(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のグラフト化ポリブタジエンゴムと前記グラフト化天然ゴムを混合して前記ラテックスマスターバッチを製造するステップは、第1の凝集反応器内で行われる、請求項1に記載の方法。
前記ラテックスマスターバッチに凝固剤を混合して前記天然ゴムをベースとするABS粉末を製造するステップは、第2の凝集反応器内で行われる、請求項1に記載の方法。
請求項4に記載の方法であって、乳化剤と触媒の混合物を製造するステップをさらに含み、前記天然ゴムの100重量部に対し、前記乳化剤と触媒の混合物は、水酸化カリウム(KOH)を0.1〜0.4重量部、オレイン酸を0.5〜2重量部、及びtert‐ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)を1〜3重量部含む、方法。
前記天然ゴムをベースとするABS粉末及びスチレンアクリロニトリル樹脂の100重量部に対し、前記複数の潤滑剤は、エチレンビスステアロアミド(EBS)を0.2〜3重量部、ステアリン酸カルシウムの重量(Ca−st)を0.05〜2重量部、及びシリコンオイル(Si‐Oil)を0.01〜1重量部含む、請求項16に記載の方法。
複数のグラフト化ポリブタジエンゴムと前記グラフト化天然ゴムを混合して前記ラテックスマスターバッチを製造するステップは、第1の凝集反応器内で行われる、請求項16に記載の方法。
前記ラテックスマスターバッチに凝固剤を混合して前記天然ゴムをベースとするABS粉末を製造するステップは、第2の凝集反応器内で行われる、請求項16に記載の方法。
前記天然ゴムをベースとするABS粉末と複数の潤滑剤を混合して前記天然ゴムをベースとするABS製品を製造するステップは、配合反応器内で行われる、請求項16に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の実施形態は、天然ゴムをベースとするABS組成物、粉末、材料、及び/又は添加剤を生成、調製又は製造する新規な方法、プロセス、又は技術に関する。具体的には、本開示のほとんどの実施形態は、天然ゴムをベースとするABSを含む組成物又は粉末を生成、調製又は製造する方法、プロセス、又は技術に関する。本開示の実施形態により製造される組成物又は粉末を、天然ゴムをベースとするABS粉末ということもある。
【0020】
開示するほとんどの実施形態の方法、プロセス、又は技術は、加硫ゴムを製造するために架橋剤としてジビニルベンゼン(DVB)を使用する加硫プロセス,及びその後の,生の天然ゴムをベースとするABS粉末を製造するためにスチレン及びアクリロニトリルを使用する重合プロセスを含む。加硫プロセス時にDVBを使用して製造される加硫ゴムは、実質的に溶液、懸濁液又は乳濁液として存在可能な液体状である。これにより、従来の方法で必要とされる重合プロセス前の中間ステップを省くことができる。重合プロセスに続いて、最終生成物又は結果として得られる物質として天然ゴムをベースとするABS粉末を製造するために凝集プロセス又は凝集反応を行う。
【0021】
加硫プロセスは、複数の乳化剤と触媒の混合物の一部を天然ゴム、架橋剤及び少なくとも1つの脱酸素剤と混合、相互作用、反応、化合、結合、調合するステップを伴う。本加硫プロセスは、中間生成物又はより具体的には加硫天然ゴムの形成を容易にする。
【0022】
続く重合プロセスにおいては、反応器内で、加硫ゴムを安定剤、少なくとも1つの脱酸素剤、スチレンとアクリロニトリルのモノマー溶液、移動剤、触媒液及び乳化剤溶液と混合する。重合プロセスは、グラフト化天然ゴムを製造、生成、回収し又は生じさせる。
【0023】
凝集プロセスは、ラテックスマスターバッチを製造、回収又は生成するステップ、及びその後の、生の天然ゴムをベースとするABS粉末を製造、回収又は生成するための、ラテックスマスターバッチの一部と凝固剤及び水を混合するステップを含む。凝集プロセスはその後の、結果として得られる物質又は最終生成物である天然ゴムをベースとするABS粉末を製造、生成、回収し又は生じさせるための、ろ過及び乾燥ステップをさらに含む。本開示による実施形態の天然ゴムをベースとするABS粉末は、固体状態又は固形で、例えば、粉末形状である。したがって、天然ゴムをベースとするABS粉末は、他のプラスチック又はプラスチック製品を製造するプラスチック系粉末と容易に混合させることができる。つまり、本開示の多くの実施形態の天然ゴムをベースとするABS粉末と他の一般的なプラスチック又はプラスチック系粉末には、良好な均一性や均質性が確立又は達成されている。これにより、既存のプラスチック又はプラスチック系粉末とともに、容易に使用及び/又は適用することができる。本開示の様々な実施形態により提供される天然ゴムをベースとするABS粉末の使用により、増大した機械的強度及び/又は強化された物理的性質を有するプラスチック製品を製造、生成、又は生じさせることができる。
【0024】
凝集プロセスに続いて、天然ゴムをベースとするABS粉末は最終的に天然ゴムをベースとするABS製品を製造、生成、回収し又は生じさせるために、コンパウンディングプロセスを経る必要がある。
【0025】
本開示の代表的な実施形態は、
図1を参照して以下で詳細に示すように、粉末、材料、組成物及び/又は添加物を含む天然ゴムをベースとするABS製品を、調製、生成及び/又は製造する方法、プロセス及び/又は技術に関する。しかしながら、これは、本開示の様々な実施形態で見られる操業特性、機能特性、又は性能特性のような基本的な原則を必要とするその他の応用例から、本開示の様々な実施形態を排除するものではない。
【0026】
方法又はプロセス100の実施形態の態様
図1は、本開示のいくつかの実施形態に係る、天然ゴムをベースとするABS組成物、粉末、材料、及び/又は添加物を生成、調製及び製造するプロセスのフローチャートである。
【0027】
ゴムの加硫プロセス
初めに加硫プロセス110を行う。当業者によって理解されるように、加硫プロセスは、ゴム、例えば、天然ゴムの引っ張り強度及び/又は物理的強度を強化及び/又は補強するのに、通常使用される。天然ゴムは、ポリブタジエン等の合成ゴムと比較して、少しも架橋結合を有せず、物理的に柔らかく、弱い。具体的には、加硫はゴムの物理的性質を強化するためにゴムの分子を互いに架橋させるプロセスである。特に、架橋は弾力性とゴムの強度を約10倍高める。
【0028】
ゴムを加硫する従来の方法は、液状ゴムを硫黄又は硫黄を含有する化合物とともに加熱することを伴う。そのような慣例は、"Handbook of Plastic Elastomer & composites"(4
th Edition. Edited by Charles A.Harper and published by The Mc Graw−Hill companies)及び"Advanced Rubber Composites"(Edited by G.Heinrich and published by springer)に開示されている。硫黄又は硫黄を含有する化合物は架橋剤や加硫剤として使用される。しかしながら、本開示の多くの実施例では、ジビニルベンゼン(DVB)を架橋剤又は加硫剤として使用する。架橋剤又は加硫剤としてのDVBの使用により、溶液、懸濁液又は乳濁液として存在することができる実質的に液状の加硫天然ゴムを製造、回収、生成する。これにより、重合プロセス120前の中間ステップが不要になる。また、架橋剤又は加硫剤としてDVBを使用することにより、加硫プロセス後の生成物、例えば加硫天然ゴムを、その後の重合プロセスで直接使用することができる。これにより、重合プロセス前の追加ステップの必要性や要求を回避することができる。
【0029】
本開示の加硫プロセス110では、多数の又は一連の異なった出発物質、試薬及び/又は反応剤を必要とし又は使用する。多くの実施形態では、一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤は、天然ゴム、複数の乳化剤、触媒、少なくとも1つの脱酸素剤、及び架橋剤を含む。加硫に関する以下の説明では、天然ゴム、複数の乳化剤、触媒、少なくとも1つの脱酸素剤、及び架橋剤を含む一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤の量は、加硫前の天然ゴムに対して重量部で表わされている。
【0030】
いくつかの実施形態では、水酸化カリウム(KOH)及びオレイン酸を含む複数の乳化剤を加硫プロセス110で使用することができる。そして、tert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)等の有機過酸化物を触媒として加硫プロセス110で使用することができる。また、ジビニルベンゼン(DVB)などの架橋剤を使用することができる。さらに、少なくとも1つの脱酸素剤は、少なくとも1つの乳糖、硫酸第一鉄七水和物(FeSO
4・7H
2O)及びテトラピロリン酸ナトリウム(TSPP)を含む。
【0031】
様々な実施形態では、多数の又は一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤は天然ゴムを約90〜100重量部、例えば約100重量部含み、KOHを約0.1〜0.4重量部、例えば約0.2重量部含み、オレイン酸を約0.5〜2重量部、例えば約0.85重量部含み、TBHPを約1から3重量部、例えば約2重量部含み、DVBを約0.1〜1重量部、例えば約0.5重量部含み、乳糖を約0.07〜0.42重量部、例えば約0.28重量部含み、FeSO
4・7H
2Oを約0.001〜0.006重量部、例えば約0.004重量部含み、TSPPを約0.04〜0.24重量部、例えば約0.16重量部を含む。
【0032】
本実施形態の詳細に応じて、多数の又は一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤の相対量及び/又は濃度を変化させることができる。例えば、乳化剤、触媒、少なくとも1つの脱酸素剤及び/又は架橋剤の分子比を、加硫ゴムの所望の強度の必要性に応じて変化させることができる。
【0033】
加硫プロセス110では、反応器、例えば20リットルの反応器で実施、処理、又は遂行することができる。しかし、当業者であれば、異なった容積、形及び大きさの他の反応器でもこの加硫プロセスに使用できることが理解されるだろう。
【0034】
加硫プロセス110は、例えばヒータの加熱システムによって、加硫反応器の温度を上昇、変更及び/又は維持するステップを含むことができる。また、当該技術分野で公知の加熱炉、加熱ジャケット又は他の加熱装置を、反応器の温度を上昇、変更及び/又は維持するステップに使用することができる。
【0035】
様々な実施形態において、複数の乳化剤と触媒の混合物を調製又は製造する。KOHとオレイン酸を含む複数の乳化剤を混合して乳剤混合物を形成し、この乳剤混合物にTBHPなどの触媒を加えて、複数の乳化剤と触媒の混合物を形成する。複数の乳化剤及び触媒の混合物の第1の部分は、その後、約20〜30℃の室温で稼働している加硫反応器に入れる。複数の乳化剤と触媒の混合物の第1の部分は、調製される全体的な又は最終的な体積又は量の約5%を含む。
【0036】
そして、天然ゴムを加硫反応器に入れる。天然ゴムはラテックスゴムを含み、自然界では実質的に液体である。複数の乳化剤と触媒の混合物の第1の部分及び天然ゴムを加硫反応器に加え、加硫反応器の内容物を撹拌器具、電磁式撹拌器又は撹拌機で混合及び/又は均質化するように攪拌することができる。その後、DVBを含む架橋剤並びに少なくとも1つのFeSO
4・7H
2O及びTSPPを含む脱酸素剤を加硫反応器に入れ、混合する。予め乳化剤と触媒の混合物の一部として加えられたKOHとオレイン酸は、DVB及び天然ゴムの混合物を安定化させ、さらにTBHPは、加硫プロセス110を促進させる。また、加硫反応器内に少なくとも1つの脱酸素剤を入れることにより、加硫プロセス110の作用温度又は反応温度を、低下、軽減又は減少させることができる。
【0037】
少なくとも1つの脱酸素剤を入れた後、加硫反応温度を約65〜75℃、例えば約69〜71℃に増加又は上昇させる。温度の増加は、約25〜35分間、例えば約30分間かけて行う。
【0038】
温度が69〜71℃に上昇している時、複数の乳化剤と触媒の混合物の第2の部分又は全体的な又は最終的な体積又は量の残余部分、例えば調製された全体的な又は最終的な体積又は量の95%を、約1時間かけて加硫反応器に入れる。複数の乳化剤と触媒の混合物の第2の部分の全体積を完全に入れたうえで、加硫プロセス110を首尾よく完了するために、加硫反応器又は加硫反応器の内容物を約7時間放置又は維持する。
【0039】
本開示の多くの実施形態では、第1のプロセス又は加硫プロセス110は、中間生成物、より具体的には加硫天然ゴムを製造する。本開示の多くの実施形態の加硫天然ゴムは、自然界では実質的に液体であり、溶液、懸濁液又は乳濁液として存在することができる。これは、結果として得られる加硫ゴムが固体状となる従来のゴムの加硫技術とは異なっている。
【0040】
本発明は、天然ゴムをベースとするABS粉末(すなわち、最終生成物又は結果として得られる物質)を生成又は製造する重合プロセスを含む。溶液、懸濁液又は乳濁液として加硫ゴムが存在することにより、重合プロセス120前の中間プロセスを排除し、以下の重合プロセス120を容易にする。
【0041】
重合プロセス
次に、重合プロセス120を行う。当業者によって理解されるように、重合は、モノマー分子が化学的に反応し、ポリマー鎖を形成するプロセスである。ポリマー鎖は、1つ以上のモノマーから構成されていてもよい。グラフト重合は、特に側鎖が構造的に主鎖と異なるポリマーを生成するプロセスである。
【0042】
本開示の重合プロセス120において、多数の又は一連の種々の出発物質、試薬及び/又は反応剤を必要とし又は使用する。多くの実施形態では、一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤は、加硫天然ゴム、安定剤、少なくとも1つの脱酸素剤、モノマー、移動剤、触媒及び複数の乳化剤を含む。重合に関する以下の説明では、加硫天然ゴム、安定剤、少なくとも1つの脱酸素剤、モノマー、移動剤、触媒及び複数の乳化剤を含む一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤の量は、ラテックスをスチレンとアクリロニトリルの共重合体でグラフト化した天然ゴムに対して、重量部で表されている。
【0043】
様々な実施形態において、水酸化アンモニウム(NH
4OH)を含む安定剤を重合プロセス120に使用する。少なくとも1つの脱酸素剤は、少なくとも1つの乳糖、硫酸第一鉄七水和物(FeSO
4・7H
2O)及びテトラピロリン酸ナトリウム(TSPP)を含む。さらに、スチレンとアクリロニトリルを含むモノマーを重合プロセス120で使用することができる。重合プロセス120に使用される移動剤は、tert‐ドデシルメルカプタン(TDM)を含む。触媒は、有機過酸化物、例えばtert‐ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)を含む。TBHPは69〜70%の水溶液として提供することができる。重合プロセス120における複数の乳化剤は、水酸化カリウム(KOH)とオレイン酸を含む。
【0044】
多くの実施形態では、多数の又は一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤は、加硫天然ゴムを約50〜70重量部、例えば約60重量部含み、水酸化アンモニウム(NH
4OH)を約1〜6重量部、例えば約3重量部含み、乳糖を約0.2〜0.4重量部、例えば約0.3重量部含み、FeSO
4・7H
2Oを約0.0005〜0.0015重量部、例えば約0.001重量部含み、TSPPを約0.05〜0.15重量部、例えば約0.1重量部含み、スチレンを約25〜35重量部、例えば約30重量部含み、アクリロニトリルを約5〜15重量部、例えば約10重量部含み、TDMを約0.1〜0.3重量部、例えば約0.2重量部含み、TBHPを約0.1〜0.2重量部、例えば約0.136重量部含み、KOHを約0.15〜0.25重量部、例えば約0.203重量部含み、そしてオレイン酸を約0.5〜1.5部重量部、例えば約1.0重量部含む。
【0045】
重合プロセス120は反応器、例えば20リットルの反応器で実施、処理、又は遂行することができる。しかし、当業者であれば、異なった容積、形及び大きさの他の反応器でも、この重合プロセス120に使用できることが理解されるだろう。
【0046】
重合プロセス120は、加熱装置、例えばヒータによって、重合反応器の温度を上昇、変更及び/又は維持するステップを含むことができる。また、当該技術分野で公知の加熱炉、加熱ジャケット又は他の加熱装置を、重合反応器の温度を上昇、変更及び/又は維持するステップに使用することができる。
【0047】
本開示の代表的な実施形態において、加硫天然ゴムを約20〜30℃の室温で稼働している重合反応器に入れる。加硫天然ゴムは実質的に溶液、懸濁液又は乳濁液を含む、液状である。続いて、NH
4OHなどの安定剤を重合反応器に加える。安定剤の役割は、劣化が起こる前に中間生成物が形成できるように、すべての劣化態様、例えば加硫天然ゴムの熱劣化を遅らせ、妨げ、又は抑制させることである。
【0048】
安定剤を加え又は入れた後、重合反応器の温度を約60〜70℃、例えば約64〜66℃に増加又は上昇させる。温度の増加は約25〜35分間、例えば約30分間かけて行う。
【0049】
温度が約64〜66℃に上昇、維持されている時、少なくとも1つの乳糖、FeSO
4・7H
2O及びTSPPを含む少なくとも1つの脱酸素剤を重合反応器に入れる。少なくとも1つの脱酸素剤は、反応の作用温度を下げる役割を果たす。これらの脱酸素剤は、特定の順序で加える必要はない。例えば、乳糖をFeSO
4・7H
2Oの前に入れ、後にTSPPを入れることもできる。いくつかの他の実施形態では、乳糖とTSPPを入れる前にFeSO
4・7H
2Oを入れる。
【0050】
その後、スチレンとアクリロニトリルのモノマー溶液を調製する。いくつかの実施形態では、TDMのような移動剤をモノマー溶液に加えることができる。本実施形態の詳細に応じて、1つ以上の有機溶剤をスチレン及び/又はアクリロニトリル及び/又はTDMとともに使用することができる。有機溶剤は、アセトン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、エタノール、石油エーテル及びジクロロメタンを含むことができる。TDMは重合プロセスを促進し、多くの実施形態において、重合プロセスを効率よく処理する。その後、TDMを含むモノマー溶液又は含まないモノマー溶液を、約64〜66℃に維持された反応器に入れ、混合する。
【0051】
続いて、TBHPの触媒液並びに、KOH及びオレイン酸を含む複数の乳化剤を有する乳化剤溶液を重合反応器に入れることができる。TBHPは重合プロセスを初期化させる。本開示の多くの実施形態において、TBHP溶液並びに、KOH及びオレイン酸の乳化剤溶液は、特定の順序で加える必要はない。多くの実施形態において、重合反応器の内容物は、撹拌器具、電磁式撹拌器又は撹拌機により混合及び/又は均質化するように攪拌することができる。
【0052】
触媒液と乳化剤溶液を入れた後、重合反応器の内容物を約4〜5時間、例えば約4時間半、撹拌しておく。続いて、重合反応器の温度を、約25〜35分間、例えば30分間かけて、約65〜75℃、例えば70℃に上昇させる。
【0053】
重合反応器の温度を約70℃に維持する場合、重合プロセス120を促進し、首尾よく完了するように、重合反応器内の反応や内容物を約2時間半から3時間半、例えば3時間放置する。その後、重合反応器を冷却し、中間生成物を得る。
【0054】
本開示の多くの実施形態では、第2のプロセス又は重合プロセス120は、実質的にラテックス状の中間生成物を製造する。このラテックスは、グラフト化されており、構成成分として天然ゴムを含む。つまり、重合プロセスから得られる中間生成物はグラフト化天然ゴムを含む。
【0055】
凝集化過程
重合プロセス120に続いて、凝集プロセス130を行う。当業者によって理解されるように、凝集は溶液の分離を意味する。これは、懸濁液中でコロイドを形成するプロセスであって、凝集時に微粒子が互いに凝集体又は凝集塊になり、フロックを形成するプロセスである。フロックは、懸濁液の上部に積もって又は浮かんでいてもよく、懸濁液の下部に沈殿していてもよい。これはその後、ろ過プロセスにより容易に分離又は回収することができる。
【0056】
本開示の代表的な実施形態では、凝集プロセス130は、ラテックスマスターバッチを製造、回収又は生成するステップを含む。
【0057】
本開示のいくつかの側面における凝集プロセス130は、多数の又は一連の種々の出発物質、試薬及び/又は反応剤を必要とし、又は使用する。多くの実施形態では、一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤は、グラフト化天然ゴム、複数のグラフト化ポリブタジエンゴム、樹脂乳剤、金属不活性化剤、少なくとも1つの色安定剤、抗酸化剤及び凝固剤を含む。本実施形態の詳細に応じて、複数のグラフト化ポリブタジエンゴムは、第1のグラフト化ポリブタジエンゴムと第2のグラフト化ポリブタジエンゴムを含む。以下の凝集に関する説明では、グラフト化天然ゴム、複数のグラフト化ポリブタジエンゴム、樹脂乳剤、金属不活性化剤、少なくとも1つの色安定剤、抗酸化剤及び凝固剤を含む一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤の量は、粉状天然ゴムに対して重量部で表わされている。
【0058】
いくつかの実施形態では、小粒径のグラフト化ポリブタジエンゴム(約0.1〜0.2μm)及び中粒径のグラフト化ポリブタジエンゴム(約0.3〜0.4μm)を含むグラフト化ポリブタジエンゴムを凝集プロセス130に使用することができる。第1のグラフト化ポリブタジエンゴム及び/又は第2のグラフト化ポリブタジエンゴムは、小粒径及び/又は中粒径のグラフト化ポリブタジエンゴムであってもよい。樹脂乳剤は、スチレンアクリロニトリルの乳剤混合物(E SAN)を含む。さらに、金属不活性化剤は水酸化カリウム(KOH)を含み、少なくとも1つの色安定剤はテトラピロリン酸ナトリウム(TSPP)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び水酸化カリウム(KOH)を含み、抗酸化剤はオクトライト(Octolite)1219及びウィングステイ(Wingstay)L等のフェノール系抗酸化剤を含み、凝固剤は金属硫酸塩、例えば、硫酸マグネシウム七水和物及び/又は硫酸マグネシウム七水和物(MgSO
4・7H
2O)と硫酸(H
2SO
4)の混合物を含む。
【0059】
本開示の代表的な実施形態において、多数の及び/又は一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤は、グラフト化天然ゴムを約10〜20重量部、例えば約16.4重量部含み、第1のグラフト化ポリブタジエンゴムを約20〜30重量部、例えば約24.6重量部含み、第2のグラフト化ポリブタジエンゴムを約35〜45重量部、例えば約41重量部含み、スチレンアクリロニトリルの乳剤混合物(E SAN)を約15〜25重量部、例えば18重量部含み、KOHを約0.25〜0.75重量部、例えば約0.5重量部含み、TSPPを約0.05〜0.5重量部、例えば約0.1重量部含み、SDSを約0.05〜0.5重量部、例えば約0.1重量部含み、KOHを約0.1〜1重量部、例えば約0.21重量部含み、ウィングステイLのフェノール系抗酸化剤を約0.1〜1重量部、例えば約0.5重量部含み、MgSO
4・7H
2Oを約3〜8重量部、例えば約4.2重量部含む。
【0060】
凝集プロセス130は、反応器内、例えば20リットルの反応器で実施、処理又は遂行することができる。しかし、当業者であれば、異なった容積、形及び大きさの他の反応器でもこの凝集プロセスに使用できることが理解されるだろう。いくつかの実施形態では、第1の凝集反応器と第2の凝集反応器を含む一連の凝集反応器を使用する。
【0061】
以下に詳述する凝集プロセス130は、一連の凝集反応器の温度を、加熱装置、例えばヒータにより、上昇、変更及び/又は維持するステップを伴うことができる。また、当該技術分野で公知の加熱炉、加熱ジャケット又は他の加熱装置を、凝集反応器の温度を上昇、変更及び/又は維持するステップに使用することができる。
【0062】
本開示のいくつかの実施形態において、重合プロセス120から得られるグラフト化天然ゴムを、約20〜30℃の室温で稼働している第1の凝集反応器に入れる。グラフト化天然ゴムは、実質的に溶液、懸濁液又は乳濁液などの液状である。本実施形態の詳細に応じて、天然ゴムをベースとする粉末である最終生成物を異なる特性を持つように製造するために、グラフト化天然ゴムの量を変更、変化又は変形することができる。例えば、少量のグラフト化天然ゴムでは、高い引っ張り強度と延性バランスを有する天然ゴムをベースとする粉末が得られる一方、大量のグラフト化天然ゴムでは、高い衝撃強度と高い伸張率の天然ゴムをベースとする粉末が得られる。
【0063】
その後、複数のポリブタジエンゴムを第1の凝集反応器に入れる。複数のポリブタジエンゴムは、第1のポリブタジエンゴムと第2のポリブタジエンゴムを含む。第1のグラフト化ポリブタジエンゴム及び/又は第2のグラフト化ポリブタジエンゴムの分量により、得られる天然ゴムをベースとするABS製品の物理的特性に影響し得、その特性を変更、変化又は変形させることができる。例えば、大粒径の第1のグラフト化ポリブタジエンゴムを多くすることで、最終生成物の耐衝撃強度に影響を及ぼすのに対し、小粒径の第2のグラフト化ポリブタジエンゴムを多くすることで、最終生成物の高光沢度に影響を及ぼす。第1のグラフト化ポリブタジエンゴム及び/又は第2のグラフト化ポリブタジエンゴムの分量を変化させることにより、得られる天然ゴムをベースとするABS粉末の特性を変更、変化又は変形させることができる。つまり、第1のグラフト化ポリブタジエンゴム及び/又は第2のグラフト化ポリブタジエンゴムの種類及び/又は量に応じて、得られる天然ゴムをベースとするABS粉末の特性を変更、変化又は変形させることができる。
【0064】
第1のグラフト化ポリブタジエンゴムと第2のグラフト化ポリブタジエンゴムを加えた後、E SAN、KOH(金属不活性化剤)、並びにTSPP、SDS及びKOHを含む少なくとも1つの色安定剤、並びに抗酸化剤を、第1の凝集反応器に加える。第1の凝集反応器の内容物を、撹拌器具、電磁式撹拌器又は撹拌機により混合及び/又は均質化するように攪拌することができる。
【0065】
KOH(金属不活性化剤)は、金属イオン及び特に反応混合物内のすべての鉄イオンを不活性化することにより、流体を安定にする役割を果たす。鉄イオンは重合プロセスにおけるFeSO
4・7H
2Oと乳糖との反応に由来し、その後も反応混合物中に残存していることがある。少なくとも1つの色安定剤は、結果として反応混合物の色を変化させる重合プロセスで残った触媒(TBHP)の存在から、劣化を防ぐ役割を果たす。抗酸化剤は、得られる天然ゴムをベースとするABS粉末の劣化を防ぐのに有用である。これは、得られる天然ゴムをベースとするABS粉末の寿命を長くすることができる。
【0066】
上述したように、E SAN、KOH、少なくとも1つの色安定剤、抗酸化剤は、この順に入れる必要はない。例えば、KOHは、E SANの前に入れることができ、続いて抗酸化剤と、少なくとも1つの色安定剤を加えることができる。いくつかの実施形態では、E SAN、KOH、少なくとも1つの色安定剤と抗酸化剤を、すべて同時に第1の凝集反応器に加えることができる。多くの実施形態では、反応が完了するのに約1時間かかる。
【0067】
E SAN、KOH、色安定剤及び抗酸化剤を加えた後、ラテックスマスターバッチを製造するために、第1の凝集反応器の内容物を室温、例えば約20℃〜40℃で、約30分間維持する。本開示の多くの実施形態では、ラテックスマスターバッチは、自然界では実質的に液体であり、懸濁液、ゲル、乳濁液又は溶液として存在し得る。
【0068】
その後、水を約10〜15リットル、例えば12リットルを第2の凝集反応器に入れる。第2の凝集反応器は室温、例えば約20〜30℃で稼働している。水は蒸留水と脱イオン水の少なくとも1つを含むことができる。その後、第2の凝集反応器の温度を約90〜100℃、例えば、約94〜97℃に上昇させる前に、MgSO
4・7H
2Oを含む凝固剤を第2の凝集反応器に入れる。
【0069】
第2の凝集反応器を約94〜97℃の温度で、約10〜15分間維持している時に、ラテックスマスターバッチの一部を第2の凝集反応器に入れる。ラテックスマスターバッチは、制御された速度で、第2の凝集反応器に入れることができる。
【0070】
第2の凝集反応器にラテックスマスターバッチを加える間、第2の凝集反応器の温度を約80〜90℃、例えば、約84〜86℃に維持する。例えば、第2の凝集反応器の温度を約84〜86℃に維持したまま、ラテックスマスターバッチの一部を第2の凝集反応器に入れる。ラテックスマスターバッチの添加完了に続いて、第2の凝集反応器の温度を約92〜94℃に上昇又は変更する。温度を約92〜94℃に上昇又は変更することで、凝集プロセスを容易にし、可能にし、又は促進する。ラテックスマスターバッチの添加前、添加中及び添加後の温度変化は、得られる最終生成物の粒径に影響を与える可能性がある。
【0071】
第2の凝集反応器の温度を約92〜94℃に増加又は変更次第、ラテックスマスターバッチの凝集を、容易に、首尾よく完了させるために、第2の凝集反応器を約92〜94℃で、約15〜30分間放置又は維持する。凝固剤とラテックスマスターバッチを混合させることによって、第2の凝集反応器内で凝集反応が起こる。具体的には、ラテックスマスターバッチの凝集は、凝固剤の援助、補助又は支援を受けて反応器内で起こる。得られる粉末の粒径は約500μmである。
【0072】
凝集プロセス130は、生の天然ゴムをベースとするABS粉末を含む結果として得られる産物を製造、回収又は生成する。生の天然ゴムをベースとするABS粉末を、水中で懸濁物質、生成物、又は粉末として製造する。
【0073】
続いて、生の天然ゴムをベースとするABS粉末を水及び/又はあらゆる残留未反応の反応物から並びに/又は第2の凝集反応器中に存在する副産物から、回収又は分離する。これは、凝集プロセス130の、生の天然ゴムをベースとするABS粉末をろ過するステップにより行うことができる。代表的な実施形態では、大規模なろ過装置、例えば、ベルトコンベアを使用する。これにより、生の天然ゴムをベースとするABS粉末中の水分の約40〜60%を取り除くことができる。
【0074】
ろ過プロセスに続いて、残余分、残留物又は残渣を乾燥させる。残余分、残留物又は残渣の乾燥は、約70〜100℃、例えば約80℃の温度で所定時間、例えば約24時間、乾燥器、気流乾燥器又はトルネッシュドライヤ(tornesh dryer)でのベーキングプロセス又は加熱プロセスによって行うことができる。乾燥した残余分、残留物又は残渣は、最終生成物である天然ゴムをベースとするABS粉末を含む。本開示の様々な実施形態により提供される天然ゴムをベースとするABS粉末は、成分や添加物として天然ゴムをベースとするABS粉末を有する製品を製造するために、コンパウンディングプロセスを経ることになる。
【0075】
本開示の実施形態の天然ゴムをベースとするABS粉末は、固体の状態又は形状で、例えば、粉末形状である。したがって、天然ゴムをベースとするABS粉末は、他のプラスチック製品又はプラスチック製品を製造するためのプラスチック系粉末と、容易に、より容易に又はより良く混合することができる。つまり、本開示の多くの実施形態の天然ゴムをベースとするABS粉末と他の一般的なプラスチック又はプラスチック系粉末には、確立又は達成した良好な均一性や均質性が存在し得る。これにより、既存のプラスチック又はプラスチック系粉末とともに、容易に使用及び/又は適用することができる。本開示の様々な実施形態により提供される天然ゴムをベースとするABS粉末の使用により、機械的強度及び/又は強化された物理的性質が高まったプラスチック製品を製造、生成、又は生じさせる。また、この天然ゴムをベースとする粉末は、取り扱いやすく、作業も容易である。
【0076】
天然ゴムをベースとするABS生成物を含むプラスチック製品を製造、生成、生じさせるために、天然ゴムをベースとするABS粉末は、さらにコンパウンディングプロセスを経る必要がある。
【0077】
コンパウンディングプロセス
天然ゴムをベースとするABS生成物を含むプラスチック製品を製造、生成、又は生じさせるためにコンパウンディングプロセス140を行う。当業者によって理解されるように、コンパウンディングは、様々な添加剤と主成分のプラスチック材料、例えば天然ゴムをベースとするABS粉末とを混合するプロセスである。ほとんどのプラスチック材料は、後重合又は後凝集の状況では処理できない。後重合又は後凝集を経たプラスチック材料は、例えば処理に適した添加剤の配合により強化する必要がある。添加剤を加えないプラスチック材料は、処理中に分解し、物理的に弱い製品が製造される。添加剤の配合は、物理的特性を改良し、技術的な利点を付与し、及びこれらのすべての製品の用途におけるプラスチック材料の性能特性を高める重要な役割を果たしている。コンパウンディングプロセス140は、得られるプラスチック製品の強化を促進する。
【0078】
本開示のコンパウンディングプロセス140は、多数の又は一連の種々の出発物質、試薬及び/又は反応剤を必要とし又は使用する。多くの実施形態では、一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤は、天然ゴムをベースとするABS粉末、スチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)及び潤滑剤を含む。以下のコンパウンディングプロセスに関する説明では、天然ゴムをベースとするABS粉末、スチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)及び潤滑剤を含む一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤の量は、ABS粉末及びSANに対して重量部で表わされている。
【0079】
本開示の多くの実施形態において、コンパウンディングプロセス140で使用する潤滑剤は、エチレンビスステアロアミド(EBS)、ステアリン酸カルシウム(Ca‐st)及びシリコンオイル(Si‐Oil)を含む。
【0080】
様々な実施形態では、多数の又は一連の出発物質、試薬及び/又は反応剤は、天然ゴムをベースとするABS粉末を約20〜60重量部、例えば約40重量部を含み、SANを約40〜80重量部、例えば約60重量部含み、EBSを約0.2〜3重量部、例えば約0.5重量部含み、Ca‐stを約0.05〜2.0重量部、例えば約0.2重量部含み、Si‐Oilを約0.01〜1重量部、例えば約0.05重量部含む。
【0081】
コンパウンディングプロセス140は、配合ミキサー又は押出機、例えば直径26mm、長さと直径の比率(L:D)が40である2軸押出機(モデル:LABTECH LTE26−40/15kW)で、実施、処理又は遂行することができる。配合ミキサーや押出機は、完全自動又は半自動であってもよい。
【0082】
多くの実施形態において、凝集プロセス130を経た天然ゴムをベースとするABS粉末を、約20〜40℃の室温で稼働している配合ミキサー又は押出機に入れる。天然ゴムをベースとするABS粉末を加えた後、EBS、Ca‐st及びSi‐Oil等の潤滑剤を配合ミキサー又は押出機に入れる前に、SANを配合ミキサー又は押出機に加える。潤滑剤は、天然ゴムをベースとするABS粉末を柔軟にさせ、コンパウンディングプロセスを促進する。
【0083】
天然ゴムをベースとするABS粉末、SAN及び潤滑剤を配合ミキサー又は押出機に加えた後、内容物を全て混合し、続いて、内容物を約190〜210℃の温度で溶融する。
【0084】
その後、溶融した内容物を金型で押し出し、所望の形状や大きさのプラスチック製品を製造する。プラスチック製品は、成分として天然ゴムをベースとするABS粉末を有する。金型の形状と大きさは、プラスチック製品の結果を左右する。本開示の多くの実施形態では、金型の形状は、円形、長方形及び円筒形を含む。
【実施例1】
【0085】
本開示の実施形態による、天然ゴムをベースとするアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)粉末又は組成物を調製する実施例を以下で説明する。
【0086】
第1のプロセスは、天然ゴムを強化するために行った。続いて、実質的に液体、例えばラテックス状で存在するグラフト化天然ゴムを製造する第2のプロセスを行った。また、天然ゴムをベースとするABS粉末を製造する第3のプロセスの後、構成成分として天然ゴムをベースとするABSを含むプラスチック製品を形成する第4のプロセスをさらに行った。第1、第2、第3及び第4のプロセスは、本明細書に記載した、加硫プロセス110、重合プロセス120、凝集プロセス130及びコンパウンディングプロセス140に対応することができる。
【0087】
第1のプロセスにおける、反応剤、試薬及び/又は出発物質を以下の表1に示す。表1の反応剤、試薬及び/又は出発物質の量は、加硫化前のゴムに対して重量部で表示されている。
【0088】
始めに、複数の乳化剤と触媒の混合物を調製した。乳化剤は、KOHとオレイン酸を含み、触媒はTBHPを含んでいた。乳化剤は、KOHを0.2重量部、オレイン酸を0.85重量部含み、触媒は、TBHPを2重量部含んでいた。TBHPをKOH及びオレイン酸の混合物に加え、撹拌器具を用いて室温で撹拌した。
【0089】
続いて、室温で稼働している20リットルの反応器に調製された乳化剤と触媒の混合物を5体積%入れることにより、第1のプロセスを行った。そして、天然ゴムを100重量部(100%)、反応器に加え、撹拌して反応させ、1つの架橋剤と3つの脱酸素剤を反応混合物に加えた。架橋剤は、DVBを0.5重量部含んでいた。脱酸素剤は、乳糖を0.28重量部、FeSO
4・7H
2Oを0.004重量部、そしてTSPPを0.16重量部含んでいた。その後、反応器の温度を30分間かけて、70℃に上昇させた。
【0090】
反応器の温度を70℃に維持している時に、乳化剤と触媒の混合物の残留部分を1時間かけて反応器に入れ、その後、反応混合物を7時間撹拌した。
【0091】
次いで反応器を冷却した。第1のプロセスでは、中間生成物又は加硫天然ゴムを生成した。
【0092】
上記第1のプロセスに続いて第2のプロセスを行った。第2のプロセスにおける反応剤、試薬及び/又は出発物質の詳細を下記表2に示す。表2の反応剤、試薬及び/又は出発物質の量は、スチレンとアクリロニトリルの共重合体でラテックスをグラフト化した天然ゴムに対して、重量部で表示されている。
【0093】
第2のプロセスは、室温で稼働している20リットルの重合反応器に加硫天然ゴムを60%入れることから始めた。加硫ゴムを、撹拌器具を用いて反応器で撹拌し、次いで安定剤を反応器に入れた。安定剤は3〜15%の濃度の水酸化アンモニウム(NH
4OH)を100樹脂当たり(phr)0.6部含んでいた。NH
4OHを加えた後、反応器温度を65℃に上昇させた。温度の増加は30分間かけて行った。そして、温度を65℃に維持しつつ、3つの脱酸素剤を反応器に入れた。脱酸素剤は、乳糖を0.3重量部、FeSO
4・7H
2Oを0.001重量部、そしてTSPPを0.1重量部含んでいた。
【0094】
次に、スチレンとアクリロニトリルのモノマー溶液を、tert‐ドデシルメルカプタン(TDM)などの移動剤と共に反応器に加えた。モノマー溶液は、スチレンを30%、アクリロニトリルを10%そしてTDMを0.2重量部含んでいた。続いて、触媒液と乳化剤溶液を反応器に入れた。触媒液は、TBHPを0.136重量部含み、69〜70パーセントの水溶液であった。乳化剤溶液は、KOHを0.203重量部、オレイン酸1重量部含んでいた。
【0095】
その後、反応器の温度を30分間かけて70℃に上昇させる前に、反応混合物を65℃で4時間半、撹拌しておいた。反応器の温度を70℃に維持しつつ、反応混合物を3時間撹拌し、第2のプロセスを完了させた。第2のプロセスでは、構成成分として天然ゴムを有する中間生成物を製造した。中間生成物は、グラフト化天然ゴムを含んでいた。
【0096】
第2のプロセスに続いて、第3のプロセスを行った。第3のプロセスにおける反応剤、試薬及び/又は出発物質の概要を以下の表3に示す。表3の反応剤、試薬及び/又は出発物質の量は、粉末状天然ゴムに対して、重量部で表示されている。
【0097】
第3のプロセスは、ラテックスマスターバッチを作成することから始めた。これは、室温で稼働している凝集反応器にグラフト化天然ゴムを16.4%加えるステップを伴う。続いて、第1のグラフト化ポリブタジエンゴム、例えば小粒径のグラフト化ポリブタジエンゴムを24.6%と第2のグラフト化ポリブタジエンゴム、例えば中粒径のグラフト化ポリブタジエンゴムを41%、反応器に加えた。その後、スチレンアクリロニトリルの乳剤混合物を18%、反応器に入れ、撹拌器具を用いて撹拌して反応させた。
【0098】
その後、金属不活性化剤、3つの色安定剤と抗酸化剤を、反応混合物に加えた。金属不活性化剤はKOHを0.5重量部含み、色安定剤はTSPPを0.1重量部、SDSを0.1重量部、及びKOHを0.21重量部含み、抗酸化剤はウィングステイLのフェノール系抗酸化剤を0.5重量部含んでいた。反応混合物を約30分間休ませることで、ラテックスマスターバッチを製造した。
【0099】
その後、脱イオン水12リットルを、室温で稼働している別の20リットルの反応器に入れた。次いで、MgSO
4・7H
2Oである凝固剤を反応器に入れた。凝固剤はMgSO
4・7H
2Oを4.2重量部含んでいた。そして、約9リットルのラテックスマスターバッチの一部を反応器に加える前に、反応器の温度を95℃に上昇させ、温度85℃に維持した。その後、反応器の温度を約92〜94℃に上昇させ、さらに約30分間放置し、第3のプロセスを完了させた。第3のプロセスでは、天然ゴムをベースとするABS粉末を製造した。
【0100】
ろ過プロセスは、原子炉に残っている残留反応物及び/又は不純物から天然ゴムをベースとするABS粉末を分離又は回収するために行った。その後、天然ゴムをベースとするABS粉末を約80℃で24時間、乾燥機で乾燥させた。
【0101】
このプロセスは、ろ過プロセスの後に第4のプロセスをさらに含む。第4のプロセスでは、2軸押出機で、原料ポリマー又はベースをポリマー樹脂に変換した。
【0102】
第4のプロセスにおける反応剤、試薬及び/又は出発物質の概要を以下の表4に示す。表4の反応剤、試薬及び/又は出発物質の量は、ABS粉末及びSANに対して、重量部で表示されている。
【0103】
第4のプロセスは、室温でミキサー容器に、乾燥させた天然ゴムをベースとするABS粉末を40%入れることから始めた。その後、SANを60%、ミキサーの容器に入れ、続いて、潤滑剤をミキサーの容器に加えた。潤滑剤は、EBSを0.5重量部、Ca‐stを0.2重量部及びSi−Oilを0.05重量部含んでいた。低速ミキサーでABS粉、SAN、及び潤滑剤を5分間、十分に混合し、この混合物を2軸押出機で配合し、ペレット化した。
【0104】
直径26mm、長さと直径の比率(L:D)が40の2軸押出機をコンパウンディングプロセスに使用した。2軸押出機の温度分布と配合条件を表5に示す。
【0105】
表6は、天然ゴム(NR)の異なる構成における、天然ゴムをベースとするABS粉末の物性を示している。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
以上のように、本開示の様々な実施形態が、前述した欠点の少なくとも1つに対処するように記載されている。そのような実施形態は特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。しかし、記載された特定の形式や取り決めに限定されるものではなく、本開示の観点から多数の変更及び/又は修正を行うことができることは当業者に明らかであろう。また、それらも以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。