特許第5965830号(P5965830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965830
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】自動チューニング装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/02 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   G05B13/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-280782(P2012-280782)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-126895(P2014-126895A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−166655(JP,A)
【文献】 特開2004−126733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/00 − 13/04
G05D 23/00 − 23/32
G05D 3/00 − 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照情報として、バルブの特性値とポジショナの制御パラメータ値とを対応付けた制御パラメータテーブルを少なくとも記憶する参照情報記憶手段と、
前記ポジショナの制御パラメータを調整する自動チューニングの実行時に、操作器を介して前記バルブを駆動し、測定したバルブの特性値に基づいて前記制御パラメータテーブルから対応する制御パラメータ値を取得して、前記ポジショナに設定されている制御パラメータ値を更新する自動チューニング実行手段と、
前記自動チューニングの実行時に測定されたバルブの特性値を記憶する特性値記憶手段と、
前記参照情報の更新時に、外部から入力された参照情報を受信して、前記参照情報記憶手段に記憶されている参照情報を更新する参照情報更新手段と、
前記参照情報の更新後に前記制御パラメータを更新するときに、前記特性値記憶手段に記憶されているバルブの特性値を読み出して、この特性値に基づいて前記制御パラメータテーブルから対応する制御パラメータ値を取得し、前記ポジショナに設定されている制御パラメータ値を更新する制御パラメータ値更新処理手段とを備えることを特徴とする自動チューニング装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動チューニング装置において、
前記制御パラメータ値は、PIDパラメータ値であり、
前記参照情報記憶手段は、前記制御パラメータテーブルとしてPIDパラメータテーブルを記憶すると共に、他の参照情報として、操作器サイズ−応答時間テーブルとヒステリシス−誤差テーブルとを記憶し、
前記自動チューニング実行手段は、前記バルブの特性値として応答時間を測定して、前記操作器サイズ−応答時間テーブルから対応する特性値である操作器サイズを取得すると共に、前記バルブの特性値として開度の誤差を測定して、前記ヒステリシス−誤差テーブルから対応する特性値であるヒステリシスを取得し、前記操作器サイズおよびヒステリシスに対応するPIDパラメータ値を前記PIDパラメータテーブルから取得して、前記ポジショナに設定されているPIDパラメータ値を更新し、
前記特性値記憶手段は、前記バルブの特性値として前記応答時間と前記開度の誤差とを記憶し、
前記制御パラメータ値更新処理手段は、前記特性値記憶手段に記憶されているバルブの特性値として応答時間を読み出して、前記操作器サイズ−応答時間テーブルから対応する操作器サイズを取得すると共に、前記特性値記憶手段に記憶されているバルブの特性値として開度の誤差を読み出して、前記ヒステリシス−誤差テーブルから対応するヒステリシスを取得し、前記操作器サイズおよびヒステリシスに対応するPIDパラメータ値を前記PIDパラメータテーブルから取得して、前記ポジショナに設定されているPIDパラメータ値を更新することを特徴とする自動チューニング装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動チューニング装置において、
前記参照情報記憶手段と前記参照情報更新手段とは、前記ポジショナの上位装置に実装され、
前記自動チューニング実行手段と前記特性値記憶手段と前記制御パラメータ値更新処理手段とは、前記ポジショナに実装され、
通信機能を介して、前記参照情報記憶手段が複数のポジショナで共有されることを特徴とする自動チューニング装置。
【請求項4】
ポジショナの制御パラメータを調整する自動チューニングの実行時に、操作器を介してバルブを駆動し、このバルブの特性値を測定して、参照情報記憶手段に予め記憶された参照情報である制御パラメータテーブルを参照し、前記バルブの特性値に基づいて前記制御パラメータテーブルから対応する制御パラメータ値を取得して、前記ポジショナに設定されている制御パラメータ値を更新する自動チューニング実行ステップと、
前記自動チューニングの実行時に測定したバルブの特性値を特性値記憶手段に記憶させる特性値記憶ステップと、
前記参照情報の更新時に、外部から入力された参照情報を受信して、前記参照情報記憶手段に記憶されている参照情報を更新する参照情報更新ステップと、
前記参照情報の更新後に前記制御パラメータを更新するときに、前記特性値記憶手段に記憶されているバルブの特性値を読み出して、この特性値に基づいて前記制御パラメータテーブルから対応する制御パラメータ値を取得し、前記ポジショナに設定されている制御パラメータ値を更新する制御パラメータ値更新処理ステップとを含むことを特徴とする自動チューニング方法。
【請求項5】
請求項4記載の自動チューニング方法において、
前記制御パラメータ値は、PIDパラメータ値であり、
前記参照情報記憶手段は、前記制御パラメータテーブルとしてPIDパラメータテーブルを記憶すると共に、他の参照情報として、操作器サイズ−応答時間テーブルとヒステリシス−誤差テーブルとを記憶し、
前記自動チューニング実行ステップは、前記バルブの特性値として応答時間を測定して、前記操作器サイズ−応答時間テーブルから対応する特性値である操作器サイズを取得すると共に、前記バルブの特性値として開度の誤差を測定して、前記ヒステリシス−誤差テーブルから対応する特性値であるヒステリシスを取得し、前記操作器サイズおよびヒステリシスに対応するPIDパラメータ値を前記PIDパラメータテーブルから取得して、前記ポジショナに設定されているPIDパラメータ値を更新するステップを含み、
前記特性値記憶手段は、前記バルブの特性値として前記応答時間と前記開度の誤差とを記憶し、
前記制御パラメータ値更新処理ステップは、前記特性値記憶手段に記憶されているバルブの特性値として応答時間を読み出して、前記操作器サイズ−応答時間テーブルから対応する操作器サイズを取得すると共に、前記特性値記憶手段に記憶されているバルブの特性値として開度の誤差を読み出して、前記ヒステリシス−誤差テーブルから対応するヒステリシスを取得し、前記操作器サイズおよびヒステリシスに対応するPIDパラメータ値を前記PIDパラメータテーブルから取得して、前記ポジショナに設定されているPIDパラメータ値を更新するステップを含むことを特徴とする自動チューニング方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の自動チューニング方法において、
前記参照情報記憶手段は、前記ポジショナの上位装置に実装され、
前記特性値記憶手段は、前記ポジショナに実装され、
前記上位装置が、前記参照情報更新ステップを実行し、
前記ポジショナが、前記自動チューニング実行ステップと前記特性値記憶ステップと前記制御パラメータ値更新処理ステップとを実行し、
通信機能を介して、前記参照情報記憶手段が複数のポジショナで共有されることを特徴とする自動チューニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブの開度を制御するポジショナの制御パラメータ値を調整する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルブ(調節弁)を制御するためにポジショナが実用されており、この場合、ポジショナの制御対象がバルブということになる。したがって、ポジショナは、バルブを制御する機能を有するものであり、その制御機能を実現するために、バルブの特性に合わせて制御パラメータがチューニングされる必要がある。制御パラメータとしては、例えばPID制御のPIDパラメータがある。
【0003】
従来、ポジショナの自動チューニング技術として、ポジショナによりバルブを試験的に動作させ、PIDパラメータ値を決定するためのバルブ特性値(操作器サイズとヒステリシスレベル)を測定し、PIDパラメータテーブルを参照して、PIDパラメータ値を選択・設定する技術が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−269505号公報
【特許文献2】特開平11−166655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PIDパラメータテーブルなどの参照情報は、ポジショナメーカの技術者による研究開発の進展などに伴い実質的に高度化する。したがって、PIDパラメータテーブルなどの参照情報を更新することも技術的に可能であるが、この更新によりPIDパラメータを再設定する場合には、常に自動チューニングを再起動する必要がある。しかし、バルブが使用されるプラントは連続稼動されているなどの理由により、数分の時間を要する自動チューニングを再起動できないことがある。自動チューニングを再起動できない場合、結果的に稼動中のバルブは、高度化対応できないということになる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、PIDパラメータテーブルなどの参照情報が更新された場合に、数分の時間を要する自動チューニングを再起動せずにポジショナの制御パラメータ値を更新することができる自動チューニング装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動チューニング装置は、参照情報として、バルブの特性値とポジショナの制御パラメータ値とを対応付けた制御パラメータテーブルを少なくとも記憶する参照情報記憶手段と、前記ポジショナの制御パラメータを調整する自動チューニングの実行時に、操作器を介して前記バルブを駆動し、測定したバルブの特性値に基づいて前記制御パラメータテーブルから対応する制御パラメータ値を取得して、前記ポジショナに設定されている制御パラメータ値を更新する自動チューニング実行手段と、前記自動チューニングの実行時に測定されたバルブの特性値を記憶する特性値記憶手段と、前記参照情報の更新時に、外部から入力された参照情報を受信して、前記参照情報記憶手段に記憶されている参照情報を更新する参照情報更新手段と、前記参照情報の更新後に前記制御パラメータを更新するときに、前記特性値記憶手段に記憶されているバルブの特性値を読み出して、この特性値に基づいて前記制御パラメータテーブルから対応する制御パラメータ値を取得し、前記ポジショナに設定されている制御パラメータ値を更新する制御パラメータ値更新処理手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の自動チューニング装置の1構成例において、前記制御パラメータ値は、PIDパラメータ値であり、前記参照情報記憶手段は、前記制御パラメータテーブルとしてPIDパラメータテーブルを記憶すると共に、他の参照情報として、操作器サイズ−応答時間テーブルとヒステリシス−誤差テーブルとを記憶し、前記自動チューニング実行手段は、前記バルブの特性値として応答時間を測定して、前記操作器サイズ−応答時間テーブルから対応する特性値である操作器サイズを取得すると共に、前記バルブの特性値として開度の誤差を測定して、前記ヒステリシス−誤差テーブルから対応する特性値であるヒステリシスを取得し、前記操作器サイズおよびヒステリシスに対応するPIDパラメータ値を前記PIDパラメータテーブルから取得して、前記ポジショナに設定されているPIDパラメータ値を更新し、前記特性値記憶手段は、前記バルブの特性値として前記応答時間と前記開度の誤差とを記憶し、前記制御パラメータ値更新処理手段は、前記特性値記憶手段に記憶されているバルブの特性値として応答時間を読み出して、前記操作器サイズ−応答時間テーブルから対応する操作器サイズを取得すると共に、前記特性値記憶手段に記憶されているバルブの特性値として開度の誤差を読み出して、前記ヒステリシス−誤差テーブルから対応するヒステリシスを取得し、前記操作器サイズおよびヒステリシスに対応するPIDパラメータ値を前記PIDパラメータテーブルから取得して、前記ポジショナに設定されているPIDパラメータ値を更新することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の自動チューニング装置の1構成例において、前記参照情報記憶手段と前記参照情報更新手段とは、前記ポジショナの上位装置に実装され、前記自動チューニング実行手段と前記特性値記憶手段と前記制御パラメータ値更新処理手段とは、前記ポジショナに実装され、通信機能を介して、前記参照情報記憶手段が複数のポジショナで共有される。
【0010】
また、本発明の自動チューニング方法は、ポジショナの制御パラメータを調整する自動チューニングの実行時に、操作器を介してバルブを駆動し、このバルブの特性値を測定して、参照情報記憶手段に予め記憶された参照情報である制御パラメータテーブルを参照し、前記バルブの特性値に基づいて前記制御パラメータテーブルから対応する制御パラメータ値を取得して、前記ポジショナに設定されている制御パラメータ値を更新する自動チューニング実行ステップと、前記自動チューニングの実行時に測定したバルブの特性値を特性値記憶手段に記憶させる特性値記憶ステップと、前記参照情報の更新時に、外部から入力された参照情報を受信して、前記参照情報記憶手段に記憶されている参照情報を更新する参照情報更新ステップと、前記参照情報の更新後に前記制御パラメータを更新するときに、前記特性値記憶手段に記憶されているバルブの特性値を読み出して、この特性値に基づいて前記制御パラメータテーブルから対応する制御パラメータ値を取得し、前記ポジショナに設定されている制御パラメータ値を更新する制御パラメータ値更新処理ステップとを含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の自動チューニング方法の1構成例において、前記制御パラメータ値は、PIDパラメータ値であり、前記参照情報記憶手段は、前記制御パラメータテーブルとしてPIDパラメータテーブルを記憶すると共に、他の参照情報として、操作器サイズ−応答時間テーブルとヒステリシス−誤差テーブルとを記憶し、前記自動チューニング実行ステップは、前記バルブの特性値として応答時間を測定して、前記操作器サイズ−応答時間テーブルから対応する特性値である操作器サイズを取得すると共に、前記バルブの特性値として開度の誤差を測定して、前記ヒステリシス−誤差テーブルから対応する特性値であるヒステリシスを取得し、前記操作器サイズおよびヒステリシスに対応するPIDパラメータ値を前記PIDパラメータテーブルから取得して、前記ポジショナに設定されているPIDパラメータ値を更新するステップを含み、前記特性値記憶手段は、前記バルブの特性値として前記応答時間と前記開度の誤差とを記憶し、前記制御パラメータ値更新処理ステップは、前記特性値記憶手段に記憶されているバルブの特性値として応答時間を読み出して、前記操作器サイズ−応答時間テーブルから対応する操作器サイズを取得すると共に、前記特性値記憶手段に記憶されているバルブの特性値として開度の誤差を読み出して、前記ヒステリシス−誤差テーブルから対応するヒステリシスを取得し、前記操作器サイズおよびヒステリシスに対応するPIDパラメータ値を前記PIDパラメータテーブルから取得して、前記ポジショナに設定されているPIDパラメータ値を更新するステップを含むことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の自動チューニング方法の1構成例において、前記参照情報記憶手段は、前記ポジショナの上位装置に実装され、前記特性値記憶手段は、前記ポジショナに実装され、前記上位装置が、前記参照情報更新ステップを実行し、前記ポジショナが、前記自動チューニング実行ステップと前記特性値記憶ステップと前記制御パラメータ値更新処理ステップとを実行し、通信機能を介して、前記参照情報記憶手段が複数のポジショナで共有される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自動チューニングが行なわれたときに、この自動チューニングで測定したバルブの特性値を記憶しておくことにより、自動チューニングの後に参照情報が更新された場合であっても、自動チューニングを再実行せずに、更新された参照情報を利用してポジショナの制御パラメータ値を更新することができる。
【0014】
また、本発明では、参照情報記憶手段を複数のポジショナで共有することにより、参照情報を個々のポジショナ毎に更新する必要がなくなり、参照情報が誤って多様化してしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るバルブ制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る自動チューニング装置の自動チューニング実行時の動作を示すフローチャートである。
図3】操作器サイズ−応答時間テーブルの1例を示す図である。
図4】バルブ開度のステップ応答の例を示す図である。
図5】ヒステリシスレベル−誤差平均テーブルの1例を示す図である。
図6】PIDパラメータテーブルの1例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施の形態に係る自動チューニング装置の参照情報更新時の動作を示すフローチャートである。
図8】本発明の第1の実施の形態に係る自動チューニング装置のPIDパラメータ更新時の動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の第2の実施の形態に係るバルブ制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[発明の原理1]
自動チューニングは、数分の時間を要する基本的動作により測定されたバルブ特性値に基づき、PIDパラメータテーブルなどを参照してPIDパラメータ値を決定する。PIDパラメータテーブルなどが更新されることで自動チューニングの性能も高度化できることになるが、PIDパラメータテーブルに記録された情報はあくまでもPIDパラメータ設定のための参照情報なので、テーブル更新によってバルブ特性自体が変化するわけではないことに着眼した。そして、バルブ特性値を記憶しておき、テーブル更新時には記憶されていたバルブ特性値を使用してPIDパラメータ値を更新するようにすれば、テーブル更新に伴って自動チューニングを再起動せずにPIDパラメータ値を更新できることに想到した。
【0017】
[発明の原理2]
自動チューニングのPIDパラメータテーブルなどは、複数のポジショナに共通のものとして管理されるべきである。PIDパラメータテーブルをポジショナ毎に設けることにすると、テーブル更新を実施済みか否かによりポジショナの機種毎に異なるPIDパラメータテーブルを保持することになるので、複数のポジショナを使用するプラント内で、PIDパラメータ値とバルブ特性値の関連性が過度に多様化する。したがって、ポジショナが通信機能を介して接続される上位PC(Personal Computer)に実装される機器管理システムでテーブル更新実績を管理して、更新するのが好ましい。あるいは、テーブル自体は上位側で記憶しておき、PIDパラメータ値の更新のみがポジショナ側で行なわれるようにしてもよい。
【0018】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態は、上記発明の原理1に対応するものである。図1は本実施の形態に係るバルブ制御システムの構成を示すブロック図である。バルブ制御システムは、ポジショナ1と、流体の流れる通路を開閉するバルブ(調節弁)2とから構成される。バルブ2は、流体の流れる通路を開閉するバルブ本体2aと、ポジショナ1から供給される空気圧に応じてバルブ本体2aを操作する操作器2bとから構成される。
【0019】
ポジショナ1は、基本機能部10と、自動チューニングを実行して基本機能部10に設定されている制御パラメータ値であるPIDパラメータ値を更新する自動チューニング実行部14と、自動チューニングの実行時に測定されたバルブの特性値を記憶する特性値記憶部15と、PIDパラメータテーブルなどの参照情報を記憶する参照情報記憶部16と、PIDパラメータテーブルなどの参照情報を更新する参照情報更新部17と、PIDパラメータの更新指令を受けて、特性値記憶部15に記憶されているバルブ特性値を利用し、PIDパラメータテーブルなどの参照情報に基づき、基本機能部10に設定されているPIDパラメータ値を更新するPIDパラメータ値更新処理部18(制御パラメータ値更新処理手段)とを備えている。
【0020】
基本機能部10は、制御部11と、電空変換部12と、角度センサ13とを備えている。制御部11は、外部から入力される開度設定値SPと角度センサ13によって検出されるバルブ2の開度とが一致するように操作量をPID制御演算により算出する。このPID制御演算のためのPIDパラメータが制御部11に設定されている。なお、PID制御は周知の技術であるので、詳細な説明は省略する。電空変換部12は、操作量(入力電気信号)を空気圧に変換してバルブ2の操作器2bに供給する。操作器2bは、電空変換部12から供給される空気圧に応じてバルブ本体2aを操作する。こうして、バルブ2の開度、すなわちバルブ2を通る流体の流量が制御される。
【0021】
自動チューニング実行部14と特性値記憶部15と参照情報記憶部16と参照情報更新部17とPIDパラメータ値更新処理部18とは、自動チューニング装置を構成している。自動チューニング実行部14は、PIDパラメータの自動チューニング指令を受けて、バルブ2を実駆動し、このバルブ2の開度位置が連続的に変化する際の応答時間から操作器2bのサイズを決定し、またバルブ2の第1の開度位置から第2の開度位置へのステップ応答からバルブ2のヒステリシスレベルを決定し、この決定した操作器2bのサイズおよびバルブ2のヒステリシスレベルに基づいて予め作成されているPIDパラメータテーブルから対応するPIDパラメータ値を選び出し、制御部11に設定されているPIDパラメータ値を更新する。
【0022】
以下、本実施の形態の自動チューニング装置の自動チューニング実行時の動作を図2を参照して説明する。
自動チューニング実行部14は、外部から自動チューニング指令が入力されると、自動チューニングを開始し、電空変換部12に電気信号を与えることにより、バルブ2の開度位置を0%位置から100%位置へと連続的に変化させ(図2ステップS100)、このときのバルブ2の応答時間、例えばバルブ2が10%位置から90%位置に移行する時間Tupを測定する(図2ステップS101)。
【0023】
自動チューニング実行部14は、バルブ2の開度位置が100%位置に達した後、電空変換部12に電気信号を与えることにより、バルブ2の開度位置を100%位置から0%位置へと連続的に変化させ(図2ステップS102)、このときのバルブ2の応答時間、例えばバルブ2が90%位置から10%位置に移行する時間Tdownを測定する(図2ステップS103)。
【0024】
次に、自動チューニング実行部14は、バルブ2の10%位置〜90%位置間の応答時間TRESを、ステップS101で測定した時間TupとステップS103で測定した時間Tdownとの平均値として求める(図2ステップS104)。
TRES=(Tup+Tdown)/2 ・・・(1)
TupとTdownの平均値を求める理由は、開度が大きくなる方向と開度が小さくなる方向で速度差がある場合があり、TupとTdownの平均をとることによって、より正確な応答時間を求めることができるからである。
【0025】
そして、自動チューニング実行部14は、参照情報記憶部16に予め記憶されている操作器サイズ−応答時間テーブルを参照し、ステップS104で求めた応答時間TRESに対応する操作器サイズSZの値を操作器サイズ−応答時間テーブルから取得する(図2ステップS105)。図3に操作器サイズ−応答時間テーブルの1例を示す。図3に示すとおり、操作器サイズ−応答時間テーブルは、操作器サイズSZと応答時間TRESとを対応付けたものである。なお、操作器2bの内部は、ダイアフラムによって上室と下室に分割されている。その上室と下室の何れか一方にポジショナ1の出力空気圧を送り込むことで、ダイアフラムが空気圧を受けて、バルブ本体2aの弁軸を駆動する。操作器2bの駆動力の大きさはダイアフラムの面積に依存し、ダイアフラムの面積が大きいほど駆動力も大きくなる。面積の大きなダイアフラムを内蔵する操作器2bのサイズが大きくなることは言うまでもない。このように、操作器サイズSZの大小は、ダイアフラム面積の大小(駆動力の大小)を表している。図3の例では、操作器サイズSZを3段階に区分している。
【0026】
続いて、自動チューニング実行部14は、制御部11に入力する開度設定値SPを例えば40%(第1の開度位置)に設定し、次に開度設定値SPを例えば60%(第2の開度位置)に設定する。これにより、図4(A)、図4(B)に示すように、バルブ2の開度位置が40%位置から60%位置へとステップ応答する(図2ステップS106)。図4(A)はバルブ2の開度増加時と開度減少時の開度位置差の程度を表すヒステリシスレベルが小さい場合のステップ応答を示し、図4(B)はヒステリシスレベルが大きい場合のステップ応答を示している。
【0027】
自動チューニング実行部14は、このステップ応答の際のバルブ開度の誤差面積Esを測定し、この測定した誤差面積Esよりバルブ開度の誤差の平均EAを求める(図2ステップS107)。バルブ開度の誤差面積Esは、次式のように求めることができる。
【0028】
【数1】
【0029】
式(2)において、t1はバルブ2の開度が60%に達した時刻、t2は時刻t1から一定時間経過した時刻である。また、角度センサ13によって検出されるバルブ2の開度をPVとすると、誤差Eは次式のように求めることができる。
E=PV−60[%] ・・・(3)
そして、誤差平均EAは次式のように求めることができる。
EA=Es/(t2−t1) ・・・(4)
【0030】
次に、自動チューニング実行部14は、参照情報記憶部16に予め記憶されているヒステリシスレベル−誤差平均テーブルを参照し、ステップS107で求めた誤差の平均EAに対応するバルブ2のヒステリシスレベルHYSの値をヒステリシスレベル−誤差平均テーブルから取得する(図2ステップS108)。図5にヒステリシスレベル−誤差平均テーブルの1例を示す。図5に示すとおり、ヒステリシスレベル−誤差平均テーブルは、バルブ2のヒステリシスレベルHYSと誤差の平均EAとを対応付けたものである。
そして、自動チューニング実行部14は、測定したバルブ特性値、具体的には応答時間TRESと誤差の平均EAとを、特性値記憶部15に記憶させる(図2ステップS109)。
【0031】
最後に、自動チューニング実行部14は、参照情報記憶部16に予め記憶されているPIDパラメータテーブルを参照して、ステップS105,S108で求めた操作器サイズSZおよびヒステリシスレベルHYSに対応するPIDパラメータ値をPIDパラメータテーブルから取得し、制御部11に設定されているPIDパラメータ値を、PIDパラメータテーブルから取得した値に更新する(図2ステップS110)。図6にPIDパラメータテーブルの1例を示す。図6に示すとおり、PIDパラメータテーブルは、操作器サイズSZおよびヒステリシスレベルHYSと、PIDパラメータ(比例ゲインKP、積分時間TI、微分時間TD)とを対応付けたものである。以上で、自動チューニング実行部14の動作が終了する。なお、このような自動チューニングの手法は特許文献2に開示されている。
【0032】
次に、本実施の形態の自動チューニング装置の参照情報更新時の動作を図7を参照して説明する。参照情報記憶部16に記憶される参照情報(操作器サイズ−応答時間テーブル、ヒステリシスレベル−誤差平均テーブル、PIDパラメータテーブル)が、ポジショナメーカの技術者による研究開発の進展などに伴い実質的に高度化(内容の詳細化や見直しによる修正など)すると、改訂・更新の必要性が生じる。
【0033】
オペレータは、操作器サイズ−応答時間テーブル、ヒステリシスレベル−誤差平均テーブル、およびPIDパラメータテーブルのうち少なくとも1つの参照情報を更新したい場合、図示しない入力装置を操作して更新したい参照情報を入力する。参照情報更新部17は、入力された参照情報を受信し(図7ステップS200)、参照情報記憶部16に記憶されている参照情報を、受信した参照情報に更新する(図7ステップS201)。このような参照情報の更新は、通常のダウンロード技術で実現できる。
【0034】
次に、参照情報更新後のPIDパラメータ更新時の動作を図8を参照して説明する。PIDパラメータ値更新処理部18は、外部からPIDパラメータの更新指令が入力されると、特性値記憶部15に記憶されているバルブ特性値である応答時間TRESを読み出す(図8ステップS300)。
続いて、PIDパラメータ値更新処理部18は、参照情報記憶部16に記憶されている操作器サイズ−応答時間テーブルを参照し、ステップS300で読み出した応答時間TRESに対応する操作器サイズSZの値を操作器サイズ−応答時間テーブルから取得する(図8ステップS301)。
【0035】
次に、PIDパラメータ値更新処理部18は、特性値記憶部15に記憶されているバルブ特性値である誤差の平均EAを読み出す(図8ステップS302)。
続いて、PIDパラメータ値更新処理部18は、参照情報記憶部16に記憶されているヒステリシスレベル−誤差平均テーブルを参照し、ステップS302で読み出した誤差の平均EAに対応するバルブ2のヒステリシスレベルHYSの値をヒステリシスレベル−誤差平均テーブルから取得する(図8ステップS303)。
【0036】
そして、PIDパラメータ値更新処理部18は、参照情報記憶部16に記憶されているPIDパラメータテーブルを参照して、ステップS301,S303で求めた操作器サイズSZおよびヒステリシスレベルHYSに対応するPIDパラメータ値をPIDパラメータテーブルから取得し、制御部11に設定されているPIDパラメータ値を、PIDパラメータテーブルから取得した値に更新する(図8ステップS304)。以上で、PIDパラメータ値更新処理部18の動作が終了する。
【0037】
以上のように、本実施の形態では、自動チューニングが行なわれたときに、この自動チューニングで測定したバルブ特性値を記憶しておくことにより、自動チューニングの後に参照情報が更新された場合であっても、自動チューニング動作(バルブ2の開度位置を0%位置から100%位置へと連続的に変化させる動作、バルブ2の開度位置を100%位置から0%位置へと連続的に変化させる動作、バルブ2の開度位置がステップ応答する動作)を再実行せずに、更新された参照情報を利用してPIDパラメータ値を更新することができる。
【0038】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記発明の原理2に対応するものである。図9は本実施の形態に係るバルブ制御システムの構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態のバルブ制御システムは、複数のポジショナ1−1,1−2と、複数のバルブ2−1,2−2と、複数のポジショナ1−1,1−2に共通の参照情報を管理する機器管理システム4とから構成される。各バルブ2−1,2−2は、バルブ本体2a−1,2a−2と、ポジショナ1−1,1−2から供給される空気圧に応じてバルブ本体2a−1,2a−2を操作する操作器2b−1,2b−2とから構成される。
【0039】
各ポジショナ1−1,1−2は、それぞれ基本機能部10と、自動チューニング実行部14と、特性値記憶部15と、PIDパラメータ値更新処理部18とを備えている。
機器管理システム4は、参照情報記憶部16と、参照情報更新部17とを備えている。
【0040】
本実施の形態は、ポジショナ1−1,1−2の上位装置である機器管理システム4に、第1の実施の形態で説明した参照情報記憶部16および参照情報更新部17を設けたものであり、参照情報記憶部16および参照情報更新部17を、通信機能を介して複数のポジショナ1−1,1−2が共有する形態になる。この形態により、参照情報を個々のポジショナ毎に更新する必要がなくなる。
【0041】
本実施の形態の処理の流れは第1の実施の形態と同様であるので、図2図7図8を用いて本実施の形態のバルブ制御システムの動作を説明する。
自動チューニング実行時の処理においてポジショナ1−1,1−2が機器管理システム4の参照情報記憶部16を利用する際(図2ステップS105,S108,S110)、および参照情報更新後のPIDパラメータ更新時の処理においてポジショナ1−1,1−2が機器管理システム4の参照情報記憶部16を利用する際には(図8ステップS301,S303,S304)、通信機能を介して行なわれることになる。
【0042】
また、参照情報更新時の処理(図7ステップS200,S201)は、機器管理システム4側で行なわれる。
こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができると共に、参照情報が誤って多様化してしまうことを防ぐことができる。
【0043】
第1、第2の実施の形態で説明したポジショナ1と機器管理システム4の各々は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。各々の装置のCPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、ポジショナの制御パラメータ値を調整する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1,1−1,1−2…ポジショナ、2,2−1,2−2…バルブ、2a,2a−1,2a−2…バルブ本体、2b,2b−1,2b−2…操作器、4…機器管理システム、10…基本機能部、11…制御部、12…電空変換部、13…角度センサ、14…自動チューニング実行部、15…特性値記憶部、16…参照情報記憶部、17…参照情報更新部、18…PIDパラメータ値更新処理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9