【実施例1】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0011】
<装置外観の構成>
図1は、本発明のインクジェット記録装置の外観斜視図を示す。インクジェット記録装置は、本体1に操作表示部3を備え、外部に印字ヘッド2を備え、本体1と印字ヘッド2は導管4にて接続されている。
【0012】
<装置の使用形態>
次に、このインクジェット記録装置の使用状態について
図2を用いて説明する。
インクジェット記録装置300は、例えば、食品や飲料などが生産される工場内の生産ラインに据え付けられ、本体1は使用者が操作できる位置に設置され、印字ヘッド2はベルトコンベア15などの生産ライン上を給送される印字対象物13に近接できる位置に設置される。ベルトコンベア15などの生産ライン上には給送速度に係わらず同じ幅で印字するために、給送速度に応じた信号をインクジェット記録装置400に出力するエンコーダ16や、印字対象物13を検出してインクジェット記録装置400に印字を指示する信号を出力する印字センサ17が設置されていて、それぞれは本体1内の図示しない制御部に接続されている。エンコーダ16や印字センサ17からの信号に応じて制御部がノズル8から吐出されるインク粒子7Cへの帯電量や帯電タイミングを制御し、印字対象物13が印字ヘッド2近傍を通過する間に帯電、偏向されたインク粒子7Cを印字対象物13へ付着させて印字を行うようになっている。
【0013】
<装置の経路構成>
次に、インクジェット記録装置の経路構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、インクジェット記録装置400の全体の経路構成を示す図である。
【0014】
まず、本実施例のインクジェット記録装置400のインク供給経路について説明する。本体1には、循環するインク7Aを保持する主インク容器18が備えられており、主インク容器18には、主インク容器18内の液体が内部に保持されるのに適正な量である基準液面レベルに達しているか否かを検知する液面センサ46が備えられている。
【0015】
主インク容器18は、主インク容器18内のインク7Aの粘度を把握するために、経路201を介して粘度測定器43に接続されている。粘度測定器43は経路202を介して経路の開閉を行う電磁弁(供給用)34に接続されており、電磁弁(供給用)34は経路203を介してインク7Aを吸引、圧送するために使用されるポンプ(供給用)24に接続されている。そして、ポンプ(供給用)24は経路204を介してインク7A中に混入している異物を除去するフィルタ(供給用)28に接続されている。
【0016】
フィルタ(供給用)28は、経路205を介してポンプ(供給用)24から圧送されたインク7Aを印字するために適正な圧力に調整する減圧弁33に接続されており、減圧弁33は経路206を介してノズルに供給されるインク7Aの圧力を測定する圧力計31が備えられている。圧力計31は、導管4内を通る経路207を介して印字ヘッド2内に備えられた切替弁42と接続されている。
【0017】
切替弁42は経路208を介して、インク7Aを吐出する吐出口を備えたノズル8に接続されている。なお、切替弁42は三方型電磁弁であり、切替弁42にはインク供給用の経路207と洗浄用の経路237が接続されており、ノズル8にインクと溶剤の供給を切り替えることができる。ノズル8吐出口の直進方向には、印字に使用されないために帯電、偏向されずに直進的に飛翔するインク粒子7Cを捕捉するためのガター14が配置されている。
【0018】
次に、
図3において、本実施例のインクジェット記録装置400のインク回収経路について説明する。ガター14は、経路211を介して回収したインクの帯電量を測定するための位相センサ47に接続されている。位相センサ47は、導管4内を通る経路212を介して本体1内に配置されているインク中に混入している異物を除去するフィルタ(回収用)30と接続されており、フィルタ(回収用)30は、経路213を介して経路の開閉を行う電磁弁(回収用)35に接続されている。
【0019】
電磁弁(回収用)35は経路214を介してガター14により捕捉されたインク粒子7Cを吸引するポンプ(回収用)25と接続されている。ポンプ(回収用)25は、経路215を介して主インク容器18と接続されている。また、主インク容器18は、排気経路217と接続されていて、排気経路217は本体1外部と連通した構成をとっている。
【0020】
次に、
図3において、インク補給経路について説明する。本体1には、補充用のインクを保持する補助インク容器19が備えられており、補助インク容器19は、経路221を介して経路の開閉を行う電磁弁36に接続されている。そして、電磁弁36は経路222を介して、インク供給経路203と接続された合流経路223に接続されている。
【0021】
次に、
図3において、インク循環経路について説明する。印字ヘッド2内に備えられたノズル8には、インク供給用の経路208の他に導管4内を通る経路237を介して本体1内に備えられ、流路の開閉を行う電磁弁37に接続されている。電磁弁37は、経路226を介してノズル8からのインクの吸引を行うポンプ(循環用)26に接続されている。そして、ポンプ(循環用)26は経路227を介して、インク回収経路215に接続された合流経路228に接続された構成となっている。
【0022】
次に、
図3のインクジェット記録装置400の溶剤補給経路について説明する。本体1には、溶剤補給用の溶剤を保持する溶剤容器20が備えられており、溶剤容器20は、経路231を介して溶剤を吸引、圧送するために使用されるポンプ(溶剤用)27に接続されている。ポンプ(溶剤用)27は、経路232を介して流路の開閉を行うために電磁弁(溶剤用)38に接続されており、電磁弁(溶剤用)38は、経路233を介して主インク容器18と接続されている。
【0023】
<実施例1の構成概要>
次に、本発明の実施例1に係るインクジェット記録装置400の実施の形態を
図4、
図5を用いて説明する。
図4は、実施例1の構成を示すブロック図を示し、
図5は、
図4のガター部の部分拡大図を示す。
【0024】
インクジェット記録装置400は、主インク容器18からインク供給ポンプ24によって加圧して供給されるインク7Aをノズル8からインク柱7B状に噴出し、その先端が分離してインク粒子7Cとなる位置を包囲するように帯電電極11を備え、更に、帯電して飛行するインク粒子7Cを帯電量に応じて偏向して被印字物(不図示)に差し向けて印字する偏向電界を発生する偏向電極12(
図4は、12Aがグランド電極、12Bがプラス電極である)と、印字に使用しなかったインク粒子7Cを捕捉するガター14と、このガター14で捕捉したインク粒子の中で微少電荷504を帯びたインク粒子7Dの帯電量に応じた位相検出信号を発生する位相センサ47を備えている。
【0025】
そして、更に、前記インク供給ポンプ24とガター14で捕捉したインク7Eを主インク容器18に回収するインク回収ポンプ25を制御するポンプ駆動回路326と、前記ノズル8から噴射したインク柱7Bからインク粒子7Cに分離するタイミングに規則性をもたせるために該ノズル8に内蔵した電歪素子(不図示)を励振する励振電圧発生回路327と、印字用帯電信号発生回路329および位相探索用帯電信号発生回路328(本実施例では、印字用帯電信号発生回路329に加えて位相探索用帯電信号発生回路を設ける構成としたが、印字用帯電信号発生回路329のみを用いて制御部による帯電量制御によって実現するようにしてもよい。)から出力されるデジタル信号形態の帯電信号をアナログ形態の電圧信号に変換するD/Aコンバータ330と、D/Aコンバータ330から出力されるアナログ信号形態の電圧信号を増幅して帯電電極11に印加する帯電電圧を発生する増幅回路331と、偏向電極11に印加する偏向電圧を発生する偏向電圧発生回路335と、位相センサ47から出力するアナログ信号形態の位相検出信号を増幅する増幅回路332と、増幅された位相検出信号を入力して帯電良否を判定する位相判定回路333と、増幅された位相検出信号を入力してA/D変換するA/Dコンバータ334を備える。
【0026】
このように構成したインクジェット記録装置400におけるMPU320は、バスライン321を介してポンプ駆動回路326を制御してインク供給ポンプ24とインク回収ポンプ25を運転することにより、主インク容器18内のインク7Aを吸引、加圧してノズル8に供給することによりノズル8から柱7B状に噴出させ、ガター14で捕捉したインク粒子7Cを吸引して主インク容器18に回収する。ノズル8から噴出するインク柱7Bは、その先端が分離してインク粒子7Cとなる。インク柱7Bの先端がインク粒子7Cに分離タするイミングは、励振電圧発生回路327によって励振電圧を発生してノズル8の電歪素子を励振してインク柱7Bを振動させることにより、励振電圧に対して所定の位相に規制することができる。
【0027】
インク粒子7Cの帯電量は、インク柱7Bの先端からからインク粒子7Cが分離するときにインク柱7Bが帯電電極11の電位によって帯電している帯電量に比例する。印字用帯電信号発生回路329は、インク柱7Bの先端がインク粒子7Cに分離するときに該インク粒子7Cを所定の位置に偏向するために必要な帯電量となるように帯電電極11に帯電電圧を印加するための印字用帯電信号を発生する。
【0028】
印字用帯電信号に基づいて発生した帯電電圧に応じて帯電したインク粒子7Cは、偏向電極12の間を飛行する間に静電偏向されて被印字物(不図示)の目的の位置に付着する。帯電しなかったインク粒子7Cは、直進してガター14に捕捉されて回収される。
【0029】
印字用帯電信号を発生するタイミングは、インク柱7Bがインク粒子7Cに分離するときに該インク粒子7Cを所定の位置に偏向するために必要な帯電量となるように帯電電極11に帯電電圧を印加することができるタイミングであることが必要である。
【0030】
MPU320は、適正な位相関係のタイミングで印字用帯電電圧を発生するための位相探索を実行する。
【0031】
<本発明(実施例1)のガター部の構成>
次に、本発明の実施例1に係るインクジェット記録装置400において実施のガター部の形態を、
図5を用いて説明する。
図5は、
図4のガター14の周辺構成の部分拡大図を示す。
【0032】
図5において、7Cは印字に使用されないインク粒子、7Dは印字に使用されないインク粒子の中で微少電荷504を帯びたインク粒子である。インク粒子7Dは、偏向電極12を通過する際にわずかに偏向されるが、ガター14を飛び越えない程度の帯電量に抑えられている。ガター14は、印字に使用されないインク粒子7C、7Dを捕集するためのもので、内径φ1[mm]程度のステンレスのパイプで製作されている。
【0033】
位相センサ47は、微少電荷504を検知するための位相センサであり、位相センサ47の材質は導電性があり、また耐溶剤性があるステンレスで製作されている。ガター14と位相センサ47は、経路211で接続されており、経路211は樹脂などの絶縁材料で製作されている。また、位相センサ47は、経路212を介してポンプ(回収用)25に接続された構成となっている。
【0034】
そして、ガター14においては、インク粒子7C、7Dの流入口付近の外周面に導電性を有するグランド部501が備えられており、このグランド部501は、絶縁体502によってガター14と電気的に絶縁されている。また、更に、グランド部501はグランド電位レベルとなっている。グランド部501および絶縁体502は、印字に使用するインク粒子7Cの飛翔を妨げないように、なるべくインク粒子飛翔方向の凸部を小さくする、もしくはインク粒子7Cの飛翔方向を避けて設置する必要がある。
【0035】
印字に使用されないインク粒子7C、7Dは、ガター14に着弾すると、ポンプ(回収用)25により発生した吸引力により吸引され、インク7Eとして回収経路内を流れる。インク7Eはガター14の壁面を伝い、気体21Aと共に、流れ方向503Bの向きで流れて行き主インク容器18に回収される。例えば、インク7Eの流量が約3.5[ml/分]、気体21Aの流量が約140[ml/分]となっていれば、ガター14からインク7Eが溢れることなく、通常は安定したインク回収が可能となる。
【0036】
また、インクジェット記録装置400に使用されるインク7には導電性があるために、微少電荷504を帯びたインク粒子7Dは、ガター14の壁面に着弾すると、インク7Eを伝い、微少電荷504が矢印504Aのように位相センサに流れて行き、位相検出信号を発生する構成となっている。
【0037】
<位相探索方法>
図6に、帯電電圧印加タイミングを検出する例として、粒子化の基準となる励振信号を8分割し、各位相から始まる半周期分の帯電信号を印加する場合の各位相における帯電波形を示す。
【0038】
インクジェット記録装置400においては、最適な帯電電圧印加タイミングを検出するために、印字を行なっていない状態(印字と印字のインターバル等)において、粒子化の基準となる励振信号に対し帯電位相をずらしてガター14を飛び越えない程度の帯電電圧を印加し、各位相での帯電電荷量504を検出している。つまり、位相探索用帯電電圧を発生して位相探索を行っている。
【0039】
この位相探索のための位相探索用帯電電圧を発生するために、位相探索用帯電信号発生回路328は、励振電圧に対する位相を変えた複数種類の位相探索用帯電電圧を発生するための帯電信号を発生する。この位相探索用帯電電圧は、この帯電電圧で帯電したインク粒子7Dがガター14を飛び越えない(ガター14で捕捉できる)程度の偏向量となるような大きさとし、この帯電電圧で帯電したインク粒子7Dの帯電量504に応じて位相センサ47から出力される位相検出信号を増幅回路332を介して位相判定回路333およびA/Dコンバータ334に入力する。
【0040】
増幅回路332から出力する位相検出信号の波形は、例えば、
図8の(a)〜(c)に示すように変化する。インクジェット記録装置400が正常な状態にあるときには、位相検出信号の波形は、位相探索用帯電電圧の発生位相の変更に伴って
図8の(a)に示すように変化する。
【0041】
位相判定回路333は、このような位相検出信号を入力し、入力した各位相の位相検出信号をスレッショルドレベルと比較して2値化して、スレッシュドレベルを超えたものを「1」、超えないものを「0」と判定して、MPU320に入力する。MPU320は、2値化された位相検出信号が「0」から「1」になった位相をインク粒子7Cを帯電させる帯電電圧発生に最適な位相であると判断し、その位相でその後の印字用帯電電圧を発生するように印字用帯電信号を発生する。
【0042】
<本発明(実施例1)の動作>
次に、本発明におけるインクジェット記録装置400の実際にインクが溢れた場合の検知方法について、
図7、および、
図8を用いて説明する。
図7は、実施例1のガターからのインク溢れを示した図であり、
図8の(a)が正常時の位相検出データを示す図であり、
図8の(b)と(c)がインク溢れ時の位相検出データを示す図である。
【0043】
図7においては、インク7Eの回収能力が悪くなり、ガター14の入り口からインク7Fが溢れた状態を示している。インク溢れは、ガター14の入り口からの気体21Aの吸い込み流量が低下している場合に発生する可能性が高く、原因として、ポンプ(回収用)25のトラブル、経路(回収用)211〜214のシール不良などが考えられる。この状態を継続すると、ガター14からインク7Fが溢れ続け、装置周辺をインクで汚す可能性がある。そのため、早期にインク溢れを検知し、対処する必要がある。
【0044】
本実施例の形態においては、ガター14からインク7Fが溢れた場合にグランド部501と接触し、ガター14内壁とグランド部が電気的に導通状態となる。この場合、微少電荷504は矢印504Bのようにグランド部501に流れて行き、位相センサ47は微少電荷504を検出できなくなる。
【0045】
よって、インク回収経路で正常にインク吸引が行われている場合は、インク溢れが無く、
図8の(a)に示すような位相センサ47の検出結果となる。このように正常なインク吸引が行われている場合には、スレッショルドレベルを超えるものが3〜5位相程度あり、
図8の(a)では4位相分を検出している。
【0046】
次に、
図8の(b)では、インクがわずかに溢れている状態を示している。全体的に、位相センサ47での検出値が小さくなっており、スレッショルドレベルを超えているものは1位相だけである。
【0047】
そして、
図8の(c)では、インクが溢れた場合の位相センサ47の検出結果を示しており、微少電荷504はグランド部501に流れてしまっている。よって、位相センサ47では、微小電荷は検出されない結果となる。
【0048】
したがって、位相検出データに基づき、これを監視することにより、ガター14からのインク溢れを検知することが可能となっている。よって、ガターからのインク溢れが発生したことを早期に検知することができ、インク溢れによるインク汚染を防止することができる。
【0049】
<本発明(実施例1)のガター溢れ検知フロー説明>
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置400における位相探索と、インク溢れ検知について、MPU320の制御処理について、
図9を用いて説明する。
図9は、インク粒子化タイミングの位相探索およびインク溢れ検知から対処までの制御フロー図である。
【0050】
まず、ステップS701は、ノズル8から粒子化されたインク7Cが噴出されており、インク粒子7Cがガター14から回収されている状態を示している。ステップS702は、位相探索を行なうための位相探索用電圧を発生するように位相探索信号発生回路328に指示する。
【0051】
ステップS703は、位相探索用電圧を発生しているときに位相センサ47から出力される検出信号をデジタル信号形態に変換した位相検出データをA/Dコンバータ334から取得する。
【0052】
ステップS704は、A/Dコンバータ334から取得した位相検出データを所定の値(スレッショルドレベル)と比較して2値化する。この2値化データは、位相判定回路333から入力するように構成しても良い。ここで、スレッショルドレベルを超えるものを「1」、超えないものを「0」と判定する。
【0053】
ステップS705は、ステップS704で2値化したもので1周期(8位相)のうち「1」と判定されたものの数をカウントし、「1」が2位相以上あるかどうかを確認する。2位相以上ある場合は、「YES」(ガターからのインク回収状態良好)と判断され、ステップS706へ進む。もし「1」が1位相以下の場合は、「NO」(ガター14からのインク溢れ)と判断され、ステップS711に進む。
【0054】
ステップS706は、正常な位相探索が行なわれていると判断され、印字可能状態であることを示す。この後、ステップS702に戻り、ステップS702〜S706を繰り返すことで経時的な帯電タイミングの変化を監視する。
【0055】
次に、ステップS711では、ガター14からのインク溢れと判断されたため、装置周囲のインク汚れを低減するために、ノズル8からのインク噴出を停止する動作を指示する。
ステップS712は、異常発生を表示装置325に表示し、使用者に連絡を行なう。
【0056】
本実施例では、スレッショルドレベルを超えるものを「1」、超えないものを「0」と判定するとした制御フローを説明したが、スレッショルドレベルを超えるものを「0」、超えないものを「1」として定義し、制御しても構わない。
【0057】
<本発明(実施例1)の効果>
このように本実施例によれば、次に述べるような効果を得ることが可能となる。インク回収能力が低下してガター14からインクが溢れてしまった場合に、位相探索用帯電電圧をグランドに落として位相センサ47で検出できなくすることで、インクが溢れていることを早期に検知することが可能となるインクジェット記録装置を提供することができる。また、更に、インク溢れを検知した後で、ノズル8からのインク噴出を停止するような動作を行なうように制御することで、装置周辺のインク汚れを低減することが可能となるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0058】
<本発明(実施例1)の別形態のガター構造>
また、本発明の実施例1に用いるガター部の形態として、
図16、または、
図17に示したガターを用いることとしても良い。
【0059】
まず、
図16に示すガター部の構成について説明する。
図16の(a)がガター部全体を示し、
図16の(b)で、(a)図のA部の拡大図を示す。なお、
図5で示した構成と共通する部分については説明を省略し、異なる部分についての説明を行なう。
【0060】
図16の(a)において、ガター14Cは、印字に使用されないインク粒子7C、7Dを捕集するためのもので、内径φ1[mm]程度のステンレスのパイプで製作されている。ガター14Cは、インサート成形により絶縁体である樹脂(例えば材質:PBT)材料で製作されたガターブロック531と一体の構成となっている。ガターブッロク531は、ガターベース532に固定されており、経路211はOリング533によりシールされている。そして、ガターベース532内の経路211は、位相センサ47と接続されている。
【0061】
図16の(b)においては、絶縁体であるガターブロック531にグランド部501が設置され、ガター開口部14C1とグランド部501とが電気的に絶縁されていることが確認できる。
【0062】
次に、
図17に示すガター部の構成について説明する。
図17の(a)がガター部全体を示し、
図17の(b)で、(a)図のB部の拡大図を示す。お、
図5、および
図16で示した構成と共通する部分については説明を省略し、異なる部分についての説明を行なう。
図17の(a)および(b)において、ガター14Dは、印字に使用されないインク粒子7C、7Dを捕集するためのもので、内径φ1[mm]程度のガター開口部14D1を持ち、絶縁体である樹脂(例えば材質:PBT)材料で製作されている。
【0063】
以上のように、
図16、または、
図17の構成をとることで、実施例1に用いるガターにおいて、量産加工が容易となり、製造にあたってのコストダウンにつながる。
【実施例2】
【0064】
以下において、実施例2に係る発明につき図面を用いて説明する。なお、実施例1と共通する部分についての説明は省略し、主に実施例1と異なる部分について説明を行う。
【0065】
<本発明(実施例2)の構成>
本発明の実施例2に係るインクジェット記録装置410の実施の形態を
図10、
図11を用いて説明する。
図10は、実施例2の構成を示すブロック図を示し、
図11は、
図10のガター部の部分拡大図を示す。
【0066】
インクジェット記録装置において、320は、インクジェット記録装置410全体を制御するマイクロプロセッシングユニット(以下、MPUという)である。321は、バスラインであり、MPU320のデータ信号、アドレス信号およびコントロール信号を伝送する。
【0067】
次に、
図10、
図11において、インクの流れおよび、粒子化、帯電信号検知について説明する。インクジェット記録装置410は、印字に使用しなかったインク粒子7Cを捕捉するガター14Bと、このガター14Bで捕捉したインク粒子の中で微少電荷504を帯びたインク粒子7Dの帯電量に応じた位相検出信号を発生する位相センサA47A、位相センサB512を備えている。
【0068】
そして、更に、ガター14Bで捕捉したインク7Eを主インク容器18に回収するインク回収ポンプ25を制御するポンプ駆動回路341と、位相センサA47Aから出力するアナログ信号形態の位相検出信号を増幅する増幅回路342と、増幅された位相検出信号を入力して帯電良否を判定する位相判定回路A343と、増幅された位相検出信号を入力してA/D変換するA/DコンバータA344を備える。
【0069】
また、更に、位相センサB512から出力するアナログ信号形態の位相検出信号を増幅する増幅回路345と、増幅された位相検出信号を入力して帯電良否を判定する位相判定回路B346と、増幅された位相検出信号を入力してA/D変換するA/DコンバータB347を備える。
【0070】
このように構成したインクジェット記録装置410におけるMPU320は、バスライン321を介してポンプ駆動回路341を制御してインク供給ポンプ24とインク回収ポンプ25を運転および吸引力を制御することにより、主インク容器18内のインク7Aを吸引,加圧してノズル8に供給することによりノズル8から柱7B状に噴出させ、ガター14Bで捕捉したインク粒子7Cを吸引して主インク容器18に回収する。
【0071】
<本発明(実施例2)のガター部の構成>
次に、本発明の実施例2に係るインクジェット記録装置410において実施のガター部の形態を、
図11を用いて説明する。
図11は、
図10のガター14Bの周辺構成の部分拡大図を示す。
【0072】
図11において、7Cは印字に使用されないインク粒子、7Dは印字に使用されないインク粒子の中で微少電荷504を帯びたインク粒子である。インク粒子7Dは、偏向電極12を通過する際にわずかに偏向されるが、ガター14Bを飛び越えない程度の帯電量に抑えられている。14Bは、印字に使用されないインク粒子7C、7Dを捕集するためのもので、内径φ1[mm]程度のステンレスのパイプで製作されている。47Aは、微少電荷504を検知するための位相センサAであり、位相センサA47Aの材質は導電性があり、また耐溶剤性があるステンレスで製作されている。ガター14Bと位相センサA47Aは、経路211で接続されており、経路211は樹脂などの絶縁材料で製作されている。また、位相センサA47Aは、経路212を介してポンプ(回収用)25に接続された構成となっている。
【0073】
ガター14Bにおいて、インク粒子7C、7Dの流入口を構成するガター入り口部材511は絶縁体で製作されている。ガター入り口部材511は、位相センサB512および、グランド部513を備えており、ガター14Bと、位相センサB512、およびグランド部513はそれぞれ電気的に絶縁された状態となっている。
【0074】
グランド部513および位相センサB512は、印字に使用するインク粒子7Cの飛翔を妨げないように、なるべくインク粒子飛翔方向の凸部を小さくする、もしくはインク粒子7Cの飛翔方向を避けて設置する必要がある。
【0075】
印字に使用されないインク粒子7C、7Dは、ガター14に着弾すると、ポンプ(回収用)25により発生した吸引力により、インク7Eはガター14の壁面を伝い、気体21Aと共に、流れ方向503Bの向きで流れて行き主インク容器18に回収される。ここで、例えばインク7Eの流量が約3.5[ml/分]、気体21Aの流量が約140[ml/分]となっており、ガター14Bからインク7Eが溢れることなく、安定したインク回収が可能となっている。
【0076】
また、インクジェット記録装置410に使用されるインク7には導電性があるために、微少電荷504を帯びたインク粒子7Dは、ガター14Bの壁面に着弾すると、インク7Eを伝い、微少電荷504が矢印504Aのように位相センサに流れて行き、位相検出信号を発生する構成となっている。
【0077】
<本発明(実施例2)の動作>
次に、本発明におけるインクジェット記録装置410のインク回収能力が低下した場合とインクが溢れた場合の検知方法について、
図12、
図13、および
図14を用いて説明する。
図12は、ガター14Bでのインク回収能力が低下してインク液面がガター14Bの入り口付近まで上がっていることを示した図であり、
図13は、ガター14Bからのインク溢れを示した図である。そして、
図14は、状態(1)が正常時の位相データを示す図であり、状態(2)と状態(3)が回収能力が低下した場合の位相検出データを示す図であり、状態(4)がインク溢れ時の位相検出データを示す図である。
【0078】
図12においては、インク7Eの回収能力が低下し、インクの液面が位相センサB512に接触している状態を示している。このような状態においては、入り口部材511に設けられた位相センサ512とインク7Eが接触し、ガター14B内壁と位相センサB512が電気的に導通状態となる。この場合、微少電荷504は矢印504Cのように位相センサB512に流れて行き、位相センサA47Aでは微少電荷504を検出値が小さくなるか、または検出できなくなる。
【0079】
この場合、経路(回収用)211〜214にて気体21Aの流量が低下していることが原因と考えられ、例えば、ポンプ(回収用)25の周波数を上げるなどして気体21Aの流量を増加させることで、良好なインク回収状態(
図11に示す)に修復できる可能性がある。
【0080】
図13においては、インク7Eの回収能力が悪くなり、ガター14Bの入り口部材511からインク7Fが溢れた状態を示している。このような状態においては、ガター14Bの入り口部材511からインク7Fが溢れた場合にグランド部513と接触し、ガター14B内壁とグランド部513が電気的に導通状態となる。この場合、微少電荷504は矢印504Dのようにグランド部513に流れて行き、位相センサA47Aと位相センサB512では微少電荷504を検出できなくなる。
【0081】
このようなインク溢れは、ガター14Bの入り口からの気体21Aの吸い込み流量が低下している場合に発生する可能性が高く、原因として、ポンプ(回収用)25のトラブル、経路(回収用)211〜214のシール不良などが考えられる。この状態を継続すると、ガター14Bからインク7Fが溢れ続け、装置周辺をインクで汚す可能性がある。そのため、早期にインク溢れを検知し、対処する必要がある。
【0082】
次に、
図14を用いて、各回収状態体における位相検出データを説明する。
図14の状態(1)は、正常な回収状態であることを示しており、位相センサAで位相探索を実行している。この状態では、位相センサBはインク7Eに接触していないため、位相データは検出されていない。
【0083】
状態(2)においては、位相センサAと位相センサBの両方で位相データを検出している。これは、位相センサBにわずかにインク7Eが接触しており、回収能力が低下している状態となっている。この場合、位相センサAと位相センサBの合計値を位相検出結果として出力し、位相探索を実行する。
【0084】
状態(3)においては、位相センサAでは位相を検出しておらず、位相センサBのみ位相データを検出している。これは、状態(2)より更に回収能力が低下している状態である。この場合にも状態(2)の時と同様に、位相センサAと位相センサBの合計値を位相検出結果として出力し、位相探索を実行する。
【0085】
状態(4)においては、位相センサBにおいても位相の検出値が小さくなっており、位相センサAと位相センサBの合計値の検出データでもスレッショルドレベルを超える位相は無くなっている。この状態は、インクが溢れた場合の位相センサ47の検出結果を示しており、微少電荷504はグランド部513に流れてしまっている。
【0086】
このように本実施例の構成では、位相検出データを監視することにより、ガター14B部の回収状態を検知することが可能となっている。
【0087】
<本発明(実施例2)のガター溢れ検知フロー説明>
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置410における位相探索と、回収能力低下検知、およびインク溢れ検知についてのMPU320の制御処理について、
図15を用いて説明する。
図15は、インク粒子化タイミングの位相探索およびインク溢れ検知から対処までの制御フロー図である。
【0088】
まず、ステップS801は、ノズル8から粒子化されたインク7Cが噴出されており、インク粒子7Cがガター14Bから回収されている状態を示している。
【0089】
ステップS802は、位相探索を行なうための位相探索用電圧を発生するように位相探索信号発生回路328に指示する。
【0090】
ステップS803は、位相探索用電圧を発生しているときに位相センサA47Aから出力される検出信号をデジタル信号形態に変換した位相検出データをA/DコンバータA344から取得する。
【0091】
ステップS804は、A/DコンバータA344から取得した位相検出データを所定の値(スレッショルドレベル)と比較して2値化する。この2値化データは、位相判定回路A343から入力するように構成しても良い。ここで、スレッショルドレベルを超えるものを「1」、超えないものを「0」と判定する。
【0092】
ステップS805は、ステップS804で2値化したもので1周期(8位相)のうち「1」と判定されたものの数をカウントし、「1」が2位相以上あるかどうかを確認する。2位相以上ある場合は、「YES」(ガターからのインク回収状態良好)と判断され、ステップS806へ進む。もし「1」が1位相以下の場合は、「NO」(ガター14からのインク溢れ)と判断され、ステップS811に進む。
【0093】
ステップS806は、正常な位相探索が行なわれていると判断され、印字可能状態であることを示す。この後、ステップS802に戻り、ステップS802〜S806を繰り返すことで経時的な帯電タイミングの変化を監視する。
【0094】
次に、ステップS811では、ガター14Bからのインク回収能力低下と判断されたため、ポンプ(回収用)25の駆動周波数を上げて回収能力を高める動作を指示する。
【0095】
ステップS812は、位相探索用電圧を発生しているときに位相センサA47Aと位相センサB512から出力される検出信号を合計して、デジタル信号形態に変換した位相検出データをA/DコンバータA344と、A/DコンバータB347から取得する。
【0096】
ステップS813は、A/DコンバータA344と、A/DコンバータB347から取得した位相検出データを所定の値(スレッショルドレベル)と比較して2値化する。この2値化データは、位相判定回路A343と、位相判定回路B347から入力するように構成しても良い。ここで、スレッショルドレベルを超えるものを「1」、超えないものを「0」と判定する。
【0097】
ステップS814は、ステップS813で2値化したもので1周期(8位相)のうち「1」と判定されたものの数をカウントし、「1」が2位相以上あるかどうかを確認する。2位相以上ある場合は、「YES」(ガターからのインク溢れ無し)と判断され、ステップS815へ進む。もし「1」が1位相以下の場合は、「NO」(ガターからのインク溢れあり)と判断され、ステップS821に進む。
【0098】
ステップS815は、位相探索が可能であると判断され、印字可能状態であることを示す。この後、ステップS802に戻り、ステップS802〜S806、またはS802〜S815を繰り返すことで経時的な帯電タイミングの変化を監視する。
【0099】
次に、ステップS821では、ガター14Bからのインク溢れと判断されたため、装置周囲のインク汚れを低減するために、ノズル8からのインク噴出を停止する動作を指示する。
【0100】
ステップS822は、異常発生を表示装置325に表示し、使用者に連絡を行なうようになっている。
【0101】
<本発明(実施例2)の効果>
以上のように、本実施例に係るインクジェット記録装置410によれば、インク回収能力が低下した状態に陥ったときにガター14Bからインクが溢れる前に検知することが可能となり、その場合に、ポンプ(回収用)25の吸引力を上げるような制御を行なうことで、インク溢れを未然に防止することが可能となるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0102】
また、更に、ガター14Bからインクが溢れてしまった場合には、位相探索用帯電電圧をグランドに落として位相センサA47A、位相センサB512で検出できなくすることで、インクが溢れていることを早期に検知することが可能となり、インク溢れを検知した時にノズル8からのインク噴出を停止するような動作を行なうように制御することで、装置周辺のインク汚れを低減することが可能となるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0103】
<本発明(実施例2)の別形態のガター構造>
また、本発明の実施例2に用いるガター部の形態として、
図18、または、
図19に示したガターを用いることとしても良い。
【0104】
まず、
図18に示すガター部の構成について説明する。
図18の(a)がガター部全体を示し、
図18の(b)で、(a)図のC部の拡大図を示す。なお、
図11で示した構成と共通する部分については説明を省略し、異なる部分についての説明を行なう。
【0105】
図18の(a)において、ガター14Eは、印字に使用されないインク粒子7C、7Dを捕集するためのもので、内径φ1[mm]程度のステンレスのパイプで製作されている。ガター14Eは、インサート成形により絶縁体である樹脂(例えば材質:PBT)材料で製作されたガターブロック541と一体の構成となっている。
【0106】
図16の(b)において、ガター開口部14E1は、絶縁体であるガターブロック541と一体に形成されており、ガター開口部14E1の外側のガターブロック541にグランド部501が設置され、ガター開口部14E1の内側のガターブロック541には位相センサBが設置されている。よって、ガター14Eと位相センサB、グランド部501は、ガターブロック541により、電気的に絶縁されている。また、位相センサB542は、ガター開口部14E1の外側に信号を送るための接続部とグランド部501が、電気的に導通することを防止するために、絶縁体542で覆われている。
【0107】
次に、
図19に示すガター部の構成について説明する。
図19の(a)がガター部全体を示し、
図19の(b)で、(a)図のD部の拡大図を示す。お、
図11、および
図18で示した構成と共通する部分については説明を省略し、異なる部分についての説明を行なう。
【0108】
図19の(a)および(b)において、ガター14Fは、印字に使用されないインク粒子7C、7Dを捕集するためのもので、内径φ1[mm]程度のガター開口部14F1を持ち、絶縁体である樹脂(例えば材質:PBT)材料で製作されている。
【0109】
以上のように、
図16、または、
図17の構成をとることで、実施例1に用いるガターにおいて、量産加工が容易となり、製造にあたってのコストダウンにつながる。