特許第5965987号(P5965987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965987特定のリン酸化共重合体とその共重合体によってグラフト化される無機粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965987
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】特定のリン酸化共重合体とその共重合体によってグラフト化される無機粒子
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/30 20060101AFI20160728BHJP
   C08F 283/12 20060101ALI20160728BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20160728BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20160728BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20160728BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20160728BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20160728BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C08G77/30
   C08F283/12
   H01M8/02 P
   H01M8/02 E
   H01M8/10
   H01B1/06 A
   H01B1/12 Z
   H01B13/00 Z
   H01B5/00 E
【請求項の数】23
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-504280(P2014-504280)
(86)(22)【出願日】2012年4月10日
(65)【公表番号】特表2014-519527(P2014-519527A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】EP2012056447
(87)【国際公開番号】WO2012140011
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】1153187
(32)【優先日】2011年4月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】513179190
【氏名又は名称】サントル ナショナル ド ラ ルシャルシュ シヨンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビュヴァ ピエリック
(72)【発明者】
【氏名】ブシュトー トマ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッド ギズレン
(72)【発明者】
【氏名】ガナショー フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】コスチューク サージェイ ヴィクトロビッチ
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−003245(JP,A)
【文献】 特開平10−025322(JP,A)
【文献】 Julian Chojnowski et al.,Mechanism of the B(C6F5)3-Catalyzed Reaction of SilylHydrides with Alkoxysilanes. Kinetic and Spectroscopic Studies,Organometallics,2005年10月21日,24,6077-6084
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F251/00−283/00
C08F283/02−289/00
C08F291/00−297/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの共重合体によって、グラフト化された無機粒子であって、
該共重合体が、少なくとも2つの異なる型のシロキサン繰り返し単位鎖を含
シロキサン繰り返し単位の第一の型は、該シロキサン繰り返し単位のケイ素原子上に少なくとも1個の−OH基を含み、
シロキサン繰り返し単位の第二の型は、該繰り返し単位のケイ素原子上に少なくとも1個のペンダント鎖を含み、
該ペンダント鎖は、式−PO基(式中、RとRは、互いに独立して、水素原子、アルキル基又はカチオンを表す)を少なくとも1個有する繰り返し単位の鎖を含む高分子鎖から成る共重合体であって、
該共重合体の少なくとも1つの−Si−OH基が、該共重合体と該粒子の間に−Si−O−結合基を形成することによりグラフト化された無機粒子
【請求項2】
第一の型の繰り返し単位が、以下の式(I)を満たす、請求項1に記載の無機粒子
【化1】

(式中、R及びRの1つは−OH基を表し、一方、他方の基はアルキル基を表す。)
【請求項3】
第一の型の繰り返し単位が、以下の式(II)を満たす、請求項1又は2に記載の無機粒子
【化2】
【請求項4】
第二の型の繰り返し単位が、以下の式(III)を満たす、請求項1〜3のいずれか一項に記載の無機粒子
【化3】

[式中、R及びRの1つが、少なくとも1個の−PO基(RとRは請求項1の定義と同じである)を有する少なくとも1つの繰り返し単位の鎖を含む高分子鎖を表し、一方、他方の基はアルキル基を表す。]
【請求項5】
が、−PO基(RとRは請求項1の定義と同じである)を有する少なくとも1つのビニルモノマーの重合から得られる繰り返し単位鎖を含む高分子鎖を表す、請求項4に記載の無機粒子
【請求項6】
ビニルモノマーが、以下の式(IV)を満たす、請求項5に記載の無機粒子
【化4】

(式中、RとRは請求項1の定義と同じであり、前記モノマーの重合から得られる繰り返し単位は、以下の式(V)を満たす。)
【化5】
【請求項7】
ビニルモノマーがビニルホスホン酸のエステルである、請求項5又は6に記載の無機粒子
【請求項8】
ビニルホスホン酸のエステルが、ビニルホスホン酸ジエチル又はビニルホスホン酸ジメチルである、請求項7に記載の無機粒子
【請求項9】
前記共重合体が、さらに、以下の式(VIII)を満たす、少なくとも1つの第三の型のシロキサン繰り返し単位を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の無機粒子
【化6】

(式中、RとRは、アルキル基を表す。)
【請求項10】
前記共重合体がブロック共重合体である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の無機粒子
【請求項11】
前記共重合体が、以下の一般式(IX)を満たす、請求項1〜10のいずれか一項に記載の無機粒子
【化7】

(式中:
−R、R、R、R、R及びRは、請求項1、、4及び9の定義と同じであり;
−R、R10、R11、R12、R13及びR14は、互いに独立して、アルキル基を表し;
−q、r、s及びuは、括弧の中の単位の繰り返しの数を表し、q、r及びuは1以上であり、sは0以上である。)
【請求項12】
前記共重合体が、以下の一般式(X)を満たす、請求項1〜11のいずれか一項に記載の無機粒子
【化8】

(式中:
*q及びrは、括弧の中の単位の繰り返しの数に対応し、合計(q+r)は8と等しく;
*uは、括弧の中の単位の繰り返しの数に対応し、1より大きく;
*RとRは請求項1の定義と同じである。)
【請求項13】
酸化粒子である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の無機粒子。
【請求項14】
シリカ粒子である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の無機粒子。
【請求項15】
以下の反応工程を含む、請求項1に定義された共重合体の製造方法:
水と少なくとも1種の有機溶媒系の存在下で、その繰り返し単位のケイ素原子上に少なくとも1つの水素原子を有する第一のシロキサン繰り返し単位を含有する繰り返し単位の鎖を含むポリシロキサン型のベース(共)重合体と、ボラン型のLewis酸の存在下で、−PO基(RとRは請求項1の定義と同じである)を有するビニルモノマーとを反応させ、その後、少なくとも2つの型のシロキサン繰り返し単位(第一の型は、その繰り返し単位のケイ素原子に直接結合している少なくとも1つの−OH基を有するシロキサン繰り返し単位から成り、第二の型は、その繰り返し単位のケイ素原子に直接結合している少なくとも1つのペンダント鎖を含むシロキサン繰り返し単位から成り、該ペンダント鎖は、少なくとも1つの−PO基を有する繰り返し単位の鎖を含む高分子鎖から成る)の鎖を含む共重合体を形成する。
【請求項16】
ポリシロキサン型のベース(共)重合体が、その繰り返し単位のケイ素原子上に少なくとも1つの水素原子を有する第一のシロキサン繰り返し単位を含む繰り返し単位の鎖を含み、該第一の繰り返し単位が、以下の一般式(XI)を満たす、請求項1に記載の方法:
【化9】

(式中、R15は水素原子又はアルキル基である。)
【請求項17】
ベース共重合体が、さらに、以下の式(XII)の繰り返し単位を含む、請求項1又は1に記載の方法:
【化10】

(式中、RとRは、アルキル基を表す。)
【請求項18】
ベース共重合体が、以下の一般式(XIII)を満たす、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法:
【化11】

(式中:
−R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R及びRは、請求項11及び1の定義と同じであり;そして、
−v及びwは、括弧の中の繰り返し単位の繰り返しの数を表す。)
【請求項19】
ベース共重合体が、以下の式(XIV)を満たす共重合体である、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法:
【化12】
【請求項20】
ベース共重合体を添加する前に、有機溶媒、水及びボラン型のLewis酸を含む反応溶媒に、モノシラン化合物を添加することができる、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ボラン型のLewis酸が、任意に全フッ素置換されているトリアリールボラン化合物である、請求項120のいずれか一項に記載の方法
【請求項22】
求項14のいずれか一項に記載の無機粒子を含む燃料電池膜。
【請求項23】
少なくとも1個の電極−膜−電極アセンブリを含む燃料電池装置であって、
該膜が請求項2に記載の膜である燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無機粒子の表面にグラフト化される特定の共重合体に関する。
【0002】
これらの粒子は、必要に応じて前記共重合体のいくつかの基が一旦加水分解されると、調整可能な非常に高いイオン交換能を示す特性を有する。
【0003】
この理由により、これらの粒子はプロトン伝導性材料の製造に利用され、特にH/空気もしくはH/Oで作動する電池(プロトン交換膜燃料電池を表す略語PEMFCで公知)又はメタノール/空気で作動する電池(直接メタノール型燃料電池を表す略語DMFCで公知)等の燃料電池用のプロトン伝導膜を形成するために使用される材料の製造に利用される。
【0004】
したがって、本発明の技術分野は、概して、燃料電池の電解質を形成するために使用できる材料の技術分野と定義できる。
【背景技術】
【0005】
燃料電池は、酸化剤の存在下で、燃料の酸化反応の化学エネルギーを電気エネルギーに変換する電気化学的発電装置である。
【0006】
一般的に、燃料電池は連続的に取り付けられた複数の電気化学的電池を含み、各電池には固体電解質として機能するプロトン交換膜によって分離された反対の極性の2つの電極が含まれる。
【0007】
その膜は、その形成後、陽極における燃料の酸化の間、陰極へのプロトンの通過を確実にする。
【0008】
膜は燃料電池のコアを構成し、したがって、プロトン伝導に関してうまく機能し、反応性ガス(PEMFC電池用のH/空気又はH/O及びDMFC電池用のメタノール/空気)に対して低透過性を有さなければならない。膜を構成している材料の性質は、本質的に熱安定性であり、加水分解や酸化に対する耐性があり、ある程度の機械的な柔軟性を有する。
【0009】
ルーチン的に使用され、これらの必要条件を満たすいくつかの膜は、主鎖のペルフッ素化された直鎖と、スルホン酸基を有する側鎖で形成されたポリマーから得られる膜である。最も良く知られる膜として、デュポン・ドゥ・ヌムール社から販売されている商品名NAFION(登録商標)又はダウケミカル社と旭硝子から販売されている商品名DOW(登録商標)、FLEMION(登録商標)もしくはAciplex(登録商標)を挙げることができる。これらの膜は良好な電気化学的性能と興味深い寿命を示すが、それにもかかわらず、PEMFCへの適用には不十分である。さらに、それらの費用はマーケティングにおいて非常に高額である。またDMFCへの適用については、それらは高いメタノール浸透性を有するので、このタイプの燃料と共にそれを使用することは制限される。最後に、これらの膜は80℃以上の高い温度に対して高い感受性を示すので、高温(すなわち80℃〜150℃)で働く電池中での使用は排除される。
【0010】
また、DMFCへの適用では、それらは高いメタノール浸透性を有するので、このタイプの燃料と共にそれを使用することは制限される。さらに、それらを構成しているモノマーは、水和と脱水の現象に対して特に感受性をもたらす親水性/疎水性タイプの構造を有している。したがって、それらの作動温度は通常80℃の範囲にある。なぜなら、これ以上では、水和の不安定性が膜の早期の老化を引き起こすからである。
【0011】
したがって、約100℃でこれらの膜のプロトン伝導性を安定させる必要が実際にある。そのために、何人かの研究者たちは、伝導性有機ポリマーマトリクスに加えて、伝導性の付加に寄与できる化合物又は粒子を含むより複雑な膜の開発に向かった。その粒子が鉱物粒子である場合、これらの膜はいわゆる「無機−有機ハイブリッド膜」によってデザインされる。
【0012】
例えば、特許文献1と特許文献2では、高温における膜の水和レベルを改良するための親水性無機化合物の付加について記載されている(特許文献1では金属酸化粒子又は金属リン酸化粒子の塊である無機化合物について、又は、特許文献2では粘土を含む陽イオン交換材料について)。
【0013】
それでもなお、複合膜のこれらの処方が100℃の範囲における膜のプロトン伝導性を改良したとしても、それらは、これらの温度での燃料電池の作動基準を満たすためには不十分なままである。
【0014】
無機−有機ハイブリッド膜に対するひとつの代替手段は、直接無機粒子に有機化合物をグラフト化することから成る可能性がある。これらの化合物は、特許文献3、特許文献4に記載されているようにプロトン交換基を運ぶ化合物であり、そこではプロトン交換基はスルホン酸基であり、膜は80℃以上95℃までの温度で作動できるそのような粒子から製造される。95℃以上の温度で作動させるための、ひとつの解決方法は、無機粒子の表面においてリン酸基を運ぶポリ(ビニルホスホン酸)鎖などのグラフト化有機化合物から成る可能性がある。場合により、このグラフト化は、それに対応するモノマー(ビニルホスホン酸又はビニルホスホン酸ジエチルなど)の無機粒子上での重合から成るが、この陰イオン重合工程では非常に厳しい温度条件下(すなわち、約−78℃)で重合開始物質としてブチルリチウムの使用が必要であるというデメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0227135号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0244697号明細書
【特許文献3】国際特許公開第WO2005/101552号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0175880号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来の方法の観点から、本発明の発明者らは、先行技術のような無機粒子のグラフト化を置き換えるための解決方法を見出した。その解決方法は、温度に関してドラスティックな製造条件を特に必要としないので、産業規模に容易に置き換えができ、イオン伝導性を調節できる方法を有するという特性のある発明を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的のために、本発明者らは、無機粒子の表面にグラフト化される新規の共重合体、新規の製造方法に従って製造されるこれらの共重合体及びこれらのグラフト化された粒子をデザインした。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】グラフト化前(曲線a)と、実施例4により得られたグラフト化後(曲線b)のシリカ粒子の29Si NMRスペクトルを示す。
図2】実施例4によるグラフト化後に得られたシリカ粒子の13C NMRスペクトルを示す。
図3】実施例4によるグラフト化後に得られたシリカ粒子の31P NMRスペクトルを示す。
図4】温度T(℃)の関数として質量損失P(%)の傾向を示すサーモグラムである(曲線a、b、cは、それぞれ、実施例1の共重合体、実施例2の共重合体、実施例3の共重合体によってグラフト化された粒子である)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、少なくとも2つの異なる型のシロキサン繰り返し単位鎖を含む共重合体に関し、シロキサン繰り返し単位の第一の型は、シロキサン繰り返し単位のケイ素原子上に少なくとも1個の−OH基を含み、シロキサン繰り返し単位の第二の型は、前記繰り返し単位のケイ素原子上に少なくとも1個のペンダント鎖を含み、該ペンダント鎖は、式−PO基[式中、RとRは、互いに独立して、水素原子、例えば1〜4個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル基、エチル基又はイソプロピル基)であるアルキル基又はカチオン(例えば、アルカリカチオン、アンモニウムカチオンなど)を表す]を少なくとも1個有する高分子鎖から成る。
【0020】
「シロキサン繰り返し単位」は、−Si−O−基を含む繰り返し単位を意味し、該ケイ素原子は、同じ単位の酸素原子と隣接する単位の別の酸素原子に加えて、別の二つの基に結合している。
【0021】
上述のように、本発明の共重合体は、その鎖に、前記繰り返し単位のケイ素原子に直接結合した少なくとも1個の−OH基を含むシロキサン繰り返し単位から成る第一の型と、前記繰り返し単位のケイ素原子に直接結合した少なくとも1個のペンダント鎖を含むシロキサン繰り返し単位から成る第二の型を含む、少なくとも2種類のシロキサン繰り返し単位を含む。前記ペンダント鎖は、式−PO基(RとRは上記定義と同じである)を少なくとも1個有する高分子鎖から成る。
【0022】
前述の第一の型のシロキサン繰り返し単位は以下の式(I)を満たすことができる:
【0023】
【化1】
【0024】
式中、R及びRの1つは−OH基を表し、一方、他方の基はアルキル基(例えばメチル基等の1〜20の炭素原子を有するアルキル基)を表す。
【0025】
より具体的には、上記定義に基づく繰り返し単位は以下の式(II)の繰り返し単位であってもよい:
【0026】
【化2】
【0027】
前述の第二の型の繰り返し単位は以下の式(III)を満たすことができる:
【0028】
【化3】
【0029】
式中、R及びRの1つは、少なくとも1個の−PO基(RとRは上記定義と同じである)を有する少なくとも1つの繰り返し単位の鎖を含む高分子鎖を表す。一方、他方の基はアルキル基(例えばメチル基等の1〜20の炭素原子を有するアルキル基)を表す。
【0030】
特に、Rは、−PO基(RとRは上記定義と同じである)を有する少なくとも1つのビニルモノマー(すなわち、少なくとも1つの炭素−炭素の二重結合を有するモノマー)の重合から得られる繰り返し単位鎖を含む高分子鎖を表すことができる。
【0031】
ビニルモノマーの中で適切なものとして、以下の式(IV)を有するモノマーを挙げることができる:
【0032】
【化4】
【0033】
式中、RとRは上記定義と同じであり、その場合、前記モノマーの重合から得られる繰り返し単位は、以下の式(V)を満たす:
【0034】
【化5】
【0035】
とRは上記定義と同じである。
【0036】
この定義に基づく具体的なモノマーは、ビニルホスホン酸ジエチル又はビニルホスホン酸ジメチル等のビニルホスホン酸エステル類であってもよい。
【0037】
他のビニルモノマーの中で適切なものとして、以下の式(VI)のモノマーを挙げることができる:
【0038】
【化6】
【0039】
とRは上記定義と同じである。−PO基は、−CH=CH基に対して場合によりメタ、パラ又はオルトの位置にあり、その場合、前記モノマーの重合から得られる繰り返し単位は、以下の式(VII)を満たす:
【0040】
【化7】
【0041】
この定義に基づくいくつかの具体的なモノマーは、4−ビニルベンゼンホスホン酸又は3−ビニルベンゼンホスホン酸であってもよい。
【0042】
最後に、他のビニルモノマーの中で適切なものとして、以下の式を有するモノマーを挙げることができる:
【0043】
【化8】
【0044】
式中、RとRは上記定義と同じである。このタイプのモノマーの1つの具体的な例は、ジイソプロピルビニルホスホン酸である。
【0045】
上記の第一の型と第二の型のシロキサン繰り返し単位に加え、本発明の共重合体は、以下の式(VIII)に基づくことができる第三の型のシロキサン繰り返し単位を含むことができる:
【0046】
【化9】
【0047】
式中、RとRは、アルキル基(例えばメチル基等の1〜20の炭素原子を有するアルキル基)を表す。
【0048】
構造的な観点から、本発明の共重合体はブロック共重合体であってもよい。
【0049】
本発明に基づく1つの具体的なブロック共重合体は、以下の一般式(IX)を満たすことができる:
【0050】
【化10】
【0051】
式中:
−R、R、R、R、R及びRは上記定義と同じであり;
−R、R10、R11、R12、R13及びR14は、互いに独立して、アルキル基(例えばメチル基等の1〜20の炭素原子を有するアルキル基)を表し;
−q、r、s及びuは、括弧の中の単位の繰り返しの数を表し、q、r及びuは1以上であり、sは0以上である。
【0052】
上記の定義を満たす具体的な共重合体の1つは、以下の式(X)を満たす共重合体である:
【0053】
【化11】
【0054】
式中:
*q及びrは、括弧の中の単位の繰り返しの数に対応し、合計(q+r)は8と等しく;
*uは、括弧の中の単位の繰り返しの数に対応し、1より大きく;
*R及びRは、上記定義と同じである。
【0055】
本発明の共重合体は、第一の型の繰り返し単位を少なくとも0.1モル%(例えば、0.1〜99.9モル%)含むことができ;第二の型の繰り返し単位を少なくとも0.1モル%(例えば、0.1〜99.9モル%)含むことができ;そして、任意に、第三の型の繰り返し単位を0〜99.8モル%含むことができる。
【0056】
本発明の共重合体のモル質量は、104〜300000g・mol−1の範囲とすることができる。
【0057】
本発明の共重合体は、以下の反応工程を含む製造方法に従って製造することができる:水と少なくとも1種の有機溶媒系の存在下で、その単位のケイ素原子上に少なくとも1つの水素原子を有する第一のシロキサン繰り返し単位を含有する繰り返し単位の鎖を含むベースのポリシロキサン型(共)重合体と、ボラン型のLewis酸の存在下で、−PO基(RとRは上記定義と同じである)を有するビニルモノマー(すなわち、少なくとも1つの炭素−炭素の二重結合を有するビニルモノマー)とを反応させ、その後、少なくとも2つの型のシロキサン繰り返し単位の鎖を含む共重合体(その単位のケイ素原子に直接結合している少なくとも1つの−OH基を有するシロキサン繰り返し単位から成る第一の型と、その単位のケイ素原子に直接結合している少なくとも1つのペンダント鎖を含むシロキサン繰り返し単位から成る第二の型を含み、該ペンダント鎖は、少なくとも1つの−PO基(R及びRは、上記定義と同じである)を有する繰り返し単位の鎖を含む高分子鎖から成る)を形成する。
【0058】
どんな理論にも拘束されることなく、本発明の共重合体の製造方法は、以下のメカニズムによって説明することができた:
【0059】
− ボラン型のLewis酸が、式BXで表される場合、ベース(共)重合体のSi−H基と接触したとき、中間体複合体−Siδ+−−−−δ−HBXを形成する;
【0060】
− 溶媒中の水が、−Siδ+−−−−δ−HBX複合体の形態の基の一部と反応して二水素(dihydrogen)を形成し、ボラン型のLewis酸BXを分離し、−Si−OH基を残してベース共重合体に存在させる(換言すると、最初にベース共重合体に存在する−Si−H基の一部が、−Si−OH基に変わることを意味する);
【0061】
− Siδ+−−−−δ−HBX複合体の形態の基のその他の部分(水と反応しなかった部分)は、上記ビニルモノマーのアニオン重合の出発点として用いられ、その後、ケイ素原子と結合した高分子鎖が形成される(該高分子鎖は、前記ビニルモノマーの重合から得られた繰り返し単位の鎖を含む)。
【0062】
前述のように、ポリシロキサン型のベース重合体は、その単位のケイ素原子の上に少なくとも1つの水素原子を有する第一のシロキサン繰り返し単位を含む繰り返し単位の鎖を含む。この第一の繰り返し単位は、以下の一般式(XI)を満たすことができる:
【0063】
【化12】
【0064】
式中、R15は水素原子又はアルキル基である。
【0065】
これらの繰り返し単位に加えて、このベース(共)重合体は、例えば以下の式(XII)の繰り返し単位等の他の繰り返し単位を含むことができる:
【0066】
【化13】
【0067】
式中、RとRは、アルキル基(例えばメチル基等の1〜20の炭素原子を有するアルキル基)を表す。
【0068】
本発明に基づく1つの具体的なベース共重合体は、以下の一般式(XIII)を満たすことができる:
【0069】
【化14】
【0070】
式中:
−R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R及びRは、上記定義と同じであり;そして、
−v及びwは、括弧の中の単位の繰り返しの数を表す。
【0071】
上記の定義を満たす1つの具体的なベース共重合体は、以下の式(XIV)を満たす共重合体である:
【0072】
【化15】
【0073】
ベース(共)重合体とビニルモノマー間の反応工程は、ボラン型のLewis酸の存在下で行われる。このLewis酸は、トリアリールボラン系に属することがあり、場合により、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのように全フッ素置換されている。
【0074】
反応工程は、水の存在に加え、芳香族溶剤(例えばトルエン)等の非プロトン性有機溶媒の存在下で、場合により0〜100℃の範囲の温度で、場合により1分〜24時間の範囲の時間、行われる。
【0075】
本発明の1つの具体的な実施態様によれば、本発明に基づいた共重合体中のSi−OH基の量をコントロールすることが特に求められるときは、上記反応が行われる反応溶媒中に存在する水の量をコントロールすることが必要とされる場合がある。
【0076】
そのためには、ベース(共)重合体と反応溶媒が接触する前に、有機溶媒、水及びボラン型のLewis酸を含む反応溶媒に、所定量のモノシラン化合物(Si−H基を有する繰り返し単位のモル数に対して5〜50モル%、好ましくは20〜35モル%)を添加することができる。
【0077】
例えば、このモノシラン化合物は、ペンタメチルシロキサンとすることができる。
【0078】
どんな理論にも拘束されることなく、モノシラン化合物は、ボラン型のLewis酸と複合体を形成し、それは溶媒中に存在する水の一部と反応して、その後、二水素とモノシラノール(モノシラン化合物から得られる)が形成される。それらは上記の反応工程では不活性なままである。溶媒中の水の消費は、ベース(共)重合体上にシラノール官能基を生成できる特定量の水を残すために完全である必要はない。無機粒子をグラフト化するこれらのシラノール官能基からはその後の利点が得られる。
【0079】
一例として、特定の試薬を用いた以下の反応スキームを提案する:
【0080】
【化16】
【0081】
Etはエチル基に対応し、a、b、c、d、e及びfは括弧の中の単位の繰り返しの数に対応する。
【0082】
本発明の共重合体は、上述のように、無機粒子上にグラフト化されることを有利に目的とし、共重合体の特性(特に−PO基の存在に関連するプロトン伝導の特性)に関する機能をこれらの粒子に提供する。
【0083】
したがって本発明は、上で定義されるような少なくとも1つの共重合体によって、その共重合体の少なくとも1つの−Si−OH基がその共重合体とその粒子の間に−Si−O−結合基を形成することによりグラフト化された無機粒子に関する。
【0084】
グラフト化とは、通常、その共重合体とその粒子間の共有結合を介した粒子表面上における共重合体の固定化を意味すると規定される。これらの共有結合は、共重合体と粒子の間の−Si−O−架橋形成基の形成の結果として生じる。
【0085】
本発明に基づく共重合体のグラフト化を用いて、−PO基がプロトン交換できる場合(RとRが水素原子又は陽イオンである場合)、高分子鎖に存在するプロトン交換酸性基の数に直接関連するイオン交換量を大幅に増加させることができる。したがって、プロトン伝導性を有さない材料へのチャージとして、これらの粒子の使用を想定することができる。さらに、粒子の表面にグラフト化された共重合体に存在するプロトン交換酸性基を含む繰り返し単位の数をコントロールすることによって、同様に導入されている材料のプロトン伝導性のレベルの調整が可能である。
【0086】
無機粒子は、ゼオライト、リン酸ジルコニウム又はホスホン酸ジルコニウム、粘土の粒子;シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタンの粒子等の酸化物とすることができ、上で定義されるように共重合体によってグラフト化される。
【0087】
特に、無機粒子は、上で定義されるように共重合体によってグラフト化されたシリカの粒子等の酸化物の粒子とすることができる。
【0088】
グラフト化の前に、これらの粒子は、共重合体中に存在する−Si−OH官能基と反応して−Si−O−架橋形成基を形成できる基を含む。通常シリカ粒子等の酸化粒子の場合、これらの基は反応することができ、−OH基である場合がある。
【0089】
本発明に基づくグラフト化された無機粒子は、本発明の共重合体が、その共重合体に存在する−Si−OH基と反応して−Si−O−架橋形成基を形成することができる少なくとも1つの基を含む無機粒子と接触する工程(その後、そのグラフト化された無機粒子が形成される)を含む製造法に従って製造できる。
【0090】
この接触する工程は、有機溶液中(例えば、トルエンなどの非プロトン性有機溶媒中)の共重合体に、事前に非プロトン性有機溶媒例えば、トルエン)中に分散された無機粒子を接触させ、場合によっては、得られた混合物を、その反応混合物の還流温度より低い温度で、無機粒子上に共重合体をグラフト化する効率的な時間の間加熱することによって、行うことができる。
【0091】
必要に応じてグラフト化の後に、この方法は、−PO基(RとRがアルキル基の場合)の加水分解工程を含み、これらをプロトン伝導性(RとRが水素原子又は陽イオンの場合)にすることができる。
【0092】
本発明の共重合体と無機粒子間の反応と、任意の加水分解工程の後に、得られた粒子は1回以上の洗浄工程(例えば、粒子と反応していない共重合体、ボラン型のLewis酸、該当する場合はモノシラン化合物及びそれらから形成されうるオリゴマーを取り除くための遠心分離による)にかけることができる。
【0093】
例として、特定の試薬を用いた本発明の共重合体と無機粒子のグラフト化反応を以下の反応スキームにより示すことができる:
【0094】
【化17】
【0095】
ペンダント−OH基が1つだけの無機粒子に対応する球体が示される。Etはエチル基に対応し、c、d、e、及びfは、括弧の中の繰り返し単位の繰り返しの数に対応する。
【0096】
上で示した本発明の粒子は、それらの表面にグラフト化された共重合体の性質を介したプロトン伝導性を有する場合があり、このプロトン伝導性は、少なくとも1つのプロトン交換基を有する繰り返し単位の数に基づいて調整できる。
【0097】
したがって、これらの粒子は、燃料電池膜等のプロトン伝導性材料の分野における利用が当然に見出される。
【0098】
したがって、また本発明は、上に定義された粒子と、任意に前記粒子が分散された重合体マトリックスを含むプロトン伝導性材料に関する。
【0099】
第一の変更例では、粒子がプロトン伝導性を材料に提供する場合には、重合体マトリックスは非プロトン伝導性の重合体マトリックスであってもよい。
【0100】
前記ポリマー類は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)及びそれらの誘導体等のフッ素化ポリマーであってもよい。フッ素化ポリマーは、良好な機械的強度と良好な耐化学薬品性を示す特有の利点を有する。
【0101】
また前記ポリマー類は、芳香族又は複素環ポリマー類であってもよい。芳香族又は複素環ポリマー類は、主鎖に芳香族の繰り返し単位(例えば、フェニレン)又は複素環の繰り返し単位(例えば、ベンゾイミダゾール)の鎖を含むポリマーを意味すると規定される。これらのポリマー類としては、ポリスルホン類、ポリアリールエーテルケトン類、ポリベンゾイミダゾール類、フェニレンポリオキシド類、ポリカーボネート類を挙げることができる。前記ポリマー類は、それらが組み込まれる複合材料に、強化剤又はフィラーの該複合材料への組み込みを必要とすることなく、剛性並びに化学耐性及び耐熱性を与えるという特性を有する。
【0102】
この場合、グラフトされた無機粒子のみによって与えられる電気化学的特性は、マトリクスにおけるそれらの分散の度合いに直接依存している。
【0103】
第二の変更例では、ポリマーマトリックスはプロトン伝導性ポリマーのマトリックスであってもよい。
【0104】
そのようなポリマー類は、ペルフッ素化スルホン化ポリマーであってもよい。ペルフッ素化スルホネートポリマーは、ペルフッ素化された直鎖の主鎖と、スルホン酸基を有する側鎖とを含むポリマーを意味すると規定される。このポリマー類は、特に、商品名NAFION(登録商標)としてDupont de Nemoursから、又は、ACIPLEX−S(登録商標)としてAsahi Chemicalから市販されている。
【0105】
プロトン伝導性ポリマーはまた、−SOH、−PO及び−COHから選択される酸官能基を有する芳香族又は複素環ポリマーであってもよい。このポリマー類は、ポリスルホン、ポリアリールエーテルケトン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、フェニレンポリオキシド又はポリカーボネートであってもよい。
【0106】
本発明の材料は、例えば、厚さ20〜200μmのフィルムの形状が有利である。
【0107】
本発明の材料は、フィルム形状の場合、以下の工程を必要とする、いわゆる蒸発鋳造法(evaporative casting method)を使用して製造することができる:
−本発明の前記粒子と有機溶媒、及び、任意に、重合体マトリックスを形成するための1種以上のポリマー類を含む混合物を、基板に付着させる工程;及び、
−前記有機溶媒系の蒸発工程。
【0108】
グラフト化された粒子を形成する間に、未実施の場合は、−PO基(RとRがアルキル基を表す場合)を加水分解する工程を蒸発工程の後に行い、プロトン伝導性とすることができる(RとRが水素原子又は陽イオンを表す場合)。
【0109】
基板は、ガラス、アルミナ又はポリエチレンとすることができる。このいわゆる蒸発鋳造法の完了においては、基板に付着したフィルム形状で材料が得られる。得られたフィルムは、容易に基板から取り外され、自己支持形のプロトン伝導性フィルムをもたらすことができる。
【0110】
この方法で使用できる溶媒は、N−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルシロキサン等の非プロトン性極性溶媒、又は、クロロホルム等の塩素化溶媒、またアルコール、エーテル、アセトン等の溶媒から選択できることが規定される。
【0111】
それらの機械的特性のために、これらの材料には、燃料電池膜としての使用に十分強い薄膜を供給するという有効な用途を与えることができる。
【0112】
したがって、本発明の対象の1つは、上で定義されるような粒子を含む燃料電池用の膜である。
【0113】
これらの膜は、有利には、厚さが例えば20〜200μmの範囲の薄膜の形状である。
【0114】
これらの膜は、有利には、反応性ガス(HやO等)に十分な耐性を示して、好ましくは、少なくとも150℃の温度まで安定である。
【0115】
上で定義される膜は、有利には、燃料電池装置に組み込むことができる。
【0116】
したがって、また本発明は、少なくとも1つの電極−膜−電極アセンブリ(膜は上で定義されるものであり、2つの電極の間に配置される)を含む装置に関する。
【0117】
通常、燃料電池装置は、数個の電極−膜−電極アセンブリを含む。
【0118】
前記アセンブリを製造するために、例えば、触媒を含浸させた布地又はカーボン紙の中で、膜を2つの電極の間に配置することができる。そして、2つの電極の間に配置された膜で形成されたアセンブリは、良好な電極−膜の接着を得るために、適切な温度でプレスされる。
【0119】
次に、電極−膜−電極アセンブリは、電気伝導性と電極への試薬の供給を確実にする2枚のプレートの間に置かれる。これらのプレートは、通常、双極板と呼ばれる。
【0120】
ここで、非限定的な例示として与えられた以下の実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0121】
以下の実施例において、以下の試薬を使用した:
−ビニルホスホン酸ジエチル(略語DEVPで表す)及びAldrichによって供給されるトルエン。
−ペンタジメチルシロキサン、ポリ(ヒドロメチル−コ−ジメチル)シロキサン(略語PHM−co−DMSで表す)及びABCRによって供給されるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン。
【0122】
トルエンは、水素化カルシウム下で24時間乾燥し、蒸留した。
【0123】
不活性アルゴン気体中、マグネチックスターラーとセプタムを備えた10mlのシュレンクチューブ内で、重合工程を実施した。試薬を添加する前に、真空/アルゴンサイクルを3サイクル実施した。
【0124】
実施例1
この実施例は、以下の式を有するビニルホスホン酸ジエチルの重合に由来する発明に基づく重合体の製造に関する:
【0125】
【化18】
【0126】
主成分の共重合体:以下の式を有するポリ(ヒドロメチル−コ−ジメチル)シロキサン:
【0127】
【化19】
【0128】
ビニルホスホン酸ジエチル(0.704g;4.3×10−3mol)をチューブに加える。同時に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(210mg;4.3×10−4mol)をトルエンに溶解する。そして、その溶液をチューブに加える。次に、ペンタジメチルシロキサン(0.190g;1.28×10−3mol)を加える。そして、温度を50℃に設定する。ペンタジメチルシロキサンを加えた約15分後に、ガスの強い放出が観察され、約30分後に消失し始める。ポリ(ヒドロメチル−コ−ジメチル)シロキサン(1g;2.13×10−3mol)を丁度この瞬間に加える。反応は85℃で16時間行う。反応の終了後、反応混合物を保管する。
【0129】
実施例2
この実施例は、以下の式を有するビニルホスホン酸ジエチルの重合に由来する発明に基づく重合体の製造に関する:
【0130】
【化20】
【0131】
主成分の共重合体:以下の式のポリ(ヒドロメチル−コ−ジメチル)シロキサン:
【0132】
【化21】
【0133】
ビニルホスホン酸ジエチル(0.704g;4.3×10−3mol)をチューブに加える。同時に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(210mg;4.3×10−4mol)をトルエンに溶解する。そして、その溶液をチューブに加える。次に、ペンタジメチルシロキサン(0.190g;1.28×10−3mol)を加える。そして、温度を50℃に設定する。ペンタジメチルシロキサンを加えた約15分後に、ガスの強い放出が観察され、約30分後に消失し始める。ポリ(ヒドロメチル−コ−ジメチル)シロキサン(2g;4.26×10−3mol)を丁度この瞬間に加える。反応は85℃で16時間行う。反応の終了後、反応混合物を保管する。
【0134】
実施例3
この実施例は、以下の式を有するビニルホスホン酸ジエチルの重合に由来する発明に基づく重合体の製造に関する:
【0135】
【化22】
【0136】
主成分の共重合体:以下の式を有するポリ(ヒドロメチル−コ−ジメチル)シロキサン:
【0137】
【化23】
【0138】
ビニルホスホン酸ジエチル(0.704g;4.3×10−3mol)をチューブに加える。同時に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(210mg;4.3×10−4mol)をトルエンに溶解する。そして、その溶液をチューブに加える。次に、ペンタジメチルシロキサン(0.190g;1.28×10−3mol)を加える。そして、温度を50℃に設定する。ペンタジメチルシロキサンを加えた約15分後に、ガスの強い放出が観察され、約30分後に消失が始まる。ポリ(ヒドロメチル−コ−ジメチル)シロキサン(4g;4.56×10−3mol)を丁度この瞬間に加える。反応は85℃で16時間行う。反応の終了後、反応混合物を保管する。
【0139】
実施例4
この実施例は、上で説明した実施例1と3によって製造された共重合体によってグラフト化されたシリカ粒子の製造を示す。
【0140】
この目的のために、120mlのトルエンに2gのシリカナノ粒子(事前に窒素存在下、130℃で24時間乾燥した)を懸濁した懸濁液を、三つ口フラスコ内で、機械的に、超音波振動下で製造する。その懸濁液を撹拌しながら1時間オイルバス中で還流した。実施例1〜3によってPHM−co−DMS上でのDEVP反応終了時に得られた反応混合液を加え、その還流をさらに16時間維持する。官能化シリカナノ粒子を回収し、反応していない重合体を除去するために、遠心分離サイクルを用いてトルエンで2回洗浄する。得られたサンプル(3.3g)を真空内で90℃で24時間乾燥する。
【0141】
異なった実験の後に得られた粒子を固相29Si CP/MAS NMRによって評価した。実施例1〜3の結果である共重合体を用いて得られたスペクトルは、どんな有意差も示さない。
【0142】
得られたスペクトルを、図1に示す。スペクトル(a)は、修飾前のシリカ粒子を用いて得られたスペクトルに対応する。スペクトル(b)は、グラフト化反応後のシリカ粒子を用いて得られたスペクトルに対応する。
【0143】
グラフト化後に得られた粒子は、以下の式で示すことができる:
【0144】
【化24】
【0145】
n、r、q及びpは、括弧の中の繰り返し単位の繰り返しの数を表し、Etはエチル基に対応し、点線で示される3つの結合に結合するケイ素原子は、シリカ粒子に属するケイ素原子に対応する。
【0146】
スペクトル(a)との比較では、スペクトル(b)では、約−105ppmで、Q型のシグナルの発生と相まって、約−85ppmで発生するQ型のケイ素原子に対応するシグナルの消滅が観測される。Qケイ素原子は、ホスホン酸化共重合体に結合したシリカ粒子表面のそれらに対応する。すなわち、それらは、上記式の図1によって示される。約−65ppmで発生する共鳴シグナルは、T型のケイ素原子に対応し(これらは、上記式の図2によって示される)、3つの酸素原子に結合するケイ素原子のシグナルの特性である。−35ppmで発生するシグナルは、D型のケイ素原子に対応し(これらは、上記式の図3によって示される)、2つの酸素原子に結合するケイ素原子のシグナルの特性である。最後に、約−15ppmで観察されるシグナルは、M型のケイ素原子に対応し(これらは、上記式の図4によって示される)、1つの酸素原子に結合するケイ素原子のシグナルの特性である。
【0147】
異なった実験から得られた粒子を固相13C CP/MAS NMRによって評価した。実施例1〜3によって得られた共重合体を用いて得られたスペクトルはどんな有意差も示さない。
【0148】
得られたスペクトルを図2に示す。
【0149】
上記の式は、炭素原子に特定番号を付した、グラフト化後に得た粒子のものである:
【0150】
【化25】
【0151】
n、r、q及びpは、括弧の中の繰り返し単位の繰り返しの数を表し、点線で示される3つの結合に結合するケイ素原子は、シリカ粒子に属するケイ素原子に対応する。
【0152】
番号1の炭素原子に対応する62ppmの共鳴シグナルが観察される。36pppmのシグナルは、脂肪族鎖の番号2の炭素原子に対応している。18ppmで発生するシグナルは、番号3の炭素原子に対応している。最後に、0ppmのシグナルは番号4の炭素原子に対応し、シロキサンの鎖に属する炭素原子のシグナルの特性である。したがって、このスペクトルは、実施例1〜3での共重合体によるシリカ粒子のグラフト化を証明する。
【0153】
異なった実験から得られた粒子を固相31P CP/MAS NMRによって評価した。実施例1〜3による共重合体を用いて得られたスペクトルは、どんな有意差も示さない。
【0154】
得られたスペクトルを図3に示す。
【0155】
ブロードな共鳴シグナルが、ホスホン酸ジエチル基の特性である30ppmに集中したこのスペクトルで観察される。
【0156】
また遊離している粒子はTGAによって評価され、温度T(℃)の関数として、質量損失P(%)における傾向を示すグラフ形の図4において結果が示される(曲線a、b、cは、それぞれ、実施例1の共重合体、実施例2の共重合体、実施例3の共重合体によってグラフト化された粒子のものである)。850℃における質量分率は、そのようなシリカ粒子によって形成された無機部分に起因する。100における残余はシリカ粒子にグラフト化された有機部分に起因する。
【0157】
実施例1、2及び3の共重合体から得られた粒子に関しては、有機部分は35質量%である。
【0158】
150〜350℃に位置する領域中の質量損失は、ホスホン酸基のエチル基の離脱に対応する。これらの官能基は、ビニルホスホン酸ジエチル繰り返し単位の55質量%に相当する。これらのデータに基づいて、得られる製品中のビニルホスホン酸ジエチル繰り返し単位の質量百分率を推測することができる。
【0159】
例えば、実施例1の共重合体をグラフト化することによって得られた粒子に関して、150〜350℃に位置する領域中の質量損失は約22%と評価される。エチル官能基がビニルホスホン酸ジエチル繰り返し単位の55質量%に相当するという上記の原理から、シリカ粒子にグラフト化した共重合体鎖の総分率は40質量%と評価される。熱質量分析の完了においては65質量%が残余し、この部分の寄与は、無機部分のみ(この場合はシリカ)だけに由来することに留意すると、各粒子上の共重合体の%を5%と見積もることができる。これらの異なる部分に基づいて、60のときにビニルホスホン酸ジエチル繰り返し単位の反復の数を見積もることができ、これによりイオン交換容量が2.31meq.g−1と見積もることができる。
【0160】
実施例5
この実施例は、いわゆる蒸発鋳造法で前記製品の溶液を使用することで実施例4において得られた製品からの膜の製造を説明する。使用される溶媒は、ジメチルホルムアミドである。ガラス板に溶液を注形した後、24時間60℃で乾燥した後に膜を得る。次に、それを蒸留水に浸して回収する。ホスホネート基を加水分解してホスホン酸基を得るために、膜を約70時間、12M塩酸水溶液中に浸す。加水分解の前後の炭素元素の分析評価は、転化率が95%であることを示す。微量の酸の全てを取り除くために、蒸留水で何度か膜を洗浄する。
図1
図2
図3
図4