特許第5965975号(P5965975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965975非接触給電システム、送電装置、給電方法および送電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965975
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】非接触給電システム、送電装置、給電方法および送電方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/90 20160101AFI20160728BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20160728BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20160728BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   H02J50/90
   B60L11/18 C
   B60M7/00 X
   B60L5/00 B
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-243911(P2014-243911)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-111727(P2016-111727A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年4月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】深江 唯正
(72)【発明者】
【氏名】田渕 功
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 義範
【審査官】 田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/001524(WO,A1)
【文献】 特開2002−137735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12、5/00−5/42、
7/00−13/00、15/00−15/42
B60M1/00−7/00
G06K17/00−19/18
H01F38/14、38/18
H02J5/00、7/00−7/12、7/34−7/36、
50/00−50/90
H04B1/00、1/30、1/59、1/72、5/00−5/06、
11/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電システムであって、
前記送電装置は、
所定のPN符号を送信PN符号として発生させる送信PN符号発生手段と、
前記送信PN符号に基づく送信PN信号を送信する送信PN信号送信手段と、
前記送信PN信号送信手段から送信された送信PN信号の反射信号を検出する反射信号検出手段と、
前記反射信号検出手段により検出された反射信号から受信PN符号を発生させる受信PN符号発生手段と、
前記送信PN符号と前記受信PN符号との相関値を算出する相関値算出手段と、
前記相関値に基づき、前記受電装置が受電可能エリア内に存在するか否かを判定するエリア内検出手段と、
前記エリア内検出手段により受電可能エリア内に存在すると判定されたときに、交流電力を発生させる電力発生手段と、
前記電力発生手段により発生される交流電力を前記受電装置に送電する送電手段と、
を備え、
前記受電装置は、
前記送電手段から送電される交流電力を受電する受電手段と、
前記受電手段により受電される交流電力を所定の電力特性に変換し、負荷に供給する電力変換手段と、
を備える非接触給電システム。
【請求項2】
前記反射信号は、前記受電装置により反射されて戻ってくる送信PN信号である、
請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項3】
前記所定のPN符号は、符号系列の1チップ時間幅が最大検出距離を前記送信PN信号が往復するのに要する時間に等しいかまたはそれよりも長い時間に設定されたPN符号系列を表すPN符号である、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の非接触給電システム。
【請求項4】
前記PN符号系列は、最長符号系列(M系列)である、
請求項3に記載の非接触給電システム。
【請求項5】
前記エリア内検出手段は、前記相関値から前記送信PN信号の反射時間を算出し、算出した反射時間から前記送電装置と前記受電装置との距離を推定し、推定した距離が所定距離以内となったときに、前記受電装置が受電可能エリア内に存在すると判定する、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項6】
前記受電可能エリアは、前記送電手段の中心位置からの距離に基づき設定される、
請求項5に記載の非接触給電システム。
【請求項7】
前記エリア内検出手段は、前記相関値が閾値を超えたときに、前記受電装置が受電可能エリア内に存在すると判定する、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項8】
前記送電手段は、
前記送信PN信号の送信と、前記交流電力の送電を同時に行うとき、前記送信PN信号送信手段から出力される前記送信PN信号を、前記電力発生手段から出力される交流電力に重畳させて出力する、
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項9】
前記反射信号検出手段は、
前記交流電力の周波数成分を除去する周波数成分除去回路を、備えている、
請求項8に記載の非接触給電システム。
【請求項10】
前記送信PN信号送信手段は、前記送信PN符号によって信号をスペクトル拡散変調した送信PN信号を送信する、
請求項1ないし請求項9に記載の非接触給電システム。
【請求項11】
前記負荷は、二次電池または畜電器である、
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項12】
前記送電手段および前記受電手段は、互いに磁気結合された一対のLC共振コイルであり、前記電力発生手段から出力された交流電力が前記一対のLC共振コイルを介して非接触で前記受電装置に伝送される、
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項13】
受電装置に非接触で電力を供給する送電装置であって、
所定のPN符号を送信PN符号として発生させる送信PN符号発生手段と、
前記送信PN符号に基づく送信PN信号を送信する送信PN信号送信手段と、
前記送信PN信号送信手段から送信された送信PN信号の反射信号を検出する反射信号検出手段と、
前記反射信号検出手段により検出された反射信号から受信PN符号を発生させる受信PN符号発生手段と、
前記送信PN符号と前記受信PN符号との相関値を算出する相関値算出手段と、
前記相関値に基づき、前記受電装置が受電可能エリア内に存在するか否かを判定するエリア内検出手段と、
前記エリア内検出手段により受電可能エリア内に存在すると判定されたときに、交流電力を発生させる電力発生手段と、
前記電力発生手段により発生される交流電力を前記受電装置に送電する送電手段と、
を備える送電装置。
【請求項14】
送電装置から受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電システムの給電方法であって、
所定のPN符号を送信PN符号として発生させる第1工程と、
前記送信PN符号に基づく送信PN信号を送信する第2工程、
前記第2工程により送信された送信PN信号の反射信号を検出する第3工程と、
前記第3工程により検出された反射信号から受信PN符号を発生させる第4工程と、
前記送信PN符号と前記受信PN符号との相関値を算出する第5工程と、
前記相関値に基づき、前記受電装置が受電可能エリア内に存在するか否かを判定する第6工程と、
前記第6工程により受電可能エリア内に存在すると判定されたときに、交流電力を発生させる第7工程と、
前記第7工程により発生される交流電力を前記受電装置に送電する第8工程と、
前記第8工程により送電される交流電力を受電する第9工程と、
前記第9工程により受電される交流電力を所定の電力特性に変換し、負荷に供給する第10工程と、
を備える非接触給電システムの電力供給方法。
【請求項15】
受電装置に非接触で電力を供給する送電装置の送電方法であって、
所定のPN符号を送信PN符号として発生させる第1工程と、
前記送信PN符号に基づく送信PN信号を送信する第2工程、
前記第2工程により送信された送信PN信号の反射信号を検出する第3工程と、
前記第3工程により検出された反射信号から受信PN符号を発生させる第4工程と、
前記送信PN符号と前記受信PN符号との相関値を算出する第5工程と、
前記相関値に基づき、前記受電装置が受電可能エリア内に存在するか否かを判定する第6工程と、
前記第6工程により受電可能エリア内に存在すると判定されたときに、交流電力を発生させる第7工程と、
前記第7工程により発生される交流電力を前記受電装置に送電する第8工程と、
を備える送電装置の送電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置が受電可能エリア内に存在するときに、送電装置から受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電システム、送電装置、給電方法、および、送電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送電装置と受電装置との間を一対のコイルで磁気結合し、送電装置で発生した交流電力を磁気結合した一対のコイルで受電装置に非接触にて伝送する非接触給電システムが知られている。そして、受電装置は、伝送された交流電力を、内蔵される蓄電装置(例えば、リチウム・イオン電池)の特性にあわせて電力変換し、蓄電装置に給電(充電)している。このような非接触給電システムは、現在、電気自動車や産業用機器、携帯用電子機器等に利用されている。例えば、地面に埋設された送電装置から、電気自動車に搭載された受電装置に非接触にて電力供給し、電気自動車に搭載されたバッテリなどの蓄電装置に充電する非接触式電力供給装置が知られている(特許文献1)。また、送電装置と受電装置とで無線通信を行うことで受電装置の位置を検出し、その位置に基づき、送電装置から受電装置への非接触給電を開始する充電システムや充電装置が知られている(特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−237890号公報
【特許文献2】特開2013−9479号公報
【特許文献3】特開2010−88178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2や特許文献3では、送電装置が受電装置の位置を検出するために、受電装置および送電装置の双方に通信装置を設けておく必要があり、受電装置の大型化やコスト増を招くことになる。また、受電装置が電気自動車や電子機器等の場合、これらに搭載された二次電池に蓄電された電力により通信装置を駆動させなくてはならず、二次電池に蓄電された電力を消費してしまうと、受電装置全体の駆動時間が短くなってしまうため、電力消費は極力軽減したい。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて創作されたものであり、受電装置に通信装置を設けることなく、送電装置が受電装置の位置を検出し、受電装置が受電可能な領域内に存在する場合に、電力供給を行うことが可能となる非接触給電システム、送電装置、給電方法および送電方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供される非接触給電システムは、送電装置から受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電システムであって、前記送電装置は、所定のPN符号を送信PN符号として発生させる送信PN符号発生手段と、前記送信PN符号に基づく送信PN信号を送信する送信PN信号送信手段と、前記送信PN信号送信手段から送信された送信PN信号の反射信号を検出する反射信号検出手段と、前記反射信号検出手段により検出された反射信号から受信PN符号を発生させる受信PN符号発生手段と、前記送信PN符号と前記受信PN符号との相関値を算出する相関値算出手段と、前記相関値に基づき、前記受電装置が受電可能エリア内に存在するか否かを判定するエリア内検出手段と、前記エリア内検出手段により受電可能エリア内に存在すると判定されたときに、交流電力を発生させる電力発生手段と、前記電力発生手段により発生される交流電力を前記受電装置に送電する送電手段と、を備え、前記受電装置は、前記送電手段から送電される交流電力を受電する受電手段と、前記受電手段により受電される交流電力を所定の電力特性に変換し、負荷に供給する電力変換手段と、を備える。
【0007】
なお、前記反射信号は、前記受電装置により反射されて戻ってくる送信PN信号である。
【0008】
好ましくは、前記所定のPN符号は、符号系列の1チップ時間幅が最大検出距離を前記送信PN信号が往復するのに要する時間に等しいかまたはそれよりも長い時間に設定されたPN符号系列を表すPN符号である。
【0009】
また、前記PN符号系列は、最長符号系列(M系列)である。
【0010】
好ましくは、前記エリア内検出手段は、前記相関値から前記送信PN信号の反射時間を算出し、算出した反射時間から前記送電装置と前記受電装置との距離を推定し、推定した距離が所定距離以内となったときに、前記受電装置が受電可能エリア内に存在すると判定する。
【0011】
そして、前記受電可能エリアは、前記送電手段の中心位置からの距離に基づき設定される。
【0012】
なお、前記エリア内検出手段は、前記相関値が閾値を超えたときに、前記受電装置が受電可能エリア内に存在すると判定してもよい。
【0013】
好ましくは、前記送電手段は、前記送信PN信号の送信と、前記交流電力の送電を同時に行うとき、前記送信PN信号送信手段から出力される前記送信PN信号を、前記電力発生手段から出力される交流電力に重畳させて出力する。
【0014】
また、前記反射信号検出手段は、前記交流電力の周波数成分を除去する周波数成分除去回路を、備えている。
【0015】
また、前記送信PN信号送信手段は、前記送信PN符号によって信号をスペクトル拡散変調した送信PN信号を送信する。
【0016】
好ましくは、前記負荷は、二次電池または畜電器である。
【0017】
また、前記送電手段および前記受電手段は、互いに磁気結合された一対のLC共振コイルであり、前記電力発生手段から出力された交流電力が前記一対のLC共振コイルを介して非接触で前記受電装置に伝送される。
【0018】
本発明の第2の側面によって提供される送電装置は、受電装置に非接触で電力を供給する送電装置であって、所定のPN符号を送信PN符号として発生させる送信PN符号発生手段と、前記送信PN符号に基づく送信PN信号を送信する送信PN信号送信手段と、前記送信PN信号送信手段から送信された送信PN信号の反射信号を検出する反射信号検出手段と、前記反射信号検出手段により検出された反射信号から受信PN符号を発生させる受信PN符号発生手段と、前記送信PN符号と前記受信PN符号との相関値を算出する相関値算出手段と、前記相関値に基づき、前記受電装置が受電可能エリア内に存在するか否かを判定するエリア内検出手段と、前記エリア内検出手段により受電可能エリア内に存在すると判定されたときに、交流電力を発生させる電力発生手段と、前記電力発生手段により発生される交流電力を前記受電装置に送電する送電手段と、を備える。
【0019】
本発明の第3の側面によって提供される非接触給電システムの給電方法は、送電装置から受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電システムの給電方法であって、所定のPN符号を送信PN符号として発生させる第1工程と、前記送信PN符号に基づく送信PN信号を送信する第2工程、前記第2工程により送信された送信PN信号の反射信号を検出する第3工程と、前記第3工程により検出された反射信号から受信PN符号を発生させる第4工程と、前記送信PN符号と前記受信PN符号との相関値を算出する第5工程と、前記相関値に基づき、前記受電装置が受電可能エリア内に存在するか否かを判定する第6工程と、前記第6工程により受電可能エリア内に存在すると判定されたときに、交流電力を発生させる第7工程と、前記第7工程により発生される交流電力を前記受電装置に送電する第8工程と、前記第8工程により送電される交流電力を受電する第9工程と、前記第9工程により受電される交流電力を所定の電力特性に変換し、負荷に供給する第10工程と、を備える。
【0020】
本発明の第4の側面によって提供される送電装置の送電方法は、受電装置に非接触で電力を供給する送電装置の送電方法であって、所定のPN符号を送信PN符号として発生させる第1工程と、前記送信PN符号に基づく送信PN信号を送信する第2工程、前記第2工程により送信された送信PN信号の反射信号を検出する第3工程と、前記第3工程により検出された反射信号から受信PN符号を発生させる第4工程と、前記送信PN符号と前記受信PN符号との相関値を算出する第5工程と、前記相関値に基づき、前記受電装置が受電可能エリア内に存在するか否かを判定する第6工程と、前記第6工程により受電可能エリア内に存在すると判定されたときに、交流電力を発生させる第7工程と、前記第7工程により発生される交流電力を前記受電装置に送電する第8工程と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、送電装置が発生させた送信拡散符号と、送信拡散信号の反射信号から得られる受信拡散符号と、の相関をとり、この相関に基づき、受電装置が受電可能エリア内に存在するか否かを判断するようにした。したがって、受電装置に通信装置を設けることなく、送電装置は、電気自動車が受電可能エリア内に存在するか否かを判断することができる。これにより、受電装置の大型化やコスト増の防止、および、消費電力の低減が可能となる。そして、その判断結果に基づき、受電装置が受電可能エリア内に存在するときに高周波交流電力を送電するようにした。したがって、必要なときに送電装置が給電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る非接触給電システムの全体構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る送電装置の構成例を示す図である。
図3】PN符号を説明するための図である。
図4】PN符号の相関(自己相関)を説明するための図である。
図5】本発明の実施形態に係る受電装置の構成例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る測距処理を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る送電制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る非接触給電システムの実施例として、電気自動車等に内蔵された二次電池を充電する充電システムに適用した場合を例に説明する。図1は、本発明に係る非接触給電システムの全体構成の一例を示す図であり、非接触給電システムは、地面に埋設された送電装置1と、電気自動車に搭載された受電装置3と、で構成されている。
【0024】
非接触給電システムは、送電装置1によって発生させた高周波交流電力を、磁気結合された一対のアンテナ(アンテナ17、31)を介して、非接触により受電装置3に送電し、受電装置3が受電した高周波交流電力を所定の電力特性に変換した後、二次電池(バッテリ)4に充電するシステムである。
【0025】
送電装置1は、アンテナ17を含んで構成され、アンテナ17を介して、電力を送電するものである。送電装置1は、拡散符号(以下、「PN(Pseudo Noise)符号」とする)を発生させ、送信PN信号として、アンテナ17から出力し、その反射信号に基づき、電気自動車が受電可能エリア内に存在するか否かを判断する。そして、送電装置1は、受電可能エリア内に存在すると判断したとき、高周波交流電力を発生させ、アンテナ17を介して、受電装置3に送電を行う。なお、送電装置1の形状は図示したものに限られず、例えば、その一部が地面から突出する形状であってもよい。
【0026】
受電装置3は、アンテナ31を含んで構成され、アンテナ31を介して、電力を受電するものである。受電装置3は、送電装置1から高周波交流電力を受電すると、その高周波交流電力をバッテリ4に適した電力特性に変換して、バッテリ4の充電を行う。また、受電装置3は、バッテリ4の充電が完了したと判断した場合、アンテナ31を開放し、バッテリ4への充電を停止させる。
【0027】
バッテリ4は、電気自動車に搭載され、電気自動車の動力源となる電力を蓄積する二次電池であり、例えば、リチウム・イオン電池やニッケル水素電池などである。本実施形態では、リチウム・イオン電池を例に説明する。リチウム・イオン電池は、定電流で充電を開始し、電池電圧が所定の電圧に上昇すると、定電圧に切り換えて充電電流が所定の電流に変化するまで充電を行う定電流定電圧充電方式の二次電池である。よって、受電装置3は、この定電流定電圧充電制御を行い、定電流定電圧充電制御に適した電力特性に変換する。なお、バッテリ4は、大容量のキャパシタなどであってもよい。
【0028】
次に、送電装置1および受電装置3の内部構成の詳細について、図を用いて説明する。
【0029】
図2は、送電装置1の構成例を示す図である。送電装置1は、高周波交流電力を発生させ、受電装置3に送電するためのものである。送電装置1は、電気自動車が所定のエリア内(受電可能エリア内)に存在しているときに、高周波交流電力を発生させ、アンテナ17から送電する。送電装置1は、高周波電源11、クロック発振回路12、送信PN符号発生部13、キャリア信号発生部14、変調部15、結合回路16、アンテナ17、分配回路20、反射信号検出部21、受信PN符号発生部22、相関部23、距離検出部24、および、制御部25を含んで構成される。
【0030】
高周波電源11は、高周波交流電力を出力するものであり、図示しない商用電源から入力される商用電力(交流電力)を全波整流し、直流電力に変換する整流回路と、変換した直流電力を所定周波数(例えば、13.56MHz)の高周波交流電力に変換するインバータ回路と、を含んで構成される。高周波電源11は、後述する制御部25から入力されるPWM信号に基づき、インバータ回路を動作させ、高周波交流電力を発生させる。整流回路は、商用電源より入力される交流電力からインバータ回路への入力電力を生成するブロックである。整流回路は、例えば、4個の半導体整流素子をブリッジ接続した整流回路で商用電源から入力される商用電圧(例えば、AC200[V])を全波整流し、整流後のレベルを平滑回路で平滑化して直流電圧を生成する周知の電源回路で構成される。
【0031】
インバータ回路は、整流回路から入力される直流電力を、制御部25から入力されるPWM信号に基づき、所定周波数の高周波交流電力に変換して出力するブロックである。インバータ回路は、4個のスイッチング素子をブリッジ接続した、周知の電圧制御型インバータ回路で構成される。スイッチング素子としては、例えば、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、サイリスタ、IGBT、MOSFET等の半導体スイッチング素子が用いられる。4個のスイッチング素子は、制御部25から入力されるPWM信号によって、各スイッチング素子のゲートに電圧が入力され、オン状態とオフ状態とを切り替えることで、整流回路から入力される直流電力を交流電力に変換する。なお、スイッチング素子にはそれぞれ、ダイオードが逆並列で接続されており、スイッチング素子の切り替えによって発生する逆起電力による逆方向の電圧が印加されないようにしている。また、高周波電源11は、電流センサや電圧センサを備えており、インバータ回路から出力される電流および電圧を測定し、その測定結果を制御部25に出力する。
【0032】
クロック発振回路12は、送電装置1の動作のための最も基本的なタイミング信号であるシステム・クロック信号を発生させる。クロック発振回路12が発生させたシステム・クロック信号は、送電装置1の各部に利用される。
【0033】
送信PN符号発生部13は、システム・クロック信号に基づき、PN符号を発生させ、送信PN符号として変調部15に出力するものである。例えば、送信PN符号発生部13は、最長系列(最大周期シフトレジスタ系列、M系列ともいう。以下、「M系列」とする)のPN符号を発生させる線形帰還シフトレジスタ(Linear Feedback Shift Register;LFSR)で構成される。n(n;正の整数)段で構成されるLFSRによって生成されるM系列は、2n−1[ビット]の長さを持つ。図3(a)は、「0」と「1」との2値で構成されるM系列のPN符号の模式図であり、PN符号長N(PN符号の1周期)が7ビット(n=3)の場合の例である。図3(b)は、図3(a)に示すM系列のPN符号のパルス波形を示す。送信PN符号発生部13は、このパルス信号を変調部15に出力する。図示するように、送信PN符号発生部13が発生させるPN符号長Nが7ビットのM系列として、例えば、「1110100」がある。また、上記nの値が大きくなると、PN符号長Nが長くなる。なお、このビットはチップとも呼ばれる。
【0034】
図3(a)に示すPN符号の1ビットの情報を送信するのに要する時間は1チップ時間幅Tcと呼ばれ、最大検出距離を電磁波が往復するのに要する時間に等しいかそれより長い時間に設定される。例えば、最大検出距離を30mとすると、電磁波が30mを往復する(60mを伝播する)のに要する時間は、光速(電磁波の速度)を約3×108m/sとすると、0.2μsecとなる。これよりPN符号の1チップ時間幅Tcは0.2μsecが設定される。よって、送信PN符号発生部13は、1チップ時間幅Tcが0.2μsecであるPN符号を発生させる。このときの送信PN符号発生部13が発生させるPN符号は、1チップ時間幅Tcが0.2μsecであるので、周波数が5MHzのPN符号となる。ここで、真空中を伝播する電磁波の速度は一定であり、その速度は真空中の光速に等しく、約3×108[m/s]である。空気中の屈折率は、真空中とほぼ同じであるから、電磁波の速度を真空中の光速として利用することが可能である。最大検出距離を長くしたいときには、1チップ時間幅Tcを長く設定し、反対に最大検出距離を短くしたいときには、1チップ時間幅Tcを短く設定する。ただし、最大検出距離は、後述する受電可能エリアの設定距離よりも短くなることはない。
【0035】
また、上記PN符号の周波数に合わせ、逆算することで、1チップ時間幅Tcを設定することも可能である。例えば、上記具体例において、5MHzの周波数のPN符号を発生させるためには、その逆数をとり、1チップの周期が0.2μsecとなるので、これを1チップ時間幅Tcとして設定してもよい。この場合、0.2[μsec](1チップ時間幅Tc)×3×108[m/s](光速)/2(往復を考慮)=30[m]が最大検出距離となる。
【0036】
さらに、送信PN符号発生部13が発生させる送信PN符号のPN符号長Nが短い(nが小さい)と、後述する相関を求めるとき、すなわち、後述する距離検出部24が行う距離(遅延時間)の測定において、PN符号周期の整数倍の不確定さが生じてしまう。例えば、n=2とすると、PN符号長Nが3ビット(22−1)であり、最大検出距離が上記のように30m(1チップ時間幅が上記0.2μsec)であるとすると、後述する相関値が90mごとに同一の値となってしまう。すなわち、2m離れた物体に反射したPN符号と、92m離れた物体に反射したPN符号との区別がつかないため、上記不確定さが生じてしまう。よって、これを防ぐために、PN符号長Nを長くしておく必要がある。
【0037】
キャリア信号発生部14は、所定周波数のキャリア信号を発生させ、変調部15に出力するものである。キャリア信号の周波数は、高周波交流電力の周波数と同一の周波数であってもよく、異なる周波数であってもよい。また、送信PN符号の周波数と同一の周波数であってもよく、異なる周波数であってもよい。
【0038】
変調部15は、キャリア信号発生部14から入力されるキャリア信号を、送信PN符号発生部13から入力される送信PN符号でスペクトル拡散変調し、送信PN信号として、結合回路16に出力する。変調部15は、直接拡散(DS;Direct Sequence)方式によるスペクトル拡散変調を行う。その他、PN符号でスペクトル拡散変調可能な方式であれば、周波数ホッピング(FH;Frequency Hopping)方式などであってもよい。また、本実施形態では、キャリア信号を、送信PN符号でスペクトル拡散変調して、送信PN信号を出力する例を示すが、送信PN符号発生部13が発生させる送信PN符号を送信PN信号として、出力するようにしてもよい。この場合、キャリア信号発生部14および変調部15は必ずしも必要な構成ではない。
【0039】
結合回路16は、高周波電源11から高周波交流電力が出力されているときには、この高周波交流電力に変調部15から出力される送信PN信号を重畳させ、アンテナ17に出力する。一方、結合回路16は、高周波電源11から高周波交流電力が出力されてないときには、送信PN信号のみをアンテナ17に出力する。
【0040】
アンテナ17は、高周波電源11から出力される高周波交流電力を、磁気結合された受電装置3のアンテナ31に非接触送電するものである。アンテナ17は、例えば、複数ターンの円形コイルからなるインダクタとそのインダクタに直列に接続されたキャパシタとのLC共振回路で構成される。アンテナ17では、LC共振回路の共振周波数fo(=1/[2π・√(L・C)])(L:インダクタの自己インダクタンス、C:キャパシタのキャパシタンス)が高周波電源11から出力される高周波交流電力の周波数fg(以下、電源周波数fg)[MHz]に調整されている。
【0041】
高周波電源11から高周波交流電力が出力されているときは、結合回路16から送信PN信号が重畳された高周波交流電力が出力されるので、これが電磁波となり、アンテナ17から送信される。一方、高周波電源11から高周波交流電力が出力されていないときは、結合回路16から送信PN信号が出力されるので、これが電磁波となり、アンテナ17から送信される。さらに、アンテナ17は、送信PN信号である電磁波が電気自動車等の物体に反射して戻ってきた反射波を受信する。
【0042】
分配回路20は、結合回路16とアンテナ17との間に設けられ、アンテナ17が受信した反射波を検出し、検出した反射波を反射信号検出部21に出力する。また、分配回路20は、結合回路16から入力される高周波交流電力や送信PN信号を、アンテナ17に出力する。
【0043】
反射信号検出部21は、入力される反射波から反射信号を検出し、検出した反射信号を、受信PN信号として、受信PN符号発生部22に出力するものである。反射信号検出部21は、反射波のレベルを検出し、レベルが大きい場合にはレベルを下げ、レベルが小さい場合にはレベルを上げるように、信号レベルの調整を行うようにしてもよい。
【0044】
受信PN符号発生部22は、反射信号検出部21から出力される受信PN信号を逆拡散復調し、システム・クロック信号に基づき、受信PN符号を発生させるものである。このとき、発生させる受信PN符号は、送信PN符号発生部13が発生させたPN符号系列と同じ符号系列のPN符号である。また、受信PN符号発生部22は、受信PN符号を発生させるとき、受信PN信号に含まれるPN符号の位相に、受信PN符号発生部22が発生させるPN符号(送信PN符号と同じ符号系列)の位相を合わせるための同期点の検出すなわち同期捕捉を行う。代表的な同期捕捉方法としては、マッチドフィルタリング法があり、受信PN符号発生部22は、このマッチドフィルタリング法に基づき、送信PN符号と同期のとれたPN符号を発生させる。なお、同期捕捉の方法は、マッチドフィルタリング法に限定されない。そして、受信PN符号発生部22は、発生させたPN符号を、受信PN符号として、相関部23に出力する。
【0045】
相関部23は、物体(本実施形態では、電気自動車)までの距離を算出するために、送信PN符号発生部13が発生させた送信PN符号と、受信PN符号発生部22が発生させた受信PN符号と、の相関をとるものである。相関は、送信PN符号と受信PN符号との信号波形の似ている度合いを示す指数である。受信PN信号は、送信PN信号が反射したものであるから、ここでの相関は、送信PN符号と受信PN符号とは原則的に同じ波形をもつので、自己相関をとることになる。
【0046】
ここで、PN符号の自己相関について、説明する。送信PN信号がアンテナ17から出力され、電気自動車等の物体に反射してアンテナ17に戻ってくるまでの反射時間をτとすると、相関値は、反射時間τの関数(自己相関関数)R(τ)として、下記式(1)で表わされる。
【数1】
式(1)において、a(t)は送信したPN符号を表し、a(t−τ)はPN符号が時間τ遅れたPN符号、つまり、反射して戻ってきたPN符号を表している。また、Tは、PN符号の周期を示し、1ビット時間幅Tcとして、周期T=N・Tcで定義される(NはPN符号長)。
【0047】
相関は、上記したように信号波形の似ている度合いを示す指数であり、相関値=1とは同じ波形、相関値=0とは全く似ていない波形、相関値=−1とは反転した波形を示す。M系列のPN符号は、デジタル符号と同様に簡単に相関を求めることが可能であり、符号同士が一致している個数から不一致の個数を減算し、PN符号長で正規化すればよい。つまり、符号相関=(一致数−不一致数)/符号長を算出することで簡単に符号相関を求めることができる。
【0048】
例えば、7ビット(n=3)のPN符号「1110100」についての相関について、図4を用いて説明する。1ビットずつシフトさせてPN符号長(7ビット)までシフトしたものと、もとのPN符号の相関をそれぞれ求めると、図4(a)のようになり、原点のみで「1」その他の場所では「−1/7」となる。なお、1ビット以下でシフトさせたものと、もとのPN符号の相関は、そのシフト量に比例して小さくなるので、シフト量が1ビット以下の期間では、線形性を有する。これを、iビットのPN符号系列で考えると、図4(b)のような自己相関関数が得られる。本実施形態では、PN符号が送信PN符号であり、反射して戻ってきたPN符号が受信PN符号と考えられるので、送信PN符号と受信PN符号との相関を求めると、図4(b)と同様の相関関数が得られる。
【0049】
距離検出部24は、相関部23から出力される相関値に基づき、アンテナ17から電気自動車までの距離を検出するものである。具体的には、距離検出部24は、まず、相関値から反射時間τを算出し、次に、算出した反射時間τから距離Lを検出する。反射時間τは、自己相関値R(τ)、1チップ時間幅Tc[sec]、PN符号長Nを用いて、
τ=Tc×(1−R(τ))×N/(1+N) ・・・(2)
で計算される。そして、距離Lは、上記式(2)で求めた反射時間τを用いて、
L=τ×c/2(c;光速) ・・・(3)
で計算される。例えば、1チップ時間幅が0.2μsec、PN符号長が7(ビット)、自己相関値R(τ)が0.8であるとき、式(2)にこれらの値を代入すると、反射時間τは、0.035μsecとなる。そして、求めた反射時間が0.035μsec、光速が3×108[m/s]であるから、式(3)にこれらの値を代入し、距離Lは、5.25[m]と算出される。よって、距離検出部24は、上記の場合、アンテナ17から電気自動車までの距離を、5.25[m]と検出し、この値を制御部25に出力する。
【0050】
制御部25は、例えば、マイクロコンピュータなどによって構成され、距離検出部24から出力される距離に基づき、電気自動車が受電可能エリア内に存在するか否かを判断し、受電可能エリア内に存在すると判断したときに、高周波電源11にPWM信号を入力し、高周波交流電力を発生させるように制御する。一方、制御部25は、電気自動車が受電可能エリア内に存在しないと判断したときは、高周波電源11へPWM信号を入力しない。この受電可能エリアは、好ましくは、アンテナ17のコイル部分の中心位置からの距離で設定されるが、任意の基準位置からの距離で設定されていてもよい。よって、制御部25は、距離検出部24から出力される距離がこのコイルの中心位置からの距離より短いときに、受電可能エリア内に存在すると判断し、一方、距離検出部24から出力される距離がこのコイルの中心位置からの距離より長いときには、受電可能エリア内に存在しないと判断する。
【0051】
さらに、制御部25は、高周波電源11から高周波交流電力を出力するときには、出力される高周波交流電力(出力電流や出力電圧)が所望の電流値や電圧値となるように、高周波電源11の電流センサや電圧センサが検出した出力電流や出力電圧に基づき、フィードバック制御を行う。
【0052】
送電装置1は、このように構成され、電気自動車が受電可能エリア内に存在するか否かを判断し、存在すると判断した場合に、高周波交流電力を出力するように制御される。
【0053】
次に、図5は、受電装置3の構成例を示す図である。受電装置3は、送電装置1から送電される高周波交流電力を受電し、その電力をバッテリ4に適した電力特性に変換し、バッテリ4を充電するものである。受電装置3は、アンテナ31、受電検出回路32、制御部33、切替回路34、整流平滑回路35、および、充電回路36を含んで構成される。
【0054】
アンテナ31は、送電装置1のアンテナ17との間で磁気結合をして、送電装置1から送電される高周波交流電力を受電する。アンテナ31は、送電装置1のアンテナ17と同一の構成を有し、複数ターンの円形コイルからなるインダクタとそのインダクタに直列に接続されたキャパシタとのLC共振回路で構成される。アンテナ31も、LC共振回路の共振周波数fo(=1/[2π・√(L・C)])(L:インダクタの自己インダクタンス、C:キャパシタのキャパシタンス)が電源周波数fg[MHz]に調整されている。
【0055】
受電検出回路32は、アンテナ31が受電した高周波交流電力の、電圧値、電流値、電力などを測定し、制御部33に出力するものである。
【0056】
制御部33は、例えば、マイクロコンピュータなどによって構成され、受電検出回路32から入力される測定値や充電回路36から入力される電池電圧および充電電流に基づき、切替回路34や充電回路36を制御するものである。例えば、制御部33は、受電検出回路32から入力される測定値に基づき、高周波交流電力の送電が行われていると判断した場合、切替回路34にアンテナ31から充電回路36まで接続するように指示する。また、制御部33は、充電回路36から入力される電池電圧および充電電流に基づき、バッテリ4の充電が完了したと判断した場合、切替回路34にアンテナ31から充電回路36までの接続を開放するように指示する。
【0057】
切替回路34は、制御部33から受信した信号により、アンテナ31から充電回路36までを接続するか、開放するかを切り替えるものである。切替回路34が、アンテナ31から充電回路36までを接続することで、アンテナ31によって受電された高周波交流電力が整流平滑回路35に出力される。また、切替回路34が、アンテナ31から充電回路36までの接続を開放することで、高周波交流電力が整流平滑回路35に出力されず、バッテリ4へ電力が出力されない。
【0058】
整流平滑回路35は、アンテナ31が受電した高周波交流電力を整流し、平滑化する。整流平滑回路35は、例えば、4個の整流素子をブリッジ接続したブリッジ回路で構成される。4個の整流素子にはショートキーバリアーダイオードが用いられる。なお、整流素子には素子内部に並列にキャパシタが形成され、HF帯では、このキャパシタを通して進相の高周波電流が流れるので、この進相の高周波電流をキャンセルするためにブリッジ回路の入力端に、インダクタを並列接続したり、インダクタを直列接続したりするとよい。
【0059】
充電回路36は、整流平滑回路35から出力される直流電力をバッテリ4に供給し、充電するものである、充電回路36は、バッテリ4に一定の充電電流を流す定電流充電の過程と、定電流充電後に、バッテリ4の電池電圧が一定になるように充電電流を制御する定電圧充電とを含む定電流定電圧制御を実行する。このため、充電回路36は、充電電流を検出する電流検出器および電池電圧を検出する電圧検出器を含んで構成される。他の形態として、充電回路36は、充電電流および電池電圧を制御部33に出力し、制御部33から受信した信号により、定電流定電圧制御を実行する構成であってもよい。
【0060】
受電装置3は、このように構成され、送電装置1から給電された高周波交流電力を、バッテリ4に適した電力特性に変換し、バッテリ4を充電するように制御する。また、受電装置3は、バッテリ4の充電が完了したか否かを判断し、充電が完了したと判断したときに、バッテリ4の充電を終了するように制御する。
【0061】
次に、上記のように構成された非接触給電システムの給電制御について、図6および図7を用いて説明する。
【0062】
図6は、送電装置1が行う電気自動車までの測距処理を説明するためのフローチャートである。送電装置1が動作している間、送信PN符号発生部13は、クロック発振回路12から入力されるシステム・クロック信号に基づき、PN符号を発生させる(ステップS1)。そして、送信PN符号発生部13は、発生させたPN符号を送信PN符号として、変調部15および相関部23に出力する。送信PN符号が変調部15に入力されると、変調部15は、キャリア信号発生部14が発生させたキャリア信号を送信PN符号によりスペクトル拡散変調し、送信PN信号として結合回路16に出力する。
【0063】
結合回路16は、高周波電源11から高周波交流電力が入力されていれば、送信PN信号を高周波交流電力に重畳させ、アンテナ17に出力する。一方、結合回路16は、高周波交流電力が入力されていなければ、送信PN信号のみをアンテナ17に出力する。これにより、送信PN信号は、アンテナ17により電磁波となり送電装置1から送信される(ステップS2)。
【0064】
アンテナ17から送信PN信号が送信されると、アンテナ17周辺に電気自動車が存在する場合、送信された電磁波(送信PN信号)が電気自動車に反射され、その反射波がアンテナ17により受信される(ステップS3;YES)。分配回路20は、このアンテナ17が受信した反射波を検出し、反射信号検出部21に出力する。一方、アンテナ17周辺に電気自動車が存在しない場合は、電磁波が反射しないため、反射波は受信されない(ステップS3;NO)。この場合、ステップS1に戻り、PN符号の発生、送信処理を実行する。
【0065】
ステップS3でYESとなり、分配回路20が反射波を検出すると、この反射波を反射信号検出部21に出力する。反射信号検出部21は、分配回路20から反射波が入力されると、反射波から反射信号を検出し、受信PN信号として、受信PN符号発生部22に出力する。受信PN信号が入力された受信PN符号発生部22は、受信PN信号を逆拡散復調し、システム・クロック信号に基づき、受信PN符号を発生させる(ステップS4)。そして、受信PN符号発生部22は、相関部23に受信PN符号を出力する。
【0066】
ステップS1およびステップS4により、相関部23に送信PN符号および受信PN符号が入力されると、相関部23は、送信PN符号および受信PN符号の相関をとり、相関値R(τ)を算出する(ステップS5)。相関部23が相関値R(τ)を求めると、距離検出部24に出力される。距離検出部24は、この相関値R(τ)から反射時間τを算出し(ステップS6)、算出した反射時間τから電気自動車までの距離Lを算出する(ステップS7)。そして、距離検出部24は算出した電気自動車までの距離Lを制御部25に出力する。このようにして、送電装置1は電気自動車までの距離を算出する。
【0067】
次に、図7は、上記測距処理により算出された距離に基づき、送電装置1が行う送電制御を説明するためのフローチャートである。
【0068】
上記測距処理が実行され(ステップS11)、制御部25に電気自動車までの距離Lが入力されると、制御部25は、この距離Lに基づき、電気自動車が受電可能エリア内に存在するか否かを判断する(ステップS12)。その結果、電気自動車が受電可能エリア内に存在すると判断した場合、制御部25は、高周波電源11を制御し、高周波交流電力を発生させる(ステップS13)。具体的には、制御部25は、高周波電源11にPWM信号を入力し、高周波電源11の各スイッチング素子のオン状態とオフ状態を切り替え、高周波交流電力を発生させる。高周波電源11により発生された高周波交流電力は、結合回路16、アンテナ17を介して、送電される。一方、ステップS12の判断の結果、電気自動車が受電可能エリア内に存在しないと判断した場合、制御部25は、高周波電源11にPWM信号を入力せず、高周波交流電力を発生させないように制御する。このようにして、受電可能エリア内に電気自動車が存在するときに、送電装置1から高周波交流電力が送電される。
【0069】
上記図6に示す測距処理および図7に示す送電制御は、送電装置1が動作している間、繰り返し実行され、非接触給電システムの給電制御が実行される。
【0070】
以上で説明したように、本実施形態に係る非接触給電システムによれば、送電装置1が発生させたPN符号と、電気自動車に反射されて戻ってきたPN符号との相関値に基づき、電気自動車が受電可能エリア内に存在するか否かを判断するようにした。したがって、受電装置に通信装置を設けることなく、送電装置は、電気自動車が受電可能エリア内に存在するか否かを判断することができる。これにより、受電装置の大型化やコスト増の防止、および、消費電力の低減が可能となる。さらに、電気自動車(受電装置)が受電可能エリア内に存在すると判断したときに、送電装置1から高周波交流電力を送電するようにした。したがって、必要なときにだけ送電装置が給電を行うことができる。
【0071】
本実施形態では、高周波交流電力に送信PN信号を重畳させ送電しているので、高周波交流電力(送電電力)の反射信号検出部21への漏れ込みが大きくなる場合がある。このために、分配回路20と反射信号検出部21との間に、高周波交流電力の周波数成分を除去する周波数成分除去回路(例えば、ノッチフィルタ)を設けておき、送電電力の漏れ込みを低減させるようにすると、より好適に電気自動車が受電可能エリア内に存在するか否かを判断することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態では、相関値から距離を求めてその距離に基づき、受電可能エリア内に存在するか否かを判断する例を説明したが、これに限られない。例えば、距離を算出せずに、予め距離と相関値との関係を計算しておき、受電可能エリア内と判定する距離に対応した相関値以上となった場合に、電気自動車が受電可能エリア内に存在すると判断するようにしてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、送電装置1には、1つのアンテナ17を備え、そのアンテナ17から送信PN信号と高周波交流電力を送信する例を説明したが、これに限られず、送信PN信号を送信するアンテナと、高周波交流電力を送信するアンテナの、2つのアンテナを備えてもよい。この場合、結合回路16を備えていなくてもよい。
【0074】
本実施形態では、非接触給電システムが1つの場合について説明したが、駐車場などに送電装置1が設置される場合、近距離に複数の送電装置1が存在することとなる。この場合、各送電装置1から送信される信号が同じPN符号でスペクトル拡散されたものであると、混信が生じてしまう可能性がある。そのため、各送電装置1からそれぞれ異なるPN符号で拡散された信号を送信するようにしておくことで、混信を排除することができる。例えば、PN符号長が15ビットのPN符号であれば、2通りの異なるM系列を発生させることが可能であり、PN符号長が127ビットのPN符号であれば、16通りの異なるM系列を発生させることが可能である。これにより、周辺の送電装置の数に応じて、それぞれ異なるPN符号で拡散された信号を送信するようにしてもよい。
【0075】
本実施形態では、非接触給電システムにより電気自動車に搭載された二次電池を充電する例を示したが、これに限られない。例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータなどに搭載された二次電池を充電するものであってもよい。また、二次電池を充電するものではなく、二次電池を備えず、直接電力を所定の負荷に供給するものであってもよい。例えば、USBで接続したマウスパット(送電装置に相当)に磁界を発生させ、マウス(受電装置に相当)内部の回路に電力を供給するワイヤレスマウスなどでもよく、また、送電装置上に設置されたテレビやデジタルフォトフレームなどへ電力を供給するものであってもよい。
【0076】
本発明に係る非接触給電システムは、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲を逸脱しなければ、各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0077】
1 送電装置
11 高周波電源
12 クロック発振回路
13 送信PN符号発生部
14 キャリア信号発生部
15 変調部
16 結合回路
17 アンテナ
20 分配回路
21 反射信号検出部
22 受信PN符号発生部
23 相関部
24 距離検出部
25 制御部
3 受電装置
31 アンテナ
32 受電検出回路
33 制御部
34 切替回路
35 整流平滑回路
36 充電回路
4 バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7