(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体の流路となる一方の端面である第一端面から他方の端面である第二端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する筒状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部とを備え、
前記ハニカム構造部の電気抵抗率が、1〜200Ωcmであり、
前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設され、
前記電極部が、骨材としての炭化珪素からなる粒子が結合材により結合された多孔体からなり、
前記電極部を構成する前記骨材としての炭化珪素が、積層欠陥が2%以下のβ−SiCを含み、且つ、
前記電極部を構成する前記結合材が、珪素、及び金属珪化物を含む、ハニカム構造体。
前記骨材としての炭化珪素の体積に対する、前記結合材の体積の比率(結合材/炭化珪素)が、20/80〜60/40である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
前記結合材に含まれる前記金属珪化物が、ニッケル、及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属の珪化物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
前記骨材としての炭化珪素と前記結合材との合計体積に対して、前記金属珪化物の体積の比率が、1〜10体積%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
流体の流路となる一方の端面である第一端面から他方の端面である第二端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する筒状のハニカム成形体、又は前記ハニカム成形体を焼成して得たハニカム焼成体の側面の第一の領域及び第二の領域に、電極部形成原料をそれぞれ塗工し、塗工した前記電極部形成原料を乾燥及び焼成して、一対の電極部を形成する電極部形成工程を備え、
前記電極部形成工程は、前記電極部形成原料を、前記ハニカム成形体又は前記ハニカム焼成体の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記第一領域が、前記第二領域に対して、前記ハニカム成形体又は前記ハニカム焼成体の中心を挟んで反対側に位置するように、塗工するものであり、
前記電極部形成原料が、骨材としての炭化珪素、及び結合材としての金属珪化物を含む粒子と、結合材となる珪素を含む粒子とを含み、前記骨材としての炭化珪素が、積層欠陥が2%以下のβ−SiCを含む、ハニカム構造体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0030】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、
図1〜
図3に示すように、筒状のハニカム構造部4と、ハニカム構造部4の側面に配設された一対の電極部21,21とを備えた、ハニカム構造体100である。ハニカム構造部4は、流体の流路となる一方の端面である第一端面11から他方の端面である第二端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する外周壁3とを有する。本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム構造部4の電気抵抗率が、1〜200Ωcmである。また、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に形成されている。また、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されている。
【0031】
本実施形態のハニカム構造体100においては、上記電極部21が、骨材としての炭化珪素からなる粒子が結合材により結合された多孔体からなる。そして、この電極部21を構成する骨材としての炭化珪素が、積層欠陥が2%以下のβ−SiCを含む。更に、電極部21を構成する結合材が、珪素、及び金属珪化物を含む。なお、一対の電極部21,21のうちのいずれか一方の電極部21が、上述した構成を有するものであることが好ましく、一対の電極部21,21のうちの両方の電極部21,21が、上述した構成を有するものであることがより好ましい。
【0032】
ここで、
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
図3は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。尚、
図3においては、隔壁が省略されている。
【0033】
本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の電気抵抗率が1〜200Ωcmであるため、ハニカム構造部4に電圧を印加することにより、ハニカム構造部4が発熱する。即ち、電圧の高い電源を用いてハニカム構造部4に電流を流しても、ハニカム構造部4に過剰に電流が流れず、ヒーターとして好適に用いることができる。また、上述したように、帯状に形成された一対の電極部21,21が、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されているため、一対の電極部21,21間に電圧を印加したときの、ハニカム構造部4の温度分布の偏りを抑制することができる。
【0034】
更に、上述したように、電極部21を構成する骨材としての炭化珪素が、積層欠陥が2%以下のβ−SiCを含むため、電極部21の電気抵抗率を、従来のハニカム構造体の電極部に比して、低くすることができる。すなわち、積層欠陥が2%以下のβ−SiCは、その他の炭化珪素に比して、その電気抵抗率が低く、このような積層欠陥が2%以下のβ−SiCを電極部21の骨材として使用することで、電極部21の電気抵抗率を良好に低下させることが可能となる。なお、その他の炭化珪素とは、例えば、積層欠陥が2%超のβ−SiCや、α−SiCを挙げることができる。従来のハニカム構造体の電極部においては、結合材として含まれる珪素の含有比率を調製することによって、その電気抵抗率を調節することが主として行われていた。このため、従来のハニカム構造体においては、特定の炭化珪素を、電極部の骨材として使用することで、電極部の電気抵抗率を低下させるという試みはされていなかった。
【0035】
本実施形態のハニカム構造体100は、電極部21の電気抵抗率を低くすることができるため、電極部21に供給された電流が、当該電極部21全域に良好に伝達し、この電極部21からハニカム構造部4全体に均一に電流が流れることとなる。従って、従来の、ヒーターとしても機能するハニカム構造体と比較して、発熱時における温度ムラ、別言すれば、発熱ムラを小さくすることができる。
【0036】
ここで、β−SiCの積層欠陥について説明する。まず、積層欠陥とは、面状の格子欠陥(面欠陥)の一種であり、完全結晶を原子面が周期的に積み重なって作られていると考えるとき、この積み重ねの規則性(順序)に乱れを生じていることをいう。本明細書において、β−SiCの積層欠陥(%)は、下記式(1)によって算出される値のことをいう。ここで、下記(1)におけるAは、下記式(2)によって算出される値である。
【0039】
ここで、式(2)における「33.6°ピーク強度」は、X線回折(XRD)によるX線回折スペクトルにおいて、散乱角(2θ)が33.6°でのピーク強度のことである。また、「41.4°ピーク強度」は、X線回折(XRD)によるX線回折スペクトルにおいて、散乱角(2θ)が41.4°でのピーク強度のことである。上記のX線回折においては、黒鉛モノクロメーターを使用し、波長が1.54ÅのCuKα線によってX線回折分析を行う。管電圧は50kV、管電流は300mAとする。走査速度は、2θ=2°min
−1とし、受光スリット(Recieving Slit)は0.3mmとする。このようにして、X線回折スペクトルにおける散乱角2θ=33.6°でのピーク強度と散乱角2θ=41.4°でのピーク強度を測定し、上記式(2)により「A」を算出し、上記式(1)に従い、β−SiCの積層欠陥を求めることができる。なお、β−SiCの積層欠陥について記載された参考文献として、例えば、下記の参考文献1及び2を挙げることができる。参考文献1:日本セラミックス協会学術論文誌 99[12],p1179−1184,(1991)。参考文献2:Journal of the Ceramic Society of Japan,106[5],p483−487,(1998)。ここで、上記「β−SiCの積層欠陥」の測定方法を更に具体的に説明する。電極部に含まれる骨材としての炭化珪素について、β−SiCの積層欠陥を測定する場合には、まず、当該電極部から、X線回折測定用の試料を作製する。このX線回折測定用の試料は、X線回折測定可能な断面を確保できるように、電極部から試料を切り出して作製することができる。具体的には、断面の凹凸を樹脂で埋め、更に研磨を行う。次に、作製した試料の研磨面において、微小部X線回折装置(BRUKER−AXS製)を用いて、試料中に含まれる骨材の1粒子ごとにXRDパターンを測定する。XRDパターンの測定は、試料中に含まれる骨材を、任意に50個測定する。そして、得られたXRDパターンからβ−SiCと判別された骨材においては、上記式(1)及び式(2)に従い、β−SiCの積層欠陥の割合を求める。また、電極部を形成するための原料を入手可能な場合には、当該原料の粉末(原料粉末)を用いて、β−SiCの積層欠陥の割合を測定してもよい。例えば、原料粉末の段階にて、X線回折装置にてXRDパターンを測定し、上記式(1)及び式(2)に従い、β−SiCの積層欠陥の割合を求めることもできる。
【0040】
電極部21に含まれる骨材としての炭化珪素のうちの40体積%以上が、上述した「積層欠陥が2%以下のβ−SiC」であることが好ましい。以下、「積層欠陥が2%以下のβ−SiC」のことを、「低積層欠陥β−SiC」ということがある。骨材としての炭化珪素のうちの40体積%以上が、上記低積層欠陥β−SiCであると、電極部21の電気抵抗率が良好に低減する。なお、骨材としての炭化珪素のうちの60体積%以上が、低積層欠陥β−SiCであることが更に好ましく、70〜100体積%が、低積層欠陥β−SiCであることが特に好ましい。なお、「低積層欠陥β−SiC」以外の炭化珪素としては、積層欠陥が2%超のβ−SiC、α−SiCを挙げることができる。ここで上記「低積層欠陥β−SiC」の体積割合の測定方法を更に具体的に説明する。電極部に含まれる骨材としての炭化珪素について、「低積層欠陥β−SiC」の体積割合を測定する場合には、まず、当該電極部から、X線回折測定用の試料を作製する。このX線回折測定用の試料は、X線回折測定可能な断面を確保できるように、電極部から試料を切り出して作製することができる。具体的には、断面の凹凸を樹脂で埋め、更に研磨を行う。次に、作製した試料の研磨面において、微小部X線回折装置(BRUKER−AXS製)を用いて、試料中に含まれる骨材の1粒子ごとにXRDパターンを測定する。XRDパターンの測定は、試料中に含まれる骨材を、任意に50個測定する。そして、得られたXRDパターンから各骨材を、「低積層欠陥β−SiC」の骨材と「低積層欠陥β−SiC」以外の骨材とに判別する。次に同じ視野を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮像する。撮像した断面画像を、解析ソフト(日本ビジュアルサイエンス社製 Image−Pro(商品名))で解析し、上述したXRDパターンから判別された「低積層欠陥β−SiC」の骨材と「低積層欠陥β−SiC」以外の骨材との合計面積に対する、「低積層欠陥β−SiC」の骨材の合計面積の割合を算出し、「低積層欠陥β−SiC」の体積割合を求める。また、電極部を形成するため原料を入手可能な場合には、当該原料の粉末(原料粉末)を用いて、「低積層欠陥β−SiC」の体積割合を測定してもよい。
【0041】
β−SiCの結晶子サイズが900Å以上であることが好ましく、900〜500000Åであることが更に好ましく、1000〜500000Åであることが特に好ましい。β−SiCの結晶子サイズは、下記式(3)によって算出される値のことをいう。下記式(3)は、シェラーの式である。通常、1個の結晶粒は複数の単結晶と見なせるような微細結晶からなり、この微細結晶を結晶子と呼ぶ。この結晶子の大きさが、上記「結晶子サイズ」である。電極部に含まれる骨材としてのβ−SiCの結晶子サイズが900Å以上であると、電極部の電気抵抗率を良好に低下させることができる。
【0043】
ここで、式(3)における「t(Å)」は、結晶子サイズ(Å)を示す。「λ」は、X線波長(1.54Å)を示す。「B」は、散乱角(2θ)が35.6°のピークの半値幅を示す。「θ
B」は、散乱角(2θ)の1/2の値、即ち、θ
B=17.8°である。X線回折(XRD)によるX線回折スペクトルは、上述したβ−SiCの積層欠陥の算出方法にて説明した方法と同様の方法によって測定することができる。結晶子サイズについて記載された参考文献として、以下の参考文献3を挙げることができる。参考文献3:早稲田 嘉夫、及び松原 英一郎著,「X線構造解析 原子の配列を決める(材料学シリーズ)」,内田老鶴圃,1999年9月30日,第2版発行,p119−123。ここで、上記「β−SiCの結晶子サイズ」の測定方法を更に具体的に説明する。電極部に含まれる骨材としての炭化珪素について、β−SiCの結晶子サイズを測定する場合には、まず、当該電極部から、X線回折測定用の試料を作製する。このX線回折測定用の試料は、X線回折測定可能な断面を確保できるように、電極部から試料を切り出して作製することができる。具体的には、断面の凹凸を樹脂で埋め、更に研磨を行う。次に、作製した試料の研磨面において、微小部X線回折装置(BRUKER−AXS製)を用いて、試料中に含まれる骨材の1粒子ごとにXRDパターンを測定する。XRDパターンの測定は、試料中に含まれる骨材を、任意に50個測定する。そして、得られたXRDパターンからβ−SiCと判別された骨材においては、上記式(3)に従い、β−SiCの結晶子サイズを求める。また、電極部を形成するための原料を入手可能な場合には、当該原料の粉末(原料粉末)を用いて、β−SiCの結晶子サイズを測定してもよい。例えば、原料粉末の段階にて、X線回折装置にてXRDパターンを測定し、上記式(3)に従い、β−SiCの結晶子サイズを求めることもできる。
【0044】
図1〜
図3に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の側面5(外周壁3の表面)に一対の電極部21,21が配設されている。本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21間に電圧を印加することにより、発熱する。印加する電圧については特に制限はないが、例えば、12〜900Vが好ましく、64〜600Vが更に好ましい。
【0045】
ここで、「セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設される」の意味は、以下の通りである。まず、上記断面において、「一方の電極部21の中央点とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分P」と、「他方の電極部21の中央点とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分Q」と、により形成される角度を角度βとする。そのときに、上記意味は、角度βが、170°〜190°の範囲となるような位置関係になるように、一対の電極部21,21がハニカム構造部4に配設されていることである(
図3を参照)。「一方の電極部21の中央点」は、「ハニカム構造部4の周方向」における中央の点である。また、「他方の電極部21の中央点」は、「ハニカム構造部4の周方向」における中央の点である。また、角度βは、「中心O」を中心とする角度である。
【0046】
骨材としての炭化珪素の体積に対する、結合材の体積の比率(結合材/炭化珪素)が、20/80〜60/40であることが好ましい。「骨材としての炭化珪素の体積に対する、結合材の体積の比率(結合材/炭化珪素)が、20/80」とは、骨材としての炭化珪素、及び結合材の合計体積に対して、炭化珪素の体積割合が80体積%であり、結合材の体積割合が20体積%であることを意味する。結合材の体積割合が20体積%未満であると、電極部21の強度が低下することがある。結合材の体積割合が60体積%超であると、電極部21から、結合材に含まれる珪素が噴出することがある。骨材としての炭化珪素の体積に対する、結合材の体積の比率(結合材/炭化珪素)は、25/75〜50/50であることが更に好ましく、30/70〜40/60であることが特に好ましい。骨材としての炭化珪素、及び結合材の体積割合は、XRD(X線回折法)により測定したXRDパターンをWPPD法によりフィッティングすることにより求めることができる。上記のX線回折においては、黒鉛モノクロメーターを使用し、波長がCuKα線によってX線回折分析を行う。管電圧は50kV、管電流は300mAとする。連続法を用いて、測定範囲は、5〜80°、走査速度は、2θ=2°min
−1とし、受光スリット(Recieving Slit)は0.3mmとする。なお、WPPD法について記載された参考文献として、例えば、下記の参考文献4挙げることができる。参考文献4:Journal of the Ceramic Society of Japan 107 [3] 249−257 (1999)。また、電極部21を作製するための原料(即ち、電極部形成原料)にて、骨材としての炭化珪素、及び結合材の体積割合を求めることができる場合には、この電極部形成原料の段階で、骨材としての炭化珪素、及び結合材の体積割合を測定してもよい。
【0047】
骨材としての炭化珪素からなる粒子の平均粒子径が、10〜70μmであることが好ましく、10〜50μmであることが更に好ましく、15〜40μmであることが特に好ましい。電極部に含まれる炭化珪素からなる粒子の平均粒子径が、10μm未満であると、電極部の電気抵抗率が高くなる傾向にある。また、電極部に含まれる炭化珪素からなる粒子の平均粒子径が、70μm超であると、電極部の強度が低下する傾向にある。
【0048】
炭化珪素からなる粒子(以下、「炭化珪素粒子」ともいう)の平均粒子径は、以下の方法で測定することができる。まず、電極部を、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮像する。次に、撮像した断面画像を、解析ソフト(日本ビジュアルサイエンス社製 Image−Pro(商品名))で解析し、電極部に含まれる炭化珪素粒子の粒子径を計測する。炭化珪素粒子の粒子径は、断面画像中に映し出される炭化珪素粒子を、無作為に50点測定し、測定した粒子径の平均値を、炭化珪素粒子の平均粒子径とする。上記走査型電子顕微鏡(SEM)による撮像は、倍率200倍にて行い、断面画像中に映し出される炭化珪素粒子の最大径を測定することとする。なお、本発明において、各粒子の平均粒子径は、上述した走査型電子顕微鏡(SEM)により撮像した断面画像の画像解析によって求めることができる。また、例えば、原料として使用する粒子の状態にて、レーザー回折法によって、各粒子の平均粒子径を測定することもできる。すなわち、電極部の原料として使用する各粒子を入手可能な場合には、原料の段階にて、その平均粒子径を測定してもよい。また、原料の段階での測定方法と、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮像した断面画像の画像解析による測定方法と、を適宜併用してもよい。
【0049】
結合材に含まれる金属珪化物が、ニッケル、及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属の珪化物であることが好ましい。このような金属珪化物を含むことにより、β−SiCの積層欠陥が少なくなる。このように、結合材に含まれる金属珪化物は、積層欠陥の少ないβ−SiCからなる骨材を得るために重要な成分となる。
【0050】
骨材としての炭化珪素と結合材との合計体積に対して、金属珪化物の体積の比率が、1〜10体積%であることが好ましく、4〜10体積%であることが更に好ましく、4〜8体積%であることが特に好ましい。金属珪化物の体積の比率が、1体積%未満であると、電極部の電気抵抗率が高くなる傾向にある。一方、金属珪化物の体積の比率が、10体積%超であると、電極部の熱膨張が大きくなることがある。金属珪化物の体積の比率は、XRD(X線回折法)により測定したXRDパターンをWPPD法によりフィッティングすることにより求めることができる。この測定方法は、骨材としての炭化珪素、及び結合材の体積割合の測定方法に準じて行うことができる。
【0051】
電極部が、アルカリ土類金属酸化物、Al
2O
3、及びSiO
2を更に含んでいてもよい。このように構成することによって、電極部の気孔率が低下し、電極部の電気抵抗率が更に低下する。電極部は、アルカリ土類金属酸化物、Al
2O
3、及びSiO
2を、これらの三成分を含む酸化物粒子として含むことがより好ましい。また、上述したアルカリ土類金属酸化物としては、MgO、SrOなどを挙げることができる。中でも、アルカリ土類金属酸化物が、MgOであることが更に好ましい。
【0052】
電極部が、アルカリ土類金属酸化物、Al
2O
3、及びSiO
2を更に含む際には、骨材としての炭化珪素と結合材との合計体積を100体積部とした場合に、アルカリ土類金属酸化物、Al
2O
3、及びSiO
2を合計で1〜10体積部含むことがより好ましい。上記三成分の酸化物を、上記範囲の体積部含むことにより、電極部の電気抵抗率がより良好に低下する。尚、三成分の酸化物の含有比率が、1体積部未満であると、電極部の気孔率が高くなる。また、三成分の酸化物の含有比率が、10体積部を超えると、電極部の電気抵抗率が高くなる傾向になる。上述した三成分の酸化物の含有比率は、電極部の断面をSEM観察して、画像処理ソフトによって画像解析して求めることができる。画像処理ソフトとしては、ImagePro(日本ビジュアルサイエンス社製)を用いることができる。具体的には、例えば、まず、電極部から、「断面」を観察するためのサンプルを切り出す。電極部の断面については、断面の凹凸を樹脂で埋め、更に研磨を行い、研磨面の観察を行う。そして、「断面」5視野(倍率1000倍)の観察結果から、珪素と骨材との合計面積に対するアルカリ土類金属酸化物、Al
2O
3、及びSiO
2の合計面積を算出する。また、上記三成分の酸化物の含有比率を、電極部を作製するための原料(即ち、電極部形成原料)にて求めることができる場合には、この電極部形成原料の段階で測定してもよい。
【0053】
電極部の厚さが、50〜300μmであることが好ましく、100〜200μmであることが更に好ましく、100〜150μmであることが特に好ましい。電極部の厚さが、50〜300μmであると、ハニカム構造部を均一に発熱し易くなり、また、電極部の耐熱衝撃性も良好なものとなる。例えば、電極部の厚さが、50μm未満であると、電極部が薄すぎて、ハニカム構造部を均一に発熱し難くなることがある。また、電極部の厚さが、300μmを超えると、電極部の耐熱衝撃性が低下することがある。電極部の厚さは、ハニカム構造体のセルの延びる方向に垂直な断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮像して得られる画像から測定することができる。電極部の厚さは、「セルの延びる方向におけるハニカム構造体の中央部」における、電極部の周方向3点の平均厚みの値である。「電極部の周方向3点の平均厚みの値」とは、以下の方法によって求められた値である。まず、電極部を「ハニカム構造部の周方向」に3等分して、3つの分割部分を形成する。即ち、セルの延びる方向に平行な直線で、電極部を3等分して、3つの分割部分を形成する。次に、3つの各分割部分において「ハニカム構造部の周方向」における中央部の厚さを測定し、得られた3点の厚さの測定結果の平均値を求める。得られた平均値が、「電極部の周方向3点の平均厚みの値」である。
【0054】
電極部の気孔率が、10〜60%であることが好ましく、30〜50%であることが更に好ましく、35〜45%であることが特に好ましい。電極部の気孔率は、電極部の断面をSEM観察して、画像処理ソフトによって計測した値である。画像処理ソフトとしては、ImagePro(日本ビジュアルサイエンス社製)を用いることができる。具体的には、例えば、まず、電極部から、「断面」を観察するためのサンプルを切り出す。電極部の断面については、断面の凹凸を樹脂で埋め、更に研磨を行い、研磨面の観察を行う。そして、「断面」2視野(倍率500倍)の観察結果から、全体に対する気孔部分の合計面積を産出する。電極部の気孔率がこのような範囲であることにより、耐熱衝撃性に優れると共に、電極部の電気抵抗率も低くなる。電極部の気孔率が、10%未満であると、電極部の熱容量が大きくなり、耐熱衝撃性が低下することがある。電極部の気孔率が、60%を超えると、電極部の電気抵抗率が低下し難くなる。
【0055】
骨材としての炭化珪素に含まれる積層欠陥が2%以下のβ−SiCは、珪素、炭素質物質、及び遷移金属を用いて、当該珪素を炭化珪素化させたものであることが好ましい。通常、市販品として入手可能なβ−SiCの粒子は、β−SiCの積層欠陥が2%超であることが多く、本実施形態のハニカム構造体においては、上述したようにして作製された、積層欠陥が2%以下のβ−SiCの粒子を用いることが好ましい。一般的に、上述した方法で作製されたSiCは、反応焼結SiCと呼ばれている。反応焼結SiCは、原料間の反応を利用して生成させたSiCである。そして、その原料として、珪素、炭素質物質、及び遷移金属を用いることで、得られるβ−SiCの積層欠陥が少なくなる。炭素質物質としては、カーボン、より具体的には、固体カーボン粉末を挙げることができる。
【0056】
電極部21の電気抵抗率は、0.01〜0.4Ωcmであることが好ましく、0.01〜0.3Ωcmであることが、更に好ましい。電極部21の電気抵抗率をこのような範囲にすることにより、一対の電極部21,21が、効果的に電極の役割を果たす。電極部21の電気抵抗率が0.4Ωcmより小さいと、電極部21全域に電流が流れ、ハニカム構造部4を均一に発熱させ易くなる。電極部21の電気抵抗率が0.4Ωcmより大きいと、電極部21に電流が流れ難くなるため、電極としての役割を果たし難くなることがある。電極部の電気抵抗率は、室温における値である。
【0057】
図1〜
図3に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に形成されている。セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21,21の中心角αの0.5倍(中心角αの0.5倍の角度θ)が、15〜65°であることが好ましく、30〜60°であることが更に好ましい。このように構成することによって、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを、より効果的に抑制することができる。即ち、ハニカム構造部4内を流れる電流を、より均一に流すことができる。これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを抑制することができる。「電極部21の中心角α」は、
図3に示されるように、セル2の延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ2本の線分により形成される角度ある。別言すれば、「電極部21の中心角α」は、「電極部21」と、「電極部21の一方の端部と中心Oとを結ぶ線分」と、「電極部21の他方の端部と中心Oとを結ぶ線分」とにより形成される形状(例えば、扇形)における、中心Oの部分の内角である。
【0058】
また、一方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」は、他方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」に対して、0.8〜1.2倍の大きさであることが好ましく、1.0倍の大きさ(同じ大きさ)であることが更に好ましい。これにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを、より効果的に抑制することができ、これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを、より効果的に抑制することができる。
【0059】
本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセルの延びる方向に延びると共に「両端部間に亘る」帯状に形成されている。このように、一対の電極部21,21が、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように配設されていることにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りをより効果的に抑制することができる。そして、これにより、ハニカム構造部4内の発熱の偏りをより効果的に抑制することができる。ここで、「電極部21が、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように形成(配設)されている」というときは、以下のように状態のことを意味する。即ち、電極部21の一方の端部がハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面)に接し、電極部21の他方の端部がハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面)に接していることを意味する。
【0060】
本実施形態のハニカム構造体100においては、電極部21の「ハニカム構造部4のセル2の延びる方向」における両端部が、ハニカム構造部4の第一の端面11及び第二の端面12に接していない(到達していない)状態も好ましい態様である。また、電極部21の一方の端部が、例えば、ハニカム構造部4の第一の端面11に接し(到達し)、電極部21の他方の端部が、ハニカム構造部4の第二の端面12に接していない(到達していない)状態も好ましい態様である。このように、電極部21の少なくとも片方の端部が、ハニカム構造部4の第一の端面11又は第二の端面12のどちらかに接して(到達して)いない構造であると、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。つまり、一対の電極部21,21のそれぞれは、「ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させる」という観点からは、少なくとも片方の端部が、ハニカム構造部4の第一の端面11又は第二の端面12に接して(到達して)いない構造であることが好ましい。以上より、「ハニカム構造部4内の、電流の偏りをより効果的に抑制することにより、発熱の偏りをより効果的に抑制する」という観点を重視する場合には、一対の電極部21,21がハニカム構造部4の両端部間に亘るように形成されていることが好ましい。一方、「ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させる」という観点を重視する場合には、一対の電極部21,21のそれぞれにおける少なくとも片方の端部が、ハニカム構造部4の第一の端面11又は第二の端面12に接して(到達して)いないことが好ましい。
【0061】
図1〜
図3に示すハニカム構造体100においては、電極部21は、平面状の長方形の部材を、円筒形状の外周に沿って湾曲させたような形状となっている。ここで、湾曲した電極部21を、湾曲していない平面状の部材になるように変形したときの形状を、電極部21の「平面形状」と称することにする。
図1〜
図3に示される電極部21の「平面形状」は、長方形になる。そして、「電極部の外周形状」というときは、「電極部の平面形状における外周形状」を意味する。
【0062】
図1〜
図3に示すように、帯状の電極部21の外周形状が長方形であってもよいが、帯状の電極部21の外周形状が、「長方形の角部が曲線状に形成された形状」であることも好ましい態様である。また、帯状の電極部21の外周形状が、「長方形の角部が直線状に面取りされた形状」であることも好ましい態様である。「曲線状」と「直線状」の複合適用も好ましい。「曲線状」と「直線状」の複合適用とは、例えば、長方形において、角部の少なくとも一つが「曲線状に形成された形状」となっており、且つ、角部の少なくとも一つが「直線状に面取りされた形状」となっている形状のことを意味する。
【0063】
電極部21の外周形状が、「長方形の角部が曲線状に形成された形状」、又は「長方形の角部が直線状に面取りされた形状」であることにより、ハニカム構造体100の耐熱衝撃性を更に向上させることができる。電極部21の角部が直角であると、ハニカム構造部4における「当該電極部21の角部」付近の応力が、他の部分と比較して相対的に高くなる傾向にある。これに対し、電極部21の角部を曲線状にしたり直線状に面取りしたりすると、ハニカム構造部4における「当該電極部21の角部」付近の応力を低下させることが可能となる。
【0064】
本実施形態のハニカム構造体100に用いられるハニカム構造部4については、触媒担体であると共に電圧を印加することによりヒーターとしても機能する従来のハニカム構造体に用いられるハニカム構造部4を用いることができる。以下、ハニカム構造部4の構成について説明するが、本実施形態のハニカム構造体100は、このようなハニカム構造部4に制限されることはない。
【0065】
本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1及び外周壁3の材質が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするものであることが好ましく、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素であることが更に好ましい。「隔壁1及び外周壁3の材質が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とするものである」というときは、隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素粒子及び珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。このような材質を用いることにより、ハニカム構造部4の電気抵抗率を1〜200Ωcmにすることができる。ここで、珪素−炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。また、炭化珪素は、炭化珪素が焼結したものである。ハニカム構造部4の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0066】
ハニカム構造部4は、隔壁1の厚さが50〜200μmであることが好ましく、70〜130μmであることが更に好ましい。隔壁1の厚さをこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持しても、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることを抑制できる。隔壁1の厚さが50μmより薄いと、ハニカム構造体100の強度が低下することがある。隔壁1の厚さが200μmより厚いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0067】
ハニカム構造部4は、セル密度が40〜150セル/cm
2であることが好ましく、70〜100セル/cm
2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm
2より低いと、触媒担持面積が少なくなることがある。セル密度が150セル/cm
2より高いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0068】
ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子(骨材)の平均粒子径は、3〜50μmであることが好ましく、3〜40μmであることが更に好ましい。ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、ハニカム構造部4の400℃における電気抵抗率を1〜200Ωcmにすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が3μmより小さいと、ハニカム構造部4の電気抵抗率が大きくなることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム構造部4の電気抵抗率が小さくなることがある。更に、炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム成形体を押出成形するときに、押出成形用の口金に成形用原料が詰まることがある。
【0069】
ハニカム構造部4の電気抵抗率は、1〜200Ωcmであり、10〜100Ωcmであることが好ましい。電気抵抗率が1Ωcmより小さいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体100に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が過剰に流れることがある。電気抵抗率が200Ωcmより大きいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体100に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が流れ難くなり、十分に発熱しないことがある。ハニカム構造部4の電気抵抗率は、四端子法により測定した値である。
【0070】
電極部21の電気抵抗率は、ハニカム構造部4の電気抵抗率より低いものであることが好ましく、更に、電極部21の電気抵抗率が、ハニカム構造部4の電気抵抗率の、20%以下であることが更に好ましく、0.1〜10%であることが特に好ましい。電極部21の電気抵抗率を、ハニカム構造部4の電気抵抗率の、20%以下とすることにより、電極部21が、より効果的に電極として機能するようになる。
【0071】
ハニカム構造部4の材質が、珪素−炭化珪素複合材である場合、ハニカム構造部4が以下のように構成されていることが好ましい。ハニカム構造部4に含有される「炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部4に含有される「珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部4に含有される「珪素の質量」の比率が、10〜40質量%であることが好ましい。この比率が、10質量%より低いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。40質量%より高いと、焼成時に形状を保持できないことがある。ハニカム構造部4に含有される「炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部4に含有される「珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部4に含有される「珪素の質量」の比率は、15〜35質量%であることが更に好ましい。
【0072】
ハニカム構造部4の隔壁1の気孔率は、35〜60%であることが好ましく、35〜45%であることが更に好ましい。気孔率が、35%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。気孔率が60%を超えるとハニカム構造体の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0073】
ハニカム構造部4の隔壁1の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。平均細孔径が15μmより大きいと、電気抵抗率が小さくなり過ぎることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0074】
また、ハニカム構造部4の最外周を構成する外周壁3の厚さは、0.1〜2mmであることが好ましい。0.1mmより薄いと、ハニカム構造体100の強度が低下することがある。2mmより厚いと、触媒を担持する隔壁1の面積が小さくなることがある。
【0075】
ハニカム構造部4は、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせ、であることが好ましい。セル2の形状としては、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体100に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0076】
ハニカム構造部4の全体形状については特に制限はない。ハニカム構造部4の形状としては、例えば、底面が円形の筒状(円筒形状)、底面がオーバル形状の筒状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の筒状等の形状を挙げることができる。また、ハニカム構造部4の大きさは、底面の面積が2000〜20000mm
2であることが好ましく、4000〜10000mm
2であることが更に好ましい。また、ハニカム構造部4の中心軸方向の長さは、50〜200mmであることが好ましく、75〜150mmであることが更に好ましい。
【0077】
ハニカム構造体100のアイソスタティック強度は、1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることが更に好ましい。アイソスタティック強度は、値が大きいほど好ましいが、ハニカム構造体100の材質、構造等を考慮すると、6MPa程度が上限となる。アイソスタティック強度が1MPa未満であると、ハニカム構造体100を触媒担体等として使用する際に、破損し易くなることがある。アイソスタティック強度は水中にて静水圧をかけて測定した値である。
【0078】
本実施形態のハニカム構造体100は、触媒が担持されて、触媒体として使用されることが好ましい。
【0079】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、一対の電極部を形成する電極部形成工程を備えたものである。電極部形成工程においては、まず、筒状のハニカム成形体、又はこのハニカム成形体を焼成して得たハニカム焼成体の側面の第一の領域及び第二の領域に、電極部形成原料をそれぞれ塗工する。次に、塗工した電極部形成原料を乾燥及び焼成して、一対の電極部を形成する。筒状のハニカム成形体は、流体の流路となる一方の端面である第一端面から他方の端面である第二端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有するものである。尚、筒状のハニカム成形体の作製方法については、後述する。
【0080】
この電極部形成工程においては、電極部形成原料を、ハニカム成形体又はハニカム焼成体のセルの延びる方向に直交する断面において、第一領域が、第二領域に対して、ハニカム成形体又はハニカム焼成体の中心を挟んで反対側に位置するように、塗工する。そして、本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、電極部形成原料として、以下のように調製された電極部形成原料を用いる。即ち、電極部形成原料が、骨材としての炭化珪素からなる粒子と、結合材となる珪素とを含み、骨材としての炭化珪素が、積層欠陥が2%以下のβ−SiCを含む。このような電極部形成原料を用いて、電極部形成工程を行うことにより、これまでに説明した、
図1〜
図3に示すようなハニカム構造体100を簡便に製造することができる。
【0081】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、骨材としての炭化珪素に含まれる積層欠陥が2%以下のβ−SiCが、珪素、炭素質物質、及び遷移金属を含む骨材材料を用いて得られたものであることが好ましい。炭素質物質としては、固体カーボン粉末を挙げることができる。この炭素質物質が、カーボンブラックであることが更に好ましい。このような方法によってβ−SiCを作製することにより、積層欠陥が2%以下のβ−SiCを良好に得ることができる。ただし、積層欠陥が2%以下のβ−SiCの作製方法については、上述した方法に限定されることはない。また、積層欠陥が2%以下のβ−SiCが入手可能な場合には、作製済みのβ−SiCの粒子を用いてもよい。
【0082】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、骨材材料に含まれる遷移金属が、ニッケル、及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも一種の遷移金属であることが好ましい。このようなニッケルやジルコニウムが骨材材料に含まれることにより、β−SiCの積層欠陥がより少なくなる。ニッケル及びジルコニウムは、上記骨材材料からβ−SiCが作製される際に、金属珪化物となる。即ち、上記骨材材料から得られる積層欠陥が2%以下のβ−SiCには、当該β−SiCの粒子と、遷移金属が珪化した金属珪化物と、未反応の珪素と、が含まれている。そして、この遷移金属が珪化した金属珪化物が、これまでに説明した本実施形態のハニカム構造体において、結合材に含まれる金属珪化物となる。
【0083】
骨材材料に含まれる珪素が、平均粒子径が50μm以上の粒子状のものであることが好ましく、50〜500μmの粒子状のものであることが更に好ましい。平均粒子径が50μm以上の粒子状の珪素を用いることによって、得られるβ−SiCの積層欠陥がより少なくなる。
【0084】
また、電極部形成工程においては、電極部形成原料に含まれる骨材としての炭化珪素として、平均粒子径が10〜70μmの炭化珪素粉末を用いることが好ましい。平均粒子径が、10μm未満であると、電極部の電気抵抗率が高くなる傾向にある。また、平均粒子径が、70μm超であると、電極部の強度が低下する傾向にある。炭化珪素粉末の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0085】
電極部形成工程においては、電極部形成原料に含まれる珪素として、平均粒子径が2〜15μmの珪素粉末を用いることが好ましい。珪素粉末は、電極部形成原料を焼成する際に溶融し、骨材同士を結合する結合材になる。珪素粉末の平均粒子径が2μm未満であると、得られる電極部から珪素が噴出し易くなることがある。また、珪素粉末の平均粒子径が15μmを超えると、電極部の気孔率が高くなり、電極部の電気抵抗率が十分に低くならないことがある。珪素として、平均粒子径が2〜15μmの珪素粉末を用いることにより、得られる電極部から珪素が噴出し難く、且つ、電極部が低気孔率(即ち、緻密)になり、電極部の電気抵抗率が低くなる。珪素粉末の平均粒子径は、5〜10μmであることが更に好ましい。珪素粉末の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0086】
珪素粉末は、金属珪素粉末であることが好ましい。この金属珪素粉末には、珪素(Si)以外の、以下のような所定の不純物が含まれていることが更に好ましい。不純物としては、Fe、Al、Ca、B、Pなどを挙げることができる。珪素粉末中の珪素含有量は90.0〜99.9at%(原子百分率)であることが好ましい。珪素含有量が90.0at%未満であると、電極部の耐熱性が低下したり、電極部の熱膨張が大きくなったりすることがある。珪素含有量が99.9at%以下、別言すれば、上述した不純物が0.1at%よりも多く含まれることにより、電極部の電気抵抗率がより低下する。
【0087】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について、
図1〜
図3に示すハニカム構造体を製造する方法を例に、更に詳細に説明する。
【0088】
まず、以下の方法で、ハニカム成形体を作製する。炭化珪素粉末(炭化珪素)に、珪素粉末(珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加してハニカム成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と珪素の質量との合計に対して、珪素の質量が10〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜50μmが好ましく、3〜40μmが更に好ましい。珪素粒子(珪素粉末)の平均粒子径は、2〜35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、珪素粒子は、珪素粉末を構成する珪素の微粒子である。尚、これは、ハニカム構造部の材質を、珪素−炭化珪素系複合材とする場合のハニカム成形原料の配合であり、ハニカム構造部の材質を炭化珪素とする場合には、珪素は添加しない。
【0089】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0090】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20〜60質量部であることが好ましい。
【0091】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0092】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5〜10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径のことである。
【0093】
次に、ハニカム成形原料を混練して坏土を形成する。ハニカム成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0094】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。
【0095】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする本発明のハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0096】
次に、得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。乾燥後のハニカム成形体を「ハニカム乾燥体」と称することがある。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0097】
ハニカム成形体(ハニカム乾燥体)の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0098】
ここで、「積層欠陥が2%以下のβ−SiC(低積層欠陥β−SiC)」の作製方法について説明する。
【0099】
まず、珪素粉末に、炭素質粉末、遷移金属粉末、水などを混合して混合原料を得る。珪素粉末100質量部に対して、炭素質粉末は20〜40質量部となるようにすることが好ましく、25〜35質量部であることが更に好ましく、30〜35質量部が特に好ましい。また、珪素粉末100原子数に対して、遷移金属粉末を1〜10原子数となるようにすることが好ましく、3〜8原子数であることが更に好ましく、3〜5原子数であることが特に好ましい。また、珪素粉末、炭素質粉末、遷移金属粉末の合計質量を100質量部としたときに、水を20〜100質量部添加することが好ましい。
【0100】
珪素粉末の平均粒子径は、50μm以上が好ましく、50〜500μmが更に好ましい。珪素粉末の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0101】
炭素質粉末としては、非晶質な炭素質粉末が好ましく、カーボンブラックが特に好ましい。なお、炭素質粉末としては、黒鉛(即ち、グラファイト)のような結晶質な炭素(別言すれば、結晶構造が発達している炭素)は好ましくない。
【0102】
次に、得られた混合原料をプレス成形、押出成形などで成形する。なお、予め、珪素粉末に、炭素質粉末、遷移金属粉末、水などを混合して混合原料を得ずに、それぞれの原料粉末を、個々に成形してもよい。即ち、上述したように、珪素粉末に、炭素質粉末、遷移金属粉末、水などを混合して混合原料を作製せずに、炭素質粉末と、珪素粉末及び遷移金属粉末とを、それぞれ別に成形してもよい。具体的には、まず、炭素質粉末に水などを混合して第一の混合原料を得るとともに、珪素粉末に、遷移金属粉末、水などを混合して第二の混合原料を得る。次に、第一の混合原料を、プレス成形、押出成形などで成形して第一成形体を得、また、第二の混合原料を、プレス成形、押出成形などで成形して第二成形体を得る。上述したようにして第一成形体及び第二成形体を作製した場合には、第一成形体と第二成形体とを積層し、これ以降の工程を行うことが好ましい。
【0103】
次に、得られた成形体を乾燥した乾燥体を得る。乾燥温度は、50〜100℃が好ましい。次に、得られた乾燥体を焼成して焼成体を得る。乾燥体の焼成は、アルゴンなどの不活性雰囲気で行うことが好ましい。焼成温度は、1300〜1500℃が好ましい。焼成時間は、1〜20時間が好ましい。
【0104】
次に、得られた焼成体を、衝撃式粉砕機などによって粉砕する。このようにして、焼成体が粉砕された粉砕粒子を得る。得られた粉砕粒子を、篩などによって好ましい平均粒子径に調整する。このようにして得られた粉末は、低積層欠陥β−SiC、珪素、金属珪化物を含む混合粉末である。
【0105】
次に、電極部を形成するための電極部形成原料を調合する。骨材としての炭化珪素を含む混合粉末と、結合材となる珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。骨材については、本実施形態のハニカム構造体にて、電極部の好ましい骨材して挙げた、低積層欠陥β−SiCを含む炭化珪素粉末を好適に用いることができる。
【0106】
具体的には、低積層欠陥β−SiCを含む混合粉末に、低積層欠陥β−SiC以外の炭化珪素粉末、珪素粉末、バインダ、保湿剤、分散剤、水等を添加して、得られた混合物を混練してペースト状の電極部形成原料を作製する。骨材としての炭化珪素のうちの40体積%以上が、上述した「積層欠陥が2%以下のβ−SiC」であることが好ましい。低積層欠陥β−SiCを含む混合粉末とは、上述した「積層欠陥が2%以下のβ−SiC(低積層欠陥β−SiC)」の作製方法によって得られる混合粉末を挙げることができる。混練の方法は特に限定されず、例えば、縦型の撹拌機を用いることができる。
【0107】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロース、及びヒドロキシプロポキシルセルロースが好ましい。バインダの含有量は、低積層欠陥β−SiCを含む混合粉末、低積層欠陥β−SiC以外の炭化珪素粉末及び珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。保湿剤としては、グリセリンを挙げることができる。
【0108】
分散剤としては、例えば、界面活性剤として、グリセリン、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、低積層欠陥β−SiCを含む混合粉末、低積層欠陥β−SiC以外の炭化珪素粉末及び珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0109】
水の含有量は、低積層欠陥β−SiCを含む混合粉末、低積層欠陥β−SiC以外の炭化珪素粉末及び珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、15〜60質量部であることが好ましい。
【0110】
また、電極部形成原料には、アルカリ土類金属酸化物、Al
2O
3、及びSiO
2の三成分を含む酸化物粒子を更に添加してもよい。例えば、アルカリ土類金属酸化物としては、MgO、SrOなどを挙げることができる。このような酸化物粒子としては、例えば、コージェライト粒子を挙げることができる。低積層欠陥β−SiCを含む混合粉末、低積層欠陥β−SiC以外の炭化珪素粉末と珪素粉末との合計体積を100体積部とした場合に、アルカリ土類金属酸化物、Al
2O
3、及びSiO
2を合計で1〜10体積部含むことがより好ましい。
【0111】
次に、得られた電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体(以下、乾燥させたハニカム成形体を、「ハニカム乾燥体」ということがある)の側面に塗工することが好ましい。電極部形成原料をハニカム乾燥体の側面に塗工する方法は、特に限定されないが、例えば、印刷方法を用いることができる。また、電極部形成原料は、これまでに説明したハニカム構造体における電極部の形状になるように、ハニカム乾燥体の側面に塗工することが好ましい。即ち、電極部形成原料を塗工する領域を、第一領域及び第二領域とした場合に、ハニカム乾燥体のセルの延びる方向に直交する断面において、第一領域が、第二領域に対して、ハニカム乾燥体の中心を挟んで反対側に位置するものとする。電極部の厚さは、電極部形成原料を塗工するときの厚さを調整することにより、所望の厚さとすることができる。このように、電極部形成原料をハニカム乾燥体の側面に塗工し、乾燥、焼成するだけで電極部を形成することができるため、非常に容易に電極部を形成することができる。焼成の工程が1回で済むことから、乾燥させたハニカム成形体(ハニカム乾燥体)の側面に電極部形成原料を塗工することが好ましい。但し、乾燥させたハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体を先に作製し、このハニカム焼成体の側面に電極部形成原料を塗工することもできる。
【0112】
次に、ハニカム乾燥体の側面に塗工した電極部形成原料を乾燥させて、「電極部形成原料付きハニカム乾燥体」を作製することが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0113】
次に、電極部形成原料付きハニカム乾燥体を焼成してハニカム構造体を作製することが好ましい。尚、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。
【0114】
焼成条件としては、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸素化処理を行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。以上のようにして、
図1〜
図3に示すようなハニカム構造体100を製造することができる。
【0115】
これまでに説明した製造方法においては、「低積層欠陥β−SiCを含む混合粉末」を先に作製し、当該「低積層欠陥β−SiCを含む混合粉末」を用いて電極部を作製している。ただし、電極部、別言すれば、低積層欠陥β−SiCの作製方法については、このような方法に限定されることはない。例えば、珪素粉末に、炭素質粉末、遷移金属粉末、水などを混合して得られた混合原料を、ハニカム成形体又はハニカム乾燥体の表面に塗工し、その後、乾燥、脱脂、焼成して、電極部を作製することもできる。上記混合原料としては、例えば、上述した「積層欠陥が2%以下のβ−SiC(低積層欠陥β−SiC)」の作製方法にて使用する原料(混合原料)を挙げることができる。このような方法によれば、電極部の作製時に、「低積層欠陥β−SiCを含む混合粉末」が同時に作製されることとなる。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0117】
(骨材用の炭化珪素粉末)
実施例及び比較例においては、電極部形成原料の骨材として、下記の炭化珪素粉末(1)〜炭化珪素粉末(5)を用いた。
【0118】
(炭化珪素粉末(1))
炭化珪素粉末(1)(以下、「SiC(1)」ともいう)は、以下の方法で作製した。まず、平均粒子径が58μmの金属珪素粉末(密度2.33g/cm
3)を100g、比表面積が110m
2/gのカーボンブラック粉末を33g、平均粒子径が33μmのNi粉末を10.5g、及び水を100g、用意した。これらを混合して、混合して得られた混合粉末を、プレス成形して、炭化珪素粉末(1)用成形体を作製した。次に、得られた炭化珪素粉末(1)用成形体を、100℃で乾燥させて、炭化珪素粉末(1)用乾燥体を得た。次に、得られた炭化珪素粉末(1)用乾燥体を、1450℃、アルゴン雰囲気にて、2時間焼成して、炭化珪素粉末(1)用焼成体を得た。次に、得られた炭化珪素粉末(1)用焼成体を粉砕し、炭化珪素粉末(1)を得た。
【0119】
X線回折(XRD)により、得られた炭化珪素粉末(1)の構成材料比を求めた。また、このX線回折(XRD)から「33.6°ピーク強度」及び「41.4°ピーク強度」を求め、上記式(1)及び式(2)を用いて、炭化珪素粉末(1)に含まれる炭化珪素の積層欠陥(%)を求めた。炭化珪素粉末(1)は、積層欠陥が0.7%であるβ−SiC(密度3.17g/cm
3)が77体積%、Si(密度2.33g/cm
3)が13体積%、NiSi
2(密度4.83g/cm
3)が10体積%含まれていた。結晶子サイズは1000Å以上であった。
【0120】
表1の「SiC(1)」の欄に、炭化珪素粉末(1)に含まれる炭化珪素の結晶相、炭化珪素粉末(1)に含まれる炭化珪素の積層欠陥(%)、結晶子サイズ(Å)、及び炭化珪素粉末(1)に含まれる炭化珪素粒子の平均粒子径(μm)を示す。なお、「結晶相」の欄において、「β」とは、炭化珪素がβ−SiCであることを示す。一方、「結晶相」の欄において、「α」とは、炭化珪素がα−SiCであることを示す。また、炭化珪素粉末(1)に含まれる炭化珪素粒子の平均粒子径は、以下の方法で測定した値である。まず、炭化珪素粉末(1)を用いて作製された電極部の研磨面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮像する。次に、撮像した断面画像を、解析ソフト(日本ビジュアルサイエンス社製 Image−Pro(商品名))で解析し、電極部に含まれる炭化珪素粒子の粒子径を計測する。炭化珪素粒子の粒子径は、断面画像中に映し出される炭化珪素粒子を、無作為に50点測定し、測定した粒子径の平均値を、炭化珪素
粉末(1)に含まれる炭化珪素粒子の平均粒子径とする。
【0121】
結晶子サイズは、上記式(3)を用いて求めた値である。上記式(3)では、結晶子サイズが1000Å以上の場合に、正確な値が求まり難くなることがあるため、炭化珪素粉末(1)においては、上述したように、結晶子サイズを1000Å以上とした。
【0122】
(炭化珪素粉末(2))
炭化珪素粉末(2)(以下、「SiC(2)」ともいう)は、以下の方法で作製した。まず、平均粒子径が58μmの金属珪素粉末(密度2.33g/cm
3)を100g、比表面積が110m
2/gのカーボンブラック粉末を33g、平均粒子径が10μmのZr粉末を16.3g、水を100g、用意した。これらを混合して、混合して得られた混合粉末を、プレス成形して、炭化珪素粉末(2)用成形体を作製した。次に、得られた炭化珪素粉末(2)用成形体を、100℃で乾燥させて、炭化珪素粉末(2)用乾燥体を得た。次に、得られた炭化珪素粉末(2)用乾燥体を、1450℃、アルゴン雰囲気にて、2時間焼成して、炭化珪素粉末(2)用焼成体を得た。次に、得られた炭化珪素粉末(2)用焼成体を粉砕し、炭化珪素粉末(2)を得た。
【0123】
X線回折(XRD)により、得られた炭化珪素粉末(2)の構成材料比を求めた。また、このX線回折(XRD)から「33.6°ピーク強度」及び「41.4°ピーク強度」を求め、上記式(1)及び式(2)を用いて、炭化珪素粉末(2)に含まれる炭化珪素の積層欠陥(%)を求めた。炭化珪素粉末(2)は、積層欠陥が1.6%であるβ−SiC(密度3.17g/cm
3)が76体積%、Si(密度2.33g/cm
3)が13体積%、ZrSi
2(密度5.2g/cm
3)が11体積%含まれていた。結晶子サイズは960Åであった。
【0124】
表1の「SiC(2)」の欄に、炭化珪素粉末(2)に含まれる炭化珪素の結晶相、炭化珪素粉末(2)に含まれる炭化珪素の積層欠陥(%)、結晶子サイズ(Å)、及び炭化珪素粉末(2)に含まれる炭化珪素粒子の平均粒子径(μm)を示す。炭化珪素粉末(2)に含まれる炭化珪素粒子の平均粒子径(μm)は、炭化珪素粉末(1)に含まれる炭化珪素粒子と同様の方法で測定した値である。
【0125】
(炭化珪素粉末(3))
炭化珪素粉末(3)(以下、「SiC(3)」ともいう)として、Superior Graphite社製の「HSC400(商品名)」を用いた。X線回折(XRD)により、得られた炭化珪素粉末(3)の構成材料比を求めた。また、このX線回折(XRD)から「33.6°ピーク強度」及び「41.4°ピーク強度」を求め、上記式(1)及び式(2)を用いて、炭化珪素粉末(3)に含まれる炭化珪素の積層欠陥(%)を求めた。炭化珪素粉末(3)は、積層欠陥が3.0%であるβ−SiC(密度3.17g/cm
3)が100体積%含まれていた。結晶子サイズは860Åであった。表1の「SiC(3)」の欄に、炭化珪素粉末(3)に含まれる炭化珪素の結晶相、結晶子サイズ(Å)、炭化珪素粉末(3)に含まれる炭化珪素の積層欠陥(%)、及び炭化珪素粉末(3)に含まれる炭化珪素粒子の平均粒子径(μm)を示す。結晶相、積層欠陥(%)、及び平均粒子径(μm)は、炭化珪素粉末(1)に含まれる炭化珪素粒子と同様の方法で測定した値である。
【0126】
(炭化珪素粉末(4))
炭化珪素粉末(4)(以下、「SiC(4)」ともいう)として、信濃電気精錬社製の「GP240(商品名)」を用いた。炭化珪素粉末(4)は、α−SiC(密度3.17g/cm
3)からなる粒子であった。表1の「SiC(4)」の欄に、炭化珪素粉末(4)に含まれる炭化珪素の結晶相、及び炭化珪素粉末(4)に含まれる炭化珪素粒子の平均粒子径(μm)を示す。結晶相、及び平均粒子径(μm)は、炭化珪素粉末(1)に含まれる炭化珪素粒子と同様の方法で測定した値である。
【0127】
(炭化珪素粉末(5))
炭化珪素粉末(5)(以下、「SiC(5)」ともいう)は、以下の方法で作製した。まず、平均粒子径が58μmの金属珪素粉末(密度2.33g/cm
3)を100g、比表面積が110m
2/gのカーボンブラック粉末を33g、水を100g、用意した。これらを混合して、混合して得られた混合粉末を、プレス成形して、炭化珪素粉末(5)用成形体を作製した。次に、得られた炭化珪素粉末(5)用成形体を、100℃で乾燥させて、炭化珪素粉末(5)用乾燥体を得た。次に、得られた炭化珪素粉末(5)用乾燥体を、1450℃、アルゴン雰囲気にて、2時間焼成して、炭化珪素粉末(5)用焼成体を得た。次に、得られた炭化珪素粉末(5)用焼成体を粉砕し、炭化珪素粉末(5)を得た。
【0128】
X線回折(XRD)により、得られた炭化珪素粉末(5)の構成材料比を求めた。また、このX線回折(XRD)から「33.6°ピーク強度」及び「41.4°ピーク強度」を求め、上記式(1)及び式(2)を用いて、炭化珪素粉末(5)に含まれる炭化珪素の積層欠陥(%)を求めた。炭化珪素粉末(5)は、積層欠陥が4.5%であるβ−SiC(密度3.17g/cm
3)が78体積%、Si(密度2.33g/cm
3)が22体積%含まれていた。結晶子サイズは780Åであった。
【0129】
表1の「SiC(5)」の欄に、炭化珪素粉末(5)に含まれる炭化珪素の結晶相、炭化珪素粉末(5)に含まれる炭化珪素の積層欠陥(%)、結晶子サイズ(Å)、及び炭化珪素粉末(5)に含まれる炭化珪素粒子の平均粒子径(μm)を示す。炭化珪素粉末(5)に含まれる炭化珪素粒子の平均粒子径(μm)は、炭化珪素粉末(1)に含まれる炭化珪素粒子と同様の方法で測定した値である。
【0130】
【表1】
【0131】
(実施例1)
炭化珪素粉末(1)(即ち、表1におけるSiC(1))、金属珪素粉末、酸化物粒子としてのコージェライト粉末、メチルセルロース、グリセリン、ポリアクリル酸系分散剤、及び水を、自転公転攪拌機で混合して、電極部形成原料を調製した。
【0132】
炭化珪素粉末(1)は、88g用いた。金属珪素粉末としては、平均粒子径が5μmで、密度2.33g/cm
3の金属珪素粉末を12g用いた。コージェライト粉末としては、平均粒子径が2μmで、密度2.65g/cm
3のコージェライト粉末を4.3g用いた。また、メチルセルロースの使用量は0.8g、グリセリンの使用量は9g、ポリアクリル酸系分散剤の使用量は0.1gとした。また、分散楳としての水の使用量は40gとした。
【0133】
また、ハニカム構造部を作製するためのハニカム成形原料を調製した。ハニカム成形原料は、5μmの金属珪素粉末を6kg、30μmの炭化珪素粉末を14kg、コージェライト粉末を1kg、メチルセルロースを1.6kg、水を8kg、混合し、ニーダー混練して調製した。
【0134】
次に、得られたハニカム成形原料を真空土練して坏土を得、得られた坏土を、ハニカム状に押出成形して、ハニカム成形体を得た。次に、得られたハニカム成形体を120℃で乾燥させ、ハニカム乾燥体を得た。次に、得られたハニカム乾燥体の側面に、予め調製した電極部形成原料を塗布し、80℃で乾燥して、電極形成原料付きハニカム乾燥体を得た。電極形成原料付きハニカム乾燥体を脱脂し、焼成し、酸素化処理して、ハニカム構造体を作製した。脱脂は、450℃の大気中で、5時間行った。焼成は、1450℃のアルゴン雰囲気中で、2時間行った。酸素化処理は、1200℃の大気中で、5時間行った。
【0135】
得られたハニカム構造体のハニカム構造部は、隔壁の厚さが101.6μmで、セル密度が、93個/cm
2であった。また、ハニカム構造部の端面の直径は、100mmで、セルの延びる方向の長さは、100mmであった。
【0136】
表2の「炭化珪素の種類及び配合比率」の欄に、電極部形成原料に使用した炭化珪素粉末の種類及び配合比率を示す。ここで、実施例1の「炭化珪素の配合処方」を「A」とする。表2の「炭化珪素の配合処方」の欄には、電極部形成原料に使用した炭化珪素粉末の各配合処方を、A〜Lとして示す。この「炭化珪素の配合処方」は、表3の「炭化珪素の配合処方」の欄と対応するものである。表2の「炭化珪素の総割合」の欄に、炭化珪素の体積と結合材(珪素及び金属珪化物)の体積との合計体積を100%とした場合の、炭化珪素の体積の割合を示す。表2の「SiC(1)及び(2)の占める比率」の欄に、電極部形成原料に使用した全ての炭化珪素粉末の体積に対する、炭化珪素粉末(1)に含まれるβ−SiC及び炭化珪素粉末(2)に含まれるβ−SiCの合計体積の比率(百分率)を示す。炭化珪素粉末(1)に含まれるβ−SiC及び炭化珪素粉末(2)に含まれるβ−SiCは、「積層欠陥が2%以下のβ−SiC」からなる炭化珪素粉末である。
【0137】
表3の炭化珪素の「配合処方」及び「総割合」の欄に、電極部形成原料に使用した炭化珪素粉末の各配合処方、及び炭化珪素の体積と結合材(珪素及び金属珪化物)の体積との合計体積を100%とした場合の、炭化珪素の体積の割合を示す。表3の「珪素の割合」の欄に、炭化珪素の体積と結合材(珪素及び金属珪化物)の体積との合計体積を100%とした場合の、珪素の体積の割合を示す。表3の金属珪化物の「種類」の欄に、電極部を構成する結合材に含まれる金属珪化物の種類を示す。表3の金属珪化物の「割合」の欄に、炭化珪素の体積と結合材(珪素及び金属珪化物)の体積との合計体積を100%とした場合の、金属珪化物の体積の割合を示す。表3の「結合材の割合」の欄に、炭化珪素の体積と結合材(珪素及び金属珪化物)の体積との合計体積を100%とした場合の、結合材の体積の割合を示す。表
3の酸化物の「種類」欄に、電極部形成原料に含有させた酸化物粒子の種類を示す。尚、表
3中の酸化物Aは、「MgO−Al
2O
3−SiO
2」である。即ち、この酸化物Aは、MgO、Al
2O
3、及びSiO
2の三成分を含むコージェライトであることを示す。なお、表3中の酸化物Bは、「SrO−Al
2O
3−SiO
2」である。表
3の酸化物の「体積部」欄に、炭化珪素と結合材との合計体積を100体積部とした場合の含有比率(体積部)を示す。
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
また、表4に、各実施例及び比較例にて使用した珪素(珪素粉末)中の不純物の量を示す。尚、表4においては、珪素の原子数に対する、不純物の原子数の比率(at%)を示す。
【0141】
【表4】
【0142】
(実施例2)
実施例2においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(1)を68g、炭化珪素粉末(4)を16g、金属珪素粉末を16g、コージェライト粉末4.3g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。
【0143】
(実施例3)
実施例3においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(1)を55g、炭化珪素粉末(4)を26g、金属珪素粉末を18g、コージェライト粉末4.3g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。
【0144】
(実施例4)
実施例4においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(1)を42g、炭化珪素粉末(4)を37g、金属珪素粉末を20g、コージェライト粉末4.4g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。
【0145】
(実施例5)
実施例5においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(1)を28g、炭化珪素粉末(4)を48g、金属珪素粉末を23g、コージェライト粉末4.4g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。
【0146】
(実施例6)
実施例6においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(1)を55g、炭化珪素粉末(3)を26g、金属珪素粉末を18g、コージェライト粉末4.3g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。
【0147】
(実施例7)
実施例7においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(1)を72g、金属珪素粉末を28g、コージェライト粉末4.5g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。
【0148】
(実施例8)
実施例8においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(1)を67g、炭化珪素粉末(4)を26g、金属珪素粉末を8g、コージェライト粉末4.2g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。
【0149】
(実施例9)
実施例9においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(1)を88g、金属珪素粉末を12g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。実施例9においては、コージェライト粉末を用いていない。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。
【0150】
(実施例10)
実施例10においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(1)を88g、金属珪素粉末を12g、コージェライト粉末1.7g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。
【0151】
(実施例11)
実施例11においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(1)を88g、金属珪素粉末を12g、コージェライト粉末8.5g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。
【0152】
(実施例12)
実施例12においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(1)を88g、金属珪素粉末を12g、SrCO
3粉末を0.9g、Al(OH)
3粉末を0.4g、シリカゾルを2.2g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。SrCO
3粉末の平均粒子径は、1μmである。Al(OH)
3粉末の平均粒子径は、3μmである。シリカゾルは、固形分濃度が40%のものを用いた。実施例12においては、電極部に酸化物として、SrO−Al
2O
3−SiO
2(表3における「酸化物B」)が生成された。このSrO−Al
2O
3−SiO
2の密度は2.83g/cm
3である。
【0153】
(実施例13)
実施例13においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(2)を89g、金属珪素粉末を11g、コージェライト粉末4.1g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。
【0154】
(比較例1)
比較例1においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(3)を67g、金属珪素粉末を26g、Ni粉末を6g、コージェライト粉末4.3g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。炭化珪素粉末(3)の密度は、密度3.17g/cm
3である。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。Ni粉末の平均粒子径は、0.8μmである。
【0155】
(比較例2)
比較例2においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(4)を67g、金属珪素粉末を26g、Ni粉末を6g、コージェライト粉末4.3g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。炭化珪素粉末(4)の密度は、密度3.17g/cm
3である。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。Ni粉末の平均粒子径は、0.8μmである。
【0156】
(比較例3)
比較例3においては、電極部形成原料として、炭化珪素粉末(5)を81g、金属珪素粉末を12g、Ni粉末を6g、コージェライト粉末4.3g用いたこと以外は、実施例1と同様として、ハニカム構造体を作製した。金属珪素粉末の平均粒子径は5μmで、密度は2.33g/cm
3である。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmで、密度は2.65g/cm
3である。Ni粉末の平均粒子径は、0.8μmである。
【0157】
実施例2〜13及び比較例1〜3について、「炭化珪素の配合処方」、「炭化珪素の種類及び配合比率」、「炭化珪素の総割合」、及び「SiC(1)及び(2)の占める比率」を、表2に示す。また、実施例2〜13及び比較例1〜3について、炭化珪素の「配合処方」及び「総割合」、「珪素の割合」、金属珪化物の「種類」及び「割合」、「結合材の割合」、酸化物の「種類」及び「割合」を、表3に示す。
【0158】
また、実施例1〜13及び比較例1〜3のハニカム構造体について、以下の方法で、電極部の気孔率(%)、電極部の厚さ(μm)、電極部の電気抵抗率(Ωcm)を測定した。結果を、表5に示す。
【0159】
【表5】
【0160】
(電極部の気孔率(%))
電極部の気孔率は、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られる画像の画像解析により計算して求めた。
【0161】
(電極部の厚さ(μm))
電極部の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られる画像の画像解析により測定した。
【0162】
(電極部の電気抵抗率(Ωcm))
得られたハニカム構造体の電極部を切り出して測定試料を作製し、室温において、4端子法により、測定試料の電気抵抗率を測定した。
【0163】
(結果)
表5に示すように、実施例1〜13のハニカム構造体は、電極部の電気抵抗率が低いものであった。一方、比較例1〜3のハニカム構造体は、実施例1〜13のハニカム構造体と、電極部の気孔率(%)及び厚さ(μm)が同程度であるにも関わらず、電極部の電気抵抗率が高いことが分かった。即ち、「積層欠陥が2%以下のβ−SiC」からなる炭化珪素を含む骨材が用いられることにより、電極部の電気抵抗率が低くなることが分かった。なお、実施例1〜13及び比較例1〜3のハニカム構造体は、ハニカム構造部の400℃における電気抵抗率が40Ωcmであった。また、実施例1〜13及び比較例1〜3のハニカム構造体の電極部を、XRD(X線回折法)により定量分析した結果、表2に示される、炭化珪素の総割合、珪素の割合、結合材の総割合、及び酸化物の体積部と同じ結果が得られた。電極部のXRDによる定量分析は、XRD(X線回折法)により測定したXRDパターンをWPPD法によりフィッティングすることにより求めた。また、積層欠陥が2%以下のβ−SiCの体積割合についても、電極部からXRDにより定量分析した結果、表1に示される結果と同じ結果が得られた。
【0164】
以下、各実施例及び比較例ごとに、表5に示す結果について考察する。
(1)実施例1は、比較例1、2に対して、積層欠陥の少ない炭化珪素粉末(1)(即ち、SiC(1))を使用しているため、電極部の電気抵抗率が低くなった。
(2〜4)実施例2は、実施例1に対して、α−SiCからなる炭化珪素粉末(4)(即ち、SiC(4))を混在させることにより、電極部の電気抵抗率が高くなった。従って、電気抵抗率の低減には、積層欠陥の少ない炭化珪素粉末(1)が寄与していることが分かる。実施例3及び4についても、炭化珪素粉末(4)の増加により、電極部の電気抵抗率が高くなっている。
(5)実施例5は、比較例1〜3と比較すると、電極部の電気抵抗率は低いものの、炭化珪素粉末(1)の割合が40%以下となっており、その他の実施例と比較すると、電極部の電気抵抗率が高くなっている。
(6)実施例6は、実施例3に対して、平均粒子径の小さい炭化珪素粉末(4)を使用している。この結果、電極部が高気孔率となり、電気抵抗率が高くなった。
(7)実施例7は、実施例1に対して、結合材の割合を増加させた。その結果、実施例1に比して、電気抵抗率が低くなった。
(8)実施例8は、実施例3に対して、結合材の割合を減少させた。その結果、実施例3に比して、電気抵抗率が高くなった。
(9)実施例9は、実施例1に対して、酸化物を添加しなかった。その結果、実施例1に比して、高気孔率となり、電気抵抗率が高くなった。
【0165】
(10)実施例10は、実施例1に対して、酸化物の量を少なくした。その結果、実施例1に比して、高気孔率となり、電気抵抗率が高くなった。
(11)実施例11は、実施例1に対して、酸化物の量を増やした。その結果、電極部の気孔率が低くなったが、実施例1に比して、電気抵抗率は殆ど低下しなかった。
(12)実施例12は、実施例10に対して、酸化物の原料としてSrOを用いた。その結果、低気孔率となり、電気抵抗率も低くなった。
(13)実施例13は、実施例1に対して、積層欠陥が多い炭化珪素粉末(2)(即ち、SiC(2))を使用した。その結果、実施例1に比して、電極部の電気抵抗率が高くなった。従って、炭化珪素粉末を構成するβ−SiCの積層欠陥の量が、電極部の電気抵抗率に影響を与えていることが分かる。
(14)比較例1は、実施例1に対して、積層欠陥が2%以上の炭化珪素粉末(3)(即ち、SiC(3))を使用した。その結果、実施例1に比して、電極部の電気抵抗率が非常に高くなった。
(15)比較例2は、実施例1に対して、α−SiCからなる炭化珪素粉末(4)(即ち、SiC(4))を使用した。その結果、実施例1に比して、電極部の電気抵抗率が非常に高くなった。
(16)比較例3は、実施例1に対して、積層欠陥が2%以上の炭化珪素粉末(5)(即ち、SiC(5))を使用した。その結果、実施例1に比して、電極部の電気抵抗率が非常に高くなった。