(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第2ハウジングの筒状部の内周に挿入される第1ハウジングの嵌合筒部の外周面に被嵌装着されて前記筒状部と前記嵌合筒部との間を封止する筒状パッキンの前記嵌合筒部への取り付け構造であって、
前記嵌合筒部の外周面は、一定外形の中間部外周面と、前記中間部外周面の前後両端に形成されると共に前記中間部外周面の外形から一定厚の肉抜きをした細身の外形に形成された端部外周面と、前記嵌合筒部の前端側の前記端部外周面上に軸方向に沿って延設された凸条であって、前記端部外周面からの最大突出位置が前記中間部外周面の外形の範囲内に収まるように、前記端部外周面を形成する際の肉抜きにより形成される凸条と、を備え、
前記筒状パッキンの内周面は、前記中間部外周面に密着嵌合する中間部内周面と、該中間部内周面の前後両端に前記中間部内周面よりも小径に形成されて前記端部外周面に嵌合する端部内周面と、前記凸条が嵌合可能に前記両端の端部内周面上に軸方向に沿って延設された係合溝と、を備え、
前記中間部外周面と前記中間部内周面との密着によって、前記嵌合筒部と前記筒状パッキンとの間を封止する筒状パッキンの取り付け構造。
【背景技術】
【0002】
図7〜
図10は、下記特許文献1に開示された防水コネクタを示したものである。
この防水コネクタ100は、
図9に示すように、第2ハウジングの筒状部110とこの筒状部110の内周に挿入される第1ハウジング120の嵌合筒部121との間を、嵌合筒部121の外周面に被嵌装着される筒状パッキン130により封止する。
【0003】
第1ハウジング120の嵌合筒部121は、
図7に示すように、内部に接続端子を収容する端子収容孔122を有している。また、嵌合筒部121の外周面上には、
図8(b)及び
図9に示すように、筒状パッキン130の周方向への位置ずれを防止するための凸条123が、軸方向に沿って延設されている。凸条123は、嵌合筒部121の外周面の複数箇所(図では、6箇所)に設けられている。凸条123は、
図9に示すように、嵌合筒部121の前端121aから後端側に長さL1だけ奥まった位置から後端側に延設されている。
【0004】
嵌合筒部121の前端121a側において、凸条123が存在していない長さL1の範囲が、滑らかな外形面になっていて、筒状パッキン130の内周面への密着により封止性能を発揮するシール面127(
図9参照)になっている。
【0005】
第1ハウジング120は、
図7及び
図9に示すように、嵌合筒部121の後端側の両外側壁124に、パッキン係止孔125を有している。このパッキン係止孔125は、筒状パッキン130の前端の外側部に突設された係合突起131と係合することで、筒状パッキン130を抜け止めする。
【0006】
筒状パッキン130は、
図7に示すように、外周面に、係合突起131と、リップ部132と、を備えている。係合突起131は、筒状パッキン130の外周面の前端130aの両側に突設されていて、前述のパッキン係止孔125と係合することで、抜け止めを果たす。リップ部132は、筒状パッキン130の外周面に環状に突出形成されている。このリップ部132は、2本設けられていて、第2ハウジングの筒状部110の内周面に密着することで、筒状部110との間を封止する。
【0007】
筒状パッキン130の内周面135は、
図8(a)に示すように、シール面127と同形状である。また、筒状パッキン130の内周面は、シール面127に緊密に嵌合するように、シール面127の外形よりも僅かに小さな内径寸法に設定されている。そして、
図8(a)及び
図9に示すように、筒状パッキン130の内周面には、嵌合筒部121の凸条123と嵌合する係合溝133が形成されている。
【0008】
係合溝133は、
図9に示すように、筒状パッキン130の後端から長さL1の範囲を除いて、形成されている。筒状パッキン130の後端から長さL1の範囲の内周面135は、
図10に示すように、筒状パッキン130の嵌合筒部121への嵌合が完了したときに嵌合筒部121のシール面127と重なって、嵌合筒部121との間を封止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1の防水コネクタにおける筒状パッキン130の取り付け構造では、嵌合筒部121上の凸条123が嵌合筒部121の前端121aから長さL1だけ奥まった位置に装備されているため、筒状パッキン130を嵌合筒部121に被嵌させるときの嵌合開始初期には、凸条123と係合溝133は未嵌合状態にある。その結果、嵌合開始初期に筒状パッキン130の軸線が嵌合筒部121の軸線に対して傾斜した状態で嵌合操作された場合などに、筒状パッキン130に周方向への捻れや位置ずれが発生し、被嵌作業が困難になるおそれがあった。
【0011】
また、凸条123は、シール面127よりも外側に突出して形成されるため、凸条123の成形時に発生するヒケがシール面127の上にかかって、封止性能を低下させるおそれがあった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、筒状パッキンの嵌合筒部への被嵌作業を容易にすると共に、筒状パッキンによる封止性能を向上させることのできる筒状パッキンの取り付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1) 第2ハウジングの筒状部の内周に挿入される第1ハウジングの嵌合筒部の外周面に被嵌装着されて前記筒状部と前記嵌合筒部との間を封止する筒状パッキンの前記嵌合筒部への取り付け構造であって、
前記嵌合筒部の外周面は、一定外形の中間部外周面と、前記中間部外周面の前後両端に形成されると共に前記中間部外周面の外形から一定厚の肉抜きをした細身の外形に形成された端部外周面と、前記嵌合筒部の前端側の前記端部外周面上に軸方向に沿って延設された凸条であって、前記端部外周面からの最大突出位置が前記中間部外周面の外形の範囲内に収まるように、前記端部外周面を形成する際の肉抜きにより形成される凸条と、を備え、
前記筒状パッキンの内周面は、前記中間部外周面に密着嵌合する中間部内周面と、該中間部内周面の前後両端に前記中間部内周面よりも小径に形成されて前記端部外周面に嵌合する端部内周面と、前記凸条が嵌合可能に前記両端の端部内周面上に軸方向に沿って延設された係合溝と、を備え、
前記中間部外周面と前記中間部内周面との密着によって、前記嵌合筒部と前記筒状パッキンとの間を封止する筒状パッキンの取り付け構造。
【0014】
(2) 上記(1)に記載の筒状パッキンの取り付け構造において、
前記凸条の前端位置を、前記嵌合筒部の前端位置に一致させていることを特徴とする筒状パッキンの取り付け構造。
【0015】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の筒状パッキンの取り付け構造において、
前記中間部外周面及び前記端部外周面の外形が角を丸めた矩形状で、
前記凸条が前記矩形の角部に突設されていることを特徴とする筒状パッキンの取り付け構造。
【0016】
上記(1)の構成によれば、筒状パッキンの周方向への位置ずれを防止するために嵌合筒部の外周面に装備される凸条は、嵌合筒部の外周面の前端側に配置されているため、嵌合筒部に対する筒状パッキンの嵌合開始初期に、凸条と筒状パッキンの係合溝とが嵌合して、筒状パッキンの周方向への位置ずれを防止する。そのため、嵌合開始初期における斜め嵌合時にも、筒状パッキンに捻れや位置ずれが発生することを防止することができる。その結果、筒状パッキンの嵌合筒部への被嵌作業を容易にすることができる。
【0017】
また、上記(1)の構成によれば、嵌合筒部の外周面の内、外径が最大となる中間部外周面が筒状パッキンと密着して封止性能を発揮するシール面となっている。また、筒状パッキンの周方向への位置ずれを防止するために嵌合筒部の外周面に装備される凸条は、シール面となる中間部外周面よりも細身に形成された端部外周面に形成されている。しかも、凸条は、中間部外周面の外形の範囲内に収まるように、肉抜きにより形成される。そのため、凸条の成形時のヒケが中間部外周面にかかることがなく、ヒケによる封止性能の低下を防止することができる。
【0018】
更に、筒状パッキンは、端部内周面と中間部内周面との境界に形成される段差が嵌合筒部の中間部外周面の両端の段差に当接することで、軸方向への移動が規制される。そして、筒状パッキンの端部内周面と中間部内周面との境界に形成される段差は、中間部内周面の両端の全周に渡るリング状となり、段差相互の当接域が周方向全周となり、当接域が大きいため、筒状パッキンの両端部の軸方向の長さを短縮しても、安定した位置決め強度を確保することができる。言い換えると、筒状パッキンの嵌合筒部への取り付け強度を低下させずに、端部内周面を有する筒状パッキンの両端部の軸方向の長さを短縮して、その分、筒状パッキンの中間部内周面及び嵌合筒部の中間部外周面の軸方向の長さを大きくすることができる。
【0019】
即ち、上記(1)の構成によれば、ヒケによる封止性能の低下を防止することができるだけでなく、シール面となる筒状パッキンの中間部内周面及び嵌合筒部の中間部外周面の軸方向の長さを大きくすることができ、筒状パッキンによる封止性能を向上させることができる。
【0020】
また、上記(1)の構成によれば、筒状パッキンは、前端部と後端部とを同一構造にして、前後の方向性を無くすことができるため、筒状パッキンを嵌合筒部に組み付ける際に、前後方向を判別する必要が無く、組み付け時の取り扱い性を向上させることができる。
【0021】
上記(2)の構成によれば、凸条の前端の位置を、嵌合筒部の前端の位置に一致させているため、嵌合筒部に対する筒状パッキンの嵌合開始時に、即座に、嵌合筒部上の凸条と筒状パッキンの係合溝とが嵌合開始して、筒状パッキンの周方向への位置ずれを防止する。そのため、嵌合開始時における斜め嵌合時にも、筒状パッキンに捻れや位置ずれが発生することを防止することができ、筒状パッキンの嵌合筒部への被嵌作業を更に容易にすることができる。
【0022】
上記(3)の構成によれば、嵌合筒部に対する筒状パッキンの嵌合開始時に、凸条と係合溝との位置合わせが容易になり、筒状パッキンの組み付け性を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による筒状パッキンの取り付け構造によれば、嵌合筒部に対する筒状パッキンの嵌合開始初期に、凸条と筒状パッキンの係合溝とが嵌合して、筒状パッキンの周方向への位置ずれを防止する。そのため、嵌合開始初期における斜め嵌合時にも、筒状パッキンに捻れや位置ずれが発生することを防止することができ、筒状パッキンの嵌合筒部への被嵌作業を容易にすることができる。
【0024】
また、本発明による筒状パッキンの取り付け構造によれば、嵌合筒部の外周面において、凸条の成形時のヒケがシール面である中間部外周面にかかることがなく、ヒケによる封止性能の低下を防止することができる。更に、筒状パッキンの軸方向の移動を規制する筒状パッキンの両端部の軸方向の長さを短縮して、その分、シール面となる筒状パッキンの中間部内周面及び嵌合筒部の中間部外周面の軸方向の長さを大きくすることができる。従って、筒状パッキンによる封止性能を向上させることができる。
【0025】
また、本発明による筒状パッキンの取り付け構造によれば、筒状パッキンは、前端部と後端部とを同一構造にして、前後の方向性を無くすことができるため、筒状パッキンを嵌合筒部に組み付ける際に、前後方向を判別する必要が無く、組み付け時の取り扱い性を向上させることができる。
【0026】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る筒状パッキンの取り付け構造の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1〜
図6は本発明に係る筒状パッキンの取り付け構造を採用した防水コネクタの一実施形態における第1ハウジングと筒状パッキンとを示したもので、
図1は一実施形態の防水コネクタにおける第1ハウジングと筒状パッキンとの組立体の斜視図、
図2は
図1に示した組立体の前面図、
図3は
図2のA−A断面図、
図4は一実施形態における第1ハウジングの単体での斜視図、
図5は一実施形態における第1ハウジングの外側壁の一部を破断して嵌合筒部の側面を露出させた斜視図、
図6は一実施形態の筒状パッキンの単体での斜視図である。
【0030】
図1〜
図3に示すように、第1ハウジング30は、樹脂の射出成形品で、外筒壁部31と、この外筒壁部31の内側に配置された嵌合筒部32と、外筒壁部31と嵌合筒部32とを連結するハウジング後端部33に装備されたロックアーム34と、を備えている。そして、嵌合筒部32の外周には、筒状パッキン40が被嵌装着されている。
【0031】
外筒壁部31は、嵌合筒部32との間に、ハウジング嵌合空間35を画成している。ハウジング嵌合空間35は、第1ハウジング30の嵌合相手である不図示の第2ハウジングの筒状部が嵌入する空間である。
【0032】
嵌合筒部32は、
図1及び
図2に示すように、内部に端子収容孔32aが貫通形成されている。端子収容孔32aは、不図示の第2ハウジングに保持されている接続端子に嵌合接続させる端子金具を収容保持する。
【0033】
嵌合筒部32は、不図示の第2ハウジングの筒状部の内周に挿入される部位で、該嵌合筒部32の外周面に筒状パッキン40が被嵌装着されている。嵌合筒部32の外周面に被嵌装着された筒状パッキン40は、ハウジング嵌合空間35に嵌入される不図示の筒状部と嵌合筒部32との間を封止する。
【0034】
本実施形態の場合、嵌合筒部32の外周面は、
図3及び
図5に示すように、中間部外周面321と、該中間部外周面321の前後両端に延出して形成された端部外周面322,323と、それぞれの端部外周面322,323の外周に突設された凸条325と、を備えている。
【0035】
中間部外周面321は、嵌合筒部32において前後方向(
図3における矢印X1方向であり、嵌合筒部32の軸方向でもある)の中間部となる範囲の外周面である。この中間部外周面321は、横断面の外形が、角を丸めた矩形状である。中間部外周面321の横断面の外形は、軸方向の全長に渡って一定である。
【0036】
端部外周面322は、嵌合筒部32の前端32b側の外周面である。また、端部外周面323は、嵌合筒部32の後端側の外周面である。
【0037】
端部外周面322及び端部外周面323は、同一外形で、
図4に示すように、中間部外周面321の外形から一定厚の肉抜きをした細身の外形に形成されている。端部外周面322及び端部外周面323の横断面の外形は、中間部外周面321と同心で相似形状の角を丸めた矩形状である。
【0038】
端部外周面322及び端部外周面323を中間部外周面321よりも細身に形成した結果、
図3に示すように、中間部外周面321の両端には、段差321aが形成されている。
【0039】
凸条325は、それぞれの端部外周面322,323上に軸方向に沿って延設されている。本実施形態の場合、凸条325は、
図2に示すように、矩形状を成す端部外周面322,323の断面の4つの角部に突設されている。更に、凸条325は、端部外周面322,323からの最大突出位置が中間部外周面321の外形の範囲内に収まるように、端部外周面322,323を形成する際の肉抜きにより形成される。即ち、凸条325の端部外周面322,323からの突出長T(
図2参照)は、中間部外周面321の外形から肉抜きする厚み以下に設定される。本実施形態の場合は、凸条325の突出長Tは、肉抜きする厚みと同一に設定されている。従って、
図5に示すように、凸条325の最大突出面(先端面)325aと中間部外周面321とが面一に繋がっている。
【0040】
また、本実施形態の場合、
図5にも示すように、凸条325の前端325bの位置を、嵌合筒部32の前端32bの位置に一致させている。
【0041】
第1ハウジング30におけるロックアーム34は、該ロックアーム34の長手方向(
図3の矢印X1方向)の中間部に位置してハウジング後端部33に結合した揺動支点部34aと、前記長手方向の後端の押下操作部34bと、前記長手方向の前端の係合部34cとを備えている。
【0042】
このロックアーム34は、前端の係合部34cを、不図示の第2ハウジングの筒状部の外周面に突設された係止突起に係合させることで、ハウジング相互の接続状態をロックする。
【0043】
ロックアーム34は、
図3の矢印M1方向に押下操作部34bを押下すると、揺動支点部34aを支点として
図3で時計方向に回動し、係合部34cが
図3の矢印M2方向に逃げて、第2ハウジングの筒状部との係合を解除することができる。
【0044】
筒状パッキン40は、合成ゴム等の防水性の弾性材料で形成されている。この筒状パッキン40の外周面には、
図3及び
図6に示すように、軸方向(
図3の矢印X1方向)に間隔を開けて複数のリップ部41が設けられている。各リップ部41は、筒状パッキン40の外周面を周回する環状の凸条で、第2ハウジングの筒状部の内周面に密着することで、筒状パッキン40と前記筒状部との間を封止する。
【0045】
筒状パッキン40の内周面は、
図3に示すように、中間部内周面421と、該中間部内周面421の前後両端に延出して形成された端部内周面422,423と、それぞれの端部内周面422,423に形成された係合溝425と、を備える。
【0046】
中間部内周面421は、筒状パッキン40において前後方向(
図3における矢印X1方向であり、筒状パッキン40の軸方向でもある)の中間部となる範囲の内周面である。この中間部内周面421は、横断面の内形が、嵌合筒部32の中間部外周面321と相似形状となる角を丸めた矩形状である。中間部内周面421は、横断面の内形寸法が中間部外周面321の外形寸法よりも僅かに小さく設定されていて、中間部外周面321に密着嵌合する。中間部内周面421の横断面の内形は、軸方向の全長に渡って一定である。
【0047】
端部内周面422,423は、中間部内周面421と同心で、中間部内周面421よりも小径に形成されていて、嵌合筒部32における端部外周面322,323に密着嵌合する。本実施形態の場合、端部内周面422と、端部内周面423とは、同一の寸法に形成される。
【0048】
端部内周面422及び端部内周面423を中間部内周面421よりも小径に形成した結果、
図3に示すように、中間部内周面421の両端には、段差421aが形成されている。嵌合筒部32に被嵌装着された筒状パッキン40は、
図3に示すように、パッキン側の段差421aが嵌合筒部32側の段差321aに当接することで、筒状パッキン40の軸方向の移動が規制される。
【0049】
係合溝425は、嵌合筒部32の凸条325が嵌合可能に、両端の端部内周面422,423上に軸方向に沿って延設されている。係合溝425は、嵌合筒部32における凸条325の配列に対応して、端部内周面422,423の4隅に設けられている。また、本実施形態の場合、係合溝425は、凸条325が緊密に嵌合するように溝幅を設定していている。本実施形態において、係合溝425と凸条325との嵌合は、筒状パッキン40の周方向への位置ずれを防止するだけでなく、相互の軸方向の移動を抑えるように摩擦力を発生させて、嵌合筒部32に対する筒状パッキン40の抜け防止性能を高める。
【0050】
以上に説明した筒状パッキンの取り付け構造では、
図3に示すように嵌合筒部32に対する筒状パッキン40の被嵌装着が完了した状態にすると、中間部外周面321と中間部内周面421との密着によって、嵌合筒部32と筒状パッキンとの間を封止する。
【0051】
以上に説明した一実施形態の筒状パッキンの取り付け構造では、筒状パッキン40の周方向への位置ずれを防止するために嵌合筒部32の外周面に装備される凸条325は、嵌合筒部32の外周面の前端側に配置されているため、嵌合筒部32に対する筒状パッキン40の嵌合開始初期に、凸条325と筒状パッキン40の係合溝425とが嵌合して、筒状パッキン40の周方向への位置ずれを防止する。
【0052】
そのため、嵌合開始初期における斜め嵌合時にも、筒状パッキン40に捻れや位置ずれが発生することを防止することができる。その結果、筒状パッキン40の嵌合筒部32への被嵌作業を容易にすることができる。
【0053】
また、一実施形態の筒状パッキンの取り付け構造では、嵌合筒部32の外周面の内、外径が最大となる中間部外周面321が筒状パッキン40と密着して封止性能を発揮するシール面となっている。また、筒状パッキン40の周方向への位置ずれを防止するために嵌合筒部32の外周面に装備される凸条325は、シール面となる中間部外周面321よりも細身に形成された端部外周面322,323に形成されている。しかも、凸条325は、中間部外周面321の外形の範囲内に収まるように、肉抜きにより形成される。そのため、凸条325の成形時のヒケが中間部外周面321にかかることがなく、ヒケによる封止性能の低下を防止することができる。
【0054】
更に、筒状パッキン40は、端部内周面422,423と中間部内周面421との境界に形成される段差421aが嵌合筒部32の中間部外周面321の両端の段差321aに当接することで、軸方向への移動が規制される。そして、筒状パッキン40の端部内周面422,423と中間部内周面421との境界に形成される段差421aは、中間部内周面421の両端の全周に渡るリング状となり、段差相互の当接域が周方向全周となり、当接域が大きいため、筒状パッキン40の両端部の軸方向の長さを短縮しても、安定した位置決め強度を確保することができる。言い換えると、筒状パッキン40の嵌合筒部32への取り付け強度を低下させずに、端部内周面422,423を有する筒状パッキン40の両端部の軸方向の長さを短縮して、その分、筒状パッキン40の中間部内周面421及び嵌合筒部32の中間部外周面321の軸方向の長さを大きくすることができる。
【0055】
即ち、一実施形態の筒状パッキンの取り付け構造では、ヒケによる封止性能の低下を防止することができるだけでなく、シール面となる筒状パッキン40の中間部内周面421及び嵌合筒部32の中間部外周面321の軸方向の長さを大きくすることができ、筒状パッキン40による封止性能を向上させることができる。
【0056】
また、一実施形態の筒状パッキンの取り付け構造では、筒状パッキン40は、前端部と後端部とを同一構造にして、前後の方向性を無くすことができるため、筒状パッキン40を嵌合筒部32に組み付ける際に、前後方向を判別する必要が無く、組み付け時の取り扱い性を向上させることができる。
【0057】
更に、一実施形態の筒状パッキンの取り付け構造では、凸条325の前端325bの位置を、嵌合筒部32の前端32bの位置に一致させているため、嵌合筒部32に対する筒状パッキン40の嵌合開始時に、即座に、嵌合筒部32上の凸条325と筒状パッキン40の係合溝425とが嵌合開始して、筒状パッキン40の周方向への位置ずれを防止する。そのため、嵌合開始時における斜め嵌合時にも、筒状パッキン40に捻れや位置ずれが発生することを防止することができ、筒状パッキン40の嵌合筒部32への被嵌作業を更に容易にすることができる。
【0058】
また、一実施形態の筒状パッキンの取り付け構造では、嵌合筒部32に対する筒状パッキン40の嵌合開始時に、凸条325と係合溝425との位置合わせが容易になり、筒状パッキン40の組み付け性を更に向上させることができる。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0060】
例えば、上記実施形態では、嵌合筒部32の前後両端の端部外周面322,323のそれぞれに凸条325を設けていたが、前端側の端部外周面322にのみ凸条325を設けるようにしても良い。
【0061】
また、筒状パッキン40における端部内周面422,423は、封止性能には影響しないため、上記実施形態に示したように端部外周面322,323に密着する寸法ではなく、端部外周面322,323に遊嵌する程度に、寸法をゆるめて、組立性の向上を図ることも可能である。
【0062】
ここで、上述した本発明に係る筒状パッキンの取り付け構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0063】
[1] 第2ハウジングの筒状部の内周に挿入される第1ハウジング(30)の嵌合筒部(32)の外周面に被嵌装着されて前記筒状部と前記嵌合筒部(32)との間を封止する筒状パッキン(40)の前記嵌合筒部(32)への取り付け構造であって、
前記嵌合筒部(32)の外周面は、一定外形の中間部外周面(321)と、前記中間部外周面(321)の前後両端に形成されると共に前記中間部外周面(321)の外形から一定厚の肉抜きをした細身の外形に形成された端部外周面(322,323)と、前記嵌合筒部(32)の前端側の前記端部外周面(322,323)上に軸方向に沿って延設された凸条(325)であって、前記端部外周面(322,323)からの最大突出位置が前記中間部外周面(321)の外形の範囲内に収まるように、前記端部外周面(322,323)を形成する際の肉抜きにより形成される凸条(325)と、を備え、
前記筒状パッキン(40)の内周面は、前記中間部外周面(321)に密着嵌合する中間部内周面(421)と、該中間部内周面(421)の前後両端に前記中間部内周面(421)よりも小径に形成されて前記端部外周面(322,323)に嵌合する端部内周面(422,423)と、前記凸条(325)が嵌合可能に前記両端の端部内周面(422,423)上に軸方向に沿って延設された係合溝(425)と、を備え、
前記中間部外周面(321)と前記中間部内周面(421)との密着によって、前記嵌合筒部(32)と前記筒状パッキン(40)との間を封止する筒状パッキンの取り付け構造。
【0064】
[2] 上記[1]に記載の筒状パッキンの取り付け構造において、
前記凸条(325)の前端位置を、前記嵌合筒部(32)の前端位置に一致させていることを特徴とする筒状パッキンの取り付け構造。
【0065】
[3] 上記[1]又は[2]に記載の筒状パッキンの取り付け構造において、
前記中間部外周面(321)及び前記端部外周面(322,323)の外形が角を丸めた矩形状で、
前記凸条(325)が前記矩形の角部に突設されていることを特徴とする筒状パッキンの取り付け構造。