(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、前記制御部は、前記圧縮機から吐出される吐出冷媒温度が、目標吐出温度に近づくように、前記膨張弁の開度を制御することを特徴とする冷凍サイクル装置。
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、前記圧縮機の吸込側の圧力は、前記圧縮機の吸込側に設けられた吸込圧力センサにより検出されることを特徴とする冷凍サイクル装置。
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、前記圧縮機の吸込側の圧力が、前記ソレノイド弁が開成される前の吸込圧力に対して許容偏差以上になることは、蒸発器となる前記室内熱交換器または室外熱交換器の温度と、前記室内熱交換器の吹出温度に基づき蒸発圧力の変動を推算することで判断されることを特徴とする冷凍サイクル装置。
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、蒸発器となる前記室内熱交換器または室外熱交換器の中央付近の温度を検出する温度センサを設け、この温度センサで検出された温度に基づいて蒸発圧力の変動を推算し、前記圧縮機の吸込側の圧力が、前記ソレノイド弁が開成される前の吸込圧力に対して許容偏差以上になることを判断することを特徴とする冷凍サイクル装置。
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、前記圧縮機は、密閉ケース内で旋回スクロールの渦巻体と固定スクロールの渦巻体とが互いに噛み合わせられて圧縮室を形成し、前記固定スクロールは、中央部分に吐出ポートが形成されると共に、該吐出ポートの外周側には前記圧縮室に連通するリリースポートと、このリリースポートを開閉するリリース弁が設けられているスクロール圧縮機であることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【背景技術】
【0002】
近年、一般住宅において消費されるエネルギー、即ち、空調機で消費されるエネルギーや給湯機で消費されるエネルギーを低減する観点から、建物の断熱材に高断熱材を用いて熱負荷を低減する傾向が強まっている。また、太陽光発電や太陽熱温水器を装備することにより、1年間の積算消費電力をゼロにする化石燃料ゼロ化住宅を具現する構想もある。
【0003】
このような構想において、空調機や給湯機などの冷凍サイクル装置で用いられている、例えばスクロール圧縮機では、一台で広範囲に容量制御できることが要求されている。即ち、空調機における冷房運転では、運転開始時に室内の温度が高くなっているのが一般的であるため、急速に運転する必要がある。こうした場合、始動時には大容量で高速運転(高速回転)されるが、室内が或る程度冷えて定常運転状態に移行すると、小容量で低速運転(低速回転)される。この定常運転状態での低速運転では、特に最近の省エネルギー化を実施し、高断熱材が配備された建物に設備された空調機で使用される場合を想定すると、非常に低い回転速度で運転が行われることになる。
【0004】
ところが、スクロール圧縮機で過度に低速回転を行うと、構造的にすべり軸受での油膜破断が生じて軸受が損傷し易く、また低速回転であるが故にクランクシャフトを回転させるためのモータ駆動が円滑に行われなくなる等、安定した運転動作が行われ難くなる。そこで、一般に小容量運転時には、回転速度を或る程度維持して容量制御を行うようにし、例えば室内が或る程度冷えたらスクロール圧縮機を停止し、室内の温度が上昇した場合に再び始動する運転パターンを繰り返すようにしている。
【0005】
しかしながら、こうした小容量運転時に停止・始動を繰り返す運転パターンは効率が悪いばかりでなく、快適に空気調和を実施できないため、容量制御を工夫する技術が提案されている。一般に、スクロール圧縮機で容量制御を行う場合、モータ駆動による回転速度を制御するか、或いは一部の構造を改良し、回転速度を一定にして吐出量を可変にする制御を行うか、それらを併用する手法が採用されている。例えば吐出量を可変にする技術として、クランクシャフトの軸方向で封止(シール)を解除して圧縮しない構造にした容量調整機構を備えたスクロール式機械(特許文献1参照)が知られており、また、圧縮途中の冷媒ガスを吸入側に排出して圧縮開始を遅らせるようにした容量制御機構を備えたスクロール圧縮機を搭載する空気調和機(特許文献2参照)が知られている。
【0006】
特許文献1では、圧縮機の一端側に設けた外殻結合金具と非旋回スクロール部材に接続したピストンとの間に形成される高圧室、吐出室、低圧な吸入管をそれぞれソレノイド弁を介在させて配管で結合し、ソレノイド弁をパルス幅調整(PWM)制御してオン(開成)させたときに、高圧室から低圧な吸入管へ向かう管内が連通し、非旋回スクロール部材が外殻結合金具側へ移動し、クランクシャフトの軸方向でのシールが解除されて圧縮しなくなる。また、ソレノイド弁をオフ(閉成)させたときに、高圧室から吐出室へ向かう管内が連通し、非旋回スクロール部材が外殻結合金具と反対側のクランクシャフト側へ移動し、クランクシャフトの軸方向でのシールが行われて通常の圧縮動作が行われる。
【0007】
特許文献1に係るスクロール式機械によれば、通常の容量制御時にはソレノイド弁をオフ(閉成)させて運転させ、小容量制御時にはソレノイド弁をオン(開成)させて冷媒ガスを低圧側の吸入管へ戻すことにより冷媒ガスの吐出量を調整し、0〜100%の広範囲な容量制御を可能にしている。この結果、上述したすべり軸受での油膜破断やトルク変動の問題により実際には実施できないモータ回転速度の下限設定値(モータへの駆動信号では周波数5Hz程度であるが、実際の設計上はそれよりも高い15〜20Hz程度に設定される)以下の超低速運転を行った場合に相当する小容量制御(超小容量運転モード)での圧縮動作が可能となり、その圧縮した冷媒ガスを、吐出管を介して冷凍サイクルへ導くことにより、冷媒ガスを緩やかに循環させることができる。
【0008】
特許文献2では、バイパスポートを設けたスクロール圧縮機と、バイパスポートを吸入圧力雰囲気に開口する流路と、流路を開閉する制御弁と、制御弁を空気調和機の運転負荷に応じて設定された短周期の時間配分による複数の制御パターンにより開閉する制御手段とを備えている。
特許文献2に係るスクロール圧縮機を搭載する空気調和機によれば、圧縮途中の冷媒ガスを吸入室に排出し、吸入完了時の閉じ込め容積を小さくすることにより、60%の容量制御が可能となり、更に、圧縮途中の冷媒ガスを吸込室に排出するための制御弁を短周期の時間配分による複数のパターンにより開閉することで、60〜100%の容量制御運転を段階的に実現している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の冷凍サイクル装置の具体的実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の冷凍サイクル装置の実施例1を
図1〜
図4により説明する。
図1は本発明の実施例1を示す冷凍サイクル装置の概略構成図で、本発明をルームエアコン(空調機)に用いたものである。
【0019】
図1に示す冷凍サイクル装置を、冷房運転時の動作と共に説明する。圧縮機1で圧縮された冷媒は、高圧側接続配管7から四方弁5に流入し、この四方弁5内を通って、室外接続配管8に流出する。その後冷媒は、室外熱交換器2で室外空気と熱交換して放熱することにより凝縮・液化し、膨張弁3によって減圧される。減圧されて低温・低圧となった冷媒は、室内熱交換器4に入り、室内空気を冷却すると共に自らは蒸発・ガス化し、室内接続配管9から前記四方弁5に再び流入後、四方弁5の低圧側接続口から流出して低圧側接続配管10を通り、前記圧縮機1の吸込側へ戻って再度圧縮されるという循環を繰り返す。
【0020】
なお、冷房運転から暖房運転へ切換える場合には、前記四方弁5の冷媒配管接続先を切り替える。暖房運転時には、圧縮機101から吐出された高温・高圧の冷媒は高圧側接続配管7から四方弁5を通り、室内接続配管9へ流出して室内熱交換器4へ流れ、室内空気へ放熱することによって暖房運転を行い、自らは凝縮する。その後凝縮した冷媒は、膨張弁3で減圧され、室外熱交換器2で室外空気と熱交換して蒸発・ガス化し、室外接続配管8から四方弁5に流入した後、低圧側接続配管10へ流れ、圧縮機1の吸込側へ戻って再度圧縮されるという循環を繰り返す。
【0021】
11は、吐出圧力の冷媒ガスを圧縮機1の吸込側に導くバイパス配管(バイパス流路)で、このバイパス配管11は圧縮機吸込側の前記低圧側接続配管10に一端が接続されている。このバイパス配管11には、パルス幅調整(PWM)制御信号により、開成(ON)状態と閉成(OFF)状態に制御されるソレノイド弁12が設けられており、バイパス配管11と前記低圧側接続配管10との連通をON−OFFするように構成されている。
【0022】
例えば、超低負荷運転モード(超小容量運転モード)時には、前記ソレノイド弁12における開成状態と閉成状態とを反復動作させ、吐出側冷媒の吸込側への流入のON−OFFを繰り返すことにより、圧縮機から冷凍サイクルに吐出される冷媒の小容量制御を行う容量調整機構を実現している。
【0023】
次に、
図1に示す冷凍サイクル装置の制御系統について説明する。
図1に示す13は、圧縮機1の吐出側配管(高圧側接続配管7)に取り付けられた吐出温度センサで、圧縮機からの冷媒吐出温度(凝縮器への冷媒入口温度)を検出する。また、14は、室内熱交換器4のほぼ中間位置に取り付けられた室内熱交換器温度センサで、この温度センサ14は、前記室内熱交換器4が蒸発器として機能する冷房運転時には、冷媒の蒸発温度を検出するために用いられる。更に、15は、室外熱交換器2のほぼ中間位置に取り付けられた室外熱交換器温度センサで、この温度センサ15は、前記室外熱交換器2が蒸発器として機能する暖房運転時には、冷媒の蒸発温度を検出するために用いられる。なお、16は前記室内熱交換器4が設けられている部屋の温度を検出する室内温度センサ、17は前記室外熱交換器2の設置付近の外気温度を検出する室外温度センサである。
【0024】
一方、前記圧縮機1にはインバ−タ(モータ駆動回路)18が接続され、このインバ−タ18は商用交流電源19に接続されている。インバータ18は、商用交流電源19の電圧を整流し、指令に応じた周波数の電圧に変換し、その電圧を上記圧縮機1内に設けられたモ−タに出力するようになっている。また、前記インバータ18は制御部20に接続されており、この制御部20からの指令に基づいて前記モータを駆動する。なお、この制御部20には、前記四方弁5、前記膨張弁3、室外ファン21、室内ファン22、前記室内熱交換器温度センサ14、前記室外熱交換器温度センサ15、前記室内温度センサ16、前記室外温度センサ17、前記吐出温度センサ13、吸込圧力センサ23、前記インバータ18、及びリモートコントロール式の操作器(図示せず;以下、リモコンと称す)などがそれぞれ接続されており、この制御部20により、冷凍サイクル装置(ルームエアコン)全体を制御するように構成されている。
【0025】
次に、上述した冷凍サイクル装置における冷房運転時の動作について説明する。冷房運転の開始時には、上記制御部20は、四方弁5を冷房運転時の状態にし、初期値として予め設定されている所定の回転数で圧縮機1、室外ファン21及び室内ファン22を運転する。圧縮機1から吐出される冷媒は、前記四方弁5、室外熱交換器2、膨張弁3、室内熱交換器4、そして再び前記四方弁5を通って前記圧縮機1に戻るという循環を繰り返すことで、冷房運転が為される。前記膨張弁3は例えば電子膨張弁で構成され、初期の所定開度に開くよう電子膨張弁に内蔵されているパルスモータを回転させる。この冷房運転時には、前記室内熱交換器(利用側熱交換器)4は蒸発器として機能する。
【0026】
冷凍サイクル装置としてのルームエアコンでは、前記室内熱交換器4の通風通路入口付近に設けられた室内温度センサ16により室内温度を検出し、また前記リモコンで設定された設定温度との差に応じて、前記制御部20はインバータ18を制御して圧縮機回転数を可変させる。これにより、空調負荷に応じた圧縮機1の運転が行われる。
【0027】
更に、前記吐出温度センサ13の検知温度(吐出冷媒温度)を所定の制御時間毎に検出し、この検知温度と、前記室内熱交換器温度センサ14の検知温度(蒸発温度)、室内温度センサ16の検出温度(室内温度)、前記圧縮機1及び室外ファン21の回転数指令値から決まる目標吐出温度との差に応じて、前記膨張弁3の開度を上記制御時間毎に制御する。この吐出過熱度制御により、圧縮機1の吸込側の吸込過熱度がほぼゼロになるよう制御され、冷凍サイクル装置の成績係数が良好に保たれる。
【0028】
一方、前記吐出温度センサ13で検知される吐出冷媒温度が設定値以上になると、その検知温度が所定の設定値に下がるまで、圧縮機1の運転周波数を低減すると共に、吐出冷媒温度が設定値になるように前記膨張弁3の開度を制御する。この吐出温度制御により、圧縮機1が異常に加熱することを防止し、圧縮機1の焼き付き等による破損を防止する。
【0029】
次に、上述した冷凍サイクル装置における暖房運転時の動作について説明する。暖房運転時には、上記制御部20は、四方弁5を暖房運転側へ切換え、また初期値として予め設定されている所定の回転数で圧縮機1、室外ファン21及び室内ファン22を運転する。圧縮機1から吐出される冷媒は、四方弁5、室内熱交換器4、膨張弁3、室外熱交換器2と順次流れ、再び前記四方弁5を通過して前記圧縮機1に戻るという循環を繰り返すことで、暖房運転が為される。この暖房運転時には、前記室内熱交換器(利用側熱交換器)4は凝縮器として機能する。
【0030】
前記制御部20は、リモコンによる設定温度と、前記室内温度センサ16で検知される室内温度との差を空調負荷として検出し、その空調負荷に応じて圧縮機の運転周波数(インバータ18の出力周波数)を制御する。これにより、暖房負荷に応じた圧縮機1の運転が行われる。
【0031】
更に、前記吐出温度センサ13により吐出冷媒温度を所定の制御時間毎に検出し、この検知された吐出冷媒温度と、室外熱交換器温度センサ15の検知温度(蒸発温度)、室外温度センサ17の検出温度(外気温度)、圧縮機1及び室外ファン21の回転数指令値から決まる目標吐出温度との差に応じて、膨張弁3の開度を上記制御時間毎に制御する。この吐出過熱度制御により、圧縮機1の吸込側の吸込過熱度がほぼゼロになるよう制御され、冷凍サイクル装置の成績係数が良好に保たれる。
【0032】
一方、前記吐出温度センサ13で検知される吐出冷媒温度が設定値以上になると、その検知温度が所定の設定値に下がるまで、圧縮機1の運転周波数を低減すると共に、吐出冷媒温度が設定値になるように前記膨張弁3の開度を制御する。この吐出温度制御により、圧縮機1が異常に加熱することを防止し、圧縮機1の焼き付き等による破損を防止する。
【0033】
次に、超低負荷時に圧縮機から冷凍サイクルに吐出される冷媒の小容量制御を行う容量調整機構を使用した制御、即ち超低負荷運転モード(超小容量運転モード)について説明する。この超低負荷運転モードで超小容量制御を行う容量調整機構では、前記バイパス配管11に設けられた前記ソレノイド弁12を、パルス幅調整(PWM)制御により、開成(ON)状態と閉成(OFF)状態に制御することにより、容量調整運転を行う。
【0034】
ソレノイド弁12が開成状態の時には、圧縮室1の出口に設けられた逆止弁121(
図10参照)が閉じ、吐出冷媒ガスはバイパス配管11を通って低圧側接続配管(吸込管)に流れる。このため、冷媒は四方弁5側へは流れず、冷凍サイクルでの冷媒流量が減少するから、能力が減少する。一方、前記ソレノイド弁12を閉成状態にすると、圧縮機からの吐出冷媒ガスを前記四方弁5側に流すことができる。
【0035】
従って、前記容量調整機構を働かせる超低負荷運転モード時には、前記ソレノイド弁12を開成状態と閉成状態とに反復動作させ、バイパス配管11の開閉を繰り返すことで容量調整を行うことができる。
【0036】
このソレノイド弁12のPWM制御時の蒸発圧力の変動の様子を
図2により説明する。PWM制御信号がON(ソレノイド弁が開成状態)となることにより、蒸発圧力は上昇する。また、PWM制御信号がOFF(ソレノイド弁が閉成状態)になると前記蒸発圧力は低下する。このようにソレノイド弁12のON−OFFに伴い、蒸発圧力の変動が繰り返えされる。
【0037】
上記バイパス配管11を利用した容量調整運転時の蒸発圧力の変動幅をΔP1とする。また、この容量調整運転時には蒸発圧力は全体的に上昇し、変動する蒸発圧力の平均圧力は、容量調整運転前の蒸発圧力に対しΔP2だけ上昇する。容量調整運転時のΔP1が大きいとそれに伴い蒸発温度が変動し、蒸発器での熱交換量が変動するため、冷凍サイクル装置の能力が変動し、吹出し温度の変動が発生する。このため、快適な空調を維持するためにはΔP1を小さくすることが望ましい。また、ΔP2が大きいと吸熱量が減少するため、熱交換量も減少する。前記ΔP1及びΔP2を小さくするためにはPWM制御信号のデューディ周期T(=τ1+τ2)を小さくすればよいが、PWM容量制御運転ではソレノイド弁12の開閉時に吐出冷媒ガスの逆流、バイパス配管11の圧力損失等によりエネルギー損失が発生する。このため、効率よく容量制御運転するためには前記デューティ周期Tを小さくしないほうが好ましい。
【0038】
そこで、本実施例では、高効率で且つ蒸発圧力変動の小さい快適な空調を行うため、
図3及び
図4に示すフローチャートに従って、適切なデューティ周期を決定し、容量調整運転制御を行うようにしている。
【0039】
まず、
図3に示すフローチャートにより、圧縮機回転数制御ルーチンを説明する。圧縮機の回転数は、前述したように、室内熱交換器4の通風通路入口付近に設けられた室内温度センサ16によって検出された室内温度Tea
inを読み込み(ステップ31)、リモコンから設定された設定温度(室内温度目標値)T
*ea
inとの差ΔTea
inを求め(ステップ32)、この差に応じて、インバータ18により圧縮機1の回転数を可変させる(ステップ33,34)。ここで、前記設定温度と検出される前記室内温度との差が小さくなるにつれ、圧縮機回転数f
zは小さくなるように制御される。
【0040】
ステップ35では、圧縮機回転数f
zが、容量制御運転開始時の回転数f
zoptより小さくなると、圧縮機回転数はf
zoptに固定され、室内温度と室内温度目標値との差から決められる初期デューティ比d(d=τ1/(τ1+τ2))を決定し(ステップ36,37)、ソレノイド弁12をON−OFFするPWM容量制御運転を行う。このとき、PWM制御信号がONになると同時に制御部のタイマーもONにし、経過時間τ1の計測を始める。また、吸込圧力センサ23による吸込圧力の測定を開始し、PWM制御信号がONになる前の吸込圧力Ps0に比べ、計測される吸込圧力Psが予め設定される許容偏差ΔPを超えるまでPWM制御信号はONのままとなり、圧力測定が繰り返される(ステップ38〜41)。計測されるPsと初期吸込圧力Ps0の差がΔPを超えると、PWM制御信号はOFFとなり、ソレノイド弁12は閉成状態になると共に、タイマーをOFFにし、経過時間測定を終了し、τ1を開成時間として決定する(ステップ42)。この開成時間τ1と現在のデューティ比dとから、閉成時間τ2を決定し、このデューティ周期によりPWM容量制御運転が為される(ステップ43)。これにより、ソレノイド弁の開閉による吸込圧力の変動はΔPの範囲に決められるため、前記ΔPを、空調快適性を損なわない範囲に設定することにより、最適なデューティ周期により運転することが可能となる。
【0041】
図4は本実施例の冷凍サイクル装置における膨張弁開度制御ルーチンを説明するフローチャートである。
図3に述べた圧縮機回転数制御ルーチンによりPWM容量制御運転が始まると蒸発温度が上昇し、容量制御運転前の蒸発圧力に対しΔP2(
図2参照)だけ大きくなる。このΔP2をできるだけ小さくするために膨張弁3の開度制御が行われる。
【0042】
まず、ステップ45で、冷凍サイクルの状態量が読み込まれる。即ち、前記各センサで検出された室内温度、室外温度、室内熱交換器温度、室外熱交換器温度などが読み込まれ、更に圧縮機1の回転数、室内外ファン21,22の回転数、膨張弁3の開度などが読み込まれる。次に、ステップ46で、PWM制御信号がOFFの時には、膨張弁3は、吐出温度センサ13の検知温度(吐出冷媒温度)Tdが、室外熱交換器温度センサ15の検知温度(凝縮温度)Tao、室外温度センサ17の検出温度(外気温度)Tai、圧縮機1の回転数f
z及び室外ファン21の回転数指令値fpから決まる目標吐出温度Td
*に近づくように開度を制御される(ステップ47〜51)。
【0043】
前記ステップ46で、PWM制御信号がONの時には、その時のデューティ比dで容量制御運転開始時の圧縮機回転数f
zoptを除した修正圧縮機回転数f
z′を決定し(ステップ52)、この修正圧縮機回転数f
z′と、室外熱交換器温度センサ15の検知温度(凝縮温度)Tao、室外温度センサ17の検出温度(外気温度)Tai、室外ファン21の回転数指令値fpから決まる目標吐出温度Td
*に、吐出温度センサ13の検知温度(吐出冷媒温度)Tdが近づくように、膨張弁3を制御するルーチンに切り替える(ステップ52〜57)。PWM容量制御運転時はデューティ比dが大きいほどサイクル冷媒循環量が減少するため、これにより膨張弁開度はPWM容量制御運転時の減少した冷媒循環量に対しても適切な開度に変更することができ、ΔP2の上昇を防止することができる。
【0044】
本実施例の冷凍サイクル装置によれば、ソレノイド弁12の開閉による吸込圧力(蒸発圧力)の変動は、前記許容偏差ΔPに基づく範囲に決められるため、蒸発圧力の変動を一定範囲内に抑えることが可能となり、空調などの快適性を向上でき、しかもデューティ周期を短くし過ぎることによる損失増加も防止することができるから、高効率な容量制御運転も可能となる。また、0〜100%の広範囲な容量制御を簡便な構造で実現できる効果も得られる。
【0045】
従って、本実施例によれば、超小容量運転モードでも効率の良い運転制御が可能でしかも快適性も向上できる冷凍サイクル装置を得ることができる。
【実施例2】
【0046】
図5は、本発明の実施例2を示す冷凍サイクル装置の概略構成図で、実施例1と同様、ルームエアコンに用いたものである。この
図5において、上記
図1と同一符号を付した部分は同一または相当する部分を示している。また、この実施例2おいて、実施例1との相違点は、吸込圧力センサを取り除き、代わりに室内熱交換器4の通風通路出口付近に吹出温度センサ24を設け、この吹出温度センサ24によって吹出温度を検出するようにしている点である。
【0047】
小容量制御を行う容量調整機構を使用した制御を行う場合、PWM制御信号がON(即ち、ソレノイド弁12が開成状態)となることにより、蒸発圧力は上昇し、PWM制御信号がOFF(即ち、ソレノイド弁12が閉成状態)になると蒸発圧力は低下する。この時、蒸発温度も変動することとなり、蒸発器での熱交換量が変動するため、冷凍サイクルが変動し、吹出温度の変動や冷凍能力の変動が発生する。このため、蒸発器側熱交換器(冷房運転時は室内熱交換器4、暖房運転時は室外熱交換器2)の温度と、前記吹出温度センサ24により計測された室内熱交換機4の吹出温度とにより、蒸発圧力の変動を推算できる。
【0048】
本実施例2の冷凍サイクル装置における圧縮機回転数制御ルーチンを
図6により説明する。圧縮機1の回転数は、前述したように、室内熱交換器4の通風通路入口付近に設けられた室内温度センサ16によって検出された室内温度Tea
inを読み込み(ステップ31)、リモコンから設定された設定温度(室内温度目標値)T
*ea
inとの差ΔTea
inを求め(ステップ32)、この差に応じて、インバータ18により圧縮機1の回転数を可変させる(ステップ33,34)。ここで、前記設定温度と検出される前記室内温度との差が小さくなるにつれ、圧縮機回転数f
zは小さくなるように制御される。
【0049】
ステップ35では、圧縮機回転数f
zが、容量制御運転開始時の回転数f
zoptより小さくなると、圧縮機回転数はf
zoptに固定され、室内温度と室内温度目標値との差から決められる初期デューティ比dを決定し(ステップ36,37)、ソレノイド弁12をON−OFFするPWM容量制御運転を行う。このとき、PWM制御信号がONになると同時に制御部のタイマーもONにし、経過時間τ1の計測を始める。また、蒸発器側となる熱交換器の温度センサ(14または15)による蒸発器側熱交換器温度Tev0の測定を開始し(ステップ61)、更にその測定開始時の蒸発器側熱交換器温度Tev0と、前記吹出温度センサ24で検出された室内熱交換器4の吹出温度Tea
outから、予め設定され制御定数として保持する表に従い、許容偏差ΔTevを算出する(ステップ62)。PWM制御信号がONになる前の蒸発器側熱交換器温度Tev0に比べ、計測される蒸発器側熱交換器温度Tevが前記許容偏差ΔTevを超えるまでPWM制御信号はONのままとなり、蒸発器側熱交換器温度Tevの測定が繰り返される(ステップ63〜65)。計測される蒸発器側熱交換器温度Tevと初期熱交換器温度Tev0の差が前記許容偏差ΔTevを超えると、PWM制御信号はOFFとなり、ソレノイド弁12は閉成状態となると共に、タイマーをOFFにして経過時間測定を終了し、τ1を開成時間として決定する。このτ1と現在のデューティ比dとから、閉成時間τ2を決定し、このデューティ周期によりPWM容量制御運転が為される(ステップ66,67)。
【0050】
一方、膨張弁3の開度制御は、
図4に示した実施例1での膨張弁開度制御ルーチンと同じルーチンに従って制御される。
本実施例によれば、ソレノイド弁12の開閉による吸込圧力(蒸発圧力)の変動は、前記許容偏差ΔTevに基づく範囲に決められるため、前記許容範囲ΔTevを適切な範囲に設定することにより、蒸発圧力を計測するための圧力センサ(吸込圧力センサ)がなくても蒸発圧力の変動を一定範囲内に抑えることが可能となり、より安価に製作でき、しかも空調快適性が高く高効率な容量制御運転が可能な冷凍サイクル装置を実現できる。
【実施例3】
【0051】
図7は、本発明の実施例3を示す冷凍サイクル装置の概略構成図で、実施例1や2と同様、ルームエアコンに用いたものである。この
図7において、上記
図1や
図5と同一符号を付した部分は同一または相当する部分を示している。また、この実施例3おいて、実施例1や2との相違点は、実施例1における吸込圧力センサ23や、実施例2における室内熱交換器4の通風通路出口付近に設けられた吹出温度センサ24を取り除いた点である。
【0052】
小容量制御を行う容量調整機構を使用した制御を行う場合、PWM制御信号がON(即ち、ソレノイド弁12が開成状態)となることにより、蒸発圧力は上昇し、PWM制御信号がOFF(即ち、ソレノイド弁12が閉成状態)になると蒸発圧力は低下する。この時、蒸発温度も変動することとなり、蒸発器での熱交換量が変動するため、冷凍サイクルが変動し、吹出温度の変動や冷凍能力の変動が発生する。このため、蒸発器側熱交換器(冷房運転時は室内熱交換器4、暖房運転時は室外熱交換器2)の温度を計測することにより、蒸発圧力の変動を推算して制御を行うことができる。
【0053】
前述したように、通常運転時には、蒸発器側熱交換器はその出口において吸込過熱度がゼロ、即ち乾き度が1となるように、吐出過熱度制御が為されて運転される。蒸発器側熱交換器の入口では、通常乾き度は0.1〜0.3程度であるため、熱交換器内では入口から出口に向かい次第に乾き度が大きくなるような分布を持つ。容量制御運転時には冷媒の循環量が減少し、蒸発器側熱交換器に流入してくる冷媒の量に対し、蒸発器側熱交換器から流出していく冷媒量は減少するため、蒸発圧力が上昇し、蒸発温度が上昇するが、空気との熱交換により蒸発器内の液冷媒は液相から気相に相変化し、乾き度が大きくなっていく。従って、蒸発器側熱交換器内では、その出口側から徐々に乾いていき、出口に近い側から熱交換量が極端に小さくなる。熱交換器温度センサ(14または15)を当該熱交換器の中央付近に配置した場合、このセンサにより測定される蒸発器側熱交換器温度(蒸発器温度)Tevは
図8に示すようになる。即ち、PWM制御信号がONになると前記蒸発器温度Tevは緩やかに上昇し、熱交換器の出口側から徐々に乾いていくことから、前記熱交換器温度センサ(14または15)が設置されている付近が乾いてくると測定温度は急激に上昇する。このため、蒸発器側熱交換器内の温度測定位置により、蒸発器内の乾き度分布を把握することが可能になる。従って、PWM制御信号をOFFにするタイミングを、前記蒸発器温度の許容偏差ΔTevを急激な温度上昇が起こった後の値とすることにより、温度測定位置での乾き具合に応じてデューティ周期Tを決めることができる。
【0054】
前記熱交換器温度センサ14または15の設置位置を本実施例では熱交換器の中央付近としたが、空調能力の変動を適切に許容できる範囲になるように、前記設置位置を適宜選択すると良い。
【0055】
本実施例3の冷凍サイクル装置における圧縮機回転数制御ルーチンを
図9により説明する。圧縮機1の回転数は、前述したように、室内熱交換器4の通風通路入口付近に設けられた室内温度センサ16によって検出された室内温度Tea
inを読み込み(ステップ31)、リモコンから設定された設定温度(室内温度目標値)T
*ea
inとの差ΔTea
inを求め(ステップ32)、この差に応じて、インバータ18により圧縮機1の回転数を可変させる(ステップ33,34)。ここで、前記設定温度と検出される前記室内温度との差が小さくなるにつれ、圧縮機回転数f
zは小さくなるように制御される。
【0056】
ステップ35では、圧縮機回転数f
zが、容量制御運転開始時の回転数f
zoptより小さくなると、圧縮機回転数はf
zoptに固定され、室内温度と室内温度目標値との差から決められる初期デューティ比dを決定し(ステップ36,37)、ソレノイド弁12をON−OFFするPWM容量制御運転を行う。このとき、PWM制御信号がONになると同時に制御部のタイマーをONにし、経過時間τ1の計測を始める。また、蒸発側となる熱交換器の温度センサ(14または15)による蒸発器側熱交換器温度(蒸発器温度)Tev0の測定を開始し(ステップ61)、更にその測定開始時の蒸発器温度Tev0と、蒸発器となる室内熱交換器4或いは室外熱交換器2の通風通路入口付近に設けられた室内温度センサ16或いは室外温度センサ17により測定される空気温度TaiまたはTaoから、予め設定され、制御定数として保持する表に従い、許容偏差ΔTevを算出する。この許容偏差ΔTevは、前記熱交換器温度センサ14または15が設置されている温度測定位置で、熱交換器が乾く(冷媒の乾き度が大きくなる)ことにより、急激な温度上昇が起こった後の値となるよう設定する(ステップ68)。PWM制御信号がONになる前の熱交換器温度Tev0に比べ、計測される熱交換器温度Tevが許容偏差ΔTevを超えるまでPWM制御信号はONのままとなり、蒸発器側熱交換器温度Tevの測定が繰り返される(ステップ63〜65)。計測される蒸発器側熱交換器温度Tevと初期熱交換器温度Tev0の差が前記許容偏差ΔTevを超えると、PWM制御信号はOFFとなり、ソレノイド弁12は閉成状態になると共に、タイマーをOFFにして経過時間測定を終了し、τ1を開成時間として決定する。このτ1と現在のデューティ比dとから、閉成時間τ2を決定し、このデューティ周期によりPWM容量制御運転される(ステップ66,67)。
【0057】
一方、膨張弁3の開度制御は、
図4に示した実施例1での膨張弁開度制御ルーチンと同じルーチンに従って制御される。
本実施例によれば、ソレノイド弁12の開閉による吸込圧力(蒸発圧力)の変動は、前記許容偏差ΔTevに基づく範囲に決められるため、前記許容範囲ΔTevを適切な範囲に設定することにより、蒸発圧力を計測するための吸込圧力センサ23(
図1参照)や室内への空気吹出温度を計測するための吹出温度センサ24(
図5参照)がなくても、蒸発圧力の変動を一定範囲内に抑えることが可能となり、更に安価に製作できる上に、空調快適性が高く高効率な容量制御運転が可能な冷凍サイクル装置を実現できる。
【0058】
次に、本発明の上述した各実施例の冷凍サイクル装置に用いられる容量制御圧縮機の一例を説明する。
図10は本発明に用いられる容量制御圧縮機の一例としてのスクロール圧縮機を示す縦断面図、
図11は
図10に示すスクロール圧縮機の通常運転時(容量調整機構のソレノイド弁12が閉成状態にある運転モード時)の冷媒ガスの流れを説明する要部拡大断面図、
図12は
図10に示す容量制御圧縮機のバイパス運転時(容量調整機構のソレノイド弁12が開成状態にある運転モード時)の冷媒ガスの流れを説明する要部拡大断面図である。
【0059】
スクロール圧縮機1は、冷媒ガスを吸入する吸入管113と、圧縮された冷媒ガスを吐出する吐出管114とが設けられた密閉ケース(チャンバ)115内に、渦巻状のラップを有する固定スクロール102と、この固定スクロール102と噛合う渦巻状のラップを有する旋回スクロール101とで構成された圧縮機構部が設けられている。また、この圧縮機構部の下方にはロータ100a及びステータ100bから成るモータ100が設けられ、前記ロータ100aには回転主軸となるクランク軸106が一体に連結されている。このクランク軸106はフレーム105に設けられた主軸受105aと、密閉ケース115内の下方の下フレーム111に設けられた副軸受112とにより回転支持されている。前記旋回スクロール101の背面には旋回軸受130が設けられており、前記クランク軸106の上端側に設けられた偏心部106aは前記旋回軸受130に挿入されている。107はオルダムリング(自転防止部材)で、このオルダムリング107により、前記クランク軸106が回転すると、旋回スクロール101は自転することなく旋回運動を行い、前記吸入管113から吸入された冷媒ガスを圧縮する。
【0060】
前記旋回スクロール101及び固定スクロール102のそれぞれの端板に設けられた前記渦巻状ラップは、互いに巻角が異なる非対称ラップに構成されており、これにより前記旋回スクロール101と固定スクロール102との噛合いにより旋回スクロールラップの内線側と外線側にそれぞれ形成される2つの圧縮室の最大密閉容積が異なる非対称スクロール形状を成している。
【0061】
即ち、旋回スクロール101及び固定スクロール102のインボリュート曲線で形成された各渦巻状ラップを互いに噛み合わせることで、旋回スクロール101の巻き終わり側のラップの外線側と内線側にそれぞれ圧縮室が形成されるが、外線側に形成される圧縮室と、内線側に形成される圧縮室とは大きさが異なり、クランク軸106の軸回転に対して位相が約180度ずれて形成されているものである。
【0062】
具体的には、前記固定スクロール102は、中央近くに吐出ポート108が開口されており、その渦巻状ラップの内線側の巻き終わりが、旋回スクロール101の渦巻状ラップの巻き終わり付近まで約180度延長している。このため、旋回スクロール101及び固定スクール102の各渦巻状ラップを組み合わせ圧縮室を形成したとき、旋回スクロール101の渦巻状ラップの外線側と固定スクロール102の渦巻状ラップの内線側とにより閉じ込められて形成される第1の圧縮室と、旋回スクロール101の渦巻状ラップの内線側と固定スクロール102の渦巻状ラップの外線側とによって閉じ込められて形成される第2の圧縮室とは大きさが異なり、クランクシャフト106の回転に対して位相が約180度ずれて形成される。
【0063】
また、このスクロール圧縮機では、固定スクロール102における吐出ポート108の外周側には圧縮室へ連通するリリースポート125が形成されており、このリリースポート125には過圧縮防止弁であるリリース弁124が設けられている。固定スクロール102の天板(端板上面)に取り付けられた吐出ヘッドカバー118は、前記吐出ポート108及びリリース弁124を覆って吐出ヘッド空間123を形成すると共に、所定の箇所に設けられた貫通孔119を開成又は閉成するための逆止弁作用を持つ吐出弁121 を備えている。
【0064】
更に、バイパス配管11は、前記吐出ヘッド空間123内の冷媒ガスを密閉ケース115外へ導くもので、吐出ヘッドカバー118に一端側が結合され、密閉ケース115を貫通し、且つ他端側が密閉ケース115外へ引き出されている。このバイパス配管11の他端側は、冷媒ガスを吸入するための前記吸入管113と連通されており、また前記バイパス配管11の途中にはソレノイド弁12が設けられている。このソレノイド弁12は、上述した各実施例で説明したパルス幅調整(PWM)制御信号により、開成状態と閉成状態とに駆動制御されるように構成されている。
【0065】
前記吐出ヘッドカバー118、バイパス配管11、及びソレノイド弁12は、ソレノイド弁12が開成状態としたときに、吐出ヘッド空間123内の冷媒ガスをバイパス配管11から吸入管113へ導くためのバイパス流路を形成している。また、超小容量運転モード時にはソレノイド弁12における開成状態と閉成状態とを反復動作させ、バイパス流路の使用の有無を繰り返すことにより、小容量制御を行うための容量調整機構として働かせる。
【0066】
前記吸入管113は、冷凍サイクルの冷媒ガスを取り入れるためのもので、固定スクロール102に連連している。前記密閉ケース115内のクランク軸106の下端側は油を貯める油貯め116となっている。また、クランク軸106における前記ロータ100aと前記副軸受112との間には回転を安定させるためのフライホイール117が設けられている。
【0067】
固定スクロール102、旋回スクロール101 、及びフレーム105により形成される背圧室(中間室)109には、前記油貯め116から供給される油が、クランク軸106の偏心部106aの周りに設けられた旋回軸受130を通って導かれる。背圧室109では、油中の冷媒ガスが発泡して圧力上昇したとき、その上昇圧力を制御弁(図示せず)で吸入側に逃がして所定の圧力レベルを保持するように構成されている。この吸入側は固定スクロール102の渦巻体の外周に設けられた固定外周溝に達通しているが、この固定外周溝は冷媒ガスの吸込口に達通しているため、固定外周溝内は常に吸入圧となる。旋回スクロール101においては、中央部分に吐出圧力が作用し、その外周側の部分には中間圧力が作用する。このため、旋回スクロール101は固定スクロール102に対して適正な圧力で押し付けられ、スクロールラップ間の軸方向におけるシールが保たれる。
【0068】
このスクロール圧縮機の場合、圧縮室で圧縮された冷媒ガスが前記吐出ヘッド空間123内の圧力以上になると、前記圧縮室の冷媒ガスは、前記リリースポート125及びリリース弁124を介して吐出ヘッド空間123に吐出される。前記吐出ヘッド空間123内の圧力未満の場合には、前記リリース弁124は閉じられ、吐出ポート108から前記吐出ヘッド空間123内に吐出され、更に前記貫通孔119から吐出弁121を押しのけて吐出室103に吐出される。吐出室103に吐出された冷媒ガスは、前記固定スクロール102及びフレーム105と前記密閉ケース115との間に形成された通路を通って、モータ100が設けられている吐出空間104に流入し、ここから前記吐出管114を介して冷凍サイクルへと吐出される構成となっている。従って、前記密閉ケース115内は吐出圧力の空間となっている高圧チャンバ方式の構造となっている。
【0069】
スクロール圧縮機1の外部には、モータ100を駆動するためのモータ駆動回路であるインバータ18と、前記ソレノイド弁12の開成状態と閉成状態とを駆動制御するためのパルス幅調整制御信号を生成するソレノイド駆動回路12aと、これらインバータ18及びソレノイド駆動回路12aの動作を操作指示により制御する操作指示制御手段としての制御部20とが備えられている。
【0070】
このスクロール圧縮機の圧縮動作は、ソレノイド弁12の閉成状態での第1の運転モードと、ソレノイド弁12の開成状態での第2の運転モードとに分けられる。
図11は、スクロール圧縮機に備えられる容量調整機構のソレノイド弁12が閉成状態にある第1の運転モードのときの冷媒ガスの流れを示している。
【0071】
第1の運転モードでは、ソレノイド駆動回路12aがパルス幅調整制御信号の矩形波の立ち下がり区間の周期τ2でソレノイド弁12を閉成状態にすると共に、インバータ18がモータ100を駆動してロータ100a及びクランク軸106を回転させる。これに伴って旋回スクロール101が旋回運動を開始する。この動作により、旋回スクロール101及び固定スクロール102の渦巻体の噛み合いにより形成された第1の圧縮室及び第2の圧縮室がその容積を減少しながら中心方向に移動する。
【0072】
これにより、吸入管113から流入した冷媒ガスは、前記第1の庄縮室及び第2の圧縮室で圧縮され、高圧化された冷媒ガスが、固定スクロール102に形成された吐出ポート108から吐出ヘッド空間123に吐出される。この圧縮の過程で吐出ヘッド空間123の圧力よりも圧縮室の圧力の方が高くなると、前述したように前記リリースポート125及びリリース弁124を介して高圧化された冷媒ガスが吐出ヘッド空間123に吐出される。
【0073】
尚、リリース弁124は、押さえ部126の先端側に取り付けられたコイルばね127の先端に装着されている弁板部分を示すものであるが、押さえ部126やコイルばね127も含んだリリース弁機構部全体をリリース弁と呼ぶこともある。
【0074】
前記吐出ヘッド空間123の冷媒ガス圧力が吐出圧力よりも僅かに高く、吐出室103の圧力よりも高くなると、吐出ヘッドカバー118の貫通孔119を覆う吐出弁121を押し開き、冷媒ガスは吐出室103に吐出される。
【0075】
前記第1の運転モードでは、前記ソレノイド弁12を閉成状態にしてバイパス配管11を使わずに、冷媒ガスを冷凍サイクル側に流すので、ロード運転と呼んでも良い。
【0076】
図12は、スクロール圧縮機に備えられる容量調整機構のソレノイド弁12が開成状態にある第2の運転モードのときの冷媒ガスの流れを示している。
【0077】
第2の運転モードでは、ソレノイド駆動回路12aがパルス幅調整制御信号の矩形波の立ち上がり区間の周期τ1でソレノイド弁12を開成状態とすると共に、インバータ18がモータ100を駆動してロータ100a及びクランクシャフト106を回転させる。これに伴って、旋回スクロール101が旋回運動を開始する。この動作により、前記第1の運転モードと同様に、旋回スクロール101及び固定スクロール102の渦巻体の噛み合いにより形成された第1の圧縮室及び第2の圧縮室がその容積を減少しながら中心方向に移動する。
【0078】
この第2の運転モードでは、ソレノイド弁12が開成状態となっているため、前記吐出ヘッド空間123内の冷媒ガスは、前記吐出ヘッド空間123と前記吸入管113を接続している前記バイパス配管11を介して、吸入管113へ流れ込む。このため前記吐出ヘッド空間123内の圧力は、吸入圧力よりも僅かに高い程度のほぼ吸入圧力まで低下する。
【0079】
このため、吐出ヘッド空間123の圧力は吐出室103の圧力よりも低くなり、吐出ヘッドカバー118の貫通孔119を覆う吐出弁121が塞がれるので、冷媒ガスは吐出室103には吐出されない。この第2の運転モードの状態では、吸入管113から流入した冷媒ガスが第1の圧縮室及び第2の圧縮室で圧縮されると、その圧力は前記吐出ヘッド空間123の圧力よりも高くなるので、冷媒ガスは、前記リリースポート125及びリリース弁124を介して吐出ヘッド空間123に吐出される。また、前記リリースポート125の部分よりも更に中心側まで移動した圧縮室内の冷媒ガスは、吐出ポート108から吐出ヘッド空間123に吐出される。吐出ヘッド空間123に吐出された冷媒ガスは、前記バイパス配管11及び開成状態のソレノイド弁12を通って前記吸入管113へ流れる。
【0080】
前記第2の運転モードでは、前記ソレノイド弁12を開成状態にしてバイパス配管11から冷媒ガスを吸入管113側に戻し、冷媒ガスを冷凍サイクル側には吐出しないので、アンロード運転と呼んでも良い。
【0081】
尚、前記リリースポート125とリリース弁124は、全ての回転角度領域の圧縮室と連通される位置に設けられていることが望ましい。その理由は、スクロールラップでの内部圧縮を回避でき、アンロード運転での圧縮動作が小さくなるためである。
【0082】
実施例1に係るスクロール圧縮機では、インバータ18によるモータ100の駆動と共に、ソレノイド駆動回路12aからのパルス幅調整制御信号の矩形波の立ち下がり区間の周期τ2でソレノイド弁12を閉成状態とするロード運転(第1の運転モード)と、前記矩形波の立ち上がり区間の周期τ1でソレノイド弁12を開成状態とするアンロード運転(第2の運転モード)とを切り替えて、容量制御を行うことができる。
【0083】
スクロール圧縮機を比較的高速で運転する高速運転モード時でも、前記ソレノイド弁12の開閉による容量制御も可能であるが、高速回転から、モータ駆動による回転速度の下限設定値よりも幾分高い所定の設定値までの回転範囲では、インバータ18によるモータ100の回転数制御を実施し、前記所定の設定値以下の低速回転範囲で更に容量を低減させる必要がある場合には、小容量制御を行う前記容量調整機構(ソレノイド弁によるバイパス通路の開閉制御)を働かせて、超小容量運転モードとして、前記ロード運転とアンロード運転との比率を変えて運転することが好ましい。
【0084】
上述したような容量調整機構を備えたスクロール圧縮機では、簡便な構造の容量調整機構により、前記超小容量運転モード時にも効率良く小容量制御を行うことができる。即ち、モータ駆動による回転速度の下限設定値(モータ100への駆動信号では周波数5Hz程度)以下の超低速運転を行った場合に相当する超小容量制御(超小容量運転モード)での圧縮動作を、モータ駆動の効率を劣化させることなく実行可能となり、0〜100%の広範囲な容量制御を実現できる優れたスクロール圧縮機が得られる。また、本実施例のスクロール圧縮機に備えられている前記容量調整機構は、簡便な構造であるから、スクロール圧縮機の低コスト化、小型化、軽量化及び量産化も容易に実現できる。
【0085】
以上述べたように、本実施例の冷凍サイクル装置によれば、ロード運転とアンロード運転の切り替え時間の周期であるデューティ周期が、蒸発圧力の偏差が一定値以内になるように制御されるので、吸込圧力の上昇及び変動を閾値以内に抑えることが可能となり、快適な空調など快適性を向上することができる。しかも本実施例によれば、デューティ周期を短くし過ぎることによる損失増加も防止できるから、効率の高い運転も実現でき、高効率で且つ0〜100%の広範囲な容量制御が可能となる優れた性能を持つ冷凍サイクル装置を実現できる。また、本実施例によれば、高効率で広範囲な容量制御を、簡単な構成で実現できるから、低コスト化も可能になる。