特許第5965900号(P5965900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965900ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、及びフッ化水素の共沸混合物様の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965900
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、及びフッ化水素の共沸混合物様の組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 13/08 20060101AFI20160728BHJP
   C09K 5/04 20060101ALN20160728BHJP
【FI】
   C09K13/08
   !C09K5/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-512656(P2013-512656)
(86)(22)【出願日】2011年5月17日
(65)【公表番号】特表2013-531091(P2013-531091A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】US2011036789
(87)【国際公開番号】WO2011149711
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年5月9日
(31)【優先権主張番号】12/788,885
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ハルス,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ファム,ハン・ティー
(72)【発明者】
【氏名】シン,ラジヴ・ラトナ
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・スン
(72)【発明者】
【氏名】マーケル,ダニエル・シー
(72)【発明者】
【氏名】ポクロフスキー,コンスタンティン・エイ
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−501579(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/137656(WO,A1)
【文献】 特表2002−516888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 13/08
C09K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、及びフッ化水素から実質的に構成される共沸性又は共沸混合物様の組成物であって、
共沸性又は共沸混合物様の組成物の全重量を基準として、1〜10重量%のフッ化水素、1〜10重量%のヘキサフルオロプロペン、及び80〜98重量%の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、並びに17psia〜125psiaの圧力において0℃〜60℃の沸点を有する、共沸性又は共沸混合物様の組成物。
【請求項2】
フッ化水素及びヘキサフルオロプロペンを1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンに加えることを含む、請求項1に記載の共沸性又は共沸混合物様の組成物を形成する方法。
【請求項3】
1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン及び少なくとも1種類の不純物を含む混合物から1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを取り出す方法であって、フッ化水素及びヘキサフルオロプロペンを、請求項1に記載の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、及びフッ化水素の共沸性又は共沸混合物様の組成物を形成するために前記混合物に加え、そして共沸性又は共沸混合物様の組成物を不純物から分離することを含む上記方法。
【請求項4】
1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、及びフッ化水素を含む共沸性又は共沸混合物様の組成物から1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを単離する方法であって、
前記共沸性又は共沸混合物様の組成物を、HF溶媒、HF吸収剤、塩基性溶液、及びこれらの組合せからなる群から選択される溶液と接触させることによって、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、及びフッ化水素の請求項1に記載の共沸性又は共沸混合物様の組成物からフッ化水素を抽出し;そして
1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン及びヘキサフルオロプロペンの残留溶液から1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを分離する;
ことを含む上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、共沸性及び共沸混合物様の組成物に関する。より詳しくは、本発明は、複数のヒドロハロカーボン及びフッ化水素の三元共沸混合物様組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]トリクロロフルオロメタン及びジクロロジフルオロメタンのようなクロロフルオロカーボン(CFC)は、伝統的に冷媒、発泡剤、及びガス滅菌用の希釈剤として用いられている。近年においては、全ハロゲン化クロロフルオロカーボンは地球のオゾン層に対して有害である可能性があるという一般的な懸念が存在する。したがって、成層圏により安全なこれらの材料に対する代替物が望まれている。
【0003】
[0003]現在は、塩素置換基をより少ししか含まないか又は全く含まないフッ素置換炭化水素を用いる世界的な努力が存在する。HFC、即ち炭素、水素、及びフッ素のみを含む化合物の製造は、CFCに対する代替物を与えることができる環境的に望ましい製品を与えるための興味深い主題である。かかる化合物は、フッ化水素を種々のヒドロクロロカーボン化合物と反応させることによって製造されることが当該技術において公知である。HFCは、非オゾン層破壊性ではないので、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)又はクロロフルオロカーボン(CFC)よりも遙かにより環境的に有利であると考えられるが、最近のデータはこれらはまた温室効果地球温暖化に寄与する可能性があることを示している。したがって、HFC、HCFC、及びCFCに対する代替物も研究されている。
【0004】
[0004]ヒドロフルオロオレフィン(HFO)は、低いオゾン層破壊係数を示し、温室効果地球温暖化に対して少ししか寄与しないので、代替物としての1つの可能性を示している。1つのかかるHFOは2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)であり、これは有効な冷媒、熱伝達媒体、噴射剤、起泡剤、発泡剤、気体状誘電体、滅菌剤キャリア、重合媒体、粒状物除去流体、キャリア流体、バフ研磨剤、置換乾燥剤、及び動力サイクル作動流体として良好に位置づけられている。これは、米国特許出願20070197842、20070112229、20090124837、20090287026、20090240090、及び20090234165(これらの内容は参照として本明細書中に包含する)内に記載されているものなどの多数の異なる方法によって製造することができる。
【0005】
[0005]特に、米国特許出願20090234165においては、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の製造における中間体として1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)を形成することが開示されている。しかしながら、この反応の1つの欠点は、反応プロセス全体にわたって存在する不純物(例えば、触媒、反応副生成物、プロセス出発物質など)がHFC−236eaの単離及び転化を妨げることである。特に問題のあるハロカーボン反応物質又は副生成物の不純物としては、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン、1,1,1,3−テトラフルオロプロパン、(E)1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、(Z)1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、1,1,1−トリフルオロプロパン、3,3,3−トリフルオロプロピン、(Z)1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、及び(E)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、かかる化合物からHFC−236eaを単離/精製する方法が望まれている。
【0006】
[0006]共沸混合物及び共沸混合物様の組成物が生成物精製のための良好なメカニズムを与えることが一般的に知られている。ヒドロフルオロカーボン及びフッ化水素を含む混合物が特に興味深く、これは所望のヒドロフルオロカーボン及びクロロフルオロオレフィン生成物の製造及び/又は精製において有用である。しかしながら、共沸混合物の形成は比較的予測できないために、かかる組成物の特定は困難である。したがって、産業界は、許容でき、及び/又は既存のCFC、HCFC、及びHFCに対する環境的により安全な代替物であるHFO又はHFOベースの混合物を製造するために用いることができる新規なHFOベースの混合物を継続的に探し求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願20070197842
【特許文献2】米国特許出願20070112229
【特許文献3】米国特許出願20090124837
【特許文献4】米国特許出願20090287026
【特許文献5】米国特許出願20090240090
【特許文献6】米国特許出願20090234165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0007]本発明は、とりわけこれらの必要性を満足する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0008]一態様においては、本発明は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、及びフッ化水素(HF)から実質的に構成される共沸性又は共沸混合物様の組成物に関する。この共沸性又は共沸混合物様の組成物は、共沸性又は共沸混合物様の組成物の全重量を基準として、約1〜約10重量%のフッ化水素、約1〜約10重量%のヘキサフルオロプロペン、及び約80〜約98重量%の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを含み、約17psia〜約125psiaの圧力において約0℃〜約60℃の沸点を有する。更なる態様においては、この共沸性又は共沸混合物様の組成物は、共沸性又は共沸混合物様の組成物の全重量を基準として、約1.5〜約8.4重量%のフッ化水素、約3.5〜約4.9重量%のヘキサフルオロプロペン、及び約88.1〜約93.6重量%の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを有し、約17±3psiaの圧力において約0℃、約44±5psiaの圧力において約25℃、又は約123±5psiaの圧力において約60℃の沸点を有する。
【0010】
[0009]非限定的な態様においては、この共沸性又は共沸混合物様の組成物は、約1〜約10重量%のフッ化水素、約1〜約10重量%のヘキサフルオロプロペン、及び約80〜約98重量%の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを有し、約17±3psiaの圧力において約0℃の沸点を有する。更なる非限定的な態様においては、この共沸性又は共沸混合物様の組成物は、約1.5〜約10重量%のフッ化水素、約1〜約10重量%のヘキサフルオロプロペン、及び約80〜約98重量%の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを有し、約44±5psiaの圧力において約25℃の沸点を有する。更なる非限定的な態様においては、この共沸性又は共沸混合物様の組成物は、約2〜約10重量%のフッ化水素、約1〜約10重量%のヘキサフルオロプロペン、及び約80〜約98重量%の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを有し、約123±5psiaの圧力において約60℃の沸点を有する。
【0011】
[0010]本発明はまた、有効量のフッ化水素及び場合によってはヘキサフルオロプロペンを1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの溶液に加えることによって、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、及びフッ化水素の共沸性又は共沸混合物様の組成物を形成する方法も包含する。かかる共沸性の混合物に関連する特性を用いて、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン及び少なくとも1種類の不純物を含む溶液から1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを分離又は蒸留することができる。一態様においては、不純物は、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン、1,1,1,3−テトラフルオロプロパン、(E)1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、(Z)1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、1,1,1−トリフルオロプロパン、3,3,3−トリフルオロプロピン、(Z)1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、及び(E)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンなど(しかしながらこれらに限定されない)のハロカーボンである。他の態様においては、不純物は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンと混和性であってもなくてもよく、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化水素、又はこれらの混合物と共沸性の混合物を形成してもしなくてもよい。
【0012】
[0011]本発明はまた、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、及びフッ化水素を含む共沸性の混合物から1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを単離する方法にも関する。かかる方法は、まず、混合物をHF溶媒、HF吸収剤、塩基性溶液、及びこれらの組合せから選択される溶液と接触させることによって、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン、及びフッ化水素の共沸混合物を含む溶液からフッ化水素を抽出することを含む。かかるHF溶媒及び/又はHF吸収剤は、硫酸、水、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、アルミナ、ゼオライト、モレキュラーシーブ、シリカゲル、及びこれらの組合せから選択される。次に、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン及びヘキサフルオロプロペンの残留溶液から1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを分離する。非限定的ではないが好ましい分離方法としては蒸留が挙げられる。
【0013】
[0012]本発明に関する更なる態様及び有利性は、本明細書の開示に基づいて当業者に容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0013]一態様においては、本発明は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、及びフッ化水素(HF)の三元共沸混合物様混合物に関する。かかる組成物を用いて、HFC−236eaを他の不純物から単離することができる。共沸混合物様の混合物は、次にその成分部分に分離して、HFC−236eaを更なる処理のために精製することができる。別の態様においては、下記により詳細に示すように、本共沸混合物はまた、特にエレクトロニクス産業において半導体をエッチングするため、及び金属から表面酸化を除去するための非水性エッチャント混合物としての使用が示される。
【0015】
[0014]本発明の目的のためには、HFC−236ea、HFP、及びHFの共沸混合物又は共沸混合物様の組成物は、共沸混合物のように挙動する組成物又は混合物を包含する。流体の熱力学的状態は、その圧力、温度、液体組成、及び蒸気組成によって規定される。真の共沸性組成物に関しては、所定の温度及び圧力範囲において液体組成と蒸気相が実質的に等しい。実際的な言い方をすると、これは相変化中に成分を分離することができないことを意味する。本発明の目的のためには、共沸混合物は、周囲の混合物組成物の沸点と比べて最高又は最低の沸点を示す液体混合物である。共沸混合物又は共沸混合物様の組成物は、所定の圧力下において液体形態である場合に、成分の沸点よりも高いか又は低くてよい実質的に一定の温度で沸騰し、沸騰している液体組成物と実質的に同一の蒸気組成を与える2以上の異なる成分の混合物である。本発明の目的のためには、共沸性組成物は、共沸混合物のように挙動する、即ち一定の沸点特性又は沸騰若しくは蒸発によって分別されない傾向を有する組成物を意味する共沸混合物様の組成物を包含するように定義される。而して、沸騰又は蒸発中に形成される蒸気の組成は、元の液体の組成と同一であるか又は実質的に同一である。したがって、沸騰又は蒸発中において、液体の組成は変化するとしても最小か又は無視できる程度までしか変化しない。これは、沸騰又は蒸発中に液体の組成がかなりの程度まで変化する非共沸混合物様の組成物とは対照的である。したがって、共沸混合物又は共沸混合物様の組成物の本質的特徴は、所定の圧力において液体組成物の沸点が一定であり、沸騰している組成物の上方の蒸気の組成が実質的に沸騰している液体組成物のものである、即ち液体組成物の成分の分別が実質的に起こらないことである。共沸性組成物のそれぞれの成分の沸点及び重量%はいずれも、共沸混合物又は共沸混合物様の液体組成物を異なる圧力において沸騰させると変化する可能性がある。而して、共沸混合物又は共沸混合物様の組成物は、その成分の間に存在する関係の観点、又は成分の組成範囲の観点、或いは特定の圧力における一定の沸点によって特徴付けられる組成物のそれぞれの成分の実際の重量%の観点で規定することができる。
【0016】
[0015]一態様においては、本発明は、共沸性又は共沸混合物様の組成物を形成するのに有効な量のHFC−236ea、HFP、及びHFを含む組成物を提供する。ここで用いる「有効量」とは、他の成分と組み合わせることによって共沸混合物様の組成物を形成するそれぞれの成分の量を意味する。より具体的には、非限定的な態様においては、本発明の共沸混合物様の組成物は、それぞれ共沸性又は共沸混合物様の組成物の全重量を基準として、約1〜約10重量%のHF、約1〜約10重量%のHFP、及び約80〜約98重量%のHFC−236eaを含む。更なる態様においては、本発明の共沸混合物様の組成物は、それぞれ共沸性又は共沸混合物様の組成物の全重量を基準として、約1.5〜約8.4重量%のHF、約3.5〜約4.9重量%のHFP、及び約88.1〜約93.6重量%のHFC−236eaを含む。この組成物は、約17psia〜約125psiaの圧力において約0℃〜約60℃の沸点を有する。
【0017】
[0016]組成物の幾つかの態様においては、共沸混合物様の組成物が約17±3psiaの圧力において約0℃の沸点を有するという条件で、共沸混合物様の組成物の全重量を基準として、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンは約80〜約98重量%の量で存在し;ヘキサフルオロプロペンは約1〜約10重量%の量で存在し;フッ化水素は約1〜約10重量%の量で存在する。
【0018】
[0017]組成物の幾つかの態様においては、共沸混合物様の組成物が約44±5psiaの圧力において約25℃の沸点を有するという条件で、共沸混合物様の組成物の全重量を基準として、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンは約80〜約98重量%の量で存在し;ヘキサフルオロプロペンは約1〜約10重量%の量で存在し;フッ化水素は約1.5〜約10重量%の量で存在する。
【0019】
[0018]組成物の幾つかの態様においては、共沸混合物様の組成物が約123±5psiaの圧力において約60℃の沸点を有するという条件で、共沸混合物様の組成物の全重量を基準として、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンは約80〜約98重量%の量で存在し;ヘキサフルオロプロペンは約1〜約10重量%の量で存在し;フッ化水素は約2〜約10重量%の量で存在する。
【0020】
[0019]本発明の共沸混合物様の組成物は、触媒、反応副生成物、プロセス出発物質などをはじめとする(しかしながらこれらに限定されない)種々の随意的なプロセス成分を更に含んでいてよい。排他的ではないが好ましくは、これらの随意的なプロセス成分は組成物の基本的な共沸混合物様の特徴に影響を与えない。
【0021】
[0020]本発明方法は、HFC−236ea/HFC/HFの共沸混合物を生成させる工程、及び共沸混合物を不純物から単離する工程を含む。HFC−236eaは、当該技術において公知の1以上の方法を用いて製造することができる。1つの非限定的な例においては、これは、米国出願20090234165(その内容は参照として本明細書中に包含する)に記載されているように当該技術において周知の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の製造における中間体として製造することができる。より具体的には、HFC−236eaは、まず、HFC−236ea、或いはHFP、HFC−236ea、並びに場合によっては共生成物及び未反応の出発物質の混合物を生成させるのに有効な条件下においてヘキサフルオロプロペン(HFP)を水素化することによって製造することができる。それぞれの成分は、商業的に購入することができ、及び/又は当該技術において公知の方法によって製造することができる。
【0022】
[0021]この混合物、或いはHFC−236ea及び不純物を含む任意の同様の混合物からHFC−236eaを取り出す際の第1工程は、上記の共沸性組成物を形成するのに有効な量のHF及び必要に応じてHFPを加えることによる。3つ以上の成分を配合して組成物を形成するための当該技術において公知の任意の広範囲の方法を、共沸混合物様の組成物を生成させる本方法において用いるように適合させることができる。例えば、HFC−236ea、HFP、及びHFを、手動及び/又は機械によって、バッチ又は連続反応及び/又はプロセスの一部として、或いは2以上のかかる工程の組合せによって、混合、ブレンド、又は他の形態で接触させることができる。本明細書中の開示を考慮すれば、当業者であれば過度の実験を行うことなく本発明による共沸混合物様の組成物を容易に製造することができるであろう。
【0023】
[0022]本発明の共沸性混合物は、スイング蒸留、抽出蒸留、スクラビング、又は他の当該技術において認められている分離手段など(しかしながらこれらに限定されない)の標準的な分離技術を用いて、他の反応不純物(例えば、触媒、反応副生成物、プロセス出発物質など)から分離することができる。一態様においては、不純物自体は、HFC−236ea、HFP、HF、又はこれらの任意の混合物と共沸性混合物を形成しない。他の態様においては、不純物は、HFC−236ea、HFP、HF、又はこれらの任意の混合物と共沸性混合物を形成する。HFC−236eaを製造するプロセスの代表的な不純物としては、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン、1,1,1,3−テトラフルオロプロパン、(E)1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、(Z)1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、1,1,1−トリフルオロプロパン、3,3,3−トリフルオロプロピン、(Z)1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、及び(E)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンなど(しかしながらこれらに限定されない)のHFC−236eaと混和性であってよい他のハロカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、本発明はかかる不純物に限定されず、HFC−236eaを製造する目的で公知であるか又は他の形態で用いられる他の触媒、反応副生成物、プロセス出発物質などを含んでいてよい。
【0024】
[0023]また、例えばHFO−1234yfのような他の化合物へ更に処理するために、HFC−236ea/HFP/HF共沸混合物の成分部分をHFC−236eaの精製形態に分離することも望ましい可能性がある。したがって、本発明はまた、特に他の不純物から単離した後にHFC−236ea/HFP/HF共沸混合物の成分部分を分離する方法にも関する。分離方法としては当該技術において一般に知られている任意の方法を挙げることができる。例えば一態様においては、溶液を有機溶媒又は苛性溶液と接触させるか又はそれを用いてスクラビングすることによって、HFを混合物から取り出すことができる。有機溶液としては、HF溶媒、HF吸収剤、塩基性溶液、及びこれらの組合せを挙げることができる。一態様においては、HF溶媒及びHF吸収剤は、硫酸、水、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、アルミナ、ゼオライト、モレキュラーシーブ、シリカゲル、及びこれらの組合せから選択される。非限定的な態様であるが好ましい態様においては、有機溶媒としては、単独か又は水及び/又は塩基性溶液と組み合わせた硫酸が挙げられる。抽出の後、HFC−236eaとHFPの混合物が残留する。次に、HFC−236eaに関する高い溶解度及びHFPに関する低い溶解度を有する抽出媒体を用いる蒸留又は他の方法のような当該技術において公知の通常の手段によって、この混合物からHFC−236eaを分離することができる。上記に加えて、共沸混合物に関する他の公知の抽出又は分離方法を、それぞれの成分部分を分離又は他の形態で精製するように適合させることができる。
【0025】
[0024]或いは、本発明の共沸性又は共沸混合物様の組成物は、エレクトロニクス産業において半導体をエッチングするための非水性エッチャント混合物、及び金属から表面酸化を除去するための組成物として用いることもできる。
【実施例】
【0026】
[0025]以下の非限定的な実施例は本発明を例示するように働く。
[0026]実施例1:
[0027]HFP、236ea、及びHFの標準沸点は、それぞれ−29.6、6.3、及び19.5℃である。それぞれ0.99、19.06、及び0.31gのHFP、236ea、及びHFを混合することによって、4.9重量%の236ea、93.6重量%のHFP、及び1.5重量%のHFの混合物を調製した。表1に示すように、混合物の圧力を0、25、及び60℃において測定した。次に、更なる量の高沸点(低圧)成分:HFを混合物に加えた。次に、0、25、及び60℃において圧力を再測定したところ、圧力の増加が示された。圧力の増加は共沸混合物の存在を示す。
【0027】
[0028]
【0028】
【表1】
【0029】
[0029]実施例2:
[0030]実施例1におけるデータ並びにHF/HFP(米国特許6,407,297)及びHF/236ea(米国特許6,388,147)に関して得られるデータを用いて、表2に示すデータを算出した。表2におけるデータは、4.9gのHFP及び93.6gの236eaから出発し、徐々にHFを加えた。全圧は、最初は上昇するように見られ、次に約1重量%のHFを加えた後に横ばいになった。圧力は、その後は共沸混合物様の領域にわたって僅かしか変化しなかった。
【0030】
【表2】
【0031】
[0031]実施例3:
[0032]実施例1における最終混合物(3.5重量%の236ea、88.1重量%のHFP、及び8.4重量%のHFを含んでいた)を、25℃に維持した浴中に配置した。蒸気試料を回収してHF濃度を測定したところ7.7重量%であった。これは、共沸点が約8重量%のHFを含むことを示す。