特許第5965856号(P5965856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965856
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】アイスプラグによる金属管の溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/16 20060101AFI20160728BHJP
   B23K 9/028 20060101ALI20160728BHJP
   B23K 37/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B23K9/16 M
   B23K9/028 B
   B23K37/00 301B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-55382(P2013-55382)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-180674(P2014-180674A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年2月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143455
【氏名又は名称】株式会社高田工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 宏昭
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−266176(JP,A)
【文献】 特開平02−070399(JP,A)
【文献】 特開平03−217774(JP,A)
【文献】 特開2006−326615(JP,A)
【文献】 特開2004−344936(JP,A)
【文献】 特開2004−105994(JP,A)
【文献】 特開平11−033783(JP,A)
【文献】 実開昭54−091425(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/16
B23K 9/028
B23K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管Aに溶接接続される金属管Bの内部で、該金属管Bの開口端から離れたシール位置をアイスプラグによって閉塞し、前記金属管A、B同士の溶接部の裏側をシールドガスによって大気から遮蔽した状態で溶接するアイスプラグによる金属管の溶接方法において、
前記アイスプラグを、前記シール位置を含む前記金属管Bの外側に冷却コイルを配置し、該金属管Bの前記シール位置を冷却状態に保つ第1工程と、
前記金属管B内に前記開口端から円柱又は円板状の氷柱を入れて、前記第1工程で冷却状態に保たれた範囲内に固定する第2工程と、
前記氷柱の手前側に、粒状の氷又はフレーク状の氷を軸方向に詰めて水を噴射し、該氷及び水を凍らせる第3工程とを有して形成することを特徴とするアイスプラグによる金属管の溶接方法。
【請求項2】
請求項1記載のアイスプラグによる金属管の溶接方法において、前記第3工程を複数回繰り返すことを特徴とするアイスプラグによる金属管の溶接方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアイスプラグによる金属管の溶接方法において、前記第2工程において、前記氷柱は、前記氷柱の外周と前記金属管Bの内周の境に、水を噴霧して固定することを特徴とするアイスプラグによる金属管の溶接方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のアイスプラグによる金属管の溶接方法において、前記第2工程において、前記氷柱は、前記金属管B内に水を噴射し、前記冷却コイルにより前記金属管Bの内周にアイスリングを形成し、その後、該アイスリングに前記氷柱を当接させて位置決め固定することを特徴とするアイスプラグによる金属管の溶接方法。
【請求項5】
請求項4記載のアイスプラグによる金属管の溶接方法において、前記アイスリングの形成は、前記金属管B内にバルーンを当接させ、該バルーンと前記金属管Bとの当接部に水を噴射して凍らせて行うことを特徴とするアイスプラグによる金属管の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属管内にアイスプラグを形成し、金属管の溶接部の裏面をシールドガスにより大気から遮蔽した状態で溶接するアイスプラグによる金属管の溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、原子力発電プラントや化学プラント設備で使用するステンレス鋼鋼管同士を溶接する場合には、溶接金属及びステンレス鋼鋼管の内面の酸化及び窒化防止のため、溶接部の裏面(具体的には、鋼管の内側面)を大気から遮蔽した状態でアルゴンガス等を供給する方法が特許文献1で知られている。
また、特許文献2には、溶接対象の同管の溶接部近傍を不活性ガスを用いた水溶性溶液の泡で全閉した後、溶接部に不活性ガスを流し、裏波溶接を行うことが提案されている。
更に、特許文献3にはシールしようとする配管にドライアイスを用いて遮断壁を形成することが提案されている。
以上の方法ではシールは完全ではなく、シールを持続させることは難しい等の問題があるので、出願人は先に特許文献4に示すように、氷柱を用いて管内をシールすることを提案した。この方法の概略を図8(A)〜(D)を参照しながら説明する。
【0003】
図8(A)に示すように、溶接しようとする片側の配管100に対して、例えば、開口部101から配管100の内径の3〜6倍の距離を有するシール部位102の外側に、冷媒を流すコイル103を設けて冷却する。この状態で、配管100の一端に形成されている開口部101からシール部位102に氷柱105を挿入する。この氷柱105の直径は配管100の内径より僅少の範囲で小さい。
【0004】
そして、図8(B)に示すように、氷柱105を配管100に配置した後、霧吹き手段106によって、氷柱105の周囲に氷108を造り、配管100と氷柱105との隙間を内面シール状態に埋めて氷柱105を配管100に固定する。これによって、配管100のシール部位102をシールする閉塞手段(アイスプラグ)を構成する。
次に、図8(C)に示すように、配管100の端部に接続しようとする管材109(直管又はエルボ等をいう)を当接又は近接させて、配管100と管材109との溶接を行う。この場合、管材109の他端は閉止状態となって、内部にシールドガス(例えば、アルゴンガス)が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−186278号公報
【特許文献2】特開平9−248673号公報
【特許文献3】特開平2−70399号公報
【特許文献4】特開2004−344936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように配管100と氷柱105との隙間を霧吹き手段106によって、内面シール状態に埋める場合、配管100と氷柱105との隙間に入った霧吹きの水は、冷却されすぐに凍るため、配管100と氷柱105との隙間の奥まで到達できない。そのため、氷柱105の霧吹きを実施した側、即ち溶接部側にのみ短く氷108が形成される。この状態で配管100と管材109の溶接作業を実施すると、溶接部110が急熱され配管100の熱伝導、及び配管100内に発生する温風ガスにより、溶接部110に最も近い部分の氷108と氷柱105の氷が徐々に融けて、溶接中にシールの役目を果たさなくなり、大気の流入によりバックシールドガス雰囲気が保たれず、溶接部110が酸化され、溶接品質を損なうという課題があった(図8(D)参照)
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、負圧が発生している配管(金属管)やどのような姿勢(例えば、垂直、傾斜)の配管でも施工可能で、かつ氷柱と配管とのシール部が融けにくいアイスプラグ(閉塞手段)による金属管の溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法は、金属管Aに溶接接続される金属管Bの内部で、該金属管Bの開口端から離れたシール位置をアイスプラグによって閉塞し、前記金属管A、B同士の溶接部の裏側をシールドガスによって大気から遮蔽した状態で溶接するアイスプラグによる金属管の溶接方法において、
前記アイスプラグを、前記シール位置を含む前記金属管Bの外側に冷却コイルを配置し、該金属管Bの前記シール位置を冷却状態に保つ第1工程と、
前記金属管B内に前記開口端から円柱又は円板状の氷柱を入れて、前記第1工程で冷却状態に保たれた範囲内に固定する第2工程と、
前記氷柱の手前側に、粒状の氷又はフレーク状の氷を軸方向に詰めて水を噴射し、該氷及び水を凍らせる第3工程とを有して形成する。
【0009】
また、第2の発明に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法は、第1の発明に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法において、前記第3工程を複数回繰り返す。
【0010】
第3の発明に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法は、第1、第2の発明に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法において、前記第2工程において、前記氷柱は、前記氷柱の外周と前記金属管Bの内周の境に、水を噴霧して固定する。
【0011】
第4の発明に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法は、第1、第2の発明に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法において、前記第2工程において、冷却状態に保たれた前記金属管B内周面の所定の位置に水を噴射し、前記冷却コイルにより前記金属管Bの内周にアイスリングを形成し、その後、該アイスリングに前記氷柱を当接させて位置決め固定する。
【0012】
そして、第5の発明に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法は、第4の発明に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法において、前記アイスリングの形成は、前記金属管B内にバルーンを当接させ、該バルーンと前記金属管Bとの当接部に水を噴射して凍らせて行う。
【0013】
ここで、粒状の氷又はフレーク状の氷とは、氷塊から造るかき氷(箔状、粒状)、水分を凍らせて粒状としたもの、及び雪等の氷等を含む。
噴霧(噴射)する水には、過冷却された水又は2℃以下の水、又は氷片を含む水を使用するのが好ましい。
また、前記冷却コイルは銅管、アルミ管又はステンレス管からなって、前記金属管Bに巻回されているのが好ましい。
【0014】
前記シール位置は前記冷却コイルで冷却された領域で、前記金属管Bの開口端からより距離が離れた奥側部分に位置するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法においては、アイスプラグの製造にあって、氷柱の手前側に、粒状の氷又はフレーク状の氷を軸方向に詰めて水を噴射し、この氷及び水を凍らせる第3工程を有しているので、アイスプラグが金属管Bの長手方向に渡って金属管Bと氷によって接合され、溶接部からの熱伝達があっても容易に融け落ちない。従って、金属管A、Bの溶接が裏側をシールした状態で確実に行える。
【0016】
特に、金属管Bの内部に負圧又は正圧が発生していても、例えば、アイスリングによってアイスプラグを確実に所定の位置に形成でき、金属管Bを完全に遮断できる。
【0017】
また、第2工程において、氷柱の固定を、金属管B内に水を噴射し、冷却コイルにより金属管の内周にアイスリングを形成し、その後、アイスリングに氷柱を当接させて位置決めして行う場合は、氷柱も所定の位置に配置できる。
更に、バルーンを取り除く場合には、バルーン内部の流体を抜いて萎めることができるので、使用後のバルーンの除去が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)〜(I)は本発明の第1の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法の説明図である。
図2】本発明の第1〜第6の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法の概略説明図である。
図3】(A)〜(E)は本発明の第2の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法の工程説明図である。
図4】(A)〜(C)は本発明の第3の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法の説明図である。
図5】(A)〜(F)は本発明の第4の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法の説明図である。
図6】(A)〜(D)は本発明の第5の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法の説明図である。
図7】(A)〜(D)は本発明の第6の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法の説明図である。
図8】(A)〜(D)は従来例に係る金属管の溶接方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法は、それぞれ直管又は曲管からなる金属管Aと金属管Bの開口端11、10を溶接するものである。一般に金属管Bは既設(又は長尺)の配管であって、金属管Bの他側は閉塞できないことが多いが、金属管Aは両端に開口端11、12を有し、金属管Aの他側(開口端12)は、例えば、蓋13(又はキャップやシールカバー)を被せることよって、容易に塞ぐことができる(以下の実施の形態においても同じ)。
しかし、金属管Aの他側が蓋等で閉塞できない場合であっても、金属管Bと同様に、金属管Aの内部にアイスプラグを形成して、金属管Aの他側を閉塞し、金属管A、Bの溶接箇所(溶接部)の裏側を不活性ガスで大気からシールすることができる。
【0020】
そこで、図2に示すように、本発明の第1〜第6の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法においては、金属管Bの内側途中位置(即ち、開口端10から離れたシール位置15)をアイスプラグ16で閉塞し、金属管Aは取外し可能な蓋13を用いて開口端12を閉塞し、金属管A、Bの溶接箇所(溶接部)17の裏側を不活性ガス(シールドガスの一例)で大気からシールするものである。
【0021】
以下、図1(A)〜(I)を用いて、第1の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法(特に、アイスプラグ16の形成方法)について説明する。
図1(A)に示すように、シール位置15を含む金属管Bの外側に冷却コイル19を配置してシール位置15を冷却状態に保つ。更に、金属管Bのシール位置15に、金属管Bを閉塞可能で開口端10まで伸びる流体供給管の一例であるチューブ20が設けられたバルーン21を配置する。このバルーン21に空気を入れて膨らませ、シール位置15をこのバルーン21で閉塞する。
【0022】
バルーン21の設置位置(即ち、シール位置15)は、冷却コイル19の奥側(開口端10と逆側)であるのが好ましい。冷却コイル19として例えば屈曲性のある銅管を用い、金属管Bに接して螺旋状に巻くのが好ましい。冷却コイル19と金属管Bとの間には熱伝導性が良好な材料を適当に充填するのが好ましく、また、冷却コイル19の外側は布又はシート等からなる断熱カバーを設けるのがよい(以上、第1工程)。
【0023】
そして、図1(B)に示すように、バルーン21と金属管Bの接触領域(当接部)に好ましくは低温の水をノズル22で噴射し、図1(C)、(D)に示すように、バルーン21と金属管Bの接触領域に付着した水を凍らせて接触領域(即ち、金属管Bの内周)にリング状のストッパーであるアイスリング23を形成する。この後、バルーン21を萎めて金属管B内から除去する。なお、ノズル22は、空気圧等で水を押し出す構造のものが好ましい。
【0024】
次に、図1(E)に示すように、金属管B内に開口端10から円柱又は円板状の氷柱24を入れて、アイスリング23に当接させて、金属管B内の所定の位置に、例えば、氷柱24の奥側端が金属管Bの開口端10から金属管Bの内径の3〜6倍位置になるように、位置決めすることができる。この場合、作業者が手で氷柱24を持って金属管B内に入れ、図示しない押し棒を用いて、アイスリング23に氷柱24を当接させると、アイスリング23と氷柱24の接触部分が氷を介して接続され、氷柱24の位置決めが完了し、氷柱24が冷却状態に保たれた範囲内に固定される(以上、第2工程)。
【0025】
この後、図1(F)、(G)に示すように、氷柱24の手前側に粒状又はフレーク状の氷を手もしくは押し棒27で押し込んで、氷粒層26を形成し、この氷粒層26にノズル25で、例えば、シャワー状又は霧状の水分を供給し、氷柱24の手前側に、氷柱24と冷却コイル19に冷却された金属管B内周面に密に氷着した第2の氷柱29を形成する。この後、必要があれば、図1(H)に示すように、図1(F)、(G)の工程を繰り返し、図1(I)に示すように、第2の氷柱29の厚みを増す(以上、第3工程)。
ノズル25は、霧吹きや気体圧を利用したスプレー構造のものが好ましい。
【0026】
以上のようにして、金属管Bの開口端10から離れた所定位置に氷柱24及び第2の氷柱29を有するアイスプラグ16を形成する。
この後、図2に示すように、開口端10、11に必要な開先が形成された金属管A、Bを所定位置まで近づけて又は当接させて、金属管A、Bの内部に不活性ガス(例えば、アルゴンガス)を充填して、金属管A、Bの溶接箇所17の裏側のシールを図り、金属管Aと金属管Bを溶接する。
【0027】
金属管B内に配置された氷柱24と第2の氷柱29は、冷却コイル19を取り外すと、融けて消滅する。なお、作業中には、冷却コイル19内に冷媒を循環させて、金属管B内の氷柱24及び第2の氷柱29の主要部又は全部が融けないように保持する。
【0028】
続いて、図3に示す本発明の第2の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法に用いられるアイスプラグの形成方法について説明する。なお、前記した実施の形態と同一の構成要素については、同一の番号を付して詳しい説明を省略する(以下の実施の形態においても同様)。
【0029】
図3(A)に示すように、金属管Bの内径より少し外径の小さい円柱又は円板状の氷柱24を外側に冷却コイル19が配置されたシール位置15に配置する。これによって、氷柱24は金属管Bの内側に氷付いて氷柱24が固定される(以上、第1、第2工程)。
【0030】
次に、図3(B)に示すように、手もしくは押し棒30を用いて、氷柱24の手前側に粒状の氷又はフレーク状の氷を軸方向外側から内側に詰めて、押し棒30で押し固め、図3(C)に示すように、更にシャワー31によって水(冷水)を噴射又は噴霧し、詰められた氷、及び水を凍らせる。これによって、氷柱24の手前位置に第2の氷柱33を形成し、金属管Bの奥側所定位置にアイスプラグ32を形成する(以上、第3工程)。なお、図3(D)、(E)に示すように、粒状又はフレーク状の氷を詰めること、及び水の噴射は繰り返し行ってもよい。
【0031】
次に、図4(A)〜(C)に示す本発明の第3の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法、特に、アイスプラグの形成方法について説明する。
図4(A)に示すように、所定位置周囲に冷却コイル19が配置された金属管B内に氷柱24を配置し、氷柱24の周囲にシャワー31によって水を噴射して、氷柱24を金属管Bの内部に固定する。これによって、氷柱24の手前側にアイスリング34が形成される。
【0032】
この後、このアイスリング34の内側に、粒状又はフレーク状の氷35を入れて、押し棒36で押し固め、シャワー31によって水を吹きかけ、第2の氷柱38を形成する。これによって、氷柱24及び第2の氷柱38からなるアイスプラグ39が形成される。
なお、粒状の又はフレーク状の氷35を入れて、押し棒36で押し固めて水を吹きかける工程は繰り返すこともできる。
【0033】
次に、図5(A)〜(F)を参照しながら、本発明の第4の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法(特に、アイスプラグの形成方法)について説明する。
まず、図5(A)に示されるように、金属管Bのシール位置15の内壁に、シャワー31で冷水を吹き付け、その部分を凍らせてアイスリング40を形成する。
【0034】
そして、図5(B)に示すように、このアイスリング40をストッパーとして、氷柱24を入れて、氷柱24を氷結させる。次に、図5(C)に示すように、粒状又はフレーク状の氷41を手もしくは押し棒30によって氷柱24に向けて押し固める。この後、図5(D)に示すように、シャワー31によって冷水を吹き付け、全体を凍らせ、第2の氷柱43を形成する。
【0035】
この後、必要な場合は、図5(E)に示すように、更に、粒状又はフレーク状の氷41を手又は押し棒30で押し固め、図5(F)に示すように、シャワー31で冷水を吹き付け、第2の氷柱43の厚さを増す。以上の工程によって、金属管Bの内側所定位置にアイスプラグ44が形成される。
【0036】
続いて、図6(A)〜(D)に示す本発明の第5の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法(特に、アイスプラグの形成方法)について説明する。
金属管Bは垂直状態であり、金属管Bの下端(開口端10)に金属管Aが溶接される。図6(A)に示すように、金属管Bのシール位置15には冷却コイル19が配置され、その内側に氷柱46が配置される。氷柱46の搬入は先部に載置台47が設けられた押し棒48によって行う。
【0037】
氷柱46を所定時間保持すると氷柱46は金属管Bの内壁に付着するが、図6(B)に示すように、氷柱16の外周と金属管Bの内周の境にシャワー49によって積極的に冷水を吹き付けることによって、より確実に氷柱46を金属管Bの内壁に固定することができる。そして、図6(C)に示すように、手もしくは押し棒48によって、粒状又はフレーク状の氷52を詰め込み、押し棒48によって押圧し、シャワー(ノズル)51で冷水を吹き付ける。図6(D)に示すように、第2の氷柱53が形成される。これによって、金属管Bの所定位置にアイスプラグ54を形成できる。
【0038】
次に、図7(A)〜(D)に示す本発明の第6の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法(特に、アイスプラグの形成方法)について説明する。この実施の形態では、金属管Bが垂直状態にあり、金属管Bの上端(開口端10)に金属管Aが溶接される。この場合のアイスプラグ56の形成は以下のようにして行う。
まず、図7(A)に示すように、シール位置15に冷却コイル19を配置する。そして、シール位置15の金属管Bの内側に冷水を散水して、アイスリング57を形成し、その上に円柱状又は円板状の氷柱58を載せる。
【0039】
そして、図7(B)に示すように、シャワー59で氷柱58の周囲に冷水を吹き付け、氷柱58の周囲に第2のアイスリング60を形成する。この第2のアイスリング60の内部及び上に、図7(C)に示すように、粒状又はフレーク状の氷62を載せ、ノズル61を用いて適当に散水することによって、図7(D)に示すように、氷柱58の上に第2の氷柱63を形成し、アイスプラグ56を形成する。
【0040】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、前記実施の形態においては、冷却コイルとして銅管を使用したが、アルミニウム管、ステンレス管又はその他の可撓性を有する金属管であってもよい。
【0041】
以上の実施の形態において、金属管B内の奥側に負圧が発生していても、金属管Bの適当位置を容易に融けないアイスプラグで塞いでいるので、金属管A、Bの溶接は問題なく行える。
また、第1〜第6の実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法(特にアイスプラグの形成方法)の一部を組み合わせて、第1〜第6の実施の形態と異なる実施の形態に係るアイスプラグによる金属管の溶接方法としても本発明は適用される。
【符号の説明】
【0042】
A、B:金属管、10〜12:開口端、13:蓋、15:シール位置、16:アイスプラグ、17:溶接箇所、19:冷却コイル、20:チューブ、21:バルーン、22:ノズル、23:アイスリング、24:氷柱、25:ノズル、26:氷粒層、27:押し棒、29:第2の氷柱、30:押し棒、31:シャワー、32:アイスプラグ、33:第2の氷柱、34:アイスリング、35:氷、36:押し棒、38:第2の氷柱、39:アイスプラグ、40:アイスリング、41:氷、43:第2の氷柱、44:アイスプラグ、46:氷柱、47:載置台、48:押し棒、49:シャワー、51:シャワー、52:氷、53:第2の氷柱、54:アイスプラグ、56:アイスプラグ、57:アイスリング、58:氷柱、59:シャワー、60:第2のアイスリング、61:ノズル、62:氷、63:第2の氷柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8