(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965836
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】カッティングインサートおよびカッティングインサートアッセンブリー
(51)【国際特許分類】
B23C 5/22 20060101AFI20160728BHJP
B23C 5/10 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
B23C5/22
B23C5/10 D
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-506642(P2012-506642)
(86)(22)【出願日】2010年3月28日
(65)【公表番号】特表2012-524666(P2012-524666A)
(43)【公表日】2012年10月18日
(86)【国際出願番号】IL2010000263
(87)【国際公開番号】WO2010125554
(87)【国際公開日】20101104
【審査請求日】2013年2月6日
【審判番号】不服2014-25528(P2014-25528/J1)
【審判請求日】2014年12月12日
(31)【優先権主張番号】198376
(32)【優先日】2009年4月26日
(33)【優先権主張国】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】306037920
【氏名又は名称】イスカーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギル ヘクト
【合議体】
【審判長】
栗田 雅弘
【審判官】
西村 泰英
【審判官】
平岩 正一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−263856(JP,A)
【文献】
特開2005−305635(JP,A)
【文献】
実開平2−135115(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/22,B23B 27/14-27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポケットボア(54)を含むポケットベース(56)を有するインサートポケット(30)と、
締付け部材の頭部(58)と、前記ポケットボア(54)の中に受け入れられる締付け部材の結合部(59)とを有する締付け部材(50)と、カッティングインサート(40
、140、340)と、を含み、
該カッティングインサートは、
第1の表面(62、162、362)と、第2の表面(64、164、364)と、それらの間に延びる外周面(66、166、366)と、を含み、前記第1の表面(62、
162、362)および前記第2の表面(64、164、364)が、それぞれ、第1の外縁部(42、142、342)および第2の外縁部(44、144、344)で前記外周面(66、166、366)と交わり、前記第1の外縁部(42、142、342)および前記第2の外縁部(44、144、344)のうちの少なくとも一方の少なくとも一部が切れ刃(46、146、346)を形成し、
穴の軸線Bを有し、前記第1の表面と前記第2の表面との間に延びるカッティングインサートボア(60、160、360)であって、前記第1の表面(62、162、362)に開口する第1の穴部(68、168、368)と、前記第2の表面(64、164、364)に開口する第2の穴部(70、170、370)と、前記第1の穴部(68、168、368)と前記第2の穴部(70、170、370)との間に位置しそれらとそれぞれ結合する第3の穴部(72、172、372)と、を含むカッテッングインサートボアと、を含み、
前記第3の穴部(72、172、372)は、前記穴の軸線Bに対し垂直な長い方の中心線Mおよび前記穴の軸線Bに対し垂直な短い方の中心線Nをそれぞれ有し、該中心線Mおよび中心線Nが、前記穴の軸線Bに対し垂直にとられた第3の穴部(72、172、372)の断面の長い方の寸法DMおよび短い方の寸法DNをそれぞれ画定し、前記断面が単一の楕円形のみを有し、
前記第1の穴部(68)は、前記第1の表面(62)に隣接する第1の穴の非当接面(69´)と、該第1の穴の非当接面(69´)から前記第2の表面(64)に向かって延び、前記中心線Mに関し対称である第1の穴の当接面(69”)とを有し、
前記カッティングインサート(40、140、340)は、前記締付け部材の頭部の下部(80)が前記第1の穴の当接面(69”)と係合した状態のインサート締結位置と、
着脱位置との間で移動可能であり、
前記インサート締結位置において、前記カッティングインサート(40、140、240、340)の上面図では、前記締付け部材の頭部(58)が、あまりに大きく前記カッティングインサートボア(60、160、260、360)を貫通できない外形を有し、
前記着脱位置において、前記カッティングインサート(40、140、240、340
)の上面図では、前記締付け部材の頭部(58)の外形が、前記カッティングインサートボア(60、160、260、360)を貫通できるのに十分なだけ小さく、
前記締付け部材の結合部は、前記締付け部材の頭部の直径に等しい直径を有し、
前記締付け部材の頭部が、第1の凹部(151)を有し、前記結合部が、前記第1の凹部(151)と同じ寸法を有する第2の凹部(155)を有するカッティングインサートアッセンブリー(22)。
【請求項2】
ポケットボア(54)を含むポケットベース(56)を有するインサートポケット(30)と、
締付け部材の頭部(58)と、前記ポケットボア(54)の中に受け入れられる締付け部材の結合部(59)とを有する締付け部材(50)と、カッティングインサート(40、140、340)と、を含み、
該カッティングインサートは、
第1の表面(62、162、362)と、第2の表面(64、164、364)と、それらの間に延びる外周面(66、166、366)と、を含み、前記第1の表面(62、162、362)および前記第2の表面(64、164、364)が、それぞれ、第1の外縁部(42、142、342)および第2の外縁部(44、144、344)で前記外周面(66、166、366)と交わり、前記第1の外縁部(42、142、342)および前記第2の外縁部(44、144、344)のうちの少なくとも一方の少なくとも一部が切れ刃(46、146、346)を形成し、
穴の軸線Bを有し、前記第1の表面と前記第2の表面との間に延びるカッティングインサートボア(60、160、360)であって、前記第1の表面(62、162、362)に開口する第1の穴部(68、168、368)と、前記第2の表面(64、164、364)に開口する第2の穴部(70、170、370)と、前記第1の穴部(68、168、368)と前記第2の穴部(70、170、370)との間に位置しそれらとそれぞれ結合する第3の穴部(72、172、372)と、を含むカッテッングインサートボアと、を含み、
前記第3の穴部(72、172、372)は、前記穴の軸線Bに対し垂直な長い方の中心線Mおよび前記穴の軸線Bに対し垂直な短い方の中心線Nをそれぞれ有し、該中心線Mおよび中心線Nが、前記穴の軸線Bに対し垂直にとられた第3の穴部(72、172、372)の断面の長い方の寸法DMおよび短い方の寸法DNをそれぞれ画定し、前記断面が単一の楕円形のみを有し、
前記第1の穴部(68)は、前記第1の表面(62)に隣接する第1の穴の非当接面(69´)と、該第1の穴の非当接面(69´)から前記第2の表面(64)に向かって延
び、前記中心線Mに関し対称である第1の穴の当接面(69”)とを有し、
前記第3の穴部(72)の平面Pは、前記長い方の中心線Mと前記短い方の中心線Nとによって画定され、前記カッティングインサート(140、340)は、前記第3の穴部(72)の平面Pに対し対称である鏡映であり、
前記カッティングインサート(40、140、340)は、前記締付け部材の頭部の下
部(80)が前記第1の穴の当接面(69”)と係合した状態のインサート締結位置と、
着脱位置との間で移動可能であり、
前記インサート締結位置において、前記カッティングインサート(40、140、24
0、340)の上面図では、前記締付け部材の頭部(58)が、あまりに大きく前記カッティングインサートボア(60、160、260、360)を貫通できない外形を有し、
前記着脱位置において、前記カッティングインサート(40、140、240、340)の上面図では、前記締付け部材の頭部(58)の外形が、前記カッティングインサートボア(60、160、260、360)を貫通できるのに十分なだけ小さく、
前記締付け部材の結合部は、前記締付け部材の頭部の直径に等しい直径を有し、
前記締付け部材の頭部が、第1の凹部(151)を有し、前記結合部が、前記第1の凹部と同じ寸法を有する第2の凹部(155)を有するカッティングインサートアッセンブリー(22)。
【請求項3】
前記穴の平面Pは、前記長い方の中心線Mと前記短い方の中心線Nとによって画定され、前記カッティングインサート(160、360)は、前記穴の平面Pに対し対称である鏡映である請求項1に記載のカッティングインサートアッセンブリー(22)。
【請求項4】
前記穴の平面Pは、前記長い方の中心線Mと前記短い方の中心線Nとによって画定され、前記カッティングインサート(160、360)は、前記穴の平面Pに対し対称である鏡映である請求項2に記載のカッティングインサートアッセンブリー(22)。
【請求項5】
前記カッティングインサートボア(360)は、第1の円筒形の穴部(368)および第2の円筒形の穴部(370)を有する請求項1に記載のカッティングインサートアッセンブリー(22)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ頭を有するねじのような留め具によってカッティングインサートが脱着可能に固定された切削工具、例えば、金属切削工具の分野に関する。より詳細には、本発明は、カッティングインサートおよびそのアッセンブリーならびにファスナの取外しを必要とせずにカッティングインサートを交換するまたは割り出しする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,155,754号明細書(特許文献1)は、標準的なカッティングインサートおよび特別な止めねじを有し、ねじ頭が2つの反対側の垂直面取り部を有する切削工具の締付け構成に関する。この構成では、カッティングインサートは、カッティングインサートシートのねじ穴から、止めねじを完全に外すことなく、取り外すことができる。
【0003】
この構成に伴う欠点は、ねじ頭が対称ではなく、したがってねじのねじ山と穴のねじ山は、ねじが締結された後で、カッティングインサートをそのシートの中に当接しかつ固定するためにねじ頭の当接面が正しく向けられることを確実にするのに十分なだけ精密に設計されなければならないことである。
【0004】
他の欠点は、面取りにより材料が除去された結果としてねじ頭が弱くなることである。したがって、面取りされていないねじ頭と比較して、ねじ頭により小さいトルクをかけることしかできない。これは、カッティングインサートを配置する際の不正確さ、またはインサートが突然はずれることなど、予測されない、望ましくない影響につながる可能性がある。
【0005】
米国特許第4,397,592号明細書(特許文献2)は、標準的なカッティングインサートおよびカッティングインサートを非対称にクランプする止めピンを有するカッティングインサートのための締付け構成を説明する。この構成は、止めピンをゆるめ、その円筒形の部分が受け入れ穴のその対応する部分の外に出るまでこれを持ち上げ、かつクランプ用頭部の上を同軸でカッティングインサートを摺動することが可能になるまで止めピンを傾けるだけで、カッティングインサートの割り出しを可能にする。
【0006】
この構成における或る欠点は、止めピンクランプ用頭部とインサート孔の係止面との間の小さいかつ非対称の当接領域である。この非対称性は、対称の当接と比較してカッティングインサート内で非対称に力が分布することにつながり、これは、配置の不正確さ、カッティングインサートの寿命の短縮、または切れ刃の破損につながる可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点を著しく低減し、即ち、解消する操作を行うためのカッティングインサートアッセンブリーを提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,155,754号明細書
【特許文献2】米国特許第4,397,592号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施例に従って、切削工具の切削部に配置されたカッティングインサートおよびカッティングインサートアッセンブリーが提供される。
【0010】
第1の実施例に従って、カッティングインサートは、第1の表面と、第2の表面と、それらの間に延びる外周面と、を含み、前記第1の表面および前記第2の表面が、それぞれ、第1の外縁部および第2の外縁部で前記外周面と交わり、前記第1の外縁部および前記第2の外縁部のうちの少なくとも一方の少なくとも一部が切れ刃を形成し、穴の軸線Bを有し、前記第1の表面と前記第2の表面との間に延びるカッティングインサートボアであって、前記第1の表面に開口する第1の穴部と、前記第2の表面に開口する第2の穴部と、前記第1の穴部と前記第2の穴部との間に位置しそれらとそれぞれ結合する第3の穴部と、を含むカッテッングインサートボアと、を含む。第3の穴部は、穴の軸線Bに対し垂直な穴の平面Pを含み、穴の平面P内でカッティングインサートボアは、非円形の断面を有する。前記第3の穴部は、前記穴の軸線Bに対し垂直な長い方の中心線Mおよび前記穴の軸線Bに対し垂直な短い方の中心線Nをそれぞれ有し、該中心線Mおよび中心線Nが、前記穴の軸線Bに対し垂直にとられた第3の穴部の断面の長い方の寸法D
Mおよび短い方の寸法D
Nをそれぞれ画定し、前記断面が楕円形を有する。
【0011】
本発明の第2の実施例に従って、カッティングインサートは、長い方の中心線Mおよび短い方の中心線Nのそれぞれによって画定された穴の平面Pに関して対称である鏡映である。
【0012】
本発明の実施例に従って、カッティングインサートボアは、長い方の中心線Mおよび短い方の中心線Nのそれぞれによって画定された穴の平面Pに関して対称である鏡映である。
【0013】
本発明の第3の実施例に従って、カッティングインサートは、第1の表面と、第2の表面と、それらの間に延びる外周面と、を含み、前記第1の表面および前記第2の表面が、それぞれ、第1の外縁部および第2の外縁部で前記外周面と交わり、前記第1の外縁部および前記第2の外縁部のうちの少なくとも一方の少なくとも一部が切れ刃を形成し、穴の軸線Bを有し、前記第1の表面と前記第2の表面との間に延びるカッティングインサートボアであって、前記第1の表面に開口する第1の穴部と、前記第2の表面に開口する第2の穴部と、を含むカッティングインサートボアとを含む。第2の穴部は穴の軸線Bに対し垂直な穴の平面Pを含み、穴の平面P内でカッティングインサートボアは、非円形の断面を有する。前記第2の穴部は、前記穴の軸線Bに対し垂直な長い方の中心線Mおよび前記穴の軸線Bに対し垂直な短い方の中心線Nをそれぞれ有し、該中心線Mおよび中心線Nが、穴の軸線Bに対し垂直にとられた前記第2の穴部の断面における長い方の寸法D
Mおよび短い方の寸法D
Nをそれぞれ画定し、前記断面は、楕円形を有する。
【0014】
本発明の第4の実施例に従って、カッティングインサートボアは、第1の円筒形の穴部および第2の円筒形の穴部を有する。
【0015】
本発明に従って、カッティングインサートアッセンブリーは、ポケットボアを含むポケットベースを有するインサートポケットと、締付け部材の頭部と、前記ポケットボアの中に受け入れられる締付け部材の結合部とを有する締付け部材と、前記締付け部材の頭部の下部が第1の穴の当接面と係合した状態のインサート締結位置と、着脱位置との間で移動可能であるカッティングインサートと、を含み、前記インサート締結位置において、前記カッティングインサートの上面図では、前記締付け部材の頭部が、あまりに大きく前記カッティングインサートボアを貫通できない外形を有し、前記着脱位置において、前記カッティングインサートの上面図では、前記締付け部材の頭部の外形が、前記カッティングインサートボアを貫通できるのに十分なだけ小さい。
【0016】
本発明の実施例に従って、締付け部材の結合部は、締付け部材の頭部の直径に等しい直径を有する。
【0017】
本発明の実施例に従って、締付け部材の頭部は第1の凹部を有し、結合部は、第1の凹部と同じ寸法を有する第2の凹部を有する。
【0018】
本発明に従って、切削工具のカッティングインサートアッセンブリーにおけるポケットボアおよびポケットベースを有するインサートポケットの中に、締付け部材の頭部および締付け部材の結合部を有する締付け部材によって固定されたカッティングインサートを交換または割り出しするための方法であって、
a)前記締付け部材の結合部が部分的に結合された状態において前記ポケットボアと結合されたままであるように前記締付け部材を前記ポケットボアから部分的に取り外し、
b)前記カッティングインサートを前記ポケットベースから持ち上げられた位置まで持ち上げ、
c)前記カッティングインサートを開始回転位置から長い方の中心線Mの回りに回転させ、該カッティングインサートを前記長い方の中心線Mに対し垂直に着脱位置まで移動させ、その場合、前記カッティングインサートの上面図では、前記締付け部材の頭部の外形は前記カッティングインサートボアを貫通するのに十分なだけ小さい形状を画定し、
d)前記締付け部材の頭部から前記カッティングインサートを持ち上げ外すことにより、前記カッティングインサートを取り外すことを含む。
【0019】
本発明をよりよく理解するために、またこれが実際にどのようにして実行され得るかを示すために、ここで添付の図面を参照する。
【0020】
例示を単純かつ明確にするために、複数の図に示された複数の要素は、必ずしも正確にまたはある縮尺で描かれていないことを理解されたい。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確にするために他の複数の要素に対して誇張される場合があり、または、いくつかの物理的構成部品が1つの機能ブロックまたは要素の中に含まれる場合がある。さらに、適切であると考えられる場所で、参照数字は、対応する、即ち、類似する複数の要素を示すように複数の図の中で繰返される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る切削工具の等角投影図である。
【
図2】
図1に示される切削工具の切削部の分解図である。
【
図3】本発明の複数の実施例に係るカッティングインサートの上面図である。
【
図4】
図3のIV−IV線に沿って見た断面図である。
【
図5】カッティングインサートがインサートポケットの中でインサート締結位置にある状態で、
図1に示された切削部の上面図である。
【
図6】
図5のVI−VI線に沿って見た断面図である。
【
図7】持ち上げられた締付け部材を示す
図6に示されるものと同様の断面図である。
【
図8】持ち上げられた位置にあるカッティングインサートを示す
図7に示されたものと同様の断面図である。
【
図9】開始回転位置にあるカッティングインサートを示す
図8に示されたものと同様の断面図である。
【
図10】中間回転位置にあるカッティングインサートを示す
図6に示されたものと同様の断面図である。
【
図11】
図12のXI−XI線に沿って見た断面図、すなわち、言い換えると、締付け部材の頭部がカッティングインサートボアを通り抜けることを可能にする着脱位置にあるカッティングインサートを示す
図5に示されたものと同様の断面図である。
【
図12】
図11におけるE方向から示されるカッティングインサートの上面図で見た、
図1に示された切削工具の切削部の図である。
【
図13】本発明の第2の実施例に係るカッティングインサートの上面図である。
【
図14】
図13におけるXIV−XIV線に沿って見た断面図である。
【
図15】本発明の第3の実施例に係るカッティングインサートの上面図である。
【
図16】
図15のXVI−XVI線に沿って見た断面図である。
【
図17】本発明の第4の実施例に係るカッティングインサートの上面図である。
【
図18】
図17におけるXVIII−XVIII線に沿って見た断面図である。
【
図19】本発明のいくつかの実施例に係る締付け部材の側部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明において、本発明の種々の面が説明されるだろう。説明する目的で、本発明の徹底的な理解をもたらすために具体的な構成および詳細が、説明される。しかしながら、本発明がこの中に含まれる具体的な詳細なしに実施され得ることも当業者には明らかであろう。さらに、周知の複数の特徴は、省略され、即ち、本発明を不明瞭にしないようにするために簡略化される場合がある。
【0023】
総じて、複数の図を参照し、本発明の複数の実施例に従う5つの切削部20を有する切削工具10の等角投影図を示す
図1を特に参照する。各切削部20は、締付け部材50によってカッティングインサート40が解放可能にその中に固定された状態で、インサートポケット30を含むカッティングインサートアッセンブリー22を有している。切削部20の数は、5つに限定されず、カッティングインサート40の形状は、いずれかの特定の形状に限定されない。
【0024】
カッティングインサートアッセンブリー22の分解図を示す
図2をここで参照する。インサートポケット30は、隣接する第1の当接壁52および第2の当接壁53と、第1の当接壁52および第2の当接壁53が延在するポケットベース56の中のポケットボア54とを有する。いくつかの実施例によれば、ポケットボア54は、ねじが切られ得る。カッティングインサート40は、カッティングインサートボア60と、第1の表面62と、対向する第2の表面64と、それらの間に延びる外周面66と、を有する。カッティングインサートボア60は、第1の表面62と第2の表面64との間に延びる。第1の表面62および第2の表面64は、それぞれ、第1の外縁部42および第2の外縁部44で外周面66と交わり、第1の外縁部42および第2の外縁部44のうちの少なくとも一方の少なくとも一部は、切れ刃46を形成する。外周面66における複数の部分は、第1の当接壁52および第2の当接壁53の一方または両方と当接し得る。
【0025】
ここで
図3および
図4に注目される。カッティングインサートボア60は、第1の穴部68と、第2の穴部70と、第1の穴部68と第2の穴部70との間に配置された第3の穴部72、即ち、中間の穴部とを有する。第1の穴部68および第2の穴部70は、第3の穴部72により連結している。第1の穴部68は、第1の表面62に隣接する第1の穴の非当接面69’、および、第1の穴の非当接面69’から内向きにかつ下向きに第2の表面64に向かって延びる複数の第1の穴の当接面69”を有する。第3の穴部72は、穴の軸線Bに対し垂直な穴の平面Pを含み、該穴の平面P内で穴60は、非円形の断面を有する。いくつかの実施例において、穴の平面Pは、穴の軸線Bに対し垂直な長い方の中心線Mと、穴の軸線Bに対し垂直な短い方の中心線Nによって画定される。長い方の中心線Mと短い方の中心線Nは、互いに対し垂直であり、かつ穴の軸線Bに対し垂直にとられた第3の穴部72の断面における長い方の穴の寸法D
Mおよび短い方の穴の寸法D
Nをそれぞれ画定する。第1の穴の当接面69”は、長い方の中心線Mに関し対称であり、この対称性は、カッティングインサート40の本体に加えられるトルクなど望ましくない影響が生じないことを確実にするのに重要である。
【0026】
第3の穴部72の非円形の断面は、穴の平面P内に位置しており、いくつかの実施例に従って、楕円の形状を有し得る。穴の軸線Bに対し垂直にとられた第1の穴部68および第2の穴部70の断面は、楕円の形状を有していない。本発明のいくつかの実施例に従って、楕円形のという言葉は、図形の中心で交わる2つの垂直な軸線を有する凸形を有する閉じた曲線によって形成される図形を意味するものとする。その図形は、複数の軸線のうちの一方に沿って他方の軸線に沿うよりも幅広であり、2つの軸線の各々に沿って中心から外側に移動するにつれて幅が漸減する。いくつかの実施例に従って、第3の穴部72の楕円形の断面は、楕円形状であり得る。穴の軸線Bに対し垂直にとられた第3の穴部72の断面は、穴の軸線Bに対し垂直にとられたカッティングインサートボア60のいかなる断面よりも小さい。
【0027】
さらにここで、
図5〜
図8に注目する。カッティングインサート40は、締付け部材50によってインサートポケット30の中に固定される。締付け部材50は、締付け部材の頭部58と、締付け部材の首部57と、雄ねじ山、または、その他の適切な結合手段を有し得る締付け部材の結合部59と、上下方向を定義する締付け部材の軸線Sとを有する。締付け部材の首部57は、締付け部材の結合部59と締付け部材の頭部58との間を連結する。締付け部材の頭部58は、外周面79、および、締付け部材の頭部直径D
Sを有し、ここに、D
N<D
S<D
Mである。締付け部材の頭部58は、締付け部材の頭部の上部78と、締付け部材の頭部の外周面79に位置する締付け部材の頭部の下部80とを有する。いくつかの実施例に従って、締付け部材の頭部58は、締付け部材の軸線Sに沿った図において締付け部材の頭部58が円形の外形を有するように、締付け部材の軸線Sの回りに回転対称である。いくつかの実施例に従って、締付け部材の頭部上部78および頭部下部80は、互いの接合部81から延びる。いくつかの実施例に従って、接合部81は、締付け部材の軸線Sに沿った図において締付け部材の頭部58の円形の外形が接合部81の外形となるように、締付け部材の頭部58の最も大きい部分である。
【0028】
図6に見られるように、カッティングインサート40がインサートポケット30の中に固定される場合、すなわち、インサート締結位置にある場合、締付け部材の頭部58は、締付け部材の頭部の下部80が第1の穴の当接面69”に係合した状態でカッティングインサート穴60の中に位置している。この位置において、大きい当接領域が、締付け部材の下部80と第1の穴の当接面69”との間に形成され、したがって、締付け部材が締め付けられる場合、主に下向きに、ポケットベース56に向かって大きい結合力が生じる。締付け部材の結合部59は、ポケットボア54の中に受け入れられ、完全に結合された状態でポケットボア54に結合される。いくつかの実施例に従って、締付け部材の結合部59は、雄ねじ山を有し、ポケットボア54は、雌ねじ山を有し、締付け部材の結合部59は、ポケットボア54の中にねじ込められ受け入れられ得る。
図5から分かるようにおよび
図6から理解されるように、カッティングインサート40が、インサートポケット30の中に固定される場合、すなわち、インサート締結状態で、カッティングインサート40の上面図では、締付け部材の頭部58は、あまりに大きくカッティングインサートボア60を貫通しない外形を有し、それにより、締付け部材の頭部58がカッティングインサートボア60を貫通できない。
【0029】
締付け部材50について、中間の中心線Cは、短い方の中心線Nと締付け部材50との交差線によって画定される。中間の中心線Cは、交差線の2つの端点P1およびP2を有する(
図6および
図8〜
図12に示されるように)。中間の中心線Cは、穴の短い方の寸法D
Nよりも常に小さい中間の中心線の寸法D
Cを有する。中間の中心線Cが短い方の中心線Nと締付け部材の頭部58との交差線によって画定されるので、中間の中心線Cは、短い方の中心線N上に位置する。
図10および
図11において、中間の中心線Cと短い方の中心線Nとは、同一の広がりをもつようであるが、この場合そうではなく、
図10および
図11に示された状態では、図における線の解像度は、中間の中心線Cが
図6に示された状態における短い方の中心線Nよりもわずかに短いことを示すのに十分なほど大きくないので、そのように見えるにすぎない。
【0030】
カッティングインサート40を交換、または、割り出しするために、以下で示されるように、締付け部材50をポケットボア54から完全に取り外す必要はない。カッティングインサート40を交換、または、割り出しするために、締付け部材の結合部59が部分的に結合された状態で(
図7〜
図11参照)ポケットボア54と結合されたままにあるように、締付け部材50をポケットボア54から部分的に取り外すことで十分である。締付け部材の結合部59が部分的に結合された状態にある場合締付け部材の頭部58は、締付け部材の結合部59が十分に結合された位置(
図6に示されるように)にある場合よりもポケットベース56からもっと離れる。締付け部材の結合部59が部分的に結合された状態にある場合、カッティングインサート40は、ポケットベース56から持ち上げられる位置(
図8参照)まで持ち上げられ得る。カッティングインサート40が持ち上げられた状態で、カッティングインサート40は、
図9に示されるように開始回転位置から長い方の中心線Mの回りに回転可能とされ、同時に、カッティングインサート40を長い方の中心線Mに対し垂直に、
図10に示されるように中間の回転位置を経てカッティングインサート40が着脱位置(
図11参照)に到達するまで動かしながら、
図12に示されるように、カッティングインサート40の上面図において、締付け部材の頭部58の外形はカッティングインサートボア60を貫通するのに十分に小さく、それにより、締付け部材の頭部58がカッティングインサートボア60を貫通可能である。着脱位置において、カッティングインサート40は、持ち上げて締付け部材の頭部58から取り外すことによってインサートポケット30から取り外され得る。締付け部材の結合部59がポケットボア54に留められる間に交換のカッティングインサートを設置するために、前述の操作が逆の順序で行われる。
【0031】
カッティングインサート40の上述の回転中、中間の中心線の寸法D
Cの変動は、締付け部材の頭部50がどのようにして徐々に内側に嵌め合い、最終的に第3の穴部72の断面における楕円形を貫通するかを示している(
図9〜
図12に示されるように)。
【0032】
他の実施例に従って、カッティングインサートボア160を有するカッティングインサート140が、
図13および
図14に示される。カッティングインサート140は、第1の外縁部142および第2の外縁部144をそれぞれ有し、第1の外縁部142および第2の外縁部144のうちの少なくとも一方の少なくとも一部が、切れ刃146を形成する。カッティングインサートボア160は、第1の穴部168と、第2の穴部170と、第3の穴部172とを含む。第1の穴部は、第1の表面162に開口しており、第2の穴部170は、第2の表面164に開口しており、第3の穴部172は、概ね、第1の穴部168と第2の穴部170との間に位置する。カッティングインサートボア160のいくつかの領域において、第1の穴部168および第2の穴部170は、接触している。第3の穴部172は、カッティングインサート140の外周面166と同じ高さを有するいくつかの弓形部分を有し、この場合、第3の穴部は、少なくとも第1の表面262に部分的に開口している。また、第1の穴部168と第2の穴部170とが同一である場合、カッティングインサート140は、裏表ともに使えるカッティングインサートである。
【0033】
図15および
図16に示される他の実施例に従って、カッティングインサート240は、第1の外縁部242および第2の外縁部244をそれぞれ有し、第1の外縁部242および第2の外縁部244のうちの少なくとも一方の少なくとも一部が切れ刃246を形成する。カッティングインサート240は、2つのみの穴部を有するカッティングインサートボア260を有し、第1の穴部268がカッティングインサート240の第1の表面262に開口し、第2の穴部272が、第2の表面264に開口している。第2の穴部272は、また、カッティングインサート240の外周面266と同じ高さを有するいくつかの弓形を有し得るものであり、この場合、第2の穴部272は、第1の表面262に部分的に開口している。
【0034】
図17および
図18に示されたさらに他の実施例に従って、カッティングインサート340は、外周面と、第1の外縁部342および第2の外縁部344とを、それぞれ有し、第1の外縁部342および第2の外縁部344のうちの少なくとも一方の少なくとも一部が、切れ刃346を形成する。カッティングインサート340は、第1の表面362に開口する第1の円筒形の穴部368および第2の表面364に開口する第2の円筒形の穴部370を有するカッティングインサートボア360を有する。第1および第2の円筒形の穴部368、370が同一である場合、カッティングインサート340は、裏表ともに使えるカッティングインサートである。
【0035】
図19に示されるようないくつかの実施例に従って、締付け部材150は、締付け部材150にトルクをかけるための締付け部材の頭部158の第1の凹部151に加えて、締付け部材150にトルクをかけるための結合部159の第2の凹部155を有し得る。そのような構成は、締付け部材の頭部158への接近が難しいかまたは不可能であるかのいずれかのときに特に有用である。さらに、本発明に従って、カッティングインサートを取り外し、交換するために、締付け部材150は取り外される必要はないが、ゆるめられる必要だけがあるので結合部159は、カッティングインサート貫通穴を貫通させる必要がない。したがって、結合部159は、締付け部材の頭部158の直径に等しい直径を有し得る。そうである場合には、第2の凹部155は、第1の凹部151と同じ寸法を有し得る。それにより、第1の凹部151と第2の凹部155との両方のための単一のトルクを加える部材の使用を可能にする。
【0036】
本発明の複数の実施例に従って、カッティングインサート140、340、またはカッティングインサートボア160、360、若しくはこの両方は、長い方の中心線Mと短い方の中心線Nとによって画定された穴の平面Pに関して対称である鏡映であり得る。
【0037】
本発明は、1つ以上の具体的な実施例を参照して説明されているが、その説明は、全体として例示となることを意図され、本発明を示される複数の実施例に限定して解釈されるべきではない。本明細書では詳細に示されないが、それにもかかわらず本発明の範囲内にある種々の変更が当業者には行われ得ることを理解されたい。