(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965995
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】光ベースの毛検出器を持つヘアトリートメント装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/21 20060101AFI20160728BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
A61B5/10 300Q
A61B5/10 300P
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-513280(P2014-513280)
(86)(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公表番号】特表2014-519608(P2014-519608A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】IB2012052573
(87)【国際公開番号】WO2012164441
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年4月16日
(31)【優先権主張番号】11168115.1
(32)【優先日】2011年5月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ヘインリッヒ アードリアン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヘース フランシスクス ヘンドリクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルギース バブ
(72)【発明者】
【氏名】ウズンバジャカワ ナタリア エドゥアルダウナ
【審査官】
奥田 雄介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/106480(WO,A1)
【文献】
特開2002−116614(JP,A)
【文献】
特表2012−533388(JP,A)
【文献】
特表2014−510099(JP,A)
【文献】
特表2010−512532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚表面の近くの毛を検出するための光ベースの検出器を有するヘアトリートメント装置であって、前記光ベースの検出器は、
入射偏光を持つ少なくとも第1の波長の光放射を皮膚表面に向けて発するための光源と、
前記皮膚表面において反射される光を検出するための光センサであって、前記入射偏光を持つ光と異なる偏光を持つ光とを別個に検出することが可能であり、前記入射偏光を持つ検出光を表す平行偏光値と、異なる偏光を持つ検出光を表す交差偏光値とを供給する、光センサと、
前記光センサに結合されたプロセッサであって、
校正手順に基づいて、前記交差偏光値及び前記平行偏光値をそれぞれのダイナミックレンジにスケーリングし、スケーリングされた交差偏光値及びスケーリングされた平行偏光値をそれぞれ得て、
前記スケーリングされた交差偏光値と前記スケーリングされた平行偏光値のうち低いほうの値を選択することにより、前記平行偏光値と前記交差偏光値とのセットの最小強度投射値を決定し、
前記最小強度投射値と所定の閾値との比較結果に基づいて皮膚表面と毛とを識別するように動作可能な、プロセッサと、
を有するヘアトリートメント装置。
【請求項2】
前記それぞれのダイナミックレンジは、背景測定及び拡散基準を含む校正手順に基づいて決定される、請求項1に記載のヘアトリートメント装置。
【請求項3】
前記平行偏光値についてのダイナミックレンジの広さは、前記交差偏光値についてのダイナミックレンジの広さの約3倍である、請求項1に記載のヘアトリートメント装置。
【請求項4】
前記プロセッサは更に、前記スケーリングされた交差偏光値と前記スケーリングされた平行偏光値との比を算出し、前記算出された比に更に基づいて皮膚表面と毛とを識別するように動作可能である、請求項1に記載のヘアトリートメント装置。
【請求項5】
前記プロセッサは更に、前記算出された比を更に処理するため、急な傾きを持つS字形の関数である識別関数を利用するように動作可能である、請求項4に記載のヘアトリートメント装置。
【請求項6】
前記識別関数は、前記算出された比の又は前記算出された比の線形関数の双曲線正接を有する、請求項5に記載のヘアトリートメント装置。
【請求項7】
前記光ベースの検出器は更に、前記皮膚表面の近くの複数の位置において光放射を発するように前記光源を制御し、それぞれの位置において前記光センサを用いて反射光を検出するための、制御ユニットを有し、前記プロセッサは更に、それぞれの位置において対応する最小強度投射値を示す最小強度投射マップを提供するように動作可能である、請求項1に記載のヘアトリートメント装置。
【請求項8】
前記複数の位置は1次元の走査線を形成する、請求項7に記載のヘアトリートメント装置。
【請求項9】
複数の前記1次元の走査線があわせて2次元の走査面を形成する、請求項8に記載のヘアトリートメント装置。
【請求項10】
前記プロセッサは更に、平行偏光値に対する対応する交差偏光値の比を各位置において決定することにより比マップを算出し、前記比マップに対して勾配フィルタを適用して、各位置について毛の端部の存在の確率を示す端部確率マップを取得し、前記端部確率マップ及び最小強度投射マップを組み合わせて、どこに毛が予期されるかを示すバイナリマップを生成するように動作可能である、請求項7に記載のヘアトリートメント装置。
【請求項11】
前記光源は更に、第2の波長の光放射を発するように構成され、前記光源は、前記第1の波長と前記第2の波長とで別個の交差偏光値及び平行偏光値を提供するように構成され、前記プロセッサは更に、前記第1の波長及び前記第2の波長について前記交差偏光値及び前記平行偏光値を組み合わせ、前記第1の波長及び前記第2の波長について前記組み合わせられた交差偏光値及び平行偏光値に基づいて前記最小強度投射値を決定するように動作可能である、請求項1に記載のヘアトリートメント装置。
【請求項12】
毛切断レーザ光源と、前記光ベースの検出器に結合された更なるプロセッサと、を更に有し、前記更なるプロセッサは、前記光ベースの検出器が毛の存在を検出した皮膚表面の位置において、前記毛切断レーザ光源を作動させるように構成される、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のヘアトリートメント装置。
【請求項13】
皮膚表面の近くの毛を検出するための方法であって、前記方法は、
入射偏光を持つ少なくとも第1の波長の光放射を皮膚表面に向けて発するステップと、
前記皮膚表面において反射される前記入射偏光を持つ光を検出し、前記入射偏光を持つ検出光を表す平行偏光値を供給するステップと、
前記皮膚表面において反射される異なる偏光を持つ光を検出し、前記異なる偏光を持つ検出光を表す交差偏光値を供給するステップと、
校正手順に基づいて、前記交差偏光値及び前記平行偏光値をそれぞれのダイナミックレンジにスケーリングし、スケーリングされた交差偏光値及びスケーリングされた平行偏光値をそれぞれ得るステップと、
前記スケーリングされた交差偏光値と前記スケーリングされた平行偏光値のうち低いほうの値を選択することにより、前記平行偏光値と前記交差偏光値とのセットの最小強度投射値を決定するステップと、
前記最小強度投射値と所定の閾値との比較結果に基づいて皮膚表面と毛とを識別するステップと、
を有する方法。
【請求項14】
皮膚表面の近くの毛を検出するためのコンピュータプログラム製品であって、請求項13に記載の方法をプロセッサに実行させるように動作可能なコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面の近くの毛を検出するための光ベースの検出器を有するヘアトリートメント装置であって、前記光ベースの検出器は、入射偏光を持つ少なくとも第1の波長の光放射を皮膚表面に向けて発するための光源と、前記皮膚表面において反射される光を検出するための光センサであって、前記入射偏光を持つ光と異なる偏光を持つ光とを別個に検出することが可能であり、前記入射偏光を持つ検出光を表すPP値と、異なる偏光を持つ検出光を表すCP値とを供給する、光センサと、前記光センサに結合され、前記CP値及び前記PP値に基づいて、前記皮膚表面と毛とを識別するように動作可能なプロセッサと、を有するヘアトリートメント装置に関する。
【0002】
本発明は更に、皮膚表面の近くの毛を検出するための方法、及び皮膚表面の近くの毛を検出するためのコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭のパラグラフにおいて述べられたヘアトリートメント装置において使用される光ベースの検出器は、例えば国際特許出願公開WO2010/106480A1として公開された国際特許出願により知られている。当該特許出願は、光毛検出ユニットを備えたシェービング装置を記載している。該毛検出ユニットは、2つの異なる波長及び1つの入射偏光を持つ光を発する2つの光源を利用している。該光は、ユーザの皮膚における或る位置に合焦される。撮像ユニットが、ユーザの皮膚において散乱又は反射させられた光を検出する。光が皮膚の細胞によってではなく複屈折体を構成する毛により反射させられた場合には、偏光が変化させられる。毛によりもたらされる偏光変化の量は、波長に依存する。該撮像ユニットは、異なる偏光状態及び異なる波長を持つ反射光を、個別に検出する。異なる波長チャネルにおける偏光変化における差は、毛と皮膚表面とを識別するために利用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
毛検出ユニットの主な性能パラメータは、感度及び特定性である。感度は、実際に毛が検出される機会についての尺度である。特定性は、毛とそれ以外の構造(特に皮膚)とを識別するために重要である。既知の毛検出ユニットを更に改善するためには、高い感度及び特定性を持つ光ベースの検出器が望ましい。加えて、複数の波長の使用のため、既知の毛検出ユニットは、適切に動作する検出ユニットを得るために完全に整合される必要がある多くの光学素子を備えた、かなり複雑な装置である。
【0005】
本発明の目的は、該光ベースの検出器が改善された感度及び特定性を持つ、皮膚表面の近くの毛を検出するための光ベースの検出器を備えた、冒頭のパラグラフにおいて述べられた種類のヘアトリートメント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、当該目的は、冒頭のパラグラフにおいて述べられた種類のヘアトリートメント装置であって、該光ベースの検出器が、前記光センサに結合され、校正手順に基づいて、前記CP値及び前記PP値をそれぞれのダイナミックレンジにスケーリングして、スケーリングされたCP値及びスケーリングされたPP値をそれぞれ得て、前記スケーリングされたCP値と前記スケーリングされたPP値のうち低いほうの値を選択することにより、最小強度投射(MIP)値を決定し、前記MIP値に基づいて皮膚表面と毛とを識別するように動作可能な、プロセッサを有する、ヘアトリートメント装置により達成される。
【0007】
改善された検出アルゴリズムにより、複屈折構造を構成する毛が、高い感度及び特定性で検出されることができる。非複屈折材料は、光の元の入射偏光状態を保つ。該光は、高いPP(平行偏光)値及び低いCP(交差偏光)値を示す。光が複屈折体を構成する毛により反射されると、偏光が変化し、光ベースの検出器は、比較的低いPP値(変化していない入射偏光状態の光)及び比較的高いCP値(変化させられ従って異なる偏光状態の光)を示す。
【0008】
CP値及びPP値が適切にスケーリングされると、両方の値のうち低い方をとると、毛については高い値、皮膚表面の領域については低い値が得られる。殆どの場合、このことはCP値のみについては既に当てはまるが、毛ではない構造が含まれる幾つかの状況においては、CP値が高くなりPP値が低くなり得る。それ故、MIP手法が、より堅固な皮膚と毛との識別をもたらす。
【0009】
MIP値の使用は、複屈折体を構成する毛を検出するための非常に高感度で特定性の高い手段であることを、実験が示している。CP値とPP値との差又は絶対差を決定すること、又は両方の値の和により該絶対差を除算することのような他の選択肢は、皮膚と毛との識別において、あまり有効ではないことが示されている。該改善された検出アルゴリズムは、1つの波長のみを持つ光の使用で十分であるほど有用であることさえ分かっている。第2の波長の光を発する付加的な光源を使用することは、該光ベース検出器の効果を更に改善し得るが、必須ではない。その結果、該改善されたアルゴリズムは、あまり複雑ではなく、より安価で、より堅固な光ベースの検出器を実現する。
【0010】
CP信号及びPP信号のダイナミックレンジは、種々の状況に依存する。例えば、該ダイナミックレンジは、皮膚及び毛のタイプ、及び光ベース検出器の検査される皮膚表面に対する近さ及び角度に、おおきく依存し得る。また、該ダイナミックレンジは、装置によっても異なる。それ故、CP値及びPP値は好適には、比が算出される前に、それぞれ予め定義されたレンジにスケーリングされる。それぞれのダイナミックレンジは好適には、背景測定及び拡散基準を含む校正手順に基づいて決定される。背景測定は例えば、水の所定の深さにおいて又は複屈折材料を有さないことが分かっている皮膚の一部において光を合焦させることにより実行されても良い。拡散基準は例えば、制御された深度及び位置における毛又は既知の光学特性を持つ強い散乱性の拡散媒体であっても良い。
【0011】
光ベースの検出器が毛検出に使用される場合には、CP値について予め定義されたダイナミックレンジの広さの約3倍である、PP値について予め定義されたダイナミックレンジを使用することが有利であることが分かっている。例えば、全てのPP値は[0,300]にスケーリングされ、全てのCP値は[0,100]にスケーリングされる。これらのダイナミックレンジを用いると、拡散基準に対するCP値及びPP値は同様のものとなる。他の光ベースの検出器については、最適なダイナミックレンジは異なり得る。
【0012】
本発明によるヘアトリートメント装置の他の実施例においては、前記プロセッサは更に、前記スケーリングされたCP値と前記スケーリングされたPP値との比を算出し、前記算出された比に更に基づいて皮膚表面と毛とを識別するように動作可能である。光が非複屈折皮膚物質により反射される場合、該光の元の入射偏光状態は保たれる。光センサは、高いPP(平行偏光)値及び低いCP(交差偏光)値を示す。従って、その結果のCP/PP比は、非常に小さくなる。光が複屈折体を構成する毛により反射された場合には、偏光が変化し、光ベースの検出器は、比較的低いPP値(変化していない入射偏光状態の光)及び比較的高いCP値(変化させられ従って異なる偏光状態の光)を示す。光が毛により反射された場合には、CP/PP比は著しく増大する。CP/PP値の使用は、複屈折体を構成する毛を検出するための、非常に高感度で特定性が高い手段であることを、実験が示している。
【0013】
全てのPP値が[0,300]にスケーリングされ、全てのCP値が[0,100]にスケーリングされる例においては、CP/PP比は、皮膚についてはゼロに近く、毛については約1であった。その結果、CP/PP比は或る種の確率値として使用され得る。
【0014】
CP/PP比(CP値及びPP値をスケーリングした後に得られたものであってもそうでなくても)は好適には、識別関数を利用して処理される。該識別関数は好適には、急な傾きを持つS字形の関数である。該識別関数を適用した結果、複屈折から非複屈折への鋭い遷移が得られる。従って、非複屈折性の皮膚表面と複屈折性の毛との間のコントラストが強調されることとなる。例えば、CP/PP比の又はCP/PP比の線形関数の双曲線正接が、当該識別関数として使用されても良い。
【0015】
好適な実施例においては、前記光ベースの検出器は更に、前記皮膚表面の近くの複数の位置において光放射を発するように前記光源を制御し、それぞれの位置において前記光センサを用いて反射光を検出するための、制御ユニットを有し、前記プロセッサは更に、それぞれの位置において対応するMIP値を示すMIPマップを提供するように動作可能である。該複数の位置は、一次元の走査線を形成しても良い。複数の一次元走査線が、あわせて2次元の走査面を形成しても良い。MIPマップは必ずしも、幾つかの位置における高いMIP値を持つ表面積の2Dグラフィカル表現ではないことに留意されたい。MIPマップは好適には、複数の位置についてのMIP値を持つリスト又は配列である。
【0016】
本発明によるヘアトリートメント装置の好適な実施例においては、前記プロセッサは更に、PP値に対する対応するCP値の比を各位置において決定することにより比マップを算出し、前記比マップに対して勾配フィルタを適用して、各位置について毛の端部の存在の確率を示す端部確率マップを取得し、前記端部確率マップ及びMIPマップを組み合わせて、どこに毛が予期されるかを示すバイナリマップを生成するように動作可能である。前記勾配フィルタは、例えば一次ガウシアン微分フィルタであっても良い。該比マップに適切な勾配フィルタを適用することは、安定したCP/PP比を持つ領域における低値に導く。CP/PP比は例えば、いずれの近くの毛もない皮膚部分においては比較的安定的である。複屈折性の毛と非複屈折性の皮膚表面との間の境界において及び該境界の近くにおいては、勾配フィルタは高い値をもたらす。斯くして、勾配フィルタを比マップに適用することの結果は、複屈折性の毛の端部を有する高い確率を持つ位置を示す新たなマップである。
【0017】
MIPマップは、複屈折性の毛がどこにあってどこにないかを示す信頼性の高い確率マップを提供し、端部確率マップは、複屈折性の毛の端部がどこに見出されるかを示す。端部確率マップとの組み合わせは、複屈折性の毛と非複屈折性の皮膚表面との間の、より信頼性の高い識別に帰着する。更に、端部確率情報は、検出される複屈折性の毛の形状を決定するためにも使用され得る。このことは、異なる種類の複屈折性の物体間の信頼性高い識別を可能とする。本発明による光ベースの検出器を毛を検出するために使用する場合には、同様に複屈折性であり得る空気の泡と毛とを識別するために提案される検出アルゴリズムが使用されても良い。
【0018】
本発明によるヘアトリートメント装置の更なる実施例においては、前記光源は更に、第2の波長の光放射を発するように構成され、前記光源は、前記第1の波長と前記第2の波長とで別個のCP値及びPP値を提供するように構成され、前記プロセッサは更に、前記第1の波長及び前記第2の波長について前記CP値及び前記PP値を組み合わせ、前記第1の波長及び前記第2の波長について前記組み合わせられたCP値及びPP値に基づいてMIP値を決定するように動作可能である。該組み合わせられたCP値及びPP値は例えば、異なる波長についてのそれぞれの値の差又は比をとることにより得られても良い。代替としては、該組み合わせられたCP値及びPP値は、異なる波長についてのそれぞれの値の差と合計との比であっても良い。
【0019】
本発明によるヘアトリートメント装置の更なる実施例は、毛切断レーザ光源と、前記光ベースの検出器に結合された更なるプロセッサと、を更に有し、前記更なるプロセッサは、前記光ベースの検出器が毛の存在を検出した皮膚表面の位置において、前記毛切断レーザ光源を作動させるように構成される。本実施例においては、該ヘアトリートメント装置は、いわゆるレーザベースのシェービング装置である。例えば、永続的な又は一時的な脱毛を得るため永続的に又は一時的に毛根を損傷させるために光エネルギーが利用される光ベースの脱毛装置又は染毛装置のような、他のヘアトリートメント装置も本発明の範囲内である。一般的に、本発明は、皮膚表面の近くの毛の存在を検出するための光ベースの検出器が利用される又は利用され得るいずれのヘアトリートメントをもカバーする。
【0020】
本発明は更に、皮膚表面の近くの毛を検出するための方法であって、前記方法は、入射偏光を持つ少なくとも第1の波長の光放射を皮膚表面に向けて発するステップと、前記皮膚表面において反射される前記入射偏光を持つ光を検出し、前記入射偏光を持つ検出光を表すPP値を供給するステップと、前記皮膚表面において反射される異なる偏光を持つ光を検出し、前記異なる偏光を持つ検出光を表すCP値を供給するステップと、校正手順に基づいて、前記CP値及び前記PP値をそれぞれのダイナミックレンジにスケーリングし、スケーリングされたCP値及びスケーリングされたPP値をそれぞれ得るステップと、前記スケーリングされたCP値と前記スケーリングされたPP値のうち低いほうの値を選択することにより、最小強度投射値(MIP)を決定するステップと、前記最小強度投射値に基づいて皮膚表面と毛とを識別するステップと、を有する方法に関する。
【0021】
本発明は更に、皮膚表面の近くの毛を検出するためのコンピュータプログラム製品であって、本発明による皮膚表面の近くの毛を検出するための方法をプロセッサに実行させるように動作可能なコンピュータプログラム製品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明によるヘアトリートメント装置における使用のための、複屈折体を構成する毛を検出するための光ベースの検出器を模式的に示す。
【
図2】本発明による毛を複屈折体として検出する方法のフロー図を示す。
【
図3】本発明によるヘアトリートメント装置における、2つの異なる波長を用いて複屈折体を構成する毛を検出するための光ベースの検出器を模式的に示す。
【
図4】本発明による毛検出アルゴリズムにおける段階を示す画像を示す。
【
図5】本発明による毛検出アルゴリズムにおける段階を示す画像を示す。
【
図6】本発明による毛検出アルゴリズムにおける段階を示す画像を示す。
【
図7】本発明によるヘアトリートメント装置の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明によるヘアトリートメント装置における使用のための、複屈折体を構成する毛を検出するための光ベースの検出器10を模式的に示す。光ベースの検出器10は、人間又は動物の皮膚12における毛11を検出するように構成される。毛検出は、IPL(超短パルス光)ベースの又はレーザベースの毛切断(シェービング)装置又は脱毛装置において有用となり得る。
【0024】
図1の光ベースの検出器10は、好適にはスペクトルの近赤外又は赤外領域における、レーザビームを発するためのレーザ光源13を有する。例えば、785又は850nmの波長を持つ光が利用され得る。明確に定義された偏光状態を持つ光ビームを提供するため、偏光子19が利用される。入射偏光状態は、直線偏光又は楕円偏光状態であっても良い。光学素子18は、偏光ビームを皮膚12に合焦させる。光源13及び/又は光学素子18(の一部)に結合された制御ユニット16が、レーザビームの正確な光路を制御し、複屈折性の毛の存在について検査される皮膚12上の正確な位置を制御し、皮膚12の走査直線又は2D領域を可能とする。
【0025】
光が皮膚表面12において反射される場合には、反射光は元の入射偏光を保持する。複屈折性の毛との光の相互作用が、光の偏光状態を変化させる。その結果、皮膚/毛のサンプルにおいて反射した光は、部分的に入射ビームと平行に偏光(PP)し、部分的に交差偏光(CP)する。反射光のCP成分は、光が複屈折性の毛に当たった確率の尺度である。
図1の光ベースの検出器10において、光学素子18が、皮膚表面12で反射した光を、偏光スプリッタ17に導く。偏光スプリッタ17は、例えばファラデー回転子を利用しても良い。偏光スプリッタ17は反射ビームを、次いで第1の光センサ14aに合焦させられるPPビームと、第2の光センサ14bに合焦させられるCPビームと、に分割する。
【0026】
プロセッサ15は、光センサ14a、14bに結合され、CP及びPP信号を受信し、これら信号を毛と皮膚とを識別するために利用する。プロセッサ15は、入射レーザビームを制御し皮膚表面12を走査するため、レーザ光源13及び制御ユニット16に結合されても良い。
【0027】
任意に(
図3参照)、異なる波長で光を発する付加的な第2のレーザ光源が使用される。国際特許出願公開WO2010/106480におけるように、異なる波長チャネルにおける偏光変化の違いが、毛と皮膚表面とを識別するために利用され得る。複数のレーザ光源及び異なる波長が利用される場合、異なる波長の反射光を別個に検出するために付加的なレーザが必要とされる。異なる光ビーム(異なる波長及び/又は異なる偏光状態)を組み合わせて、分割し、皮膚表面及び適切な光センサに向けて分割し合焦させるためには、付加的な光学素子が必要となる。該付加的な光学素子は、多色の光ビームを別個の単色の光ビームへと分割するためのダイクロイックビームスプリッタを含んでも良い。
【0028】
図2は、本発明による、複屈折性の毛を検出するための方法のフロー図を示す。本方法は、発光ステップ21で開始する。当該ステップにおいて、光源13は少なくとも第1の波長の光を発し、偏光子19が該光に明確に定義された入射偏光状態を持たせる。制御ユニット16の制御の下、光学素子18は、発せられた光ビームを皮膚表面12における選択された位置に合焦させる。
【0029】
発せられた光が皮膚12に到達すると、該光は部分的に光ベースの検出器10へと反射され戻される。光学素子18は、該反射光を偏光スプリッタ17に導き、該偏光スプリッタ17において、該光がPP信号とCP信号とに分割される。PP検出ステップ22において、第1の光センサ14aは、変化していない(PP)偏光を持つ光を検出し、入射偏光を持つ検出光を表すPP値を供給する。CP検出ステップ23において、第2の光センサ14bは、変化した(CP)偏光を持つ光を検出し、異なる偏光を持つ検出光を表すCP値を供給する。
【0030】
光センサ14a及び14bはプロセッサ15に結合され、該プロセッサ15は得られたPP値及びCP値を処理して複屈折性の毛を検出する。PP値及びCP値の処理は少なくとも、MIPステップ24において、CP値とPP値とのうち低いほうの値を最小強度投射(MIP)値として選択することを有する。加えて、PP値に対するCP値の比が算出されても良い。CP/PP比の使用は、複屈折性の毛11を検出するための非常に高感度で特定性の高い手段であることを、実験が示している。CP値とPP値との差又は絶対差を決定すること、又は両方の値の和により該絶対差を除算することのような他の選択肢は、皮膚12と毛11との識別において、あまり有効ではないことが示されている。
【0031】
識別ステップ25において、プロセッサ15が、光ビームが複屈折性の毛で反射されたものか否かを決定する。該決定は、二値の正否決定であっても良いし、又は検査された位置において複屈折性の毛を見出す確率(典型的には0と1との間の値)に帰着しても良い。光ベースの検出器10が1箇所の皮膚12位置においてのみ測定をする場合には、該決定は、例えばMIP値を閾値と比較することによる、検査された位置におけるMIP値のみに基づくものであっても良い。実用的には、光ベースの検出器10は、皮膚12の或る領域を走査することとなる。プロセッサ15は好適には、検査される位置において複屈折性の毛を見出す確率を決定する際、近くの位置のMIP値も考慮に入れる。
【0032】
加えて、CP/PP比が、検査された位置において複屈折性の毛を見出す確率についての出力値として使用されても良い。皮膚12と毛11とを識別するための二値の正否決定を為すため、閾値が利用されても良い。より高度なバージョンの識別アルゴリズムにおいては、得られたCP及びPP信号に対して、他のデータ処理動作が実行される。斯かる更なるデータ処理動作の例は、
図4乃至6における画像により示される。以下、毛/皮膚サンプルにおいて毛を検出するための毛検出アルゴリズム(の一部)の幾つかの例が説明される。詳細なアルゴリズム及び正確な数値パラメータが利用される場合、機能及びパラメータの両方は、異なる状況においては異なる態様で選択されても良いことは留意されるべきである。例えば、他のタイプの複屈折体を探す場合には、少なくともパラメータが変更されるべきである。しかしながら、以下に説明される検出方法の背後にある中核原理は、複屈折材料と非複屈折材料との識別が望ましい他の状況においても利用され得る。
【0033】
図3は、2つの異なる波長を用いて複屈折体を構成する毛を検出するための光ベースの検出器を模式的に示す。この目的のため、異なる波長で光を発する第2の光源33が備えられる。該光ベースの検出器は、例えば785nm及び850nmの波長を使用しても良い。互いにあまり近くない波長を用いると、より高いコントラストが得られる。例えば、785nm及び1400nmの光が利用されても良い。第1の波長と第2の波長とについて別個にCP及びPP値を測定するため、付加的な光センサ34a及び34bが備えられる。プロセッサは、第1及び第2の波長についてCP値及びPP値を組み合わせ、該第1及び第2の波長について組み合わせられたCP値及びPP値に基づいてMIP値を決定するように動作可能である。該組み合わせられたCP値及びPP値は例えば、異なる波長についてのそれぞれの値の差(CP[λ
1]−CP[λ
2]、PP[λ
1]−PP[λ
2])又は比(CP[λ
1]/CP[λ
2]、PP[λ
1]/PP[λ
2])をとることにより得られても良い。代替としては、該組み合わせられたCP値及びPP値は、異なる波長についてのそれぞれの値の差と合計との比((CP[λ
1]−CP[λ
2])/(CP[λ
1]+CP[λ
2])、(PP[λ
1]−PP[λ
2])/(PP[λ
1]+PP[λ
2]))であっても良い。
図3の実施例においては、異なる偏光の光を分割し、該光をそれぞれCPチャネル及びPPチャネルに導くため、ファラデー回転子17が利用されている。異なる波長の光を分割するためダイクロイックフィルタ35が利用され、それにより、別個の光センサ14a/b、34a/bが、異なる波長についてCP値及びPP値を検出することができる。
【0034】
図4乃至6は、本発明による毛検出アルゴリズムにおける種々の段階を示す画像を示す。図示されている画像は、単に説明するものであることに留意されたい。光ベースの検出器10については、画像により表される値のみが重要である。光ベースの検出器10は画像の幾つかを表示するためのディスプレイを持っても良いが、このことは必須ではない。例えば毛切断(シェービング)装置においては、いつ脱毛すべきかを決定するために確率値が利用されても良く、斯かる確率値は可視化される必要はない。
【0035】
図4においては、左側の画像51、52が、3本の毛を有する皮膚領域の走査により得られたCP値(上側の画像51)及びPP値(下側の画像52)を示す。CP値51は、通常の非複屈折性の皮膚部分については低く、複屈折性の毛の部分については高い。PP値52は、通常の非複屈折性の皮膚部分については高く、複屈折性の毛の部分については低い。
【0036】
光センサ14a、14bからの信号のダイナミックレンジは、皮膚及び毛のタイプ、並びに皮膚及び毛に対する刃の近さ及び角度に、大きく依存し得る。更に、センサ信号はセンサノイズにより汚染され得る。大きなダイナミックレンジに対処することを可能とするため、信号はディジタル化され、予め定義されたダイナミックレンジに対して前処理される。このことは、光センサ14a、14bとプロセッサ15との間にある増幅器を制御することにより、又はプロセッサ15自体により、実行されても良い。スケーリングは、検出された値の例えば移動平均、最近の最小値及び/又は最近の最大値に基づいても良い。以下の例においては、CP値が範囲[0,100]にスケーリングされる。皮膚は低い強度信号(例えば42)を示し、毛は高い強度信号(例えば99)を示す。PP値は、[0,300]の範囲にスケーリングされる。皮膚は高い強度(例えば175)により特徴付けられ、毛は低い強度(例えば95)より特徴付けられる。例えば他のタイプの複屈折体を探す場合のような他の状況については、他の予め定義された範囲が、より有用となり得る。
【0037】
CP画像51において、幾つかの複屈折領域が丸く含まれている。これら領域のうち3つ(実線で囲まれたもの)は、毛を有する。2つの領域(点線で囲まれたもの)は、空気の泡を有する。他の2つの領域(同様に点線で囲まれたもの)は、他の毛ではない構造を有する。PP画像52においては、一本の毛のみが明らかに見えており、他の2本は見えていない。空気の泡も明らかに見えている。本発明によれば、CP値51及びPP値52が、走査された領域における全ての検査点についてCP/PP比を算出するために利用される。CP及びPP値をスケーリングするための以上に説明された範囲の例を用いることの利点は、CP値とPP値とは毛については大きくは違わなく、CP/PP比は毛については1に近いことである。皮膚領域については、CP値が低くPP値が高いため、非常に低いCP/PP比に帰着する。このように得られる皮膚と毛との間の高いコントラストは、光ベースの検出器の感度を改善する。
【0038】
図4におけるCP/PP画像53においては、3本の毛が明らかに見えており、2つの毛ではない構造も見えている。しかしながら、CP画像51及びPP画像52に示されていた泡は消えている。斯くして、CP/PP画像は、元のCP画像51又はPP画像52よりも改善された特定性を示す。
【0039】
図5において、CP/PP比値53を更に処理するための2つのステップが示されている。第1に、複屈折性材料と非複屈折性材料との間のコントラストを更に向上させるため、識別関数が利用される。CP/PP比に適用される識別関数は、複屈折性材料と非複屈折性材料との間の遷移を表すCP/PP比値間の急な傾き(本例においては、約0.5と約0.8との間)を持つS字形の関数である。例えば、以下の関数が利用されても良い:
0<r<0.8について、50(1+tanh(3r−2))
0.8<r<3について、50(1+tanh(3r−0.4))
r>3について、0
ここで、rはCP/PPの比値である。急な傾きを持つ斯かる識別関数を用いることの効果は、複屈折性材料から非複屈折性材料への、より鋭い遷移が得られることである。従って、非複屈折性の皮膚表面と複屈折性の毛との間のコントラストが強調されることとなる。第2の画像62は、識別関数をCP/PP比値53に適用した結果を示す。
【0040】
識別関数を適用した後、処理されたCP/PPデータ62に対して勾配フィルタが適用されても良い。勾配フィルタは、位置に対するCP/PP比の変化を決定する。各検査位置について、勾配フィルタは、近くの位置のCP/PP比と比較したCP/PP比の変化の割合に依存する出力を供給する。複屈折性の毛の端部において、変化の割合は高くなる。該端部から更に離れると、変化の割合は低くなる。
【0041】
該勾配フィルタの例の出力値は、
図5の第3の画像63に示されるデータを取得するために利用される。この例は、第2の画像62の処理されたCP/PP比データに対して一次ガウシアン微分フィルタを適用することにより得られる。その結果は、各位置について複屈折性の毛の端部を有する確率を示す、端部確率マップ63である。勾配処理により、毛の2つの毛端部が反対の符号を持つ。
【0042】
例えば有限インパルス応答(FIR)フィルタを用いるもののような、更なるフィルタリングステップが、端部における高い強度の連続性を確実にし、非常に狭く細長い構造(例えば産毛)のような毛ではない異常値を取り除くために実行されても良い。
図5の端部確率マップ63を得るため、40μmの広がりをカバーするため10タップフィルタが利用される。このことは、薄く細長い毛ではない構造及び産毛の両方とも誤って検出されないことを確実にする。更なる任意のデータ処理ステップにおいては、選択されたg
cよりも大きな絶対値全てが100に設定され、残りの値が範囲[−100,100]にスケーリングされる。その結果の端部確率マップ63が、
図5に示される。当該端部確率マップ63において、3本の毛(丸で囲まれたもの)が明確に見えている。
【0043】
本例における勾配フィルタは
図5における第2の画像の処理されたCP/PPデータ62に適用されるが、該勾配フィルタをCP/PP比データ53に直接適用することも可能であることに留意されたい。
【0044】
図6は、光ベースの検出器がどのように異なる有用な形態に処理され得るかの更なる例を示す。事前処理されたCPデータ51(強度が[0,100]にスケーリングされているものとする)において、皮膚は低強度信号(例えば42)を示し、毛は高強度信号(例えば99)を示す。事前処理されたPPデータ52([0,300]の強度範囲を持つ)において、皮膚は高い強度(例えば175)により特徴付けられ、毛は低い強度(例えば95)により特徴付けられる。画素毎に各データセットの最小値(最小強度投射(MIP)とも呼ばれる)をとることは、毛については高い強度値を返し、皮膚領域については低い強度値を返す。殆どの場合、このことはCPデータ51のみについても当てはまるが、毛ではない構造が含まれる幾つかの例においては、CPデータ51は高くなり、PPデータ52が低くなり得る(例えば72と29)。それ故、MIP手法は、皮膚と毛との堅固な識別を実現する。CP及びPPデータの最小値をとることの結果は、
図6における上側の画像71に示される。前述のものと同様に、MIPデータ71を後処理し、高い強度の連続性を確実にし、センサノイズを低減させるために、FIRフィルタが利用されても良い。
図5のCP/PP比手法に比較して、当該「MIPマップ」71が毛ではない構造を除去するのに有用であるが、毛と空気の泡との識別においてはあまり好適ではないことが明らかである。
【0045】
本発明によるアルゴリズムの好適な実装においては、MIPデータ71と端部確率マップ63とが組み合わせられ、走査された皮膚/毛サンプルにおいてどこに毛が見出されるかについての最終的な決定を為す。以上に議論されたように、端部確率マップに帰着するCP/PP手法は、毛と空気の泡とを識別することにおいて非常に有効であり、一方でMIP手法は、毛と他の毛ではない構造とを効果的に識別する。両方の手法を組み合わせることは、優れた感度及び特定性を持つ毛検出アルゴリズムに帰着し得る。両方の手法を組み合わせるためのアルゴリズムは、毛を有する高い確率(MIPデータ71における高い値)を持ち、近くの位置に毛の端部を見出す高い確率(近くの点について端部確率マップ63における高い値)を持つ点を探すべきである。斯かる組み合わせを為すためのアルゴリズムの一例は、
0.7max(p
g[n−20,…,n])+0.3p
m[n]>d
nの場合、h(n)=1であり、そうでなければh(n)=0
である。ここでp
g[n]は端部確率値を示し、p
m[n]はMIP値を示し、h(n)=1は位置nにおける検出される毛を示す。d
rは、実験的に決定される閾値である。当該アルゴリズムは、前の20点(各走査ステップが4μmである場合、80μm)におけるどこかで第1の毛端部を持つ毛位置を探す。該アルゴリズムは、第2の毛端部を考慮に入れるため、以下のように適合されても良い。
0.3max(p
g[n−20,…,n])+0.5p
m[n]−0.2min(p
g[n,…,n+20])>d
nの場合、h(n)=1であり、そうでなければh(n)=0
ここでp
g[n]は端部確率値を示し、p
m[n]はMIP値を示し、h(n)=1は位置nにおける検出される毛を示す。d
rは、実験的に決定される閾値である。
図6の右側における二値画像73は、MIPマップ71と
図4の端部確率マップ63との組み合わせの結果を示す。ここでは、明らかに3本の毛が見え、空気の泡又はその他の毛ではない構造は見えない。斯くして、この組み合わせられた手法は、非常に高感度で特定性の高い毛検出アルゴリズムに帰着する。
【0046】
図7は、本発明によるヘアトリートメント装置の例を示す。図示されるヘアトリートメント装置は、毛を切断する又は短くするためのレーザベースの毛切断(シェービング)装置80である。毛切断装置80は、
図1を参照しながら以上に説明されたものと同様の、複屈折体を構成する毛を検出するための光ベースの検出器を有する。同一の参照番号は、同様の特徴に対応する。以上において既に議論した特徴に加え、毛切断装置80は、光又は接触窓83を有しても良く、浸漬流体84を塗布しても良い。例えば、流体84は、光窓83の屈折率と皮膚12の屈折率との中間である屈折率を持つ、屈折率整合流体であっても良い。好適には、全ての屈折率が略等しい。このことは、皮膚12からの反射を低下させる。流体84はまた、皮膚12を冷却又は処置する目的のために選択されても良い。更に、接触窓83は任意であるが、毛11の位置を決定するための基準として機能することを支援する。
【0047】
毛切断装置80は、毛11を検出するためのみならず毛を切断するためにもレーザ光源13を使用しても良い。レーザ光源13が切断のために利用される場合には、レーザ光源13は、毛を検出するときとは異なるパワーレベルで動作しても良い。代替としては、毛11の切断のために別個のレーザ光源(図示されていない)が使用されても良い。
【0048】
毛検出及び切断処理の制御は、プロセッサ15により実行されても良いし、又は光ベースの検出器及び毛切断レーザ光源に結合された更なるプロセッサ(図示されていない)により実行されても良い。プロセッサ15又は更なるプロセッサは、該光ベースの検出器が毛の存在を検出している又は検出した皮膚表面の近くの位置において、毛切断レーザを作動させるように構成される。この目的のため、検出レーザビーム及び毛切断レーザビームは、皮膚表面上を走査させられる。当業者は、この目的のための適切な走査手段を構成することが可能であり、その例は例えば国際特許出願公開WO00/062700、WO2005/099607又はWO2010/143108より知られている。
【0049】
本発明は、コンピュータプログラム、特に本発明を実行するように構成された、担体上又は担体中のコンピュータプログラムにも拡張されることは、理解されるであろう。該プログラムは、ソースコード、オブジェクトコード、部分的にコンパイルされた形態のようなコード中間ソース及びオブジェクトコード、又は本発明による方法の実装における使用に適した他のいずれかの形態であっても良い。斯かるプログラムは、多くの異なる構造的な設計を持ち得ることも理解されるであろう。例えば、本発明による方法又はシステムの機能を実装するプログラムコードは、1つ以上のサブルーチンに分割されても良い。これらサブルーチンに機能を分散させる多くの方法が、当業者には明らかであろう。これらサブルーチンは、1つの実行可能ファイルに合わせて保存され、内蔵型プログラムを形成しても良い。斯かる実行可能ファイルは、例えばプロセッサ命令及び/又はインタプリタ命令(例えばJava(登録商標)インタプリタ命令)のような、コンピュータ実行可能な命令を有しても良い。代替として、これらサブルーチンの1つ以上又は全てが、少なくとも1つの外部のライブラリファイルに保存され、例えば実行時に、静的又は動的にメインプログラムとリンクされても良い。メインプログラムは、これらサブルーチンの少なくとも1つに対する少なくとも1つの呼び出しを含む。また、これらサブルーチンは、互いに対する関数呼び出しを有しても良い。コンピュータプログラムに関連する実施例は、開示された方法の少なくとも1つの処理ステップの各々に対応するコンピュータ実行可能な命令を有する。これら命令はサブルーチンに分割されても良く、及び/又は静的又は動的にリンクされ得る1つ以上のファイルに保存されても良い。コンピュータプログラムに関連する他の実施例は、開示されたシステム及び/又は製品の少なくとも1つの手段の各々に対応するコンピュータ実行可能な命令を有する。これら命令はサブルーチンに分割されても良く、及び/又は静的又は動的にリンクされ得る1つ以上のファイルに保存されても良い。
【0050】
コンピュータプログラムの担体は、該プログラムを担持することが可能ないずれのエンティティ又は装置であっても良い。例えば、該担体は、例えばCD−ROM若しくは半導体ROMといったROMのような記憶媒体、又は例えばフロッピー(登録商標)若しくはハードディスクのような磁気記録媒体を含んでも良い。更に、該担体は、電気若しくは光ケーブル、無線、又はその他の手段を介して搬送され得る、電気又は光信号のような、送信可能な媒体であっても良い。該プログラムが斯かる信号において実施化される場合には、該担体は斯かるケーブル又はその他の装置若しくは手段により構成されても良い。代替として、該担体は、関連する方法を実行するように又は関連する方法の実行における使用のために構成された、該プログラムが組み込まれた集積回路であっても良い。
上述の実施例は本発明を限定するものではなく説明するものであって、当業者は添付する請求項の範囲から逸脱することなく多くの代替実施例を設計することが可能であろうことは留意されるべきである。請求項において、括弧に挟まれたいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。動詞「有する(comprise)」及びその語形変化の使用は、請求項に記載されたもの以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。要素に先行する冠詞「1つの(a又はan)」は、複数の斯かる要素の存在を除外するものではない。本発明は、幾つかの別個の要素を有するハードウェアによって、及び適切にプログラムされたコンピュータによって実装されても良い。幾つかの手段を列記した装置請求項において、これら手段の幾つかは同一のハードウェアのアイテムによって実施化されても良い。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。