(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ファイバーレーザでの材料加工の性能と品質について重要なことは、フォーカスの最適化である。代表的な加工装置は、ノズルを介して送られるガスで支援された可変焦点位置を持つレンズを有しており、加工物(ワークピース)そのものは通常、何らかの形式の制御可能な移動台に据え付けられている。高出力連続波(CW)ファイバーレーザが出現する以前は、この形態の処理が200Wから4kWの高出力固体レーザで一般的に実行されていた。このタイプのレーザは比較的低輝度M
2>10であり、例えば、400μmで実測開口数(NA)が0.1の、M
2が60に等価な大モード面積マルチモードファイバーで伝達される。一般的には1対1の結像に利用されるこの種のレーザは、共焦点パラメータ(すなわち焦点深度)が+/−2mmで400μmの焦点を形成する。高輝度ファイバーレーザ光源に比べると、作用スポットサイズはファイバーレーザより少なくとも1桁大きいが、共焦点パラメータも約20倍大きいので、フォーカスはそれほど厳しくない。パラメータM
2については、本明細書において後で定義する。
【0003】
シングルモードのファイバーレーザは、現在ではシングルモードで10kWまで出すことができる。シングルモードファイバーレーザからのビーム品質は、M
2がほぼ完全に1に近く、従ってファイバーレーザの出力は、従来の固体レーザに比べるとはるかに小さくフォーカスすることが可能である。このスポットサイズは典型的には直径10μm程度である。これが小さいことで、従来型レーザと同等の強度をはるかに小さい出力で生成できる。これにより同じ材料に対して、従来レーザよりもはるかに低い出力での加工が可能となる。ファイバーレーザの価格とその出力との間には略直線的な関係があるので、できる限り低い出力で加工できることは商業的に有利である。この低出力で加工するためには、フォーカス位置を加工物並びにガス伝達ノズルに対して微細に最適化することが必要となる。M
2が1で直径が10μmのビームは、この種のビームでの潜在的な加工公差仕様である+/−75μmの共焦点パラメータをもっている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
国際特許出願国際公開第2009/112815号には、ファイバーレーザにおける統合プロセスモニタシステムが記載されている。この出願には、特別に設計されたクラッドモードストリッパにフォトダイオードを基本とするモニタを追加することで、材料加工装置からの後方反射光をどのように定量化しプロセス評価に利用するかが記述されている。その明細書に記載されたシステムを
図1と
図2に示す。このシステムは本発明の実施形態のあるものに利用することが可能である。ただし、本発明は異なる装置を用いて違う方法で実行されてもよい。
【0015】
図1はファイバーレーザを利用した材料加工装置を模式的に示したものである。ファイバーレーザ1は周知の方法でレーザビームの発生に用いられる。代表的なファイバーレーザは、1つまたは複数の励起用レーザダイオードからの励起放射(光)をダブルクラッドファイバーのクラッド層を介して伝送する手段を含み、励起光はファイバーのドープされたコアに吸収され、回折格子がファイバーアンプに接合されて共振キャビティを形成する。ファイバーレーザから発光されたレーザビームはダブルクラッドシングルモード伝達ファイバー2を経由して、一般的にレーザビームのコリメーションとフォーカシング用の光学系を備える加工ユニット3へ印加される。そうしてレーザビームはレンズ構成4を介して加工物5へフォーカスされ、そこで加工物の加工に供される。この加工としては典型的には、切断、溶接、表面改質やその他の工程が含まれる。
【0016】
これらの全てのタイプの加工に関して、光と材料との相互作用はすでに述べたように広範なパラメータに依存して変化する。前述したとおり加工物からの後方反射が、本発明の実施形態においてプロセス制御に利用される。
【0017】
図1には模式的に、ファイバーレーザの一部として後方反射の積分モニタ6が含まれている。この積分モニタからの後方反射は、システム制御及び解析装置7へ適用される。
【0018】
図1の装置においては、ファイバーレーザの出力はダブルクラッドシングルモード伝達ファイバー2へ伝達される。これは、一例として10μmのコア直径と200μmの第1クラッド直径を持ち、それぞれの開口数は0.08と0.46である。レーザ波長での後方反射は、レーザ出力がフォーカスされる加工物表面からの反射により生じる。他の波長での後方反射が、加工物とビームとの相互作用により形成されるプラズマによって生成されることがある。この後方反射の一部が結像光学系の中に集光されて、伝達ファイバーの第1のクラッド層の中に伝送される。この後方反射は伝達ファイバーの第1のクラッド層の中を伝搬してレーザに戻される。
【0019】
多くの異なる方式によって伝達ファイバーのクラッド層からの後方反射(すなわちフィードバック)放射が抽出され、材料加工操作のモニタに利用される。
【0020】
図1aに示すようにシングルモード伝達ファイバー2は、コア8、第1のクラッド層9、外側クラッド層10から成る。レーザ出力はコア8で加工物へ伝送される。後方反射光の大部分は、低屈折率の外側クラッド層10で導光されて第1のクラッド層9内を伝搬する。
【0021】
図2に示した実施例では伝達ファイバーで捕捉された反射信号は、外側の低屈折率の被膜をファイバーから剥がして、その領域を高屈折率材料中にポッティングすることにより、10/200μmのファイバーから抽出することができる。高屈折率材料は、例えば屈折率1.56のノーランド(Norland)社の光学接着剤であってもよい。好適な実施形態において、伝達ファイバーのマルチモードクラッド層内の導波光は数mmの距離に亘って剥き出される。ただしこの長さはこれとは違ってもよい。剥き出された光は次に任意の便利なモニタ装置でモニタされる。これは典型的にはフォトダイオードなどの光電子デバイスであってよい。
【0022】
この外側クラッド層は最も好適には、いかなる接合点からも離れた、伝達ファイバーの途切れのない長さのどこかで部分的に剥離される。この構成が、レーザから発光された進行光とクラッド層内の後方反射光との弁別を最大化する。ただし、レーザ構築を容易化するために接合点近傍に剥離部を置くことも好ましい場合がある。この場合には、コアの接合点で散乱される進行光とクラッド層内の後方反射光とを分別するための手段を備える必要がある。
図2は後者の一例であり、ダブルクラッドシングルモード伝達ファイバーの外側クラッド層10が剥離された剥離領域11に接合点が位置している。こうすることにより、第1のクラッド層内の後方反射光が好適な光電子デバイスで検出され、プロセスのモニタに利用可能となる。
【0023】
上述したように、接合点近傍で外側クラッド層が剥離される実施形態においては、接合部12そのもので散乱されて発生する進行波信号と逆行するクラッドモードとの間の弁別をすることが最も好ましい。これは、進行方向Fに向かう所望のレーザ信号の一部は接合点で不可避的に散乱され、それがモニタしようとする放射ではないからである。所望の放射は後方の方向Bへ向かって移動する放射である。
【0024】
従って、接合点付近で外側クラッド層が剥離される本発明の実施形態においては、クラッドモードストリッパ(CMS)が最も好適に利用される。
図3はCMSの一例を示している。これは、ファイバーの接合点と剥離部との近傍に配置され、空間的に離れた2つのポータル14と15を備える部品13から成る。これは、ポータル14が接合点12に重なるようにして剥離部分に対して配置される。部分15はそこから離れて(一般的には加工物/ビーム伝達端に近い側に)配置される。典型的な実施形態においては、ポータルの中心間の距離は約13mmであり、各ポータルの半径は約7mmである。ファイバーはこの部品内でポッティングされる。図示された実施形態においては、ポータルは略円形である。これは楕円であってもよいし、他の任意形状であってもよい。
【0025】
デバイス13には長手の溝20があり、その中に剥離部を含む光学伝達ファイバーが配置される(ポッティングされる)。図においてAからBの間がファイバーの剥離部であり、ポータル14が接合点に重なっている。ポータル15はそこから離れている。
【0026】
1つまたは複数のフォトダイオードまたはその他の光電子手段など光検出器が、接合部から離れた場所にあるポータル15に保持される光を検出するように構成されている。
【0027】
ポータル14は接合位置そのもので散乱される任意の光(これは主としてレーザ放射であり、モニタしようとしている後方反射ではない)を含む様になっており、従ってこれはモニタ地点からは隔離されている。
【0028】
ファイバーの剥離部分近傍で望ましい放射と望ましくない放射とを空間的に隔離するそのほかの手段が利用されてもよい。実効的には、進行放射と逆放射からの散乱を空間的に隔離する任意の手段が利用されてよい。一般的に、結果としてモニタ用フォトダイオードに少なくとも10対1より大きい感度が得られる。
【0029】
本発明の実施形態において、ターゲット材料(これはフォーカスを設定するためのサンプルターゲットやその他の任意のターッゲトであってよいし、または具体的に加工しようとする材料であってもよいが、ここでは加工物と称する)がフォーカス領域内に配置される。ターゲット材料は好ましくはステンレススチールである。ただし、他の材料であってもよい。ガスアシスト切断ヘッドの場合、ガス先端に対してフォーカスが見えるように加工物に対するノズルの高さを設定することができる。
【0030】
図1に示すように、ファイバーレーザは、加工ユニット3とレンズ4を経由して加工物6へファイバーパルスを伝送するように構成され、フォーカスレンズと加工物6との間の距離Fが軸方向Zに対して可変となるように(あるいはZ方向の成分を有するように)離間している。これはフォーカスレンズを移動させることにより、及び/又は加工物を移動させることにより行われる。本明細書で使用されている“出力”という用語は、レーザ放射がファイバーから自由空間に放出されて加工物に衝突するまでの部分を指している。従って、
図1に示す実施形態においては、これはフォーカスレンズ4を離れて加工物5に至る途中の部分を指す。
【0031】
図4a〜4dはパルスレーザ出力からの後方反射放射の典型的な値を示す。この場合、ファイバーレーザは100μs、50Wピーク値の方形パルスを形成するようになっている。このパルスからのIR後方反射がある時間幅(それぞれの図において140μs)に亘って測定される。測定される後方反射は赤外成分である。
図4aは加工物がフォーカスから0.1mmずれている場合の結果を示す。すなわち、加工物は、レンズ4のフォーカス位置から0.1mm外れた位置にある。
図4bは加工物がフォーカスから0.2mmずれている場合の結果の波形を示し、
図4cはフォーカスから0.3mmずれている場合、
図4dはフォーカスから0.4mmずれている場合を示す。
【0032】
ターゲットがフォーカスから離れるほど赤外(IR)後方反射光の量が増大することが分かる。波形の形状は、所定容量の材料がレーザによって加熱されて沸点に到達するまでの時間によって変化する。材料がこの相変化を起こすまでは、金属表面(これは一般的にステンレススチールまたはそのほかの金属表面すなわち反射性の表面であることを思いおこされたい)は入射光に対して反射性である。ビームがフォーカスからずれている場合、大容積が加熱され、従って沸点に到達するまでに長い時間がかかる。従って、大量の後方反射が見られる。フォーカスが合っている場合には後方反射は実際的には零である。これは放射がほとんど瞬時に材料と結合し、その結果後方反射を生じないことを意味する。この後方反射IRの一部が伝達ファイバーに集められて放出され、フォトダイオード/クラッドモードストリッパの組合せにより検出される。
【0033】
図5は、
図1〜3の装置を利用する例示的方法を用いたステップを示すフローチャートである。加工物がフォーカスレンズから相対的に第1の距離Xに配置される。このステップは図には特に示されていない。次にレーザが運転を開始して、レーザエネルギー、好ましくはパルスレーザエネルギーを発生させる。1つの特定の実施形態では、ステップ51において100μs、50Wピークの方形パルスが生成される。後方反射IRまたはその一部が例えば
図5に示したようなCMS(クラッドモードストリッパ)により、またはその他の放射を除去する手段によって捕捉される。捕捉された光は測定され、ステップ52でファイバーレーザ1内のソフトウェアにより後方反射波形が積分される。こうして、
図4a、
図4bなどに示された一連のサンプルが生成され、これらの積分が計算されて1つの数値が生成される。これらの値が、Z方向の距離Fとステップ53での積分と共に記録される。次に、加工物が、Z方向にフォーカスレンズ4に近づく方向または離れる方向のいずれかに移動される。これとは別の実施形態においては、加工物の代わりに加工ユニットの終端レンズを動かしてもよいし、またはその両方を相対的に動かしてもよいことに留意されたい。新しいフォーカス位置Fのそれぞれに対し、加工物をXまたはY方向に動かすことによってターゲットのまだ加工されていない領域が選択される(ステップ54)。そして、ステップ51で更なるパルスが生成されて、異なる距離での新規の後方反射信号が検出され、新規の積分値が計測される。
【0034】
ある距離の範囲を連続的に繰り返すことによって一連の積分値が計測され、これらの値がステップ56でプロットされる。このプロットされた結果の例を
図6に示す。このグラフは、ターゲットからのフォーカスレンズの相対距離に対して後方反射信号の積分値を示すものである。この種の放物線は、後方反射信号をフォーカス位置に対してプロットした場合に典型的なものである。第1のプロット61は参照プロットであり、第2のプロット62はレンズを100μmほど移動させた場合のプロットを示す。放物線の頂点がこの焦点距離の変化でどのように変化するかが示されている。曲線の零勾配を見つけることにより、フォーカスがこのビームの共焦点パラメータの範囲内であることが分かる。放物線の頂点を見つけることで、ビームの共焦点パラメータよりもはるかに小さな最高精度でフォーカス位置を特定することができる。
【0035】
図7は焦点距離の異なるレンズに対する同様のプロットを示すものである。この場合には、プロット71は焦点距離100mmのレンズを表し、プロット62は焦点距離160mmのレンズを表している。ここでも、両方の場合に最小値があり、正確な位置決めのための正確な焦点距離を容易に確証することができる。これらの3つのビームのパラメータは以下の通りである。
【表1】
【0036】
本発明の実施形態においては、フォーカス位置はそのビーム自身の共焦点パラメータ内に見つけることが可能である。レンズと加工物との間の距離がレンズの焦点距離より大きい場合には、それより小さい場合に比べてCMS部で取り出される後方反射光の割合が大きくなることに留意されたい。これは
図6と
図7の両方において見られ、0mmの焦点の右側と左側との間に非対称性がある。この非対称性は、焦点を見つける作業において方向性を与えることに利用できる。
【0037】
いくつかの実施形態においては、感度を最適化するためにプローブパルスのエネルギー選択が重要となる。エネルギーは、ターゲット上で沸点に到達することが可能となるように選択されるべきである。この結果の相変化によって、最適フォーカスにおいてレーザ光はほぼ100%吸収され、反射は零となる。フォーカス位置の広範囲に亘って相変化が急速に起きるほどまでにレーザのピーク出力を高く設定すると、本方法の感度が低下するであろう。逆にピーク出力が低すぎると、全く相変化が起きない(すなわち沸騰しない)か、フォーカス位置に対してきわめて敏感になるかであり、その場合には本方法の効果が全くなくなるわけではないが、そのダイナミックレンジが損なわれる。一例として、ターゲットがステンレススチールで焦点サイズが100μm未満である場合、パルス持続時間が100〜500μsの範囲に対して、最適パルスエネルギーは5〜50mJであることが分かっている。他の種類のターゲットに対する最適パルスエネルギーは、当業者であれば計算または試行錯誤により決定することが可能であろう。
【0038】
後方反射信号の解析に別の方法を利用することも可能である。例えば、後方反射信号振幅を最小化することで焦点を見つけることが可能である。
【0039】
別の実施形態では、パルスの一部のみが利用される。一例として、信号の一部、例えばnをある数として、
図4aのパルスの最初、または終わり、または中間のnμs分だけを利用してもよい。ここでnは、10または他の任意の数であってよい。
【0040】
本発明の更なる応用は、加工の前に加工物の輪郭形状を描くツールとして利用することである。
【0041】
一変形例においては、このデバイスを利用して誤差信号の最小化により加工物までのフォーカスレンズの高さFをアクティブ制御する。この場合、レーザ1の加工部分から、加工物5をその方向へ移動させる手段までがフィードバックループに含まれる。これを
図1に破線70で模式的に示す。この代わりに、勿論レンズを動かすことも可能である。フィードバックループがIR光と共に後方反射した可視光を検出する手段も含んでいて、材料加工応用への精度と順応性を改善してもよい。国際公開第2009/112815号には、CMSを変形してIRと共に可視光の後方反射を検出する方法が示されている。
【0042】
ビーム品質因子あるいはビーム伝搬因子とも呼ばれるM
2因子は、レーザビームのビーム品質の一般的な指標である。ISO標準11146[4]によれば、これはビームパラメータ積をλ/πで割ったものとして定義され、この後者は同一波長の回折制限ガウシアンビームのビームパラメータ積である。言い換えれば、ビーム発散半角は、
θ=M2λ/πω
であり、ここでW
0はビームウェストにおけるビーム半径であり、λは波長である。レーザビームはしばしば、“M
2倍に回折制限される”といわれる。回折制限されたビームはM
2因子が1であり、ガウシアンビームである。これより小さいM
2の値は物理的に不可能である。ガウシアンビームの共焦点パラメータは、
Z=πw
o2/(M
2λ)
で与えられる。これはビームがルート2倍に拡大した点に対応する。
【0043】
レーザビームのM2因子は、所与のビーム発散角に対するビームのフォーカス可能な度合いを制限し、それはフォーカスレンズの開口数で制限されることが多い。屈折力と共に、ビーム品質因子がレーザビームの輝度を決定する。
【0044】
実施形態は、単純かつ低コストで、ファイバーレーザそのものに統合されており、ビーム伝達/加工物領域にそれ以外の光学系を必要としない。ビーム伝達領域にそれ以外の光学系を必要としないことは、複雑さ、コスト及び光学系にとって相反する環境の可能性を低減する。ファイバーレーザに組込まれるということは、レーザビームの伝達のされ方に拘らず、すべてのレーザが焦点を結びうるということを意味している。
【0045】
上記の実施形態は、加工物から後方反射され、伝達ファイバーのクラッド層を伝送される光を利用してファイバーのフォーカス位置を配置する方法を利用する。平均出力の高い(これに限定されるものではないが、典型的には500W以上の)レーザに関して、レーザ放射が伝達光学系により吸収され、その結果レンズ群に熱レンズ効果を生じることにより、フォーカス位置及び品質が経時変化することがありうることが分かっている。その結果、典型的には数秒または数10秒の時間で焦点のフォーカス位置が顕著にずれることがある。このことはすべてのユーザにとってフォーカス最適化を複雑化する。エンドユーザは冷えている時にフォーカスを設定して、フォーカスのドリフトを経験することになり、これがプロセスの劣化を起こす可能性がある。
【0046】
図8〜
図11は、フォーカス位置の変化を追跡し、ユーザがフォーカスの経時変化を定量化し、それを補償する方法を示す。
【0047】
図8は使用され得る波形の一例を示す。波形は、典型的には1msかそれ以上の持続時間のフルパワーパルス60で構成される。このパルスの間に、典型的には図示したように50または100μsの非常に短いテストパルス61が伝送される。レーザに対して相対移動する加工物にテストパルスが及ぼす効果は62に示されており、またフルパワーパルスの効果は63に模式的に示されている。
【0048】
加工物はパルス状のフォーカスレーザに対して相対移動し、測定のターゲットとして作用する。1つの特定のアルゴリズムを例示としてのみ記述すると以下の様である。
A.加工物を動かすかまたはレーザビームを動かすか(またはその両方)によりフォーカスを加工物上でスキャンする。
B.
図8に示す波形を利用する。これは、フィードバックレベル、したがってフォーカス品質を測定するための非常に短い、例えば50μsのテストパルスと、光学システムのレンズまたはレンズ群を加熱する作用のある、少なくともmsの持続時間を持つフルパワーの比較的長いパルスとから成る。長く、高パワーのパルスに比べるとテストパルスの継続時間ははるかに短い。従って光学システムは実効的には、スタートしてからの経過時間の間ずっとフルパワーが掛けられていたとした場合に非常に近い熱的負荷を受ける。
C.各テストパルスからのフィードバックが測定され、これで実効的にフォーカス位置が計測される。
D.光学システムの推定熱時定数の間、このプロセスが継続される。この時定数は当業者には理解されるもので、典型的には数秒である。
【0049】
図9は代表的な後方反射信号をフォーカス位置に対して示したものである。この説明は例えば
図6を参照されたい。
図8のテストは
図9の曲線64に沿う任意の点で行うことができる。点Aでスキャンが行われるとすると、光学系の熱効果に重大な問題がなければ零が生成される。
【0050】
例えば点Bで行うと、信号の平均誤差は傾斜上にあるのでより大きい感度が与えられ、フォーカス変化の方向も示される。スキャンを行う点の選択は、最も理想的には例えば点Bのような最大傾斜の点である。ただし、一般的にはレーザに損傷を与える可能性があるので、フォーカスポイントから離れ過ぎるべきではない。
【0051】
図10は、光学システムが良好な熱特性を有するシステムのテスト結果を模式的に示す。ここでは誤差に変化がなくしたがってフォーカスの変化がない。誤差信号は略一定である。
図10は熱特性の良くないシステムを示す。ここではフォーカスは時間とともにずれていく傾向にあり、誤差66が時間変化していることがそれを示している。