは25Pa以上60Pa以下とすればよい。ここで、押圧力が0.98Paより弱いと十分な大きさの樹脂溜まりができないおそれがあり、押圧力が7.845Paより大きくなっても形成される樹脂溜まりの大きさに大差はなく、押圧エネルギーが増大してしまう不都合があるため、上記範囲に設定される。
【0051】
なお、環状シール盤7によるヒートシールのみでは、外周縁側から夾雑物が入りやすくなるおそれがある。そのようなことを防止するために、この場合には、環状シール盤7により、前述したコブ状の樹脂溜まり部6を形成しながら、蓋材3のシール層31をフランジ部25の剥離層21にヒートシールした後に、他の環状シール盤7a(
図3参照)を用いて、樹脂溜まり部6に、この環状シール盤7aが当たらず、かつ、環状シール盤7の外周側の図示しない樹脂溜まり部に当たるように押圧して、容器本体2の剥離層21と蓋材3のシール層31をヒートシールするようにすればよい。この他の環状シール盤7aを用いることにより、外周縁側から夾雑物が入り込むことを防止できる。
なお、前記した他の環状シール盤7aのシール面は平滑でも良いが、易開封性を損なわないために、ローレット等の部分接着が可能な面にしても構わない。
【0052】
[易開封性容器の開封動作]
図7は、本実施形態の易開封性容器1が初期開封された状態を示した断面図であり、
図8は、当該易開封性容器1が完全に開封された状態を示した断面図である。
なお、ここでいう「初期開封された状態」とは、凝集剥離された剥離面が樹脂溜まり部6まで達していない状態を指す。
【0053】
前記のようにして、容器本体2のフランジ部25と蓋材3とをヒートシールして得られた本実施形態の易開封性容器1を開封開始部4から開封するために、
図7に示すように、蓋材3に対して
図7中の矢印方向に力Fがかかった場合には、容器本体2の剥離層21の凝集剥離が進行する。
また、この凝集剥離が樹脂溜まり部6に達したところにおいては、剥離層21の凝集剥離は、当該剥離層21と隣接する表下層22に形成された樹脂溜まり62の形状に沿って進行されることになる。
【0054】
そして、剥離層21の凝集剥離が、ヒートシール部26の切断位置にもなる内周縁近傍Xにまで達したら、蓋材3のシール層31に形成された樹脂溜まり63の形状に追随するようにして、容器本体2の剥離層21の樹脂溜まり61が切断されることにより、易開封性容器1における容器本体2と蓋材3との開封が容易に行われることになる。
【0055】
[本実施形態の効果]
前記したような実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
上記実施形態では、表面層11、中間層12、基層13をこれらの順で備えた多層シート10における少なくともいずれか一層の厚さ寸法を35μm以上100μm以下で、165℃における損失正接tanδの値を0.18以上0.50以下としているので、例えば薄肉の多層シート10を用いて容器本体2を形成しても、ヒートシールしたときに表下層22の樹脂が良好に流れて樹脂溜まりを形成でき、ヒートシールの高い密封性が得られる。
特に、表面層11に隣接する中間層12を上記所定の厚さ寸法および165℃における損失正接tanδの値とすることで、シール条件を緩和しても樹脂だまりを形成し易くする
ことができる。
さらに、上記シール部7Aを有する環状シール盤7による押圧力を0.98Pa以上7.845Pa以下(10kg/cm
2以上80kg/cm
2以下)としているので、薄肉の容器本体2でも、良好な樹脂溜まり部6を形成でき、ヒー
トシールの高い密封性が得られる。
【0056】
また、シール部7Aの曲面部72の曲率半径Rを0.5Hより大きくすることで、薄肉の容器本体2に蓋材3をヒートシールする場合でも、シール部7Aの内周縁に対応するヒートシール部26の内周縁近傍Xに選択的に樹脂溜まり部6を形成でき、逆に外周縁近傍には形成されないようにでき、密封性の高いヒートシールが得られるとともに、開封時には樹脂溜まりによる開封性が損なわれることを防止でき、容易に開封できる。
すなわち、易開封性容器1が、開口部24の周縁にフランジ部25を配設する容器本体2と、この容器本体2のフランジ部25と蓋材3が環状にヒートシールされてなるので、高い密封性が維持されるとともに、容器本体2の剥離層21が凝集破壊することで、蓋材3が開封可能とされるため、容器本体2の剥離層21とこの剥離層21に隣接する表下層22とを界面剥離させる態様と比較して、初期開封強度も安定し、開封がスムースに進行される。また、開封時に、樹脂溜まり部6にある剥離層21が伸びて、易開封性容器1の開封外観が悪くなるという問題の発生を防止することができる。
そして、形成される樹脂溜まり部6は、フランジ部25のヒートシール部26の内周縁近傍Xには、容器本体2の剥離層21、この剥離層21に隣接する表下層22、および蓋材3のシール層31の構成樹脂からなるコブ状に形成されているので、高密封性を確保できる。
特に、曲面部72の曲率半径Rを0.55H以上0.75H以下とすることで、薄肉の容器本体2でも確実に樹脂溜まり部6を形成でき、密封性の高いヒートシールが確実に得られる。
【0057】
また、傾斜面部71をフランジ部25に重ねられた蓋材3の被ヒートシール面である表面に対して好ましくは2°以上20°以下、より好ましくは3°以上15°以下、さらに好ましくは6°以上12°以下で傾斜して設けることで、開封時に剥離層21(表面層11)の剥離性が損なわれることを防止できる。
【0058】
そして、製造に際しては環状シール盤7の位置決め等も厳密でないため、生産性も良好であり、高品質の易開封性容器1を低コストで提供することができる。
【0059】
[実施形態の変形]
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状等は、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0060】
例えば、前記実施形態では、多層シート10として3層構造を例示したが、3層以上の多層構造とすることができる。また、本発明の所定の厚さ寸法および165℃における損失正接tanδの値の材料からなる層としては、中間層1
2に限られるものではなく、いずれの層としてもよい。例えば、4層以上ある場合、表面層11に隣接しない層としてもよい。さらに、本発明の所定の厚さ寸法および165℃における損失正接tanδの値の材料からなる層としては、1層のみに限らず、複数の層としてもよい。
すなわち、多層シート10(容器本体2)の層構成としては、例えば以下に示す層構成としてもよい。
すなわち、
(a)表面層11(剥離層21)/中間層12(表下層22)/基層13(基材層23)/バリア層
(b)表面層11(剥離層21)/中間層12(表下層22)/第一基層13(基材層23)/バリア層/第二基層13(基材層23)
(c)表面層11(剥離層21)/第一基層13(基材層23)/中間層12(表下層22)/バリア層/第二基層13(基材層23)
(d)表面層11(剥離層21)/第一中間層12(表下層22)/第一基層13(基材層23)/バリア層/第二基層13(基材層23)/第二中間層12(表下層22)
(e)第一表面層11(剥離層21)/第一中間層12(表下層22)/第一基層13(基材層23)/バリア層/第二基層13(基材層23)/第二中間層12(表下層22)/外表層
(f)第一表面層11(剥離層21)/第一中間層12(表下層22)/第一基層13(基材層23)/接着層/バリア層/接着層/第二基層13(基材層23)/外表層
などの構造を挙げることができる。
【0061】
ここで、表面層11(剥離層21)は、他のフィルムなどとヒートシールされる層で、例えば、本発明の多層シートを容器本体2の形状に成形したときに、内容物と接しかつ蓋材3のシーラントとヒートシールされる層となる。そして、上述した易開封性容器1の開封のように、蓋材3とヒートシールされた部分は、蓋材3と共に容器本体2から剥離される。
また、中間層12(表下層22)は、表面層11(剥離層21)の下層を構成し、例えば上記剥離層21の組成とすることで、熱により流動し、本発明の多層シートを用いて成形された容器本体2を蓋材3とヒートシールしたときに、樹脂溜まりを形成する層である。
さらに、基層13(基材層23)は、上述したように、多層シート10の主要となる層で、例えば本発明の多層シートを用いて成形された容器本体2の基材層23を構成する層である。
そして、接着層は、基材層23とバリア層とを接着する層で、例えばウレタン系のエラストマー、スチレン系のエラストマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)などの材料を好適に用いることができる。接着層の厚みは、10μm以上50μm以下が好ましく、20μm以上40μm以下がさらに好ましい。
また、バリア層は、酸素を遮断する樹脂を使用した層で、当該バリア層を備えることにより酸素透過遮断性を備えた多層シート10を提供できる。バリア層としては、例えば、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル(PAN)などの材料を好適に用いることができる。また、バリア層の層厚は、10μm以上210μm以下が好ましく、20μm以上170μm以下がさらに好ましい。
外表層は、隣接する層と相性の良い材料が用いられ、例えば、本発明の多層シートを用いて成形された易開封性容器1の容器本体2の外表面に臨む層で、中間層12や表面層11で使用する材料と同様の材料を好適に用いることができる。また、中間層12や表面層11で使用する材料と異なる材料を用いてもよい。
【0062】
上記(d)〜(f)の構造のように、層構成中に複数の基材層が繰り返し設けられていてもよい。このうち、断面対象構造となる上記(e)の構造が製膜安定性という理由から好適である。
なお、上記構成に限定されるものではないが、中間層12(表下層22)が厚さ寸法が35μm以上100μm以下であり、165℃における損失正接tanδの値が0.18以上0.50以下であることで、ヒートシール時に樹脂だまりを形成し易くすることができる。
同様に、蓋材3の層構成(外層32/シール層31)に限らず、外層32/バリア層/シール層31、あるいは第1外層32/第2外層32/シール層31の構成などが挙げられる。
【0063】
また、多層シート10から易開封性容器1の容器本体2を成形し、容器本体2の剥離層21が凝集剥離する態様としたが、これに限らず、例えば多層シートを重ね合わせてヒートシールし製袋するなどしてもよい。
そして、易開封性容器1としても、例えば
図9および
図10に示すように、容器本体2と蓋材3が開封するに際して、蓋材3のシール層31が凝集剥離する構成としてもよい。
すなわち、
図9および
図10に示すように、易開封性容器1aを構成する蓋材3のシール層31が凝集破壊して、蓋材3が剥離するようにするには、シール層31を構成する材料として、スチレングラフトプロピレン樹脂、接着性ポリオレフィン樹脂等を使用することができる。
また、容器本体2の剥離層21としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂やこれらのブレンド系を使用すればよい。
このようなシール層31を蓋材3に、剥離層21を容器本体2に採用して両者をヒートシールした場合にあっては、両層21,31が融着する一方、開封の際には、応力に対して弱い蓋材3のシール層31が凝集破壊して、開封が良好に行われる。
【0064】
そして、易開封性容器1aを開封開始部4から開封するには、
図9に示すように、蓋材3に対して
図9の矢印方向に力Fがかかるようにすると、蓋材3のシール層31の凝集剥離が進行していくことになる。そして、開封が樹脂溜まり部6に達したところにおいては、当該シール層31の凝集剥離は、当該シール層31とヒートシールされた容器本体2の剥離層21に形成された樹脂溜まり61の形状に沿って進行されることになる。
蓋材3のシール層31の凝集剥離がヒートシール部26の切断位置にもなる内周縁近傍Xにまで達した後は、シール層31の樹脂溜まり63が切断されることにより、易開封性容器1
aにおける容器本体2と蓋材3との開封が容易に行われることになる。
この
図9および
図10に示す実施形態でも、上述した実施形態により奏される効果と略同等の効果を奏することができる。
【0065】
さらに、本発明にあっては、開封に際し、容器本体2の剥離層21と蓋材3のシール層31の両層が凝集破壊されて開封される場合も含む。さらに、容器本体2の剥離層21と、表下層22が同一部材である場合でも、前記同一部材が蓋材3のシール層31とヒートシール可能で、蓋材3を開封する際に、蓋材3のシール層31が凝集破壊する場合は、前述した本発明の効果が期待できるため、本発明に含まれる。
その場合、
図7〜
図10で言えば、剥離層21と表下層22は、別層のように見えるが同一部材で、便宜的に、表下層22の凝集破壊される部分(フランジ部25の表面)を剥離層21と示した構成とすればよい。
さらには、多層シート10から容器本体2を形成する場合に限らず、例えば多層シート10をヒートシールして製袋するなど、ヒートシールにより樹脂溜まりを形成させる各種用途に利用することができる。
【0066】
また、本発明では、凝集剥離を前提とせず、界面剥離する構成などとしてもよい。
界面剥離する構成では、例えば、ヒートシール部262の外周に外方に尖状に突出する開封開始部を形成するように、環状シール盤7に開封開始部形成部を形成してもよい。このように開封開始部形成部により開封開始部を設けることにより、界面剥離でも尖った開封開始部の先端から容易に開封できる。
【0067】
また、凝集剥離される容器本体2の剥離層21や蓋材3のシール層31の構成材料も、前記した実施形態で示した例のほか、例えば、剥離層21はポリプロピレンとエチレン・メタクリル酸共重合体やエチレン・テトラシクロドデセン共重合体のブレンド系、シール層31は飽和共重合ポリエステル系樹脂を使用することができる。
【0068】
なお、
図2および
図3に示される構成の易開封性容器1を製造するにあっては、場合によっては、環状シール盤7の内周縁が接する位置に対応する部分に形成される樹脂溜まり部6のほか、当該環状シール盤7の外周縁が接する位置に対応する部分に樹脂溜まりが形成される場合であっても良い。外周縁に形成される樹脂溜まりより、内周縁に形成される樹脂溜まりの方が大きくなるため、良好な易開封性と高密封性が維持されることとなる。
【0069】
また、ヒートシールする構成としては、環状シール盤7に限らず、ヒートシール部26の形状に応じた形状のシール盤を利用してもよい。すなわち、多層シート10の少なくとも1層が35μm以上100μm以下であり、当該1層を構成する材料が165℃における損失正接tanδの値が0.18以上0.50以下であれば、樹脂溜まり部6を形成できる。
その他、本発明の実施における具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0070】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等の記載内容に何ら制約されるものではない。
【0071】
[実施例1]
下記に示すように、以下の層構成を示す多層シート10を用いて易開封性容器1の容器本体2を成形し、全体形状を
図2、また、開封開始部4の断面構成を
図3に示す易開封性容器1を製造した。
【0072】
(多層シート10の製造)
共押出成形により、以下の第一表面層/第一中間層/第一基層/第一接着層/バリア層/第二接着層/第二基層/外表層からなる、厚さが400μmの多層シート10を成形した。
第一表面層:ポリプロピレン(70質量%)+エチレンアクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体(30質量%) (30μm)
第一中間層:ポリプロピレン(75質量%)+ポリオレフィンエラストマー(25質量%) (60μm)(tanδ=0.32)
第一基層:ポリプロピレン(80質量%)+ポリエチレン(20質量%) (100μm)
第一接着層:ポリプロピレン(15μm)
バリア層:ポリプロピレン(20μm)
第二接着層:ポリプロピレン(15μm)
第二基層:ポリプロピレン(80質量%)+ポリエチレン(20質量%) (100μm)
外表層:ポリプロピレン(75質量%)+ポリオレフィンエラストマー(25質量%) (60μm)の積層体
【0073】
(容器本体2の構成)
次に、上記多層シート10を用いて、プラグアシスト真空成形により、45mm×60mm×25mmのフランジ付の容器本体2を成形した。なお、この容器本体2は、開口部24に対して幅5mmのフランジ部25を有し、略長方形のトレー状となるように形成されている。
このようにして得られた容器本体2の開口部24周縁のフランジ部25に対して、下記構成からなる多層フィルムを蓋材3として載置して、下記のシール条件を用い、また、環状シール盤として、
図4〜6に示した、傾斜面部71と曲面部72が全周に形成された環状シール盤(シールリング)の曲面部72の曲率半径Rの大きさが異なるものを使用して、蓋材3を容器本体2のフランジ部25に対してヒートシールして、上記実施形態の易開封性容器1を製造した。
なお、この構成の容器本体2と蓋材3を使用すると、開封時は、容器本体2の剥離層21の凝集破壊により剥離が進行する凝集剥離が行われる。
【0074】
(蓋材3の構成)
シール層31:ポリエチレン(60μm)
外層32:ポリエチレンテレフタレート(PET)(12μm)/ポリアミド(ナイロン)(15μm)(PET/Ny/PEの順)
【0075】
(シール条件)
シール温度: 200℃
シール圧力: 1960N(200kgf/個)
時間: 1.1秒
ヒートシールの回数: 1回
【0076】
(環状シール盤の仕様)
シール幅H: 3mm
傾斜角度θ(傾斜面部71): 6°
R加工(曲面部72): 0.33H(1.0mmR)
【0077】
[実施例2]
実施例1において、多層シート10(容器本体2)の中間層12(表下層22)の構成を下記のようにした以外は、実施例1と同様な方法を用いて、易開封性容器1を製造した。
なお、この構成の容器本体2と蓋材3を使用すると、実施例1と同様、開封時は、容器本体2の剥離層21の凝集破壊により剥離が進行する凝集剥離が行われる。
(第一中間層の構成)
第一中間層:ポリプロピレン(70質量%)+ポリオレフィンエラストマー(15質量%)+ポリエチレン(15質量%) (60μm)(tanδ=0.23)
【0078】
[実施例3]
実施例1において、多層シート10(容器本体2)の中間層12(表下層22)の構成を下記のようにした以外は、実施例1と同様な方法を用いて、易開封性容器1を製造した。
なお、この構成の容器本体2と蓋材3を使用すると、実施例1と同様、開封時は、容器本体2の剥離層21の凝集破壊により剥離が進行する凝集剥離が行われる。
(第一中間層の構成)
第一中間層:ポリプロピレン(80質量%)+ポリエチレン(20質量%) (60μm)(tanδ=0.19)
【0079】
[比較例1]
実施例1において、多層シート10(容器本体2)の中間層12(表下層22)の構成を下記のようにした以外は、実施例1と同様な方法を用いて容器を製造した。
(第一中間層の構成)
第一中間層:ポリプロピレン(82質量%)+ポリエチレン(18質量%) (60μm)(tanδ=0.14)
【0080】
[比較例2]
実施例1において、多層シート10(容器本体2)の中間層12(表下層22)の構成を下記のようにした以外は、実施例1と同様な方法を用いて容器を製造した。
(第一中間層の構成)
第一中間層:ポリプロピレン(82質量%)+ポリオレフィンエラストマー(5質量%)+ポリエチレン(13質量%) (60μm)(tanδ=0.15)
【0081】
[試験例1]
前記のようにして得られた実施例1〜3および比較例1,2の開封強度、開封時の開封外
観、および、内圧強度を下記の基準にて比較・評価した。結果を表1に示す。
【0082】
(開封性)
上記形状の易開封性容器1の蓋材3の角部をチャックで掴み、蓋材3の天面とチャックの角度を45°にして引っ張った際の開封強度を測定した。開封強度の測定には、株式会社イマダ製のデジタルフォースゲージを用いた。測定は、5回実施して平均値を演算し、以下の2段階で評価した。
◎:開封強度が4.9N以上9.8N未満(0.5kgf/開封口以上1.0kgf/開封口
未満)
○:開封強度が9.8N以上14.7N以下(1.0kgf/開封口以上1.5kgf/開封口以下)
【0083】
(内圧強度)
易開封性容器に加圧空気を1.0±0.2リットル/minで注入し、当該容器が破裂したときの圧力(MPa)を測定した。試験は、破裂強度試験機(株式会社サン科学製)を用い、n=5で行った。内圧強度の評価は、以下の4段階で評価した。
◎:内圧強度が非常に高い。(0.100MPa以上)
○:内圧強度が高い。(0.060MPa以上0.099MPa以下)
△:内圧強度がやや低い。(0.030以上0.059MPa以下)
×:内圧強度が低い。(0.03MPa未満)
【0084】
(結果)
【表1】
【0085】
表1に示すように、実施例1〜実施例3の易開封性容器は、開封強度が適度であり、易開封性に優れるとともに、また、内圧強度も高く、高密封性を備えていた。
従って、実施例1〜実施例3の易開封性容器は、易開封性と高密封性を兼ね備えた容器であることが確認できた。さらには、実施例1〜実施例3の易開封性容器の開封外観も、概ね良好であった。
【0086】
一方、シール部の内周縁近傍にコブ状の樹脂溜まり部が形成されない比較例1,2は、良好な開封外観を示すものの、シール強度(内圧強度)が高くなく高い密封性が得られなかった。
従って、比較例で得られた易開封性容器は、易開封性と高密封性を兼ね備えたものではなく、実施例で得られた、高密封性と易開封性を兼ね備えた本発明の易開封性容器と比較すると劣るものであった。
【0087】
[実施例11]
次に、環状シール盤7におけるR加工(曲面部72)を異なる形状で形成したものを用い、下記の材料および方法により、全体形状を
図2に示す易開封性容器1を製造し、ヒートシールについて比較検討した。なお、環状シール盤7の断面図を
図11に示す。
【0088】
(環状シール盤の仕様)
シール幅H: 1.5mm
傾斜角度θ(傾斜面部11): 9°
R加工(曲面部12): 0.67H(1.0mmR)
【0089】
(試験体:易開封性容器1)
(容器本体
2)
共押出成形により、以下の第一表面層/第一中間層/第一基層/第一接着層/バリア層/第二接着層/第二基層/外表層からなる、厚さが400μmの多層シート10を成形した。この多層シート10を用いて、プラグアシスト真空成形により、45mm×60mm×25mmのフランジ付の容器本体2を成形した。なお、この容器本体2は、開口部24に対して幅5mmのフランジ部25を有し、略長方形のトレー状となるように形成されている。
第一表面層:ポリプロピレン(70質量%)+エチレンアクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体(30質量%) (30μm)
第一中間層:ポリプロピレン(75質量%)+ポリオレフィンエラストマー(25質量%) (60μm)(tanδ=0.32)
第一基層:ポリプロピレン(80質量%)+ポリエチレン(20質量%) (100μm)
第一接着層:ポリプロピレン(15μm)
バリア層:ポリプロピレン(20μm)
第二接着層:ポリプロピレン(15μm)
第二基層:ポリプロピレン(80質量%)+ポリエチレン(20質量%) (100μm)
外表層:ポリプロピレン(75質量%)+ポリオレフィンエラストマー(25質量%) (60μm)
【0090】
(蓋材
3)
シール層31:ポリエチレン(60μm)
外層32:ポリエチレンテレフタレート(PET)(12μm)/ポリアミド(ナイロン)(15μm)(PET/Ny/PEの順)
【0091】
上記得られた容器本体2の開口部24周縁のフランジ部25に対して、上記蓋材3を載置して、下記のシール条件を用い、また、環状シール盤7としては、
図2に示したように、傾斜面部71と曲面部72が全周に形成された環状シール盤(シールリング)の曲面部72の曲率半径Rの大きさが下記の形状のものを使用して、蓋材3を容器本体2のフランジ部25に対してヒートシールして、易開封性容器1を製造した。
なお、この構成の容器本体2と蓋材3を使用すると、開封時は、容器本体2の表面層21の凝集破壊により剥離が進行する凝集剥離が行われる。
【0092】
(シール条件)
シール温度: 190℃
シール圧力: 1568N(160kgf/個)
時間: 1.1秒
ヒートシールの回数: 1回
【0093】
[試験例2]
前記のようにして得られた実施例11の開封強度、および、内圧強度について以下に示すように測定し、評価した。結果を表2に示す。
【0094】
(開封強度)
上記形状の易開封性容器1の蓋材3の角部をチャックで掴み、蓋材3の天面とチャックの角度を45°にして引っ張った際の開封強度を測定した。開封強度の測定には、株式会社イマダ製のデジタルフォースゲージを用いた。測定は、3回実施し、平均値を演算した。
なお、実施例11では、開封強度の平均値は、7.45N(0.76kgf)であった。
◎:開封強度が4.9N以上9.860N
未満(0.5kgf/開封口以上1.0kgf/開封口
未満)
○:開封強度が9.8N以上14.7N以下(1.0kgf/開封口以上1.5kgf/開封口以下)
【0095】
(内圧強度)
易開封性容器に加圧空気を1.0±0.2リットル/minで注入し、当該容器が破裂したときの圧力(MPa)を測定した。試験は、破裂強度試験機(株式会社サン科学製)を用い、n=3で行った。
なお、実施例11の内圧強度の平均値は、0.189MPaであった。
◎:内圧強度が非常に高い。(0.10MPa以上)
○:内圧強度が高い。(0.060MPa以上0.099MPa以下)
【0096】
[実施例12]
実施例11において、第一中間層および外表層を、ポリプロピレン(70質量%)+ポリオレフィンエラストマー(15質量%)+ポリエチレン(15質量%)(tanδ=0.23)とした以外は、実施例11と同様な方法を用いて、易開封性容器20を製造した。
そして、実施例11と同様に開封強度および内圧強度を測定し、上記評価方法で評価した。結果を表2に示す。実施例12の開封強度の平均値は4.31N(0.44kgf)で、内圧強度の平均値は0.096MPaであった。
【0097】
[実施例13]
実施例11において、第一中間層および外表層を、ポリプロピレン(85質量%)+ポリエチレン(15質量%)(tanδ=0.18)とした以外は、実施例11と同様な方法を用いて、易開封性容器1を製造した。
そして、実施例11と同様に開封強度および内圧強度を測定し、上記評価方法で評価した。結果を表2に示す。実施例1
3の開封強度の平均値は4.31N(0.44kgf)で、内圧強度は0.096MPaであった。
【0098】
[実施例14]
実施例11において、環状シール盤7のシール幅を2.0mmとした以外は、実施例11と同様な方法を用いて、易開封性容器1を製造した。
そして、実施例11と同様に内圧強度を測定し、上記評価方法で評価した。結果を表3に示す。実施例14の内圧強度の平均値は0.067MPaであった。
【0099】
[実施例15]
実施例12において、環状シール盤7のシール幅を2.0mmとし、曲率半径Rを0.5H(1.0mmR)とした以外は、実施例12と同様な方法を用いて、易開封性容器1を製造した。
そして、実施例11と同様に内圧強度を測定し、上記評価方法で評価した。結果を表3に示す。実施例15の内圧強度の平均値は0.079MPaであった。
【0100】
(結果)
【表3】