(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
アミノ酸には、D体、L体が存在するが、哺乳類の体内に存在するアミノ酸はL体がほとんどであると考えられてきた。しかし近年、測定技術の進歩により、いくつかのD―アミノ酸が人間の体内に存在することが明らかとなってきた。また、D−アミノ酸は、特徴的な生理作用を示し、当該生理作用は、L−アミノ酸とは異なること等が報告されている。
【0003】
D−アミノ酸に関する研究は、神経伝達やホルモン調節との関連といった生理学的、医学的な観点からのアプローチが主流であった。たとえば、D−セリンは、中枢神経系に偏在しており、NMDA受容体チャネルの分布と強い正の相関を示すことから、その作用が注目されている。NMDA受容体は、その機能が高まると、記憶、学習能力も高まることが知られている。そして、D−セリンまたはD−アラニンは、NMDA受容体活性を増強することが明らかとなっている(非特許文献1)。
【0004】
D−アラニンは、血糖値の制御に関与すること(非特許文献2)、及び、コラーゲン産生促進作用を有すること(特許文献1)が知られている。また、D−プロリンは紫外線傷害を軽減することから、紫外線が関与するシワの抑制のみならず、医薬として白内障等への適用も期待されている(特許文献2)。
【0005】
D−アミノ酸はヒトの皮膚(角層)に存在し、加齢とともにD−アスパラギン酸が減少すること、及びD−アスパラギン酸がL−アスパラギン酸より優れた美肌効果を有することが明らかとなっている(非特許文献3)。上記効果から、現在は、D−アスパラギン酸を豊富に含む製品が市販されている。
D−アミノ酸が有する皮膚に対する効能としては、他にも、D−グルタミン酸が、経口投与により、シワ形成を軽減させることが知られている(特許文献3)。
【0006】
D−アスパラギン酸は、松果体実質細胞に存在し、精巣ライディッヒ細胞のテストステロン産生の亢進などに関与することから、生殖機能の改善に関与する可能性が示唆されている(非特許文献4)。
【0007】
D−ヒスチジンは、食欲抑制による抗肥満作用を有することから、メタボリックコントロール等の体重コントロールに使用することが期待されている(非特許文献5)。
【0008】
また、人の体に働きかける作用の他にも、D−グルタミン酸は、防腐剤の防腐力低下を抑制することが知られている(特許文献4)。よって、化粧料及び食品、医薬等の組成物にD−グルタミン酸を配合することにより、防腐剤の量を減らすことができる。一般に、防腐剤には、皮膚刺激を起こしたり、発がん性が懸念されているものもあるため、防腐剤を減らすことは、安全性の面で有益である。さらに、D−グルタミン酸の有益な生理作用も享受することができる。
【0009】
一方、近年は、D−アミノ酸に関して、食品分野からのアプローチも始まっている。遊
離のアミノ酸の味は、L体とD体とでは大きく異なることが知られているが、L体と同様にD体も風味改良剤として使用し得る(特許文献5)。そして、チーズ、ヨーグルト、黒酢又は日本酒等の発酵食品には、D−アミノ酸が豊富に含まれており、発酵食品の旨みの一役を担っていると考えられている。
【0010】
非特許文献6は、生もと造りの日本酒は、含有されるD−アミノ酸濃度が高い傾向があり、それらD−アミノ酸は日本酒の旨味や総合評価を高めること、及び、それらD−アミノ酸は生もと由来の乳酸菌(Lactobacillus sakei等)が生産していることを、明らかにしている。しかし、ラクトバチルス・ヘルベティカスがD−アミノ酸を生産していることに関する記載はない。
【0011】
上記のように、D−アミノ酸は、生理・生化学、食品学などに関係する研究から、さまざまな用途が期待されており、食品、医薬品、化粧料などの分野における新しい機能成分として使用されると考えられている。しかし、D−アミノ酸は光学活性を有するアミノ酸であり、光学的に純度の高いD−アミノ酸の製造は困難であることが知られている。
【0012】
これまでに、乳酸菌等の微生物の細胞内には、多くのD−アミノ酸が存在することが報告されている(非特許文献7)。また、当該微生物または当該微生物が産生する酵素を用いて、D−アミノ酸を製造する方法が知られている(特許文献6、7)。しかし、微生物の体内に存在することが報告されているD体の種類は限られており、また、L体に対するD体の比率も高くないため、効率がいい方法とはいえない。さらに、D−アミノ酸は、医薬、医薬部外品、化粧料、食品、及び飼料等の材料として使用され得ることから、高純度のものが求められているところ、上記の方法では、微生物由来の不純物が少なからず混入する可能性があった。
【0013】
一方、ラクトバチルス・ヘルベティカスは、これまでに、動脈硬化予防(特許文献8)、アトピー性皮膚炎治療(特許文献9)、脂肪肝抑制(特許文献10)、内臓脂肪蓄積抑制(特許文献11)等の様々な用途が知られており、これらの用途に基づいて、医薬、飲食品、化粧料等の分野において使用されてきた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施態様に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
【0022】
ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する微生物は、乳酸菌と呼ばれており、ヨーグルト等の発酵乳製品においてスターター(種菌)として使用されている。乳酸菌は、発酵乳製品における腐敗細菌や病原細菌を抑える効果があり、製品の貯蔵性を高めているほか、風味を向上させたり、健康に寄与する効果を有することが知られている。
たとえば、乳酸菌は、腸内細菌の生育に大きな影響を与え、腸内環境を良好に保つ作用を有することが知られている。この乳酸菌は、人の腸内に、いわゆる善玉菌として生息し、腸内環境を維持している。腸内環境を整えることによって、免疫力が向上し、様々な病気に罹りにくくなったり、病状が改善されたりすることが期待されている。このことから、整腸作用や、免疫増強作用、及び発癌抑制作用等を有することが知られている。このため、乳酸菌は健康増進、又は疾患の予防若しくは治療を目的として、飲食品、医薬品等に広く利用されてきた。
【0023】
本発明におけるラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物としては、ヘルベティカスに属する微生物であれば、特に制限されることなく使用可能である。それらの微生物は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110, United States of America)から購入することができる。
その中でも、ラクトバチルス・ヘルベティカス JCM1120株(JCM1120Tと表記されることがある。Tは標準株であることを表す。)又はラクトバチルス・ヘルベティカス MCC1848株を使用することが好ましい。
ラクトバチルス・ヘルベティカス JCM1120株は、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室(JCM)より入手することができる。
ラクトバチルス・ヘルベティカスMCC1848株は、2013年7月29日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)に、ブダペスト条約に基づき国際寄託されている(受
託番号:NITE
BP−01671)。
【0024】
本発明において使用する株は、製造するD−アミノ酸の種類によって、適宜選択することが可能である。また、L−アミノ酸の混入量を問わず、D−アミノ酸を大量に得ることを目的とする場合には、分泌するD−アミノ酸量が特に多い株を選択することが好ましい。
【0025】
一方、L−アミノ酸の混入を極力抑えて、D−アミノ酸のみを得ることを目的とする場合には、L体よりもD体の分泌量が高い株を使用することが好ましい。
たとえば、[D−アミノ酸分泌量]/([D−アミノ酸分泌量]+[L−アミノ酸分泌量])の式により算出される値が、0.5以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0となる株を使用することにより、高効率にD−アミノ酸を製造することが可能となる。上記式に適用するアミノ酸分泌量は、式中の分母における分泌量の単位と、式中の分子における分泌量の単位とが同じであれば、どのような単位で表される値であってもよい。
【0026】
D−アミノ酸の分泌量及び分泌比率の観点から、JCM1120株又はMCC1848株を使用することが好ましい。
【0027】
本発明において使用される培地としては、ラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物を培養可能なものであれば制限されることなく用いることができ、公知の培地のなかから適宜選択できる。具体的には、MRS(de Man, Rogosa Sharpe)培地、ABCM(anaerobic bacterial culture medium)培地、RCA(Reinforced clostridial agar)培地、BL(Blood Liver)培地、TOSプロピオン酸培地、GAM(Gifu Anaerobic Medium)培地、EG(Eggerth-Gagnon)培地等が挙げられる。
また、当該培地として、乳牛、水牛、羊、山羊、ラクダ、インド牛、ヤク牛、馬、ロバ、トナカイ等の各種乳および乳製品や、ぬか床、野菜類、魚介類、米類等の食品も使用可能である。
【0028】
本発明における培養工程としては、ラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物を培養可能な公知の培養条件を採用することができる。たとえば、25〜45℃で培養することが可能であるが、30〜42℃で、特に37〜42℃で培養することにより、ラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物が良好に増殖するので好ましい。
【0029】
また、培養条件は、好気条件下、および嫌気条件下のいずれの条件で行っても良く、嫌気条件下で行うことが好ましい。なお、嫌気条件下で行う場合は、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養することも可能である。
【0030】
培養時間は、4〜72時間の間で増殖速度を観察しながら適宜調節可能であるが、16〜48時間、特に16〜24時間であるとき、ラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物の増殖が定常期に達し、D−アミノ酸の産生量が最大に達するので好ましい。
【0031】
一形態では、上記のような培養工程により、培養物中に分泌されたD−アミノ酸と、微生物とを分離し、かつ、D−アミノ酸を含む画分を培養物から回収する。D−アミノ酸と微生物との分離、及び培養物からのD−アミノ酸を含む画分の回収は、同時に行ってもよく、また、培養物から微生物を除去した後に、培養物からD−アミノ酸を含む画分を回収してもよい。
【0032】
培養物から微生物を分離する工程としては、例えば、膜によるろ過、遠心分離等が挙げられる。膜は、平膜及び中空糸膜(ホローファイバー)のいずれでもよい。中空糸膜(ホローファイバー)を使用してろ過を行った場合、D−アミノ酸と微生物との分離、及びD−アミノ酸を含む画分の培養物からの回収を、同時に行うことができる。
【0033】
また、微生物を除去した培養物からD−アミノ酸を含む画分を回収する工程としては、L−アミノ酸について知られている方法を採用することができ、たとえば、イオン交換、ゲルろ過、逆相等の各種クロマトグラフィー、塩析、晶析、溶媒沈殿などの方法が挙げられる。これらの方法は、目的物であるD−アミノ酸の種類によって、適宜選択することができる。クロマトグラフィーは、低圧であっても高圧(HPLC)であってもよい。
【0034】
D−アミノ酸を含む画分は、D−アミノ酸の効果を損なわず、かつ、微生物を含まない限り特に制限されず、培地成分を含んでいてもよく、完全に又は部分的に精製したものであってもよい。D−アミノ酸の精製は、上記のD−アミノ酸を含む画分を回収する方法を適宜組み合わせることによって行うことができる。
D−アミノ酸を含む画分の性状は特に制限されず、液体であってもよく、凍結乾燥等によって得られる粉体であってもよい。
【0035】
D−アミノ酸を含む画分は、D−アミノ酸の効果を損なわない限り、L−アミノ酸を含んでいてもよいが、公知の分離精製方法を使用して、D−アミノ酸のみを分離精製してもよい。D−アミノ酸とL−アミノ酸の分離は、例えば、ジアステレオマー法、酵素法、またはクロマトグラフィー等を適宜選択することによって、またはそれらの方法を組み合わせることによって、行うことができる(例えば、特開2005−003558号公報、Kenji Hamase, et al., Journal of Chromatography A, 2010, Vol.1217, 1056-1062、または、浜瀬健司ら,「哺乳類体内微量D−アミノ酸の選択的分析法の開発」,分析化学,2004年,Vol.53,No.7,p.677−690を参照)。
【0036】
当該クロマトグラフィーとしては、光学異性体を分離するための方法として知られているものを適宜選択すればよく、たとえば、固定相に結合させた光学活性なコンポーネントとジアステレオメリック複合体を形成させることにより、目的とするエナンチオマーを分取するキラル固定相法、移動相溶媒に適当な光学活性化合物を添加することにより行うキラル移動相法、エナンチオマーに対し適当な光学活性誘導体化試薬を反応させてジアステレオマーに変換してから通常の分離系に供するキラル誘導体化法等を適宜組み合わせることによって、D−アミノ酸の分離精製を行うことができる。
【0037】
発明者らは、D−アミノ酸の製造に特に適しているラクトバチルス・ヘルベティカス株を探究した結果、自然源から新規なMCC1848株を発見した。MCC1848株は、日本国内の自然源から得られたものである。
MCC1848株は、L−アミノ酸と比較したD−アミノ酸の分泌比率の高さに加えて、分泌するD−アミノ酸の種類の豊富さの点で好ましい。
【0038】
ラクトバチルス・ヘルベティカスMCC1848株の菌学的性質は、バージェイズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology, Volume 3、William B. Whitman, Aidan C. Partel 著、Williams and Wilkins Company、2009年)にほぼ従って測定した。その結果、MCC1848株は、グラム陽性の桿菌であり、BL寒天培地で培養した場合、グレーがかった円形扁平状で粗面なコロニーを形成することが分かった。
【0039】
その他の菌学的性質として、グルコースからのガス産生、糖発酵性について、表1に示す。糖発酵性については、光岡の糖発酵性用培地(1974年、光岡知足著「乳酸菌の細
菌学」、臨床検査18、1163〜1172ページ)を用いて、28種類の糖について試験を行った。MCC1848株の糖発酵性は、国際的な細菌分類の大網である前記バージェイズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジーに記載されているラクトバチルス・ヘルベティカスに特徴的な糖発酵性と一致し、標準株であるJCM1120株の糖発酵性とも酷似している。これらのことから、MCC1848株は、ヘルベティカスに属すると考えられる。参考として、標準株の糖発酵性と、バージェイズ・マニュアルの記載を一部抜粋し、表1に示す。
【0041】
ラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物を培養し、培養物中に分泌されたD−
アミノ酸は、D−アミノ酸が有する生理作用を期待するのみならず、矯味等の様々な目的で、医薬、医薬部外品、皮膚外用剤、化粧料、飲食品、食品添加剤及び飼料等の組成物に配合することができる。当該組成物に配合されるD−アミノ酸とは、単離精製したD−アミノ酸、D−アミノ酸を含む画分のいずれであってもよい。
【0042】
また、ラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物の培養物は、そのまま医薬、医薬部外品、皮膚外用剤、化粧料、飲食品、食品添加剤及び飼料等の組成物に配合しても良いし、分離・精製を行っても良い。分離・精製手段としては、これまでに述べた公知の方法が利用可能である。このように、当該培養物を組成物に配合する場合においては、当該培養物には、微生物が含まれていても、含まれていなくても良い。しかし、微生物を含有する培養物を組成物に配合した場合は、当該微生物が有する生理作用も期待できる点で好ましい。
【0043】
また、当該培養物には、微生物が分泌するD−アミノ酸が含まれていても、含まれていなくてもよい。しかし、D−アミノ酸が含まれていると、D−アミノ酸が有する生理作用を享受できる点で好ましい。また、当該培養物には、培養培地が含まれていても、含まれていなくてもよい。
【0044】
本発明により製造されるD−アミノ酸、またはラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物を含有する培養物は、一態様として、医薬、医薬部外品、皮膚外用剤又はそれらの有効成分として利用することができ、D−アミノ酸もしくは培養物をそのまま、又はそれらを医薬的に許容される賦形剤等と組み合わせて、経口的にまたは経皮的にヒトを含む哺乳動物に投与することができる。
【0045】
医薬、医薬部外品又は皮膚外用剤の製剤形態は特に限定されず、錠剤(糖衣錠、腸溶性コーティング錠、バッカル錠を含む)、散剤、カプセル剤(腸溶性カプセル、ソフトカプセルを含む)、顆粒剤(コーティングしたものを含む)、丸剤、トローチ剤、封入リポソーム剤、液剤、軟膏剤、貼付剤又はこれらの製剤学的に許容され得る徐放製剤等を例示することができる。
【0046】
製剤化にあたっては、医薬的に許容される各種賦形剤を使用できる。たとえば、担体、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、溶剤等の賦形剤を使用できる。
また、D−アミノ酸又は培養物は、他の医薬、医薬部外品又は皮膚外用剤と併用されてもよい。併用する医薬、医薬部外品又は皮膚外用剤は、D−アミノ酸または培養物を含む製剤中に、有効成分の一つとして含有させてもよいし、製剤中には含有させずに別個の製剤として組み合わせて商品化してもよい。
【0047】
上記の医薬、医薬部外品または皮膚外用剤に用いる担体としては、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等を、結合剤としては例えば澱粉、ゼラチン、シロップ、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を、それぞれ例示することができる。
【0048】
また、崩壊剤としては、澱粉、寒天、ゼラチン末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、及びアルギン酸ナトリウム等を例示することができる。
【0049】
更に、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、及びマクロゴー
ル等、着色剤としては医薬品に添加することが許容されている赤色2号、黄色4号、及び青色1号等を例示することができる。
【0050】
錠剤及び顆粒剤は、必要に応じ、白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、精製セラック、ゼラチン、ソルビトール、グリセリン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート、及びメタアクリル酸重合体等により被膜することもできる。
【0051】
上記の医薬、医薬部外品または皮膚外用剤は、D−アミノ酸またはラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物が有する生理作用に基づいて、様々な医薬に使用し得る。例えば、記憶力・学習能力改善剤、血糖値抑制剤、抗老化剤、生殖機能改善剤、動脈硬化予防剤、アトピー性皮膚炎治療剤、脂肪肝抑制剤、内臓脂肪蓄積抑制剤、皮膚保湿剤、シワ形成抑制剤、又は美肌剤等に使用可能である。
【0052】
化粧料に配合する場合は、D−アミノ酸、又はラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物を含有する培養物の効果を損なわない範囲において、通常の化粧料に使用され得る添加剤等を配合し、各種の形態で調製することができる。
【0053】
本発明の化粧料とは、例えば、局所又は全身用の皮膚洗浄料、皮膚化粧料又は薬用化粧料類、浴湯に投じて使用する浴用剤、洗口剤又は含嗽剤等の口腔用剤などを意味する。その製剤形態は特に限定されず、目的、用法に応じて適宜選択できる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ジェル、ローション、オイル、パック、ミスト、顔面用化粧シートマスクなどの基礎化粧料、ひげ剃り用剤、洗顔料、皮膚洗浄料、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、整髪料、パーマ剤、ヘアートニック、染毛料、育毛・養毛料などの頭髪化粧料、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラなどのメークアップ化粧料、香水類、制汗剤、入浴剤、マウスウォッシュ、歯磨き剤、口中清涼剤等が挙げられる。
【0054】
飲食品に配合する場合は、D−アミノ酸又はラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物を含有する培養物の効果を損なわず、経口摂取できるものであれば形態や性状は特に制限されず、通常飲食品に用いられる原料を用いて通常の方法によって製造することができる。また、本発明において使用されるラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物は、長い食経験のある所謂乳酸菌であるため、微生物を含んだままで配合することも可能である。
【0055】
上記のような飲食品としては、液状、ペースト状、カプセル状、ゼリー状、ゲル状固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食等のほか、例えば、パン類、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビ
スケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等が挙げられる。
【0056】
食品添加物として用いる場合には、D−アミノ酸、又はラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物を含有する培養物の効果を損なわず、経口摂取できるものであれば、形態や性状は特に制限されず、通常食品添加物に用いられる原料を用いて通常の方法によって製造することができる。
【0057】
さらに、D−アミノ酸、又はラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物を含有する培養物は、飼料中に含有させることも可能である。
飼料の形態としては特に制限されず、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、ホエイ、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トルラ酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等を配合することにより製造できる。飼料の形態としては、例えば、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
〔試験例1〕
ラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物として、ラクトバチルス・ヘルベティカスJCM1120株(JCMより入手)、及びラクトバチルス・ヘルベティカスMCC1848株を、それぞれMRS(de Man Rogasa Sharpe)培地(Difco(登録商標)製品、日本ベクトン・ディッキンソン社より入手)3 mL で、嫌気的に37℃で一晩(16時間)培養した。培地は0.22μmフィルターにてろ過して乳酸菌を除去し、得られた培養上清を冷蔵にて保存した。
【0060】
上記培養上清中のアミノ酸は、4-Fluoro-7-nitro-2,1,3-benzoxadiaxole(NBD-F)を用いて蛍光誘導体とし、これをHPLCにて分析した。具体的には、培養上清 1 mLを減圧下において風乾させ、得られた固形分をホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.2)20 μLに溶解した。次いで、5 μLの40 mM NBD-F/アセトニトリル溶液を加え、60℃にて2分間インキュベートし、2%トリフルオロ酢酸水溶液75 μLに溶解した反応液2 μLを、HPLCに供した。
【0061】
HPLCは、主に、逆相マイクロカラムを用いる一次元目と、光学異性体分離カラムを用いる二次元目とにより構成されるHPLCシステムにより行われた。
使用したHPLCシステム(NANOSPACE SI-2 シリーズ, 資生堂, 日本)の構成を以下に示す。
3010型脱気装置、
3201型ポンプ 2台、
3033型オートサンプラー、
3004型カラムオーブン、
3013型蛍光検出器 2台、
3012型カラム選択ユニット、マルチループユニット(9ループ、1ループは長さ 750
mm x 内径 0.5 mm、ループ当たり150 μL容量)、1入力-10出力バルブ(C5-2340 EMTD, Valco Instruments、米国)。
データ処理プログラムのEzChrom Elite Clientは、検出器の反応をモニタリングするのに使用し、カラム選択ユニットとマルチループユニットは、KSAAバルブ制御システム(資生堂)を用いて制御した。
【0062】
一次元目においては、microbore-monolithic ODSカラム(長さ 1000 mm x 内径 0.53 mm、シリカゲル充填、資生堂製)を、45℃に維持して使用した。移動相には、6%アセトニトリル、0.06%トリフルオロ酢酸を含む水溶液を、25 μL毎分の流速で用いた。
【0063】
二次元目においては、narrowbore-Sumichiral OA-2500S 光学異性体分離カラム(長さ 250 mm x 内径 1.5 mm、住化分析化学、日本)を、25℃に維持して使用した。
Asnの移動相には、5 mMクエン酸加・メタノール/アセトニトリル混合液(25:75混合液)を、流速200 μL毎分で使用した。
Glu、Aspの移動相には、2.5 mM クエン酸加・メタノール/アセトニトリル混合液(25:75混合液)を、流速200 μL毎分で使用した。
また、Alaの移動相には5 mMクエン酸加・メタノール/アセトニトリル混合液(50:50混合液)を流速200 μL毎分で使用した。
【0064】
上記誘導体化したアミノ酸を含む反応液を、一次元目における逆相マイクロカラムに供した。
そして、一次元目に設置した蛍光検出器によって、470nmの励起波長によるNBD誘導体化アミノ酸の蛍光を530nmにて検出し、検出したアミノ酸を含む画分(D体とL体の混合物の状態:クロマトグラムの一例を
図1に示す)を、カラムスイッチングにより二次元目における光学異性体分離カラムへ導入して分離し、二次元目に設置した蛍光検出器によってD体とL体を定量した(クロマトグラムの一例を
図2に示す)。
アミノ酸のD体、L体の定量結果を、それぞれ表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2は、各々の微生物培養後における培養物中のアミノ酸含有量から、培養前のMRS培地に含まれるアミノ酸含有量を差し引くことにより算出した、アミノ酸分泌量を示す。
分泌量がマイナスの場合は、微生物が分泌したアミノ酸量よりも、微生物により消費されたアミノ酸量の方が多かったことを示す。
分泌量がプラスの場合は、微生物により消費されたアミノ酸量よりも、微生物が分泌し
たアミノ酸量が多かったことを示す。
【0067】
表2は、ラクトバチルス・ヘルベティカスに属する微生物が、D−アスパラギン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−アラニンを分泌したことを示している。
【0068】
以下の表3は、表2の結果から、各々の微生物におけるD−アミノ酸の分泌比率を、[D−アミノ酸分泌量]/([D−アミノ酸分泌量]+[L−アミノ酸分泌量])の式で計算した結果である。但し、D−アミノ酸分泌量またはL−アミノ酸分泌量がマイナスの値である場合には、分泌量は0として計算を行った。
【0069】
【表3】
【0070】
JCM1120株では、D−アスパラギンの分泌比率が0.5以上であり、D−アミノ酸が高効率に分泌されていることが判明した。
MCC1848株では、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸及びD−アラニンの分泌比率が0.5以上であり、D−アミノ酸が高効率に分泌されていることが判明した。さらに、高効率に分泌するD−アミノ酸の種類も豊富である。
【0071】
〔実施例1:ドリンクヨーグルト〕
10%(W/W)還元脱脂粉乳(森永乳業社製)を水に溶解して得た10%(W/W)還元脱脂粉乳培地1000mLを90℃で30分間殺菌し、ラクトバチルス・ヘルベティカスMCC1848株のシードカルチャーを30mL接種し、37℃16時間培養した。
これとは別に、脱脂粉乳、全粉乳、ペクチン、及び蔗糖からなる原料を混合溶解して得られた、乳脂肪0.5%(W/W)、無脂乳固形分8.0%(W/W)、蔗糖5.0%(W/W)、ペクチン0.2%(W/W)からなるベース50Lを、90℃で10分間殺菌し,40℃に冷却した。該殺菌したベースに、前記の通り前培養を行ったラクトバチルス・ヘルベティカスMCC1848株のカルチャー50mLを接種し、3716時間培養して発酵乳を得た。
該発酵乳を直ちに攪拌冷却し、冷却発酵乳を15MPaの圧力で均質化し、200mL容のガラス容器に充填し、密封し、ドリンクヨーグルトを製造した。
【0072】
製造したドリンクヨーグルトには、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸及びD−アラニンの分泌比率が0.5以上で各D−アミノ酸が存在していた。
このドリンクヨーグルトは、このまま皮膚保湿用飲食品、シワ形成抑制用飲食品、及び美肌用飲食品として使用し得る。
【0073】
〔実施例2:発酵乳〕
10%(W/W)還元脱脂粉乳培地1000mLを90℃で30分間殺菌し、ラクトバチルス・ヘルベティカスMCC1848株のシードカルチャーを30mL接種し、37℃16時間培養した。
これとは別に、乳脂肪3.0%(W/W)、無脂乳固形分9.0%(W/W)からなる生乳50Lを70℃に加温し、15MPaの圧力で均質化した後、90℃で10分間殺菌
し、40℃に冷却した。該殺菌したベースに、前記の通り前培養を行ったラクトバチルス・ヘルベティカスMCC1848株のカルチャー500mL、及びストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・ブルガリクスの混合カルチャー5mLを接種し、500mL容の樹脂容器に充填し、密封し、37℃7時間培養した後、直ちに冷却して発酵乳を製造した。
【0074】
製造した発酵乳には、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸及びD−アラニンの分泌比率が0.5以上で各D−アミノ酸が存在していた。
この発酵乳は、このまま皮膚保湿用飲食品、シワ形成抑制用飲食品、及び美肌用飲食品として使用し得る。
【0075】
〔実施例3:粉末製剤〕
還元脱脂粉乳培地(13重量%脱脂粉乳、0.5重量%酵母エキス含有)を95℃で30分間殺菌したのち、ラクトバチルス・ヘルベティカスMCC1848株のシードカルチャーを接種し、37℃で16時間培養し、得られた培養物を凍結乾燥してラクトバチルス・ヘルベティカスMCC1848株培養物の粉末製剤を得た。
【0076】
製造した粉末製剤には、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸及びD−アラニンの分泌比率が0.5以上で各D−アミノ酸が存在していた。
この粉末製剤は、このまま皮膚保湿剤、シワ形成抑制剤、及び美肌剤として使用し得る。