(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965896
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】キシロース醗酵微生物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/19 20060101AFI20160728BHJP
C12P 7/06 20060101ALI20160728BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20160728BHJP
C12R 1/865 20060101ALN20160728BHJP
【FI】
C12N1/19ZNA
C12P7/06
C12N15/00 A
C12N1/19ZNA
C12R1:865
C12P7/06
C12R1:865
【請求項の数】10
【全頁数】70
(21)【出願番号】特願2013-501165(P2013-501165)
(86)(22)【出願日】2012年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2012055294
(87)【国際公開番号】WO2012115277
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年2月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-40651(P2011-40651)
(32)【優先日】2011年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発(先導技術開発)/セルロースエタノール高効率製造のための環境調和型統合プロセス開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100147131
【弁理士】
【氏名又は名称】今里 崇之
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】畠中 治代
【審査官】
鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
BIEGANOWSKI, P. et al.,Synthetic lethal and biochemical analyses of NAD and NADH kinases in Saccharomyces cerevisiae establ,J. Biol. Chem.,2006年,Vol.281 No.32,p.22439-22445,Abstract, Table 2, Figure 4
【文献】
ZHANG A. et al.,Effect of FPS1 deletion on the fermentation properties of Saccharomyces cerevisiae.,Lett. Appl. Microbiol.,2007年,Vol.44 No.2,p.212-217,Abstract, Figure 1
【文献】
YU K.O., et al.,Reduction of glycerol production to improve ethanol yield in an engineered Saccharomyces cerevisiae,J. Biotechnol.,2010年,Vol.150 No.2,p.209-214,Abstract, Table 1, Figures 6
【文献】
MIYAGI H. et al.,Two sources of mitochondrial NADPH in the yeast Saccharomyces cerevisiae.,J. Biol. Chem.,2009年,Vol.284 No.12,p.7553-7560,Figure 7
【文献】
KAWAI S., MURATA K.,Structure and function of NAD kinase and NADP phosphatase: key enzymes that regulate the intracellul,Biosci. Biotechnol. Biochem.,2008年,Vol.72 No.4,p.919-930,Table 1
【文献】
畠中治代 他,NAD kinase破壊株によるキシロースからのエタノール発酵収率の改善,日本農芸化学会2011年度大会講演要旨集,2011年 3月 5日,Vol.2011,p.170,3B03a10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/19
C12N 15/09
C12P 7/06
C12R 1/865
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシロース代謝酵素遺伝子が導入され、NADキナーゼ遺伝子の発現機能を喪失させた酵母。
【請求項2】
前記NADキナーゼ遺伝子がUTR1遺伝子及びYEF1遺伝子から選択される少なくとも1つのものである、請求項1に記載の酵母。
【請求項3】
さらにFPS1遺伝子の発現機能が喪失した、請求項1又は2に記載の酵母。
【請求項4】
前記キシロース代謝酵素遺伝子が、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子及び、キシルロースリン酸化酵素遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つのものである、請求項1または2に記載の酵母。
【請求項5】
NADキナーゼ遺伝子の発現機能を喪失させることにより、キシロース醗酵能力の増加したキシロース代謝酵素遺伝子が導入された酵母を作製する方法。
【請求項6】
前記NADキナーゼ遺伝子がUTR1遺伝子及びYEF1遺伝子から選択される少なくとも1つのものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
さらにFPS1遺伝子の発現機能を喪失させる工程を含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記キシロース代謝酵素遺伝子が、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子及びキシルロースリン酸化酵素遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つのものである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の酵母と、キシロース含有原料とを接触させる工程を含む、エタノールの製造方法。
【請求項10】
キシロース代謝酵素遺伝子が導入され、FPS1遺伝子の発現機能を喪失させた酵母。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NADキナーゼ遺伝子の発現機能を喪失させた、微生物に関する。また、本発明は、NADキナーゼ遺伝子の機能を喪失させることにより、キシロース醗酵能力の増加した醗酵微生物を作製する方法に関する。さらに、本発明は、前記微生物と、キシロース含有原料とを接触させる工程を含む、エタノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇や、CO
2ガス削減の必要といった観点から、従来廃棄物であった、コーンコブ、稲ワラ、スイッチグラス、エリアンサス、廃材などといった、バイオマスから燃料としてエタノールを生成する研究が進められている。人類は何千年も前より、デンプンから酵母サッカロミセス・セレビシエによる醗酵でエタノールにする技術を持っていた。デンプンはグルコースがα−1,4結合した多糖であり、様々な生物が持つ加水分解酵素によって容易に分解することができる。また、グルコースは酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の最も好ましいC源であり、1分子のグルコースから2分子のエタノールが醗酵により生成される。これに対し、バイオマスは多糖として、セルロース、あるいはヘミセルロースを含んでいる。
このうち、セルロースは、グルコースがβ−1,4結合した多糖であり、結晶構造をとっている。結晶構造を壊すための前処理が必要であることや、セルロースを分解するために必要なセロビオハイドロラーゼI、セロビオハイドロラーゼII、エンドグルカナーゼ等の活性が十分でないこと等の問題はあるが、分解後に生じる糖はグルコースであるため、酵母サッカロミセス・セレビシエで醗酵するには何の問題もない。
これに対し、ヘミセルロースはグルコースの他に、キシロース、アラビノースと言った五炭糖を含んでいるが、従来酵母サッカロミセス・セレビシエはこれらの五炭糖を醗酵することができない。そこで、キシロースを醗酵するために、キシロースを醗酵する能力のある、酵母ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)のキシロース還元酵素、キシリトール脱水素酵素遺伝子を酵母サッカロミセス・セレビシエにて高発現させる方法が、良く用いられてきた(
図1)。ピキア・スティピティスのキシロース還元酵素は補酵素として主にNADPHを用いる酵素であり、反応後、一分子のNADPが生成する。一方、キシリトールデヒドロゲナーゼは、補酵素として主にNADを用いる酵素であり、反応後一分子のNADHを生じる。従って、
図1に示したように、グルコースを醗酵する際には、NADP/NADPHあるいはNAD/NADHのバランスは変化しないが、キシロースを醗酵する場合には、NADPあるいは、NADHが増加する方向に傾いてしまう。このことが、キシロースからのエタノール醗酵における収率の低さの原因であると考えられている。
これまでに、補酵素特異性がNADHに変換した、変異型キシロースレダクターゼの作製(非特許文献1)、補酵素特異性がNADPHに変換した、変異型キシリトールデヒドロゲナーゼの作製(非特許文献2)、解糖系のグリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼの補酵素特異性が、NADPHである酵素の遺伝子を、別の生物種から導入する実験(非特許文献3)、大腸菌などの細菌が持つトランスヒドロゲナーゼ(NADPHとNADあるいは、NADPとNADH間で、水素のやりとりを行う)を発現させること(非特許文献4)などの、試みが行われてきたが、十分な効果は得られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Petschacher B,Nidetzky B.Microb Cell Fact.2008 Mar 17;7:9.
【非特許文献2】Watanabe S,Saleh AA,Pack SP,Annaluru N,Kodaki T,Makino K.J Biotechnol.2007 Jun 30;130(3):316−9.Epub 2007 Apr 29.
【非特許文献3】Verho R,Londesborough J,Penttile M,Richard P.Appl Environ Microbiol.2003 Oct;69(10):5892−7.
【非特許文献4】Mikael Anderlund et.al.Appl Environ Microbiol.1999 June 65(6):2333−2340
【発明の開示】
【0004】
このような状況下、長時間にわたってキシロースの醗酵能を維持できる微生物の開発が必要とされる。
本発明者らは、キシロース醗酵でのエタノール収率を上げる方策として、細胞内のNADあるいは、NADPHを増やすことが重要であると考え、NAD(H)キナーゼに着目し、鋭意研究を行った結果、NAD(H)キナーゼ遺伝子を破壊することにより、
NAD+ATP→NADP+ADP
の反応におけるNADの減少を阻止できることを見い出した。そこで、NADキナーゼ遺伝子を破壊した酵母株を作製し、当該酵母株でキシロースの醗酵を行ったところ、野生型の同一株と比べてエタノール収率が向上することが判明した。
本願発明は、上記知見に基づくものである。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1] NADキナーゼ遺伝子の発現機能を喪失させた微生物。
[2] 前記NADキナーゼ遺伝子がUTR1遺伝子、YEF1遺伝子から選択される少なくとも1つのものである、前記[1]に記載の微生物。
[3] さらにFPS1遺伝子の発現機能が喪失した、前記[1]又は[2]に記載の微生物。
[4] 酵母である、前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の微生物。
[5] サッカロミセス・セレビシエである、前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の微生物。
[6] キシロース代謝酵素遺伝子が導入された、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の微生物。
[7] 前記キシロース代謝酵素遺伝子が、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子及びキシルロースリン酸化酵素遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つのものである、前記[6]に記載の微生物。
[8] NADキナーゼ遺伝子の発現機能を喪失させることにより、キシロース醗酵能力の増加した微生物を作製する方法。
[9] 前記NADキナーゼ遺伝子がUTR1遺伝子、YEF1遺伝子から選択される少なくとも1つのものである、前記[8]に記載の方法。
[10] さらにFPS1遺伝子の発現機能を喪失させる工程を含む、前記[8]又は[9]に記載の方法。
[11] 前記微生物が酵母である、前記[8]〜[10]のいずれか1つに記載の方法。
[12] 前記微生物がサッカロミセス・セレビシエである、前記[8]〜[10]のいずれか1つに記載の方法。
[13] 前記微生物がキシロース代謝酵素遺伝子が導入されたものである、前記[8]〜[12]のいずれか1つに記載の方法。
[14] 前記キシロース代謝酵素遺伝子が、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子及びキシルロースリン酸化酵素遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つのものである、前記[13]に記載の方法。
[15] 前記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の微生物と、キシロース含有原料とを接触させる工程を含む、エタノールの製造方法。
[16] FPS1遺伝子の発現機能を喪失させた微生物。
[17] 酵母である、前記[16]に記載の微生物。
[18] サッカロミセス・セレビシエである、前記[16]に記載の微生物。
[19] キシロース代謝酵素遺伝子が導入された、前記[16]〜[18]のいずれか1つに記載の微生物。
[20] 前記キシロース代謝酵素遺伝子が、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子及びキシルロースリン酸化酵素遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つのものである、前記[19]に記載の微生物。
[21] FPS1遺伝子の発現機能を喪失させることにより、キシロース醗酵能力の増加した微生物を作製する方法。
[22] 前記微生物が酵母である、前記[21]に記載の方法。
[23] 前記微生物がサッカロミセス・セレビシエである、前記[21]に記載の方法。
[24] 前記微生物がキシロース代謝酵素遺伝子が導入されたものである、前記[21]〜[23]のいずれか1つに記載の方法。
[25] 前記キシロース代謝酵素遺伝子が、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子及びキシルロースリン酸化酵素遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つのものである、前記[24]に記載の方法。
[26] 前記[16]〜[20]のいずれか1つに記載の微生物と、キシロース含有原料とを接触させる工程を含む、エタノールの製造方法。
本発明により、優れたキシロース醗酵能を有する微生物が提供される。また、本発明の微生物は、スモールスケールであっても、撹拌を伴うラージスケールであっても、高いキシロース醗酵能を示す。また、本発明の微生物は、連醸醗酵等の長期醗酵に用いた場合であっても、キシロース醗酵能を高レベルで維持することが可能である。また、本発明の微生物の作製方法を用いることにより、広範囲な微生物を宿主として、同様に高いキシロース醗酵能を有する育種を作成することができる。本発明の微生物を用いることにより、キシロース含有原料から効率よくエタノールを製造することができる。また、本発明の微生物を用いると、キシロースを含む原料である限り、例えアミノ酸含有量の低いバイオマスを原料とした場合でも、効率よくエタノールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1: グルコース及びキシロースの代謝経路を示す図である。
図2: 実施例で用いたプラスミドpENTUTR1の略図である。
図3: 実施例で用いたプラスミドpENTYEF1の略図である。
図4: 実施例で用いたプラスミドpYRGFLPの略図である。
図5: 実施例で用いたプラスミドpYRNFLPの略図である。
図6: 実施例で用いたプラスミドpENTUTR1Gの略図である。
図7: 実施例で用いたプラスミドpENTYEF1Nの略図である。
図8: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(培地:
は「UTR1遺伝子破壊」を示す。
図9: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(培地:
は「UTR1遺伝子破壊」を示す。
図10: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(培地:
図11: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(培地:
す。
図12: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(培地:
図13: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(培地:
す。
図14: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(培地:
図15: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(培地:
示す。
図16: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(培地:
遺伝子破壊」を示す。
図17: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(培地:
遺伝子破壊」を示す。
図18: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(キシリトール生成量、培地:CSLX、宿主:HH472、45mLスケール、48時間後)。図
図19: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(グリセロール生成量、培地:CSLX、宿主:HH472、45mLスケール、48時間後)。図
図20: 本発明の微生物を用いたキシロース連続醗酵試験の結果を示す(培
を示す。
図21: 本発明の微生物を用いたキシロース連続醗酵試験の結果を示す(キ
「UTR1遺伝子破壊」を示す。
図22: 本発明の微生物を用いたキシロース連続醗酵試験の結果を示す(キ
は「UTR1遺伝子破壊」を示す。
図23: 本発明の微生物を用いたキシロース連続醗酵試験の結果を示す(グ
は「UTR1遺伝子破壊」を示す。
図24: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験(2)の結果を示す(培
遺伝子破壊」及び「YEF1遺伝子破壊」を示す。
図25: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験(2)の結果を示す(培
れ「UTR1遺伝子破壊」及び「YEF1遺伝子破壊」を示す。
図26: 実施例で用いたプラスミドpCR4FPS1の略図である。
図27: 実施例で用いたプラスミドpYR−AFLPの略図である。
図28: 実施例で用いたプラスミドpCR4FPS1AURの略図である。
図29: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(培地:
破壊」、「YEF1遺伝子破壊」を示す。
図30: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験の結果を示す(培地:
ぞれ「FPS1遺伝子破壊」、「UTR1遺伝子破壊」、「YEF1遺伝子破壊」を示す。
図31: 本発明の微生物を用いた醗酵試験の結果を示す(培地:YPD、宿
遺伝子破壊」を示す。
図32: 本発明の微生物を用いた醗酵試験の結果を示す(培地:YPD、宿
遺伝子破壊」、「UTR1遺伝子破壊」、「YEF1遺伝子破壊」を示す。
図33: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験(50mlスケール)の
はそれぞれ「FPS1遺伝子破壊」、「UTR1遺伝子破壊」、「YEF1遺伝子破壊」を示す。
図34: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験(50mlスケール)の
はそれぞれ「FPS1遺伝子破壊」、「UTR1遺伝子破壊」、「YEF1遺伝子破壊」を示す。
図35: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験(50mlスケール)の
はそれぞれ「FPS1遺伝子破壊」、「UTR1遺伝子破壊」、「YEF1遺伝子破壊」を示す。
図36: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験(50mlスケール)の
はそれぞれ「FPS1遺伝子破壊」、「UTR1遺伝子破壊」、「YEF1遺伝子破壊」を示す。
図37: 本発明の微生物を用いたキシロース醗酵試験(50mlスケール)の
はそれぞれ「FPS1遺伝子破壊」、「UTR1遺伝子破壊」、「YEF1遺伝子破壊」を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
なお、本明細書において引用した全ての文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。また、本明細書は、2011年2月25日に出願された本願優先権主張の基礎となる日本国特許出願(特願2011−040651号)の明細書及び図面に記載の内容を包含する。
本発明者らは、NADキナーゼ遺伝子の発現を抑制した微生物株を用いた場合、野生型同種株と比べて、キシロース含有原料からのエタノール生産効率が向上することを見出し、本発明を完成させた。さらに、グリセロールチャネルの遺伝子発現を抑制した場合、キシロース含有原料からのエタノール生産効率がより向上することを見出した。以下において、本願発明の各実施態様を記載する。
1.NADキナーゼ遺伝子機能喪失微生物
本発明は、ある実施態様において、NADキナーゼ遺伝子の発現機能を喪失させた、微生物を提供する。
本発明において「微生物」とは、肉眼でその存在が判別できず、顕微鏡などによって観察できる程度以下の大きさの生物を意味する。微生物の例としては、細菌、藍色細菌、古細菌等の原核生物、並びに糸状菌、酵母、変形菌、担子菌、単細胞性の藻類及び原生動物等の真核生物が挙げられる。
好ましくは、微生物は、糖に対する醗酵能を有する種であり、より好ましくは、酵母である。酵母は、出芽酵母又は分裂酵母のいずれであってもよい。ある実施態様では、酵母は、サッカロマイセス・セレビシエNBRC1951、NBRC1952、NBRC1953、NBRC1954、X2180−1A(ATCC26786)、CB11(BerkleyStock Center)、W303−1A(BY4848)等の出芽酵母であってもよい。別の実施態様では、酵母は、シゾサッカロマイセス・ジャポニクス(Schizosaccharomycesjaponicus(Hasegawaea japonicus))、シゾサッカロマイセス・オクトスポルス(Schizosaccharomyces octosporus(Octosporomyces octosporus))及びシゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomycespombe)等の分裂酵母であってもよい。
本発明において「NADキナーゼ遺伝子」とは、NADキナーゼタンパク質をコードする遺伝子を意味し、DNA又はRNAのいずれであってもよい。NADキナーゼとは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)にリン酸を付加して、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)に変換する活性(以下、「NADキナーゼ活性」)を有する酵素である(MagniG et al.,(2006)Mini reviews in medicinal chemistry6(7):739−46)。
本明細書中で使用される場合、「NADキナーゼ遺伝子」はサッカロマイセス・セレビシエ由来のNADキナーゼタンパク質(配列番号2又は4)をコードする遺伝子(配列番号1又は3)に限定されず、NADキナーゼ活性を示す、NADキナーゼと同じファミリーに属するホモログタンパク質をコードする遺伝子でもよい。NADキナーゼと同じファミリーに属するタンパク質は多くの植物において見出されており、ファミリー内全体で高度に保存されている。NADキナーゼは、細胞代謝に重要な酵素であるため、その遺伝子はファミリー内全体で高度に保存されており、複数の微生物のNADキナーゼ又はそのホモログタンパク質の遺伝子については既に塩基配列が解析され、その配列情報がデータベースに登録されている(表1参照)。
【表1】
サッカロマイセス・セレビシエを用いて本発明の微生物を作製する場合、NADキナーゼ遺伝子は、好ましくはUTR1遺伝子(配列番号1)およびYEF1遺伝子(配列番号3)である。
一実施形態において、NADキナーゼ遺伝子は、NADキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列において1または複数個の塩基が欠失、挿入、置換、または付加された変異体であってもよい。変異体は、コードもしくは非コード領域、またはその両方において変異され得る。コード領域における変異は、保存的または非保存的なアミノ酸の欠失、挿入、置換および/または付加を生成し得る。本明細書中で使用される場合、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列をコードする遺伝子、または当該アミノ酸配列において1もしくは複数個(例えば、1〜40個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個など)または1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードする遺伝子もまた、「NADキナーゼ遺伝子」に包含される。
本発明において、「NADキナーゼ遺伝子の発現機能を喪失させた」とは、NADキナーゼ遺伝子から本来の酵素機能を有するNADキナーゼが発現されないことを意味する。このような状態の例としては、NADキナーゼ遺伝子の発現産物が全く生成されない状態だけでなく、当該遺伝子の発現産物(例えば、hnRNA、mRNA又はタンパク質)は発現されるが、それら発現産物が本来の正常な機能を有しない状態が挙げられる。このようなNADキナーゼ遺伝子の機能喪失は、NADキナーゼ遺伝子又はその転写調節領域若しくはプロモーター領域を含む発現制御領域上における1又は複数のヌクレオチドの欠失、置換、及び/又は挿入等によって生じさせることができる。なお、前記欠失、置換、及び/又は挿入を行う部位や、欠失、置換、及び/又は挿入される配列は、NADキナーゼ遺伝子の正常な機能が喪失しうる限り、特に限定されないが、好ましくは、NADキナーゼの酵素活性部位をコードする遺伝子配列の少なくとも1つが欠失していることが好ましい。
本発明の微生物は、特に真核生物の場合、前記NADキナーゼの発現機能が、染色体上の少なくとも一方のアレル(ヘテロ接合型)で喪失していれば効果がある場合もあるが、好ましくは、両アレルで喪失していること(ホモ接合型)が好ましい。
また、本発明の微生物は、NADキナーゼ遺伝子に加えて、あるいは、単独でFPS1遺伝子が機能を喪失していてもよい。
本明細書中で使用される場合、「FPS1遺伝子」はサッカロマイセス・セレビシエ由来のFPS1タンパク質(配列番号24)をコードする遺伝子(SaccharomycesGenome Database Accession No:YLL043W、Genbank Accession No:NM_001181863.1、配列番号23)に限定されず、グリセロールチャネルとしての機能を発揮するタンパク質をコードする遺伝子でもよい。
一実施形態において、配列番号24のアミノ酸配列をコードする遺伝子、または当該アミノ酸配列において1もしくは複数個(例えば、1〜40個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個など)または1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードする遺伝子もまた、「FPS1遺伝子」に包含される。
本発明において、「FPS1遺伝子の発現機能を喪失させた」とは、FPS1遺伝子から本来の酵素機能を有するFPS1タンパク質が発現されないことを意味する。このような状態の例としては、FPS1遺伝子の発現産物が全く生成されない状態だけでなく、当該遺伝子の発現産物(例えば、hnRNA、mRNA又はタンパク質)は発現されるが、それら発現産物が本来のグリセロールチャネルとしての機能を有しない状態が挙げられる。このようなFPS1遺伝子の機能喪失は、FPS1遺伝子又はその転写調節領域若しくはプロモーター領域を含む発現制御領域上における1又は複数のヌクレオチドの欠失、置換、及び/又は挿入等によって生じさせることができる。なお、前記欠失、置換、及び/又は挿入を行う部位や、欠失、置換、及び/又は挿入される配列は、FPS1遺伝子のグリセロールチャネルとしての機能が喪失しうる限り、特に限定されないが、好ましくは、FPS1タンパク質の活性部位をコードする遺伝子配列の少なくとも1つが欠失していることが好ましい。
本発明の微生物は、特に真核生物の場合、前記FPS1の発現機能が、染色体上の少なくとも一方のアレル(ヘテロ接合型)で喪失していれば効果がある場合もあるが、好ましくは、両アレルで喪失していること(ホモ接合型)が好ましい。
2.キシロース醗酵能力の増加した醗酵微生物を作製する方法
本発明は、宿主微生物のNADキナーゼ遺伝子の発現機能を喪失させることにより、キシロース醗酵能力の増加した醗酵微生物を作製する方法を提供する。
また、上記方法は、さらにFPS1遺伝子の発現機能を喪失させる工程を含んでいてもよい。あるいは、宿主微生物のNADキナーゼ遺伝子の発現機能を喪失させることなく、単独でFPS1遺伝子の発現機能を喪失させることにより、キシロース醗酵能力の増加した醗酵微生物を作製することも可能である。
NADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子の発現機能を喪失させる方法としては、ジーンターゲティング又はRNAi等のノックアウト又はノックダウン技術が挙げられる。
(1)ジーンターゲティング
ジーンターゲティングは、相同組換えを利用して染色体上の特定遺伝子に変異を導入する手法である(Capeccchi,M.R.Science,244,1288−1292,1989)。
まず、NADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子の機能を喪失させるためのターゲティングベクターを構築する。ターゲティングベクターを構築するに当たり、対象動物のゲノムDNAライブラリーを調製する。このゲノムDNAライブラリーは、多型等により組換え頻度が低下しないよう、ジーンターゲティングの対象となる微生物種と同系統の微生物、好ましくは、同種の微生物に由来するゲノムDNAから作製したライブラリーを用いることが好ましい。そのようなライブラリーとしては、市販のものを用いてもよい。あるいは、NADキナーゼ又はFPS1のcDNA若しくはその部分配列をプローブとしてスクリーニングを行い、NADキナーゼ又はFPS1のゲノム遺伝子のDNA配列をクローニングしてもよく、あるいは、NADキナーゼ又はFPS1のcDNA若しくはその部分配列に基づいてプライマーを作成し、ゲノムのNADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子をPCR増幅することにより調製することができる。ゲノムDNAライブラリーの調製方法の詳細については、以下を参照できる。”Sambrook &Russell,Molecular Cloning:ALaboratory Manual Vol.3,Cold Spring HarborLaboratory Press 2001”、”Ausubel,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons 1987−1997”
次に、クローニングされたゲノムDNAを、シークエンシング、サザンブロッティング、制限酵素消化等によって解析してエクソン(真核生物の場合)の位置及び制限酵素サイトを同定する。このような解析により得られた配列情報を基に変異導入部位等を決定する。
本発明において、染色体上に導入する変異(欠失、置換、及び/又は挿入)はNADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子の正常な機能が損なわれる限り特に限定されず、これらの変異は、NADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子のイントロン領域、エクソン領域あるいはNADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子の発現制御領域に存在していてよい。前記変異は、NADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子のエクソン領域に存在することが好ましく、さらに好ましくは、NADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子の少なくとも1つのエクソンが欠失した変異、最も好ましくは全てのエクソンが欠失した変異である。このような変異であれば、確実にNADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子の機能を欠損させることができるからである。
ターゲティングベクターは、変異導入部位の3’及び5’側の相同領域(それぞれ3’アーム及び5’アーム)に加え、組み換え体のセレクション用の選択マーカーを含んでいてもよい。選択マーカーの例としては、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子等のポジティブセレクションマーカー、LacZ、GFP(GreenFluorescence Protein)及びルシフェラーゼ遺伝子などの破壊対象遺伝子の発現レポーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV−TK)、ジフテリア毒素Aフラグメント(DTA)等のネガティブセレクションマーカー等が挙げられる。特に、本発明は、微生物を宿主とするため、栄養要求性を相補する遺伝子、例えばURA3を用いれば、ウラシルを含まない寒天培地でセレクションが可能であり、宿主の栄養要求性によっては、使用が可能である。また、シクロヘキシミドに対する薬剤耐性遺伝子(YAP1)を用いれば、シクロヘキシミドを含んだ培地でセレクションを行うことができる。これらのセレクションマーカーを3’アーム及び5’アームの間に挿入した配列を用いることにより、ターゲット遺伝子を破壊することもできる。ベクターは相同領域の外側に、ベクターを直鎖化するための適当な制限酵素切断部位を含んでいてもよい。
図6に、実施例で用いたサッカロマイセス・セレビシエのUTR1遺伝子のノックアウトに用いたターゲティングベクターの例を示す。このコンストラクトは、UTR1タンパク質のN末端側及びC末端側の各アミノ酸配列をコードするUTR1ゲノム遺伝子配列をそれぞれ5’アーム(「UTR1−N」)及び3’アーム(「UTR1−C」)とし、5’アームと3’アームとの間にポジティブセレクションマーカーとしてジェネティシン耐性遺伝子(「G418R」)が挿入されている。
この、UTR1−N−G418R−UTR1−Cからなる断片を、制限酵素によりベクターから切り出して精製した後、酵母に形質転換し、相同組換えによりジェネティシン耐性を獲得した株を取得し、さらにPCRにて、UTR1遺伝子が破壊されていることを確認する。
このようなターゲティングベクターは、市販のプラスミドベクター(例えば、pENTR/D−TOPO(登録商標:Invitrogen)やpBluescriptII(Stratagene)等)をベースにして構築することができる。
(2)RNA干渉
上記以外にも、NADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子の発現機能を欠損させる方法として、siRNA(smallinterfering RNA)等を用いたRNA干渉(RNAinterference:RNAi)法が挙げられる。RNAiは、複数の段階を経て行われるマルチステッププロセスである。最初に、RNAi発現ベクターから発現した二本鎖RNA(DoubleStranded RNA:dsRNA)又はヘアピン状のshRNA(SmallHairpin RNA)がDicerによって認識され、21〜23ヌクレオチドのsiRNAsに分解される。次に、siRNAsはRNA誘導型サイレンシング複合体(RNA−InducedSilencing Complex:RISC)と呼ばれるRNAi標的複合体に組み込まれ、RISCとsiRNAsとの複合体がsiRNAの配列と相補的な配列を含む標的mRNAに結合し、mRNAを分解する。標的mRNAは、siRNAに相補的な領域の中央で切断され、最終的に標的mRNAが速やかに分解されてタンパク発現量が低下する。最も効力の高いsiRNA二重鎖は、19bpの二重鎖の各3’末端にウリジン残基2個の突出部分を持つ21ヌクレオチド長の配列であることが知られている(ElbashirS.M.et al.,Genes and Dev,15,188−200(2001))。
従って、NADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子のノックダウン微生物を得るには、まず、表1に示されるようなNADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子配列(例えば、配列番号23)(これらに限定されない)の一部と相補的な配列を含むヌクレオチドを、適切なRNAi発現ベクターにdsRNA又はshRNAとして発現可能な状態で挿入してRNAiベクターを作製する。次に、前記ベクターを宿主細胞に導入し、形質転換体をセレクションすることによりNADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子のノックダウン微生物を得ることができる。
dsRNA又はshRNAの設計及び合成は、市販のDNA/RNAシンセサイザー、例えば、AppliedBiosystems394型で行うことも可能であり、あるいは第三者機関(例えば、TAKARABio)に委託することもできる。
NADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子の発現機能の喪失は、正常なNADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子の発現量の低下として確認することができる。NADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子の発現量は、本発明の微生物の抽出物を用いたRT−PCR法及びアガロースゲル電気泳動、Real−TimePCR法、ノーザンブロッティング法、マイクロアレイ解析並びに質量分析法等によって測定することができる。これらの測定方法に用いるプライマー又はプローブは、当該NADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子の配列に基づいて設計及び合成することができる。NAD遺伝子の発現産物が正常であるかどうかは、当該発現産物の配列解析を行うことにより確認することができる。
本発明の微生物は、NADキナーゼ遺伝子又はFPS1遺伝子の発現機能が喪失していることを特徴とするが、さらに、キシロース代謝酵素遺伝子が発現可能な状態で導入されていてもよい。キシロース代謝酵素遺伝子は、キシロースを分解してエタノールを生成する一連の化学反応のうち、いずれかの反応を触媒する活性(以下、「キシロース代謝活性」)を有するタンパク質(以下、「キシロース代謝酵素」)をコードする遺伝子を意味する。キシロース代謝酵素遺伝子の例としては、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子、キシルロースリン酸化酵素遺伝子が挙げられる。
このようなキシロース代謝酵素遺伝子は、例えば、ピキア・スティピティス、サッカロマイセス・セレビシエ、大腸菌、ラクトバシラス・カゼイ、ラクトバシラス・アシドフィラス、Aspergillusfumigatus、Staphylococcus aureus、Pichia pastoris、Schizosaccharomycespombe等に由来するものであってもよい。
本発明の微生物には、前記キシロース代謝酵素のうち、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子又はキシルロースリン酸化酵素遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つが導入されていることが好ましく、これら遺伝子の2つ以上、あるいは、3つ全ての遺伝子が導入されていてもよい。
キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子又はキシルロースリン酸化酵素遺伝子の例としては、以下が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【表2】
【表3】
【表4】
キシロース還元酵素は、キシロース分解において、以下の反応を触媒する酵素である。
Xylose+NADPH→Xylitol+NADP
キシリトール脱水素酵素は、キシロース分解において、以下の反応を触媒する酵素である。
Xylitol+NAD→Xylulose+NADH
キシルロースリン酸化酵素は、キシロース分解において、以下の反応を触媒する酵素である。
Xylulose+ATP→Xylulose−5P+ADP
一実施形態において、キシロース代謝酵素遺伝子(例えば、キシロース還元酵素、キシリトール脱水素酵素又はキシルロースリン酸化酵素等)は、キシロース代謝活性を有するタンパク質をコードするものである限り、上記キシロース代謝酵素遺伝子の変異体であってもよい。変異体の例としては、上記キシロース代謝酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列において1または複数個の塩基が欠失、挿入、置換、または付加された変異体であってもよい。変異体は、コードもしくは非コード領域、またはその両方において変異され得る。コード領域における変異は、保存的または非保存的なアミノ酸の欠失、挿入、置換および/または付加を生成し得る。本明細書中で使用される場合、配列番号10、12又は14のアミノ酸配列をコードする遺伝子(例えば、配列番号9、11又は13)、または当該アミノ酸配列において1もしくは複数個(例えば、1〜40個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個など)または1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列をコードする遺伝子もまた、「キシロース代謝酵素遺伝子」に包含される。
ポリペプチドのアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではなく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸を容易に改変させることができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を改変させることができる。また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体または付加変異体を作製することができる。さらに、本明細書中に記載される方法を用いれば、作製した改変体が所望の活性を有するか否かを容易に決定し得る。
好ましい改変体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または添加を有する。好ましくは、サイレント置換、添加、および欠失であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、本発明に係るポリペプチド活性を変化させない。
代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中での1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
上記に詳細に示されるように、どのアミノ酸の変化が表現型的にサイレントでありそうか(すなわち、機能に対して有意に有害な効果を有しそうにないか)に関するさらなるガイダンスは、Bowie,J.U.ら「Decipheringthe Message in Protein Sequences:Toleranceto Amino Acid Substitutions」,Science 247:1306−1310(1990)(本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
上記に挙げられる本発明に係るポリヌクレオチドを使用すれば、形質転換体または細胞においてキシロース代謝酵素活性を有するポリペプチドを合成することができる。
キシロース代謝酵素遺伝子は、宿主細胞において発現可能な発現ベクターに組み込まれた状態で、導入されることが好ましい。発現ベクターは、以下の(i)〜(iii)の要素を含みうる。
(i)宿主細胞内で転写可能なプロモーター;
(ii)該プロモーターに結合した、キシロース代謝酵素遺伝子;及び
(iii)RNA分子の転写終結及びポリアデニル化に関し、宿主細胞内で機能するシグナルを構成要素として含む発現カセット
を含むように構成される。
このようなベクターとしては、例えば、pYE22m(酵母用:Biosci.Biotech.Biochem.,59,1221−1228,1995)、YCp50(酵母用:X70276)、YIp1(酵母用:X70480)が挙げられる。
宿主細胞中での遺伝子発現を調節するためのプロモーター/ターミネーターとしては、宿主細胞中で機能する限り、任意の組み合わせでよい。例えば、酵母で利用する場合は
TDH3、
PYK1、
PGK1、GAP、
TPI1、GAL1、GAL10、ADH2、PHO5、CUP1、MFα1等のプロモーターを用いることができるが、これに限定されるものではない。構成的高発現プロモーターとしては、TDH3、TPI1、PGK1、PGI1、PYK1、ADH1等のプロモーターを使用することができる。
形質転換の際に用いる選択マーカーとしては、栄養要求性マーカー(URA3、LEU2)、薬剤耐性マーカー(ハイグロマイシン耐性、ジェネチシン耐性)、銅耐性遺伝子(CUP1)(Marinet al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,3371984)、セルレニン耐性遺伝子(fas2m,PDR4)(それぞれ猪腰淳嗣ら,生化学,64,660,1992;Hussainet al.,gene,101,149,1991)等が利用可能である。
宿主細胞の形質転換方法としては、一般に用いられる公知の方法が利用できる。例えば、原核生物の場合、エレクトロポレーション法(MackenxieD.A.et al.Appl.Environ.Microbiol.,66,4655−4661,2000)やヒートショック法が利用できる。また、酵母の場合は、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75p1929(1978))、酢酸リチウム法(J.Bacteriology,153,p163(1983))、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75p1929(1978)、Methods in yeast genetics,2000Edition:A Cold Spring Harbor LaboratoryCourse Manual等に記載の方法で実施可能であるが、これらに限定されない。
その他、一般的なクローニング技術に関しては、″Sambrook &Russell,Molecular Cloning:ALaboratory Manual Vol.3,Cold Spring HarborLaboratory Press 2001″、″Methods inYeast Genetics、A laboratory manual(Cold Spring Harbor LaboratoryPress、Cold Spring Harbor,NY)″等を参照することができる。
3.エタノールの製造方法
上記のようにして作製された本発明の微生物は、同種の野生型微生物と比べて、キシロース醗酵能が増加している。ここで、キシロース醗酵とは、キシロースを資化することにより、エタノールを生成することを意味する。即ち、キシロース醗酵とは、キシロースからのエタノール醗酵を意味する。また、エタノール醗酵とは、醗酵過程を通じてエタノールを生成する反応を意味する。
したがって、本発明の微生物をキシロース含有原料の存在下で培養した場合、同種の野生型微生物を同一条件下で培養した場合よりも、副生成物であるxylitolとglycerolの生成量が減少し、その結果としてより多くのエタノールが生成される。
このことから、本発明は、別の実施態様において、本発明の微生物と、キシロース含有原料とを接触させる工程を含む、エタノールの製造方法を提供する。
本発明の微生物とキシロース含有材料とを接触させる工程は、本発明の微生物と、キシロース含有材料とを混合することにより達成できる。好ましくは、本発明の微生物は、活性な状態でキシロース含有材料と接触させる。
本発明の微生物を活性な状態でキシロース含有材料と接触させる方法の例としては、本発明の微生物が増殖可能な培養条件において、かつ、キシロース含有原料の存在下で、本発明の微生物を培養する方法が挙げられる。このような、培養条件は、微生物種によって異なるが、例えば、酵母であれば、キシロース含有原料を添加したYPD培地(イーストエキストラクト10g/L、ポリペプトン20g/L、グルコース20g/L)、SX培地(キシロース50g/l、6.7g/lyeast nitrogen baseアミノ酸抜き、アデニン20mg/l、ヒスティディン20mg/l、ロイシン100mg/l、トリプトファン20mg/l)等の適切な培地中で30℃にて培養することができる。
あるいは、本発明の微生物は、キシロース含有原料の存在下で培養を行う前に、本発明の微生物が増殖可能な培養条件において培養して菌体を増殖させ、その後、キシロース含有原料の存在下で、本発明の微生物を用いて醗酵を行なってもよい。
但し、培養条件は、上記に限定されるものではない。当業者であれば、適宜、微生物種に応じた適切な培養条件を選択し、実際に培養を行うことができる。
キシロースの醗酵能は、本発明の微生物とキシロース含有原料とを接触させ、一定時間が経過した後に系のエタノール生成量を測定することにより確認することができる。
また、キシロース醗酵能は、キシロース資化量に対するエタノール収率としても測定することができる。キシロース資化量に対するエタノール収率は、以下のように計算できる。
まず、キシロース(C
5H
10O
5)からのエタノール(C
2H
5OH)生成は、下記の反応式で表される。
6C
5H
10O
5→10C
2H
5OH+10CO
2+10ATP
この反応式並びにキシロース分子量(150)及びエタノール分子量(46)から、キシロース資化量とエタノール生成量との間に、以下の式で表される関係が成り立つ。
エタノール生成量=キシロース資化量x{(10x46)/(6x150)}
そこで、「キシロース資化量x{(10x46)/(6x150)}=キシロース資化量x0.51」の量のエタノールが生成された場合を、100%のエタノール収率と定めることができる。
キシロース資化量及びエタノール生成量は、本発明の微生物とキシロース含有原料とを含む醗酵系の成分を、高速液体クロマトグラフィー等の公知の分析手法によって分析することにより、容易に測定することができる。
「キシロース含有原料」は、キシロースを含む原料であれば、特に限定されないが、好ましくは、キシロースを含む生物由来の原料、即ち、「キシロース含有バイオマス」である。バイオマスは、日本国農林水産省が発行した「バイオマス・ニッポン総合戦略」において、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義されている。
よって、この定義に基づき、「キシロース含有バイオマス」は、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものであって、キシロースを含むもの」と定義することができる。
キシロース含有バイオマスの具体例としては、サトウキビ、トウモロコシ、テンサイ、ジャガイモ、サツマイモ、麦、モロコシ(=こうりゃん)、ソルガムなどの非可食部や、廃木材、パルプ廃液、バガス、もみ殻、コーンコブ、稲ワラ、スイッチグラス、エリアンサス、ネピアグラスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0007】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。
試験方法:
本実施例で用いた試験項目および試験方法を以下に示す。特に断りのない限り、本実施例における試験方法はこれに準じた。
<UTR1およびYEF1遺伝子の取得>
酵母サッカロミセス・セレビシエのUTR1遺伝子は既にクローニングされており、その塩基配列が報告されている(Saccharomyces Genome Database登録番号:YJR049C)。また、酵母サッカロミセス・セレビシエのYEF1遺伝子も既にクローニングされており、その塩基配列はGenbankに登録されている(Genbank Accession No.NM_001178856)。従って、UTR1遺伝子(ゲノム配列:配列番号1)及びYEF1遺伝子(ゲノム配列:配列番号3)は、その塩基配列情報をもとに、それぞれの遺伝子を持つ、酵母サッカロミセス・セレビシエから調製した染色体DNAをPCRの鋳型に使用して、PCRによって増幅、単離することにより得ることができる。具体的に本実施例では、酵母サッカロミセス・セレビシエX2180−1A(ATCC26786)(MATa SUC2 mal mel gal2 CUP1)の染色体DNAを鋳型として、プライマーUTR1F1とUTR1R1を用いてUTR1を、プライマーYEF1F1とYEF1R1を用いてYEF1を、PCRによって取得した。取得したDNA断片は、Invitrogen社のpENTR
TM Directional TOPO Cloning Kitsを用いて、ベクター、pENTR
TM/D−TOPO(登録商標)に挿入し、プラスミドpENTUTR1(
図2)あるいはpENTYEF1(
図3)を得た。DNAシークエンスにより挿入した両遺伝子の配列を確認した。両遺伝子の取得のために用いる染色体DNAは、上記に示した株に限定するものではなく、サッカロミセス・セレビシエに属する酵母であればいずれの酵母から調製されたものであってもよい。染色体DNAを用いたPCRによる目的遺伝子の増幅およびその後の単離は、PCRプライマーの調製を含め、当業者に周知な方法で行うことができる。
<PCRのための鋳型DNA調製方法>
酵母細胞を50μlのLysis buffer(0.125mg/ml ザイモリアーゼ100T、1M ソルビトール、40mM リン酸カリウムバッファーpH6.8、1mM ジチオスレイトール)に懸濁した。30℃で1時間インキュベートした後、プロテアーゼE 1mg/mlを5μl加え、さらに55℃で20分、99℃で10分インキュベートした。15,000rpmで10分遠心を行い、上清を鋳型DNAとした。
<UTR1あるいはYEF1遺伝子破壊のためのユニットの作製>
UTR1遺伝子を破壊するために、pENTUTR1のUTR1遺伝子をBsaAIとFspIを用いて切断し、そこにプラスミドpYRGFLP(
図4)よりPmeIで切り出した、G418耐性マーカー遺伝子(PGK1p::KanMX)を挿入し、プラスミドpENTUTR1G(
図6)を得た。YEF1遺伝子破壊を破壊するためには、pENYEF1のYEF1遺伝子をBstEIIとStuIを用いて切断し、そこにプラスミドpYRNFLP(
図5)よりPmeIで切り出した、Nat耐性マーカー遺伝子(TEF1p::Nat)を挿入し、プラスミドpENTYEF1N(
図7)を得た。このpENTUTR1GあるいはpENTYEF1NをPmeIで切断し、アガロースゲル電気泳動を行い、約3.3kbp(UTR1のN末とC末の部分配列を持ち、中央にG418耐性マーカー遺伝子(PGK1p::KanMX)を含む)あるいは、約2.1kbp(YEF1のN末とC末の部分配列を持ち、中央にNat耐性マーカー遺伝子(TEF1p::Nat)を含む)のDNA断片を、それぞれアガロースゲルから切り出した。ゲルよりDNA断片を精製抽出した。精製抽出はillustra
TM GFX
TM PCR DNA and Gel Band Purification kitを用い、マニュアルに従って行った。
<酵母株>
本発明においては、UTR1の取得にはS.cerevisiae X2180−1A株を、UTR1破壊株の育種には、HH467,468,472,473株を用いた。YEF1破壊株の育種には、HH472株を用いた。どの株にも、P.stipitisのキシロース還元酵素遺伝子(XYL1:、配列番号9)とキシリトール脱水素酵素遺伝子(XYL2:配列番号11)とS.cerevisiaeのキシルロースリン酸化酵素遺伝子(XKS1:配列番号13)の発現ユニットを遺伝子型に示したようなプロモーター制御下で、染色体のある領域に組み込まれている株を用いたが、これに限定するものではない。
(1) S.cerevisiae X2180−1A(ATCC26786)(MATa SUC2 mal mel gal2 CUP1)
(2) S.cerevisiae HH467(MATa leu2−3,112 trp1−1 his3−11,15 ade2−1 can1−100 rad5−535 ura3−1::URA3::TDH3p::XYL1::TDH3p::XYL2::TDH3p::XKS1)
(3) S.cerevisiae HH468(MATa ade1 MAL61 MAL62 MAL63 AGT1 MAL12 MAL31 MAL32 ura3:
:URA3::TDH3p::XYL1::TDH3p::XYL2::TDH3p::XKS1)
(4) S.cerevisiae HH472(MATa SUC2 mal mel gal2 CUP1 GATI::TDH3p::XYL1::PYK1p:
:XYL2::TPI1p::XKS1)
(5) S.cerevisiae HH473(MATa SUC2 mal mel gal2 CUP1 YCT1::TDH3p::XYL1::PYK1p:
:XYL2::TPI1p::XKS1)
(6) S.cerevisiae CB11(Berkley Stock Center)(MATa ade1 MAL61 MAL62 MAL63 AGT1 MAL12 MAL31 MAL32)
(7) S.cerevisiae W303−1A(BY4848)(
MATa ura3−1
leu2−3,112
trp1−1
his3−11,15
ade2−1
can1−100
rad5−535)
上記の株のうち、(6)はHH468の親株であり、(7)はHH467の親株であり、共に市販されている((6):工業技術院微生物工業技術研究所に微工研菌条第4198号(FERM BP−4198)、(7):NBRP ID No.BY4848)。また、(1)はHH472及びHH473の親株であり、市販されている(ATCC ID No.ATCC26786)。各株には遺伝子型を併記している。
<UTR1あるいはYEF1遺伝子破壊株の育種>
調製した約3.3kbpのDNA断片(UTR1のN末とC末の部分配列を持ち、中央にジェネティシン耐性遺伝子(PGK1p::KanMX)を含む)、あるいは、約2.1kbp(YEF1のN末とC末の部分配列を持ち、中央にNat耐性マーカー遺伝子(TEF1p::Nat)を含む)のDNA断片で、HH467、468、472、473を形質転換し、UTR1破壊株については、ジェネティシン300μg/mlを含むYPD(イーストエキストラクト10g/L、ポリペプトン20g/L、グルコース
*20g/L(ろ過滅菌添加
*))培地に、YEF1破壊株については、clonNAT(Nourseothricin dihydrogen sulfate)50μg/mlを含むYPD(イーストエキストラクト10g/L、ポリペプトン20g/L、グルコース
*20g/L(ろ過滅菌添加
*))培地に塗布した。生育したコロニー数個から、UTR1破壊株についてはプライマーupUTR1_F1とpPGK657−r1、あるいはdownUTR1_RとG418_F1を使ってPCRを行い、断片が増幅されることで、UTR1遺伝子が破壊されていることを確認した。YEF1破壊株についてはプライマーYEF1U_FとnatMX−r2、あるいはYEF1D_RとnatMX−f2を使ってPCRを行い、断片が増幅されることで、YEF1遺伝子が破壊されていることを確認した。さらに、形質転換体はYPGly(イーストエキストラクト10g/L、ポリペプトン20g/L、 グリセロール20g/L)培地に塗布して生育を確認し、呼吸欠損株ではないことを確認した。ここでは、マーカーにジェネティシン耐性あるいは、clonNAT耐性マーカー遺伝子を用いた例を示したが、宿主の遺伝子型によって、他のマーカーも使用可能である。宿主の栄養要求性を相補する遺伝子、例えばURA3を用いれば、ウラシルを含まない寒天培地で選択することができる。あるいは、シクロヘキシミドに対する薬剤耐性遺伝子、YAP1を用いれば、シクロヘキシミドを含んだYPD培地で選択することができる。
<キシロース醗酵試験‐スモールスケール>
キシロースの醗酵試験には、醗酵試験用培地としてYPX(イーストエキストラクト10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース
*50g/L(別滅菌後添加
*))、又はCSLX(0.5%コーンスティープリカー、尿素
**5g/L、ピリドキサル塩酸
**1mg/L、塩酸チアミン
**1mg/L、ビオチン
**0.1mg/L、パントテン酸
**10mg/L、硫酸マグネシウム1mg/L、硫酸亜鉛2mg/L、キシロース
*50g/L、pH5.0(ろ過滅菌後添加
**、別滅菌後添加
*))を用いた。醗酵実験に供試する酵母は、次のように培養した。YPD10mlに一白金時の供試酵母を植菌し、30℃のインキュベーターで、20時間、振とう培養した。その培養液から酵母を集菌して、あらたにYPD20mlに懸濁し、30℃で3時間振とう培養した。酵母細胞を集菌し、醗酵試験に用いる培地にて2回洗浄した後、2mlの培地にOD
600=20あるいは、OD
600=25となるように植菌して、容量3mlのマイクロチューブに入れて蓋をし、30℃でインキュベートした。適宜サンプリングして、遠心、ろ過後、高速液体クロマトグラフィーにより成分分析を行った。
<キシロース醗酵試験‐ラージケール>
容量100mlのメディウム瓶を用いた醗酵試験では、蓋に内径4mmのシリコンチューブを通した。チューブは培地に漬からない長さに調整した。チューブには逆止弁を取り付け、内圧が高くなった時には、弁から外に気体が抜けて、外圧と同じ気圧に調整できるようにした。醗酵試験に供試する酵母は次のように培養した。YPD10mlに一白金耳の供試酵母を植菌し、30℃のインキュベーターで、20時間振とう培養した。その培養液全量を300ml三角フラスコに入れたYPD100mlに植菌し、30℃のインキュベーターで20時間振とう培養した後、遠心して酵母全量を回収し、再び500ml三角フラスコに入れたYPD200mlに懸濁して30℃で6時間振とう培養した。酵母細胞を集菌し、醗酵試験用培地にて2回洗浄した後、45mlの培地にOD
600=20になるように植菌した。メディウム瓶は培地の入り量の深さまで水浴につけて30℃に温度を保ち、滅菌したスターラーバーを入れて、60rpmの速度で攪拌しながら醗酵した。適宜1mlづつ醗酵液のサンプリングを行い、遠心、ろ過後、高速液体クロマトグラフィーにより成分の分析を行った。
<キシロース醗酵試験‐連醸醗酵試験>
45mlスケールで行った醗酵試験の酵母を遠心にて回収し、10mlのCSLX培地にOD
600=100となるように植菌し、50ml容量の蓋つきの滅菌プラスティックチューブに入れて、30℃で醗酵した。48時間後に1mlの醗酵液をサンプリングし、遠心、ろ過後、高速液体クロマトグラフィーにて成分の分析を行った。残りの酵母は全量回収し、次の段階の醗酵に用い、同じ手順で醗酵試験を行った。
<エタノール、キシロース、グリセリロール、キシリトールの測定>
醗酵液から適宜サンプリングし、遠心、ろ過した後、上清を次の条件にて高速液体クロマトグラフィーで定量した。それぞれ既知濃度の純品サンプルのピーク面積から試験サンプルの各濃度を計算した。
▲1▼ 分離カラム及び条件
カラム:Shodex SUGAR SH−G(6.0×50mm)+SH1011(8.0×300mm)
溶離液:5mM H
2SO
4
流速:0.6ml/min
カラムオーブン:60℃
検出器:ダイオードアレイ検出器(DAD)280nm(フルフラール類)
示差屈折率検出器(RI) (他の糖類)
▲2▼ 装置構成
HPLC本体:日立L−2000シリーズ
ポンプ:L−2130
オートサンプラー:L−2200
DAD検出器:L−2450
RI検出器:L−2490
カラムオーブン:島津CTO−10A
実施例1:YPX培地による、UTR1破壊株のキシロース醗酵試験1
宿主として、HH467とHH468を用いて、UTE1破壊株を育種した。それぞれ親株(n=1)と、3種類の育種株(n=2)について、実験方法に示した方法にてYPDで培養した後、YPX培地2mlにOD
600=20となるように植菌後、マイクロチューブに入れて、30℃静置で醗酵試験を行った。24時間後遠心にて菌体を分離し、高速液体クロマトグラフィーにてエタノールとキシロースを定量した。エタノール収率は、キシロース資化量×0.51のエタノールが生成した場合を、収率100%とし、百分率で表した。結果を、
図8および9に示した。UTR1の破壊株はHH467とHH468のどちらを宿主にした場合でも、親株よりもキシロースからのエタノール生成収率が増加した。また、キシロース資化量は親株とほとんど同じであった。UTR1の破壊が、キシロースからのエタノール生成収率増加に効果があることが確認できた。
実施例2:YPX培地による、UTR1破壊株のキシロース醗酵試験2
宿主として、HH473を用いて、UTR1破壊株を育種した。HH473株はX2180−1Aから育種した株であり、HH467とHH468と異なり、栄養要求性がない株である。それぞれ、一株ずつについて、実験方法に示した方法にてYPDで培養した後、YPX培地2mlにOD
600=25となるように植菌後マイクロチューブに入れて、30℃静置で醗酵試験を行った。24時間あるいは48時間後に遠心にて菌体を分離し、高速液体クロマトグラフィーにてエタノールとキシロースを定量した。エタノール収率は、キシロース資化量×0.51のエタノールが生成した場合を、収率100%とし、百分率で表した。結果を、
図10に示した。UTR1の破壊株はアミノ酸の栄養要求性のないHH473においても、親株よりもキシロースからのエタノール生成収率が増加した。また、48時間後の副産物であるキシリトールとグリセロールの値をエタノールと共に示した(
図11)。UTR1破壊株では、キシリトールの生成量が親株に比べて、非常に低かった。
次に、HH472株を宿主として、UTR1破壊株を取得した。HH472株は発現カセットTDH3p::XYL1::PYK1p::XYL2::TPI1p::XKS1の挿入された領域が、HH473株とは異なる。
再現性を見るために、親株については、n=2で、UTR1破壊株については、n=8で、上記と同様に醗酵試験を行った。その結果、UTR1破壊株は有意にエタノール収率が高く(
図12)、キシリトール生成量は低かった(
図13)。
実施例3:CSLX培地による、UTR1破壊株のキシロース醗酵試験
実施例2で育種したHH472を親株とするUTR1破壊株(n=8)と親株(n=2)を用いて、CSLX培地で醗酵試験を行った。実験方法に示した方法にてYPDで培養した後、CSLX培地2mlにOD
600=25となるように植菌後、マイクロチューブに入れて、30℃静置で醗酵試験を行った。24時間あるいは48時間後に遠心にて菌体を分離し、高速液体クロマトグラフィーにてエタノール、キシロース、キシリトール、グリセロールを定量した。エタノール収率は、キシロース資化量×0.51のエタノールが生成した場合を、収率100%とし、百分率で表した。エタノール生成量と収率を、
図14に示した。UTR1の破壊株では、親株よりもキシロースからのエタノール生成収率が有意に増加した。また、副産物であるキシリトールとグリセロールの48時間後の値をエタノールと共に示した(
図15)。どちらも、親株よりも低かった。バイオマスの分解物にアミノ酸がほとんど含まれないことに鑑みれば、YPXと比べて約4分の1の量のアミノ酸しか含まれないCSLX培地においても同様の効果があったことは、特に重要な結果といえる。この結果から、本発明の微生物は、キシロースを含むバイオマスを原料とするエタノール製造に有用であることが判明した。
実施例4:45mlスケールでのCSLX培地による、UTR1破壊株のキシロース醗酵試験
実施例2で育種したHH472を親株とするUTR1破壊株と親株のうち、親株(n=2)と、UTR1破壊株(n=5)について、実験方法に示した方法にてYPDで培養した後、100mlのメディウム瓶中のCSLX培地45mlにOD
600=20となるように植菌した。30℃にて、マグネットスターラーで攪拌(60rpm)しながら醗酵試験を行った。3、20、27、44、51時間後にサンプリングして、遠心にて菌体を分離し、高速液体クロマトグラフィーにてエタノール、キシロース、キシリトール、グリセロールを定量した。エタノール収率は、キシロース資化量×0.51のエタノールが生成した場合を、収率100%とし、百分率で表した。各成分の経過を、
図16〜19に示した。UTR1の破壊株は、親株よりもキシリトールとグリセロールの生成量が低下し、エタノール生成量・収率が増加した。また、キシロース資化速度は親株と同じであった。通気はしないが、攪拌を行う醗酵でも、UTR1の破壊によりエタノール醗酵の副生成物である、キシリトールとグリセロールの生成量を減少させ、エタノール生成量を増加させられることがわかった。
実施例5:10mlスケールでのCSLX培地による、UTR1破壊株の連続キシロース醗酵試験
実施例4で行った、45mlスケールの醗酵試験の親株(n=2)と、UTR1破壊株(n=5)を遠心にて回収し、10mlのCSLX培地にOD
600=100になるように植菌し、50ml容量の蓋つきの滅菌プラスティックチューブに入れて30℃静置で醗酵した。48時間後にサンプリングし、遠心、ろ過後、高速液体クロマトグラフィーにてエタノール、キシロース、キシリトール、グリセロールを定量した。エタノール収率は、キシロース資化量×0.51のエタノールが生成した場合を、収率100%とし、百分率で計算した。残りの醗酵液の酵母は全量回収し、次の醗酵を同じ手順で行い、醗酵を連続3回続けて行った。
図20にエタノール生成量の収率を、
図21にキシロース資化量を、
図22にキシリトール生成量を、
図23にグリセロール生成量を示した。連続して醗酵を続けても、UTR1破壊株は親株よりもエタノール生成量、エタノール収率が共に高かった。特にエタノール収率については、親株が醗酵回数を経るごとに減少傾向にあったのに対し、UTR1破壊株では、逆に増加傾向であった。また、副産物であるキシリトールとグリセロールの生成量は連続醗酵を行った場合でも低かった。キシロース資化量は醗酵を経るごとに若干減少したが、この傾向は親株の方でも見られた。この結果より、UTR1破壊株は、連続醗酵を行っても、同様の効果が得られることがわかった。バイオマスからエタノールを生産するにあたっては、その生産コストを下げることが非常に重要であることから、連続醗酵可能であることは大きな意味を持つ。
実施例6:YPX培地による、UTR1破壊株、YEF1破壊株、UTR1YEF1破壊株のキシロース醗酵試験
宿主としてHH472を用いて作製したUTR1破壊株、
YEF1破壊株、UTR1YEF1破壊株を育種した。HH472株はX2180−1Aから育種した株であり、HH467及びHH468とは異なり、栄養要求性がない株である。それぞれ、親株(n=2)、UTR1破壊株(n=2)、YEF1破壊株(n=3)、UTR1YEF1破壊株(n=4)、ついて、実験方法に示した方法にてYPDで培養した後、YPX培地2mlにOD
600=25となるように植菌後マイクロチューブに入れて、30℃で静置することで醗酵試験を行った。24時間あるいは48時間後に遠心にて菌体を分離し、高速液体クロマトグラフィーにてエタノールとキシロースを定量した。エタノール収率は、キシロース資化量×0.51のエタノールが生成した場合を、収率100%とし、百分率で表した。結果を、
図24に示す。UTR1破壊株は、親株よりもキシロースからのエタノール生成収率が増加した。YEF1破壊株は、親株に比べ、キシロースからのエタノール生成収率がわずかに増加する程度であったが、UTR1とYEFの両遺伝子を破壊したUTR1YEF1破壊株は、UTR1破壊株よりもさらにエタノール収率が上昇していた。また、48時間後の副産物であるキシリトールとグリセロールの値をエタノールと共に
図25に示す。UTR1YEF1破壊株はUTR1破壊株よりもキシリトールとグリセロールの生成量は少なく、エタノールの生成量は多かった。UTR1とYEF1の両遺伝子を破壊することで、さらに高い効果が得られることが判明した。
<まとめ>
以上記載したように、キシロースからのエタノール醗酵を行うにあたり、NADH再酸化の反応が律速であることが明らかになり、NADキナーゼであるUTR1及び/又はYEF1遺伝子の破壊により、エタノール収率を上げることができることがわかった。本発明の微生物は、その合成にNADやNADPHを必要とするアミノ酸についての栄養要求性がある株でも、ない株でも同様に作製することが可能であり、そのようにして作製された微生物は、キシロース醗酵に用いた際に同様の効果を奏するができる。また、本発明の微生物を用いてキシロース醗酵を行う場合、栄養リッチなYPXのような培地でも、コーンスティープリカーと尿素のような工業上使用される貧栄養の培地(CSLX)であっても、同様に高い醗酵効果が見られる。
実施例7:FPS1破壊株の作製
<FPS1遺伝子の取得>
酵母サッカロミセス・セレビジエーのFPS1遺伝子(配列番号23)は、既にその塩基配列が報告されている(Saccharomyces Genome Database 登録番号:YLL043W)。また、同遺伝子にコードされるFPS1タンパク質のアミノ酸配列を配列番号24に示す。
FPS1遺伝子の塩基配列情報をもとに、酵母サッカロミセス・セレビジエーから調製した染色体DNAをPCRの鋳型に使用して、FPS1遺伝子をPCRによって増幅、単離することにより得ることができる。具体的に本実施例では、酵母サッカロミセス・セレビジエーX2180−1A(ATCC26786)(MATa SUC2 mal mel gal2 CUP1)の染色体DNAを鋳型として、下記のプライマーFPS1NFSCXBとFPS1CRBを用いてFPS1をPCRによって取得した。取得したDNA断片は、Invitrogen社のTOPO TA Cloning(登録商標) Kit for sequencingを用いて、ベクター、pCR(登録商標) 4−TOPOに挿入し、プラスミドpCR4FPS1(
図26)を得た。DNAシークエンスにより挿入した両遺伝子の配列を確認した。両遺伝子の取得のために用いる染色体DNAは、上記に示した株に限定するものではなく、サッカロミセス・セレビジエーに属する酵母であれば何れの酵母から調製されたものであってもよい。染色体DNAを用いたPCRによる目的遺伝子の増幅およびその後の単離は、PCRプライマーの調製を含め、当業者に周知な方法で行うことができる。
<FPS1遺伝子破壊のためのユニットの作製>
FPS1遺伝子を破壊するためのユニットを作製するには、pCR4FPS1のFPS1遺伝子をStuIとHincIIで切断し、末端を平滑化した。プラスミドpYRAFLP(
図27)よりKpnIとFspIで切り出した、AUR(オーレオバシジン)耐性マーカー遺伝子(TDH3p::AUR1−C)を、そこに挿入し、プラスミドpCR4FPS1AUR(
図28)を得た。このpCR4FPS1AURをPmeIとNotIで切断し、アガロースゲル電気泳動を行い、約4.0kbpのDNA断片(FPS1のN末とC末の部分配列を持ち、中央にオーレオバシジン耐性マーカー遺伝子(TDH3p::AUR1−C)を含む)を、アガロースゲルから切り出した。ゲルよりDNA断片を精製抽出した。精製抽出はillustra
TM GFX
TM PCR DNA and Gel Band Purification kitを用い、マニュアルに従って行った。
<FPS1遺伝子破壊株の育種>
調製した約4.0kbpのDNA断片(FPS1のN末とC末の部分配列を持ち、中央にオーレオバシジン耐性遺伝子(TDH3p::AUR1−C)を含む)を、HH472、HH472のUTR1遺伝子あるいは、YEF1遺伝子、あるいは、その両方を破壊した株に形質転換し、オーレオバシジン2μg/mlを含むYPD(イーストエキストラクト 10g/L,ポリペプトン 20g/L,グルコース
*20g/L (ろ過滅菌添加
*))培地に塗布した。生育したコロニー数個から、下記のプライマーFPS1PF1とAUR1_Rを使ってPCRを行い、1631bpの断片が増幅されることで、FPS1遺伝子が破壊されていることを確認した。さらに、形質転換体はYPGly(イーストエキストラクト 10g/L,ポリペプトン 20g/L,グリセロール 20g/L)培地に塗布して生育を確認し、呼吸欠損株ではないことを確認した。ここでは、マーカーにオーレオバシジン耐性マーカー遺伝子を用いた例を示したが、宿主の遺伝子型によって、他のマーカーも使用可能である。宿主の栄養要求性を相補する遺伝子、例えばURA3を用いれば、ウラシルを含まない寒天培地で選択することができる。あるいは、シクロヘキシミドに対する薬剤耐性遺伝子、YAP1を用いれば、シクロヘキシミドを含んだYPD培地で選択することができる。
実施例8:YPDおよびYPX培地による、UTR1破壊株、YEF1破壊株、FPS1破壊株、UTR1,YEF1破壊株、UTR1,FPS1破壊株、UTR1,YEF1,FPS1破壊株のキシロース醗酵試験
HH472を宿主として構築した、UTR1破壊株、YEF1破壊株、FPS1破壊株、UTR1,YEF1破壊株、UTR1,FPS1破壊株、UTR1,YEF1,FPS1破壊株、6種類の各破壊株と親株であるHH472株について、実験方法に示した方法にてYPDで培養した後、YPX培地あるいは、YPD培地2mlにOD600=25となるように植菌後マイクロチューブに入れて、30℃静置で醗酵試験(各n=3)を行った。24時間あるいは48時間後に遠心にて菌体を分離(YPDでの醗酵は24時間後のみサンプリング)し、高速液体クロマトグラフィーにて、キシロース醗酵の場合はエタノール、キシロース、キシリトール、グリセロールと酢酸を、グルコース醗酵の場合は、エタノールとグルコース、グリセロールと酢酸を定量した。キシロースからのエタノール収率は、キシロース資化量×0.51のエタノールが生成した場合を、収率100%とし、百分率で表した。結果を、
図29に示す。FPS1の破壊株は、UTR1破壊株やYEF1破壊株と同じように、親株よりもキシロースからのエタノール生成収率が増加した(
図29)。48時間後の副産物であるキシリトール、グリセロールと酢酸の値をエタノールと共に示す(
図30)。FPS1破壊株では、グリセロールと酢酸量が親株より若干増加したが、キシリトールの生成量は親株に比べて低下した。UTR1,YEF1破壊株、UTR1,FPS1破壊株、UTR1,YEF1,FPS1破壊株はいずれも、各々の遺伝子の単独破壊株よりも、副産物生成量が減少することから、キシロースからのエタノール収率が増加しており、これら3つの遺伝子をいかに組み合わせて破壊しても、効果的にキシロースからのエタノール収率を増加させることが出来る。
グルコースからのエタノール収率は、キシロース醗酵の場合と同じく、グルコース資化量×0.51のエタノールが生成した場合を、収率100%とし、百分率で表した。結果を、
図31および
図32に示す。全ての破壊株は、グルコース醗酵においてもほぼ同じか、あるいは若干エタノール生成収率が上昇し、炭素源がグルコースであっても、これらの破壊株のエタノール生成量は親株と遜色ない。
実施例9:50mlスケールでのYPX培地を用いた、UTR1破壊株、YEF1破壊株、FPS1破壊株、UTR1,YEF1破壊株、UTR1,FPS1破壊株、UTR1,YEF1,FPS1破壊株によるキシロース醗酵試験
実施例8で育種したHH472を親株とする各破壊株と親株について、実験方法に示した方法にてYPDで培養した後、100mlのメディウム瓶中のYPX培地50mlに50mg wet cell/mlとなるように植菌した。30℃にて、マグネットスターラーで攪拌(60rpm)しながら醗酵試験を行った。2、8、22、29、46、51時間後にサンプリングして、遠心にて菌体を分離し、高速液体クロマトグラフィーにてキシロース、エタノール、キシリトール、グリセロールと酢酸を定量した。各成分の経過を、
図33〜37に示す。すべての破壊株において、親株よりもキシリトールと酢酸の生成量が低下した。グリセロール生成量は、FPS1破壊株である、FPS1破壊株、UTR1,FPS1破壊株、UTR1,YEF1,FPS1破壊株では増加したものの、エタノール生成量は、すべての株において、親株を上回った。通気はしないが、攪拌を行う醗酵でも、UTR1、YEF1、FPS1の3つの遺伝子について、各遺伝子の単独破壊であっても、これらをいかに組み合わせて破壊しても、効果的にキシロースからのエタノール収率を増加させることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0008】
バイオマスから生じた、5炭糖を炭素源として、エタノール醗酵を行うにあたり、エタノール生成収率を上げることができる。特に、ヘミセルロース含量が多い場合には、有効である。またこの技術は、その生成にNADが必要な物質を酵母にて生産させる場合、すなわち、アラビノースからのエタノール生成などでも、その収率を上げることができる。
【配列表フリーテキスト】
【0009】
配列番号5:合成DNA
配列番号6:合成DNA
配列番号7:合成DNA
配列番号8:合成DNA
配列番号15:合成DNA
配列番号16:合成DNA
配列番号17:合成DNA
配列番号18:合成DNA
配列番号19:合成DNA
配列番号20:合成DNA
配列番号21:合成DNA
配列番号22:合成DNA
配列番号25:合成DNA
配列番号26:合成DNA
配列番号27:合成DNA
配列番号28:合成DNA
[配列表]