(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
血液を含む領域内のスピンをフリップさせるための第1のRFパルスと前記領域から血液のデータを収集するデータ収集シーケンスとを有するイメージングシーケンスを繰り返し実行する磁気共鳴装置であって、
前記血液と背景組織とのコントラストと、前記第1のRFパルスから前記データ収集シーケンスまでの第1の時間と、イメージングシーケンスが終了してから次のイメージングシーケンスが開始されるまでの第2の時間との対応関係を記憶する記憶部と、
前記血液の流速に基づいて、前記イメージングシーケンスを繰り返し実行するときの前記第1の時間を決定する第1の決定手段と、
前記第1の決定手段により決定された前記第1の時間と、前記対応関係とに基づいて、前記イメージングシーケンスを繰り返し実行するときの前記第2の時間を決定する第2の決定手段と、
を有する、磁気共鳴装置。
前記イメージングシーケンスは、前記第1のRFパルスと前記データ収集シーケンスとの間に、第2のRFパルスを有する、請求項1〜12のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
血液を含む領域内のスピンをフリップさせるための第1のRFパルスと前記領域から血液のデータを収集するデータ収集シーケンスとを有するイメージングシーケンスを繰り返し実行する磁気共鳴装置であって、前記血液と背景組織とのコントラストと、前記第1のRFパルスから前記データ収集シーケンスまでの第1の時間と、イメージングシーケンスが終了してから次のイメージングシーケンスが開始されるまでの第2の時間との対応関係を記憶する磁気共鳴装置に適用されるプログラムであって、
前記血液の流速に基づいて、前記イメージングシーケンスを繰り返し実行するときの前記第1の時間を決定する第1の決定処理と、
前記第1の決定処理により決定された前記第1の時間と、前記対応関係とに基づいて、前記イメージングシーケンスを繰り返し実行するときの前記第2の時間を決定する第2の決定処理と、
を計算機に実行させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0012】
図1は、本発明の一形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0013】
マグネット2は、被検体12が収容されるボア21を有している。また、マグネット2には、超伝導コイル、RFコイル、勾配コイルなどが内蔵されている。
【0014】
テーブル3は、被検体12を支持するクレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体12はボア21に搬送される。
【0015】
受信コイル4は、被検体12に取り付けられている。受信コイル4は、被検体12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0016】
MR装置100は、更に、生体信号処理部5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、記憶部80、制御部9、操作部10、および表示部11などを有している。
【0017】
心拍信号処理部5は、被検体12に取り付けられたセンサ5aから信号を受け取り、被検体の心拍数やRR間隔を求める。
【0018】
送信器6はRFコイルに電流を供給し、勾配磁場電源7は勾配コイルに電流を供給する。受信器8は、受信コイル4から受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。
【0019】
記憶部80は、コントラストマップM1およびM2(
図5および
図6参照)を記憶する。コントラストマップM1およびM2については後述する。
【0020】
制御部9は、表示部11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。制御部9は、流速算出手段91〜待ち時間決定手段93などを有している。
【0021】
流速算出手段91は、スキャンにより取得された流速情報に基づいて動脈血の流速vを求める。
【0022】
反転時間決定手段92は、動脈血の流速vに基づいて、イメージングシーケンスを実行するときの反転時間TIを決定する。
【0023】
待ち時間決定手段93は、反転時間決定手段92により決定された反転時間TIと、コントラストマップM1およびM2(
図5および
図6参照)とに基づいて、イメージングシーケンスPSを実行するときの待ち時間Twを決定する。
【0024】
尚、制御部9は、流速算出手段91〜待ち時間決定手段93を構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0025】
操作部10は、オペレータにより操作され、種々の情報を制御部9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
MR装置100は、上記のように構成されている。
上記のように構成されたMRI装置100を用いて、被検体12を撮影する。
【0026】
図2は、被検体12をスキャンするときの説明図である。
図2の上側には、被検体の心拍信号CSと、被検体をスキャンするときに使用されるイメージングシーケンスPSが示されている。
図2の下側には、被検体の撮影領域Rと、k空間(ky−kz面)が示されている。
本形態では、頭部および頸部を流れる動脈血を描出するためのイメージングシーケンスPSが繰返し実行される。
【0027】
各イメージングシーケンスPSは、選択反転パルスSIR(Selective Inversion Recovery)、脂肪抑制パルスF、データ収集シーケンスDAQ、非選択反転パルスNIRを有している。
【0028】
選択反転パルスSIRは、被検体12の頭部および頸部を含む領域R
invの組織(動脈血、静脈血、脂肪、筋肉など)の縦磁化を反転させるためのRFパルスである。選択反転パルスSIRは、心拍信号CSのR波から遅延時間TDが経過した時点で印加される。
【0029】
選択反転パルスSIRから反転時間TIが経過した時点で、撮影領域Rのデータを収集するためのデータ収集シーケンスDAQが実行される。データ収集シーケンスDAQは、例えば3D FSE(Fast Spin Echo)や、FIESTA(Fast Imaging Employing Steady state Acquisition)である。選択反転パルスSIRによって領域R
invの組織の縦磁化は反転するので、反転時間TIの間に、領域R
inv内の各組織の縦磁化はヌルポイントに近づく。一方、心臓は領域R
invの外側に位置しているので、選択反転パルスSIRを印加しても、心臓の中の動脈血は、縦磁化M=1のままである。したがって、反転時間TIの間に、心臓から、縦磁化M=1の動脈血が頸部および頭部に流入する。このように、反転時間TIの間に縦磁化M=1の動脈血を頸部および頭部に流入させてから、データ収集シーケンスDAQを実行するので、動脈血が強調して描出されるとともに背景組織(静脈血など)が抑制されたMR画像を得ることができる。
【0030】
また、データ収集シーケンスDAQの直前には、脂肪抑制パルスFが印加されている。したがって、撮影領域Rの脂肪信号を効果的に抑制することができる。尚、脂肪抑制パルスFは、例えばSPECIR(Spectrally Selected IR)や、STIR(Short-TI IR)である。
【0031】
更に、データ収集シーケンスDAQの直後には、非選択反転パルスNIRが印加される。非選択反転パルスNIRは、被検体内の各組織の磁化を反転させるために印加されるパルスである。
【0032】
非選択反転パルスNIRを印加した後、待ち時間Twが経過した時点で、次のイメージングシーケンスPSが実行される。
【0033】
次のイメージングシーケンスPSでも、選択反転パルスSIRおよび脂肪抑制パルスFを印加した後、データ収集シーケンスDAQを実行し、非選択反転パルスNIRを印加する。以下同様に、イメージングシーケンスPSを繰り返し実行する。本形態では、1回のイメージングシーケンスPSで、ky−kz面内の1本のkzビューのデータを収集する。したがって、m回のイメージングシーケンスPSを実行することにより、ky−kz面内の全てのkzビュー1〜mを収集することができる。
【0034】
次に、繰り返し時間TRについて説明する。
繰り返し時間TRは、以下の式で表すことができる。
TR=TI+Ta+Tw ・・・(1)
ここで、TI:反転時間
Ta:データ収集期間DAQが開始してから非選択反転パルスNIRが印加されるまでの時間
Tw:待ち時間
【0035】
また、TRは、以下の条件を満たすように設定される。
TR=RR×n ・・・(2)
ここで、RR:RR間隔
n:整数
【0036】
本形態ではnの値は、反転時間TIおよび待ち時間Twに依存して決まる値である。nの決定方法については後述する。
図2では、nの一例として、n=4の場合が示されている。
【0037】
上記のイメージングシーケンスPSを実行してk空間のデータを収集した後、フーリエ変換を実行することにより、動脈血の画像を得ることができる。ただし、反転時間TIが短すぎると、血液の流入効果が十分に得ることができず、動脈血を高信号で描出することができないという問題がある。一方、反転時間TIが長すぎると、背景組織が回復し、画像のコントラストが低下する問題がある。更に、血流速や撮影部位によって、反転時間TIの最適値は異なる。したがって、高品質な血流画像を得るためには、各スキャンに適した反転時間TIを設定する必要がある。また、背景組織と動脈血とのコントラストは、待ち時間Twにも依存するので、良好なコントラストが得られるように待ち時間Twを設定する必要もある。そこで、本形態では、背景組織と動脈血とのコントラストを大きくすることができるように反転時間TIおよび待ち時間Twの値を決定し、イメージングシーケンスPSを実行している。以下に、反転時間TIおよび待ち時間Twの値を決定し、イメージングシーケンスPSを実行するときのフローについて説明する。
【0038】
図3は、反転時間TIおよび待ち時間Twの値を決定し、イメージングシーケンスPSを実行するときのフローを示す図である。
本形態のフローは、大きく2つのステップST10およびST20に分けられる。ステップST10は、反転時間TIおよび待ち時間Twの値を決定するためのステップである。ステップST20では、ステップST10で決定された反転時間TIおよび待ち時間Twに基づいて、イメージングシーケンスを実行するステップである。
【0039】
ステップST10はステップST1〜ST4を有している。したがって、ステップST10の説明に当たっては、ステップST1〜ST4について順に説明する。
【0040】
ステップST1では、被検体の動脈血の流速情報を取得するためのスキャンを実行する。動脈血の流速情報は、反転時間TIを決定するときに用いられる情報である。動脈血の流速情報を用いて反転時間TIを決定する具体的な手順についてはステップST2およびST3で詳しく説明する。動脈血の流速情報を取得するためのスキャンとしては、位相コントラストMRAなどを用いることができる。このスキャンを実行した後、ステップST2に進む。
【0041】
ステップST2では、流速算出手段91(
図1参照)が、ステップST1のスキャンにより取得された流速情報に基づいて、動脈血の流速vを求める。動脈血の流速vを求めた後、ステップST3に進む。
【0042】
ステップST3では、反転時間決定手段92(
図1参照)が、動脈血の流速vに基づいて、反転時間TIを決定する。
【0043】
図4は、反転時間TIの決定方法の説明図である。
図4では、心臓から血管Vを通って頭部に流れる動脈血Bが矢印で表されている。
【0044】
先ず、撮影領域Rの中で、特に高品質でイメージングしたい血液の領域RQを考える。本形態では、領域RQは、頸動脈を含む領域であるとする。
【0045】
次に、動脈血Bが、位置Peから位置Pcまで移動するのに必要な時間Tmについて考える。位置Peは領域R
invの心臓側のエッジeの位置であり、位置Pcは領域RQの右端の位置である。
【0046】
位置Peと位置Pcとの間では、血管Vの形状が、SI方向に延びる直線形状に近似できるとする。この場合、動脈血Bが位置Peから位置Pcまで移動するのに必要な時間Tmは、以下の式で表すことができる。
Tm=L/v ・・・(3)
ここで、L:位置Peから位置Pcまでの距離
v:動脈血の流速
【0047】
領域RQ内の血液を高品質でイメージングするためには、動脈血Bは、時間Tmの間に、位置Peから位置Pcに到達していることが望ましい。そこで、本形態では、時間Tm(=L/v)を、反転時間TIとする。したがって、反転時間TIは、式(4)で表することができる。
TI=L/v ・・・(4)
【0048】
式(4)の動脈血の流速vはステップST2で求められているので、距離Lの値が決まれば、反転時間TIを求めることができる。距離Lは、例えば、撮影領域RのSI方向の長さに応じて決定してもよいし、固定値としてもよい。本形態では、距離Lは、撮影領域RのSI方向の長さによって決まる値とする。したがって、流速vおよび距離Lは既知であるので、式(4)から反転時間TIを決定することができる。尚、上記のように、TIは流速vおよび距離Lによって決まるので(式(4)参照)、TIはvおよびLの値に応じて種々の値を取り得る。本形態では、説明の便宜上、TIの値として、以下の3つの値を考える。
TI=1500ms
TI=1400ms
TI=1300ms
【0049】
そして、TI=1500ms、1400ms、1300msの3つの場合に分けて、フローの説明を続ける。
【0050】
(1)ステップST3においてTI=1500msと決定された場合
ステップST3においてTI=1500msと決定されると、ステップST4に進む。
【0051】
ステップST4では、待ち時間決定手段93(
図1参照)が、ステップST3で決定した反転時間TIと、コントラストマップとに基づいて、待ち時間Twを決定する。以下に、待ち時間Twを決定するときに使用されるコントラストマップについて説明する(
図5および
図6参照)。
【0052】
図5および
図6は、待ち時間Twを決定するときに使用されるコントラストマップM1およびM2を示す図である。
コントラストマップM1(
図5参照)は、動脈血とCSF(脳脊髄液)とのコントラストrを表すマップであり、被検体をスキャンする前に予め用意されている。コントラストマップM1の横軸は反転時間TI、縦軸は待ち時間Twを表しており、反転時間TIの値と待ち時間Twの値との組合せに対してコントラストrの値が対応付けられている。コントラストrの値は、例えば、ブロッホ(Bloch)方程式を用いて動脈血の信号値とCSFの信号値とを計算し、これらの信号値の比を取ることにより求めることができる。
【0053】
コントラストrは0.25≦r≦0.55の範囲内の値を有しており、コントラストマップM1ではコントラストrの値の違いがグレーの濃淡で表現されている。r=0.25は黒に対応し、r=0.55は白に対応している。コントラストrが0.25から大きくなるにつれて、コントラストマップM1の色は黒から次第に白に近づく。
【0054】
一方、コントラストマップM2(
図6参照)は、動脈血と静脈血とのコントラストsを表すマップであり、被検体をスキャンする前に予め用意されている。コントラストマップM2の横軸は反転時間TI、縦軸は待ち時間Twを表しており、反転時間TIの値と待ち時間Twの値との組合せに対してコントラストsの値が対応付けられている。コントラストsの値は、例えば、ブロッホ(Bloch)方程式を用いて動脈血の信号値と静脈血の信号値とを計算し、これらの信号値の比を取ることにより求めることができる。
【0055】
コントラストsは0.25≦s≦0.55の範囲内の値を有しており、コントラストマップM2ではコントラストsの値の違いがグレーの濃淡で表現されている。s=0.25は黒に対応し、s=0.55は白に対応している。コントラストsが0.25から大きくなるにつれて、コントラストマップM2の色は黒から次第に白に近づく。
【0056】
ステップST4では、
図5および
図6に示すコントラストマップM1およびM2を用いて、待ち時間Twが決定される。以下に、ステップST4の動作について説明する。
【0057】
図7は、ステップST4で実行されるフローを示す図である。
ステップST4は、2つのステップST40およびST41に分けられる。ステップST40では、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲を決定するための処理が実行される。ステップST40の具体的なフローは
図8に示されている。
図8については後述する。
【0058】
ステップST41では、ステップST40で決定された時間範囲の中から、シーケンスを実行するときの待ち時間Twを決定する処理が実行される。
【0059】
以下に、ステップST4の各ステップST40およびST41について説明する。
ステップST4では、先ず、ステップST40が実行される(
図8参照)。
【0060】
図8はステップST40の詳細なフローを示す図である。
ステップ40aでは、待ち時間決定手段93が、コントラストマップM1(
図5参照)の中から、ステップST3で決定された反転時間TI=1500(ms)におけるマップデータを抽出する。
図9に抽出されたマップデータD1を示す。マップデータD1を抽出した後、ステップ40bに進む。
【0061】
ステップ40bでは、待ち時間決定手段93が、マップデータD1の中に、以下の条件を満たすコントラストrが含まれているか否かを判断する。
r≧r
0 ・・・(5)
ここで、r
0:動脈血とCSFとのコントラストrの値として許容される下限値
【0062】
本形態では、r
0=0.5に設定されているとする。この場合、式(5)は以下の式で表される。
r≧0.5 ・・・(6)
【0063】
したがって、待ち時間決定手段93は、待ち時間TI=1500(ms)におけるマップデータD1の中に、式(6)を満たすコントラストrが含まれているか否かを判断する。マップデータD1の中に式(6)を満たすコントラストrが含まれている場合、ステップ40dに進む。一方、マップデータD1の中に式(6)を満たすコントラストrが含まれていない場合、ステップ40cに進む。
図9を参照すると、マップデータD1はコントラストr=0.5の領域を横切っていることが分かる。したがって、マップデータD1の中に式(6)を満たすコントラストrが含まれている。
図10に、マップデータD1の中に含まれるr=0.5の範囲v1を示す。マップデータD1の中に式(6)を満たすコントラストrが含まれているので、ステップ40dに進む。
【0064】
ステップ40dでは、待ち時間決定手段93が、r=0.5の範囲v1に対応する待ち時間Twの範囲を特定する。
図11に、r=0.5の範囲v1に対応する待ち時間Twの範囲H1を示す。ここでは、待ち時間Twの範囲H1は、以下の範囲とする。
1100(ms)≦Tw≦2200(ms) ・・・(7)
【0065】
コントラストマップM1における待ち時間Twの範囲H1を求めた後、ステップ40eに進む。
【0066】
ステップ40eでは、待ち時間決定手段93が、コントラストマップM2(
図6参照)の中から、ステップST3で決定された反転時間TI=1500(ms)におけるマップデータを抽出する。
図12に抽出されたマップデータD2を示す。マップデータD2を抽出した後、ステップ40fに進む。
【0067】
ステップ40fでは、待ち時間決定手段93が、マップデータD2の中に、以下の条件を満たすコントラストsが含まれているか否かを判断する。
s≧s
0 ・・・(8)
ここで、s
0:動脈血と静脈血とのコントラストsの値として許容される下限値
【0068】
本形態では、s
0=0.5に設定されているとする。この場合、式(8)は以下の式で表される。
s≧0.5 ・・・(9)
【0069】
したがって、待ち時間決定手段93は、待ち時間TI=1500(ms)におけるマップデータD2の中に、式(9)を満たすコントラストsが含まれているか否かを判断する。マップデータD2の中に式(9)を満たすコントラストsが含まれている場合、ステップ40hに進む。一方、マップデータD2の中に式(9)を満たすコントラストsが含まれていない場合、ステップ40gに進む。
図12を参照すると、マップデータD2はコントラスト0.5〜0.52の領域を横切っていることが分かる。したがって、マップデータD2の中に式(9)を満たすコントラストsが含まれている。
図13に、マップデータD2の中に含まれるs=0.5〜0.52の範囲v2を示す。マップデータD2の中に式(9)を満たすコントラストsが含まれているので、ステップ40hに進む。
【0070】
ステップ40hでは、待ち時間決定手段93が、s=0.5〜0.52の範囲v2に対応する待ち時間Twの範囲H2を特定する。
図14に、s=0.5〜0.52の範囲v2に対応する待ち時間Twの範囲H2を示す。ここでは、待ち時間Twの範囲H2は、以下の範囲とする。
1800(ms)≦Tw≦4000(ms) ・・・(10)
【0071】
コントラストマップM2における待ち時間Twの範囲H2を求めた後、ステップ40iに進む。
【0072】
ステップ40iでは、待ち時間決定手段93が、コントラストマップM1の待ち時間Twの範囲H1(
図11参照)と、コントラストマップM2の待ち時間Twの範囲H2(
図14参照)に、重なる部分があるか否かを判断する。
図15に、コントラストマップM1の待ち時間Twの範囲H1と、コントラストマップM2の待ち時間Twの範囲H2とを比較して示す。
【0073】
待ち時間Twの範囲H1とH2との間に待ち時間Twの重なる範囲Hがある場合はステップ40kに進み、一方、待ち時間Twの重なる範囲Hが無い場合はステップ40jに進む。
図15では、1800ms≦Tw≦2200msの範囲で待ち時間Twが重なっている。したがって、ステップ40kに進む。
【0074】
ステップ40kでは、待ち時間決定手段93は、待ち時間Twの重なっている範囲Hを、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲と決定する。ここでは、1800ms≦Tw≦2200msの範囲で待ち時間Twが重なっている。したがって、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲Hは、以下の範囲となる。
1800ms≦Tw≦2200ms ・・・(11)
【0075】
待ち時間Twとして使用可能な時間範囲が決定されたら、ステップST40のフローを終了する。ステップST40が終了したら、ステップST41(
図7参照)に進む。
【0076】
ステップST41では、待ち時間決定手段93が、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲Hの中から、イメージングシーケンスPSを実行するときの待ち時間Twを決定する。以下に待ち時間Twの決定方法について説明する。
【0077】
式(1)より、待ち時間Twは以下の式で表すことができる。
Tw=TR−(TI+Ta) ・・・(12)
【0078】
式(2)を式(12)に代入すると、以下の式が得られる。
Tw=RR×n×−(TI+Ta) ・・・(13)
【0079】
式(13)において、RRは心拍信号から算出することができる値である。ここでは、RR=1000msとする。また、時間Taは、データ収集シーケンスDAQの開始時点から非選択反転パルスNIRの印加時点までの時間である。時間TaはイメージングシーケンスPSによって決まる固定値であるので、時間Taは既知の値である。ここでは、Ta=500msとする。したがって、式(13)は、以下の式で表される。
Tw=1000n−(TI+500) ・・・(14)
【0080】
また、反転時間TIは、ステップST3でTI=1500msと算出されている。したがって、TI=1500msを式(14)に代入すると、以下の式が得られる。
Tw=1000n−(TI+500)
=1000n−(1500+500)
=1000n−2000 ・・・(15)
【0081】
また、ステップST40において、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲Hは1800ms≦Tw≦2200msとして求められている(式(11)参照)。したがって、式(15)で表される待ち時間Twは、以下の式を満たす必要がある。
1800ms≦Tw=1000n−2000≦2200ms ・・・(16)
【0082】
待ち時間決定手段93は、式(16)を満たすnを求める。式(16)を満たすnは、n=4である。n=4を求めた後、n=4を式(15)に代入する。n=4を式(15)に代入することによって、以下のように、待ち時間Twを求めることができる。
Tw=1000n−2000
=1000×4−2000
=2000ms
【0083】
したがって、待ち時間Tw=2000msと決定することができる。
以上説明したように、ステップST3およびST4の処理を実行することによって、TI=1500msおよびTw=2000msが求められる。
図16に、TI=1500msおよびTw=2000msの場合のイメージングシーケンスPSを示す。尚、n=4であるので、n=4を式(2)に代入するとTR=4RRとなる。
待ち時間Twを決定した後、ステップST20(
図3参照)に進む。
【0084】
ステップST20では、
図16に示すイメージングシーケンスPSに従ってk空間のデータを収集し、フローを終了する。
【0085】
本形態では、動脈血Bが位置Peから位置Pcまで移動するのに必要な時間Tmを求め(
図4および式(3)参照)、時間Tmを反転時間TIとして設定している。したがって、縦磁化が十分に大きい動脈血Bが領域RQ(
図4参照)の全体に流入したときにデータ収集シーケンスDAQが実行されるので、領域RQから十分に大きな動脈血信号を得ることができる。
【0086】
また、本形態では、コントラストマップM1およびM2に基づいて、動脈血とCSFとのコントラストrがr≧0.5になるときの待ち時間Twの範囲H1(
図11参照)と、動脈血と静脈血とのコントラストsがs≧0.5になるときの待ち時間Twの範囲H2(
図14参照)とを求める。そして、両方の範囲H1およびH2に重なる待ち時間Twの範囲Hを特定し、この範囲Hの中から、イメージングシーケンスPSを実行するときの待ち時間Twを決定している。したがって、動脈血とCSFとのコントラストrが十分に大きく、且つ動脈血と静脈血とのコントラストsも十分に大きくすることができるので、良好なコントラストの血管画像を得ることができる。
【0087】
尚、式(13)では、RR間隔を用いて待ち時間Twを規定しているが、RR間隔の代わりに心拍数を用いて待ち時間Twを規定してもよい。心拍数をBPMとすると、RR間隔と心拍数との間にはRR=(60/BPM)×10
3(ms)の関係があるので、RR間隔の代わりに心拍数BPMを算出しても、待ち時間Twを決定することができる。
【0088】
上記の説明では、ステップST3においてTI=1500msと決定された例が述べられている。次に、TI=1400msの場合について説明する。
【0089】
(2)ステップST3においてTI=1400msと決定された場合
ステップST3においてTI=1400msと決定されると、TI=1500msの場合と同様に、ステップ40a(
図8参照)に進む。
【0090】
ステップ40aでは、待ち時間決定手段93が、コントラストマップM1(
図5参照)の中から、ステップST3で決定された反転時間TI=1400(ms)におけるマップデータを抽出する。
図17に抽出されたマップデータD1を示す。マップデータD1を抽出した後、ステップ40bに進む。
【0091】
ステップ40bでは、待ち時間決定手段93が、マップデータD1の中に、r≧0.5(式(6)参照)を満たすコントラストrが含まれているか否かを判断する。
図17を参照すると、マップデータD1はコントラスト0.5の領域を僅かに横切っていることが分かる。したがって、マップデータD1の中にr≧0.5を満たすコントラストrが含まれている。
図18に、マップデータD1の中に含まれるr=0.5の範囲v1を示す。マップデータD1の中にr≧0.5を満たすコントラストrが含まれているので、ステップ40dに進む。
【0092】
ステップ40dでは、待ち時間決定手段93が、r=0.5の範囲v1に対応する待ち時間Twの範囲を特定する。
図19に、r=0.5の範囲v1に対応する待ち時間Twの範囲H1を示す。ここでは、待ち時間Twの範囲H1は、以下の範囲とする。
1000(ms)≦Tw≦1500(ms) ・・・(17)
【0093】
コントラストマップM1における待ち時間Twの範囲H1を求めた後、ステップ40eに進む。
【0094】
ステップ40eでは、待ち時間決定手段93が、コントラストマップM2(
図6参照)の中から、ステップST3で決定された反転時間TI=1400(ms)におけるマップデータを抽出する。
図20に抽出されたマップデータD2を示す。マップデータD2を抽出した後、ステップ40fに進む。
【0095】
ステップ40fでは、待ち時間決定手段93が、マップデータD1の中に、s≧0.5(式(9)参照)を満たすコントラストsが含まれているか否かを判断する。
図20を参照すると、マップデータD2はコントラスト0.5〜0.54の領域を横切っていることが分かる。したがって、マップデータD2の中にs≧0.5を満たすコントラストsが含まれている。
図21に、マップデータD2の中に含まれるs=0.5〜0.54の範囲v2を示す。マップデータD2の中にs≧0.5を満たすコントラストsが含まれているので、ステップ40hに進む。
【0096】
ステップ40hでは、待ち時間決定手段93が、s=0.5〜0.54の範囲v2に対応する待ち時間Twの範囲H2を特定する。
図22に、s=0.5〜0.54の範囲v2に対応する待ち時間Twの範囲H2を示す。ここでは、待ち時間Twの範囲H2は、以下の範囲とする。
1700(ms)≦Tw≦4000(ms) ・・・(18)
【0097】
コントラストマップM2における待ち時間Twの範囲H2を求めた後、ステップ40iに進む。
【0098】
ステップ40iでは、待ち時間決定手段93が、コントラストマップM1の待ち時間Twの範囲H1(
図19参照)と、コントラストマップM2の待ち時間Twの範囲H2(
図22参照)に、重なる部分があるか否かを判断する。
図23に、コントラストマップM1の待ち時間Twの範囲H1と、コントラストマップM2の待ち時間Twの範囲H2とを比較して示す。
図23では、待ち時間Twが重なる範囲は存在していない。したがって、ステップ40jに進む。
【0099】
ステップ40jでは、待ち時間決定手段93は、コントラストマップM2の待ち時間Twの範囲H2を、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲Hと決定する。ここでは、コントラストマップM2の待ち時間Twの範囲H2は、1700ms≦Tw≦4000msであるので、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲Hは、以下の範囲となる。
1700ms≦Tw≦4000ms ・・・(19)
【0100】
待ち時間Twとして使用可能な時間範囲Hを式(19)の範囲に設定することにより、動脈血と静脈血とのコントラストsをs≧0.5以上にすることができる。尚、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲Hを式(19)の範囲に設定した場合、動脈血とCSFとのコントラストrはr<0.5になるので(
図19参照)、動脈血とCSFとのコントラストrが小さくなってしまうことが考えられる。しかし、CSFの位置は、診断に重要な頸動脈の位置に対してRL方向にずれているので、動脈血とCSFとのコントラストrが小さくても、頸動脈の診断にはそれほど妨げにならないと考えられる。
【0101】
待ち時間Twとして使用可能な時間範囲が決定されたら、ステップST40のフローを終了する。ステップST40が終了したら、ステップST41(
図7参照)に進む。
【0102】
ステップST41では、待ち時間決定手段93が、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲の中から、イメージングシーケンスPSを実行するときの待ち時間Twを決定する。以下に待ち時間Twの決定方法について説明する。
【0103】
先に説明したように、RR=1000ms、Ta=500msとすると、待ち時間Twは式(14)で表すことができる。以下に式(14)を再び示しておく。
Tw=1000n−(TI+500) ・・・(14)
【0104】
ここで、反転時間TIは、ステップST3でTI=1400msと算出されている。したがって、TI=1400msを式(14)に代入すると、以下の式が得られる。
Tw=1000n−(TI+500)
=1000n−(1400+500)
=1000n−1900 ・・・(20)
【0105】
また、ステップST40において、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲Hは1700ms≦Tw≦4000msとして求められている(式(19)参照)。したがって、式(20)で表される待ち時間Twは、以下の式を満たす必要がある。
1700ms≦Tw=1000n−1900≦4000ms ・・・(21)
【0106】
待ち時間決定手段93は、式(21)を満たすnを求める。式(21)を満たすnは、n=4および5である。n=4を式(20)に代入すると、待ち時間Twは以下の値となる。
Tw=1000n−1900
=1000×4−1900
=2100ms
【0107】
一方、n=5を式(20)に代入すると、待ち時間Twは以下の値となる。
Tw=1000n−1900
=1000×5−1900
=3100ms
【0108】
したがって、2通りの待ち時間Tw=2100ms、Tw=3100msが得られる。このように、式(21)を満たす待ち時間Twが複数存在する場合は、スキャン時間が短くなるように、最小の待ち時間Tw(=2100ms)を、イメージングシーケンスPSを実行するときの待ち時間Twとして決定する。
【0109】
したがって、ステップST3およびST4の処理を実行することによって、TI=1400msおよびTw=2100msが求められる。
図24に、TI=1400msおよびTw=2100msの場合のイメージングシーケンスPSを示す。尚、n=4であるので、n=4を式(2)に代入すると、TR=4RRとなる。
【0110】
待ち時間Twを決定した後、ステップST20(
図3参照)に進み、
図24に示すイメージングシーケンスPSに従ってk空間のデータを収集し、フローを終了する。
最後に、TI=1300msの場合について説明する。
【0111】
(3)ステップST3においてTI=1300msと決定された場合
ステップST3においてTI=1300msと決定されると、TI=1500msおよび1400msの場合と同様に、ステップ40a(
図8参照)に進む。
【0112】
ステップ40aでは、待ち時間決定手段93が、コントラストマップM1(
図5参照)の中から、ステップST3で決定された反転時間TI=1300(ms)におけるマップデータを抽出する。
図25に抽出されたマップデータD1を示す。マップデータD1を抽出した後、ステップ40bに進む。
【0113】
ステップ40bでは、待ち時間決定手段93が、マップデータD1の中に、r≧0.5(式(6)参照)を満たすコントラストrが含まれているか否かを判断する。
図25を参照すると、マップデータD1はコントラスト0.45の領域を横切っているが、コントラスト0.5の領域は横切っていない。したがって、マップデータD1の中にr≧0.5を満たすコントラストrが含まれていない。この場合、ステップ40cに進む。
【0114】
ステップ40cでは、待ち時間決定手段93は、先ず、マップデータD1の中からコントラストrの最大値を求める。
図25を参照すると、マップデータD1におけるコントラストrの最大値は、0.45である。コントラストrの最大値0.45を求めた後、待ち時間決定手段93は、コントラストrの最大値0.45に対応する待ち時間Twの範囲H1を特定する。
図26に、r=0.45に対応する待ち時間Twの範囲H1を示す。ここでは、待ち時間Twの範囲H1は、以下の範囲とする。
600(ms)≦Tw≦2300(ms) ・・・(22)
【0115】
コントラストマップM1における待ち時間Twの範囲H1を求めた後、ステップ40eに進む。
【0116】
ステップ40eでは、待ち時間決定手段93が、コントラストマップM2(
図6参照)の中から、ステップST3で決定された反転時間TI=1300(ms)におけるマップデータを抽出する。
図27に抽出されたマップデータD2を示す。マップデータD2を抽出した後、ステップ40fに進む。
【0117】
ステップ40fでは、待ち時間決定手段93が、マップデータD2の中に、s≧0.5(式(9)参照)を満たすコントラストsが含まれているか否かを判断する。
図27を参照すると、マップデータD2はコントラスト0.5〜0.54の領域を横切っていることが分かる。したがって、マップデータD2の中にs≧0.5を満たすコントラストrが含まれている。
図28に、マップデータD2の中に含まれるs=0.5〜0.54の範囲v2を示す。マップデータD2の中にs≧0.5を満たすコントラストrが含まれているので、ステップ40hに進む。
【0118】
ステップ40hでは、待ち時間決定手段93が、s=0.5〜0.54の範囲v2に対応する待ち時間Twの範囲H2を特定する。
図29に、s=0.5〜0.54の範囲v2に対応する待ち時間Twの範囲H2を示す。ここでは、待ち時間Twの範囲H2は、以下の範囲とする。
1600(ms)≦Tw≦4000(ms) ・・・(23)
【0119】
コントラストマップM2における待ち時間Twの範囲H2を求めた後、ステップ40iに進む。
【0120】
ステップ40iでは、待ち時間決定手段93が、コントラストマップM1の待ち時間Twの範囲H1(
図26参照)と、コントラストマップM2の待ち時間Twの範囲H2(
図29参照)に、重なる部分があるか否かを判断する。
図30に、コントラストマップM1の待ち時間Twの範囲H1と、コントラストマップM2の待ち時間Twの範囲H2とを比較して示す。
図30では、1600ms≦Tw≦2300msの範囲で待ち時間Twが重なっている。したがって、ステップ40kに進む。
【0121】
ステップ40kでは、待ち時間決定手段93は、待ち時間Twの重なっている範囲Hを、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲と決定する。ここでは、1600ms≦Tw≦2300msの範囲で待ち時間Twが重なっている。したがって、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲Hは、以下の範囲となる。
1600ms≦Tw≦2300ms ・・・(24)
【0122】
待ち時間Twとして使用可能な時間範囲が決定されたら、ステップST40のフローを終了する。ステップST40が終了したら、ステップST41(
図7参照)に進む。
【0123】
ステップST41では、待ち時間決定手段93が、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲の中から、イメージングシーケンスPSを実行するときの待ち時間Twを決定する。以下に待ち時間Twの決定方法について説明する。
【0124】
先に説明したように、RR=1000ms、Ta=500msとすると、待ち時間Twは式(14)で表すことができる。以下に式(14)を再び示しておく。
Tw=1000n−(TI+500) ・・・(14)
【0125】
ここで、反転時間TIは、ステップST3でTI=1300msと算出されている。したがって、TI=1300msを式(14)に代入すると、以下の式が得られる。
Tw=1000n−(TI+500)
=1000n−(1300+500)
=1000n−1800 ・・・(25)
【0126】
また、ステップST40において、待ち時間Twとして使用可能な時間範囲Hは1600ms≦Tw≦2300msとして求められている(式(24)参照)。したがって、式(25)で表される待ち時間Twは、以下の式を満たす必要がある。
1600ms≦Tw=1000n−1800≦2300ms ・・・(26)
【0127】
待ち時間決定手段93は、式(26)を満たすnを求める。式(26)を満たすnは、n=4および5である。n=4を式(25)に代入すると、待ち時間Twは以下の値となる。
Tw=1000n−1800
=1000×4−1800
=2200ms
【0128】
一方、n=5を式(25)に代入すると、待ち時間Twは以下の値となる。
Tw=1000n−1800
=1000×5−1800
=3200ms
【0129】
したがって、2通りの待ち時間Tw=2200ms、Tw=3200msが得られる。このように、式(26)を満たす待ち時間Twが複数存在する場合は、スキャン時間が短くなるように、最小の待ち時間Tw(=2200ms)を、イメージングシーケンスPSを実行するときの待ち時間Twとして決定する。
【0130】
したがって、ステップST3およびST4の処理を実行することによって、TI=1300msおよびTw=2200msが求められる。
図31に、TI=1300msおよびTw=2200msの場合のイメージングシーケンスPSを示す。尚、n=4であるので、n=4を式(2)に代入すると、TR=4RRとなる。
【0131】
待ち時間Twを決定した後、ステップST20(
図3参照)に進み、
図31に示すイメージングシーケンスPSに従ってk空間のデータを収集し、フローを終了する。
【0132】
TI=1300msの場合、コントラストマップM1から抽出されるマップデータD1には、r≧0.5のコントラストは含まれていない。そこで、マップデータD1の中からコントラストrの最大値0.45を求め、コントラストの最大値0.45に対応する待ち時間Twの範囲H1(600ms≦Tw≦2300ms)を特定している(
図26参照)。その後、待ち時間Twの重なる範囲Hを求め(
図30参照)、この範囲Hの中から、待ち時間Twを決定している。したがって、コントラストrの値を、TI=1300msのときに取り得る最大値に設定することができる。
【0133】
尚、本形態では、イメージングシーケンスPSは反転パルスSIR(つまり、フリップ角が180°のRFパルス)を有している。しかし、本発明は反転パルスSIRに限定されることはなく、α°パルス(αは任意の角度)を用いることができる。
図32に、α°パルスを用いた場合のイメージングシーケンスPSの一例を示す。
図32では、α°パルスとデータ収集シーケンスDAQとの間の時間は「Tα」で示されている。この場合、時間Tαは、反転時間TIと同様に、動脈血の流速vに基づいて算出すればよい。また、待ち時間Twは、時間Tαと待ち時間Twとコントラストr(又はコントラストs)との対応関係を規定するコントラストマップを用いて決定することができる。
【0134】
また、時間Tαは、
図33に示すように、α°パルスとデータ収集シーケンスDAQの終了時点teとの間の時間としてもよいし、
図34に示すように、α°パルスと、データ収集シーケンスDAQが実行されている途中の時点tmとの間の時間としてもよい。
【0135】
尚、本形態では、2つのコントラストマップM1およびM2を用いて待ち時間Twを決定したが、いずれか一方のコントラストマップのみを用いて待ち時間Twを決定してもよい。例えば、動脈血と静脈血とのコントラストを大きくすることが重要な場合は、コントラストマップM2のみを用いて待ち時間Twを決定してもよいし、一方、動脈血とCSFとのコントラストを大きくすることが重要な場合は、コントラストマップM1のみを用いて待ち時間Twを決定してもよい。
【0136】
また、本形態では、イメージングシーケンスPSは、選択反転パルスSIRと、脂肪抑制パルスFと、データ収集シーケンスDAQと、非選択反転パルスNIRとを備えている。しかし、イメージングシーケンスPSは、選択反転パルスSIR、脂肪抑制パルスF、および非選択反転パルスNIRとは別のパルスを有していてもよいし、データ収集シーケンスDAQとは別のシーケンスを有していてもよい。また、イメージングシーケンスPSは、脂肪抑制パルスFおよび非選択反転パルスNIRを備えているが、これらのパルスFおよびNIRを備えないようにしてもよい。
【0137】
本形態では、動脈血を撮影する例について説明したが、本発明は、静脈血を撮影する場合にも適用することができる。