(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965882
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】クランプジョーまたはクランプ要素
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20160728BHJP
B25B 1/24 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
B23Q3/06 301L
B25B1/24 A
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-214483(P2013-214483)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-83682(P2014-83682A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年11月4日
(31)【優先権主張番号】12190124.3
(32)【優先日】2012年10月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513259090
【氏名又は名称】オエンメエッレ エッセエッレエッレ
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】ワルテル ブロンツィーノ
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0230884(US,A1)
【文献】
米国特許第06530567(US,B1)
【文献】
米国特許第164291(US,A)
【文献】
米国特許第1883335(US,A)
【文献】
実開昭62−174804(JP,U)
【文献】
特公昭39−008049(JP,B1)
【文献】
特開平08−112771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06,
B25B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプ装置(1)に交換可能に装着可能な、工作物(7)を締め付け固定するためのクランプジョー(2)において、
工作物(7)側に配置され、締め付け固定中に工作物と作用接触する、1つの載置面(5)と1つのクランプ面(6)とが設けられ、該載置面(5)とクランプ面(6)とが互いに垂直に延在していること、
前記クランプ面(6)に、前記載置面(5)に平行に延在する1つまたは複数の凹み(11)が形成されていること、
前記凹み(11)のそれぞれが、前記クランプジョー(2)を平面図で見て、三角形状の内側輪郭を有していること、
三角形の3つの頂点に相当する前記凹み(11)の3つの先端(15)のうちの1つが前記クランプ面(6)とは逆の側にあること、
前記凹み(11)にそれぞれ1つのクランプ要素(12)が挿着され、該クランプ要素の外側輪郭が前記凹み(11)の前記内側輪郭に整合し、前記クランプ要素の工作物(7)側の端側面(13)に1つまたは複数のクランプピン(14)が一体成形されまたは装着されていること、
工作物(7)の締め付け固定状態で、前記クランプピン(14)が前記クランプ面(6)から工作物(7)側へ突出していること、
を特徴とするクランプジョー。
【請求項2】
前記凹み(11)の2つの側壁(17)が、該凹み(11)の底部(18)から垂直に延びる面に対し好ましくは5゜の角度で内側へ傾斜していること、
前記凹み(11)のそれぞれの前記側壁(17)が、前記底部(18)の領域でよりも前記クランプジョー(2)の表面において互いにより接近して延在していること、
を特徴とする請求項1に記載のクランプジョー。
【請求項3】
前記凹み(11)があり溝状に構成されていること、
前記クランプ要素(12)が2つのサイドエッジ(19)を有し、該サイドエッジが、前記凹み(11)の前記側壁(17)の先細りになっている内側輪郭に整合し、且つそれぞれの前記側壁(17)に遊びなしに当接していること、
を特徴とする請求項1または2に記載のクランプジョー。
【請求項4】
工作物(7)への前記クランプピン(14)の侵入時に、前記クランプ要素(12)の前記クランプ面(6)の方向に方向づけられる力が発生し、この力によって、それぞれのクランプ要素(12)が前記凹み(11)の先細りになっている前記側壁(17)に押圧されていること、
前記側壁(17)の配向によって前記クランプ要素(12)が前記凹み(11)の前記底部(18)へ押圧されていること、
を特徴とする請求項2または3に記載のクランプジョー。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載のクランプジョーで使用するためのクランプ要素(12)において、
前記クランプ要素(12)が三角形の外側輪郭を有していること、
締め付け固定状態で、前記クランプ要素(12)の複数の端側面のうちの1つの端側面(13)が、締め付けられる工作物(7)側にあること、
前記端側面(13)に、締め付け固定中に締め付け固定される工作物(7)と点状作用結合する1つまたは複数のクランプピン(14)が一体成形され、または、装着されていること、
それぞれのクランプピン(14)によって工作物(7)に弾性変形または塑性変形が行われ、該弾性変形または塑性変形により前記クランプ要素(12)と締め付け固定されるそれぞれの工作物(7)との間に形状拘束的作用結合が形成されていること、
を特徴とするクランプ要素。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載のクランプジョー(2)またはクランプ要素(12)において、
前記クランプピン(14)が台形状の物体として構成されていること、
前記クランプピン(14)の工作物(7)側の前記先端(23)が、前記クランプピン(14)の前記クランプ面(6)側の底面よりも小さな長方形の作用面を有していること、
を特徴とするクランプジョーまたはクランプ要素。
【請求項7】
前記クランプピン(14)が、前記クランプ面(6)の長手方向に列(31)を成して、且つ該長手方向に垂直な該クランプ面(6)の幅方向に対(32)を成して配置されていること、
前記長手方向に前記列(31)を成して配置されている前記クランプピン(14)の、それぞれ互いに隣り合っている2つのクランプピン(14)が、互いに対向しあっている側面(22)でもって互いに70゜または90゜の開口角を形成していること、
前記幅方向に前記対(32)を成して配置されている2つのクランプピン(14)が、互いに対向しあっている側面(22)でもって70゜の角度を成していること、
それぞれのクランプピン(14)の、締め付け固定される工作物(7)に作用する前記先端(23)が、0.3ミリメートルの側長を備えた正方形の作用面を有していること、
を特徴とする、請求項6に記載のクランプジョー(2)またはクランプ要素(12)。
【請求項8】
前記クランプピン(14)の、前記列(31)内にある2つの側面(22)が、0.4ミリメートルの曲率半径で結合され、2.05ミリメートルまたは1.7ミリメートルの間隔を有していることを特徴とする、請求項6または7に記載のクランプジョー(2)またはクランプ要素(12)。
【請求項9】
前記クランプピン(14)の一対(32)の両側面(22)が、その間に延びている対称軸線(24)に関し40゜または30゜の角度で傾斜していることを特徴とする、請求項7に記載のクランプジョー(2)またはクランプ要素(12)。
【請求項10】
前記クランプピン(14)の前記先端(23)が、0.2ミリメートルと0.4ミリメートルまたは1.88ミリメートルのエッジ長さ或いは0.4ミリメートルと0.6ミリメートルのエッジ長さを備えた長方形の作用面を有していることを特徴とする、請求項6に記載のクランプジョー(2)またはクランプ要素(12)。
【請求項11】
横断面積が0.2ミリメートル×0.4ミリメートルの前記クランプピン(14)の前記先端(23)が、隣接しているクランプピン(14)の先端(23)から0.3ミリメートルだけ突出し、前記隣接しているクランプピン(14)の横断面積が1.88ミリメートル×0.4ミリメートルまたは0.6ミリメートルであることを特徴とする、請求項10に記載のクランプジョー(2)またはクランプ要素(12)。
【請求項12】
互いに隣接しあっている2つの前記クランプジョー(2)の前記凹み(11)が互いに対向し合うように配向されていること、
前記凹み相互の間隔(a)が同じ大きさであること、
を特徴とする、請求項6から11までのいずれか一つに記載のクランプジョー(2)またはクランプ要素(12)。
【請求項13】
複数の前記クランプピン(14)のうちの2つのクランプピンが対(32)を形成していること、
複数の前記クランプピン(14)のうちの5つのクランプピンが、前記対(32)によって形成される軸線に対し垂直に配向された列(31)上に延在していることを特徴とする、請求項6から12までのいずれか一つに記載のクランプジョー(2)またはクランプ要素(12)。
【請求項14】
それぞれのクランプ要素(12)の高さが3.18ミリメートルであること、
それぞれの凹み(11)の深さが同じ大きさに形成されていること、を特徴とする、請求項6から13までのいずれか一つに記載のクランプジョー(2)またはクランプ要素(12)。
【請求項15】
前記クランプ要素(12)と前記クランプピン(14)とがソリッドカーバイド金属から製造され、好ましくは81%の成分率の炭化タングステンと、これに整合した、高い衝撃硬さを有する混合物および粒子とから製造されていることを特徴とする、請求項6から14までのいずれか一つに記載のクランプジョー(2)またはクランプ要素(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のクランプジョーおよび本発明によるクランプジョーで使用するための請求項5の上位概念に記載のクランプ要素に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、表面に複数の半円状の凹みが形成されているクランプジョーが見て取れる。これらの凹みに円形のクランプ要素が挿着され、従ってクランプ要素は凹みの中で回動可能に支持されるとともに、部分的に凹みから突出する。クランプ要素の、締め付け固定される工作物側の表面には、尖って延びるクランプピンが設けられている。クランプピンはクランプ状態で工作物に作用し、適当な締め付け力が作用した時に工作物の中へ侵入して工作物内で塑性変形し、その結果クランプピンと工作物との間で形状拘束的な作用結合が行われる。この場合、クランプ要素はクランプジョーの上面に配置され、この上面から突出している。
【0003】
クランプ要素と工作物との間で確実な継続的な形状拘束的結合を達成するには、クランプ要素がそれぞれの凹み内で回転可能にすることより、締め付けられる工作物の外側輪郭に対するそれぞれのクランプ要素の配向を行わねばならない。
【0004】
しかしながら、クランプ要素が凹み内で回動可能に支持されているので、概して確実な締め付け固定と塑性変形とを達成するには、かなりの締め付け力を適用せねばならないのが欠点である。というのは、クランプピンが工作物と作用接触すると、クランプピンが工作物から離間するからである。従ってどのような締め付け固定状態であっても、工作物に種々のクランプピンの圧こんが残る。圧こんはほとんどランダムに生じるので、締め付け固定解除および再締め付け固定の際にクランプ要素をそれ以上使用することができず、工作物を他の工作機械で締め付け固定することもできない。工作物のこのような損傷は締め付け固定状態の回数が増えるにしたがって増大する。
【0005】
さらに、概して締め付け固定力を十分に工作物に伝達することができるようにするために、クランプ要素はほぼ10ミリメートルの締め付け固定高さで配置されている。その結果、この締め付け固定高さで工作物は損傷する。なお締め付け固定高さとは、工作物の1つの下部エッジから最大締め付け固定高さのレベルまでをいう。
【0006】
特許文献2からは、互いに送り調整可能な2つのクランプジョーを有するクランプ装置が見て取れる。クランプジョーの上面には三角形の複数のクランプ要素が設けられている。この場合、互いに隣接しあって延在しているクランプ要素は、それらの工作物側端面でもって1つの共通の面を形成している。
【0007】
これらのクランプ要素はクランプ面を有しているが、クランプ面には締め付け釘、クランプピン等が装着されておらず、または、一体成形されておらず、その結果クランプ要素と締め付け固定される工作物との間には摩擦作用結合のみが発生するにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1693153A2号明細書
【特許文献2】オーストリア特許第389270B号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、冒頭で述べた種類のクランプジョーまたはクランプ要素を次のように改良すること、すなわちクランプ要素と締め付けられる工作物との間の確実で継続的な作用結合が失われることなく、クランプ要素の締め付け固定高さを3.5ミリメートル以下へ低減できるように改良することである。さらに、クランプ要素により工作物に均一に延在する圧こんが生成され、従って同一に構成されたクランプピンおよびクランプ要素で工作物が既存の圧こんに係合することで、工作物に更なる圧こんを必要とせずに、工作物を複数の異なる工作機械で以前の正確な位置で固定させることができるようにすることである。また、クランプ要素が可能な限り遊びなしにクランプジョーで保持され、よって工作物との作用接触を達成する際にクランプ要素がスリップしたり回転しないように、適用されるクランプ力を工作物に伝達させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明によれば、請求項1および5の特徴部分の構成によって解決される。
【0011】
本発明の他の有利な更なる構成は従属項から明らかである。
【0012】
クランプジョー内の凹みが
、該クランプジョーを平面図で見て三角形の内側輪郭を有していることにより、且つ
三角形の3つの頂点に相当する凹みの3つの先端のうちの1つがクランプ面とは逆の側にあることにより、凹みには、これに整合したクランプ要素を遊びなしに挿着させることができ、その結果クランプ力を発生させると、クランプ要素はこれから
工作物側へ突出しているクランプピンでもって工作物に侵入し、その際クランプ要素は、凹みの、たとえば互いに60゜の角度で延在している2つの側壁に対し押圧され、これによってクランプ力がクランプ要素からクランプジョーへ均一に伝動する。塑性変形を達成させるため、一方では適宜大きな締め付け固定力が必要であり、他方ではクランプ要素の工作物側端面に、送り運動と締め付け固定力とが所定どおりに設定されたときに工作物と点状に作用接触して工作物に侵入する多数のクランプピンが一体成形され、または、装着されている。クランプピンは台形状の物体として形成されて、工作物の材料に適合するように互いに位置決めされ、構成されている。
【0013】
クランプ要素の工作物側端面へのクランプピンの配置は、有利には、多数の圧こんが軸線方向および縦方向に工作物に生じるように均一に行われる。軸線方向への侵入深さの程度は3.5ミリメートルに制限されており、すなわち工作物の下部エッジから測って、最上列の圧こんまたはクランプピンまでに制限されている。このような配置により、圧こんの均一な窪みパターンが生じ、その結果発生した圧こんは、工作物の締め付けを解除した時に、工作物を新たに締め付け固定するときの心合わせ保持手段として用いられる。よって、工作物を何度も締め付け固定しても、それぞれ互いに対をなして配向されている2列の圧こんが生じるにすぎない。
【0014】
すなわち、柔かい金属(たとえばアルミニウム)は硬い金属または鋼とは異なる変形特性を持っているので、クランプピンの幾何学的輪郭を異なる材料の複数の工作物に対して適合させるのが有利であることが明らかになった。
【0015】
さらに、1つの共通の点上に延在している凹みの両側壁が底部から垂直に突出している面からたとえば5゜の角度で傾斜しているのが特に有利である。側壁の内側輪郭は、底部を起点としてクランプジョーの上面方向へ先細りに構成されている必要があり、その結果あり溝状輪郭が発生する。クランプ要素の側面は、側壁の傾斜した延在態様に整合しており、その結果クランプ要素は側方から凹み内へ押し込められ、傾斜して配置される側壁によって上部が支持される。というのは、クランプ要素の外側エッジは側壁の内面に当接するからである。従ってクランプ力が工作物からクランプ要素へ伝達され、クランプピンが工作物の表面に食い込むと、それぞれのクランプ要素は傾斜した側壁によってクランプジョーの底部方向へ押され、その結果クランプ要素は凹みの底部と側壁とに対して押圧される。この構造的プルダウン処置は、クランプ要素とクランプジョーとの間での力伝達を改善させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面には、クランプジョーの本発明による1実施形態と、締め付け固定される工作物の材料が異なる場合に対するクランプ要素の3つの実施形態とが図示されている。
【0017】
【
図1】互いに位置調整可能な2つのクランプジョーを備え、これらのクランプジョー内に、整合されるクランプ要素を受容するための5つの三角形の凹みがそれぞれ設けられているクランプ装置を工作機械に取り付けた斜視図である。
【
図2a】
図1のクランプジョーのうちの1つのクランプジョーの平面図である。
【
図3a】
図1の1つのクランプ要素の第1実施形態の平面図と側面図であり、硬化材料から形成された工作物のためにクランプピンを構成するための寸法を記載した図である。
【
図3b】
図1の1つのクランプ要素の第2実施形態の平面図と側面図であり、鋼から形成された工作物のためにクランプピンを構成するための寸法を記載した図である。
【
図3c】
図1の1つのクランプ要素の第3実施形態の平面図と側面図であり、アルミニウムから成る工作物のためにクランプピンを構成するための寸法を記載した図である。
【
図4】締め付け状態を解消した後の
図1のクランプジョーと工作物との拡大部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、互いに相対的に可動な2つのクランプジョー2から形成されているクランプ装置1が図示されている。クランプジョー2は、主軸3とレバー4とを介して、締め付けられる工作物7がそれらの間に保持されるように移動させることができる。工作物はたとえば工作機械8によって加工され、工作機械8にはフライスヘッドとして構成された工具9が配置されている。工作機械8によって工作物7に大きな加工力が作用し、その結果工作物7は両クランプジョー2の間で確実に且つ継続的に拘束される。クランプ装置1は工作機械8に付設されたテーブル10上に装着され、よって工作機械8に対し位置固定であり、或いは、工作機械8に対し相対的に移動可能である。
【0019】
クランプジョー2はそれぞれ工作物7側に工作物と協働する載置面5とクランプ面6とを有し、載置面とクランプ面とは横断面にてL字状を成すように互いに配向され、すなわち互いに垂直に延在している。工作物7は載置面5上に載置されて、互いに対向しあっている両クランプジョー2の、互いに対向しあっているクランプ面6の間で、締め付け保持される。
【0020】
クランプジョー2と工作物7との間の作用結合を向上させるため、クランプジョー2のクランプ面6のそれぞれには5つの三角形の凹み11が形成され、これら凹みのそれぞれには1つのクランプ要素12が挿着されている。互いに隣接しあっているクランプジョー2の凹み11は有利には互いに整列して延在し、その結果それぞれ2つのクランプ要素12が対を成して互いに対向するように配置されている。1つのクランプジョー2の互いに隣り合っている2つの凹み11の間隔aは同じ大きさに選定されている。
【0021】
図2aおよび
図2bからわかるように、凹み11は、開口端側面13と、これとは逆の側の先端15とを有している。従って先端15はクランプ面6とは逆の側にあり、これに対し開口端側面13はクランプ面6によって形成される面内に延在している。凹み11の底部18にはねじ穴20が穿設されている。
【0022】
さらに、先端15に通じている2つの側壁17は、底部18から垂直に突出する面から傾斜している。傾斜角αは5゜である。この場合両側壁17は、底部18に隣接している側壁17がクランプジョー2の表面領域に延在している側壁17よりも互いに離れて位置するように配向されている。従って両側壁17はあり溝状の受容穴を形成し、この受容穴にクランプ要素12がクランプ面6側から押し込められている。クランプ要素12を凹み11内で固定するため、クランプ要素12に貫通穴20’が形成され、該貫通穴を通じてねじ16が差し込まれる。ねじ16はねじ穴20にねじ込まれ、これによってクランプ要素12が凹み11内で固定される。しかしクランプ力にねじ16が関与するべきでなく、関与してもわずかであるべきである。
【0023】
クランプ要素12を凹み11に挿着すると、クランプ要素12はクランプ面6に対し整列して延在し、これによって凹み11の開口端側面13が閉じられる。クランプ要素12の外側輪郭は凹み11の内側輪郭に適合しており、これによりクランプ要素12は凹み11内に遊びなしに挿着される。特にクランプ要素12の、凹み11の側壁7に隣接して延在しているサイドエッジ19は、垂直線から同じ傾斜角α(5゜)で傾斜している。
【0024】
工作物7に塑性変形を生じさせるため、いかに詳細に説明するように、クランプ要素12に複数のクランプピン14が一体成形され、または、装着されている。クランプピン14は、クランプ要素12とクランプ面6とによって形成される面から工作物7の方向へ垂直に突出している。従って、工作物7の締め付け固定状態では、クランプピン14が工作物の中へ侵入し、クランプ面6とクランプ要素12とは工作物7の表面上にあり、これにより工作物は補助的に摩擦で保持される。
【0025】
図3a、
図3b、
図3cを用いて詳細に説明するクランプピン14は特定の態様で配置されており、すなわち1つの共通の列31にそれぞれ5つのクランプピン14が配置され、2つの列31のそれぞれ5つのクランプピン14に、対32を形成する1つのクランプピン14が付設されている。クランプピン14の対32は、列31によって形成されるクランプピン14に対し垂直に延びる共通の軸線上にある。クランプピン14のこのような配置により、また以下に詳細に説明するクランプピン14の幾何学的サイズにより、クランプピン14のそれぞれの実施形態に対し、圧こん21の統一的パターンが工作物7に生成される。この圧こん21の統一的パターンは他の締め付け状態において使用される。これにより、工作物7を締め付け解除後にクランプジョー12の間の正確に同じ位置で再び固定可能である。このことは工作物7の配向が維持されることを意味しており、よって工作物7を加工するための工作機械8に対する面倒で時間浪費的な心合わせ処置または配向処置を省くことができる。さらに、工作物7に他の不必要な圧こん21が生じない。
【0026】
すべてのクランプピン14は台形状の物体として形成され、その先端23は、横断面にて、クランプ要素12に隣接して延びているクランプピン14のベースよりも小さい。
【0027】
図3aから、硬化金属材料から成る工作物7を固定するための1つのクランプ要素12が見て取れる。工作物7側のクランプ要素12には10個のクランプピン14が一体成形され、これらのクランプピン14は端側面13によって形成される面から突出している。この場合、クランプピン14は互いに対32を成し且つ列31を成して延びるように端側面13に配置されている。クランプピン14の高さは。クランプ要素12の端面から測って0.7ミリメートルであり、その結果先端23は端側面13に対しこの間隔で配置され、従って最大侵入深さを設定している。1つの列31の互いに隣り合っている2つのクランプピン14はそれぞれの側面22でもって90゜角度を成し、0.4ミリメートルの半径で互いに結合されている。
【0028】
クランプピン14の対32はその互いに隣り合う側面の傾斜が異なっており、全体では70゜の角度であるが、それぞれのクランプピン14の右側の側面は40゜の角度で、左側の側面は30゜の角度で傾斜している。
【0029】
それぞれのクランプピンの先端23は0.3ミリメートルのエッジ長さを持つ正方形の面を有している。クランプ要素12の全高は3.18ミリメートルである。右側のクランプピン14の先端23から測って、側面の傾斜がはじまるエッジまでの高さは、0.73ミリメートルに設定されている。これに対し、左側のクランプピン14の左側側面は、側面がはじまるエッジと先端23との間に0.9ミリメートルの間隔を有している。
【0030】
クランプ要素12の側面19は次のように傾斜して構成され、すなわちクランプ要素12を対応的にあり溝状に構成された凹み11内へ押し込むことができて、そこで遊びなしに当接するように構成されている。
【0031】
クランプピン14は縦断面図にて台形状に構成されている。列31に配置されて互いに隣り合って延在する2つのクランプピン14の間隔は2.05ミリメートルである。クランプピン14のこのような構成は特に硬化金属材料に対して優れている。というのは、このようなクランプピン14はこの材料から製造された工作物7に最適に侵入してそこで塑性変形を行い、この塑性変形によりクランプピン14と工作物7との間で形状拘束的作用結合または弾性作用結合が生じるからである。
【0032】
図3bでは、鋼から成る工作物7を締め付け固定するために特に適したクランプ要素12が見て取れる。
図3bのクランプ要素12の寸法は
図3aのクランプ要素の寸法と同一である。列31内にあって互いに隣り合っている2つのクランプピン14の側面22は互いに70゜の角度を成して配置されている。互いに隣り合っている2つのクランプピン14の間の対称線24に関し、1つの側面22は30゜の角度を成して、その横にある側面22は30゜の角度を成して配向されている。それぞれのクランプピン14の先端23は、横断面にて、0.3ミリメートルの側長を持つ正方形状である。互いに隣り合っている2つの側面22の間の半径も0.4ミリメートルである。列31内にあるクランプピン14の間隔は1.7ミリメートルである。
【0033】
図3cから、アルミニウム材料から成る工作物を締め付け固定するためのクランプ要素12が見て取れる。互いに隣り合って対32を成すように配向された2つのクランプピン14の側面22は、70゜の角度で配置されている。クランプピン14の先端23は長方形状に構成され、異なる大きさの横断面を持つ先端32を有している。先端23の同じ横断面を担持している2つのクランプピン14は1つの対32を成している。クランプピン14の第1の対32の側長の1つは0.2ミリメートル、これに対して垂直に延在しているサイドエッジは0.4ミリメートルの長さであり、その結果横断面積は0.08mm
2である。これに隣接して配置されている、クランプピン14の対32は、1.88ミリメートルと0.4ミリメートルまたは0.6ミリメートルの側長を有している。その結果、1つの列31にまとめられているクランプピン14は、互いに交互に配置される異なる大きさの先端23を備えている。クランプピン14の中央の高さは端側面13から0.94ミリメートル離れている。互いに隣り合っている2つの側面22は0.4ミリメートルの半径で互いに結合されている。
【0034】
1つの列31に配置されて互いに隣り合っている2つのクランプピン14の間隔は2.86ミリメートルであり、クランプピン14の高さは側面22の始端から測ってほぼ0.7ミリメートルである。
【0035】
より小さなサイズのクランプピン14は、より大きなサイズのクランプピン14から0.3ミリメートルの間隔で突出している。より小さなサイズのクランプピン14の全高は、端側面13のベースを起点として0.94ミリメートルである。
【0036】
図4から、クランプピン14がどの圧こんを工作物7に形成させているかが見て取れる。さらに、圧こん21の最大高さは、載置面5上に載置されている工作物7の下面から3.5ミリメートルであり、その結果工作物7は狭い範囲で損傷を受けて後加工すればよい。実際には、圧こんの高さは3.18ミリメートル以下である。
【0037】
工作物7を異なる工作機械8に取り付けて、工作物に異なる加工を施す必要がある場合がある。クランプコア14がそれぞれのクランプ要素の端側面13に規則的に配置されているため、工作物7にパーフォレーションまたは圧こん21のパターンが生じ、これらパーフォレーションまたは圧こんのパターンにより、工作物7を他の工作機械8に設けられている同一構成のクランプジョーおよびクランプ要素12で使用できることが保証されている。これを行うため、工作物7をクランプピン14に沿って軸線方向と鉛直方向とにわずかに移動させ、より厳密にはクランプピン14が工作物7内にある圧こん21に係合するまで移動させる。この位置で、互いに対向しあっている両クランプジョー2の送りを行うことができ、その結果クランプピン14が所定の圧こんの中に正確に侵入して、更なる圧こん21が生じたり、更なる圧こん21を必要とすることなく、工作物7を固定させる。
【0038】
さらに、圧こん21を新たに利用することにより、最初のまたは元の締め付け固定状態での工作物7の位置決めが行われ、その結果工作物7を工作機械8に対し新たに配向させる必要がない。このため工作物7を難なく締め付け解除することができ、後の時点で同一のまたは他の工作機械8に正確に位置決め固定して更なる加工を行うことができる。
【0039】
それ故、互いに隣り合っている2つの凹み11の間隔aは同じ大きさに選定され、
図3aないし
図3cに基づいて説明した、それぞれのクランプピン14を形成する台形状物体の幾何学的構成が他の工作機械8で使用される。
【0040】
クランプピン14侵入時の工作物7の変形は送り力と締め付け固定される工作物の材料との双方に依存しているので、工作物7には弾性変形と塑性変形との双方が発生する。
【0041】
クランプ要素12またはクランプピン14に対する十分大きな衝撃硬さまたは強度を達成するため、クランプ要素12とクランプピン14とは焼結ソリッドカーバイド金属材から作製されている。ソリッドカーバイドのそれぞれの成分の混合率と粒径とは、適宜大きな衝撃硬さが生じるように整合されている。特に有利には、クランプ要素12とクランプピン14とが、81%の成分率の炭化タングステンと、8%の成分率のコバルト結合材とから作製されている場合である。さらに、11%の成分率で含まれる他の添加剤が必要である。
【0042】
このような混合物は、ISO4499−2:2008による平均粒径と、ISO4505:1978によるA02B00C00の有孔率と、13.74g/cm
3の密度と、スケール”A”による90.9のロックウェル硬さと、スケール”HV10”による1420のビッカース硬さと、2500Mpa状の横引張り強さと、140エルステッドの保磁力とを有している。
【符号の説明】
【0043】
1 クランプ装置
2 クランプジョー
5 載置面
6 クランプ面
7 工作物
11 凹み
12 クランプ要素
13 クランプ要素の端面
14 クランプピン
15 凹みの先端