特許第5965853号(P5965853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965853発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子及び発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965853
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子及び発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20160728BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20160728BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C08J9/18
   C08L25/04
   C08K5/20
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-39535(P2013-39535)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-167063(P2014-167063A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】新籾 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】平井 賢治
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−032449(JP,A)
【文献】 特開昭58−109537(JP,A)
【文献】 特公昭48−044942(JP,B1)
【文献】 特開2005−015593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/18
C08K 5/20
C08L 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂と、発泡剤と、気泡安定化剤と、熟成期間調整剤とを含み、前記気泡安定化剤が、ヒドロキシ脂肪酸アミドであり、前記熟成期間調整剤が、ヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドである発泡性スチレン系樹脂粒子であり、
前記ヒドロキシ脂肪酸アミドが、ヒドロキシステアリン酸アミドであり、前記ヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドが、エチレンビスステアリン酸アミドであり、
前記ヒドロキシ脂肪酸アミドとヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドが、1:0.25〜4(質量比)の範囲の割合で含まれ、
前記ヒドロキシ脂肪酸アミドとヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドが、前記発泡性スチレン系樹脂粒子中に、0.05〜0.20質量%と0.05〜0.20質量%の範囲の割合で含まれることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
請求項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて得られた発泡粒子。
【請求項3】
請求項に記載の発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡粒子及び発泡成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、熟成期間が短く及び/又は高温で熟成可能な発泡性スチレン系樹脂粒子及び、それから得られた発泡粒子と発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡成形体は軽量かつ、断熱性に優れることから魚箱や食品容器等の輸送用梱包材に使用されている。その中でも樹脂製の発泡性粒子を原料として型を用いて製造される発泡成形体は所望の形状を得やすい等の利点から多く使用されている。
発泡成形体を製造するための原料である発泡性粒子として、発泡性スチレン樹脂粒子が汎用されており、例えば次のようにして発泡成形体が得られている。即ち、発泡性スチレン樹脂粒子のような発泡性粒子を蒸気で加熱して予備発泡させて発泡粒子(予備発泡粒子)を得る。得られた予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填する。次いで、充填された予備発泡粒子を蒸気で二次発泡させつつ、予備発泡粒子同士を熱融着により一体化させることで発泡成形体を得ることができる。この発泡成形体の製造法は、ビーズ法と称されている。
【0003】
発泡性スチレン樹脂粒子は、発泡剤を含浸させてすぐに加熱発泡させると、発泡粒子中の気泡が不均一になることがある。また、高温で保管されると気泡が粗大化することがある。そのため、通常、発泡剤を含浸させた後、5日間程度、約15℃程度の放置工程に付される。この工程は一般に熟成工程と称されている。
熟成工程は、発泡性スチレン樹脂粒子の保管コストを低減する観点から、できるだけ短縮することが望まれている。加えて、夏場に熟成工程を行なう場合、保管に冷却が必要となるため、保管コストを低減する観点から、より高温で熟成可能な発泡性スチレン樹脂粒子が求められている。
熟成期間を短縮するために、発泡性スチレン樹脂粒子にヒドロキシステアリン酸アミドを熟成促進剤として含有させることが知られている(特開平7−90105号公報:特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−90105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今の製造コストの低減要求に伴い、上記公報に記載された技術よりも更に熟成期間の短縮可能な及び/又は高温で熟成可能な発泡性スチレン系樹脂粒子が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者は、発泡性スチレン系樹脂粒子の熟成期間の短縮及び/又は高温熟成性を向上するために、添加剤を見直した。その結果、特定の気泡安定化剤と熟成期間調整剤とを組み合わせて使用すれば、熟成期間を短縮でき、高温熟成性を顕著に向上できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
かくして本発明によれば、スチレン系樹脂と、発泡剤と、気泡安定化剤と、熟成期間調整剤とを含み、前記気泡安定化剤が、ヒドロキシ脂肪酸アミドであり、前記熟成期間調整剤が、ヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドである発泡性スチレン系樹脂粒子であり、
前記ヒドロキシ脂肪酸アミドが、ヒドロキシステアリン酸アミドであり、前記ヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドが、エチレンビスステアリン酸アミドであり、
前記ヒドロキシ脂肪酸アミドとヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドが、1:0.25〜4(質量比)の範囲の割合で含まれ、
前記ヒドロキシ脂肪酸アミドとヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドが、前記発泡性スチレン系樹脂粒子中に、0.05〜0.20質量%と0.05〜0.20質量%の範囲の割合で含まれることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、上記発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて得られた発泡粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熟成期間の短縮及び/又は高温で熟成可能な発泡性スチレン系樹脂粒子を提供できる。
【0010】
更に、(1)ヒドロキシ脂肪酸アミドが、炭素数4〜30の脂肪酸由来部位を有するヒドロキシ高級脂肪酸アミドであり、ヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドが、炭素数4〜30の脂肪酸由来部位を有するヒドロキシ非含有エチレンビス高級脂肪酸アミドである
(2)ヒドロキシ脂肪酸アミドが、ヒドロキシステアリン酸アミドであり、ヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドが、エチレンビスステアリン酸アミドである
(3)ヒドロキシ脂肪酸アミドとヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドが、1:0.25〜4(質量比)の範囲の割合で含まれる
(4)ヒドロキシ脂肪酸アミドとヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドが、発泡性スチレン系樹脂粒子中に、0.01〜0.20質量%と0.0025〜0.80質量%の範囲の割合で含まれる
のいずれか1つを含む場合、より熟成期間の短縮及び/又は高温で熟成可能な発泡性スチレン系樹脂粒子を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発泡性スチレン系樹脂粒子)
発泡性スチレン系樹脂粒子(発泡性粒子ともいう)は、スチレン系樹脂と、発泡剤と、気泡安定化剤と、熟成期間調整剤とを含む。
【0012】
(a)スチレン系樹脂
発泡性粒子はスチレン系単量体由来の樹脂成分を含む。スチレン系単量体としては、特に限定されず、公知の単量体をいずれも使用できる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等の単官能スチレン系単量体が挙げられる。これらスチレン系単量体は、一種類でも、複数種の混合物であってもよい。好ましいスチレン系単量体は、スチレンである。更に、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体等のジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性スチレン系樹脂(いわゆるハイインパクトポリスチレン、HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等のスチレン成分を有する樹脂成分もスチレン系樹脂として使用できる。
【0013】
(b)他の樹脂成分
発泡性粒子は、スチレン系単量体由来の樹脂成分以外の他の樹脂成分を含んでいてもよい。他の樹脂成分は、スチレン系単量体と共重合していてもよく、共重合せずに粒子中に存在していてもよい。
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート等の単官能単量体の他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性単量体、無水マレイン酸、N−ビニルカルバゾール等に由来する樹脂成分、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル等の樹脂成分が挙げられる。
発泡性粒子中、全樹脂成分に対して、他の樹脂成分が占める割合は50質量%未満であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0014】
(c)発泡剤
発泡剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。特に、沸点がスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロメタン等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭化水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
【0015】
更に、発泡剤の含有量は、2〜12質量%の範囲であることが好ましい。2質量%より少ないと、発泡性粒子から所望の密度の発泡成形体を得られないことがある。加えて、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が小さくなるために、発泡成形体の外観が良好とならないことがある。12質量%より多いと、発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなって生産性が低下することがある。より好ましい発泡剤の含有量は、3〜10質量%である。
発泡助剤を、発泡剤と併用してもよい。発泡助剤としては、トルエン、スチレン、ジイソブチルアジペート、シクロヘキサン、エチルベンゼン等が挙げられる。
【0016】
(d)気泡安定化剤及び熟成期間調整剤
(d−1)気泡安定化剤
気泡安定化剤には、ヒドロキシ脂肪酸アミドが使用される。ヒドロキシ脂肪酸アミドは、気泡を安定化させる機能を有する限り特に限定されないが、炭素数4〜30の脂肪酸由来部位を有するヒドロキシ高級脂肪酸アミドが好ましい。具体的な気泡安定化剤は、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸ビスアミド等が挙げられる。
ヒドロキシ脂肪酸アミドは、発泡性スチレン系樹脂粒子中に、0.01〜0.20質量%の割合で含まれていることが好ましい。含有量が0.01質量%未満の場合、熟成条件の改善効果が小さいことがある。0.20質量%より多い場合、成形性が低下することがある。好ましい含有量は、0.01〜0.25質量%であり、更に好ましい含有量は、0.03〜0.10質量%である。
なお、ヒドロキシ脂肪酸アミドの製造時の使用量と、発泡性粒子中の含有量とは、ほぼ同じである。
(d−2)熟成期間調整剤
熟成期間調整剤には、ヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドが使用される。ヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドは、ヒドロキシ基が含まれておらず、熟成期間を短縮する機能を有する限り特に限定されないが、炭素数4〜30の脂肪酸由来部位を有するヒドロキシ非含有エチレンビス高級脂肪酸アミドが好ましい。具体的な気泡安定化剤は、エチレンビステアリン酸アミド、メチレンビステアリン酸アミド等が挙げられる。
ヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドは、発泡性スチレン系樹脂粒子中に、0.0025〜0.80質量%の割合で含まれていることが好ましい。含有量が0.0025質量%未満の場合、熟成条件の改善効果が小さいことがある。0.80質量%より多い場合、発泡成形性が低下することがある。好ましい含有量は、0.0025〜0.60質量%であり、更に好ましい含有量は、0.0075〜0.40質量%である。
なお、ヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドの製造時の使用量と、発泡性粒子中の含有量とは、ほぼ同じである。
(d−3)ヒドロキシ脂肪酸アミドとヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドの組み合わせは、所定の効果が得られさえすれば特に限定されないが、それらを構成する脂肪酸が、スチレン系樹脂への相溶性の観点から、同じものが好ましい。例えば、12−ヒドロキシステアリン酸アミドとエチレンビステアリン酸アミドの組み合わせが挙げられる。
ヒドロキシ脂肪酸アミドとヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドは、1:0.25〜4(質量比)の範囲の割合で発泡性粒子に含まれることが好ましい。ヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドの割合が、0.25未満の場合、熟成期間の短縮が不十分となることがある。4より多い場合、短時間及び高温での気泡の安定化が不十分となることがある。より好ましい両剤の割合は、1:0.5〜3.5であり、更に好ましくは1:1〜3である。ヒドロキシ脂肪酸アミドとヒドロキシ非含有エチレンビス脂肪酸アミドの合計量は、発泡性粒子に対して、0.0125〜1.0質量%の範囲であることが好ましい。
【0017】
(e)他の添加剤
他の添加剤としては、物性を損なわない範囲内において、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、滑剤、結合防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤、架橋剤、充填剤、着色剤等が挙げられる。
難燃剤としては、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)等が挙げられる。
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0018】
可塑剤としては、トルエン、スチレン、キシレン、シクロヘキサン、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、ジアセチル化グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペートのようなアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0019】
滑剤としては、パラフィンワックス、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の脂肪酸エステルが挙げられる。
結合防止剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、水酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコーン等が挙げられる。
【0020】
融着促進剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル、プロピレングリコール、グリセリン、流動パラフィン等が挙げられる。
【0021】
(f)重量平均分子量
GPCにより測定されるスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)の範囲は15万〜50万であることが好ましい。Mwが15万未満及び50万より大きい場合、発泡成形体の強度が低下したり、発泡成形性が低下することがある。より好ましいMwの範囲は、20万〜45万である。
【0022】
(g)発泡性スチレン系樹脂粒子の形状
発泡性粒子の形状は特に限定されない。例えば、球状、円柱状等が挙げられる。この内、球状であるのが好ましい。発泡性粒子の平均粒子径は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、0.2〜5mmの平均粒子径のものを使用できる。また、成形型内への充填性等を考慮すると、平均粒子径は、0.3〜2mmがより好ましく、0.3〜1.4mmが更に好ましい。
【0023】
(発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法)
発泡性粒子の製造方法は特に限定されない。例えば、
(i)種粒子の非存在下、水性媒体中で、スチレン系単量体を撹拌しつつ重合させる懸濁重合法で樹脂粒子を得、又は(ii)スチレン系樹脂製の種粒子の存在下、水性媒体中で、スチレン系単量体を撹拌しつつ重合させるシード法で樹脂粒子を得、次いで、この樹脂粒子に、気泡安定化剤と熟成期間調整剤の存在下、発泡剤を含浸させることで発泡性粒子を得ることができる。気泡安定化剤と熟成期間調整剤は、発泡剤を含浸させる前、又は含浸させた後に発泡性粒子に添加してもよい。気泡安定化剤と熟成期間調整剤の添加時期は、発泡剤の含浸と同時か、含浸前のいずれかであることが、両剤が発泡性粒子内部に浸透し、それらの機能がより発揮可能である観点から好ましい。
【0024】
(a)重合工程
(a−1)種粒子
種粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、例えば、(i)スチレン系樹脂を押出機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、ストランドをカットすることにより種粒子を得る押出方法、(ii)水性媒体、スチレン系単量体及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を懸濁重合させて種粒子を製造する懸濁重合法、(iii)水性媒体及びスチレン系樹脂粒子をオートクレーブ内に供給し、スチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を連続的にあるいは断続的に供給して、スチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体を吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させて種粒子を製造するシード重合法等が挙げられる。
また、種粒子は一部、又は全部に樹脂回収品を用いることができる。回収品を使用する場合は、押出方法による種粒子の製造が向いている。
【0025】
種粒子の平均粒子径は、発泡性粒子の平均粒子径に応じて適宜調整できる。例えば平均粒子径が1mmの発泡性粒子を得ようとする場合には、平均粒子径が0.7〜0.9mm程度の種粒子を用いることが好ましい。更に、種粒子の重量平均分子量は特に限定されないが10万〜70万が好ましく、更に好ましくは15万〜50万である。
(a−2)重合条件
種粒子存在下又は非存在下、水性媒体中に、スチレン系単量体を、必要に応じて他の単量体、他の樹脂、他の添加剤等と共に、供給する。水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0026】
スチレン系単量体には、重合開始剤を含ませてもよい。重合開始剤としては、従来から単量体の重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これら開始剤の内、残存単量体を低減させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃にある異なった二種以上の重合開始剤を併用することが好ましい。なお、重合開始剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0027】
スチレン系単量体には、核剤を含ませてもよい。核剤としては、従来から単量体の重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス、タルク、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粉末等が挙げられる。
【0028】
水性媒体中には、単量体の小滴の分散を安定させるために懸濁安定剤が含まれていてもよい。懸濁安定剤としては、従来から単量体の懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。
懸濁安定剤として難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤を併用するのが好ましい。アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩;アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。これら界面活性剤の内、ラウリル硫酸ナトリウムが好ましい。
【0029】
重合工程は、使用する単量体種、重合開始剤種等により異なるが、通常、70〜130℃の加熱を、3〜10時間維持することにより行われる。重合温度としては70〜100℃が好ましい。重合工程は、単量体を吸収させつつ行ってもよい。重合工程は、使用する単量体全量を1段階で重合させてもよく、2段階以上に分けて重合させてもよい。
【0030】
(b)含浸工程
上記スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより発泡性粒子が得られる。含浸は、重合と同時に湿式で行ってもよく、重合後に湿式又は乾式で行ってもよい。湿式で行う場合は、上記重合工程で例示した、懸濁安定剤及び界面活性剤の存在下で行ってもよい。
発泡剤の含浸温度は、60〜150℃が好ましい。60℃より低いと、樹脂粒子に発泡剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがある。また、150℃より高いと、樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがある。より好ましい含浸温度は、70〜120℃である。
発泡剤と同時に、発泡助剤を含浸させてもよい。
気泡安定化剤と熟成期間調整剤の添加時期が発泡剤の含浸時である場合、上記発泡剤の含浸条件をそのまま採用できる。また、含浸前又は含浸後である場合、両剤を分散させた水性媒体に樹脂粒子を浸漬する方法、両剤を分散させた水性媒体を樹脂粒子に噴霧する方法等により両剤を樹脂粒子に付与できる。
【0031】
(c)熟成工程
発泡性粒子は、熟成工程に付される。熟成工程の始点は、重合用の反応器から発泡性粒子が大気圧下に取り出された時点であり、終点は発泡性粒子が加熱されても加熱前後で気泡径に大きな変化が無くなる時点である。即ち本発明では、発泡性粒子を試料Aと試料Bに分け、試料Aは直ちに嵩密度0.0166g/cm3に発泡させる。試料Bは、ポリエチレン製の袋に入れ、40℃にて2時間加熱する。加熱後の試料Bを蒸気にて嵩密度0.0166g/cm3に発泡させる。
試料AとBより得られた発泡粒子断面の平均気泡径を測定する。平均気泡径差が10μm以内である場合に熟成終了と判断する。
熟成工程は従来、−10℃〜15℃の範囲で、10日程度以内の期間が挙げられる。特に本発明では、この工程に要する時間を短くすること及び/又はこの工程を高温で行なうことが可能である。例えば、スチレン樹脂粒子に発泡剤としてn−ブタンを含浸させた場合、通常、15℃で7日程度必要な熟成時間を1日程度以内に短縮できる。また、n−ペンタンを含浸させた場合、通常、15℃で7日程度必要な熟成時間を3日程度以内に短縮できる。
また、通常15℃で行われている熟成工程を40℃程度と高温でも行うことができる。従って、夏場でも特に冷却する必要なく発泡性粒子を熟成できる。
熟成期間の短縮は、熟成に要する発泡性粒子の貯蔵設備を小さくでき、その分製造コスト中の保管コストを低減できるという効果につながる。更に、客先の短納期の要求にも容易に応えることができるという効果につながる。
【0032】
(発泡粒子)
発泡粒子は、熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)を用いて所望の嵩密度に発泡性粒子を発泡させることで得られる。発泡粒子は、クッションの充填材等の用途ではそのまま使用でき、更に型内発泡させるための発泡成形体の原料として使用できる。発泡成形体の原料の場合、発泡粒子は予備発泡粒子と、発泡粒子を得るための発泡は予備発泡と、通常称される。
発泡粒子の嵩密度は、0.01〜0.10g/cm3の範囲であることが好ましい。発泡粒子の嵩密度が0.01g/cm3より小さい場合、次に得られる発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えて発泡成形体の断熱性能及び機械的強度が低下することがある。一方、嵩密度が0.10g/cm3より大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。
なお、発泡前に、発泡性粒子の表面に、ステアリン酸亜鉛、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド等の粉末状金属石鹸類を塗布しておくことが好ましい。塗布しておくことで、発泡性粒子の発泡工程において発泡粒子同士の結合を減少できる。
【0033】
(発泡成形体)
発泡成形体は、例えば、魚、農産物等の梱包材、床断熱用の断熱材、盛土材、畳の芯材等に使用できる。
発泡成形体の密度は、0.01〜0.10g/cm3の範囲であることが好ましい。発泡成形体の密度が0.01g/cm3より小さい場合、発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えて発泡成形体の機械的強度が低下することがある。一方、密度が0.10g/cm3より大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。
【0034】
発泡成形体は、例えば以下の方法により得ることができる。
発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させることで、発泡成形体を製造できる。その際、発泡成形体の密度は、例えば、金型内への発泡粒子の充填量を調整する等して調製できる。
【0035】
加熱発泡は、例えば0.04〜0.11MPaの成形蒸気圧(ゲージ圧)の熱媒体で、110〜150℃の温度で5〜50秒加熱することにより行うことができる。この条件であれば、粒子相互の良好な融着性を確保できる。より好ましくは、加熱発泡成形は、90〜120℃の熱媒体で、10〜50秒加熱することにより行うことができる。
【0036】
発泡粒子は、発泡成形体の成形前に、例えば常圧で、熟成させてもよい。発泡粒子の熟成温度は、20〜60℃が好ましい。熟成温度が低いと、発泡粒子の熟成時間が長くなることがある。一方、高いと、発泡粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下することがある。
【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明の具体例を示すが、以下の実施例は本発明の例示にすぎず、本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0038】
<平均分子量>
粒子サンプル0.003gをテトラヒドロフラン(THF)10mLに溶解させ(完全溶解)、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過して測定する。予め測定し、作成しておいた標準ポリスチレンの検量線から試料の重量平均分子量を求める。また、クロマトグラフの条件は下記の通りとする。
・装置:高速GPC装置
・商品名:東ソー社製 HLC−8320GPC EcoSEC-WorkStation(RI検出器内蔵)
・分析条件
カラム:TSKgel SuperHZM−H×2本(4.6mmI.D×15cmL×2本)
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperHZ−H×1本(4.6mmID×2cmL)
流量:サンプル側 0.175ml/min、リファレンス側 0.175ml/min
検出器:内蔵RI検出器
濃度:0.3g/L
注入量:50μL
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
溶離液:THF
【0039】
(検量線の作成)
検量線用標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製商品名「TSK standard POLYSTYRENE」の重量平均分子量が、500、2630、9100、37900、102000、355000、3840000、及び5480000である標準ポリスチレン試料と、昭和電工社製商品名「Shodex STANDARD」の重量平均分子量が1030000である標準ポリスチレン試料を用いる。
検量線の作成方法は以下の通りである。まず、上記検量線用標準ポリスチレン試料をグループA(重量平均分子量が1030000のもの)、グループB(重量平均分子量が500、9100、102000及び3480000のもの)及びグループC(重量平均分子量が2630、37900、355000及び5480000のもの)にグループ分けする。グループAに属する重量平均分子量が1030000である標準ポリスチレン試料を5mg秤量した後にTHF20mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入する。グループBに属する重量平均分子量が500、9100、102000及び3480000である標準ポリスチレン試料をそれぞれ10mg、5mg、5mg、及び5mg秤量した後にTHF50mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入する。グループCに属する重量平均分子量が2630、37900、355000及び5480000である標準ポリスチレン試料をそれぞれ5mg、5mg、5mg、及び1mg秤量した後にTHF40mLに溶解し、得られた溶液50μLを試料側カラムに注入する。これら標準ポリスチレン試料の保持時間から較正曲線(三次式)をHLC−8320GPC専用データ解析プログラムGPCワークステーション(EcoSEC−WS)にて作成し、これをポリスチレン換算重量平均分子量測定の検量線として用いる。
【0040】
<平均気泡径>
発泡剤含浸直後の発泡性粒子の表面に、帯電防止剤としてポリエチレングリコールを塗布し、この後、更に、ステアリン酸亜鉛とヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを塗布する。発泡剤含浸直後からステアリン酸亜鉛とヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを塗布までの時間は、60分以内とする。
塗布後の発泡性粒子を試料Aと試料Bに分ける。試料Aは直ちに嵩密度0.0166g/cm3に発泡させる。試料Bは、ポリエチレン製の袋に入れ、40℃にて2時間加熱する。加熱後の試料Bを蒸気にて嵩密度0.0166g/cm3に発泡させる。
試料AとBより得られた発泡粒子断面の平均気泡径を測定する。平均気泡径差が、10μm以内の場合を◎、それ以上の場合を×として平均気泡径の変化を評価する。
【0041】
なお、上記平均気泡径についてはASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定する。
嵩密度0.0166g/cm3に発泡させた発泡粒子の中から任意に選択した10個について、剃刀刃を用いて、それぞれ発泡粒子の中心を通る平面で二等分する。二等分された発泡粒子の一方の切断面を走査型電子顕微鏡(日本電気社製JSM−6360LV)を用いて、100倍に拡大した画像を作成する。
次に、粒子切断面の画像上に任意で60mmの直線を描く。直線上にある気泡の個数を数え、次式によりこの気泡の平均弦長(t)を算出する。
平均弦長t(μm)=60/(気泡数×画像の拡大倍数)
次の式により、この気泡の平均気泡径(D)を算出する。
平均気泡径D(μm)=t/0.616
各試料ごとで計5画像分の平均値を平均気泡径とする。
【0042】
<発泡粒子の嵩密度>
発泡粒子の嵩倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的は、まず、発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、発泡粒子の嵩密度を算出する。
発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0043】
実施例1
内容量100Lの攪拌機付き重合容器に、水40000質量部、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム100質量部及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5.0質量部を供給した。続いて攪拌しながらスチレン40000質量部、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド96.0質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート28.0質量部を添加後、90℃に昇温してスチレンを重合させた。この温度で6時間保持し、更に125℃に昇温してから2時間後冷却することで、スチレン樹脂粒子(a)を得た。このスチレン樹脂粒子(a)を篩い分けすることで、重量平均分子量32万の0.5〜0.71mm(平均粒子径0.63mm)のスチレン樹脂粒子(b)及び0.85〜1.2mmのスチレン樹脂粒子(c)を得た。
【0044】
内容量25Lの攪拌機付き容器に、スチレン樹脂粒子(c)10000g、水10000g、ピロリン酸マグネシウム30g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10gを供給し、攪拌しつつ60℃に加熱して分散液を得た。
続いて、容器内に、12−ヒドロキシステアリン酸アミド(気泡安定化剤)10g、エチレンビスステアリン酸アミド(熟成期間調整剤)10g、アジピン酸ジイソブチル90g、ノルマルブタン800gを圧入した。圧入後、100℃に昇温し、更に3時間100℃に保持した。保持後、重合容器内を25℃に冷却することで、発泡性粒子を得た。
得られた発泡性粒子の表面に、帯電防止剤としてポリエチレングリコールを塗布した。この後、更に、発泡性粒子の表面に、ステアリン酸亜鉛とヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを塗布した。
次いで、発泡性粒子を、上記平均気泡径の測定法に則して、嵩密度0.0166g/cm3に予備発泡させて発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の平均気泡径を表1に示す。
試料A及びBの平均気泡径はいずれも90μmであった。また、熟成を経なくても微細化した気泡が得られ、かつ40℃で加熱しても気泡が粗大化しなかった。
【0045】
実施例2
次に、内容積25Lの撹拌機付き重合容器に、水10000g、実施例1で得たスチレン系樹脂(b)(種粒子)2350g、ピロリン酸マグネシウム30g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10gを供給して撹拌しつつ72℃に加熱して分散液を得た。
続いて、ベンゾイルパーオキサイド45.9g、t−ブチルパーオキシベンゾエート6.1gを、スチレン850gとアクリル酸n−ブチル150gの混合物に溶解させて溶液を得た。得られた溶液を全て前記分散液中に撹拌しつつ供給した。そして分散液中に溶液を供給し終えてから、60分間72℃に維持した(第1工程)。
その後にこの分散液にスチレン6650gを150分で一定速度で供給しながら、分散液を72℃から60分かけて90℃に昇温し、90分間90℃を維持した(第2工程)。
【0046】
更に分散液を125℃まで昇温しかつ、30分保持することで未反応の単量体を反応させてスチレン系樹脂粒子(重量平均分子量30万)を得た。
次に、分散液を90℃に保持し、続いて、重合容器内に、12−ヒドロキシステアリン酸アミド10g、エチレンビスステアリン酸アミド10g、アジピン酸ジイソブチル70g、ノルマルブタン700gを圧入した。圧入後、更に3時間90℃に保持した。保持後、重合容器内を25℃に冷却することで、発泡性粒子を得た。
次いで、発泡性粒子から実施例1と同様にして発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の平均気泡径を表1に示す。
試料A及びBの平均気泡径はいずれも100μmであった。また、熟成を経なくても微細化した気泡が得られ、かつ40℃で加熱しても気泡が粗大化しなかった。
【0047】
実施例3
12−ヒドロキシステアリン酸アミドを5g、エチレンビスステアリン酸アミドを20gとしたこと以外は実施例1と同様の方法で発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の平均気泡径を表1に示す。
試料A及びBの平均気泡径はいずれも110μmであった。また、熟成を経なくても微細化した気泡が得られ、かつ40℃で加熱しても気泡が粗大化しなかった。
実施例4
12−ヒドロキシステアリン酸アミドを20g、エチレンビスステアリン酸アミドを5gとしたこと以外は実施例1と同様の方法で発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の平均気泡径を表1に示す。
試料A及びBの平均気泡径はいずれも95μmであった。また、熟成を経なくても微細化した気泡が得られ、かつ40℃で加熱しても気泡が粗大化しなかった。
実施例5
12−ヒドロキシステアリン酸アミドを10g、メチレンビスステアリン酸アミドを10gとしたこと以外は実施例1と同様の方法で発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の平均気泡径を表1に示す。
試料A及びBの平均気泡径は98μm、104μmであった。また、熟成を経なくても微細化した気泡が得られ、かつ40℃で加熱しても気泡が粗大化しなかった。
実施例6
12−ヒドロキシステアリン酸アミド10g、エチレンビスステアリン酸アミド10gを、12−ヒドロキシステアリン酸ビスアミド10g、エチレンビスステアリン酸アミド10gとしたこと以外は実施例1と同様の方法で発泡粒子を得た。
試料A及びBの平均気泡径は99μm、102μmであった。また、熟成を経なくても微細化した気泡が得られ、かつ40℃で加熱しても気泡が粗大化しなかった。
【0048】
比較例1
12−ヒドロキシステアリン酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドを使用しないこと以外は実施例1と同様の方法で発泡粒子を得ようとしたが、試料A及びBのいずれについても気泡が形成されなかった。
比較例2
12−ヒドロキシステアリン酸アミド10gを使用し、エチレンビスステアリン酸アミドを使用しないこと以外は実施例1と同様の方法で発泡粒子を得ようとしたが、試料A及びBのいずれについても気泡が形成されなかった。
比較例3
12−ヒドロキシステアリン酸アミドを使用せず、エチレンビスステアリン酸アミド10gを使用したこと以外は実施例1と同様の方法で発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の平均気泡径を表1に示す。
試料Aの平均気泡径は150μmであったが、試料Bの平均気泡径は400μmであり、粗大化していた。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から以下のことが分かる。
実施例と比較例とから、気泡安定剤と熟成期間調整剤の両方を含むことで、40℃で2時間加熱しても、発泡粒子の平均気泡径が変動しない発泡性粒子を得ることができる。更に、実施例の発泡性粒子は、加熱前後で平均気泡径が変動していないため、熟成工程なしで発泡粒子の製造工程に付すことができる。